(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859077
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】ステアリングストッパおよびステアリングストッパを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20160128BHJP
B62D 5/087 20060101ALI20160128BHJP
B62D 1/16 20060101ALI20160128BHJP
B62D 6/00 20060101ALN20160128BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20160128BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20160128BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D5/087
B62D1/16
!B62D6/00
B62D113:00
B62D119:00
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-169983(P2014-169983)
(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公開番号】特開2015-40044(P2015-40044A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】10 2013 014 135.4
(32)【優先日】2013年8月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネーグル、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】プファイファー、ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、ティロ
(72)【発明者】
【氏名】クリンガー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ザツケ、アンネ
【審査官】
重田 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−285045(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0855326(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
B62D 1/16
B62D 5/087
B62D 6/00
B62D 113/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアバイワイア式ステアリングシステムを備えた車両用のステアリングストッパであって、ステアリングホイールといった操舵桿(10)と、車両に固定して配置可能な制止台(40)および制止材(30)と、の接続をするためのステアリングシャフト(11)を有し、前記制止台(40)の制止域(42)と前記ステアリングシャフト(11)に連なる制止部(12)との間の間隙(22)内に、駆動装置(35)によって前記制止材(30)が挿入可能となっているステアリングストッパにおいて、
前記制止材(30)は、制止位置において、前記制止材(30)と前記制止部(12)との間の摩擦力によって、そして前記制止材(30)と前記制止域(42)との摩擦力によって、前記制止台(40)に対する前記ステアリングシャフト(11)の回転運動を制止するように設けられており、
制止材(30)が、
回転の制止の際にステアリングシャフト(11)のトルクによって制止材(30)に径方向力が生じ、保持トルクが前記ステアリングシャフト(11)に生じるトルクよりも相応に大きくなるように構成されていること
を特徴とするステアリングストッパ。
【請求項2】
制止材(30)用の駆動方向(z)を備えた駆動装置(35)が設けられており、前記駆動方向(z)は実質的にステアリングシャフト(11)の軸方向に相当すること
を特徴とする請求項1に記載のステアリングストッパ。
【請求項3】
ステアリングシャフト(11)の制止部(12)および制止台(40)の制止域(42)が部分円筒形状および/または部分円錐形状を有しており、制止材(30)が、径方向に突っ張る力により前記ステアリングシャフト(11)の回転の制止を行うように設けられていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のステアリングストッパ。
【請求項4】
制止材(30)が、制止部(12)と制止域(42)との間の間隙(22)へ挿入可能となっていて、ステアリングシャフト(11)の回転が第1の方向のときには制止力が増加するように作用し、第1の方向と逆の方向のときには制止力が低下するように作用すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のステアリングストッパ。
【請求項5】
ステアリングシャフト(11)の制止部(12)および/または制止台(40)の制止域(42)が部分円錐形状を有し、制止材(30)の円錐角(β)は、前記ステアリングシャフト(11)の前記制止部(12)および前記制止台(40)の前記制止域(42)のテーパ角(γ,δ)の合計に相当すること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のステアリングストッパ。
【請求項6】
制止材(30)が楕円状の断面を有し、とりわけその軸方向におけるステアリングシャフト(11)および制止台(40)との係合用の断面がいずれも楕円状の断面となっていること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のステアリングストッパ。
【請求項7】
挿入角(α)が、制止部(12)と制止域(42)との間の間隙(22)の接線方向に対する、楕円状の制止材(30)の断面長径のねじれとして定義され、前記制止材(30)が、制止作用の発生のために少なくとも3°または6°の挿入角(α)で前記間隙内に挿入されるようにステアリングストッパが構成されていること
を特徴とする請求項6に記載のステアリングストッパ。
【請求項8】
制止材(30)が、ステアリングシャフト(11)周りに複数配置されていて、間隙(22)内へと同時に挿入可能となっていること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のステアリングストッパ。
【請求項9】
ステアリングストッパを動作させるための方法において、ステアリングシャフト(11)の回転量が連続的にまたは短い間隔で繰り返し測定されて、回転量が事前に定められた最大許容量に達するときに、前記ステアリングシャフト(11)と制止台(40)またはそれに連なる構成部材との間の間隙(22)へと制止材(30)が挿入されて、摩擦力によりステアリングの制止が行われ、この制止の際にステアリングシャフト(11)のトルクによって制止材(30)に径方向力が生じ、保持トルクが前記ステアリングシャフト(11)に生じるトルクよりも相応に大きくなること
を特徴とするステアリングストッパを動作させるための方法。
【請求項10】
運転者によりステアリングシャフト(11)に加えられるトルク、および/または制止材(30)が間隙(22)へと挿入された時点におけるステアリングシャフト(11)の回転角度が、連続的にまたは事前に定められた時間間隔で測定され、ステアリングシャフト(11)の回転角度が最大値に対して減少したとき、および/またはステアリングシャフト(11)の回転角が減少する方向にトルクが作用したとき、制止材(30)を間隙(22)から引き抜くような牽引力を制止材(30)に作用させること
を特徴とする請求項9に記載のステアリングストッパを動作させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無軌条車両におけるステアバイワイヤ式ステアリングに用いられる請求項1の前提部に係るステアリングストッパ、およびそれに適した方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステアバイワイヤ式ステアリングにおいては、ステアリングホイールと操舵対象の車輪との間には直接的な機械連結が成されていない。その代わりに、センサによってステアリングホイールのステアリング角度、および/または回転速度、および/または加えられるトルクが測定され、そしてアクチュエータによって車輪が適切に旋回される。
【0003】
そのためステアバイワイヤ式ステアリングでは、ステアリングホイールによる運転者のステアリング角の入力と、実際に車輪が成している旋回角と、の間の直接的なフィードバックが行われない。そのため、ステアリング機構が大きく転向を行っていて既にストッパのかかった状態にあるのかどうかについてのフィードバックを運転者は得られない。ステアリングホイールが自由に回転できるままにされていると、ステアリング機構の設定可能範囲に関わりなくステアリング角が際限なしに増大する。この種の構成は特許文献1や特許文献2で知られており、これらの文献においてはステアリングストッパの動力伝達機構として、形状的な噛み合いを伴う手段を用いることが想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008045195号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102009053226号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、車輪の旋回が最大許容限度に達した際に、使用者が触覚的フィードバック(手応え)を得られる、ステアバイワイヤ採用時のステアリングストッパを提供することである。ここで、特に考慮されるべきなのは、種々の走行条件下においては、様々な車輪最大旋回角や、ステアリングホイール位置の車輪旋回角に対する様々な伝達比が要求され得るということである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こうした課題は、請求項1に記載の特徴および請求項
9に係る方法により解決される。より好適な形態は従属請求項より明らかになる。
【0007】
ステアバイワイヤ式ステアリングシステムを備えた車両用のステアリングストッパにおいて、操舵桿、特にステアリングホイールと、車両に固定して配置可能な制止台および制止材と、の接続をするためのステアリングシャフトを備え、前記制止台の制止域と前記ステアリングシャフトに連結された制止部との間の間隙内に、駆動装置によって前記制止材が挿入可能なようにする。ここで、前記制止材を、制止位置において、一方では前記制止材と前記制止部との間の摩擦力によって、他方では前記制止材と前記制止部および/または前記制止域との摩擦力によって、前記制止台に対する前記ステアリングシャフトの回転運動を妨げるように設ける。特に、制御装置によって、駆動装置に所望の動作を行わせ得るようにして、必要時にステアリングシャフトの回転を制止すること、あるいは許可することを可能とする。この必要時というのは特にステアリングホイールが仮想上の停止位置に達したときであり、車輪が最大限に旋回していたり、駐車状態であったりして、ステアリングホイールのロックが必要と想定されるときの、ステアリングホイールの制止を運転者に知らせるのである。
【0008】
ステアバイワイヤ式のステアリング機構においては、ステアリングシャフトは、機械的にも液圧的にも、車輪旋回角設定用の構成部材、例えばタイロッドへと、変速装置部やその類のものを介して接続されていない。というよりは、ステアリングシャフトの回転は電気的信号に変換され、この信号に基づき車輪の旋回が行われるのである。
【0009】
特に、制止材用の移動方向が用意されており、これは実質的にステアリングシャフトの軸方向に相当する。詳しくは後述するが、制止材が円錐状である場合には、「実質的に軸方向に相当する」というのは「円錐角の範囲内にある」ということだと理解されたい。制止材の移動方向が制止力の方向とは別方向となっていることにより、制止材の駆動装置を小さい寸法とすることができる。格別には、これらの方向は互いに直交したものとされる。具体的には、後述の制止係合を伴うステアリングシャフト軸方向への制止材の動きにより、ステアリングシャフト回転の接線方向の力は径方向力に変換され、この径方向力は、摩擦力によって、ステアリングシャフトの更なる回転に反して作用する接線方向の力を生ずる。
【0010】
好ましくは、ステアリングシャフトの制止部および制止台の制止域はそれぞれ、部分円筒形状および/または部分円錐形状を有する。こうすることにより、制止材との接触を線接触とすることができる。
【0011】
特に、ステアリングシャフトの制止部と制止台の制止域が部分円錐形状を有し、制止材の円錐角が、ステアリングシャフトの制止部のテーパ角と、制止台の制止域のテーパ角との合計に相当するようにすることで、接触する構成部材がそれぞれ線接触をするようにできる。制止材の円錐状部は45°を越えることはなく、好ましくは30°以下であり、格別には20°を下回るようにされる。
【0012】
より好ましくは、制止材が楕円状の断面を有するとよく、特にステアリングシャフトおよび制止台との係合が意図されている断面のいずれもが楕円状の断面となっているとよい。特に、本発明の枠組内において、楕円状というのは角のない断面形状であり、中心点を通って延びる互いに直交する二つの径の寸法により様々な寸法となり得るものである。このようにすると、幾何学的に、(ステアリングシャフトの径方向に関して)径方向の占有範囲が、ねじれ角に応じて変化することになり、ねじれにより制止力を決めることが可能となる。
【0013】
格別には、挿入角が、楕円状制止材の断面長径の、ステアリングシャフトと制止台との間の間隙の接線方向に対するねじれとして定義され、制止作用の発生のために制止材が少なくとも3°、好ましくは少なくとも10°の挿入角で前記間隙内に挿入されるように、ステアリングストッパが構成される。このようにわずかにねじれた姿勢とすることによって、回転方向に反する制止作用が挿入の時点で既に始まっていることとなり、制止材が例えば20°の制止角度姿勢を取り得る場合、挿入に際しての角度姿勢まで戻される。制止材が挿入角度まで戻されると、制止作用はもはや無くなっており、つまりは量的により小さな角度姿勢で容易に間隔あるいは間隙から制止材を引き抜くことができるのである。挿入時のねじれが加えられない場合には、回転運動が始まったら直ぐに、制止材が負の挿入角度姿勢をとった制止位置に至るということもありうる。
【0014】
さらに、回転の制止の際にステアリングシャフトのトルクによって制止材に径方向力が生じ、保持トルクがステアリングシャフト上に生じるトルクよりも相応に大きくなるように制止材が構成されるとよい。保持トルクは式R=i*Nに従う摩擦力Rによってもたらされる。ここでNは径方向の制止力であり、iは摩擦係数であり、この摩擦力Rによって、ステアリングシャフトの径をてこの腕として保持トルクが生じる。この保持トルクは、力の伝導により、運転者がステアリングホイールに加えるトルクよりも大きい。こうして、どのような場合にもステアリングストッパが制止を行うことが可能となる。
【0015】
格別には、制止材が、ステアリングシャフト周りに複数配置されていて、同時に間隙内へと挿入可能となっている。このようにすると、ステアリングシャフトにかかる力が対称となり、ステアリングシャフトの軸受けが容易かつ低コストに可能となる。
【0016】
ステアリングストッパを動作させるための方法については、ステアリングシャフトの回転量が連続的にまたは短い間隔で繰り返し測定されて、回転量が事前に定められた最大許容量に達するときに、ステアリングシャフトと制止台またはそれに接続された構成部材との間の間隙へと制止材が挿入されるようにし、このようにしてステアリングの制止を行う。
【0017】
好ましくは、運転者によりステアリングシャフトに加えられるトルク、および/または制止材が間隙へと挿入された時点におけるステアリングシャフトの回転角度が、連続的にまたは事前に定められた時間間隔で測定され、最大値に対するステアリングシャフトの回転角度の減少があったとき、および/またはステアリングシャフトの回転角の減少方向へとステアリングシャフトのトルクが作用したときに、制止材を間隙から引き抜くような牽引力を制止材に作用させるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下に、好ましい実施形態を図面に基づき説明する。
【
図1】ステアリングストッパの概略的構造を無軌条車両の被操舵車輪の領域と共に示す図。
【
図2】ステアリングシャフトのA−A断面を制止材と共に示す図。
【
図3】挿入動作の終了近くでの制止材の姿勢およびそれにより発生する制止の様子を示す図。
【
図4】間隙に挿入され制止を行っている制止材を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は操舵桿10あるいは特にステアリングホイール10を示しており、これはステアリングシャフト11に接続されている。このステアリングシャフト11は制止台40に囲まれて設けられている。この制止台40はステアリングシャフト11をステアリングホイール10に至るまで完全に取り囲むようにしてもよいし、あるいは部分的にのみ設けるようにしてもよい。これは特に、少なくとも部分的には取り囲んで閉鎖し、高い剛性を備えるものとする。
【0020】
主に制止材30によって、所望の制止効果が生じる。この制止材30は楕円状の断面を有する。これは軸方向長さにわたって一様な断面となっていてもよいし、軸方向長さにかけて先細りするようになっていてもよい。制止材30の軸方向は、好ましくはステアリングシャフト11の軸方向に相当するようになっており、これらは平行に配置される。制止材30は自動式駆動装置35によってその軸方向zつまりステアリングシャフト11の軸方向に一致する方向に動かされ、この方向において自動制御式に変位することができる。
【0021】
ステアリングシャフト11は、制止材30との係合を行うことが可能な制止部12を備えている。この制止部12は、ステアリングシャフト11自体の一部、またはステアリングシャフト11に固定された環状体もしくはその他のもの、例えばフランジ状の付加部品、の一部であるとよく、また、ステアリングシャフト11に対して耐トルク的に取り付けられる部品、例えば自在継手を介するもの、であってもよい。
図1の図示においては、制止部12は、ステアリングホイール10とは反対側のステアリングシャフト11の端部にある。これは径方向に突き出る周縁フランジ上に配置してもよい。制止部12には、制止材30に向かう方向においてその直径が減少していくような面取り部が約15°の角度δで設けられている。好適な実施形態においては、面取り部のテーパ角度δは少なくとも3°で、好ましくは少なくとも10°である。角度δは、最大でも35°であり、大きくとも20°とするのが好ましい。
【0022】
制止台40は、十分な強度の材料から製作される。これはステアリングシャフト11を取り囲む筐体として実装されてもよい。これは例えば、十分に繊維強化した(アルミニウム)ダイキャストまたは合成素材で製造される。ここで、その強度はステアリングシャフト11の長さ全体にわたって等しくすべきというわけではなく、とりわけ制止域42を取り囲む領域においては、強度の高くなった領域が必要とされる。制止域42には、制止材30に向かう方向において広がってゆくような、ステアリングシャフト11の制止部12の角度δに相当するテーパ角度γの面取り部が設けられているとよい。
【0023】
制止材30は円錐状に製作されており、その円錐角(
図5参照)は制止部12の角度δと制止域42の角度γとの合計に相当する。
図1において制止材30が下方からステアリングシャフト11と制止台40との間の間隙22へと押し込まれると、それによって、制止材30に関して、制止部12および制止域42がそれぞれ線接触をするようになる。
【0024】
制止材30の駆動装置35はサーボモータや電磁石を含んでいるとよい。駆動装置35は車両あるいは制止台40に固定して配置される。制止材30は、アクチュエータ35によって自身の軸方向の軸z周りで回転可能に設けられる。さらに、この軸方向に、弾性的な軸受け緩衝装置が設けられるとよい。その移動経路には引き抜き位置あるいは解除位置が含まれており、制止材30がステアリングシャフト11と制止台40との間の間隙22から引き抜かれると、制止材30とステアリングシャフト11またはブロック台40もしくはその両者が接触しないようにできる。さらに、制止材30には制止位置が用意されている。
【0025】
図1に関して、車輪110の旋回を調節するための液圧機構を含むステアリング伝動装置が設けられている。実施形態の別例においては、例えば電気式駆動装置を用いてもよい。液圧機構には液圧ポンプ124や、電気式制御装置100で制御可能な三方向制御弁130が組み込まれており、液体の流れをステアリングシリンダ111へ届けられるようになっている。ステアリングピストン118は必要に応じてステアリングシリンダ111の内部を両方向に移動することができる。ステアリングピストン118は両面にてそれぞれピストンロッド114に接続されており、ピストンロッド114はその端部にタイロッド112が連結されており、タイロッド112にはそれぞれ対応する車輪110が接続されている。こうしたステアリングピストン118の位置によって操舵角あるいは車輪110の車輪旋回角を調節できるようになっている。車輪110を左向きに旋回させたいときには、制御装置100は三方向制御弁130を
図1中に示す左側の切替位置へと切り替えて、液体がポンプ124よりステアリングシリンダ111の右方室へ届けられ、こうして車輪旋回が行われる。車輪旋回を逆向きとするにあたっては、制御弁130を逆側の切り替え位置へと動かして、ステアリングシリンダ111の左方室に液体を送り込む。
【0026】
図2は
図1のA−A断面を示しており、制止材30はその長径を間隔あるいは間隙22の接線方向へ向けている。
【0027】
通常の走行動作中には、制止材30は制止部12および制止域42から遠隔の位置に保たれており、接触が発生し得ないようになっている。走行動作中においては、ステアリングホイール10の角度がトルクセンサと回転角度センサを組み合わせたもの20によって測定される。測定結果に基づいてステアリングシリンダ111が制御され、車輪操舵角が調節される。制止位置へと到達させるためには、制止材30によるステアリングシャフト11の制止部12への接触が発生するぐらいまで深くへ、テーパ状の間隙22(
図1参照)へと制止材30を押し込む。
【0028】
本発明の本実施形態例においては、操舵量−車輪旋回量の比は2.5:1とする。つまり、ステアリングホイール10の中立位置からの回転角について、一方の方向における操舵据え切り角の一つを+900°とし、他方の方向におけるもう一つの操舵据え切り角は−900°とするとよい。トルクセンサおよび回転角センサ20はそれぞれステアリングホイール10の状態を測定し、その結果を制御器100へ発信する。
【0029】
検出されたステアリングホイール回転角度が操舵据え切り角+900°または−900°に達したら直ちに、制御器100によってアクチュエータ35を起動して、制止材30を間隙22へと動かす。断面短軸がステアリングシャフト11の径方向に延びている場合を、挿入角が0°であると定義する。この0°の挿入角に対して、制止材30は例えば8°のねじれを持って挿入される。
図3は制止材30がステアリングシャフト11へ最初に接触した時点での様子を示している。ここでは、ステアリングシャフト11の回転は反時計回り(
図3の矢印参照)で、正の挿入角が用いられている。ステアリングシャフト11と制止材30との間の摩擦力により、制止材30は、制止域42の内径と接触するまで、角度αをより大きくする方向へと回転させられる。ステアリングシャフト11が同じ方向へさらに大きく回転しようとすると、実質的には径方向に法線力Nが発生する。摩擦力RはR=μ*Nに従い、ここでμは物質の組み合わせによって決まる摩擦係数である。摩擦力Rは発生する制止トルクの大きさを決める。これにより、図示の方向(
図3)でのステアリングシャフト11の更なる回転が妨げられる。
【0030】
制止が行われている状態であるとき、ステアリングホイール10に加えられるトルクや、あるいは逆方向への回転を、トルクセンサと回転角度センサを組み合わせたもの20によって検出する。トルクが事前に定められた閾値を下回ると直ちに、アクチュエータ35の制御装置100が動作させられ、間隔あるいは間隙22から制止材30が引き抜かれる。アクチュエータ35の前述の動作は、これに加えて且つ/またはこれに代えて、ステアリングシャフト11の回転角に応じて行われるようにしてもよい。
【0031】
制止材30が完全に、あるいは少なくとも十分な程度まで遠ざかった後は、制止材30が関わることなく、通常のステアリング操作が行えるようになる。
【0032】
状況によっては、操舵量−車輪旋回量の比を別のものとすることが望まれることもある。例えば、車両がスポーティな走行モードを有することがある。スポーティな走りにおいては、操舵量に対してステアリングがより敏感に反応するべきである。そこで、この場合には操舵据え切り角のそれぞれを1.5回転とする、つまり+/−540°を最大の車輪旋回量と対応させる。クロスカントリー用の走行モードについては、修正した最大車輪旋回量を前もって設定しておくとよい。車輪110の径が変化したとき(例えば夏場用または冬場用タイヤ使用時など)についても、修正した最大車輪旋回角を前もって設定しておくとよい。さらに、車両の制御システムによる速度に応じた車輪の最大許容旋回角を前もって設定しておくのもよい。こうした場合には、ステアリングホイール10の最大操舵量について、変化したフィードバックを運転者が得られるようにするのが望ましい。
【0033】
こうした場合には、制御器100は、トルクセンサおよび回転角センサ20で測定される操舵量がより少ない時点で、制止材30を動作位置、つまり制止位置へと動かして、変更された最大操舵量と共に変更された制止動作が得られるようにする。
【0034】
車両が駆動停止する際には、制止材30を間隙22へと完全に入るよう移動させることで、ステアリングホイールのロックを行うことができる。こうして、ステアリングホイール11の最大許容回転量は、挿入角αの正負値の範囲に応じて制限される。好ましくは、挿入角αが0°のときにステアリングホイール10の回転範囲が最小になるようにするとよい。
【0035】
図5には、実施形態の別例が示されており、楕円状の制止材30は説明してきたような錐台状になっている。そしてステアリングシャフト11および制止台40の対応する接触面は円筒状である。このため錐台には高い面圧が生じることになるが、この実施形態によれば、制止材30へのステアリングシャフト11の回転の伝達が改善され、より良く制止を行えるという利点がある。
図5は、2つの制止材を備えた更なる変形例を示している。この数はもっと多くしてもよく、また好ましくはステアリングシャフト11周りを取り囲むよう均一に配置するのがよく、そうするとこれらはステアリングシャフト11からの径方向の力を互いに打ち消し合うようになる。
【0036】
別々の実施形態の特徴を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 操舵桿、特にステアリングホイール
11 ステアリングシャフト
12 制止部、特に面取り部
20 トルクセンサと回転角度センサを組み合わせたもの
22 間隔、隙間
30 制止材
35 駆動装置、アクチュエータ
40 制止台、特に筐体
42 制止域、特に面取り部
100 制御器
110 車輪
111 ステアリングシリンダ
112 タイロッド
114 ピストンロッド
118 ステアリングピストン
124 液圧ポンプ
130 三方向制御弁
z 軸方向