特許第5859321号(P5859321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859321
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】電線収容体
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20160128BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   H02G3/04 037
   B60R16/02 623T
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-2700(P2012-2700)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-143826(P2013-143826A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】町田 勇介
(72)【発明者】
【氏名】森 貞男
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−005581(JP,A)
【文献】 特開2006−311785(JP,A)
【文献】 特開平09−084240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H02G 3/16
H05K 5/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラケットを介して固定体に取り付けられる電線収容体であって、
内部に電線を収容するケースと、
前記ケースにおける一の壁部に開口して前記電線を導入する電線導入口と、
前記ケースにおける他の壁部の外面に前記電線導入口と隣り合って設けられるブラケット係合部と、を備え、
前記ブラケット係合部は、前記他の壁部の外面から突出して設けられて前記ブラケットをスライド受け入れ可能な一対の係合レールと、該一対の係合レール間における前記他の壁部に設けられて前記ブラケットに係合可能な係合突部と、前記係合レールの基端部に沿って前記他の壁部を貫通して設けられる貫通孔と、を有し、
前記貫通孔を囲んで前記他の壁部から前記ケースの内部側に向かって立ち上がる立上壁が設けられていることを特徴とする電線収容体。
【請求項2】
前記係合レールの基端部と前記立上壁とが前記他の壁部を挟んで同一平面内に連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電線収容体。
【請求項3】
前記ブラケット係合部には、前記ブラケットに係合する際に弾性変形した前記係合突部を受け入れ可能な第二貫通孔が前記他の壁部を貫通して設けられ、
前記立上壁で前記貫通孔を囲んで形成された第一凹部と、前記立上壁で前記第二貫通孔を囲んで形成された第二凹部と、が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電線収容体。
【請求項4】
前記ブラケット係合部には、前記一対の係合レール間における前記他の壁部の外面から突出して設けられて前記ブラケットを案内する一対の案内突部が形成され、
前記案内突部と前記立上壁とが前記他の壁部を挟んで同一平面内に連続して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電線収容体。
【請求項5】
前記立上壁は、前記電線導入口の一部と連結され、この連結位置における該電線導入口の内周面と前記立上壁の立ち上がり方向先端縁とがフラットに形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電線収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される各種の電子機器間に亘って配索される電線を収容するための電線収容体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、多種多様な電子機器が搭載され、この電子機器に電力や制御信号などを伝えるために多数の電線(ワイヤハーネス)が配索されている。電線は、例えば、異物の接触等の外部からの干渉から保護するための保護部品(プロテクタ)で覆われるとともに、この保護部品を車体(固定体)に取り付けることにより所定位置に配索されている。保護部品としては、例えば、箱状や溝状に形成された樹脂製部品であり、金属製等のブラケットを介して車体に取り付けるためのブラケット係合部を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の保護部品は、一対の側壁及び底壁を有した溝状の本体と、この本体における側壁の外面に設けられたブラケット係合部と、を備え、本体の長手方向に沿ってその内側に電線を挿通させるように構成されている。ブラケット係合部は、ブラケットを挿通させるための筒部と、筒部の外面部に設けられてブラケットと係合可能な係合部(貫通孔)と、を有し、筒部が本体側壁と一体に形成されている。このような保護部品を樹脂製一体成形部品として製造する場合には、本体側壁とブラケット係合部とを成形するための金型を用い、該金型内に溶融樹脂を射出して固化させてから、金型を開いて成形部品を取り出すような製造工程が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の保護部品において、ブラケット係合部が複雑な構造や形状となる場合には、雄型及び雌型からなる一般的な金型を用いて製造することが困難となるため、金型に対して任意方向にスライド自在なスライド型を用いることがある。このようなスライド型を用いた場合には、スライド型をスライドさせて抜くための抜き孔が本体の側壁に形成されてしまうことがある。このような抜き孔がブラケット係合部の近傍に形成されていると、本体内部に挿通させた電線の一部が抜き孔からはみ出し、このはみ出した電線とブラケットとが干渉してしまうことがあり、特に、ブラケット係合部にブラケットを係合させる際に、電線を破損させたり断線させたりする可能性があり、問題である。なお、スライド型を用いたことによる抜き孔に限らず、ブラケット係合部の近傍に貫通孔が形成されたような部品においても、ブラケットと電線との干渉が懸念される場合があることから、それを防止することができる電線収容体が望まれている。
【0006】
したがって、本発明は、ブラケットを用いて固定体に取り付けられる取付構造を有する場合にもブラケットと電線との干渉を防止することができる電線収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の電線収容体は、ブラケットを介して固定体に取り付けられる電線収容体であって、内部に電線を収容するケースと、前記ケースにおける一の壁部に開口して前記電線を導入する電線導入口と、前記ケースにおける他の壁部の外面に前記電線導入口と隣り合って設けられるブラケット係合部と、を備え、前記ブラケット係合部は、前記他の壁部の外面から突出して設けられて前記ブラケットをスライド受け入れ可能な一対の係合レールと、該一対の係合レール間における前記他の壁部に設けられて前記ブラケットに係合可能な係合突部と、前記係合レールの基端部に沿って前記他の壁部を貫通して設けられる貫通孔と、を有し、前記貫通孔を囲んで前記他の壁部から前記ケースの内部側に向かって立ち上がる立上壁が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の電線収容体は、請求項1に記載された電線収容体において、前記係合レールの基端部と前記立上壁とが前記他の壁部を挟んで同一平面内に連続して形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の電線収容体は、請求項1又は2に記載された電線収容体において、前記ブラケット係合部には、前記ブラケットに係合する際に弾性変形した前記係合突部を受け入れ可能な第二貫通孔が前記他の壁部を貫通して設けられ、前記立上壁で前記貫通孔を囲んで形成された第一凹部と、前記立上壁で前記第二貫通孔を囲んで形成された第二凹部と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の電線収容体は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された電線収容体において、前記ブラケット係合部には、前記一対の係合レール間における前記他の壁部の外面から突出して設けられて前記ブラケットを案内する一対の案内突部が形成され、前記案内突部と前記立上壁とが前記他の壁部を挟んで同一平面内に連続して形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の電線収容体は、請求項1〜4のいずれか一項に記載された電線収容体において、前記立上壁は、前記電線導入口の一部と連結され、この連結位置における該電線導入口の内周面と前記立上壁の立ち上がり方向先端縁とがフラットに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、貫通孔を囲んでケースの内部側に立ち上がる立上壁を有していることから、ケース内に収容される電線が立上壁によって貫通孔から離れる方向に案内され、電線が貫通孔からケースの外側へはみ出ることが抑制できる。従って、他の壁部を挟んで立上壁と反対側(外側)に位置するブラケット係合部の側へ電線がはみ出ないようにできることから、電線とブラケットとが干渉することがなく、電線の破損や断線を防止することができる。また、係合レールの基端部に沿って貫通孔が設けられているので、ケース及びブラケット係合部を樹脂製一体成形品として製造する際の抜き孔として貫通孔を利用することができ、スライド型を用いて効率的に電線収容体を製造することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、係合レールの基端部と立上壁とが同一平面内に連続して形成されていることで、これらに沿う方向であり他の壁部と交差する方向に沿ってスライド型を用いることができ、このスライド型によって係合レール及び立上壁を成形することができる。また、係合レールの基端部と立上壁とが連続して一体形成されることで、これらの強度を高めてブラケットとの係合強度を向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、係合突部を受け入れ可能な第二貫通孔を設けた場合であっても、この第二貫通孔を囲んでケースの内部側に立上壁を設けることで、電線が第二貫通孔からケースの外側へはみ出ることが抑制できる。さらに、第二貫通孔を抜き孔として利用することができるので、複雑な形状の係合突部であってもスライド型を用いて容易かつ効率的に成形することができる。
【0015】
請求項4に記載された発明によれば、他の壁部の外面から突出する一対の案内突部が設けられるとともに、これらの案内突部と立上壁とが同一平面内に連続して形成されていることで、案内突部と立上壁とを共通のスライド型用いて成形することができ、製造効率を向上させることができる。
【0016】
請求項5に記載された発明によれば、立上壁と電線導入口の一部とがフラットに形成されていることで、電線導入口から導入した電線を立上壁に円滑に導いて案内することができ、電線が急激に曲げられてケース内で暴れるような配索状態となることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態にかかる電線収容体を示す斜視図である。
図2】前記電線収容体の内部構造を示す平面図である。
図3】前記電線収容体の取付構造を示す斜視図である。
図4】前記電線収容体の一部を拡大して示す斜視図である。
図5】前記電線収容体の一部を拡大して示す断面図であり、図4に矢視A−A線で示す断面図である。
図6】前記電線収容体の作用を示す部分断面図であり、図4に矢視B−B線で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかる電線収容体としてのプロテクタを、図1ないし図6に基づいて説明する。本実施形態に係るプロテクタ1は、自動車等の車両に搭載されて、該車両に搭載された電子機器間に配索される電線(ワイヤハーネス)Wを収容するものである。電線Wは、車両の内部に配索され、電子機器同士の間において電力供給や信号伝達を行うものであり、コルゲートチューブTに挿通されて保護されている。コルゲートチューブTは、プロテクタ1の入口部分で一旦途切れることから、プロテクタ1内部においては、電線Wが露出された状態で収容されている。また、プロテクタ1は、固定体としての自動車等の車体やその他の適宜な取付位置に対して、ブラケットB(図5,6参照)を介して取り付けられるようになっている。
【0019】
プロテクタ1は、図1に示すように、内部に電線Wを収容するケース2と、ケース2の上側を覆うアッパカバー3と、電線導入口7の上側を覆うサブカバー4と、を備えている。ケース2は、図2にも示すように、上方に開口した全体略矩形箱状に形成され、側壁部5(第1〜第4側壁部5A,5B,5C,5D)と、側壁部5に連続して該ケース2の底面を構成する底壁部6と、を有して形成されている。側壁部5のうち、一の壁部である第1側壁部5A及び第3側壁部5Cには、それぞれ2箇所ずつに開口する電線導入口7(7A,7B,7C,7D)が設けられ、これらの電線導入口7によってコルゲートチューブTの端部が保持されている。そして、コルゲートチューブTに挿通された電線Wが電線導入口7からケース2内部に導入され、導入された電線Wが他の電線導入口7から導出される。
【0020】
ケース2の内部において、電線導入口7のうちの2箇所の電線導入口7B,7Cにそれぞれ隣接する位置には、導入した電線Wを案内する電線案内部8が設けられている。これらの電線案内部8は、底壁部6からケース2の内部側(上側)に向かって立ち上がる複数の立上壁9を有して構成されている。一方、他の壁部である底壁部6の外面には、ブラケットBと係合するブラケット係合部10(図3参照)が2箇所に設けられている。これらのブラケット係合部10は、それぞれ電線導入口7B,7Cに隣り合うとともに、底壁部6を挟んで電線案内部8の反対側(外側)に位置して設けられている。
【0021】
ブラケット係合部10は、図3に示すように、底壁部6の外面から突出して設けられて互いの間にブラケットBの係合片B1をスライド受け入れ可能な一対の係合レール11,12と、これら一対の係合レール11,12の端部(電線導入口7側の端部)を連結する当接壁13と、一対の係合レール11,12間における底壁部6に設けられてブラケットBの係合孔B2に係合可能な係合突部14と、を有する。さらに、ブラケット係合部10は、係合レール11,12の基端部11A,12Aに沿って底壁部6を貫通して設けられるスリット状の貫通孔15,16と、底壁部6を貫通して設けられるとともに弾性変形した係合突部14を受け入れ可能な第二貫通孔17と、底壁部6の外面から突出して設けられてブラケットBの係合片B1を案内する一対の案内突部18,19と、を有して構成されている。
【0022】
一対の係合レール11,12は、それぞれ底壁部6から立ち上がる基端部11A,12Aと、各基端部11A,12Aの対向方向外側に延びる複数のリブ部11B,12Bと、基端部11A,12A及びリブ部11B,12Bの頂部から対向方向内側に延びる係合片部11C,12Cと、を有して断面略L字形に形成されている。一対の案内突部18,19は、貫通孔15,16挟んで係合レール11,12の反対側にそれぞれ設けられている。従って、一対の係合レール11,12間に挿入されたブラケットBの係合片B1は、その両側端面が基端部11A,12A間に挟まれるとともに、係合片B1の上下面が係合片部11C,12Cと案内突部18,19との間に挟まれ、これによりブラケットBが挿入方向(図5,6に矢印Xで示す方向)以外への移動が規制されるようになっている。
【0023】
係合突部14は、当接壁13に向かって底壁部6の外面から徐々に外側に傾斜して延びる傾斜部14Aと、傾斜部14Aの先端側にてブラケットBの係合孔B2と係合可能な段部14Bとを有して形成されている。この係合突部14は、係合レール11,12間に挿入されたブラケットBの係合片B1に傾斜部14Aが押圧されることで弾性変形し、第二貫通孔17に向かって没入することで係合片B1を通過させ、係合孔B2が段部14Bに達した時点で弾性変形が解除されて復元することにより、段部14Bと係合孔B2とが係合可能に構成されている。このように係合孔B2に係合突部14が係合することで、ブラケットBは、挿入方向の移動も規制され、ブラケットBとケース2とが互いに移動不能に固定されるようになっている。なお、ブラケットBをケース2から取り外す場合には、適宜な治具を用いて係合突部14の先端部を押圧し、第二貫通孔17に向かって係合突部14を没入させることで、段部14Bと係合孔B2との係合を解除すればよい。
【0024】
電線案内部8における複数の立上壁9は、図4に示すように、側壁部5Aから側壁部5Dと略平行にケース2内方に延びる4枚の第1立上壁9A,9B,9C,9Dと、第1立上壁9A,9B,9C,9Dのケース2内方側端縁を連結して側壁部5Aと略平行に延びる第2立上壁9Eと、を有している。さらに、立上壁9は、第1立上壁9B,9C間に亘って側壁部5Aと略平行に延びる2枚の第3立上壁9F,9Gと、第1立上壁9A,9B間及び第1立上壁9C,9Dに亘って側壁部5Aと略平行に延びる第4立上壁9H,9Jと、第1立上壁9Dと側壁部5Dとに亘って側壁部5Aと略平行に延びる2枚の第5立上壁9K,9Lと、を有して構成されている。
【0025】
以上の立上壁9において、図5にも示すように、第1立上壁9A,9Bと第2立上壁9Eと第4立上壁9Hとが貫通孔16を囲み、第1立上壁9C,9Dと第2立上壁9Eと第4立上壁9Jとが貫通孔15を囲み、第1立上壁9B,9Cと第3立上壁9F,9Gとが第二貫通孔17を囲んで設けられている。また、第1立上壁9Aと係合レール12の基端部12Aとが同一平面内に設けられ、第1立上壁9Dと係合レール11の基端部11Aとが同一平面内に設けられ、第1立上壁9Bと案内突部19とが同一平面内に設けられ、第1立上壁9Cと案内突部18とが同一平面内に設けられ、第4立上壁9H,9Jと当接壁13とが同一平面内に設けられている。即ち、貫通孔15,16及び第二貫通孔17は、それぞれ複数の立上壁9に囲まれた筒状に形成され、底壁部6を挟んでケース2の内外方向に連通された連通部15A,16A,17Aが構成されている。このような第一凹部としての連通部15A,16Aにおけるケース2の外方側に係合レール11,12の係合片部11C,12Cが位置し、第二凹部としての連通部17Aにおけるケース2の外方側に係合突部14が位置して設けられている。
【0026】
また、ケース2は、絶縁性の合成樹脂からなり、射出成形により一体成形される。この射出成形としては、例えば、雄型及び雌型からなる主金型と、この主金型に対してスライド自在に設けられるスライド型と、を用いた成形方法が例示できる。スライド型としては、連通部15A,16A,17Aの内寸に応じた断面寸法を有し、底壁部6と直交する方向に沿ってスライド可能に支持されたものを用い、係合片部11C,12C及び係合突部14の位置まで突出させた状態で金型内に溶融樹脂を射出してから、スライド型をケース2内方に向かって後退させることで、連通部15A,16A,17A、即ち係合レール11,12や係合突部14、貫通孔15,16及び第二貫通孔17とともに立上壁9を成形することができる。
【0027】
以上のプロテクタ1によれば、図6に示すように、コルゲートチューブTからケース2内部に導入された電線Wの一部が底壁部6の側に垂れ下がるように変形したとしても、立上壁9によって垂れ下がりが規制され、貫通孔15,16や第二貫通孔17まで電線Wが達しないようになっている。なお、立上壁9の高さ寸法としては、電線Wの太さや剛性、連通部15A,16A,17Aの長さや幅寸法等に応じて適宜に設定されていればよい。また、立上壁9の高さ寸法は、電線導入口7の内周面とフラットになるように形成されていることが望ましい。このように立上壁9の上端縁と、電線導入口7の内周面の一部とがフラット(底壁部6からの高さ寸法が同一)に形成されていれば、ケース2内部に導入した電線Wをスムーズに案内することができ、即ち電線Wの曲率が大きくなることなく緩やかな曲率によって導出側の電線導入口7に向かって案内することができる。
【0028】
本実施形態によれば、電線案内部8に複数の立上壁9が設けられ、これらの立上壁9によって電線Wが案内されて貫通孔15,16及び第二貫通孔17側に垂れ下がらないようになっていることから、電線Wが貫通孔15,16や第二貫通孔17からケース2の外側へはみ出ることが抑制できる。従って、ブラケットBをブラケット係合部10に係合させる際に、電線WとブラケットBとが干渉することがなく、電線Wの破損や断線を防止することができる。また、貫通孔15,16及び第二貫通孔17が連通部15A,16A,17Aと連続して設けられているので、連通部15A,16A,17Aを抜き孔として利用することができ、ケース2を一体成形する際にスライド型を用いることによって、ブラケット係合部10等が複雑な形状であっても効率的に製造することができる。
【0029】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0030】
例えば、前記実施形態では、電線収容体がプロテクタ1である場合を例示したが、本発明の電線収容体は、プロテクタ1に限らず、内部に電線が収容されるものであれば用途は特に限定されない。即ち、電線収容体としては、例えば、内部にヒューズやリレーなどの電子部品を収容するジャンクションブロックや、ヒューズブロック、リレーブロックなどの電気接続箱であってもよいし、ドア用やスライドシート用などの各種の給電装置であってもよいし、さらにはメータ等の各種表示装置や各種照明装置などであってもよい。このような電気接続箱や給電装置等においても、その内部に電線が収容されるとともに、車体等の固定体に取り付けられることから、その取付構造として本発明の電線収容体と同様の構成を備えることで、前述した本発明と同様の作用、効果を奏することができる。また、固定体としては、自動車等の車両における車体に限らず、電線収容体を取り付け可能なものであればその種別や用途は問わない。
【符号の説明】
【0031】
1 プロテクタ(電線収容体)
2 ケース
5 側壁部(一の壁部)
6 底壁部(他の壁部)
7 電線導入口
9 立上壁
10 ブラケット係合部
11,12 係合レール
11A,12A 基端部
14 係合突部
15,16 貫通孔
15A,16A 連通部(第一凹部)
17 第二貫通孔
17A 連通部(第二凹部)
18,19 案内突部
B ブラケット
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6