(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1乃至特許文献10に記載の装置、方法では、汚染空気の遮蔽方法として遮蔽カーテンや遮蔽シート、防音壁などを用いている。しかし、上記特許文献に記載の装置、方法の場合、基本的に、トンネル内の所定位置に固定的に設置される。そのため、掘削が進むと、かかる装置を取り外し、新たな位置に再度、固定設置する必要がある。
【0006】
また、切羽側の空気が換気により清浄になった場合、すぐに作業を行うために、出来るだけ早く工事機械が出入りできる状況を確保したいという現場の要求がある。さらに、遮蔽をしていない状態では、測量作業等のために、坑口側から切羽側が極力見通せる必要がある。
【0007】
以上のような課題があるが、従来の装置、方法の場合、固定設置が原則であることから、装置の取り外し、固定設置のたびに手間および時間を要してしまう。また従来の装置、方法では固定設置が原則であるため、移動可能とすることは困難である。仮に移動可能とした場合、高い遮蔽効果を発揮することが出来ない。さらに、遮蔽と開口とを容易に行える必要があるが、従来の装置、方法ではそれを行うことが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑み、切羽封じ込め装置を発明した。
【0009】
第1の発明は、排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する切羽封じ込め装置であって、袋体により形成されるバルーンと、前記バルーンが設置される門形状のバルーン台車と、を有しており、前記バルーンの前記袋体への空気の流入、流出により膨張、収縮を制御し、前記バルーンが膨らんだ状態において、前記バルーンが、前記トンネル内に設置される排気管と、前記トンネルの天井壁面および内壁側面とに密着することで、前記トンネルの天井部、側面部および中心付近の開口部を閉塞し、前記バルーン台車に設置された移動手段によって、前記バルーン台車が移動可能である、切羽封じ込め装置である。
【0010】
本発明の構成の切羽封じ込め装置では、各バルーンに空気を流入、流出させることでバルーンによる閉塞状態を制御しているので、閉塞状態、開放状態の制御が容易となる。そのため、バルーンを収縮すれば、トンネルの中心付近を車両が通行可能となり、工事機械や車両の出入りを行うことが出来る。また、前方への見通しが確保でき、トンネル工事における測量作業の支障にもならない。さらに、本発明では、バルーンを用いることから軽量化を図ることも出来る。その結果、バルーンを設置したバルーン台車を移動可能とすることも出来る。
【0011】
上述の発明において、
前記バルーンは、前記トンネルの側面部に配置されて該トンネル内壁側面と密着する側部袋体と、前記トンネルの中心部に配置されて前記開口部を開閉する扉部袋体とを備えており、前記トンネルの天井付近には、切羽と前記切羽封じ込め装置との間に空気を送り込む送気管がさらに設置されており、前記送気管からの送気量よりも前記排気管による排気量が多い、切羽封じ込め装置のように構成することもできる。
【0012】
切羽側に送気管を設置して送気することで新鮮な空気を切羽側に供給することができる。その結果、切羽と切羽封じ込め装置との間の汚染空気の排出をより迅速に行うことが出来る。また、出願人の実験によれば、切羽と切羽封じ込め装置との間の空間を負圧にした場合、切羽封じ込め装置で開口部を形成した状態であっても、トンネル断面の全面を閉塞した状態と同様の換気効果があることが判明した。その結果、本発明のように、切羽と切羽封じ込め装置との間の空間を負圧とすることで、切羽封じ込め装置に開口部を形成したまま集塵作業を行うことが出来る。これにより、集塵作業と車両の通行、すなわち工事での作業とを両立することが可能となる。
【0013】
上述の発明において、前記切羽封じ込め装置は、前記トンネルの内壁側面またはセントルに設置した支持部材にレールを設置し、前記レール上を前記移動手段が移動することで、前記バルーン台車の設置位置が変更可能である、切羽封じ込め装置のように構成することもできる。
【0014】
本発明のように構成することで、トンネルの床面の掘削仕上げを行う前、行っている状態でもレールを先行設置し、切羽封じ込め装置を用いることが可能となる。
【0015】
また、トンネル工事の換気方法としては、以下のように構成することができる。すなわち、排気管が設置されたトンネル工事における汚染空気の拡散を防止する換気方法であって、
複数の袋体により形成されるバルーンと、前記バルーンが設置される門形状のバルーン台車と、を備えた切羽封じ込め装置を前記トンネル内に設置し、前記バルーンに空気を流入させることで、前記バルーンを、前記トンネルの天井壁面および内壁側面に密着させるまで膨張させて前記トンネルの
天井壁面および
内壁側面とに密着
させることで、前記トンネルの天井部
、側面部および中心付近の開口部を閉塞し、
さらに、前記バルーンを形成する複数の袋体のうちの前記開口部を閉塞している袋体の空気を排出させ、前記トンネルの中心部付近に前記開口部を形成し、前記切羽封じ込め装置または前記切羽封じ込め装置よりも切羽側に設置された排気管で前記汚染空気の集塵を行う、換気方法とすることができる。
【0016】
このような換気方法を用いることで、トンネル工事の工事機械や車両、作業員が出入りするトンネル中心付近を開放状態に維持したまま、集塵作業を行うことも出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、閉塞状態、開放状態の制御が容易な切羽封じ込め装置が可能となる。この切羽封じ込め装置ではバルーンを用いて閉塞状態を制御しているので、開口部のバルーンを収縮すれば、トンネルの中心付近を車両が通行可能となり、工事機械や車両の出入りを行うことが出来る。また、すべてのバルーンを収縮すれば、前方への見通しが確保でき、トンネル工事における測量作業の支障にもならない。さらに、バルーンを用いることから軽量化を図ることも出来るので、その結果、バルーンを設置したバルーン台車を移動可能とすることも出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の切羽封じ込め装置1は、主に、バルーン台車2、車輪受け部3、バルーン4、保持棒5を備えている。切羽封じ込め装置1の正面図を
図1に示す。
【0020】
バルーン台車2を
図2乃至
図4に示す。
図2はバルーン台車2の正面図である。
図3はバルーン台車2の側面図である。
図4はバルーン台車2の上面図である。バルーン台車2は、トンネル内部に設置する部材であって、左右の支柱部21、22、および左右の支柱部21、22の上方とそれぞれ接合する水平部23とにより、門形状が形成されている。左右の支柱部21、22、水平部23の構造は、
図1ではトラス構造の場合を示したが、さまざまな構造を採ることができ、バルーン4を支持することが出来る構造であれば如何なる構造であっても良い。
【0021】
バルーン台車2の水平部23の下方において、左右にわたりカーテンレール26が設置されており、そのカーテンレール26には、カーテンレール26上を左右に移動可能な複数の滑車27が取り付けられている。この滑車27に、後述する左側バルーン43および右側バルーン42が取り付けられることで、左側バルーン43、右側バルーン42が、カーテンレール26に沿って左右に移動可能となる。またバルーン台車2の水平部23の横断面は凹字形状をしており、その底面は鋼材がはしご状に接合している。後述するアーチバルーン41が収縮した場合に、凹字の窪み部分(水平部23の底面上)に収容される。
【0022】
バルーン台車2の幅は、トンネル内に設置できる幅であって、バルーン台車2に後述する右側バルーン42および左側バルーン43を取り付け、膨らませた状態において、右側バルーン42、左側バルーン43がそれぞれトンネルの内壁側面Wsと密着可能な幅である。また、水平部23の位置は、アーチバルーン41を水平部23の底面に設置し、アーチバルーン41を膨らませた状態においてトンネルの天井壁面Wuに密着可能な位置になっている。
【0023】
バルーン台車2の右支柱部21、左支柱部22の底面には車輪25が設けられており、バルーン台車2をトンネルに対して前後方向に移動可能としている。なお車輪25の個数には制限がないが、好ましくは右支柱部21、左支柱部22の前後方向にそれぞれ一つずつ、合計2個ずつが一例としてある。
【0024】
バルーン台車2は、トンネル内の床面(地面など)に設置された車輪受け部3上に車輪25を介して設置される。
図5に車輪受け部3の一例を示す。
【0025】
図5では、車輪受け部3として溝形鋼であるレール32を用いた場合である。レール32の溝に沿って車輪25が移動することで、バルーン台車2は車輪受け部3上を移動可能となる。そのため、レール32の溝は、車輪25の幅よりも広い必要がある。
【0026】
車輪受け部3の長手方向の長さは、バルーン台車2の右支柱部21、左支柱部22の前後の車輪25の間隔よりも長くなっていることが必要であり、好ましくは、2倍以上あるとよい。
【0027】
なお上述ではバルーン台車2には車輪25が設けられた場合を説明したが、車輪25以外の移動手段を用いても良い。たとえば無限軌道を用いても良い。また、コロを配置して移動手段としても良い。
【0028】
バルーン4は、バルーン台車2に設置される。バルーン4は、好ましくは右側バルーン42、左側バルーン43、アーチバルーン41からなるが、本発明は、これに限定されるものではない。バルーン4は、空気をその内部に流入させることにより膨張させ、各バルーン4がトンネルの内壁側面Wsと天井壁面Wuと密着しトンネルを閉塞させることで切羽と坑口との空間を区切る一方、空気をその内部から流出させることにより収縮させ、内壁側面Wsと天井壁面Wuから離間すると、切羽と坑口との空間が連通する役割を果たす。
【0029】
図6に切羽封じ込め装置1と各バルーン4との関係を模式的に示す。
図6(a)がバルーン台車2および車輪受け部3の正面図、
図6(b)が右側バルーン42の正面図、
図6(c)が左側バルーン43の正面図、
図6(d)がアーチバルーン41の正面図、
図6(e)が各バルーン4をバルーン台車2に取り付けた状態(バルーン4が収縮した状態)を示す図である。
【0030】
右側バルーン42、左側バルーン43は、縦長の袋体が左右方向に複数連結しており、各袋体の連結部の所定箇所に設けられた通気孔を介して連通している。従って、この通気孔を通じて隣接する袋体同士で空気の行き来が可能となる。また右側バルーン42、左側バルーン43の上方先端部付近には、複数のハトメ420、430がそれぞれ設けられている。このハトメ420、430に、カーテンレール26上の滑車27に取り付けられたフック体を吊下することで、右側バルーン42、左側バルーン43がそれぞれ、カーテンレール26に沿って左右方向に移動可能となる。このように、右側バルーン42、左側バルーン43の2つのバルーン4を用いる場合には、各バルーン42、43の横方向の長さは、各バルーン42、43に空気を充填させた状態において、外側の端部がトンネルの内壁側面Wsに密接する大きさであることが好ましい。また各バルーン42、43の高さは、各バルーン42、43に空気を充填させた状態において、トンネルの床面からカーテンレール26に到達し、アーチバルーン41が膨らんだ状態において、アーチバルーン41の下面と密着する程度の高さであることが好ましい。また、右側バルーン42、左側バルーン43は、空気を充填させた状態において、トンネルの内壁側面Wsに密着することから、右側バルーン42、左側バルーン43のトンネル中心側に位置する袋体よりも、トンネルの内壁側面Ws側に位置する袋体の高さが低くなっていても良い。
【0031】
なお右側バルーン42、左側バルーン43はさらに扉部の袋体422、432と側部の袋体421、431とに分かれており、ファスナー423、433で仕切られている。ここで側部の袋体421、431は、右側バルーン42、左側バルーン43のうち、トンネル内壁側面Wsから所定数の袋体である。一方、扉部の袋体422、432は、右側バルーン42、左側バルーン43のうち、側部の袋体421、431以外の袋体であって、トンネルの中心方向に位置する袋体である。
図7に右側バルーン42、左側バルーン43、アーチバルーン41のそれぞれに空気を充填させた状態の切羽封じ込め装置1を示す。
【0032】
図8にバルーン42、43の拡大図を示す。
図8(a)は左側バルーン43の拡大図であり、
図8(b)は右側バルーン42の拡大図である。なお、左側バルーン43と右側バルーン42は左右対称で同じ構造であることが好ましい。右側バルーン42、左側バルーン43の扉部の袋体422、432と側部の袋体421、431とは、その境目の連結部分がファスナー423、433にて仕切られているので、仕切ファスナー423、433を閉じると、扉部の袋体422、432と側部の袋体421、431との間で空気の流通が遮断される。また仕切ファスナー423、433を開くと、扉部の袋体422、432と側部の袋体421、431との間で空気の流通が可能となる。
【0033】
側部の袋体421、431、扉部の袋体422、432の所定箇所には、空気を流出させるための開口部が設けられており、開口部はファスナー424、425、434、435で開閉が可能である。
図8(a)に示す左側バルーン43では、仕切ファスナー433を閉めた状態で、扉部ファスナー435を開けると、左側バルーン43のうち、扉部の袋体432の空気のみが流出し、側部の袋体431は空気が充填された状態を維持することが出来る。また側部ファスナー434を開けると、側部の袋体431の空気を流出させることも出来る。なお左側バルーンのみならず右側バルーン42にも、仕切ファスナー423、側部ファスナー424、扉部ファスナー425が備えられ、同様の機能を果たす。
【0034】
このように開口部を、ファスナー424、425、434、435を用いて空気の流出を制御することで、側部の袋体421,431、扉部の袋体422、432を収縮させる場合には、迅速に空気を流出させることが出来る。なお、ファスナー424、425、434、435の代わりに、開口部に蓋材を面ファスナーで固定、取り外しすることで空気の流出を制御しても良い。
【0035】
側部ファスナー424、434、扉部ファスナー425、435は、各袋体のそれぞれに設けられていても良いし、側部の袋体421、431、扉部の袋体422、432に一つずつ、あるいは複数ずつ設けられていても良い。
【0036】
このような右側バルーン42、左側バルーン43をバルーン台車2に取り付けることで、側部の袋体421、431、扉部の袋体422、432のそれぞれに空気を充填させ、かつカーテンレール26上を右側バルーン42、左側バルーン43をそれぞれ移動させ、密着させることで、
図7に示すように、切羽と坑口との間の空間を区切ることが出来る。
【0037】
また、右側バルーン42、左側バルーン43の仕切ファスナー423、433を閉め、扉部ファスナー425、435を開けることで、扉部の袋体422、432の空気が流出する。また、扉部の袋体422、432の空気が流出して、収縮させて、それぞれ側部の袋体421、431側にカーテンレール26に沿って移動させると、車両が通行可能な空間(開口部8)を形成することが出来る。これを模式的に示すのが
図9である。
【0038】
なお、上述の右側バルーン42、左側バルーン43は、側部の袋体421、432と、扉部の袋体422、432が、仕切ファスナー423、433により仕切られている状態であったが、仕切ファスナー423、433を設ける代わりに、それぞれが独立した袋体であってもよい。すなわち、右側バルーン42は、側部の袋体421と扉部の袋体422とからなり、それぞれが分離・独立しており、空気を充填させた状態で側部の袋体421と扉部の袋体422とが密着することで、閉塞状態を作り出しても良い。左側バルーン43についても同様に、側部の袋体431と扉部の袋体432とからなり、それぞれが分離・独立しており、空気を充填させた状態で側部の袋体431と扉部の袋体432とが密着することで、閉塞状態を作り出しても良い。
【0039】
図10に、アーチバルーン41が膨らんだ状態を模式的に示す。
図10(a)はアーチバルーン41が膨らんだ状態を示す斜視図である。
図10(b)はアーチバルーン41が膨らんだ状態のアーチバルーン41と保持棒5の正面図である。
図10(c)はアーチバルーン41が膨らんだ状態のアーチバルーン41と保持棒5の側面図である。
【0040】
アーチバルーン41はバルーン台車2の水平部23に設置され、
図10に詳細を示すように、横長の袋体が上下方向に複数連結しており、各袋体の連結部の所定箇所に設けられた通気孔415を介して連通している。従って、この通気孔415を通じて隣接する袋体同士で空気の行き来が可能となる。また、アーチバルーン41は、水平部23上に設置されることから、バルーン台車2の水平部23よりも上方に対して膨張することとなる。そのため、アーチバルーン41の袋体のうち、トンネルの天井壁面Wu側よりもトンネルの中心側(水平部23側)に位置する袋体の方が長さが長くなっている。
【0041】
またアーチバルーン41は、膨らんだ状態における略半月形状のうち、左右から1/3程度の位置に、略円柱形状の空間411を形成するために左右から挟み込む形で密着部412が形成される。これは、バルーン台車2の水平部23よりも上方には、切羽付近の汚染空気を集塵・排気するため、送気管6、第1の排気管7がトンネルの天井壁面Wuから吊下固定されているためである。すなわち、アーチバルーン41は膨らんだ状態において、送気管6、第1の排気管7およびそれらの吊下部材であるターンバックルなどと密着可能なように、送気管6、第1の排気管7とほぼ同形状に空間411が形成されている。そのため、天井壁面Wuから吊下された送気管6、第1の排気管7、吊下部材に、アーチバルーン41が膨らんだ状態で密着し、閉塞することが出来る。なお、第1の排気管7のみの場合には、その位置のみに略円柱状の空間411、密着部412が形成されていても良い。
【0042】
水平部23の略中央部付近には、垂直方向に延設される保持棒5の下端が固定される。この保持棒5は、アーチバルーン41の略中央部付近に設けられた複数の円環状のフック414に通される。これによって、アーチバルーン41が膨張する段階においてフック414が保持棒5に沿って上方に移動し、アーチバルーン41の中心がずれないように保持したまま膨張させることが可能となる。このようにフック414などのガイド手段が保持棒5に沿って上下移動することで、膨張・収縮時のずれを抑止することが出来る。なお、ガイド手段としては、フック414に限定されるものではない。
【0043】
また、アーチバルーン41の所定箇所(好ましくは最下層の袋体)にはファスナーが設けられており、開閉が可能となる。ファスナーが閉まっている状態で送風機24cからアーチバルーン41内に空気が送られると、アーチバルーン41内に空気が充填され、ファスナーが開いている状態ではアーチバルーン41から空気が流出する。
【0044】
図11に3層の袋体からなるアーチバルーン41が膨らむ状態を模式的に示す。アーチバルーン41が膨らむ場合には、アーチバルーン41の最下層の袋体に取り付けられた送風機24cから空気が袋体に送り込まれる(
図11(a1)、(a2))。最下層の袋体が空気で充填されると、その上の袋体(2層目の袋体)と連通している通気孔415を通じて、2層目の袋体に空気が最下層の袋体を介して送風機24cから送り込まれる(
図11(b1)、(b2))。そして2層目の袋体が空気で充填されると、その上の袋体(3層目の袋体)と連通している通気孔415を通じて、3層目の袋体に空気が最下層の袋体、2層目の袋体を介して送風機24cから送り込まれる(
図11(c1)、(c2))。そして3層目の袋体まで空気が充填されると、アーチバルーン41の空気が充填された状態となり、天井壁面Wu、送気管6、第1の排気管7、吊下部材に密着することが出来る(
図11(d1)、(d2))。
【0045】
図12に3層の袋体からなるアーチバルーン41が収縮する状態を模式的に示す。アーチバルーン41の各袋体の空気が充填されている状態(
図12(a1)、(a2))から、アーチバルーン41の所定箇所(好ましくは最下層の袋体)に設けられたファスナーを開放することによって、自重により最下層の袋体内の空気が、開放されたファスナー部から流出する(
図12(b1)、(b2))。最下層の袋体の空気が流出すると、2層目の袋体内の空気が、最下層の袋体と連通している通気孔415を通じて、ファスナー部から流出する(
図12(c1)、(c2))。そして2層目の袋体の空気が流出すると、3層目の袋体内の空気が、2層目の袋体、最下層の袋体と連通している通気孔415を通じて、ファスナー部から流出する(
図12(d1)、(d2))。
【0046】
以上のように、アーチバルーン41の膨張、収縮の際には、フック414が保持棒5に沿って上下移動することで、アーチバルーン41の中心がずれずに膨張/収縮を繰り返すことが出来る。
【0047】
図13に示すように、アーチバルーン41の下方には複数のさる環413が設けられている。このさる環413と水平部23の鋼材とが紐416で結束されることで、アーチバルーン41が水平部23に固定される。
図13(a)はアーチバルーン41のさる環413付近の横断面図であり、
図13(b)は、
図13(a)のA部の拡大図である。すなわち、さる環413と水平部23とを紐416で結び固定することで、アーチバルーン41をバルーン台車2の水平部23に固定することが出来る。また
図14に、アーチバルーン41の収縮・膨張した状態を示す。
図14(a)はアーチバルーン41が膨張した状態であり、
図14(b)はアーチバルーン41が収縮した状態である。
【0048】
図14に示すように、アーチバルーン41に空気が充填された状態であっても、空気が流出してなくなった状態であってもアーチバルーン41と水平部23の鋼材とが紐416で結束されていることから、アーチバルーン41の底面を水平部23に固定することが出来る。
【0049】
また上述のアーチバルーン41、右側バルーン42、左側バルーン43の素材としてはナイロンタフタなどを用いることが出来るが、軽量で耐久性があればこれに限定されない。たとえば素材としてナイロンタフタを用いた場合、1m
2あたり0.5kgの重量であることから、アーチバルーン41が20m
2、右側バルーン42および左側バルーン43がそれぞれ30m
2であったとした場合、アーチバルーン41の重量は10kg、右側バルーン42および左側バルーン43の重量はそれぞれ15kgとなり、80m
2の断面積のトンネルの閉塞に用いるナイロンタフタの重量は70kgで足り、軽量化を実現できる。また、各バルーン4を形成する袋体は、二重構造、多重構造になっていても良く、それぞれに各ファスナーが取り付けられていても良い。なお、本明細書で説明する袋体としては、一定の空気を貯留させることが可能な袋体であって、圧力をかけた状態では若干の空気が抜けていく袋体であるが、圧力をかけた状態で機密性を維持する機密性袋体であっても良い。
【0050】
つぎに本発明の切羽封じ込め装置1の使用の仕方を説明する。切羽封じ込め装置1がトンネル内の所定箇所に設置された状態を模式的に示すのが
図15である。このようにすべてのバルーン4が収縮している状態であれば、切羽封じ込め装置1は、ほぼバルーン台車2だけになるので、前方の測量作業の支障とならない。
【0051】
まずトンネル工事における切羽から所定距離付近、たとえば切羽から30メートルや50メートル付近の位置に、車輪受け部3を左右の内壁側面Ws付近に、バルーン台車2の右支柱21、左支柱22の車輪25の位置に合わせて設置する。そして車輪受け部3のレール32に、バルーン台車2の車輪25を乗せ、バルーン台車2がレール32に沿って移動可能とする。
【0052】
そしてバルーン台車2のカーテンレール26上の滑車27に取り付けられたフック体に、バルーン台車2に向かって右側に、右側バルーン42のハトメ420を、向かって左側に、左側バルーン43のハトメ430を吊下することで、右側バルーン42および左側バルーン43をバルーン台車2に取り付ける。
【0053】
また、アーチバルーン41をバルーン台車2の水平部23に取り付ける。具体的には、まずアーチバルーン41におけるフック414を水平部23の保持棒5に通す。またアーチバルーン41の下方に複数設けられたさる環413と水平部23のトラス構造の金属部材とを紐416で結び、固定する。
【0054】
以上のようにすることで、バルーン台車2にアーチバルーン41、右側バルーン42および左側バルーン43を取り付けることが出来る。なお、これらの取り付け方法は一例に過ぎず、異なる順番で行っても良いし、異なる方法で行っても良い。また、バルーン台車2にアーチバルーン41、右側バルーン42および左側バルーン43を取り付けた上でバルーン台車2を車輪受け部3に乗せても良い。
【0055】
またアーチバルーン41、右側バルーン42および左側バルーン43に空気を送り込むため、それぞれの所定箇所に送風機24a、24b、24cが取り付けられ、それらがバルーン台車2に固定される。また、送風機24a、24b、24cは右側バルーン42、左側バルーン43、アーチバルーン41にそれぞれセットされる。
【0056】
以上のようにして切羽封じ込め装置1がトンネル内の所定箇所に設置される。
図16では、実際のトンネル工事における状態を示す。
図16(a)は切羽封じ込め装置1が設置されたトンネルの縦断面図であり、
図16(b)は切羽封じ込め装置1が設置されたトンネル内の上方からの図である。また
図16(c)は
図16(a)におけるA−A線の断面図である。
【0057】
切羽から切羽封じ込め装置1までの空気を換気するため、トンネルの天井壁面Wu付近に送気管6、第1の排気管7、第2の排気管71が設置される。この際に、送気管6および第1の排気管7は、切羽封じ込め装置1と同じ位置あるいは切羽封じ込め装置1よりも切羽側に、その一端の開口部が設置される。また第1の排気管7は他の一端で、切羽封じ込め装置1と坑口との間の集塵機9に連結しており、集塵機9での集塵作用によって、切羽と切羽封じ込め装置1との空間における汚染空気などを集塵・排気する。集塵機9には集塵後の空気をトンネルから排気するため、さらに第2の排気管71が連結している。第2の排気管71の集塵機9と連結していない他の一端は、トンネルの坑口から外部に位置している。送気管6、第1の排気管7および第2の排気管71はトンネルの天井付近の天井壁面Wuから吊下固定される。
図16では、送気管6の他の一端は、トンネル内の所定箇所に設けられた送風口Hから、トンネル外部に設置された送風機61に連結しており、送風機61からの送風によって、切羽付近に送風する。
【0058】
以上のように配管することで、送気管6は切羽と切羽封じ込め装置1との間の空間に送風が出来、第1の排気管7は切羽と切羽封じ込め装置1との間の汚染空気を集塵・排気することが出来る。また集塵機9で集塵したあとの空気は、第2の排気管71からトンネルの外部に排気される。
【0059】
以上のように送気管6、第1の排気管7および第2の排気管71などが設置された後、バルーン台車2の各バルーン4に空気を送り込むことで、切羽と坑口との間の空間を区切る。具体的には、バルーン台車2の所定箇所に設置された送風機24からアーチバルーン41、右側バルーン42および左側バルーン43に対して、送風機24a、24bで空気を送り込むことで、各バルーンを膨張させる。
【0060】
このようにバルーン4に空気を送り込むことで、
図7に示すように、切羽封じ込め装置1が設置された位置で、トンネルの断面を各バルーン4で区切ることが出来る。なお、各バルーン4の大きさは、各バルーン4がトンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuに密着する大きさまで膨張させられればよい。またトンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wuが、凹凸のある吹き付け面となっていることがあるが、バルーン4で空間を区切る構造とすることで、バルーン4と内壁側面Ws、天井壁面Wuとを密着させることができ、汚染空気を切羽から切羽封じ込め装置1の間に封じ込めることが出来る。
【0061】
このようにして切羽から切羽封じ込め装置1の空間と、切羽封じ込め装置1から坑口までの空間とを区切ると、切羽から発生する汚染空気がトンネル内全体に拡散することがなくなる。すなわち、汚染空気は、切羽から切羽封じ込め装置1の空間に滞留するが、それを集塵機9が第1の排気管7を通して集塵していることから、切羽から切羽封じ込め装置1の空間の汚染空気を集塵・排気することとなる。
【0062】
なお、集塵の際には、送気管6からの送風量と第1の排気管7での排気量とでは、排気量が多くなるようにする。すなわち切羽から切羽封じ込め装置1の空間が負圧となるようにすることが好ましい。
【0063】
また本発明の切羽封じ込め装置1では、集塵を行いながら、トンネル工事の作業を行うことができる。その場合、車両がトンネル内を通過する必要がある。車両が通行する場合には、そのままでは切羽封じ込め装置1がトンネルの空間をバルーンで閉鎖していることから、車両は通行できない。そこで、切羽封じ込め装置1における右側バルーン42および左側バルーン43のそれぞれの仕切ファスナー433を閉じた上で、扉部ファスナー435を開け、側部の袋体421、431の空気を排出させる。また、扉部の袋体422、432の空気が排出後、扉部の袋体422、432をカーテンレール26に沿って左右に移動させることで、トンネルの中心部付近に開口部8を形成することが出来る。すなわち、
図9に示すように、トンネルの内壁側面Ws、天井壁面Wu付近は、アーチバルーン41、右側バルーン42の側部の袋体421、431および左側バルーン43の側部の袋体422、432が設置されたまま、中心部付近は車両が通行可能となる。
【0064】
本発明の切羽封じ込め装置1では、負圧となるように送気管6からの送風量と第1の排気管7での排気量を調整しているため、開口部8を開けたままでも汚染空気を封じ込める効果が高い。
【0065】
なお、トンネルの掘削作業が進行すると、切羽が前方に移動する。その場合には、一旦、各バルーン4から空気を排気して収縮させた後、車輪受け部3のレール32に沿ってバルーン台車2を前方に移動させることで、容易に、切羽封じ込め装置1を前方に移動させられる。
【0066】
また、車輪受け部3のレール32の先端部までバルーン台車2が到達した場合には、車輪受け部3であるレール32をその先端部の先にさらに設置することで、移動を行える。
【0067】
なお、トンネル床面の掘削が続行中等の理由でトンネル内の床面の凹凸が激しい場合には、トンネル内に車輪受け部3が設置できない。そこで、このような場合には、ブラケット状の支持部31’とレール32’とを有する車輪受け部3’を、トンネルの内壁側面Wsにアンカー固定することも出来る。これを模式的に示すのが
図17である。
図17(a)は車輪受け部3’をトンネルの内壁側面Wsに支持部31’を水平方向にアンカー固定した場合の正面図、
図17(b)は、切羽封じ込め装置1の上方からの図である。
図18は
図17(b)のA部の拡大図である。なお支持部31’としては、鋼材などを用いることが出来る。
【0068】
支持部31’はトンネルの左右の内壁側面Wsに水平にアンカー固定されている。また支持部31’の上面には、レール32’が設置されており、レール32’の溝に、バルーン台車2の右支柱部21、左支柱部22の各車輪25が乗せられる。従って、レール32の溝に沿ってバルーン台車2を前後方向に移動可能となる。なおトンネルの左右の内壁側面Wsに設置された支持部31’上のレール32’は、バルーン台車2の右支柱21、左支柱22の車輪25の間隔に合わせて設置される。
【0069】
またトンネルの掘削作業が進行し、切羽が前方に移動した場合には、それに合わせて新たな支持部31’をトンネルの左右の内壁側面Wsにアンカー固定することで、トンネルの床面に車輪受け部3を設置できない場合にも、それらの位置まで切羽封じ込め装置1を移動、設置することが出来る。これは、切羽封じ込め装置1が、バルーン台車2と各バルーン4で構成されており、軽量であるために可能な構成である。なお、トンネルの左右の内壁側面Wsにアンカー固定するほか、セントルにブラケット状に設置をしても良い。このような車輪受け部3’とすることで、トンネルの床面の掘削仕上げを行っている状態、あるいは掘削仕上げを行う前の状態でも、レール32’の先行設置が可能となる。
【0070】
さらに上述とは異なる形態として、車輪受け部3’’を、
図19に示すように、架台31およびレール32から構成することも出来る。レール32は、少なくとも2以上の架台31の上面に設置する。このレール32の溝に、車輪25が載置されることで、車輪25が溝に沿って移動可能となる。
図20に車輪受け部3’’にバルーン台車2が設置された状態を示す。なお、
図19では、架台31は、トラス構造である台形状で示したが、それ以外であっても良い。
【0071】
また車輪受け部3’’のレール32の先端部までバルーン台車2が到達した場合には、架台31をうって返し、レール32を盛り代えて移動を行う。
【0072】
なお車輪受け部3は、上述のように、レール32の溝に車輪25を載置する構成のほか、鉄道の軌条のように、車輪に設けられた溝に、レールを嵌合させて移動可能なように構成することもできる。
【0073】
上述の実施例における切羽封じ込め装置1では、右側バルーン42および左側バルーン43が、側部の機密性袋体421、431と、扉部の機密性袋体422、432とが仕切ファスナー423、433で空気の流通が制御される構造となっているが、側部の機密性袋体421、431と、扉部の機密性袋体422、432とを独立したバルーン4として構成しても良い。すなわち右側バルーン42および左側バルーン43を、2以上の独立したバルーンから構成しても良い。
【0074】
また、上述の実施例におけるバルーン4について、アーチバルーン41と右側バルーン42と左側バルーン43とが一体的に形成されていても良い。