特許第5859467号(P5859467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859467
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】ホールプラグ
(51)【国際特許分類】
   F16J 13/14 20060101AFI20160128BHJP
   B62D 25/24 20060101ALI20160128BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   F16J13/14
   B62D25/24 A
   F16K17/30
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-1844(P2013-1844)
(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-134235(P2014-134235A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】谷亀 尚史
(72)【発明者】
【氏名】配島 広成
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−112947(JP,U)
【文献】 実公平04−017656(JP,Y2)
【文献】 実開平01−077582(JP,U)
【文献】 実開昭64−021079(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第3716700(DE,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1595771(EP,A2)
【文献】 英国特許出願公開第2495588(GB,A)
【文献】 特開2005−313692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00−13/24
B62D 25/24
F16K 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入水口から入った水を内部に溜めることが可能なハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、取付部材の開口孔へ挿入されて前記開口孔の周縁部に係合する係合部と、
前記ハウジングに形成され、前記ハウジングの内部に溜まった水を排水するための排水口と、
前記係合部における前記開口孔との当接部よりも上方に位置する前記ハウジングの部位に形成された軸受部と、
前記軸受部に軸部が回転可能に軸支され、前記排水口を開く開位置と閉じる閉位置とへ回転可能な弁体と、
前記軸部に設けられ、前記弁体を前記閉位置方向へ付勢力によって回転させると共に、前記ハウジング内部の水圧が前記付勢力より大きい場合に、前記弁体を前記開位置方向へ回転させるための付勢手段と、
を有し、
前記排水口が前記ハウジングの縦壁部に形成されており、前記排水口の上部が前記開口孔よりも上方に位置する、ホールプラグ。
【請求項2】
前記係合部は、前記開口孔の周縁部の一端に当接し、前記開口孔の内周方向へ弾性変形可能な弾性係合部と、前記開口孔の周縁部の他端に係合する溝部と、を備える請求項1に記載のホールプラグ。
【請求項3】
前記ハウジングの下部に形成され、前記弁体の下方側を覆う格子状部を有する請求項1または請求項2に記載のホールプラグ。
【請求項4】
前記弁体は前記排水口の開口縁部に当接する周縁部の肉厚が、前記周縁部より内側の中央部の肉厚より薄い請求項1〜3の何れか1項に記載のホールプラグ。
【請求項5】
前記排水口の開口面は取付けた状態で斜め上方に向いており、前記弁体を斜め下方側から支持している請求項1〜の何れか1項に記載のホールプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付部材に穿設された水抜き開口孔に取付けられるホールプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、特許文献1、2に示すものが知られている。特許文献1では、ドレインパイプの下端に形成された排水口の開口面が傾斜しており、この排水口を開閉するバルブが、固定された上部を回転中心として回転するようになっている。また、特許文献2では、フロアパネルの内側に溜まった水がプレートからチャンバ部に硫下する過程で、吸水ゴムが膨張し、それによって、チャンバ部の下端に設けられた弁体が押し下げられ、排水穴が開くようになっている。なお、開口孔を開閉するバルブまたは弁体を備えていないホールプラグとしては特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−112947号公報
【特許文献2】特開昭63−101180号公報
【特許文献3】特許4409548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2では、水抜き開口孔を開閉可能であるが、特許文献1ではバルブの取付位置によって、また、特許文献2では弁体の作動機構によってホールプラグの上下方向に沿った全長が長くなる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、水抜き開口孔を開閉可能で、且つ上下方向に沿った全長を短くできるホールプラグを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明のホールプラグは、入水口から入った水を内部に溜めることが可能なハウジングと、前記ハウジングに設けられ、取付部材の開口孔へ挿入されて前記開口孔の周縁部に係合する係合部と、前記ハウジングに形成され、前記ハウジングの内部に溜まった水を排水するための排水口と、前記係合部における前記開口孔との当接部よりも上方に位置する前記ハウジングの部位に形成された軸受部と、前記軸受部に軸部が回転可能に軸支され、前記排水口を開く開位置と閉じる閉位置とへ回転可能な弁体と、前記軸部に設けられ、前記弁体を前記閉位置方向へ付勢力によって回転させると共に、前記ハウジング内部の水圧が前記付勢力より大きい場合に、前記弁体を前記開位置方向へ回転させるための付勢手段と、を有し、前記排水口が前記ハウジングの縦壁部に形成されており、前記排水口の上部が前記開口孔よりも上方に位置する。
【0007】
請求項1に記載の発明のホールプラグでは、ハウジングに設けられた係合部が取付部材における開口孔の周縁部に係合する。また、ハウジングには、入水口から入り内部に溜まった水を排水するための排水口が形成されていると共に、ハウジングの軸受部に弁体の軸部が軸支されており、弁体は排水口を開く開位置と閉じる閉位置とへ回転する。さらに、弁体の軸部には付勢手段が設けられており、ハウジングの内部の水圧が付勢手段の付勢力より小さい場合には、付勢手段が弁体を閉位置方向へ付勢力によって回転させて排水口を閉じている。一方、ハウジングの内部の水量が増加し、水圧が付勢手段の付勢力より大きくなった場合には、付勢手段の付勢力に抗して弁体が開位置方向へ回転して排水口を開けて排水する。また、軸受部が、係合部における開口孔との当接部よりも上方に位置するハウジングの部位に形成されている。このため、弁体の回転中心が取付部材の開口孔より下方に位置する構成に比べて、ホールプラグの上下方向に沿った全長を短くできる。
また、請求項1に記載の発明のホールプラグでは、排水口がハウジングの縦壁部に形成されている。このため、取付部材の開口孔に取付けた状態で、水が溜まる鉛直方向に対して交差する方向から弁体が排水口を閉じる構成になる。この結果、弁体の自重が、付勢手段の付勢力に加わるので、付勢手段の負荷を軽減できる。また、万一、付勢手段の破損等によって、付勢手段による付勢力が弁体に作用しなくなった場合にも、弁体の自重により排水口を閉じることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は請求項1に記載のホールプラグにおいて、前記係合部は、前記開口孔の周縁部の一端に当接し、前記開口孔の内周方向へ弾性変形可能な弾性係合部と、前記開口孔の周縁部の他端に係合する溝部と、を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明のホールプラグでは、開口孔に取付ける場合に、弾性係合部を開口孔の周縁部の一端に押し付け、開口孔の内周方向へ弾性変形させ、溝部を開口孔の周縁部の他端に係合する。一方、開口孔から外す場合には、弾性係合部を開口孔の周縁部の一端に押し付け、開口孔の内周方向へ弾性変形させ、溝部を開口孔の周縁部の他端から外す。このため、開口孔に対する着脱が容易である。
【0010】
請求項3に記載の発明は請求項1または請求項2に記載のホールプラグにおいて、前記ハウジングの下部に形成され、前記弁体の下方側を覆う格子状部を有する。
【0011】
請求項3に記載の発明のホールプラグでは、ハウジングの下部に形成された格子状部が弁体の下方側を覆う。このため、格子状部を通して排水できる。また、弁体に飛び石等が衝突するのを格子状部によって防止することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3の何れか1項に記載のホールプラグにおいて、前記弁体は前記排水口の開口縁部に当接する周縁部の肉厚が、前記周縁部より内側の中央部の肉厚より薄い。
【0013】
請求項4に記載の発明のホールプラグでは、弁体における排水口の開口縁部に当接する周縁部の肉厚が、周縁部より内側の中央部の肉厚より薄い。このため、弁体の剛性を確保でき、且つ弁体の周縁部が撓み排水口の開口縁部に密着する。この結果、弁体のシール性が向上する。
【0016】
請求項に記載の発明は請求項1〜の何れか1項に記載のホールプラグにおいて、前記排水口の開口面は取付けた状態で斜め上方に向いており、前記弁体を斜め下方側から支持している。
【0017】
請求項に記載の発明のホールプラグでは、取付部材の開口孔に取付けた状態で、排水口の開口面が斜め上方に向いており、弁体を斜め下方側から支持している。このため、ホールプラグを取付部材の開口孔に取付けた状態で、ハウジングに水が溜まる鉛直方向に対して斜め上方から弁体が排水口を閉じる構成になる。この結果、弁体の自重が、付勢手段の付勢力に加わるので、排水口と弁体との密着性を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の本発明のホールプラグは、上記構成としたので、水抜き開口孔を開閉可能で、且つ上下方向に沿った全長を短くできる。さらに、付勢手段の負荷を軽減できる。
【0019】
請求項2に記載の本発明のホールプラグは、上記構成としたので、開口孔に対する着脱が容易である。
【0020】
請求項3に記載の本発明のホールプラグは、上記構成としたので、排水でき、且つ弁体の損傷を防止できる。
【0021】
請求項4に記載の本発明のホールプラグは、上記構成としたので、弁体のシール性を向上できる。
【0023】
請求項に記載の本発明のホールプラグは、上記構成としたので、排水口と弁体との密着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るホールプラグの閉弁状態を示す側断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るホールプラグを示す一部を断面とした溝部側の斜め上方から見た斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るホールプラグを示す溝部側の斜め下方から見た分解斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るホールプラグを示す弾性係合部側の斜め上方から見た斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るホールプラグのフラップ弁を示す側面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るホールプラグの開弁状態を示す側断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るホールプラグの取外し作業を示す側断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係るホールプラグの取外し作業及び取付け作業を示す側断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るホールプラグの閉弁状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1実施形態に係るホールプラグについて図1図8に従って説明する。なお、図中矢印UPはホールプラグの上方方向及び車体上方方向を示す。
【0026】
(ホールプラグの構成)
図1に示すように、本実施形態のホールプラグ10は、自動車の床部を構成する取付部材としてのフロアパネル12に形成された水抜き用の開口孔14に取付け可能となっている。
【0027】
図3に示すように、開口孔14は4辺のうちの1辺14Aが円弧状となっており、他の3辺14B、14C、14Dが直線となっている。そして、辺14Aと辺14Bとが対向しており、開口孔14の周縁部の一端が辺14Bで、他端が辺14Aとなっている。ホールプラグ10のハウジング16は、ケース18、パネル20、フィルター21を備えており、ケース18の内部にパネル20とフィルター21とが着脱可能に取付けられている。なお、パネル20とフィルター21をケース18と一体化した構成としてもよい。また、フィルター21を設けない構成としてもよい。
【0028】
図1に示すように、ホールプラグ10は、ケース18の上部22が開口孔14に挿入可能となっている。
【0029】
図4に示すように、ケース18の上部22の上方から見た形状は、4つの辺のうちの1つの辺22Aが円弧状で、他の3つの辺22B、22C、22Dが直線となっており、開口孔14に対応した形状となっている。ケース18の下部の外周部にはフランジ部26が突出形成されている。フランジ部26の上下方向から見た外周形状は、4辺のうちの1辺26Aが円弧状で、他の3辺26B、26C、26Dが直線となっており、開口孔14の周縁部に沿った形状となっている。
【0030】
ケース18における外周部には、フランジ部26の上方側に、フランジ部26に隣接して、溝28が連続して形成されている。この溝28には図3に示すパッキン30が取付け可能となっている。また、フランジ部26の外周部には周方向に沿って所定の間隔で凸部32が上方に向かって突出しており、パッキン30を取付け位置に保持するようになっている。
【0031】
図1に示すように、パッキン30は、フロアパネル12における開口孔14の周縁部の下面側に密着するようになっており、フランジ部26とフロアパネル12の下面との間をシールするようになっている。また、ケース18における上部22と溝28との間が開口孔14の周縁部に係合する係合部34となっており、係合部34は溝部36と弾性係合部38とを備えている。
【0032】
図2に示すように、溝部36はケース18の上部22の辺22Aの下方に形成されている。また、溝部36の上下方向から見た形状は円弧状となっており、開口孔14の辺14Aが挿入され、係合するようになっている。
【0033】
図4に示すように、弾性係合部38は、ケース18の上部22の辺22Bの下方に形成されている。また、弾性係合部38の上下方向から見た形状は直線状となっており、開口孔14の辺14B(図3参照)が係合するようになっている。
【0034】
弾性係合部38はケース18における上部22の外周壁部の一部を構成しており、上端縁部38Aを基点として、開口孔14の内側方向(図1の矢印A方向)へ弾性変形可能となっている。また、ケース18における弾性係合部38の長手方向(幅方向)両端部外側には、隙間44を開けて一対の凸部46が下方へ向かって突出している。
【0035】
図1に示すように、これらの凸部46の下端46Aは、弾性係合部38より外側において、フロアパネル12における開口孔14の周縁部の上面側の部位に接触するようになっている。また、凸部46の内側壁部46Bは外側下方から内側上方に傾斜しており、この内側壁部46Bの上端は、内側に向かって凸の円弧状となった縦壁部48に連結されている。なお、弾性係合部38の下端縁部38Bは、弾性によって開口孔14における辺14Bに押し付けられるようになっている。
【0036】
従って、ホールプラグ10を開口孔14に対して着脱する際には、弾性係合部38が上端縁部38Aを基点として開口孔14の内周方向(図1の矢印A方向)と外側方向(図1の矢印B方向)とへ弾性変形可能となっている。また、一対の凸部46の間に形成された凸部32の外周面32Aは外側下方から内側上方に向かって湾曲しており、ホールプラグ10を開口孔14に取付ける場合に、開口孔14における辺14Bを弾性係合部38の下端縁部38Bの方向へ誘導するようになっている。
【0037】
図4に示すように、ケース18における弾性係合部38が形成された側の部位には、入水部50が形成されており、入水部50の上方は入水口50Aとなっている。また、入水部50の外周壁部50Bには入水口52が形成されている。従って、入水口50A、隙間44、入水口52を通って、フロアパネル12上に溜まった水がケース18の入水部50の内部に入るようになっている。
【0038】
一方、ケース18における溝部36が形成された側の部位には、弁収納部54が形成されている。弁収納部54の上部は上壁部54Aで閉塞されており、弁収納部54の外周壁部54Bは、入水部50の外周壁部50Bに連結されている。
【0039】
図3に示すように、ケース18の弁収納部54の内部には、パネル20が、弁収納部54の下方に形成された開口部56から挿入され係合可能となっている。パネル20は上下方向に沿った縦壁部20Aと、縦壁部20Aの下端から水平方向へ延設された格子状部20Bとを備えている。パネル20の縦壁部20Aは弁収納部54と入水部50とを仕切るようになっており、縦壁部20Aには弁体としてのフラップ弁58が設けられている。また、縦壁部20Aの中央部には円形の排水口60が形成されており、排水口60を通して、入水部50から弁収納部54内へ水が流れ込むようになっている。フラップ弁58の上端部には軸部58Aが形成されており、フラップ弁58の軸部58Aと弁部62とは連結部58Bによって連結されている。また、弁部62は円形となっており、周縁部62Aが排水口60の開口縁部60Aに当接するようになっている。
【0040】
図1に示すように、ホールプラグ10を開口孔14に取付けた状態で、排水口60の上部が開口孔14よりも上方に位置するようになっている。
【0041】
図5に示すように、弁部62は、周縁部62Aの肉厚M1が、周縁部62Aより内周側の中央部62Bの肉厚M2より薄くなっている。従って、フラップ弁58の弁部62の剛性を確保でき、且つフラップ弁58の弁部62の周縁部62Aが撓み、排水口60の開口縁部60Aに密着するようになっている。なお、中央部62Bの肉厚M2は内周側に向かって肉厚が徐々に厚くなっている。
【0042】
図3に示すように、パネル20の縦壁部20Aの上部には、一対の軸受部64が弁収納部54の内部方向に向かって突出形成されている。
【0043】
図1に示すように、これらの軸受部64は、開口孔14との当接部となる係合部34の溝部36及び弾性係合部38の下端縁部38Bよりもホールプラグ10の上方に位置している。そして、これらの軸受部64には、フラップ弁58の軸部58Aの両端部がそれぞれ回転可能に軸支されている。従って、本実施形態のホールプラグ10は、軸受部64が開口孔14より下方に位置する構成に比べて、上下方向に沿った全長H1を短くできるようになっている。
【0044】
フラップ弁58の軸部58Aには、付勢手段としてのコイルスプリング66が配設されている。コイルスプリング66は軸部58Aの外周部に配設されており、コイルスプリング66の一端66Aは、フラップ弁58の連結部58Bに形成された係止部58Cに係止されている。また、コイルスプリング66の他端66Bは、弁収納部54の上壁部54Aの下面に形成された係止部68に係止されている。
【0045】
排水口60の開口面S1はホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14に取付けた状態で、斜め上方に向いており、鉛直方向から水平方向への開き角θ1で傾斜している。また、排水口60は、フラップ弁58によって開閉されるようになっており、排水口60の開口縁部60Aはフラップ弁58の弁部62を斜め下方側から支持している。
【0046】
従って、ホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14に取付けた状態で、鉛直方向(車体上下方向)に対して交差する方向となる斜め上方からフラップ弁58の弁部62が排水口60を閉じる構成になる。このため、フラップ弁58の自重が、コイルスプリング66の付勢力に加わるようになっている。なお、フラップ弁58の自重とは、フラップ弁58が重力により、軸部58Aを中心にして下方へ回転する際の力とする。
【0047】
ケース18における入水部50の底部50Cは、ホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14に取付けた状態で、排水口60の下端部60Bに向かって下方側へ傾斜した湾曲面となっている。このため、ケース18の入水部50の内部に入った水を、排水口60から弁収納部54に迅速且つ完全に流すことができるようになっている。
【0048】
ケース18の入水部50の内部にはフィルター21が、入水部50の上方に形成された入水口50Aから挿入され取付けられている。フィルター21は矩形のメッシュ21Aとメッシュ21Aの外周部を支持してケース18に係合する矩形の枠体21Bとを備えている。また、フィルター21は排水口60の上流側において入水部50から弁収納部54への流路を仕切っており、フィルター21を通過した水が排水口60を通して、入水部50から弁収納部54内へ水が流れ込むようになっている。
【0049】
図2に示すように、弁収納部54の下部は、パネル20の格子状部20Bによって覆われており、パネル20の格子状部20Bには矩形の開口部55が複数形成されている。従って、排水口60から弁収納部54の内部に入った水が開口部55を通してホールプラグ10の外部(車外)に排水されるようになっている。また、車両搭載時には、車両走行中にフラップ弁58やコイルスプリング66に飛び石等が衝突するのを格子状部20Bによって防止することができるようになっている。
【0050】
(作用・効果)
次に、本実施形態に係るホールプラグの作用及び効果について説明する。
図1に示すように、本実施形態のホールプラグ10では、フラップ弁58はコイルスプリング66の付勢力とフラップ弁58の自重とによって、排水口60を閉じる方向へ付勢されており、排水口60は閉じている。この結果、車外から排ガスや水等が浸入するのを防止できる。
【0051】
フロアパネル12上に水が入ると、水は、ハウジング16のケース18の入水口50A、隙間44、入水口52を通って入水部50の内部に入り、入水部50に溜まる。この際、入水部50に溜まった水が所定量に達するまでは、入水部50内の水圧が、コイルスプリング66の付勢力とフラップ弁58の自重より小さいため、フラップ弁58は排水口60を閉じている。
【0052】
図6に示すように、入水部50に溜まった水Wが所定量を越えて、入水部50の内部の水圧がコイルスプリング66の付勢力とフラップ弁58の自重より大きくなった場合には、フラップ弁58の軸部58Aが、パネル20の縦壁部20Aに形成した軸受部64に対して回転することで、フラップ弁58が開位置方向へ回転する。このため、入水部50の内部の水Wが矢印Wで示すように、排水口60を通り、パネル20の格子状部20Bの開口部55を通してホールプラグ10の外部(車外)に排水される。この結果、フロアパネル12上に電池パックが配置されているハイブリッド車においては、電池パックの浸水を防止できる。なお、本実施形態では、開口孔14がフロアパネル12の一般面(電池パックが取付けられる面)12Aに形成された凹部13の底部13Aに形成されており、水Wの水位が凹部13の上端に達する前にフラップ弁58が開位置方向へ回転するようになっている。
【0053】
また、本実施形態のホールプラグ10では、図1に示すように、フラップ弁58の軸部58Aを軸支する軸受部64が、開口孔14との当接部となる係合部34の溝部36及び弾性係合部38の下端縁部38Bよりも上方に位置している。このため、軸受部64が開口孔14より下方に位置する構成に比べて、ホールプラグ10の上下方向に沿った全長H1を短くでき、狭いスペースでも取付け可能となる。また、フロアパネル12の開口孔14から車体下方へ突出するホールプラグ10の突出長さH2も短くできる。
【0054】
また、本実施形態のホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14から取外す場合には、図7に示すように、ハウジング16のケース18の上部22または下部を弁収納部54側から入水部50側の方向(図7の矢印C方向)へ押圧する。これにより、弾性係合部38が上端縁部38Aを基点として開口孔14の内周方向(図7の矢印A方向)へ弾性変形し、ホールプラグ10が矢印A方向へスライドする。このため、ケース18の溝部36と開口孔14における辺14Aとの係合を外すことができる。その後、図8に示すように、凸部46の下端46Aと、フロアパネル12における開口孔14の辺14Bの近傍との当接部を回転中心P1としてホールプラグ10を下方(図8の矢印D方向)へ回転させて、ケース18の上部を開口孔14から下方へ引き抜く。この結果、ホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14から容易に取外すことができる。
【0055】
また、本実施形態のホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14へ取付ける場合には、図8に示すように、フロアパネル12の斜め下方側から、ハウジング16におけるケース18の上部22の弾性係合部38側の部位を開口孔14へ挿入する。そして、ケース18の弾性係合部38を斜め下方から、開口孔14の辺14Bに押し付け、上端縁部38Aを基点として開口孔14の内周方向(図8の矢印A方向)へ弾性変形させる。その後、凸部46の下端46Aと、フロアパネル12における開口孔14の辺14Bの近傍との当接部を回転中心P1としてホールプラグ10を上方(図8の矢印E方向)へ回転させる。その後、ホールプラグ10を開口孔14の辺14A側へスライドさせ、溝部36を開口孔14の辺14Aに係合させる。また、溝部36に開口孔14の辺14Aが係合すると、弾性係合部38は外側方向(図1の矢印B方向)へ戻り、下端縁部38Bがパッキン30に当接する。この結果、ホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14へ容易に取付けることができる。
【0056】
また、本実施形態のホールプラグ10では、ハウジング16の下部を構成するパネル20の格子状部20Bがフラップ弁58やコイルスプリング66の下方側を覆っている。従って、排水口60から弁収納部54の内部に入った水を、開口部55を通してホールプラグ10の外部(車外)に排水できる。また、車両走行中にフラップ弁58やコイルスプリング66に飛び石等が衝突し損傷するのを格子状部20Bによって防止できる。
【0057】
また、本実施形態のホールプラグ10では、排水口60の開口縁部60Aに当接するフラップ弁58の弁部62の周縁部62Aの肉厚M1が、中央部62Bの肉厚M2より薄くなっている。このため、フラップ弁58の弁部62の剛性を確保でき、且つフラップ弁58の弁部62の周縁部62Aが撓み、排水口60の開口縁部60Aに密着する。この結果、フラップ弁58のシール性を向上できる。
【0058】
また、本実施形態のホールプラグ10では、排水口60がパネル20の縦壁部20Aに形成されている。このため、ホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14に取付けた状態で、入水部50に水が溜まる鉛直方向に対して交差する方向からフラップ弁58の弁部62が排水口60を閉じる構成になる。この結果、フラップ弁58の自重が、コイルスプリング66の付勢力に加わるので、コイルスプリング66の負荷を軽減できる。また、万一、コイルスプリング66の破損等によって、コイルスプリング66による付勢力がフラップ弁58に作用しなくなった場合にも、フラップ弁58の自重により排水口を閉じることができる。さらに、排水口60の上部が開口孔14よりも上方に位置している。このため、水量が少ない場合には排水口60の上部が水面より上方となる。この結果、フラップ弁58に作用する水圧が下がり、コイルスプリング66の負荷をさらに軽減できる。
【0059】
また、本実施形態のホールプラグ10では、フロアパネル12の開口孔14に取付けた状態で、排水口60の開口面S1が斜め上方に向いており、フラップ弁58の弁部62を斜め下方側から支持している。このため、フラップ弁58の自重が、コイルスプリング66の付勢力に加わるので、コイルスプリング66の負荷をさらに軽減できる。
【0060】
また、本実施形態のホールプラグ10では、フロアパネル12の開口孔14に取付けた状態で、入水部50の底部50Cが、排水口60の下端部60Bに向かって下方側へ傾斜した湾曲面となっている。このため、フラップ弁58が開弁した際に、入水部50に溜まった水を迅速且つ完全に排水できる。
【0061】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記第1実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、コイルスプリング66に代えて、図9に示す第2実施形態にように、フラップ弁58の連結部58Bから、弾性変形可能な板ばね形状の凸部70を一体的に形成し、この凸部70を付勢手段とした構成としてもよい。この構成では、凸部70が弁収納部54の上壁部54Aの下面を押圧することで、フラップ弁58が排水口60を閉じるようになっている。
【0062】
また、上記第1実施形態では、付勢手段としてコイルスプリング66を使用したが、コイルスプリング66に代えて板ばね等の他の付勢手段を使用してもよい。
【0063】
また、上記各実施形態では、係合部34を溝部36と弾性係合部38とを備えた構成としたが、溝部36と弾性係合部38とに代えて、係合部34を弾性変形可能な係合爪等の他の構成としてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、排水口60の開口縁部60Aに当接するフラップ弁58の弁部62の周縁部62Aの肉厚M1を、中央部62Bの肉厚M2より薄くしたが、これに代えて、周縁部62Aの肉厚と中央部62Bの肉厚とを同じにしてもよい。また、排水口60の形状と弁部62の形状は円形以外の長円形状等の他の形状としてもよい。
【0065】
また、上記各実施形態では、ホールプラグ10をフロアパネル12の開口孔14に取付けた状態で、排水口60の開口面を斜め上方に向けたが、これに代えて、排水口60の開口面を垂直方向や水平方向へ向けた構成としてもよい。
【0066】
また、上記各実施形態では、入水部50の底部50Cを排水口60の下端部60Bに向かって下方側へ傾斜した湾曲面としたが、これに代えて、入水部50の底部50Cを直線状の傾斜面や水平面としてもよい。
【0067】
また、上記各実施形態では、パネル20の下壁部を矩形の開口部55が複数形成された格子状部20Bとしたが、開口部55の形状は円形等の他の形状としてもよい。また、パネル20の格子状部20B(下壁部)を無くした構成としてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、本発明のホールプラグを取付部材としての車両のフロアパネル12に適用したが、本発明のホールプラグは、フロアパネル12以外のエンジンアンダーカバー等の車両における他の部位にも適用可能である。さらに、車両以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 ホールプラグ
12 フロアパネル(取付部材)
14 開口孔
16 ハウジング
18 ケース
20 パネル
20A パネルの縦壁部
20B パネルの格子状部
22 ケースの上部
26 ケースのフランジ部
34 係合部
36 溝部(係合部)
38 弾性係合部(係合部)
58 フラップ弁(弁体)
50 入水部
54 弁収納部
60 排水口
62 フラップ弁の弁部
64 軸受部
66 コイルスプリング(付勢手段)
70 凸部(付勢手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9