(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5859103
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】ビールテイストの発酵アルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20060101AFI20160128BHJP
【FI】
C12G3/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-256660(P2014-256660)
(22)【出願日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年1月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311002447
【氏名又は名称】キリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(72)【発明者】
【氏名】松尾 壮昌
(72)【発明者】
【氏名】大橋 慎司
(72)【発明者】
【氏名】片山 貴仁
【審査官】
福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−261425(JP,A)
【文献】
特開2014−166168(JP,A)
【文献】
特開2014−168383(JP,A)
【文献】
特開2014−166169(JP,A)
【文献】
特開2014−124122(JP,A)
【文献】
特開2009−142233(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/008063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/00−3/12
C12C 1/00−13/06
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であり、かつ、糖質含有量が0.5g/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料の製造方法であって、
炭素源、窒素源および水溶性食物繊維を含む発酵前液(該発酵前液は麦芽および/または未発芽麦類を含む)をアルコール濃度が1.0v/v%以上5.0v/v%以下となるよう発酵させて発酵液を調製し、次いで、該発酵液にアルコールを添加してアルコール濃度を2.0v/v%〜10.0v/v%に調整すること
を含んでなる、製造方法。
【請求項2】
水溶性食物繊維を製造された飲料100ml当たり1.0〜4.0g含有するよう発酵前液に配合する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
発酵前液が窒素源の少なくとも一部として、穀物原料並びに穀物原料由来のタンパク質およびその分解物を1種または2種以上を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
発酵液に添加するアルコールが、スピリッツ、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎、醸造用アルコールおよび原料用アルコールからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビールテイストの発酵アルコール飲料とその製造方法に関し、より詳細にはプリン体含有量が0.5mg/100ml未満であり、糖質含有量が0.5g/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりにより低プリン体・低糖質のビールテイスト飲料が求められている。これまでに低プリン体のビールテイスト飲料を目指して様々な技術が開発されてきた。このような技術としては、例えば、吸着剤を用いてプリン体を除去する技術(特許文献1)やプリン体の生成量が少ない発泡アルコール飲料の製造方法(特許文献2)がある。
【0003】
しかし、低プリン体かつ低糖質であるとともに、ビールとしての味わいが付与されたビールテイストの発酵アルコール飲料はこれまでに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2012/008100号公報
【特許文献2】特開2014−117205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビールらしい飲み応えとビールらしいキレ感を備えた、プリン体ゼロ、糖質ゼロのビールテイストの発酵アルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、副原料として水溶性食物繊維を含む発酵前液をアルコール濃度が1.0v/v%以上となるよう発酵させた上で、最終アルコール濃度が2.0〜10.0v/v%の範囲内となるようアルコールを添加することで、ビールらしい飲み応えとビールらしいキレ感を備え、プリン体ゼロ(0.5mg/100ml未満)、かつ、糖質ゼロ(0.5g/100ml未満)のビールテイストの発酵アルコール飲料を製造できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であり、かつ、糖質含有量が0.5g/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料の製造方法であって、
炭素源、窒素源および水溶性食物繊維を含む発酵前液をアルコール濃度が1.0v/v%以上5.0v/v%以下となるよう発酵させて発酵液を調製し(以下、「工程(i)」ということがある)、次いで、該発酵液にアルコールを添加してアルコール濃度を2.0v/v%〜10.0v/v%に調整する(以下、「工程(ii)」ということがある)ことを含んでなる、製造方法。
(2)水溶性食物繊維を製造された飲料100ml当たり1.0〜4.0g含有するよう発酵前液に配合する、前記(1)に記載の製造方法。
(3)発酵前液が炭素源および窒素源の少なくとも一部として麦芽を含んでなる、前記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)発酵前液が窒素源の少なくとも一部として、麦芽、未発芽麦類、穀物原料並びに穀物原料由来のタンパク質およびその分解物を1種または2種以上を含む、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)発酵液に添加するアルコールが、スピリッツ、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎、醸造用アルコールおよび原料用アルコールからなる群から選択される1種または2種以上である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法により製造されたプリン体含有量が0.5mg/100ml未満であり、かつ、糖質含有量が0.5g/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料。
【0008】
本発明によればプリン体ゼロ、糖質ゼロでありながら、ビールらしい飲み応えとビールらしいキレ感をバランスよく備えたビールテイストの発酵アルコール飲料を提供することができる。また、本発明のビールテイストの発酵アルコール飲料はアルコール発酵を経て製造されるのでビール本来の発酵感が付与され、人工的な香味が抑制されている点でも有利である。さらに、本発明の製造方法はプリン体を除去する工程を必要としないことから簡易な製法である点でも有利である。
【0009】
本発明において「ビールテイストの発酵アルコール飲料」とは、炭素源、窒素源、および水などを原料として酵母により発酵させた飲料であって、ビールテイスト(ビール風味)を有するアルコール飲料を意味する。本発明において「ビールテイスト」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りをいう。
【0010】
本発明の製造方法で製造される「ビールテイストの発酵アルコール飲料」としては、原料として麦芽を使用するビールや発泡酒にアルコールを添加してなる飲料(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類されるリキュール系新ジャンル飲料)が挙げられる。
【0011】
本発明において「水溶性食物繊維」とは、食物繊維のうち水溶性のものを意味し、ヒトの消化酵素によって加水分解されない難消化性の多糖類等をいう。水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、イヌリン、グアーガム分解物などが挙げられ、好ましくは難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびこれらの組み合わせが挙げられる。工程(i)において水溶性食物繊維は製造された飲料100ml当たり1.0g〜4.0gの量で含まれるように発酵前液に配合することができる。
【0012】
本発明で使用する「難消化性デキストリン」とは、澱粉に微量の塩酸を加えて加熱し、酵素処理したもので、衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)で測定される難消化性成分を含むデキストリンをいい、水素添加により製造されるその還元物を含む意味で用いられる。食新発0217001号および0217002号に記載の食物繊維のエネルギー換算係数によれば、難消化性デキストリンのエネルギー値は1kcal/gである。
【0013】
本発明では麦芽(エキス化したものを含む);大麦や小麦などの未発芽麦類(エキス化したものを含む);穀物原料(例えば、トウモロコシ、大豆、エンドウ、米、こうりゃん)並びに穀物原料由来のタンパク質(例えば、トウモロコシタンパク質、大豆タンパク質、エンドウタンパク質)およびその分解物を窒素源として使用することができ、これら以外の他の原料(例えば、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料などを炭素源および/または窒素源として使用することができる。
【0014】
本発明では、必要に応じて、ホップ、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物等を発酵前液に添加することができる。ホップは、発酵前液を煮沸する前に、発酵前液を煮沸中に、または発酵前液を煮沸した後に、添加することができる。ここでいう「煮沸」は、発酵原料の酵素処理後に行われる煮沸工程である。
【0015】
本発明の製造方法の工程(i)では、発酵液のアルコール濃度が所定数値範囲内に調整されること以外は、ビールテイストの発酵アルコール飲料の公知の製法に準じて実施することができる。例えば、少なくとも水、麦芽、ホップ、水溶性食物繊維、大豆タンパク分解物および液糖を使用原料とする発酵前液(仕込液)を調製し、発酵用ビール酵母を添加して発酵(主発酵)を行い、発酵液を調製することができる。必要に応じて低温にて貯蔵して熟成させた後、ろ過工程により酵母などを除去することができる。
【0016】
炭素源および窒素源として麦芽を使用する場合、発酵前液(麦汁)の調製は常法に従って行うことができる。例えば、原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより発酵前液を調製することができる。あるいは、本発明では麦芽エキスを使用し、糖化工程を省略してもよい。
【0017】
本発明の製造方法では、最終製品中のプリン体含有量を0.5mg/100ml未満に制御できる限り、麦芽使用比率に制限はないが、例えば、50質量%未満となるように原料を準備することができる。なお、本発明において「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除く全原料の固形分質量に対する麦芽質量の割合をいう。
【0018】
工程(i)では準備した発酵前液をアルコール濃度が1.0v/v%以上5.0v/v%以下となるよう発酵させて発酵液を調製する。発酵液のアルコール濃度は発酵期間、温度、酵母添加量のような発酵条件を調整することにより所定の数値範囲内となるよう調整できる。ビールらしい飲み応えとキレを付与するとともにプリン体生成量を低く抑える観点から、アルコール濃度が1.0v/v%以上5.0v/v%以下となるように発酵させることができ、好ましくは1.0v/v%以上2.0v/v%以下となるように発酵させることができる。
【0019】
本発明の製造方法では、メイラード反応物を発酵前液に添加することができる。メイラード反応物はアミノ酸等のタンパク分解物と糖とを混合して加熱することによって得ることができる褐色の液体であり、アミノ酸等のタンパク分解物と糖との加熱反応によって付与される芳香を有する。
【0020】
メイラード反応物に用いる原料のうち、糖は、結晶グルコースや水飴等の液糖、あるいは麦芽や麦、米等植物澱粉の液糖等、糖が含有されているものであれば限定はされないが、取り扱いや反応の効率化の観点からは、液糖が好ましい。また、メイラード反応に寄与するのは、還元糖であることから、より好ましくは、単糖主体の液糖が用いられる。
【0021】
また、メイラード反応させる原料のうち、タンパク分解物は、麦類、豆類、トウモロコシ、馬鈴薯、米等のタンパクをプロテアーゼやペプチダーゼで分解したものを用いてもよく、また、工業的に精製されたアミノ酸またはその混合物を用いることもできるが、費用や風味の観点からは、ビール酵母を用いた発酵アルコール飲料の製造原料として用いられている前者の原料が好ましい。前者の原料の中では、大豆タンパク分解物をより好ましいタンパク分解物として挙げることができる。
【0022】
本発明において、メイラード反応物の調製に用いられる反応温度は、反応時間短縮の観点からは、高い温度が好ましいが、過度に高くすると糖そのものがカラメル化反応を起こし、目的の色調や風味は得られなくなる。従って、好ましくは、105〜121℃の温度が採用される。本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、メイラード反応物の添加時期は、特に制限されないが、メイラード反応物中に残存している糖およびアミノ酸を酵母に消費させるためには、発酵前の段階での添加が好ましい。すなわち、本発明においては、メイラード反応物を予め調製し、発酵アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に添加する。また、該反応物を添加する代わりに、発酵アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に、反応温度105℃以上、121℃以下を用いた原料中の糖とタンパク分解物とのメイラード反応物生成工程を実施してもよい。なお、メイラード反応物の調製のための装置としては、加圧式の加熱装置を用いることができる。
【0023】
工程(ii)では工程(i)で調製された発酵液にアルコールが添加される。発酵液に添加できるアルコールとしてはスピリッツ、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎、醸造用アルコールおよび原料用アルコールからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。発酵液に添加できる好ましいアルコールとしてはスピリッツが挙げられ、より好ましくは、大麦や小麦など麦由来のスピリッツである。麦由来のスピリッツは他の1種または2種以上のアルコール(例えば、醸造用アルコール)と組み合わせることができる。
【0024】
工程(ii)ではアルコール添加により、発酵液のアルコール濃度を2.0v/v%〜10.0v/v%の範囲に調整することができ、好ましくは2.0v/v%〜6.0v/v%、より好ましくは2.5v/v%〜5.5v/v%の範囲に調整することができる。
【0025】
工程(ii)ではアルコールの添加前あるいはアルコールの添加後に低温で貯蔵して熟成(後発酵)させてもよい。アルコールが添加された発酵液は酵母や固形分を除去するためにろ過工程に付され、次いで所望により炭酸ガス付与、殺菌などの最終製品化に必要な工程を行ってもよい。
【0026】
本発明の製造方法により製造されるビールテイストの発酵アルコール飲料はプリン体含有量が0.5mg/100ml未満であり、かつ、糖質含有量が0.5g/100ml未満である。ここで、プリン体化合物の測定は公知の方法によって行うことができ、例えば、過塩素酸による加水分解後にLC−MS/MS(液体クロマトグラフ−質量分析法)を用いて検出する方法(「酒類中のプリン体の微量分析のご案内」、一般財団法人・日本食品分析センター、URL:http://www.jfrl.or.jp/item/nutrition/post-31.html 参照)により測定することができる。また糖質の測定も公知の方法に従って行うことができ、当該試料の質量から、水分、タンパク質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(栄養表示基準(平成21年12月16日 消費者庁告示第9号 一部改正)参照)に従って行うことができる。なお、本明細書中、「プリン体含有量」とは、アデニン、キサンチン、グアニン、ヒポキサンチンのプリン体塩基4種の総量を指す。
【実施例】
【0027】
以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の例において「固形分」当たりの割合に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。また、以下の例において割合(%)は特に断りがない限り質量%を表す。
【0028】
例1:食物繊維含量のビールらしい香味への影響
本実施例では食物繊維の使用量により、ビールらしい飲み応えが付与できるかを検証した。具体的には、大豆タンパクの分解物の1.1%溶解液(モルトエキス含有)に水溶性食物繊維を0〜6.0g/100ml、果糖ブドウ糖液糖を0.13g/100mlで添加し、それぞれの試料(ノンアルコール)についてビールらしい香味について官能評価を行った。比較対照として発酵麦芽飲料(アルコール濃度5v/v%、食物繊維含量2.0g/100ml)を使用した。
【0029】
官能評価は5名のパネラーにて、ビールらしい飲み応えがあるか、ビールらしいキレ感はあるか、の2点について実施した。官能評価は1〜5点の5段階で行い、評価点の平均を算出した。それぞれの点数の平均点で3点以上を合格点とした。結果は下記表に示される通りであった。
【0030】
【表1】
【0031】
大豆タンパク分解物の存在下では食物繊維含量が1.0〜4.0g/100mlの範囲内(試験区3〜5)でビールらしい飲み応えを付与できることが確認された。一方で、ビールらしいキレは試験区3〜5では認められなかった。
【0032】
例2:アルコール発酵のビールらしい香味およびプリン体生成への影響
本実施例では発酵によりビールらしいキレ感を付与できるかを検証するとともに、発酵によるプリン体生成への影響を確認した。具体的には、大豆タンパクの分解物を10mg/100mlで配合するとともに、アルコール生成量が0v/v%〜6.0v/v%となるように、果糖ブドウ糖液糖、ショ糖および水溶性食物繊維にて資化性糖の量を調整した発酵前液(モルトエキス含有)を調製し、該発酵前液を常法に従って約10日間、糖質が残存しないようにビール酵母による発酵を行った。発酵後、全試験にて水溶性食物繊維を4.0g/100mlとなるように発酵液に添加し、ビールテイストの発酵アルコール飲料(発泡酒)を製造した。それぞれの試料についてビールらしい香味について官能評価を行った。
【0033】
官能評価は5名のパネラーにて、ビールらしい飲み応えがあるか、ビールらしいキレ感はあるか、ビールとしてバランスはよいか、の3点について実施した。官能評価は1〜5点の5段階評価で行い、評価点の平均を算出した。それぞれの点数の平均点で3点以上を合格点とした。また、プリン体の生成量は過塩素酸による加水分解後にLC−MS/MSを用いて検出する方法で測定した。結果は下記表に示される通りであった。
【0034】
【表2】
【0035】
アルコール濃度が1.0v/v%以上となるように発酵させることでビールらしい飲み応えとキレを付与できるとともに、ビールらしいバランスを付与できることが確認された。一方で、発酵を進行させるとプリン体の生成量が多くなり、プリン体ゼロ(0.5mg/100ml未満)を達成できない可能性が認められた。
【0036】
例3:アルコールを添加したビールテイスト飲料の製造
本実施例ではアルコール生成量が少ないビールテイスト発酵アルコール飲料にアルコールを添加することによりビールらしい香味が付与できるかを確認した。具体的には、例2で製造した試験区16の試料(アルコール濃度0.5v/v%)と試験区17の試料(アルコール濃度1.0v/v%)に、下記表に従って大麦スピリッツを添加してビールテイスト飲料を調製した。
【0037】
【表3】
【0038】
得られた各試料についてビールらしい香味について官能評価を行った。官能評価は5名のパネラーにて、ビールらしい飲み応えがあるか、ビールらしいキレ感はあるか、ビールとしてバランスはよいか、の3点について実施した。官能評価は1〜5点の5段階評価で行い、評価点の平均を算出した。それぞれの点数の平均点で3点以上を合格点とした。結果は下記表に示される通りであった。
【0039】
【表4】
【0040】
アルコール濃度1.0v/v%のビールテイスト飲料に大麦スピリッツを添加した場合には、最終アルコール濃度が2.0v/v%〜6.0v/v%の範囲内でビールらしい飲み応えとキレを付与できるとともに、ビールらしいバランスを付与できることが確認された。特に最終アルコール濃度が3.0v/v%〜5.0v/v%の範囲内で3つの評価項目について高い評価が得られた。一方で、アルコール濃度0.5v/v%のビールテイスト飲料に大麦スピリッツを添加した場合には、いずれの評価項目についても低い評価しか得られなかった。以上から、プリン体ゼロ(0.5mg/100ml未満)を達成しつつ、ビールらしい飲み応え、ビールらしいキレおよびビールらしいバランスが付与されたビールテイスト飲料を製造するには、アルコール濃度が1.0v/v%以上となるよう発酵させたビールテイスト飲料に、最終アルコール濃度が2.0v/v%〜6.0v/v%の範囲内になるようにアルコールを添加すればよいことが明らかとなった。
【要約】
【課題】ビールらしい飲み応えとビールらしいキレ感を備えた、プリン体ゼロ、糖質ゼロのビールテイストの発酵アルコール飲料の製法の提供。
【解決手段】低プリン体かつ低糖質であるビールテイストの発酵アルコール飲料の製造方法であって、炭素源、窒素源および水溶性食物繊維を含む発酵前液をアルコール濃度が1.0v/v%以上5.0v/v%以下となるよう発酵させて発酵液を調製し、次いで、該発酵液にアルコールを添加してアルコール濃度を2.0v/v%〜10.0v/v%に調整することを含んでなる、製造方法。
【選択図】なし