特許第5858846号(P5858846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5858846
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】すべり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/12 20060101AFI20160128BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20160128BHJP
   F16C 9/02 20060101ALI20160128BHJP
   F16C 9/04 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   F16C33/12 Z
   F16C17/02 Z
   F16C9/02
   F16C9/04
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-78194(P2012-78194)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-204810(P2013-204810A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄三
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂幸
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−204652(JP,A)
【文献】 特開2003−090343(JP,A)
【文献】 特開2006−283905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
F16C 9/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏金層上に、軸受合金層と、樹脂と固体潤滑剤とを含有する樹脂オーバレイ層と、軟質金属からなる金属オーバレイ層とがこの順に積層されてなり、
前記金属オーバレイ層の厚みが1〜5μmであり、前記樹脂オーバレイ層の厚みと前記金属オーバレイ層の厚みとの比率が3〜9:1〜5であることを特徴とするすべり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべり軸受に関し、より詳細には、自動車、舶用、一般産業機械エンジン等の内燃機関に用いられるすべり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や一般産業機械の内燃機関のクランクシャフトの主軸、コンロッドの大端部などに使用されるすべり軸受(しゅう動部材)は、一般に、鋼からなる裏金の内周面にアルミニウム合金や銅合金などの軸受合金(しゅう動合金)をライニングし、その軸受合金の表面に中間層を介してまたは介さずに被覆層(オーバレイ層)を被着して構成されている。
【0003】
オーバレイ層は、例えば内燃機関のハウジングの加工精度に起因する軸のミスアラインメントによって生じる軸と軸受との当たり不良を解消し、軸形状と軸受とのなじみ性、耐焼付き性を向上することや、耐摩耗性を向上させること等を目的として設けられる。
具体的には、オーバレイ層は、例えばSn系合金や、BiまたはBi合金からなる軟質金属層や(例えば、特許文献1参照)、ベースとなる樹脂に固体潤滑剤等を含有させた固体潤滑剤含有樹脂オーバレイ層(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0004】
しかし、上記のような軟質金属層からなる従来のオーバレイ層は、なじみ性には優れるものの、耐摩耗性に劣るという問題点がある。一方、固体潤滑剤含有樹脂からなる従来のオーバレイ層は、耐摩耗性には優れるものの、なじみ性には改善の余地がある。このように、従来のオーバレイ層では、なじみ性、耐焼付き性、耐摩耗性とを共に高いレベルで満足させることはできなかった。
【0005】
一方、しゅう動部材において、耐摩耗性および耐疲労性を損なうことなくなじみ性を向上させる技術として、PVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長法)によって形成された金属の被膜の上に、固体潤滑剤板状結晶粒子を積層して形成された被覆層を備えたしゅう動部材や(例えば、特許文献3参照)、斜板とシューとの摺接面に、表面に微少凹凸が形成された金属層の表面に樹脂層を形成した斜板を備えた斜板式圧縮機(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−308883号公報
【特許文献2】特開2008−240785号公報
【特許文献3】特開2007−270205号公報
【特許文献4】特開2004−300926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3、4のしゅう動材料でも、軟質金属層が軸受合金層表面に存在しないため、なじみ性が不足するという問題点があり、耐摩耗性を維持しながらなじみ性を高いレベルで満足させることはできなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、耐摩耗性を損なうことなく、なじみ性を向上させたすべり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の目的は、下記(1)〜(2)により達成される。
(1)裏金層上に、軸受合金層と、樹脂と固体潤滑剤とを含有する樹脂オーバレイ層と、軟質金属からなる金属オーバレイ層とがこの順に積層されてなることを特徴とするすべり軸受。
(2)前記金属オーバレイ層の厚みが1〜5μmであることを特徴とする上記(1)に記載のすべり軸受。
【発明の効果】
【0010】
本発明のすべり軸受は、軸受合金層上に、樹脂オーバレイ層と金属オーバレイ層とをこの順で積層しているので、稼動初期において、相手軸の表面に存在する初期凹凸が金属オーバレイ層と接触し、両者がなじむ形で共に摩耗し、初期のなじみ性を早期に発現でき、結果としてしゅう動に優れた表面状態を維持することができる。また、金属オーバレイ層が摩耗した後は、樹脂オーバレイ層が相手軸と接触するようになり、樹脂オーバレイ層が本来有する優れた耐摩耗性を提供することができる。したがって、本発明のすべり軸受は、耐摩耗性となじみ性とが共に優れたすべり軸を提供することができ、高周速高面圧環境下での長期的な使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示す半割り軸受の斜視図である。
図2図1のII−II線に沿う縦断側面図である。
図3】本発明における被覆層の形成方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を示す半割り軸受の斜視図であり、図2は、図1のII−II線に沿う縦断側面図である。
本発明のすべり軸受は、半円筒状をした一対の半割り軸受11,12からなり、両半割り軸受11,12の付き合わせ面11A,12Aを相互に付き合わせることで、全体として略円筒状に構成される。このすべり軸受は、両半割り軸受11,12の内周面であるしゅう動面によって相手軸(不図示)を回転自在に軸支するものである。
【0014】
本発明のすべり軸受は、裏金層13上に、軸受合金層(ライニング層)15と、樹脂と固体潤滑剤とを含有する樹脂オーバレイ層17aと、軟質金属からなる金属オーバレイ層17bがこの順に積層され、樹脂オーバレイ層17aと金属オーバレイ層17bとで被覆層17を形成している。
【0015】
裏金層13は、公知の材料から適宜選択すればよく、例えば鋼板が挙げられる。
【0016】
軸受合金層15としては、例えば、銅合金、アルミニウム合金等を挙げることができる。軸受合金層15は、特に組成を限定するものではないが、銅合金としては、25質量%以下のPb、Biの1種または2種と、10質量%以下のSnと、2質量%以下のP、Ag、In、Ni、Al等を含有する合金を好ましく使用することができる。アルミニウム合金としては、好ましくは10質量%以下のCr、Si、Mn、Sb、Sr、Fe、Ni、Mo、Ti、W、Zr、V、Cu、Mg、Zn等と、20質量%以下のSn、Pb、In、Tl、Biの1種または2種以上を含有する合金を好ましく使用することができる。
【0017】
被覆層17は、上記したように、樹脂と固体潤滑剤とを含む樹脂オーバレイ層17aと、軟質金属からなる金属オーバレイ層17bとで構成される。
【0018】
樹脂オーバレイ層17aは、軟質かつ高温で伸びの良い熱硬化性樹脂と固体潤滑剤とを含有する形態が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、これら樹脂のジイソシアネート変性樹脂・BPDA変性樹脂・スルホン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリアミドイミド樹脂やポリアミド樹脂が好ましい。
固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン(MoS)、グラファイト、BN(窒化硼素)、二硫化タングステン(WS)、PTFE(ポリテトラフルオルエチレン)、フッ素系樹脂、Pb等を挙げることができる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。グラファイトは天然、人造グラファイトのいずれでもよいが、人造グラファイトが耐摩耗性の観点から好ましい。これらの固体潤滑剤は、摩擦係数を低く、かつ安定にする作用と共に、なじみ性を有する。これらの作用を十分に発揮させるために、固体潤滑剤の平均粒径は15μm以下、特に0.2〜10μmであることが好ましい。なかでも、二硫化モリブデン、グラファイト、窒化硼素、二硫化タングステンが好ましい。
【0019】
樹脂オーバレイ層17aにおいて、固体潤滑剤および樹脂の合計を100vol%とした場合、樹脂の含有量は30〜70vol%であるのが好ましく、より好ましくは50〜70vol%である。樹脂オーバレイ層17a中、樹脂の含有量を上記範囲とすることで、固体潤滑剤が強固に保持され、より優れたなじみ性が得られる。
【0020】
樹脂オーバレイ層17aは、さらに摩擦調整剤および/または極圧剤を含有することが好ましい。極圧剤としては、ZnS、AgS、CuS、FeS、FeS、Sb、PbS、Bi、CdS等の硫黄含有金属化合物;チラウム類、モルフォリン・ジサルファイド、ジチオ酸塩、スルフィド類、スルフォキサイド類、スルフォン酸類、チオホスフィネート類、チオカーボネート類、ジチオカーボメート類、アルキルチオカルバモイル類、硫化オレフィン等の硫黄含有化合物;塩素化炭化水素等のハロゲン系化合物;ジチオリン酸亜鉛などのチオリン酸塩;チオカルバミン酸塩等の有機金属系化合物;ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルビミン酸モリブデン等の有機モリブデン化合物などを挙げることができる。また、極圧剤の平均粒径は好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。極圧剤を添加する場合は、上記固体潤滑剤の容積割合30〜70vol%のうち、0.5〜10vol%、特に1〜5vol%を極圧剤で置き換えることが好ましい。極圧剤を添加することにより、特に一時的に固体接触がおこるような不十分な潤滑条件下や片当たり等の場合においても、十分な耐摩耗性や耐焼付き性が得られる。
【0021】
摩擦調整剤としては、CrO、Fe、PbO、ZnO、CdO、Al、SiO、SnOなどの酸化物や、SiC、Siなどの化合物等を挙げることができる。摩擦調整剤を添加する場合は、上記固体潤滑剤の容積割合30〜70vol%のうち、0.3〜10vol%、特に0.5〜5vol%を摩擦調整剤で置き換えることが好ましい。摩擦調整剤を添加することにより、耐摩耗性が向上する。特に極圧剤と併用することにより、摩擦調整剤による耐摩耗性向上と、極圧剤による油の保持とが相乗的に作用して、耐摩耗性が格段と向上する。摩擦調整剤と極圧剤を併用してもよく、その場合の添加量は、両者の合計量が上記固体潤滑剤の容積割合30〜70vol%のうち、0.3〜10vol%、特に0.5〜5vol%で置き換える量であることが好ましい。
【0022】
本発明において、耐摩耗性、耐焼付き性の観点から、樹脂オーバレイ層17aの厚みは3〜9μmであることが好ましく、4〜8μmがより好ましい。樹脂オーバレイ層17aの厚みが上記範囲であると、耐摩耗性と耐焼付き性を高いレベルで両立できる。
【0023】
金属オーバレイ層17bは、公知の材料を使用することができ、例えばPb、Sn、Biを単体で、あるいは該金属とCu、In、Sb、Mn、Ni、Fe、Zr、Tl等との合金等が挙げられ、中でも本発明のすべり軸と相手軸とのなじみ性の向上の観点から、Sn、Bi、またはこれらの合金が好ましい。
【0024】
本発明において、なじみ性の観点から、金属オーバレイ層17bの厚みが1〜5μmであることが好ましく、2〜4μmがより好ましい。金属オーバレイ層17bの厚みが上記範囲であると、局部当りに対するなじみ性が特に優れる。
【0025】
また、被覆層17における樹脂オーバレイ層17aの厚みと金属オーバレイ層17bの厚みとの比率は、3〜9:1〜5であることが好ましく、4〜8:2〜4であることがより好ましい。樹脂オーバレイ層17aの厚みと金属オーバレイ層17bの厚みとの比率が上記範囲であると、なじみ性と耐摩耗性が両立できる。
【0026】
次に、本発明におけるすべり軸受の被覆層17の形成方法について、図3を参照しながら説明する。
まず、軸受合金層15をすべり軸受形状のライニングに加工した後、軸受合金層15上を脱脂処理し(ステップS1)、次いで粗面化処理する(ステップS2)。その後、樹脂および固体潤滑剤ならびに希釈剤等を混合して塗布液を調製し、該塗布液をパッド印刷、スクリーン印刷、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、タンブリング、スクイズ法、ロール法等の公知の手段により軸受合金層15上に塗布する(ステップS3)。その後、25〜140℃で乾燥し(ステップS4)、170〜280℃で0.1〜1.5時間焼成処理(ステップS5)することにより、樹脂オーバレイ層17aを設けることができる。
【0027】
続いて、形成された樹脂オーバレイ層17aの表面に対し、脱脂処理、酸活性処理を順次行い(ステップS6、ステップS7)、次いで、導電性付与処理を行う(ステップS8)。この導電性付与処理は、例えばパラジウム付着による導電化処理することにより行なうことができる。最後に、各種めっき浴を用いためっき法を適用する(ステップS9)。めっき条件としては、例えば、以下を例示することができるが、特に限定はされない。これにより、樹脂オーバレイ層17a上に金属オーバレイ層17bを設けることができる。なお、上記の各ステップはいずれも公知の手段を適宜採用することができる。
【0028】
(めっき条件:Snめっき)
硫酸第1錫:金属Sn換算として30〜100g/l
無機アンモニウム塩:50〜150g/l
有機カルボン酸:5〜50g/l
浴温:30℃
電流密度:0.5〜5A/dm
【0029】
(めっき条件:Biめっき)
メタンスルホン酸:50〜250ml/l
メタンスルホン酸Bi:50〜250ml/l
β−ナフトール:0.5〜50g/l
浴温:25℃
電流密度:0.5〜5A/dm
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0031】
<すべり軸受の作製:実施例1〜4、比較例1〜3、参考例1>
図1に示すようなすべり軸受を作成した。
ポリアミドイミド樹脂60vol%および固体潤滑剤として二硫化モリブデン40vol%にした組成物に、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)で希釈し、樹脂オーバレイ層17a形成用の塗布液を調製した。次に、裏金層13としての鋼板上に、表1に示すように、アルミニウム合金(Al−Sn−Si−Cu系合金:Al88.8質量%,Sn7質量%,Si2.7質量%,Cu1.5質量%)または銅合金(Cu−Sn−Bi系合金:Cu89質量%,Sn4質量%,Bi7質量%)からなる軸受合金層15を焼結または圧接し、半割円筒状に加工し、その軸受表面をアルコールにより脱脂した。続いて、ショットブラスト処理により脱脂表面を粗面化した。次いで、上記塗布液をエアスプレーで下記表1に記載の膜厚となるように所定の場所に吹きつけた。その後、180〜230℃で約60分間焼成(加熱硬化)させて樹脂オーバレイ層17aを形成した。
次に、形成された樹脂オーバレイ層17aの表面に対し、アルコールで脱脂処理し、塩酸水溶液に浸漬することにより酸活性処理を行った。その後、パラジウムを付着することにより導電性付与処理を行った。続いて、下記めっき浴条件にてBiまたはSnを下記表1に記載の膜厚となるように樹脂オーバレイ層17a上にめっきし、金属オーバレイ層17bを形成し、すべり軸受を作成した。
【0032】
〔めっき条件:Snめっき〕
硫酸第1錫:金属Sn換算として50g/l
無機アンモニウム塩:100g/l
有機カルボン酸:30g/l
浴温:30℃
電流密度:3A/dm
【0033】
〔めっき条件:Biめっき〕
メタンスルホン酸:100ml/l
メタンスルホン酸Bi:100ml/l
β−ナフトール:5g/l
浴温:25℃
電流密度:3A/dm
【0034】
得られた実施例1〜4、比較例1〜3、参考例1のすべり軸受について、下記の試験を行なった。結果を併せて表1に示す。
【0035】
<片当り焼付き試験>
下記に示す条件で片当り焼付き試験を行った。焼付き試験は、各すべり軸受に加える面圧を3分毎に4.3MPaずつ増加させ、相手軸との片当り角度0°および0.2°における焼付きに至った面圧を焼付面圧として測定した。
〔試験条件〕
試験機:静荷重焼付き試験機
すべり速度(相手軸の回転速度):20m/秒(8000rpm)
軸受寸法:φ48mm×軸方向長さ(w)15.5mm
軸受面圧:荷重漸増(4.3MPa/3分)
相手軸材質:S55C(焼入れ)
軸粗さ:表面粗さRzとして0.5μm
潤滑油種:5W−30SM
給油温度:80℃(常時循環)
【0036】
<摩耗試験>
下記に示す条件で摩耗試験を行った。摩耗試験は、相手軸の回転開始から回転終了までを1分間、その後静置を1分間、このサイクルを50回繰り返して行い、摩耗深さ(μm)を測定した。ただし、回転開始から1200rpmまでの到達時間を4〜6秒間に制御した。
〔試験条件〕
試験機:片荷重試験機
すべり速度(相手軸の回転速度):0〜3.5m/秒(1200rpm)
軸受寸法:φ42mm×軸方向長さ(w)17mm
軸受面圧:5.6MPa
相手軸材質:S55C(焼入れ)
軸粗さ:表面粗さRzとして0.5μm
潤滑油種:0W−20SM
給油温度:80℃(常時循環)
試験時間:100時間
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果から、本発明の実施例1〜4は、片当り焼付け試験および摩耗試験共に良好な値を示し、なじみ性、耐焼付き性および耐摩耗性をすべて満足することがわかった。
これに対し、被覆層として金属オーバレイ層を形成せず、樹脂オーバレイ層のみを形成した比較例1は、片当り角度0°(すなわち、相手軸との片当りなし)に比べて片当り角度0.2°の焼付き面圧が46.2MPa低く、なじみ性に劣っていた。また、被覆層として樹脂オーバレイ層を形成せず、金属オーバレイ層のみを形成した比較例2および比較例3は、なじみ性は良好だが、摩耗深さが12μm以上と耐摩耗性に劣っていた。
【符号の説明】
【0039】
11,12 半割り軸受
13 裏金層
15 軸受合金層(ライニング層)
17 被覆層
17a 樹脂オーバレイ層
17b 金属オーバレイ層
図1
図2
図3