特許第5859098号(P5859098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5859098
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】屋根上取付具
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/18 20140101AFI20160128BHJP
   E04D 13/00 20060101ALI20160128BHJP
   H02S 20/23 20140101ALI20160128BHJP
【FI】
   E04D13/18ETD
   E04D13/00 J
   H02S20/23 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-234281(P2014-234281)
(22)【出願日】2014年11月19日
【審査請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006910
【氏名又は名称】株式会社淀川製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】井上 康寛
(72)【発明者】
【氏名】岩城 兼一
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−106094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
E04D 13/00
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する折板材の山部どうしが、タイトフレームに固定されている剣先ボルトにより連結されてなる屋根構造体の前記山部に設置され、かつ、前記剣先ボルトを用いて締結固定される屋根上取付具であって、
前記剣先ボルトが挿通する取付孔を有して前記山部に載せ付け可能な底壁と、前記屋根構造体上に装備される屋根上構造物を載せ付ける上面及び前記上面に載せ付けられる前記屋根上構造物を固定するために前記取付孔に対する両側それぞれに設けられる一対の固定部を備える上壁と、
前記折板材の傾斜面に当接又は沿うことにより前記一対の固定部どうしを結ぶ線分の前記山部の長手方向に対する向きを定める姿勢定め部とを備え、
前記姿勢定め部は第1向き定め部分と第2向き定め部分とを有してなり、前記第1向き定め部分が前記傾斜面に当接又は沿い、かつ、前記第2向き定め部分は前記折板材に干渉しない状態では前記線分が軒棟方向に沿う第1姿勢になり、前記第1向き定め部分は前記折板材に干渉せず、かつ、前記第2向き定め部分が前記傾斜面に当接又は沿う状態では前記線分が軒線方向に沿う第2姿勢となるように、前記第1向き定め部分と前記第2向き定め部分とを関係付けて前記姿勢定め部が構成されている屋根上取付具。
【請求項2】
前記姿勢定め部は、前記傾斜面の上端部に沿う斜め角度を有して前記線分の両側それぞれに設けられる一対の傾斜壁でなり、
前記第1姿勢においては、前記一対の傾斜壁それぞれの傾斜内面が前記傾斜面の上端部に当接又は沿い、
前記第2姿勢においては、前記一対の傾斜壁それぞれの互いに対向する内端面が前記傾斜面の上端部に当接又は沿う状態に構成されている請求項1に記載の屋根上取付具。
【請求項3】
前記線分の方向に長い矩形を呈する前記上壁、前記上壁の短手方向の両側それぞれから垂下される一対の下向き側壁、及び前記下向き側壁から外広がり状に下方延長される前記傾斜壁を備える下向きコ字状で板材製の上取付具と、
前記一対の下向き側壁それぞれに沿う状態で前記底壁から立設される一対の上向き側壁及び前記底壁を備える上向きコ字状で板材製の下取付具とを有し、
前記一対の下向き側壁と前記一対の上向き側壁とを、これら両者が嵌合する状態で連結されることにより構成されている請求項2に記載の屋根上取付具。
【請求項4】
前記姿勢定め部は、前記上壁の短手方向の両側のうちのいずれか一方にのみ形成されている請求項2又は3に記載の屋根上取付具。
【請求項5】
前記固定部は、前記屋根上構造物をボルト止めするためのボルト挿通用の装着孔でなり、前記各装着孔は、前記上壁の短手方向に長い長孔に形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の屋根上取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル、集熱パネル、化粧用の外装パネルなどの屋根上構造体を、折板屋根などの屋根構造体に設置するための屋根上取付具に関するものである。
詳しくは、隣接する折板材の山部どうしが、タイトフレームに固定されている剣先ボルトにより連結されてなる屋根構造体の山部に設置され、かつ、剣先ボルトを用いて締結固定される屋根上取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
前述の屋根構造体、即ち折板屋根は工場や倉庫、或いは駐車場の屋根構造体として採用されることが多い。そして、近年の省エネ化や個別発電の推進により、折板屋根の上に、太陽電池などの屋根上構造体を敷設することが普及してきている。
例えば、太陽電池パネルを多数敷設する場合、チャンネル材などの長尺フレームの一対又はそれ以上を、屋根上取付具を用いて互いに平行な状態で折板屋根に載置固定し、それら長尺フレームに亘って太陽電池パネルを並べて取り付ける手段が採られる(例えば、特許文献1を参照)。この場合、屋根上取付具は剣先ボルトを用いて折板屋根に固定される。
【0003】
屋根上取付具に複数の長尺フレームを介して太陽電池パネルを装着する手段では、折板屋根の縦横比率や大きさ、形状など種々の条件やさまざまな工法に対応するために、長尺フレームを屋根の軒線方向に向けて架設する軒線配置手段と、軒棟方向に向けて架設する軒棟配置手段とがある。
これらの手段に用いられる屋根上取付具として、従来では、特許文献2にて開示されるとおり、軒線配置手段用のものと軒棟配置手段用のものとの2種類が用意されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−185421
【特許文献2】特開2011−106094
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、特許文献2においては、その図12図18に示されるように、長尺フレームを軒線方向に配置する軒線配置手段の場合に用いられる屋根上取付具(d)と、図23に示されるように、長尺フレームを軒棟方向に配置する軒棟配置手段の場合に用いられる屋根上取付具(e)との2種類が必要である。
このように、屋根上取付具が2種類存在していると、現場での組付け間違いや部品の調達ミスが生じて混乱や作業遅れを招くおそれがあるとともに、部品管理も煩雑になる不利がある。
【0006】
本発明の目的は、1種類の構造でありながら、軒線配置手段と軒棟配置手段のいずれにも用いることができるように改善された屋根上取付具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、隣接する折板材1,1の山部4どうしが、タイトフレーム2に固定されている剣先ボルト6により連結されてなる屋根構造体Rの前記山部4に設置され、かつ、前記剣先ボルト6を用いて締結固定される屋根上取付具Tにおいて、
前記剣先ボルト6が挿通する取付孔11aを有して前記山部4に載せ付け可能な底壁11と、前記屋根構造体R上に装備される屋根上構造物Kを載せ付ける上面14a及び前記上面14aに載せ付けられる前記屋根上構造物Kを固定するために前記取付孔11aに対する両側それぞれに設けられる一対の固定部14b,14bを備える上壁14と、
前記折板材1の傾斜面1aに当接又は沿うことにより前記一対の固定部14b,14bどうしを結ぶ線分xの前記山部4の長手方向Pに対する向きを定める姿勢定め部16とを備え、
前記姿勢定め部16は第1向き定め部分17と第2向き定め部分18とを有してなり、前記第1向き定め部分17が前記傾斜面1aに当接又は沿い、かつ、前記第2向き定め部分18は前記折板材1に干渉しない状態では前記線分xが軒棟方向Pに沿う第1姿勢になり、前記第1向き定め部分17は前記折板材1に干渉せず、かつ、前記第2向き定め部分18が前記傾斜面1aに当接又は沿う状態では前記線分xが軒線方向Qに沿う第2姿勢となるように、前記第1向き定め部分17と前記第2向き定め部分18とを関係付けて前記姿勢定め部16が構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の屋根上取付具Tにおいて、
前記姿勢定め部16は、前記傾斜面1aの上端部に沿う斜め角度αを有して前記線分xの両側それぞれに設けられる一対の傾斜壁16A,16Aでなり、
前記第1姿勢においては、前記一対の傾斜壁16A,16Aそれぞれの傾斜内面17,17が前記傾斜面1aの上端部に当接又は沿い、
前記第2姿勢においては、前記一対の傾斜壁16A,16Aそれぞれの互いに対向する内端面18,18が前記傾斜面1aの上端部に当接又は沿う状態に構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の屋根上取付具Tにおいて、
前記線分xの方向に長い矩形を呈する前記上壁14、前記上壁14の短手方向Yの両側それぞれから垂下される一対の下向き側壁15,15、及び前記下向き側壁15から外広がり状に下方延長される前記傾斜壁16Aを備える下向きコ字状で板材製の上取付具8と、
前記一対の下向き側壁15,15それぞれに沿う状態で前記底壁11から立設される一対の上向き側壁12,12及び前記底壁11を備える上向きコ字状で板材製の下取付具7とを有し、
前記一対の下向き側壁15,15と前記一対の上向き側壁12,12とを、これら両者が嵌合する状態で連結されることにより構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の屋根上取付具Tにおいて、
前記姿勢定め部16は、前記上壁14の短手方向Yの両側のうちのいずれか一方にのみ形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の屋根上取付具Tにおいて、
前記固定部14bは、前記屋根上構造物Kをボルト止めするためのボルト挿通用の装着孔でなり、前記各装着孔14bは、前記上壁14の短手方向Yに長い長孔に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、屋根上構造物を屋根構造体の山部上に設けるべく、屋根上取付具を軒棟方向に沿って配置固定する場合でも、軒線方向に沿って配置固定する場合でも、1種類の屋根上取付具を兼用して用いることができる。即ち、第1向き定め部分が傾斜面に当接又は沿う状態で屋根上取付具を山部に取付ければ、屋根上取付具を軒棟方向に沿う姿勢とすることができ、第2向き定め部分が傾斜面に当接又は沿う状態で屋根上取付具を山部に取付ければ、屋根上取付具を軒線方向に沿う姿勢とすることができる。
その結果、屋根上取付具が2種類存在していて、現場での組付け間違いや部品の調達ミスが生じて混乱や作業遅れを招くおそれがあるとともに、部品管理も煩雑になる不利がある、という従来の問題が改善され、1種類の構造でありながら、軒線配置手段と軒棟配置手段のいずれにも用いることができる優れた屋根上取付具を提供することがでる。
【0013】
請求項2の発明によれば、線分方向に振り分け配置される一対の傾斜壁と、その内端面とで姿勢定め部を形成する手段である。つまり、一対の傾斜壁を設けるだけの経済的な手段により、姿勢定め部を有して請求項1の構成による前記効果を奏する屋根上取付具を提供できる利点がある。
【0014】
請求項3の発明によれば、上金具と下金具とを嵌合連結するだけの簡単な構造で少ない部品点数(2部品)により、経済的で合理的な手段により屋根上取付具が構成できる。また、下向きコ字状の上金具と、上向きコ字状の下金具との側壁どうしを嵌合して連結することで、強度・剛性に優れる角パイプ状の屋根上取付具として提供できる利点もある。
【0015】
請求項4の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、姿勢定め部が、上壁の短手方向の両側のうちのいずれか一方にのみ形成してあるので、剣先ボルトが山部における軒線方向にかなり偏って設けられていても、姿勢定め部と傾斜面とが干渉して取付不能になることがなく、屋根上取付具を軒棟方向に沿う姿勢で良好に取付けることが可能となる利点がある。
【0016】
請求項5の発明によれば、装着孔を短手方向に長い長孔としてあるので、詳しくは実施形態の項にて説明するが、剣先ボルトの位置が軒棟方向に互いに位置ずれしていても、また、ナット掛けの際の連れ回りにより軒棟方向や軒線方向に対して傾いて屋根上取付具が固定されても、長尺フレームなどの屋根上取付具に載せ付け固定される屋根上構造物を良好にボルト止めできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】屋根上金具の平面図
図2】屋根上金具の正面図
図3】屋根上金具の側面図
図4】上金具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図
図5】(a)は上金具の側面図、(b)は下金具の側面図
図6】下金具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図
図7】軒線方向の取付例を示す一部切欠きの正面図
図8】軒線方向の取付例を示す側面方向から見た断面図
図9】軒棟方向の取付例を示す一部切欠きの正面図
図10】軒棟方向の取付例を示す側面方向から見た断面図
図11】軒棟方向の施工例を示す上方から見た斜視図
図12】片側の向き定め部分による利点を示す作用図
図13】長孔により「剣先ボルト位置ずれ不都合」を吸収する様を示す平面図
図14】姿勢定め部の別実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明による屋根上取付具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。以下において、太陽電池パネル21、長尺フレーム20、取付ステー23などは全て屋根上構造物Kである。
【0019】
屋根上取付具Tは、図1図3に示すように、折板屋根Rの山部に載せ付けられる下金具(下取付具の一例)7と、この下金具7に一対のボルト・ナット9,9により連結固定される上金具(上取付具の一例)8との二つの板金部品によりなり、平面視で矩形を呈する状態に構成されている。ボルト・ナット9は、一例として、ボルト9a、ナット9bの他、一対の平ワッシャ9c,9c、及びばねワッシャ9dを有して構成されている。なお、屋根上取付具Tの長手方向(線分x)を線分方向X、短手方向Yを横方向Y、及び上下方向Zと各方向を定義するものとする。
【0020】
ここで、屋根構造体Rである折板屋根Rとは、図8図11に示すように、折板材1の一群をタイトフレーム2を介して屋根下地3に固定して構成する。折板材1は、山部4と谷部5とを交互に形成した軒棟方向へ長い鋼板製の長尺の成形品からなる。隣接する各折板材1の両側端の山部4どうしを、タイトフレーム2に固定した剣先ボルト6及びナット(符記省略)で連結して、山部4と谷部5とが軒線方向へ連続させることにより、所定形状・大きさの折板屋根Rが構成される。
【0021】
例えば、屋根上取付具Tは、図11に示すように、長尺フレーム20を介して太陽電池パネル21を折板屋根Rに並べて装備する際に用いられる。図11では、長尺フレーム20を折板屋根Rの軒棟方向Pに沿って山部4に取付けるのに屋根上取付具Tを用いており、一対の長尺フレーム20,20に跨らせた状態で取付けステー23を用い、複数の太陽電池パネル21を並べて敷設することができる。山部4の頂面4aに載せ付けられる屋根上取付具Tは、剣先ボルト6を用いてのナット掛けにより固定される。なお、図11以外での図示は省略してあるが、山部4の上側には、剣先ボルト6に嵌る防水用のパッキン6aがある。
【0022】
さて、下金具7は、図1図3、及び図5(b)、図6に示されるように、剣先ボルト6が挿通する取付孔11aを有して山部4に載せ付け可能な底壁11と、ボルト・ナット9を通すための連結孔12aの一対を有して底壁11の両側それぞれから立設される一対の上向き側壁12,12とを有して、線分方向Xの方向視で上向き開放のコ字状を呈する板金部材に形成されている。一例として、一対の連結孔12a,12aは、線分方向Xの中央に配置されている。
底壁11における取付孔11aは、パッキン6aの配置用として円形で若干上方に隆起した上底壁部11Aに形成されている。取付孔11aは、一例として、底壁11における線分方向Xの中心位置に、剣先ボルト6の径より僅かに大きい径の孔に形成される。
【0023】
また、上底壁部11Aの線分方向Xの両側それぞれに、両上向き側壁12の下部に連なる内向き隆起条13が形成されている。内向き隆起条13は、底壁11の底隆起部13aと、各上向き側壁12の側隆起部13bとからなり、下金具7としての強度や剛性を高める補強作用を発揮している。
この下金具7は、上下方向Zの高さ(長さ)とあまり変わらない横方向Yの幅(長さ)より、線分方向Xの長さが若干長い寸法設定が為されている。
【0024】
上金具8は、図1図3、及び図4図5(a)に示されるように、線分方向Xに長い矩形を呈する上壁14と、上壁14の短手方向Yの両側端から垂下される一対の下向き側壁15,15と、いずれか一方の下向き側壁15の下端に形成される姿勢定め部16とを有し、線分方向X視で略下向き開放のコ字状を呈する板金部材に形成されている。
上壁14は、長尺フレーム20(屋根上構造物Kの一例)を載せ付ける上面14aと、長尺フレーム20をボルト止め固定すべく線分方向Xの両側それぞれに形成される一対の装着孔(固定部の一例)14b、14bを備えている。各装着孔14bは、短手方向Yに長い長孔に形成され、かつ、短手方向Yの中央に配置されている。
また、上壁14の線分方向Xの中心には、剣先ボルト6にナット掛けするための操作用孔14cが形成されている。操作用孔14cは、線分方向Xに長くて大きい長孔で構成されている。
【0025】
各下向き側壁15は、ボルト・ナット9を通すための連結孔15aの一対を備え、上壁14と同じ線分方向Xの長さを有している。左右の下向き側壁15,15の間の間隔は、下金具7の一対の上向き側壁12,12の全幅と同じ、或いは極僅かに大きい値とされている。また、例えば、線分方向Xの中央において線分方向Xに並んで配置される一対の連結孔15a,15aの間隔は、下金具7の一対の連結孔12a,12aの間隔と等しく設定されている。
【0026】
姿勢定め部16は、折板材1の傾斜面1aに当接又は沿うことにより一対の装着孔14b,14bそれぞれの中心どうしを結ぶ線分x(=線分方向X)の、即ち屋根上取付具Tとしての山部4の長手方向である軒棟方向P(図11参照)に対する向きを定めるための部位である。
具体的には、姿勢定め部16は、一方の下向き側壁15における線分方向Xの両側それぞれの部分を、下拡がり状に延設してなる一対の傾斜壁16A,16Aにより構成されている。
【0027】
各傾斜壁16Aは、下向き側壁15の線分方向Xの端から中央域に亘る長さを有しており、その傾斜内面17は、折板材1の傾斜面1aの傾斜角度θに近い角度、又は等しい斜め角度αを有していて、後述する第1向き定め部分を形成している。
各傾斜壁16Aの線分方向Xでの内側の端面である内端面18は、短手方向Yの方向視で下拡がり角βが付けられた傾斜端面に形成されている。下拡がり角βは、傾斜面1aの傾斜角度θに近い角度、又は等しい角度に設定されており、内端面18により後述する第2向き定め部分が形成されている。
一対の内端面18,18の線分方向Xでの間隔は、図2,9に示されるように、数種類の折板屋根形状に対応可能とするために、山部4の幅よりも若干大き目に設定されている。
【0028】
屋根上取付具Tは、図3などに示すように、一対の下向き側壁15,15と一対の上向き側壁12,12とを、これら両者12,15を、上向き側壁12,12が内側となる状態で嵌合させ、その嵌合状態で短手方向Yに並ぶ4箇所の連結孔15a,12a,12a,15aにボルト・ナット9を挿通させて締め付けて、上下の金具8,7を締結一体化して構成されている。なお、一対の上向き側壁12,12間に丁度嵌る長さを有してボルト9に外嵌する筒状のスペーサ10(図3の参照)を設けても良い。
【0029】
上下の金具8,7は、互いの線分方向Xの中心位置を合せた状態でボルト・ナット9連結されており、下金具7の線分方向Xの長さは、上金具8の一対の装着孔14b、14bどうしの間隔よりも若干短い程度に設定されている。上下の金具8,7の一対のボルト・ナット9,9による締結によって、屋根上取付具Tは、線分方向Xの方向視でボックス形を呈する堅牢な作りとされており、強度・剛性に優れている。
【0030】
次に、屋根上取付具Tの施工例について説明する。本実施形態においては、多数の太陽電池パネルを屋根上取付具Tを用いて折板屋根Rに敷設する例を挙げる。
【0031】
(1)軒棟配置手段
太陽電池パネル21(屋根上構造物Kの一例)を軒棟方向Pに並べて設ける軒棟配置手段の場合を図7,8に示す。軒棟配置手段では、屋根上取付具Tを、その長手方向である線分方向Xが折板材1の長手方向である軒棟方向Pに向く状態で、剣先ボルト6を用いて山部4に載せ付けて固定する。この場合、傾斜壁16Aの傾斜内面17は、折板材1の傾斜面1aに若干の隙間を空けて沿う状態になっており、一対の内端面18,18の間に入るものは存在していない。太陽電池パネル21は、軒棟方向Pに向く長尺フレーム20を介して屋根上取付具Tに載置固定される。
【0032】
つまり、軒棟配置手段を採ると屋根上取付具Tは、傾斜内面17が傾斜面1aに沿い、かつ、宙に浮いた状態の内端面18は折板材1に干渉しない状態となって、線分xが軒棟方向Pに沿う第1姿勢になる。そして、チャンネル材や型鋼などでなる長尺フレーム20を、その長手方向が線分x、即ち軒棟方向Pに沿う状態で上面14aに載せ付け、装着孔14bに通される固定ボルト(固定ボルト・ナット)19を用いて長尺フレーム20を屋根上取付具Tに固定する。
図7においては、相隣る長尺フレーム20,20の先端部と基端部とが、共に一つの屋根上取付具Tにボルト止めされる状態を示している。図示は省略するが、長尺フレーム20の長手方向での中間部を固定する場合は、一つの屋根上取付具Tに2箇所でボルト止めされる。
【0033】
軒棟配置手段を採る場合、図8に示されるように、屋根上取付具Tは、まず、傾斜内面17が傾斜面1aに沿う(上金具8の線分方向Xが軒棟方向Pに沿う)姿勢で山部4の上に配置する。次いで、取付孔11aから上方突出している剣先ボルト6にナット22を締付けて底壁11を、即ち、屋根上取付具Tを折板屋根R上に締結固定する、という装着作業を行う。
各傾斜内面17が傾斜面1aに近接して沿う状態の位置定め部16の存在により、ナット22の締付け時に、屋根上取付具Tが連れ回りすることが傾斜内面17と傾斜面1aとの当接により規制されるとともに、上壁14の長手方向を軒棟方向Pに合せる目印として機能する利点が得られる。
【0034】
(2)軒線配置手段
太陽電池パネル21を軒線方向Qに並べて設ける軒線配置手段の場合を図9,10に示す。軒線配置手段では、屋根上取付具Tを、その長手方向である線分方向Xが折板材1の長手方向に交差する方向である軒線方向Qに向く状態で、剣先ボルト6を用いて山部4に載せ付けて固定する。この場合、各傾斜壁16Aの内端面18は、折板材1の傾斜面1aに若干の隙間を空けて沿う状態になっており、山部4から軒線方向Qに張り出す2箇所の傾斜内面17は宙に浮いた状態になっている。太陽電池パネル21は、軒線方向Qに向く長尺フレーム20を介して屋根上取付具Tに載置固定される。
【0035】
つまり、軒線配置手段を採ると屋根上取付具Tは、宙に浮いた状態の傾斜内面17は折板材1に干渉せず、かつ、内端面18が傾斜面1aに沿う状態となって、線分xが軒線方向Qに沿う第2姿勢になる。そして、長尺フレーム20を、その長手方向が線分x、即ち軒線方向Qに沿う状態で上面14aに載せ付け、装着孔14bを通す固定ボルト19により長尺フレーム20は屋根上取付具Tに固定される。
図9は、相隣る長尺フレーム20,20の先端部と基端部とが、共に一つの屋根上取付具Tにボルト止めされる状態を示す。長尺フレーム20の長手方向での中間部が一つの屋根上取付具Tに2箇所でボルト止めされるのは、軒棟配置手段の場合と同じである。
【0036】
軒線配置手段を採る場合、図9に示されるように、屋根上取付具Tは、まず、内端面18が傾斜面1aに沿う(上金具8の線分方向Xが軒線方向Qに沿う)姿勢で山部4の上に配置する。次いで、図10に示されるように、取付孔11aから上方突出している剣先ボルト6にナット22を締付けて底壁11を、即ち、屋根上取付具Tを折板屋根R上に締結固定する、という装着作業を行う。
各内端面18が傾斜面1aに近接して沿う状態の位置定め部16の存在により、ナット22の締付け時に、屋根上取付具Tが連れ回りすることが、内端面18と傾斜面1aとの当接により規制されるとともに、上壁14の長手方向を軒線方向Qに合せる、又は上壁14の短手方向Yを軒棟方向Pに合せる目印として機能する利点が得られる。
【0037】
次に、屋根上取付具Tに施された種々の工夫について説明する。
(1)姿勢定め部16が、上壁14の短手方向Yの両側のうちのいずれか一方にのみ形成してあるので、剣先ボルト6が山部4における軒線方向Qにかなり偏って設けられていても、屋根上取付具Tを軒棟方向Pに沿う姿勢で良好に取付けることが可能とされている。
即ち、屋根上取付具Tをその長手方向(線分方向X)が軒棟方向Pに沿う姿勢で取付けようとするとき(軒棟配置手段)、図12(a)に示すように、剣先ボルト6が山部4の中心から向かって右側にずれており、かつ、そのずれ量がある程度大きい場合には、傾斜壁16Aが向かって左にある状態で剣先ボルト6を取付孔11aに通して降ろすと、底壁11が山部4の頂面4aに到達する前に傾斜壁16Aが傾斜面1aに当接してしまい、取付けが不可になることがある。
【0038】
その場合には、図12(b)に示すように、屋根上取付具Tを180度反転させて傾斜壁16Aが向かって右側にくるようにすれば、剣先ボルト6が山部4の左右中心にある正規の場合に比べて、傾斜内面17と傾斜面1aとの間隔が広くはなるが、底壁11を山部4の頂面4aに当接させての締結固定が行えるものとなる。
従って、一対の下向き側壁15,15の両方に傾斜壁16A(位置定め部16)を有する構成の屋根上取付具では、上述のように剣先ボルト6が軒線方向Qへ所定量以上に位置ずれしていると山部4に取付不可となる場合がある。
【0039】
これに対して、いずれか一方の下向き側壁15にのみ位置定め部16を設ける構成とすれば、剣先ボルト6が軒線方向Qへ大きく位置ずれしていても、屋根上取付具Tは、その向きを反転することにより折板屋根Rの山部4へ取付け可能となる優れものである。
なお、両方の下向き側壁15それぞれに位置定め部16を設けていても、位置定め部16,16どうしの間隔を山部4の幅よりある程度大きく設定すれば、剣先ボルト6の軒線方向Qへの多少の位置ずれは吸収することができる。
【0040】
(2)屋根上取付具Tにおいては、図1,4に示すように、上金具8の上壁14における一対の装着孔14b,14bを短手方向Yに長い長孔としてあるので、剣先ボルト6が軒棟方向Pに正規の位置よりズレて設けられていても、長尺フレーム20を正規の向きに設定した状態で、屋根上取付具Tに載置してのボルト止めが可能とされている。
本来、複数の剣先ボルト6の軒棟方向Pの位置は全て揃っているべきであるが、複数の剣先ボルト6のうち、互いに軒棟方向Pの位置がずれていることがある。その場合、図13に示すように、剣先ボルト6にて固定された隣合う屋根上取付具T,Tは、互いに軒棟方向Pに位置ずれすることになる。
【0041】
この場合、上壁14の装着孔14bが一般的な円形孔であると、屋根上取付具T,Tの上に装備される長尺フレーム20は軒線方向Qに対して若干傾いてボルト止めされるか、或いはボルト止め不可となる不都合が生じる。
しかしながら、各屋根上取付具Tの装着孔14bは短手方向Yに長い長孔に形成されているので、図13に示すように、屋根上取付具T,Tの軒棟方向Pの位置ずれを吸収しながら、それら屋根上取付具T,Tの上に装着される長尺フレーム20を、軒線方向Qに沿う正規の姿勢を維持しながら各屋根上取付具T,Tにボルト19止めすることができる。
【0042】
また、本来、屋根上取付具Tは、軒棟方向P又は軒線方向Qに沿って(平行に)山部4に締結固定されるべきであるが、姿勢定め部16と傾斜面1aとの間に隙間があると、ナット22掛けの際に、姿勢定め部16と傾斜面1aとが当接するまで連れ回りするおそれがある。例えば、軒棟方向Pに対して僅かに傾いて山部4に固定された場合、軒棟方向Pに沿う長尺フレーム20に対して、上壁14の線分方向Xが僅かに傾くことになる。
しかしながら、各装着孔14bは短手方向Yに長い長孔に形成されているので、連れ回りによる長尺フレーム20と装着孔14bとの相対位置ずれを吸収可能となり、良好にボルト止めできる、という利点もある。
【0043】
〔別実施形態〕
傾斜内面17や内端面18は、屋根上取付具Tの折板屋根Rへの軒棟方向Pや軒線方向Qに合わせての装着時に、傾斜面1aに当接せんばかりに隙間の少ない状態に設定しても良い。この場合、剣先ボルト6へのナット22掛け装着時に、締付けトルクによる屋根上取付具Tの連れ回り量(角度)をより小さくすることができる。
【0044】
姿勢定め部16は、図14に示すように、下向き側壁15の下端を下方に延長する、或いは別部材を溶接やボルト止めで一体化するなどの手段により、傾斜壁16Aに代えて一対の垂直な下突壁16Aとしても良い。この場合は、下突壁16Aの下端内縁16aが第1向き定め部分17に、そして、図14(b)に示すように、傾斜した内端面18又は垂下面16bとした場合の下端縁16cが第2向き定め部分18に相当する。
【0045】
以上述べたように、本発明は、剣先ボルト6が挿通する取付孔11aを有して山部4に載せ付け可能な底壁11と、屋根構造体R上に装備される屋根上構造物Kを載せ付ける上面14a及び上面14aに載せ付けられる屋根上構造物Kを固定するために取付孔11aに対する両側それぞれに設けられる一対の装着孔14b,14bを備える上壁14と、
折板材1の傾斜面1aに当接又は沿うことにより一対の装着孔14b,14bどうしを結ぶ線分xの山部4の長手方向Pに対する向きを定める姿勢定め部16とを備える。
そして、姿勢定め部16は第1及び第2向き定め部分17,18を有し、第1向き定め部分17が傾斜面1aに当接又は沿い、かつ、第2向き定め部分18は折板材1に干渉しない状態では線分xが軒棟方向Pに沿う第1姿勢(図8参照)になり、第1向き定め部分17は折板材1に干渉せず、かつ、第2向き定め部分18が傾斜面1aに当接又は沿う状態では線分xが軒線方向Qに沿う第2姿勢(図10参照)となるように、第1向き定め部分17と第2向き定め部分18とを関係付けて姿勢定め部16が構成されている。
【0046】
故に、屋根上構造物Kを折板屋根Rの上に設けるべく、屋根上取付具Tを軒棟方向Pに沿って配置固定する場合でも、軒線方向Qに沿って配置固定する場合でも、1種類の屋根上取付具Tを兼用して用いることができる。その結果、1種類の構造でありながら、軒線配置手段と軒棟配置手段のいずれにも用いることができるように改善された屋根上取付具を提供することができている。従来では、屋根上取付具が2種類存在しており、現場での組付け間違いや部品の調達ミスが生じて混乱や作業遅れを招くおそれがあるとともに、部品管理も煩雑になる不利があったが、それらの不都合が改善されるものとなっている。
【符号の説明】
【0047】
1 折板材
1a 傾斜面
2 タイトフレーム
4 山部
6 剣先ボルト
7 下取付具
8 上取付具
11 底壁
11a 取付孔
12 上向き側壁
14 上壁
14a 上面
14b 固定部(装着孔)
15 下向き側壁
16 姿勢定め部
16A 傾斜壁
17 第1向き定め部分(傾斜内面)
18 第2向き定め部分(内端面)
K 屋根上構造物
P 軒棟方向
Q 軒線方向
R 屋根構造体
T 屋根上取付具
Y 短手方向
x 線分
α 斜め角度
【要約】
【課題】1種類の構造でありながら、軒線配置手段と軒棟配置手段のいずれにも使用可能となるように改善された屋根上取付具を提供する。
【解決手段】折板材1,1の山部4どうしが剣先ボルト6で連結される折板屋根Rの山部4に設置され、剣先ボルト6で締結固定される屋根上取付具Tにおいて、剣先ボルト6で固定される底壁11と、一対のボルト用孔を備える上壁14と、折板材1の傾斜面1aに沿うことで向きを定める姿勢定め部16とを備える。姿勢定め部16は第1及び第2向き定め部分18を有し、第1向き定め部分が傾斜面1aに沿い、かつ、第2向き定め部分18は折板材1に干渉しない状態では軒棟方向に沿う第1姿勢になり、第1向き定め部分は折板材1に干渉せず、かつ、第2向き定め部分18が傾斜面1aに沿う状態では軒線方向Qに沿う第2姿勢となるように構成されている。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14