(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態につき、
図1〜
図3を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、電気−空気式打込み工具の一例として電気−空気式釘打機を用いて説明する。
図1に示すように、釘打機100は、概括的に見て、工具本体としての本体部101と、作業者が握る長尺状のハンドル部103と、被加工材に打ち込まれる被打込材としての釘nが装填されるマガジン105とを主体として構成される。ハンドル部103は、本体部101の長軸方向(
図1及び
図2の上下方向)の一端側(図示上側)の側面部から当該長軸方向と交差する側方(図示右側)に向って突き出る状態で一体状に設けられている。ハンドル部103の突出側端部には、電動モータ111の電源となる充電式のバッテリパック110が装着されている。なお、
図1及び
図2には釘打機100の下向き状態、すなわち本体部101の先端部(図示下端部)が被加工材に向けられた状態が示される。このため、
図1及び
図2において下向き方向が釘nの打込み(発射)方向(長軸方向)であり、ドライバ125による釘nの打撃方向となる。この電動モータ111が、本発明における「モータ」に対応し、バッテリパック110が、本発明における「バッテリ」に対応する。
【0023】
本体部101は、釘打込み機構120の打込みシリンダ121及び圧縮装置130の圧縮シリンダ131が一体状に形成された本体ハウジング107と、電動モータ111が収容されたモータハウジング109とを主体として構成される。モータハウジング109は、本体ハウジング107の先端側(下端側)において、ハンドル部103に対し所定の間隔を置いて概ね並行に配置されるとともに、長軸方向の一端側が本体ハウジング107に連接され、他端側がハンドル部103の突出側端部に連接されている。
【0024】
本体ハウジング107における打込みシリンダ121の先端部(
図1及び
図2において下方)には、釘nの射出口を構成するドライバガイド141が配置されている。マガジン105は、本体部101の最先端側において、モータハウジング109に近接した状態で当該モータハウジング109と概ね並行に配置され、釘供給側先端部がドライバガイド141に連結され、他端側がモータハウジング109の他端部に連接されている。なお、マガジン105には、便宜上図示を省略するが、釘nを供給方向(
図1及び
図2において左方)に押すためのプッシャプレートが備えられ、このプッシャプレートによって釘nがドライバガイド141の打込み通路141aに打込み方向と交差する方向から1本ずつ供給されるよう構成されている。なお、説明の便宜上、本体部103の長軸方向の先端側(図示下側)を前又は前方、その反対側を後又は後方という。また、本体ハウジング側107側(図示左側)を上又は上方、バッテリ110側(図示右側)を下又は下方という。
【0025】
釘打込み機構120の打込みシリンダ121と、圧縮装置130の圧縮シリンダ131とは、それらの長軸方向が互いに平行となるように形成されている。打込みシリンダ121内には、釘nを打撃動作する打込みピストン123が長軸方向に摺動自在に収容されている。この打込みシリンダ121が、本発明における「打込みシリンダ」に対応する。打込みピストン123は、打込みシリンダ121内に摺動自在に収容された円柱状または円盤状のピストン本体部124と、当該ピストン本体部124に一体状に設けられ、釘nを打撃動作するための長尺棒状のドライバ125とからなり、打込みシリンダ121の長軸方向に直線状に移動し、ドライバ125がドライバガイド141の打込み通路141a内を前方に移動して釘nを打込む作動部材として機能する。この打込みピストン123が、本発明における「打込みピストン」に対応し、ピストン本体部124が、本発明における「摺動部」に対応し、ドライバ125が、本発明における「打込み部」に対応する。打込みシリンダ121及び打込みピストン123によって釘打込み機構120が構成される。
【0026】
圧縮装置130の圧縮シリンダ131内には、圧縮ピストン133が長軸方向に摺動自在に収容され、当該圧縮ピストン133は、電動モータ111からクランク機構115を介して駆動される。電動モータ111は回転軸線が圧縮シリンダ131の長軸方向と交差するようにモータハウジング109内に配置されている。そして、電動モータ111の回転出力は、歯車減速機構113によって適宜減速されるとともに、運動変換機構としてのクランク機構115によって直線運動に変換されて圧縮ピストン133を直線状に往復運動させる。これにより圧縮シリンダ131の内部空間である圧縮室131aの容積が変化し、圧縮ピストン133が圧縮室131aの容積を減少する後方(
図1の上方)側へと移動することで圧縮室131aの空気が圧縮される。すなわち、本実施の形態では、圧縮装置130として、圧縮シリンダ131、圧縮ピストン133及びクランク機構115を主体として構成されるレシプロ式の圧縮装置が用いられている。この圧縮シリンダ131が、本発明における「圧縮シリンダ」に対応し、圧縮ピストン133が、本発明における「圧縮ピストン」に対応する。
【0027】
なお、クランク機構115は、歯車減速機構113によって減速回転されるクランク軸115aと、クランク軸115aの回転中心から偏心した位置に設けられた偏心ピン115bと、偏心ピン115bに一端が相対回動自在に連接され、他端が圧縮ピストン133に相対回動自在に連接された連接ロッド115cとによって構成されており、圧縮シリンダ131の前方領域において、本体ハウジング107の内部に収容されている。
【0028】
なお、電動モータ111は、ハンドル部103に支軸103cを支点にして回動自在に設けたトリガ103a及び本体部101の先端領域に設けられるコンタクトアーム(本実施の形態では、ドライバガイド141がコンタクトアームの機能を兼ね備える構成とされる)によって駆動と停止が制御される構成とされる。すなわち、ハンドル部103には、手指により操作可能なトリガ103aと、当該トリガ103aが引き操作されることで電動モータ111を通電駆動するオン状態に投入され、引き操作が解除されることで電動モータ111を停止するオフ状態に切替わるモータ駆動用のトリガスイッチ103bが設置されている。
【0029】
他方、コンタクトアームを兼ねるドライバガイド141(以下の説明では、ドライバガイド141がコンタクトアームとして機能する場合に限り、コンタクトアーム141という)は、釘nの長軸方向(打撃方向)に移動可能に取り付けられ、便宜上図示を省略する付勢部材としてのバネにより先端(前方)側に突出するように付勢されている。コンタクトアーム141が前方に突出された突出位置にあるときは、便宜上図示を省略するモータ駆動用のコンタクトアームスイッチがオフ状態とされ、コンタクトアーム141が本体ハウジング107側(後方)に移動されたときに、コンタクトアームスイッチがオン状態とされる。そして、電動モータ111は、トリガスイッチ103bとコンタクトアームスイッチが共にオン状態に切替えられたときに通電駆動され、いずれか一方、又は双方がオフ状態に切替えられたときに停止される。トリガ103a及びコンタクトアーム141によって電動モータ111を制御するための制御部材が構成される。
【0030】
本体ハウジング107には、圧縮シリンダ131の圧縮室131aと打込みシリンダ121の内部とを連通する連通路135と、当該連通路135を開放及び閉止する開閉装置としてのメインバルブ137が設けられている。連通路135によって圧縮空気供給経路が構成され、メインバルブ137によって開閉装置が構成される。釘打機100は、
図1に示すように、打込みピストン123が最後端位置(図示上端位置)へと移動され、かつ圧縮ピストン133が最前端位置(下死点)へと移動された状態が初期位置として定められている。メインバルブ137は、非通電時に閉じる電気的駆動弁としてのノーマルクローズタイプのソレノイドバルブによって構成されており、圧縮ピストン133が最後端位置へと移動された上死点付近において連通路135を開放する構成とされる。従って、メインバルブ137が連通路135を開放すると、圧縮ピストン133で圧縮された圧縮室131a内の圧縮空気が打込みシリンダ121のシリンダ室へと供給され、この供給された圧縮空気によって打込みピストン123が前方へと移動され、ドライバ125によって釘nを打撃し、被加工材に釘nを打込む。
【0031】
圧縮動作後の圧縮ピストン133が前方へと移動すると、圧縮室131aの容積が増加され、これによって当該圧縮室131a及び打込みシリンダ121内が負圧化し、当該負圧によって打込みピストン123が後方へと移動される構成とされる。このように、本実施の形態に係る釘打機100は、圧縮ピストン133が一往復すると、打込みピストン123のドライバ125が一回の釘打込み動作を行う構成とされる。
【0032】
次に上記のように構成された釘打機100の作用および使用方法につき説明する。
図1に示す初期状態において、コンタクトアーム141が被加工材に押し付けられてコンタクトアームスイッチがオン状態とされるとともに、トリガ103aが引き操作されてトリガスイッチ103bがオン状態に切替えられると、電動モータ111が通電駆動される。これによって歯車減速機構113を介してクランク機構115が駆動され、圧縮ピストン133が後方へと移動を開始する。このとき、メインバルブ137は、連通路135を閉止しており、このため、圧縮室131aの容積が減少され、圧縮室131a内に閉じ込められた空気が圧縮される。
【0033】
圧縮ピストン133が最後端位置に接近した圧縮動作の上死点付近でメインバルブ137が通電されて連通路135を開放する。このため、圧縮室131a内の圧縮空気が連通路135を経て打込みシリンダ121内へと供給され、当該圧縮空気によって打込みピストン123が前方へ移動される。そして、前方へと移動された打込みピストン123のドライバ125がドライバガイド141の打込み通路141aに待機している釘nを打撃し、これを被加工材に打込む。
【0034】
最後端位置の圧縮ピストン133が方向を転換して前方へと移動されると、この前方への移動により圧縮室131aの容積が増加されて当該圧縮室131aが負圧化され、当該負圧が連通路135及び打込みシリンダ121内を通じて打込みピストン123に作用する。これによって打込みピストン123が吸引され、後方の打撃前の初期位置へと戻される。
【0035】
なお、圧縮ピストン133が圧縮開始前の位置に復帰すると、トリガスイッチ103b及びコンタクトアームスイッチがオン状態に維持されていても、電動モータ111に対する通電が遮断され、電動モータ111が停止され、同時にメインバルブ137に対する通電が遮断され、当該メインバルブ137が連通路135を閉止する。かくして、釘打ち動作の1サイクルが終了する。
【0036】
なお、電動モータ111に対する通電の遮断、及びメインバルブ137に対する通電とその遮断については、便宜上図示を省略するが、例えば、クランク軸115aの回転角度、あるいは偏心ピン115bの位置等を適宜位置検知センサーによって検知し、当該検知信号に基づき、少なくとも電動モータ111を制御するべく設けられる制御装置(コントローラ)によって制御されるように構成される。
【0037】
上記のように、本実施の形態に係る電気−空圧式の釘打機100は、バッテリパック110を電源として駆動する電動モータ111を用いて圧縮装置130を駆動し、そして当該圧縮装置130によって生成した圧縮空気を用いて打込みピストン123を直線状に移動させて釘nをドライバ125によって打込む構成としている。このため、外部の電源を釘打機に供給するための電源コード、及び外部の圧縮空気源から圧縮空気を釘打機に供給するためのエアホースのいずれもが不要とされた、コードレスでかつホースレスの釘打機が構成されることとなり、使用性の高い釘打機が提供される。
【0038】
本実施の形態に係る釘打機100は、圧縮空気を任意に放出して作業領域等を清掃することが可能な掃除装置(エアダスタ)150を備えている。掃除装置150は、
図1及び
図2に示すように、圧縮シリンダ131の後端部側(シリンダヘッド側)に形成された圧縮空気排出口151と、圧縮空気排出口151を開放及び閉止する開閉弁153と、圧縮空気排出口151が開放された際に、圧縮装置130の圧縮室131a内の圧縮空気をノズル157に導くパイプまたはホース等からなる管状部材155と、圧縮空気を前方に向けて放出するノズル157とを主体として構成される。この開閉弁153が、本発明における「切替弁」に対応し、管状部材155が、本発明における「空気通路」に対応し、ノズル157が、本発明における「ノズル」に対応する。
【0039】
開閉弁153は、非通電時に圧縮空気排出口151を開放する電気的駆動弁としてのノーマルオープンタイプのソレノイドバルブによって構成されており、通電時には、弁本体が圧縮空気排出口151を閉止(
図1参照)する位置に移動され、非通電時には、弁本体が圧縮空気排出口151を開放(
図2参照)する位置に移動される構成とされる。圧縮空気排出口151を閉止する位置が、本発明における「閉止位置」に対応し、圧縮空気排出口151を開放する位置が、本発明における「開放位置」に対応する。ノズル157は、ドライバガイド141の近傍に配置され、圧縮空気が釘の打込み方向と概ね平行に放出されるように放出方向が設定されている。管状部材155は、圧縮シリンダ131の圧縮空気排出口151から排出された圧縮空気の空気流れを釘打機100の前方へ迂回させるように配置されている。すなわち、管状部材155は、
図3に示すように、互いに外接状態(または近接状態)に配置された打込みシリンダ121の外面と圧縮シリンダ131の外面との双方に外接した状態で固定状に配置されるとともに、当該打込みシリンダ121の長軸方向に延在されており、
図1及び
図2に示すように、一端が圧縮空気排出口151と連通するように圧縮シリンダ131のヘッド近傍に連結され、他端にノズル157が設けられている。
【0040】
ハンドル部103におけるトリガ103aの近傍には、開閉弁153を開閉操作するための手動操作式の開閉弁スイッチ156が設けられる。開閉弁スイッチ156は、押ボタンスイッチあるいはスライドスイッチからなり、開放側への操作により開閉弁153に対する通電が遮断されて圧縮空気排出口151を開放し、閉止側への操作により開閉弁153が通電されて圧縮空気排出口151を閉止するように構成される。また、開閉弁スイッチ156が開放側に操作された開閉弁153の通電時(掃除装置使用時)には、メインバルブ137が働かない(開放動作しない)ようにコントローラによって制御される構成とされている。
【0041】
また、本実施の形態では、ノズル157から放出される空気の放出モードを、空気を連続して放出する連続放出モードと空気を断続的に放出する断続放出モードとの間で切替えることが可能な放出モード切替機構としての放出モード切替スイッチ158を備えている。放出モード切替スイッチ158は、ハンドル部103に開閉弁スイッチ156と隣接して配置され、連続放出モード側に切替えられているときには、圧縮ピストン133の起動直後から開閉弁153が連続的に開放動作し、断続放出モード側に切替えられているときには、圧縮ピストン133が後方へ所定量移動されて圧縮室131a内の圧力が高められた状態(圧力センサー、あるいは圧縮ピストン133の位置センサーによって検知)で、開閉弁153が断続的に開閉動作するように構成される。
【0042】
本実施形態の掃除装置150は、上記のように構成されている。釘打ち作業を行う場合には、開閉弁スイッチ156を閉止側に切替え操作する。これにより、開閉弁153が通電駆動され、圧縮空気排出口151を閉止する。その状態で、電動モータ111を通電駆動する(コンタクトアーム141を被加工材に押し付け、かつトリガ103aを引き操作する)ことにより、前述した通常の釘打ち作業を遂行することができる。
【0043】
一方、釘打ち作業に先立ってあるいは釘打ち作業の合間において、掃除装置150を用いて掃除する場合は、開閉弁スイッチ156を開放側に操作する。このときは、開閉弁153が通電されないため、当該開閉弁153が圧縮空気排出口151を開放する。その状態で電動モータ111を通電駆動し、圧縮装置130を駆動すれば、圧縮ピストン133によって圧縮された圧縮室131a内の圧縮空気が管状部材155を経てノズル157へと導かれ、当該ノズル157から前方へ放出される。これにより、釘打ちすべき加工材表面に存在していた塵や埃、あるいは釘同士を接着している接着剤が剥がれることで生じた塵を吹き飛ばして作業領域を掃除することができる。このとき、メインバルブ137は、前述したように働かないように構成されているので、誤って釘打ち動作が行われることがない。
【0044】
上記の掃除を行う場合において、放出モード切替スイッチ158を連続放出モード側に切替えた場合には、圧縮ピストン133の起動直後から、開閉弁153が連続的に開放されるため、圧力が高くならず、ノズル157から弱い風が連続して放出される。一方、放出モード切替スイッチ158を断続放出モード側に切替えた場合には、圧縮室131a内の圧力が高められた状態で、開閉弁153が断続的に開閉動作するため、ノズル157から強い風が断続的に放出される。すなわち、本実施の形態によれば、掃除すべき状況に対応して放出モードを適宜切替えることによって空気の放出力の強さを変えることができ、便利である。
【0045】
また、本実施の形態では、管状部材155を打込みシリンダ121と圧縮シリンダ131間を這うように配置したので、コンパクトに配管することができる。
【0046】
ところで、上記のように構成され、かつ作用する釘打機100においては、釘打ち動作に関連する機能部材としての、トリガ103a、電動モータ111、圧縮装置130、釘打込み機構120等によって構成される釘打機100の内部機構のうち、少なくとも一つが正常な動作状態として許容される範囲から逸脱した動作状態(以下、この動作状態を非定常動作状態という)になることが考えられる。その一例としては、例えば圧縮装置130の圧縮途中において、作業者がコンタクトアーム141の被加工材に対する押し付け動作を解除すること、あるいはトリガ103aの引き操作を解除することが考えられる。つまり釘打ち動作を途中で止める場合がある。この場合、圧縮室131a内に圧縮空気が貯留した状態で電動モータ111が停止することになる。そして、この状態で、メインバルブ137が何らかの原因で不用意に開かれると、圧縮室131aの圧縮空気が打込みシリンダ121に供給されてしまい、予期しない打込み動作が行なわれる可能性があり、一方、メインバルブ137が開かれない場合には、次の起動時に圧縮室131a内に残留する圧縮空気が原因となって電動モータ111あるいは圧縮装置130等に過大な負荷が作用する可能性がある。
【0047】
そこで、上記のような不具合を解決するべく、本実施の形態は、開閉弁スイッチ156が閉止側に切替え操作された釘打ち状態において、圧縮装置130の圧縮途中で、作業者がトリガ103aの引き操作を解除した場合、あるいはコンタクトアーム141の被加工材に対する押し付け動作を解除した場合に、開閉弁153を開放動作し、圧縮空気排出口151を開放することで、管状部材155及びノズル157を通じて圧縮室131aの圧力を大気に開放し、これによって打込みピストン123へのエネルギ伝達を遮断するように構成することが可能である。すなわち、開閉弁153を、釘打機100の内部機構が非定常動作状態になった場合に圧縮空気を大気に放出させる大気開放バルブとして機能させる。この開閉弁153が、本発明の請求項2及び3における「大気開放バルブ」に対応する。また、圧縮装置130の圧縮途中において、作業者がトリガ103aの引き操作を解除した場合、あるいはコンタクトアーム141の被加工材に対する押し付け動作を解除した場合が、本発明における「内部機構の所定の動作状態」に対応する。
【0048】
そして、開閉弁スイッチ156が閉止側に切替え操作された状態において、トリガ103aが引き操作されてトリガスイッチ103bがオン状態とされ、かつコンタクトアーム141が被加工材に押し付けられてコンタクトアームスイッチがオン状態とされたとき(電動モータ111が通電駆動されたとき)に、開閉弁153が通電状態とされ、トリガスイッチ103b又はコンタクトアームスイッチのいずれか一方がオフ状態とされたときに、開閉弁153が非通電状態とされるよう構成される。トリガ103a、トリガスイッチ103b、コンタクトアーム141及びコンタクトアームスイッチが、本発明における「制御部材」に対応する。
【0049】
本実施の形態は、上記のように構成される。従って、作業者が釘打ち作業するべく、コンタクトアーム141を被加工材に押し付けるとともに、トリガ103aを引き操作すると、コンタクトアームスイッチとトリガスイッチ103bが共にオン状態となる。このとき、開閉弁153は閉止状態を維持している。このため、前述したように、コンタクトアームスイッチとトリガスイッチ103bが共にオン状態とされることで電動モータ111が通電駆動されるので、圧縮装置130、釘打込み機構120を介して一連の釘打ち動作が遂行されることになる。
【0050】
一方、作業者が動作途中で、例えばトリガ103aの引き操作を解除した場合、あるいは被加工材に対するコンタクトアーム141の押し付け動作を解除した場合には、トリガスイッチ103bあるいはコンタクトアームスイッチがオフ状態とされ、電動モータ111が停止してしまう。このため、通常であれば、圧縮装置130の圧縮室131a内に圧縮空気が貯留されたままとなる。しかるに、本実施の形態によれば、トリガスイッチ103bあるいはコンタクトアームスイッチがオフ状態とされることで、開閉弁153が非通電状態となり、開閉弁153が開き側に作動され(内蔵バネによる)、圧縮空気排出口151を開放する。このため、圧縮室131aの圧縮空気が管状部材155のノズル157を通じて大気に放出され、圧縮装置130から釘打込み機構120へのエネルギ伝達が遮断されることになる。従って、圧縮装置130の圧縮途中での停止状態において、メインバルブ137が開放されても、ドライバ125による釘打ち動作が遂行されることがない。すなわち、本実施の形態によれば、開閉弁153を開放側に作動させることで、釘nの打込み動作を不能化し、釘nの不測の打込み動作を防止することができる。また、次の起動時に圧縮室131a内に残留する圧縮空気が原因となって電動モータ111あるいは圧縮装置130等に過大な負荷が作用することもなく、電動モータ111あるいは圧縮装置130等を過負荷から保護することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、釘打ち終了時においては、打込みピストン123が釘打ち動作前の初期位置に復帰したことを適宜位置検知センサーによって検知したとき、当該検知信号に基づいて前記制御装置(コントローラ)が開閉弁153を開放側に切替えるように構成されている。このように、打込みピストン123の初期位置への復帰を待って開閉弁153が開放側に切替わる構成としたことにより、打込みピストン123が初期位置に復帰するまで圧縮室131a及び打込みシリンダ121内の負圧状態を確実に維持する。すなわち、定常動作状態では、開閉弁153は釘打込み動作の正常サイクルをキープする部材として機能する。なお、このときの、開閉弁153のコントローラの指令による開放側への切替わりは、作業者によるトリガ103aの引き操作及びコンタクトアーム141の被加工材に対する押し付け動作がそれぞれ継続されることでトリガスイッチ103b及びコンタクトアームが共にオン状態にあっても遂行されるように構成される。
【0052】
なお、本実施の形態では、管状部材155が固定状に設けられる場合で説明したが、例えば管状部材155の少なくとも一部をホースによって形成するとともに、ホースクランプを介して管状部材155のノズル157側を打撃用シリンダ121の外面あるいは圧縮用シリンダ131の外面に取り外し可能に取付け、取り外した状態では、ノズル157の向きを任意に変え得る構成に変更してもよい。
【0053】
(本発明の第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態につき、
図4〜
図10を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、打込みピストン123を打込み動作するために、及び掃除装置150に用いるために生成される圧縮空気の生成手段に関する変形例であり、この点以外の構成については前述した第1の実施形態と同様に構成される。このため、主として圧縮空気の生成手段及びそれに関連する事項につき説明し、それ以外の構成部材については第1の実施形態で用いた符号と同一の符号を付してその説明を省略あるいは簡略にする。
【0054】
本実施の形態における打込み機構120は、打込みシリンダ121内に、釘(便宜上、図示を省略する)を打込むための打込みピストン123のほかに、当該打込みシリンダ121内を摺動してシリンダ室122の容積を減少することにより圧縮空気を生成する圧縮ピストン161が配置された2重のピストン構造体として構成されている。圧縮ピストン161及び打込みシリンダ121によって本発明における「圧縮空気生成装置」が構成される。圧縮ピストン161は、電動モータ111により駆動されるクランク機構181によって直線状に駆動される筒状移動体167を介して打込みピストン123と共に打込みシリンダ121内を釘の打込み方向と反対側へ移動され、シリンダ室122内の空気を圧縮する構成とされる。なお、筒状移動体167を駆動するクランク機構181については、後述する。以下の説明では、各構成部材に関する釘の打込み方向と反対方向への移動については、これを「後方へ移動」といい、打込み方向への移動を「前方へ移動」という。
【0055】
圧縮ピストン161は、打込みシリンダ121内に収容され、当該打込みシリンダ121の長軸方向に摺動自在な円盤状のピストン本体部162と、当該ピストン本体部162の周縁部から本体部101の長軸方向先端側(ドライバガイド側)に延在する略円筒形の筒状部163とを有する筒状ピストンとして構成される(
図11参照)。打込みピストン123は、圧縮ピストン161のピストン本体部162の前面に重なるように配置されるとともに、圧縮ピストン161の筒状部163内を長軸方向に相対移動可能とされた円盤状のピストン本体部124と、当該ピストン本体部124に一体状に設けられ、釘を打撃動作するための長尺棒状のドライバ125とからなり、打込みシリンダ121の長軸方向に直線状に移動し、ドライバ125がドライバガイド141の打込み通路141a内を前方へ移動して釘を打込む作動部材として機能する。
【0056】
打込みシリンダ121の外側には、圧縮ピストン161をシリンダ室122の容積を減少する側、すなわち後方へ移動させるための筒状移動体167が配置されている。この筒状移動体167が、本発明における「中間体」に対応する。筒状移動体167は、打込みシリンダ121の外側に長軸方向に移動可能に嵌合された略円筒形状の部材であり、圧縮ピストン161の筒状部163の外側を通って本体部101の長軸方向先端側へと延在されている。筒状移動体167の延在端部(前端部)には、長軸方向と交差する径方向の平面を有するピストン受部168が形成されており、当該ピストン受部168に圧縮ピストン161の筒状部163の端部が当接されている。このため、筒状移動体167が打込みシリンダ121の後方側へ直線状に移動されると、圧縮ピストン161が筒状移動体167と共に移動してシリンダ室122の容積を減少し、当該シリンダ室122内の空気を圧縮する。
【0057】
なお、圧縮ピストン161の筒状部163の外側には、一端が打込みシリンダ121の前端に当接し、他端が筒状部163の前端外周に形成されたバネ受部163aに当接する第1圧縮コイルバネ165が配置されている。従って、圧縮ピストン161は、当該第1圧縮コイルバネ165により常時に本体部101の長軸方向先端側に付勢されるため、筒状移動体167のピストン受部168に対する筒状部163の当接状態が安定する。圧縮ピストン161の後方への移動は、第1圧縮コイルバネ165の付勢力に抗して行われる。
【0058】
また、打込みシリンダ121の外側の後部側には、一端が打込みシリンダ121の後部に形成されたバネ受部121aに当接し、他端が筒状移動体167の後端部に当接する第2圧縮コイルバネ169が配置されている。このため、筒状移動体167は、第2圧縮コイルバネ169により常時に本体部101の長軸方向先端側に付勢され、ピストン受部168が本体ハウジング107の長軸方向と交差する方向の壁面107aに当接された位置に保持される。この位置が筒状移動体167の初期位置として設定される。筒状移動体167の後方への移動は、第2圧縮コイルバネ169の付勢力に抗して行われる。
【0059】
圧縮ピストン161の筒状部163内には、打込みピストン123の打込み位置を規定するストッパ部材171及び緩衝材172が配置されている。なお、便宜上図示を省略するが、ストッパ部材171は、打込みシリンダ121またはハウジング本体107に連結されている。このため、圧縮ピストン161の筒状部163には、当該圧縮ピストン161が移動する際に、ストッパ部材171と、打込みシリンダ121またはハウジング本体107とを連結する部位に対して干渉することがないように、長軸方向に所定長さで延在する干渉回避用溝163bが周方向に複数形成されている(
図11参照)。
【0060】
打込みピストン123のドライバ125は、圧縮ピストン161の筒状部163の内部及び筒状移動体167のピストン受部168に形成された開口168aを貫通してドライバガイド141側へと延在されている。
図8に示すように、ピストン受部168の開口168aには、筒状移動体167が後方へ移動する際、打込みピストン123を筒状移動体167に連結(連動)して後方へ移動させる係止部材173が取付けられている。この係止部材173が、本発明における「連結機構」に対応する。係止部材173は、ピストン受部168の開口168aにピン174により、
図8において左右方向に回動自在に取付けられたレバー状部材であり、ピストン受部168の開口168aを貫通するドライバ125に係止して筒状移動体167と打込みピストン123とを連結させる。
【0061】
係止部材173の一端側(
図8の下方側)には爪部173aが形成され、これに対応してドライバ125には、便宜上図示を省略するが、切欠状の係止部が形成されている。係止部材173は、開口168aの壁面との間に介在された係止バネ175によって爪部173aをドライバ125の係止部に係止するべく付勢されている。すなわち、打込みピストン123が初期位置に置かれたときには、係止バネ175の付勢を受けて係止部材173の爪部173aがドライバ125の係止部に係止されるように構成されている。
【0062】
また、筒状移動体167のピストン受部168には、係止部材173の爪部173aがドライバ125の係止部に係止することを許容する係止許容状態と、当該係止を解除する係止解除状態との間で切替え操作される切替部材179が設けられている。当該切替部材179は、本体ハウジング107の外側において操作可能とされ、先端部が本体ハウジング107の内部へ進入してピストン受部168の開口168a内に至るレバー状部材であり、当該先端部が本体打込みシリンダ121の長軸方向と交差する方向に移動可能とされる。すなわち、切替部材179は、係止部材173の爪部173aから離間して当該爪部173aのドライバ125に対する係止を許容する係止許容位置(
図8に示す位置)と、当該爪部173aを押し退けてドライバ125の係止部に対する係止状態を解除する係止解除位置(
図9に示す位置)との間で切替え移動可能とされる。これにより打込みピストン123は、筒状移動体167に対し、係止部材173を介して係止された連結状態と、当該係止が解除された連結解除状態とのいずれかに一方に選択的に切替えられる。この切替部材179が、本発明における「切替機構」に対応する。
【0063】
従って、切替部材179が係止許容位置に移動された状態では、爪部173aが係止バネ175の付勢力によってドライバ125の係止部に係止される。この状態で筒状移動体167が後方へ移動されたときには、打込みピストン123は筒状移動体167及び圧縮ピストン161と連動して移動する。このとき、圧縮ピストン161の移動によりシリンダ室122内に生成される圧縮空気は、打込みピストン123の釘打込み動作に用いられる。一方、切替部材179が係止解除位置に移動された状態では、ドライバ125の係止部に対する爪部173aの係止が解除される。この状態で筒状移動体167が後方へ移動されたときには、打込みピストン123が初期位置に保持された状態で圧縮ピストン161が単独で後方へ移動する。また、係止部材173の爪部173aは、ドライバ125の側面を摺動する。このとき、圧縮ピストン161の移動によりシリンダ室122内に生成される圧縮空気は、掃除装置150による掃除に用いられる。
【0064】
次に筒状移動体167を直線状に移動させるクランク機構181につき説明する。クランク機構181は、歯車減速機構183によって減速回転される(歯車減速機構183の最終ギアと噛み合い係合するギアを有する)円盤状のクランク板187と、当該クランク板187に取付けられた2本の偏心ピン189a,189bとによって構成されており、本体ハウジング107の内部に収容されている。
【0065】
クランク板187は、筒状移動体167の外面と対向して配置されるとともに、軸受185により打込みシリンダ121の長軸方向と交差する方向の軸回りに回転自在に支持されている。2本の偏心ピン189a,189bは、クランク板187における筒状移動体167と対向する側面において、回転中心から所定距離だけ離れた同一円周上の周方向に所定角度をおいた2箇所に取付けられ、筒状移動体167の外面に向けて互いに平行に突出されている。そして、一方の偏心ピン189aの突出高さが他方の偏心ピン189bの突出高さよりも高くなっている。以下、一方の偏心ピン189aを「高偏心ピン」といい、他方の偏心ピン189bを「低偏心ピン」という。
【0066】
筒状移動体167の外面のうちクランク板187と対向する領域には、打込みシリンダ121の長軸方向に所定の間隔を置いた2箇所に当該長軸方向と交差する方向に突出する係合突起191a,191bが形成されている。一方の係合突起191aの突出高さが他方の係合突起191bの突出高さよりも高くなっている。以下、一方の係合突起191aを「高係合突起」といい、他方の係合突起191bを「低係合突起」という。これにより低偏心ピン189bは、高係合突起191aには係合するが、低係合突起191bには、係合しない構成とされる。低係合突起191bには、高偏心ピン189aのみが係合する構成とされる。
【0067】
このような構成によれば、クランク板187の回転に伴う両偏心ピン189a,189bの後方への移動成分によって筒状移動体167が後方へと移動される。この移動の様子が
図10に示され、(A)(B)(C)(D)(E)の順に筒状移動体167が移動する。
図10の符号Lは、クランク板187の回転中心回りに回転する両偏心ピン189a,189bの公転軌跡を示しており、
図10ではクランク板187の図示が省略されている。クランク板187が回転すると、先ず低偏心ピン189bが高係合突起191aに係合して後方へ移動し、低偏心ピン189bが最も後方へ移動するまでの間に、高偏心ピン189aが低係合突起191bに係合して後方へ移動する。従って、高偏心ピン189aが最も後方へ移動したときに、筒状移動体167は最前端位置からが最後端位置へと移動される。
【0068】
このように、クランク板187が概ね1回転することにより、高係合突起191aが低偏心ピン189bにより後方へ移動され、低係合突起191bが高偏心ピン189aにより後方へ移動されることになり、比較的小径のクランク板187であっても、筒状移動体167のストローク量Sを大きくできる。このような2本の偏心ピン189a,189bを用いて筒状移動体167を移動させる機構の詳細については、特許第3676879号公報に記載されている。
【0069】
なお、掃除装置150は、第1の実施形態と同様、開閉弁153と管状部材155とノズル157とを主体として構成される。開閉弁153は、打込みシリンダ121の後端部側に形成された圧縮空気排出口151を開閉するように設けられる。管状部材155は、打込みシリンダ121の外面に沿って前方へと延在されるとともに固定されており、当該延在端部にノズル157が設けられる。ノズル157はドライバガイド141の近傍に配置される。また、ハンドル部103には、第1の実施形態と同様、掃除装置150に関連する開閉弁スイッチ156及び放出モード切替スイッチ158が備えられる。
【0070】
本実施の形態に係る釘打機100は、上記のように構成されている。従って、釘打ち作業を行う場合には、
図5に示すように、切替部材179を係止許容位置側に切替えるとともに、開閉弁スイッチ156を閉止側に切替え操作する。これにより、開閉弁153が通電駆動され、圧縮空気排出口151を閉止する。その状態で、コンタクトアーム141を被加工材に押し付けるとともに、トリガ103aを引き操作すると、電動モータ111が通電駆動される。これによって歯車減速機構183を介してクランク機構181が駆動され、前述したように、筒状移動体167、圧縮ピストン161及び打込みピストン123が共に後方へ移動される。
【0071】
圧縮ピストン161の後方への移動に伴い打込みシリンダ121のシリンダ室122の容積が減少され、シリンダ室122内の空気が圧縮される。
図10の(E)に示すように、クランク板187の高偏心ピン189aが最後端位置(上死点)に至ると、筒状移動体167、延いては圧縮ピストン161及び打込みピストン123が上死点に至り、これによりシリンダ室122に所定圧力の圧縮空気が生成される。そして、高偏心ピン189aが筒状移動体167の低係合突起191bから外れると、シリンダ室112内の圧縮空気によって筒状移動体167、圧縮ピストン161及び打込みピストン123が共に前方へ移動され、そして、前方へと移動された打込みピストン123のドライバ125がドライバガイド141の打込み通路141aに待機している釘を打撃し、被加工材に打込むことができる。釘の打込み動作後、打込みピストン123、圧縮ピストン161及び筒状移動体167は、打込みピストン123のピストン本体部124が緩衝材172に当接された位置(初期位置)に停止される。
【0072】
なお、
図10の(E)に示すように、高偏心ピン189aが筒状移動体167の低係合突起191bから外れたとき、低偏心ピン189bが係合突起191a,191bの移動領域から外れた位置にあり、筒状移動体167の前方への移動を妨げない。すなわち、筒状移動体167の係合突起191a,191bは、
図10に示すように、クランク板187の回転軸線回りを回転移動(公転)する偏心ピン189a,189bの回転領域のうち偏心ピン189a,189bが後方へ移動する領域(
図10の右半分)に配置されている。このため、筒状移動体167、圧縮ピストン161及び打込みピストン123の圧縮空気による前方への移動は、2本の偏心ピン189a,189bが共に前方へ移動する領域(
図10の左半分)に位置している間に遂行される。
【0073】
一方、掃除装置150を用いて掃除する場合は、
図6に示すように、切替部材179を係止解除位置に切替えるとともに、開閉弁スイッチ156を開放側に操作する。このときは、開閉弁153が通電されないため、当該開閉弁153が圧縮空気排出口151を開放する。その状態で電動モータ111を通電駆動する(コンタクトアーム141を被加工材に押し付け、かつトリガ103aを引き操作する)と、クランク機構181を介して筒状移動体167が後方へ移動されるが、このとき、ドライバ125に対する係止部材173の係止が解除されているため、打込みピストン123が初期位置に保持された状態で、圧縮ピストン161が筒状移動体167と共に後方へ移動される。圧縮ピストン161の後方への移動に伴い打込みシリンダ121のシリンダ室122の容積が減少され、シリンダ室122内の空気が圧縮される。すると、シリンダ室122内の圧縮空気が管状部材155を経てノズル157へと導かれ、当該ノズル157から前方へ放出される。これにより、釘打ちすべき加工材表面に存在していた塵や埃、あるいは釘同士を接着している接着剤が剥がれることで生した塵を吹き飛ばして作業領域を掃除することができる。
【0074】
後方へ移動された圧縮ピストン161及び筒状移動体167は、クランク板187の高偏心ピン189aが筒状移動体167の低係合突起191bから外れると、第1圧縮コイルバネ165及び第2圧縮コイルバネ169の付勢力によって初期位置に戻される。
【0075】
上記の掃除作業を行うに際し、第1の実施形態と同様に、放出モード切替スイッチ158を連続放出モード側に切替えた場合には、圧縮ピストン161の起動直後から、開閉弁153が連続的に開放されるため、シリンダ室122内の圧力が高くならず、ノズル157から弱い風が連続して放出される。一方、放出モード切替スイッチ158を断続放出モード側に切替えた場合には、圧縮ピストン161が後方へ所定量移動されてシリンダ室122内の圧力が高められた状態で、開閉弁153が断続的に開閉動作するため、ノズル157から強い風が断続的に放出される。すなわち、本実施の形態によれば、掃除すべき状況に対応して放出モードを適宜切替えることによって空気の放出力の強さを変えることができて便利である。
【0076】
なお、本実施形態の場合も、第1の実施形態の場合と同様、釘打ち作業時において、掃除装置150の開閉弁153は、釘打機100の内部機構が非定常動作状態になった場合にシリンダ室122内の圧縮空気を大気に放出させる大気開放バルブとして機能するように構成することが可能である。このように構成することで、シリンダ室122内に圧縮空気が残留することが防止され、釘の打込み動作を不能化し、釘の不測の打込み動作を防止することができる。
【0077】
なお、上述した実施の形態では、管状部材155が固定状に設けられる場合で説明したが、例えば管状部材155の少なくとも一部をホースによって形成するとともに、ホースクランプを介して管状部材155のノズル157側を打込みシリンダ121の外面あるいは圧縮シリンダ131の外面に取り外し可能に取付け、取り外した状態では、ノズル157の向きを任意に変え得る構成に変更してもよい。
【0078】
(本発明の第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態につき、
図12〜
図16を参照しつつ詳細に説明する。この実施形態は、圧縮空気を任意に放出して作業領域等を清掃するための掃除装置(エアダスタ)に関する変形例である。この実施形態では、釘打機100を構成する各構成部材の配置に関する構成が変更されているため、先ずこの点について釘打機100の外観構成を示す
図12を参照して簡単に説明する。
【0079】
図12に示すように、釘打機100の工具本体を構成する本体部101は、ほぼ対称形の1対のハウジングを合わせて結合しており、作業者が握るハンドル部103、釘打込み機構を収容する打込み機構収容部101A、圧縮装置を収容する圧縮装置収容部101B及び電動モータを収容するためのモータ収容部101Cを一体に備えている。そして、ハンドル部103、打込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B及びモータ収容部101Cは、ハンドル部103と圧縮装置収容部101Bが互いに対向する一方の2辺をなし、打込み機構収容部101Aとモータ収容部101Cが他方の2辺をなすように略四角形状に配置されるとともに、釘打機100の後部にハンドル部103が配置され、前部に圧縮機構収容部101Bが配置された構成とされる。なお、説明の便宜上、釘打機100の先端側(図示下側)を前又は前方、その反対側を後又は後方という。また、ハンドル部103と打込み機構収容部101Aとの連接側(図示左側)を上又は上方、ハンドル部103とモータ収容部101Cとの連接側(図示右側)を下又は下方という。
【0080】
マガジン105は、被打込材としての釘を直線状に収容する長方形状の長尺状部材であり、釘打機100の最先端部において、圧縮装置収容部101Bの前方に並行状に配置され、内部に収容された釘をドライバガイド141の打込み通路141aに向かって打込み方向と交差する方向から1本ずつ直線的に供給するよう構成されている。なお、釘打機100の内部機構である、釘打込み機構、圧縮装置、及び圧縮装置を駆動するための電動モータ、クランク機構、更には圧縮装置にて生成された圧縮空気を釘打込み機構に供給するための圧縮空気供給経路及び当該供給経路を開閉するメインバルブ等については、前述した第1の実施形態と概ね同様に構成されるため、便宜上、図示及び説明を省略する。ただし、掃除用の圧縮空気を生成するための圧縮装置については、当該圧縮装置の構成部材のうち、圧縮シリンダ131の一部が
図14、
図15に示される。
【0081】
本実施の形態に係る掃除装置250は、
図14及び
図15に示すように、圧縮シリンダ131の圧縮室131aに臨むようにシリンダヘッド131bに形成された圧縮空気排出口251と、圧縮空気排出口251を開放及び閉止するための開閉弁253と、圧縮空気排出口251が開放された際に、圧縮シリンダ131の圧縮室131a内の圧縮空気をノズル257に導くパイプまたはホース等からなる管状部材255と、圧縮空気を前方に向けて放出するノズル257とを主体として構成される。この開閉弁253が、本発明における「切替弁」に対応し、管状部材255が、本発明における「空気通路」に対応し、ノズル257が、本発明における「ノズル」に対応する。
【0082】
開閉弁253は、略円筒形の筒状部材として備えられ、シリンダヘッド131bに形成された取付孔131cに前後方向に移動可能に取付けられ、前方へ移動した位置(
図14参照)では圧縮空気排出口251を開放し、後方へ移動した位置(
図15参照)では圧縮空気排出口251を閉止する構成とされる。具体的には、開閉弁253の筒孔253aが通路とされ、当該開閉弁253の前方への移動により筒孔253aが圧縮空気排出口251に連通し、後方への移動により当該連通が遮断されるように構成される。上記の前方へ移動した位置が、本発明における「開放位置」に対応し、後方へ移動した位置が、本発明における「閉止位置」に対応する。また、筒孔253aが、本発明における「空気通路」に対応する。なお、圧縮空気排出口251は、前述した第1の実施形態で説明した空気通路135とは異なる独立した通路として設定される。また、開閉弁253の筒外周には、前後方向に所定間隔でOリング259が2個配置されている。これら2個のOリング259は、開閉弁253が閉止位置に置かれた場合に、圧縮空気排出口251を挟んで前後に位置し、これにより圧縮室131a内の圧縮空気が開閉弁153の外周面と取付孔131cの隙間から外部に漏出することを防止する。
【0083】
管状部材255は、本体部101の外側に配置されるとともに、延在方向の一端(後端)が開閉弁235の筒孔235aの先端(前端)に挿入嵌合されて当該筒孔235aと連通され、延在方向他端(前端)部が圧縮空気を放出するノズル257として設定されている。
図14に示すように、マガジン105の外面には、ノズルガイド261がネジ263により固定状に取付けられている。ノズルガイド261は、前後方向に貫通するガイド孔261aを有し、このガイド孔261a内に管状部材255のノズル257(前端部分)が摺動可能に嵌入されている。すなわち、ノズルガイド261は、ノズル257が開閉弁235と共に前後方向に移動する際、当該ノズル257の移動動作の安定化を図るガイド部材として備えられる。
【0084】
本実施の形態に係る開閉弁253は、コンタクトアーム(本実施の形態では、ドライバガイド141がコンタクトアームの機能を兼ね備える構成であり、以下の説明ではコンタクトアーム141という)と一体に前後方向に移動し、圧縮空気排出口251を開閉する機械式開閉弁として構成されている。開閉弁253がコンタクトアーム141と一体に移動するために、
図16に示すように、それらは連結機構270により連結されている。この連結機構270が、本発明における「連結部材」に対応する。
【0085】
図16に示すように、連結機構270は、前後方向(釘の打込み方向と平行な方向)に延在する1本の連結軸271と、前後2枚の連結プレート273,275とを主体として構成されている。2枚の連結プレート273,275は、長尺状の板材を曲げ加工することで所定形状に形成されるとともに、共に長尺方向の一端部が連結軸271に固定されている。そして、一方(前側)の連結プレート273は、コンタクトアーム141に向かって延在されるとともに、その延在端部(他端部)273aが当該コンタクトアーム141の外側側面にネジ274によって固定されている。また、他方の連結プレート275は、開閉弁253に向かって延在されるとともに、その延在端部(他端部)275aが開閉弁253のうち、シリンダヘッド131bの外側に突出された突出部にスプリングピン276(
図14参照)によって固定されている。
【0086】
コンタクトアーム141は、前述した第1の実施形態と同様、便宜上図示を省略する付勢部材としてのバネにより先端(前方)側に向かって突出するように付勢されている。すなわち、コンタクトアーム141は、被加工材に押付けられていない押付け解除状態(非釘打ち時)では、前方へと突出された突出位置に置かれ、このときには開閉弁253が圧縮空気排出口251を開放する開放位置に保持される。なお、本体部101のハンドル部103には、便宜上図示を省略するが、掃除側と釘打ち側とに切替え操作可能な掃除用スイッチが設けられている。そして、この掃除用スイッチが釘打ち側に切替えられているときには、第1の実施形態の場合と同様、トリガスイッチとコンタクトアームスイッチが共にオン状態に切替えられたときに電動モータが通電駆動され、いずれか一方、又は双方がオフ状態に切替えられたときに電動モータが停止されるように構成され、掃除側に切替えられているときには、トリガ103aによるトリガスイッチのオン・オフ操作のみによって電動モータの起動、停止が制御されるように構成されている。また、掃除用スイッチが掃除側に操作されたときには、メインバルブが働かない(開放動作しない)ようにコントローラによって制御される構成とされている。
【0087】
本実施の形態に釘打機100は、上記のように構成されている。従って、コンタクトアーム141が被加工材に押付けられていない状態、すなわち釘打ち作業が行われていない状態では、コンタクトアーム141は、図示省略のバネにより釘打機100の前方に突出されている。このため、連結機構170を介してコンタクトアーム141と連結された開閉弁253は、
図14に示すように、前方の開放位置へ移動されて圧縮空気排出口251を開放している。
【0088】
かかる状態において、掃除装置250を用いて掃除する場合は、掃除用スイッチを掃除側に切替える。この切替えにより、前述したように、電動モータはトリガ103aの操作のみによって制御されることになる。従って、トリガ103aを引き操作し、電動モータを通電駆動し、圧縮装置を駆動すれば、圧縮ピストンによって圧縮された圧縮室131a内の圧縮空気が圧縮空気排出口251から開閉弁253の筒孔253a及び管状部材255を経てノズル257へと導かれ、当該ノズル257から前方へ放出される。これにより、例えば釘打ちすべき加工材表面に存在していた塵や埃、あるいは釘同士を接着している接着剤が剥がれることで生した塵を吹き飛ばして作業領域を掃除することができる。
【0089】
なお、本実施の形態では、ノズル157からの圧縮空気の放出方向がコンタクトアーム141の先端に向かうように設定している。このため、コンタクトアーム141の先端を目印にして圧縮空気を放出することが可能となり、掃除を合理的に行うことができる。また、掃除用スイッチが掃除側に切替えられた場合には、メインバルブ137が作動しないように構成されているので、誤って釘打ち動作が行われることがない。
【0090】
一方、釘打ち作業を行う場合には、掃除用スイッチを釘打ち側に切替える。この切替えにより、前述したように、電動モータはトリガ103aとコンタクトアーム141との双方の操作によって制御されることになる。コンタクトアーム141を被加工材に押し付けると、当該コンタクトアーム141が後方(本体部101側)へ相対的に移動されてコンタクトアームスイッチがオンされる。と同時にコンタクトアーム141と連結機構270によって連結されている開閉弁253が、
図15に示すように、後方の閉止位置へ移動して圧縮空気排出口251を閉止する。この状態でトリガ103aを引き操作し、トリガスイッチがオンされると、電動モータが通電駆動されて圧縮装置が駆動される。これにより、前述した第1の実施形態の場合と同様、釘打ち作業を遂行することができる。
【0091】
上述のように、本実施の形態によれば、圧縮空気排出口251を開閉するための開閉弁253とコンタクトアーム141とを連結機構270によって連結し、開閉弁253を機械的に開閉動作させる構成としたので、開閉弁253の確実な開閉動作が可能となる。
【0092】
また、本実施の形態では、コンタクトアーム141の被加工材に対する押付け動作が解除され、コンタクトアーム141が前方へ突出した状態では、開閉弁253が圧縮空気排出口251を開放する位置に移動される構成としている。このため、例えば作業者が釘打ち作業の途中で被加工材に対するコンタクトアーム141の押し付け動作を解除した場合には、当該コンタクトアーム141の前方への移動と共に開閉弁253が開放位置へと移動され、圧縮空気排出口251を開放する。従って、圧縮室131aの圧縮空気がノズル257を通じて大気に放出されることで、圧縮装置から釘打込み機構へのエネルギ伝達が遮断され、釘打ち動作が中断される。すなわち、本実施の形態によれば、開閉弁253を開放側に作動させて大気開放バルブとして機能させることにより、釘の打込み動作を不能化し、釘の不測の打込み動作を防止することができる。また、次回の起動時において、圧縮室131a内に残留する圧縮空気が原因となって電動モータあるいは圧縮装置等に過大な負荷が作用することが回避され、電動モータあるいは圧縮装置等を過負荷から保護することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、釘打機100の前側において、圧縮シリンダ131をマガジン105に隣接して配置するとともに、シリンダヘッド131b側がコンタクトアーム141側となるように配置している。これにより開閉弁253をコンタクトアーム141に近づけて配置することが可能となるため、連結機構270による開閉弁253とコンタクトアーム141との連結を容易に行うことができる。
【0094】
なお、第3の実施形態では、コンタクトアーム141の前後方向の移動動作に連動して開閉弁253の開閉動作を機械的に行うことにつき、圧縮シリンダ131を釘打機100の前側に配置する場合で説明したが、第1の実施形態で説明した構成、すなわち圧縮シリンダ131が打込みシリンダ121に対して平行に配置する構成に適用してもよい。
【0095】
また、掃除装置150,250を備えた釘打機100においては、図示は省略するが、ノズル157,257から放出される圧縮空気の放出先であるコンタクトアーム141の先端に向かって光を照射するための照光装置を備えることが好ましい。