特許第5859561号(P5859561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5859561改善された流動特性を有する触媒組成物並びにその製造方法及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859561
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】改善された流動特性を有する触媒組成物並びにその製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20160128BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
【請求項の数】14
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-542014(P2013-542014)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2013-544316(P2013-544316A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】US2011060200
(87)【国際公開番号】WO2012074710
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年5月21日
(31)【優先権主張番号】61/418,374
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599168648
【氏名又は名称】ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チー−イー・クオ
(72)【発明者】
【氏名】アガピオス・キリアコス・アガピオウ
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・エム・グロウチェウスキー
(72)【発明者】
【氏名】グハンシャム・ガヌ・エイチ・パテル
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−520427(JP,A)
【文献】 特表2004−521163(JP,A)
【文献】 特表2003−517059(JP,A)
【文献】 特表2014−501814(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/039948(WO,A1)
【文献】 特開2004−307652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60−4/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.チタン、ジルコニウム又はハフニウム原子を含むメタロセン触媒化合物;及び
b.金属カルボキシレート塩:
を含み、前記金属カルボキシレート塩がカルボン酸を含有せず、示差走査熱量分析によって測定した時に該金属カルボキシレート塩が75℃又はそれより低い融解ピークを何ら示さないようなものであるオレフィン重合用メタロセン触媒組成物の製造方法であって、
a. 遊離のカルボン酸を抽出するために前記金属カルボキシレート塩と3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒とを一緒にし;
b. 抽出された金属カルボキシレート塩を乾燥させ;そして
c. 乾燥済の抽出された金属カルボキシレート塩を前記触媒と一緒にする
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
前記カルボン酸が式RCOOH(ここで、Rは6〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)で表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属カルボキシレート塩が次式:
MQx(OOCR)y
(ここで、Mは元素周期表からの第13族金属であり;
Qはハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、シラン又はスルホネート基であり;
Rは12〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;
xは0〜3の整数であり;
yは1〜4の整数であり;そして
xとyとの合計は金属Mの原子価に等しい)
で表される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属カルボキシレート塩がカルボン酸アルミニウムを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒組成物が担体及び活性剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記メタロセン触媒化合物が
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2
(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2
(テトラメチルシクロペンタジエニル)(ブチルシクロペンタジエニル)MX2
Me2Si(インデニル)2MX2
Me2Si(テトラヒドロインデニル)2MX2
(n−プロピルシクロペンタジエニル)2MX2
(n−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2
(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2
HN(CH2CH2N(2,4,6−Me3フェニル))2MX2
HN(CH2CH2N(2,3,4,5,6−Me5フェニル))2MX2
(プロピルシクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)MX2
(ブチルシクロペンタジエニル)2MX2
(プロピルシクロペンタジエニル)2MX2及びそれらの組合せ
(ここで、MはZr又はHfであり、XはF、Cl、Br、I、Me、Bnz、CH2SiMe3及びC1−C5アルキル又はアルケニルより成る群から選択される)
より成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒組成物が担体及び活性剤を含み、前記メタロセン触媒化合物が(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2ZrX2及びそれらの組合せ(ここで、XはF、Cl、Br、I及びMeより成る群から選択される)から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記金属カルボキシレート塩を前記触媒組成物に、該触媒組成物の総重量を基準として0.1重量%〜20重量%存在させた、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒組成物20gが25℃〜50℃の温度において45秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径7mmの穴を有し、該漏斗は幹を持たないものである)、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒組成物20gが25℃〜50℃の温度において10秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径10mmの穴を有し、該漏斗は幹状部を持たないものである)、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒組成物20gが25℃〜50℃の温度において5秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径12mmの穴を有し、該漏斗は幹を持たないものである)、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒がC1−C10アルコール、C1−C10ケトン、C1−C10エステル、C1−C10エーテル、C1−C10アルキルハライド、C1−C10アルキロニトリル、C1−C10ジアルキルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記の乾燥済の抽出された金属カルボキシレート塩と触媒とを一緒にする工程が乾式ブレンディングを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野及び背景技術】
【0001】
メタロセン触媒は、ポリエチレンポリマー等のポリオレフィンポリマーを製造するために広く用いられている。それらは、効率的な方法並びに様々な新規ポリマー及び改良型ポリマーを提供してきた。オレフィン重合にメタロセン触媒を使うことには多くの利点があるが、有意の課題が残る。例えば、メタロセン触媒、特に担持されたメタロセン触媒は、流動性に劣ることがあり、触媒粒子が表面に付着したり凝集物を形成したりする傾向がある。既知のファウリング(汚れ付着)防止剤(防汚剤)や連続性添加剤/助剤等の他の物質を触媒組成物に加えると、流動性の問題がさらに悪化することがある。これは、貯蔵、輸送及びその後の重合反応器への乾燥触媒の送出において、実際上の問題を引き起こす。これらの問題に対処するための試みがいくつかあった。
【0002】
高活性メタロセン触媒によって引き起こされる反応器のファウリングに対処するためにしばしば、米国特許第6300436号及び同第5283278号の各明細書におけるように、カルボキシレート金属塩(金属カルボキシレート塩)のような他の添加剤が触媒に別個に又は担持された触媒組成物の一部として加えられている。しかしながら、斯かる添加剤は触媒の流動性の問題をさらに悪化させることがある。
【0003】
担持されたメタロセン触媒に関連した流動性の問題は、様々な方法で対処されてきた。米国特許第5795838号明細書は、メタロセンハライドに関するものであり、流動性の問題に対処するために、この特許は、担持触媒組成物を形成させるために用いられるベンゼン不溶性アルキルアルモキサンに関連して所定割合のアルキル基を有する触媒を用いることを指示しており、さらに乾燥触媒として用いる前にこの触媒を予重合させることを指示している。米国特許第6680276号及び同第6593267号の各明細書には、カルボキシレート金属塩と一緒にする前又はその際に触媒組成物を加熱することが開示されている。米国特許第6660815号明細書には、触媒の流動性及び嵩密度を改善するために、カルボキシレート金属塩と流動性改良剤との組成物を重合触媒と組み合わせて用いることが開示されている。米国特許第7323526号明細書には、改善された流動性を有する担持された触媒組成物が開示されており、この担持された触媒組成物は、アルキルアルモキサン、メタロセン−アルキル、平均粒子寸法0.1〜50μmを有する無機酸化物担体を含み、600℃超の温度で焼成され、随意にファウリング防止剤を含有する。国際公開WO2009/088428号には、適度な触媒流を維持するために触媒供給システムを冷却することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触媒系の流動性の問題に対処するためのこれらの試みにも拘わらず、特に約25℃を超える操作温度、特に約30℃を超える操作温度において、課題が残る。従って、高温においてより一層容易に流動し、高められた反応器操作性で連続的に重合プロセスで操作可能な改良型触媒系又は組成物が得られれば、有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
【0006】
ここに、改善された流動性を有するオレフィン重合用触媒組成物が開示される。該触媒組成物は、カルボン酸を本質的に含有せず、示差走査熱量分析によって測定した時に該金属カルボキシレート塩が75℃以下の融解ピークを何ら示さないようなものであるのが好ましい。
【0007】
金属カルボキシレート塩は、カルボン酸を本質的に含有しないものであり、ここで、このカルボン酸は、式RCOOH(ここで、Rは6〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)で表される。
【0008】
また、前記触媒組成物を製造するための方法及び該触媒組成物を利用する重合方法も開示される。この触媒組成物を製造するための方法は、金属カルボキシレート塩と3.0又はそれ以上の25℃における誘電率を有する有機溶媒とを一緒にして遊離のカルボン酸を抽出し;抽出された金属カルボキシレート塩を乾燥させ;そして乾燥させた抽出された金属カルボキシレート塩を前記触媒と一緒にすることを含むことができる。前記重合方法は、エチレン及び随意としてのα−オレフィンと触媒組成物とを反応器中でエチレンポリマー又はコポリマーを製造するための重合条件下で接触させることを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、比較例のステアリン酸アルミニウムについての示差走査熱量分析を示すグラフである。
図2図2は、カルボン酸を除去するためにメタノールで抽出したステアリン酸アルミニウムについての1回目の融解示差走査熱量分析を示すグラフである。
図3図3は、カルボン酸を除去するためにメタノールで抽出したステアリン酸アルミニウムについての1回目の結晶化示差走査熱量分析を示すグラフである。
図4図4は、メタノールで抽出したステアリン酸アルミニウムについての2回目の融解示差走査熱量分析を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳しい説明
【0011】
本発明の化合物、成分、組成物及び/又は方法を開示して説明する前に、別段示されていなければ本発明は特定の化合物、成分、組成物、反応成分、反応条件、リガンド、メタロセン構造等に限定されるものではなく、別段の規定がなければ変更可能であるということを理解すべきである。また、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定を意図するものではないことも、理解すべきである。
【0012】
また、本明細書及び特許請求の範囲において用いた時の単数表現は、別段の定めがなければ複数の場合を包含することも、理解しなければならない。従って、例えば「脱離基で置換された」部分におけるような「脱離基」と言った時には、1個より多くの脱離基も包含し、その部分は2個以上のかかる基で置換されていてもよい。同様に、「ハロゲン原子で置換された」部分におけるような「ハロゲン原子」と言った時には、1個より多くのハロゲン原子も包含し、その部分は2個以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、「置換基」と言った時には1個以上の置換基を包含し、「リガンド」と言った時には1個以上のリガンドを包含する、等々。
【0013】
ここで用いた時、元素周期表及びその族についてのすべての参照は、HAWLEY'S CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY、第13版、John Wiley and Sons社(1997年)に発表された新表記法(IUPACからの認可でそこに再現されたもの)によるものであるが、ローマ数字で示された以前のIUPAC(これも同じものに現れる)を参照している場合や別段の定めがある場合は除く。
【0014】
改善された流動性を有するオレフィン重合用触媒組成物がここに開示される。この触媒組成物は、金属カルボキシレート塩及びメタロセン触媒化合物を含むことができ、改善された流動性を有する。この触媒組成物は、供給系を冷却する必要なく、高められた反応器操作性で連続的に重合方法で操作することが可能であり得る。また、前記触媒組成物の製造方法及びエチレン/α−オレフィンコポリマーを製造するための重合方法もここに開示される。
【0015】
触媒化合物と組み合わせて純粋な金属カルボキシレート塩を用いることによって、触媒組成物の流動性の実質的な改善がもたらされることが見出された。特に、以下に記載される重合触媒系を、式RCOOH(ここで、Rは6〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)で表されるカルボン酸を本質的に含有しない金属カルボキシレート塩と組み合わせて、用いることにより、例えば約25℃を超える温度、特に約30℃を超える温度における触媒流動性の実質的な改善がもたらされる。
【0016】
メタロセン触媒
【0017】
前記触媒系は、少なくとも1種のメタロセン触媒成分を含むことができる。ここで用いた時、「触媒系」とは、触媒、例えばここに記載されるようなメタロセン触媒と、少なくとも1種の助触媒(時に活性剤とも称される)と、随意成分(担体、添加剤、例えば連続性添加剤/補助剤、スカベンジャー等)との組合せ物を指すことができる。ここでは、触媒組成物とは、触媒化合物と、カルボン酸及び/又はカルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩を本質的に含有しない又は含有しない本発明の金属カルボキシレート塩との組合せ物を指すことができる。
【0018】
メタロセン触媒又はメタロセン成分は、少なくとも1個の第3〜12族金属原子に結合した1個以上のCpリガンド(シクロペンタジエニルリガンド及びシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンド)及び少なくとも1個の金属原子に結合した1個以上の脱離基を有する、「半サンドイッチ」化合物(即ち少なくとも1個のリガンド)及び「全サンドイッチ」化合物(即ち少なくとも2個のリガンド)を含むことができる。以下においては、これらの化合物を「メタロセン」又は「メタロセン触媒成分」と称する。
【0019】
1つの局面において、前記の1種以上のメタロセン触媒成分は、次式(I)で表わされる。
CpACpBMXn (I)
本明細書及び請求の範囲を通じて記載された時の前記メタロセン触媒化合物の金属原子「M」は、1つの実施形態においては第3〜12族原子及びランタニド系列の原子より成る群から選択することができ;より特定的な実施形態においては第4、5及び6族原子より成る群から選択することができ、より特定的な実施形態においてはTi、Zr、Hf原子から選択することができ、さらにより特定的な実施形態においてはZrであることができる。金属原子「M」に結合する基は、別段示されていなければ、以下に式及び構造において記載した化合物が中性になるようなものである。Cpリガンドが金属原子Mと共に少なくとも1つの化学結合を形成して「メタロセン触媒化合物」を形成する。Cpリガンドは、置換/抽出反応をそれほど受けやすくないという点で、触媒化合物に結合した脱離基とは異なる。
【0020】
Mは前記の通りであり;各XはMに化学結合し;各Cp基はMに化学結合し;nは0又は1〜4の整数であり;特定的な実施形態においては1又は2である。
【0021】
式(I)中のCpA及びCpBによって表わされるリガンドは同一であっても異なっていてもよく、シクロペンタジエニルリガンド又はシクロペンタジエニルにアイソローバル類似のリガンドであり、それらのいずれか又は両方はヘテロ原子を含有していてもよく、また、それらのいずれか又は両方は基Rで置換されていてもよい。1つの実施形態において、CpA及びCpBはシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル及びそれらの置換誘導体より成る群から独立的に選択される。
【0022】
式(I)の各CpA及びCpBは独立的に、非置換であってもよく、置換基Rの1つ又は組合せによって置換されていてもよい。式(I)中に用いられた時の置換基Rの非限定的な例には、水素基、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せが包含される。
【0023】
式(I)に関するアルキル置換基Rのより一層特定的な非限定的例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、メチルフェニル及びt−ブチルフェニル基等(それらのすべての異性体、例えばt−ブチル、イソプロピル等を包含する)が包含される。その他の可能な基には、置換アルキル及びアリール、例えばフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、ヨードプロピル、ブロモヘキシル、クロロベンジル並びにヒドロカルビル置換オルガノメタロイド基(トリメチルシリル、トリメチルゲルミル、メチルジエチルシリル等を含む);並びにハロカルビル置換オルガノメタロイド基(トリス(トリフルオロメチル)シリル、メチルビス(ジフルオロメチル)シリル、ブロモメチルジメチルゲルミル等を含む);並びに二置換ホウ素基(例えばジメチルホウ素を含む);並びに二置換第15族基(ジメチルアミン、ジメチルホスフィン、ジフェニルアミン、メチルフェニルホスフィンを含む)、第16族基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、フェノキシ、メチルスルフィド及びエチルスルフィドを含む)が包含される。その他の置換基Rには、ビニルを末端基とするリガンドを含むオレフィン性不飽和置換基(これに限定されるわけではない)のようなオレフィン類、例えば3−ブテニル、2−プロペニル、5−ヘキセニル等が包含される。1つの実施形態においては、少なくとも2個のR基(1つの実施形態においては2個の隣接したR基)が結合して、炭素、窒素、酸素、リン、ケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、ホウ素及びそれらの組合せより成る群から選択される3〜30個の原子を有する環構造を形成する。また、1−ブタニルのような置換基Rが元素Mに対する結合連結を形成してもよい。
【0024】
式(I)中の各Xは、1つの実施形態においては任意の脱離基より成る群から;ハロゲンイオン、ヒドリド、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せより成る群から、独立的に選択される。別の実施形態において、Xは、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C6〜C16アリールオキシ、C7〜C18アルキルアリールオキシ、C1〜C12フルオロアルキル、C6〜C12フルオロアリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素並びにそれらの置換誘導体である。ある種の実施形態において、Xはヒドリド、ハロゲンイオン、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、C1〜C6アルコキシ、C6〜C14アリールオキシ、C7〜C16アルキルアリールオキシ、C1〜C6アルキルカルボキシレート、C1〜C6フッ素化アルキルカルボキシレート、C6〜C12アリールカルボキシレート、C7〜C18アルキルアリールカルボキシレート、C1〜C6フルオロアルキル、C2〜C6フルオロアルケニル及びC7〜C18フルオロアルキルアリールから選択される。ある種の実施形態において、Xはヒドリド、クロリド、フルオリド、メチル、フェニル、フェノキシ、ベンゾキシ、トシル、フルオロメチル及びフルオロフェニルから選択される。ある種の実施形態において、XはC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、置換C1〜C12アルキル、置換C6〜C12アリール、置換C7〜C20アルキルアリール並びにC1〜C12ヘテロ原子含有アルキル、C1〜C12ヘテロ原子含有アリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有アルキルアリールから選択され;さらにより一層特定的な実施形態においてはクロリド、フルオリド、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、ハロゲン化C1〜C6アルキル、ハロゲン化C2〜C6アルケニル及びハロゲン化C7〜C18アルキルアリールから選択される。ある種の実施形態において、Xはフルオリド、メチル、エチル、プロピル、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、フルオロメチル(モノ−、ジ−及びトリフルオロメチル)並びにフルオロフェニル(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタフルオロフェニル)から選択される。
【0025】
前記メタロセン触媒化合物及び/又は成分には、式(I)においてCpA及びCpBが少なくとも1つの架橋基(A)によって互いに架橋されて式(II)で表わされる構造になったものが包含される。
CpA(A)CpBMXn (II)
【0026】
式(II)で表わされるこれらの架橋化合物は、「架橋メタロセン」と称される。CpA、CpB、M、X及びnは、式(I)について上で定義した通りであり;ここで、各CpリガンドはMに化学結合し、(A)は各Cpに化学結合する。架橋基(A)の非限定的な例には、二価アルキル、二価低級アルキル、二価置換アルキル、二価ヘテロアルキル、二価アルケニル、二価低級アルケニル、二価置換アルケニル、二価ヘテロアルケニル、二価アルキニル、二価低級アルキニル、二価置換アルキニル、二価ヘテロアルキニル、二価アルコキシ、二価低級アルコキシ、二価アリールオキシ、二価アルキルチオ、二価低級アルキルチオ、二価アリールチオ、二価アリール、二価置換アリール、二価ヘテロアリール、二価アラルキル、二価アラルキレン、二価アルカリール、二価アルカリーレン、二価ハロアルキル、二価ハロアルケニル、二価ハロアルキニル、二価ヘテロアルキル、二価ヘテロ環、二価ヘテロアリール、二価ヘテロ原子含有基、二価ヒドロカルビル、二価低級ヒドロカルビル、二価置換ヒドロカルビル、二価ヘテロヒドロカルビル、二価シリル、二価ボリル、二価ホスフィノ、二価ホスフィン、二価アミノ、二価アミン、二価エーテル、二価チオエーテルが包含される。架橋基Aの追加の非限定的例には、少なくとも1個の第13〜16族原子(例えば炭素、酸素、窒素、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム及びスズ原子並びにそれらの組合せだが、これらに限定されるわけではない)を含有する二価炭化水素基が包含される。ここで、これらのヘテロ原子はまた、中性原子価を満たすためにC1〜C12アルキル又はアリール置換されていてもよい。架橋基(A)はまた、ハロゲン基及び鉄を含めて(式(I)について)上で規定した通りの置換基Rを含有していてもよい。架橋基(A)のより一層特定的な非限定的例は、C1〜C6アルキレン、置換C1〜C6アルキレン、酸素、硫黄、R'2C=、R'2Si=、−Si(R')2Si(R'2)−、R'2Ge=、R'P=(ここで、「=」は2つの化学結合を表わす)によって代表され、ここで、R'はヒドリド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、ヒドロカルビル置換オルガノメタロイド、ハロカルビル置換オルガノメタロイド、二置換ホウ素、二置換第15族原子、置換第16族原子及びハロゲン基より成る群から独立的に選択され、2個又はそれより多くのR'が結合して環又は環系を形成してもよい。1つの実施形態において、式(II)の架橋メタロセン触媒成分は、2個又はそれより多くの架橋基(A)を有する。
【0027】
架橋基(A)の他の非限定的な例には、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ジフェニルメチレン、1,2−ジメチルエチレン、1,2−ジフェニルエチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、ジメチルシリル、ジエチルシリル、メチルエチルシリル、トリフルオロメチルブチルシリル、ビス(トリフルオロメチル)シリル、ジ(n−ブチル)シリル、ジ(n−プロピル)シリル、ジ(イソプロピル)シリル、ジ(n−ヘキシル)シリル、ジシクロヘキシルシリル、ジフェニルシリル、シクロヘキシルフェニルシリル、t−ブチルシクロヘキシルシリル、ジ(t−ブチルフェニル)シリル、ジ(p−トリル)シリル及びSi原子がGe又はC原子に置き換えられた対応物が包含され;ジメチルシリル、ジエチルシリル、ジメチルゲルミル及びジエチルゲルミルが包含される。
【0028】
別の実施形態において、架橋基(A)はまた、例えば4〜10個の環員、より特定的な実施形態においては5〜7個の環員を含む環であってもよい。環員は、上に挙げた元素から、特定的な実施形態においてはB、C、Si、Ge、N及びOの内の1種又はそれより多くから選択することができる。架橋部分として又はその一部として存在させることができる環構造の非限定的な例には、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン並びに1個又は2個の炭素原子がSi、Ge、N及びOの内の少なくとも1種、特にSi及びGeの内の少なくとも1種に置き換えられた対応する環がある。環とCp基との間の結合配置は、cis、trans又はそれらの組合せであってよい。
【0029】
環状架橋基(A)は、飽和であっても不飽和であってもよく、且つ/又は1個若しくはそれより多くの置換基を有していてもよく、且つ/又は1個若しくはそれより多くの他の環構造に縮合していてもよい。存在する場合、前記の1個又はそれより多くの置換基は、1つの実施形態においてはヒドロカルビル(例えばメチルのようなアルキル)及びハロゲン(例えばF、Cl)より成る群から選択される。随意に上記の環状架橋部分が縮合していてもよい1個以上のCp基は、飽和であっても不飽和であってもよく、4〜10個の環員、より特定的には5、6又は7個の環員(特定的な実施形態においてはC、N、O及びSより成る群から選択される)を有するもの、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルより成る群から選択される。さらに、これらの環構造は、例えばナフチル基の場合のようにそれら自体が縮合していてもよい。さらに、これらの(随意に縮合した)環構造は、1個又はそれより多くの置換基を有していてもよい。例示としてのこれらの置換基の非限定的な例には、ヒドロカルビル(特にアルキル)基及びハロゲン原子がある。
【0030】
式(I)及び(II)のリガンドCpA及びCpBは、1つの実施形態においては互いに異なるものであり、別の実施形態においては同じものである。
【0031】
さらに別の局面において、前記メタロセン触媒成分には、例えば国際公開WO93/08221号(参考用に本明細書に取り入れる)に記載されたようなモノリガンドメタロセン化合物(例えばモノシクロペンタジエニル触媒成分)が包含される。
【0032】
さらに別の局面において、前記の少なくとも1種のメタロセン触媒成分は、式(IV)で表わされる非架橋「ハーフサンドイッチ」メタロセンである。
CpAMQqn (IV)
(ここで、CpAは(I)中のCp基についてと同様に定義され、Mに結合するリガンドであり;
各Qは独立的にMに結合し;Qはまた、1つの実施形態においてはCpAにも結合し;
Xは(I)において上に記載したような脱離基であり;
nは0〜3の範囲であり、1つの実施形態においては1又は2であり、
qは0〜3の範囲であり、1つの実施形態においては1又は2である。)
1つの実施形態において、CpAはシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、それらの置換体及びそれらの組合せより成る群から選択される。
【0033】
式(IV)において、QはROO−、RO−、R(O)−、−NR−、−CR2−、−S−、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2、−H並びに置換及び非置換アリール基より成る群から選択され、ここで、Rは、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せより成る群から選択される。ある種の実施形態において、Rは、C1〜C6アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C6アルキルアミン、C6〜C12アルキルアリールアミン、C1〜C6アルコキシ及びC6〜C12アリールオキシより成る群から選択される。Qの非限定的な例には、C1〜C12カルバメート、C1〜C12カルボキシレート(例えばピバレート)、C2〜C20アリル及びC2〜C20ヘテロアリル部分が包含される。
【0034】
言い換えれば、前記「ハーフサンドイッチ」メタロセンは、例えば米国特許第6069213号明細書に記載されたように式(II)におけるように記載することができる。
CpAM(Q2GZ)Xn 又は T(CpAM(Q2GZ)Xn)m (V)
{ここで、M、CpA、X及びnは上で定義した通りであり;
2GZは多座リガンド単位(例えばピバレート)を形成し、
ここで、Q基の少なくとも1つはMとの結合を形成し、各Qが−O−、−NR−、−CR2−及び−S−より成る群から独立的に選択されるように規定され;
Gは炭素又はケイ素であり;そして
ZはR、−OR、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2及びヒドリドより成る群から選択され、
但し、Qが−NR−である場合にはZは−OR、−NR2、−SR、−SiR3、−PR2より成る群から選択され、また、Qについての中性原子価はZによって満たされ;
ここで、各Rは、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ並びにそれらの組合せより成る群から独立的に選択され;別の実施形態において、Rは、C1〜C10ヘテロ原子含有基、C1〜C10アルキル、C6〜C12アリール、C6〜C12アルキルアリール、C1〜C10アルコキシ及びC6〜C12アリールオキシより成る群から独立的に選択され;
nは特定的な実施形態においては1又は2であり、
TはC1〜C10アルキレン、C6〜C12アリーレン及びC1〜C10ヘテロ原子含有基及びC6〜C12ヘテロ環式基より成る群から選択される架橋基であり、各T基は隣接する「CpAM(Q2GZ)Xn」基同士を架橋するものであって、CpA基に化学結合し、
mは1〜7の整数であり、より特定的な実施形態においてはmは2〜6の整数である。}
【0035】
前記のメタロセン触媒成分は、より特定的には構造(VIa)、(VIb)、(VIc)、(VId)、(VIe)及び(VIf)で記載することができる。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
ここで、構造(VIa)〜(VIf)中のMは第3族〜第12族原子より成る群から選択され、より特定的な実施形態においては第3族〜第10族原子より成る群から選択され、さらにより一層特定的な実施形態においては第3族〜第6族原子より成る群から選択され、さらにより一層特定的な実施形態においては第4族原子より成る群から選択され、さらにより一層特定的な実施形態においてはZr及びHfより成る群から選択され、さらにより一層特定的な実施形態においてはZrであり;
式(VIa)〜(VIf)中のQは、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノ、アルキレン、アリール、アリーレン、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、アリールアミン(例えばピリジル)、アルキルアミン、ホスフィン、アルキルホスフィン、置換アルキル、置換アリール、置換アルコキシ、置換アリールオキシ、置換アミン、置換アルキルアミン、置換ホスフィン、置換アルキルホスフィン、カルバメート、ヘテロアリル、カルボキシレート(好適なカルバメート及びカルボキシレートの非限定的な例には、トリメチルアセテート、トリメチルアセテート、メチルアセテート、p−トルエート、ベンゾエート、ジエチルカルバメート及びジメチルカルバメートが包含される)、フッ素化アルキル、フッ素化アリール及びフッ素化アルキルカルボキシレートより成る群から選択され、ここで、Qを規定する飽和基は、1つの実施形態においては1〜20個の炭素原子を有し、芳香族基は1つの実施形態においては5〜20個の炭素原子を有し、
R*は、二価アルキル、二価低級アルキル、二価置換アルキル、二価ヘテロアルキル、二価アルケニル、二価低級アルケニル、二価置換アルケニル、二価ヘテロアルケニル、二価アルキニル、二価低級アルキニル、二価置換アルキニル、二価ヘテロアルキニル、二価アルコキシ、二価低級アルコキシ、二価アリールオキシ、二価アルキルチオ、二価低級アルキルチオ、二価アリールチオ、二価アリール、二価置換アリール、二価ヘテロアリール、二価アラルキル、二価アラルキレン、二価アルカリール、二価アルカリーレン、二価ハロアルキル、二価ハロアルケニル、二価ハロアルキニル、二価ヘテロアルキル、二価ヘテロ環、二価ヘテロアリール、二価ヘテロ原子含有基、二価ヒドロカルビル、二価低級ヒドロカルビル、二価置換ヒドロカルビル、二価ヘテロヒドロカルビル、二価シリル、二価ボリル、二価ホスフィノ、二価ホスフィン、二価アミノ、二価アミン、二価エーテル、二価チオエーテルから選択することができる。追加的に、R*は、1つの実施形態においては二価ヒドロカルビレン及びヘテロ原子含有ヒドロカルビレンより成る群から選択され;別の実施形態においてはアルキレン、置換アルキレン及びヘテロ原子含有ヒドロカルビレンより成る群から選択され;より特定的な実施形態においてはC1〜C12アルキレン、C1〜C12置換アルキレン及びC1〜C12ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンより成る群から選択され;さらにより一層特定的な実施形態においてはC1〜C4アルキレンより成る群から選択され;別の実施形態においては構造(VIf)中の両方のR*基は同一であり;
【0036】
Aは構造(II)中の(A)について上で記載した通りであり、より特定的には、1つの実施形態においては化学結合、−O−、−S−、−SO2−、−NR−、=SiR2、=GeR2、=SnR2、−R2SiSiR2−、RP=、C1〜C12アルキレン、置換C1〜C12アルキレン、二価C4〜C12環状炭化水素並びに置換及び非置換アリール基より成る群から選択され;より特定的な実施形態においてはC5〜C8環状炭化水素、−CH2CH2−、=CR2及び=SiR2より成る群から選択され;ここで、Rは1つの実施形態においてはアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、フルオロアルキル及びヘテロ原子含有炭化水素より成る群から選択され;より特定的な実施形態においてはRはC1〜C6アルキル、置換フェニル、フェニル及びC1〜C6アルコキシより成る群から選択され;さらにより一層特定的な実施形態においてはメトキシ、メチル、フェノキシ及びフェニルより成る群から選択され;
さらに別の実施形態においてはAは存在していなくてもよく、その場合には各R*はR1〜R13についてと同様に定義され;
各Xは(I)において上で記載した通りであり;
nは整数0〜4、別の実施形態においては1〜3、さらに別の実施形態においては1又は2であり;
1〜R13は独立的に、水素基、ヒドロカルビル、低級ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、アルキル、低級アルキル、置換アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、低級アルケニル、置換アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、低級アルキニル、置換アルキニル、ヘテロアルキニル、アルコキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、アルキルチオ、低級アルキルチオ、アリールチオ、チオキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アラルキレン、アルカリール、アルカリーレン、ハライド、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロ原子含有基、シリル、ボリル、ホスフィノ、ホスフィン、アミノ、アミン、シクロアルキル、アシル、アロイル、アルキルチオール、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−及びジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノより成る群から選択され;
1〜R13はまた、独立的に、1つの実施形態においてはC1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12フルオロアルキル、C6〜C12フルオロアリール及びC1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素並びにそれらの置換誘導体より成る群から;より特定的な実施形態においては水素基、フッ素基、塩素基、臭素基、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、C1〜C6フルオロアルキル、C2〜C6フルオロアルケニル、C7〜C18フルオロアルキルアリールより成る群から選択され;さらにより一層特定的な実施形態においては水素基、フッ素基、塩素基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル及び4−t−ブチルフェニル基より成る群から選択することもでき;隣接するR基は、飽和、一部飽和又は完全飽和の環を形成してもよい。)
【0037】
(VIa)で表わされるメタロセン触媒成分の構造は、例えば米国特許第5026798号、同第5703187号及び同第5747406号の各明細書に開示されたように多くの形を採ることができ、例えば米国特許第5026798号及び同第6069213号の両明細書に開示されたようなダイマー又はオリゴマー構造を含む。
【0038】
(VId)に表わされるメタロセンの特定的な実施形態においては、R1及びR2が共役6員炭素環系(置換されていても置換されていなくてもよい)を形成する。
【0039】
上に記載したメタロセン触媒成分がそれらの構造異性体や光学異性体、鏡像異性体(ラセミ混合物)を包含することも構想され、ある種の実施形態においては純粋なエナンチオマーであってもよい。
【0040】
ここで用いた時、ラセミ及び/又はメソ異性体を有する単一の架橋非対称置換メタロセン触媒成分は、それ自体では、少なくとも2個の異なる架橋メタロセン触媒成分とは見なさない。
【0041】
前記「メタロセン触媒化合物」(ここでは「メタロセン触媒成分」とも称される)は、ここに記載される任意の「実施形態」の任意の組合せを含むことができる。
【0042】
メタロセン化合物及び触媒は当技術分野において周知であり、任意の1種又はそれ以上をここで利用することができる。好適なメタロセンには、以下のものに開示されたメタロセン及び言及されたメタロセンのすべてが包含され、しかもこれらに限定されるわけではない:米国特許第7179876号、同第7169864号、同第7157531号、同第7129302号、同第6995109号、同第6958306号、同第6884748号、同第6689847号の各明細書、米国特許出願公開第2007/0055028号明細書並びに国際公開WO97/22635号、WO00/699/22号、WO01/30860号、WO01/30861号、WO02/46246号、WO02/50088号、WO04/026921号及びWO06/019494号(これらすべてを参考用に本明細書に取り入れる)。本発明において用いるのに好適な追加の触媒には、米国特許第6309997号及び同第6265338号の各明細書、米国特許出願公開第2006/019925号明細書、並びに以下の文献で言及されたものが包含される:Chem Rev 2000, 100, 1253, Resconi;Chem Rev 2003, 103, 283;Chem Eur. J. 2006, 12, 7546 Mitsui;J Mol Catal A 2004, 213, 141;Macromol Chem Phys, 2005, 206, 1847;及びJ Am Chem Soc 2001, 123, 6847。
【0043】
慣用の触媒及び混合触媒
触媒組成物には、上記の1種以上のメタロセン触媒及び/又は他の慣用のポリオレフィン触媒や下記の第15族原子含有触媒を含ませることができる。
【0044】
「第15族原子含有」触媒又は「第15族含有」触媒は、第3族〜第12族金属原子の錯体を含むものであることができ、ここで、前記金属原子は2〜8配位であり、その配位部分は少なくとも2個の第15族原子であって4個までの第15族原子を含むものであることができる。1つの実施形態において、第15族含有触媒成分は、第4族金属と1〜4個のリガンドとの錯体であって、第4族金属は少なくとも2配位であり、その配位部分は少なくとも2個の窒素を含むものである。代表的な第15族含有化合物は、例えば国際公開WO99/01460号;欧州特許公開第0893454A1号公報;米国特許第5318935号明細書;米国特許第5889128号明細書、米国特許第6333389B2号明細書及び米国特許第6271325B1号明細書に開示されたものである。
【0045】
1つの実施形態において、第15族含有触媒は、任意の程度でオレフィン重合に対して活性な第4族イミノフェノール錯体、第4族ビス(アミド)錯体及び第4族ピリジルアミド錯体を含むことができる。1つの可能な実施形態において、第15族含有触媒成分は、[(2,3,4,5,6Me56)NCH2CH2]2NHZrBz2(Boulder Chemical社より入手)のようなビスアミド化合物を含むことができる。
【0046】
触媒化合物用の活性剤及び活性化方法
触媒組成物の実施形態は、活性剤をさらに含むことができる。活性剤は、広い意味において、遷移金属化合物がオレフィン等の不飽和モノマーをオリゴマー化又は重合させる速度を高める物質の任意の組合せと定義される。触媒化合物は、配位結合又はカチオン的オリゴマー化及び/若しくは重合を可能にするのに充分な任意の態様で、オリゴマー化及び/又は重合触媒作用について、活性化させることができる。
【0047】
ある種の実施形態において、活性剤はルイス塩基、例えばジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エタノール又はメタノール等である。用いることができるその他の活性剤には、国際公開WO98/07515号に記載されたもの、例えばトリス(2,2',2''−ノナフルオロビフェニル)フルオロアルミネートが包含される。
【0048】
活性剤の組合せ物を用いてもよい。例えば、アルモキサン及びイオン化活性剤を組み合わせて用いることができる。例えば欧州特許公開第0573120B1号公報、国際公開WO94/07928号及び同WO95/14044号並びに米国特許第5153157号及び同第5453410号の各明細書を参照されたい。国際公開WO98/09996号には、過塩素酸塩、過ヨウ素酸塩及びヨウ素酸塩(それらの水和物を含む)によるメタロセン触媒化合物の活性化が記載されている。国際公開WO98/30602号及びWO98/30603号には、メタロセン触媒化合物用活性剤としてリチウム(2,2’−ビスフェニル−ジトリメチルシリケート)・4THFを使用することが記載されている。国際公開WO99/18135号には、オルガノホウ素−アルミニウム活性剤の使用が記載されている。欧州特許公開第0781299B1号公報には、シリリウム塩を非配位相溶性アニオンと組み合わせて使用することが記載されている。国際公開WO2007/024773号には、化学処理された固体酸化物、クレー鉱物、シリケート鉱物又はそれらの任意の組合せを含むことができる活性剤−担体の使用が示唆されている。また、放射線(欧州特許公開第0615981B1号公報を見よ)、電気化学的酸化等を用いる活性化方法も、中性メタロセン触媒化合物又は前駆体をオレフィンを重合させることができるメタロセンカチオンにするための活性化方法として構想することができる。メタロセン触媒化合物を活性化するためのその他の活性剤及び方法は、例えば米国特許第5849852号、同第5859653号及び同第5869723号の各明細書並びに国際公開WO98/32775号に記載されている。
【0049】
ある種の実施形態において、アルモキサンを触媒組成物中の活性剤として用いることができる。アルモキサン類は一般的に、−Al(R)−O−サブ単位(ここで、Rはアルキル基である)を含有するオリゴマー状化合物である。アルモキサン類の例には、メチルアルモキサン(MAO)、変性メチルアルモキサン(MMAO)、エチルアルモキサン及びイソブチルアルモキサンが包含される。特に抽出可能リガンドがハライドである場合には、アルキルアルモキサン及び変性アルキルアルモキサンが触媒活性剤として好適である。様々なアルモキサン及び変性アルモキサンの混合物を用いることもできる。さらなる説明については、米国特許第4665208号、同第4952540号、同第5041584号、同第5091352号、同第5206199号、同第5204419号、同第4874734号、同第4924018号、同第4908463号、同第4968827号、同第5329032号、同第5248801号、同第5235081号、同第5157137号、同第5103031号の各明細書並びに欧州特許公開第0561476A1号、同第0279586B1号、同第0516476A号、同第0594218A1号の各公報並びに国際公開WO94/10180号を参照されたい。
【0050】
アルモキサン類は、それぞれのトリアルキルアルミニウム化合物の加水分解によって製造することができる。MMAOは、トリメチルアルミニウム及びもっと高級のトリアルキルアルミニウム(例えばトリイソブチルアルミニウム)の加水分解によって製造することができる。MMAOは一般的には脂肪族溶媒中により一層可溶であり且つより一層貯蔵安定性が高い。アルモキサン及び変性アルモキサンを調製するための様々な方法があり、その非限定的な例は、米国特許第4665208号、同第4952540号、同第5091352号、同第5206199号、同第5204419号、同第4874734号、同第4924018号、同第4908463号、同第4968827号、同第5308815号、同第5329032号、同第5248801号、同第5235081号、同第5157137号、同第5103031号、同第5391793号、同第5391529号、同第5693838号、同第5731253号、同第5731451号、同第5744656号、同第5847177号、同第5854166号、同第5856256号及び同第5939346号各明細書並びに欧州特許公開第0561476A号、同第0279586B1号、同第0594218A号及び同第0586665B1号の各公報、並びに国際公開WO94/10180号及び同WO99/15534号に記載されている。1つの実施形態においては、目で見て透明なメチルアルモキサンを用いることができる。濁ったアルモキサンやゲル化したアルモキサンは、濾過することによって透明溶液にすることができ、また、濁った溶液から透明アルモキサンをデカンテーションすることもできる。別のアルモキサンとしては、変性メチルアルモキサン(MMAO)助触媒タイプ3A(米国特許第5041584号明細書に開示された、Akzo Chemicals社からModified Methyl Alumoxane type 3Aの商品名で商品として入手できるもの)がある
【0051】
ある種の実施形態においては、中性又はイオン性のイオン化用活性剤又は化学量論的活性剤、例えばトリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリスペルフルオロフェニルホウ素メタロイド前駆体若しくはトリスペルフルオロナフチルホウ素メタロイド前駆体、ポリハロゲン化ヘテロボランアニオン(例えば国際公開WO98/43983号を参照されたい)、ホウ酸(例えば米国特許第5942459号明細書を参照されたい)又はそれらの組み合わせ物を用いてもよい。また、中性又はイオン性活性剤は、単独で用いてもよく、アルモキサン又は変性アルモキサン活性剤と組み合わせて用いてもよい。
【0052】
中性化学量論的活性剤の例には、三置換されたホウ素、テルル、アルミニウム、ガリウム及びインジウム又はそれらの混合物が包含され得る。3つの置換基はそれぞれ独立的にアルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、アリールハライド、アルコキシ及びハライドから選択することができる。実施形態において、3つの置換基は独立的にハロゲン、単環若しくは多環(ハロ置換されたものを含む)アリール、アルキル及びアルケニル化合物並びにそれらの混合物から選択することができ;ある類の実施形態においては1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基及び3〜20個の炭素原子を有するアリール基(置換アリールを含む)である。別態様として、これら3つの基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、ナフチル又はそれらの混合物である。別の実施形態において、これら3つの基は、ハロゲン化(1つの実施形態においてはフッ素化)されたアリール基である。さらに別の例示的実施形態において、中性化学量論的活性剤は、トリスペルフルオルフェニルホウ素又はトリスペルフルオルナフチルホウ素である。
【0053】
イオン性化学量論的活性剤化合物は、このイオン化用化合物の残りのイオンと連結ししかし該イオンに配位結合せずに又は緩く配位結合しただけの活性プロトン又は他のある種のカチオンを含有することができる。かかる化合物及び類似物は、例えば欧州特許公開第0570982A号、同第0520732A号、同第0495375A号、同第0500944B1号、同第0277003A号及び同第0277004A号の各公報、並びに米国特許第5153157号、同第5198401号、同第5066741号、同第5206197号、同第5241025号、同第5384299号及び同第5502124号の各明細書に記載されている。
【0054】
担体
上記の触媒化合物は、当技術分野においてよく知られた担持方法又は下記の担持方法の内の1つを用いて、1種以上の担体と組み合わせることができる。例えば、触媒化合物は、担持された形、例えば担体の上に付着させ、担体と接触させ、担体中に組み込み、又は担体中若しくは担体上に吸着若しくは吸収させた形にあることができる。
【0055】
ここで用いた時、用語「担体」とは、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族酸化物及び塩化物を含む化合物を指す。好適な担体には、例えばシリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト、フィロシリケート、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−クロム、シリカ−チタニア、塩化マグネシウム、グラファイト、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト、フィロシリケート等が包含される。
【0056】
担体は、約0.1〜約50μm、又は約1〜約40μm、又は約5〜約40μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。
【0057】
担体は、約10〜約1000Å、又は約50〜約500Å、又は75〜約350Åの範囲の平均孔寸法を有することができる。ある種の実施形態において、担体の平均孔寸法は、約1〜約50μmである。
【0058】
担体は、約10〜約1000Å、又は約50〜約500Å、又は75〜約350Åの範囲の平均孔寸法を有することができる。ある種の実施形態において、担体の平均孔寸法は、約1〜約50μmである。
【0059】
担体は、約10〜約700m2/g、又は約50〜約500m2/g、又は約100〜約400m2/gの範囲の表面積を有することができる。
【0060】
担体は、約0.1〜約4.0cc/g、又は約0.5〜約3.5cc/g、又は約0.8〜約3.0cc/gの範囲の孔容積を有することができる。
【0061】
無機酸化物等の担体は、約10〜約700m2/gの範囲の表面積、約0.1〜約4.0cc/gの範囲の孔容積及び約1〜約500μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。別態様として、担体は約50〜約500m2/gの範囲の表面積、約0.5〜約3.5cc/gの範囲の孔容積、及び約10〜約200μmの範囲の平均粒子寸法を有することができる。ある種の実施形態において、担体の表面積は約100〜約400m2/gであり、この担体は、約0.8〜約3.0cc/gの孔容積及び約5〜約100μmの平均粒子寸法を有する。
【0062】
複数の触媒化合物を同じ担体又は別個の担体上に活性剤と一緒に担持させることもでき、また、活性剤を非担持の形で用いること又は担持された触媒化合物とは別の担体上に付着させることもできる。
【0063】
重合触媒化合物を担持するための当技術分野における様々な別の方法がある。例えば触媒化合物は、例えば米国特許第5473202号及び同第5770755号の各明細書に記載されたようにポリマー結合リガンドを含有することができる;触媒は、例えば米国特許第5648310号明細書に記載されたように噴霧乾燥させることができる;触媒と共に用いられる担体は、欧州特許公開第0802203A号公報に記載されたように官能化させることもでき、また、少なくとも1種の置換基又は脱離基は米国特許第5688880号明細書に記載されたように選択される。
【0064】
金属カルボキシレート塩
ここで用いた時、用語「金属カルボキシレート塩」とは、元素周期表からの金属部分を持つ任意のモノ−又はジ−又はトリ−カルボン酸塩を指す。非限定的な例には、飽和、不飽和、脂肪族、芳香族又は飽和環状カルボン酸塩が包含される。カルボキシレートリガンドの非限定的な例には、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、ピバレート、カプロエート、イソブチルアセテート、t−ブチルアセテート、カプリレート、ヘプタネート、ペラルゴネート、ウンデカノエート、オレエート、オクトエート、パルミテート、ミリステート、マルガレート、ステアレート、アラケート(arachate)及びターコサネート(tercosanoate)がある。金属部分の非限定的な例には、元素周期表からのAl、Mg、Ca、Sr、Sn、Ti、V、Ba、Zn、Cd、Hg、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Li及びNaの群から選択される金属がある。
【0065】
ここで用いるための好ましい金属カルボキシレート塩は、式RCOOH(ここで、Rは6〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)で表されるカルボン酸を本質的に含有しないものである。金属カルボキシレート塩は、クロマトグラフィーで測定した時に金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約1重量%以下の合計遊離カルボン酸、又は金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下の合計遊離カルボン酸を有することができる。
【0066】
従う金属カルボキシレート塩は、カルボン酸、カルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩を本質的に含有しないものであることができる。ここでの目的のためには、カルボン酸は、式A(OOCR)z(ここで、Aは水素、第1族金属、第2族金属又はそれらの組合せであり、Rは6〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、zは1又は2であってAの原子価に等しい)で表される。金属カルボキシレート塩は、クロマトグラフィーで測定した時に金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約1重量%以下の合計遊離カルボン酸、カルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩を有することができ、又は抽出された金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下の合計遊離カルボン酸、カルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩を有することができる。
【0067】
ここで用いるのに適した金属カルボキシレート塩は、示差走査熱量分析(DSC)によって測定した時にカルボン酸を本質的に含有しないものである。斯かる測定において、遊離の酸及び/又はカルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩に関連する融解温度は、DSC熱分析には存在しない。図1に、慣用のステアリン酸アルミニウムのDSC分析を示す。慣用のステアリン酸アルミニウムは、トリステアリン酸アルミニウムAl(St)3(融点約110−115℃)、ジステアリン酸アルミニウムAl(St)2(OH)(融点約145−150℃)、モノステアリン酸アルミニウムAl(St)(OH)2(融点約165−170℃)、並びにステアリン酸(融点約70℃)、パルミチン酸(融点約63℃)及びラウリン酸(融点約44℃)を含む遊離酸約2〜5重量%の組合せ物である。図1に示したように、融解温度は63.45℃において観察され、これはパルミチン酸のおおよその融点に相当する。
【0068】
図2に示したように、極性有機溶媒で抽出したジステアリン酸アルミニウムは、遊離酸及び/又は遊離酸の第1族塩及び/又は遊離酸の第2族塩を本質的に含有しないDSC図を有する。重要なことに、図2中で82.99℃及び129.67℃に見られるピークは、遊離のカルボン酸、カルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩の融解温度を表すものではなく、他の相変化を表すものである。これは、これは図3において観察される。図3は、図2に示される同じサンプルについてのサンプル冷却の際のDSC図を示す。ピークは78.94℃及び133.16℃における「負のピーク」であり、これらは82.99℃及び129.67℃において前に観察された相転移に対応する。図4を見ると、この同じサンプルの2回目の融解サイクルの際に、これらと同じ2つの相転移が87.48℃及び163.67℃において再び見られる。これは、これらのピークが別の相転移を表すことを証明している。重要なことに、これらの好ましい金属カルボキシレート塩中には、遊離のカルボン酸、カルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩についての融解温度は観察されない。
【0069】
ここで用いるのに好適な好ましい金属カルボキシレート塩は、示差走査熱量分析(DSC)で測定した時にカルボン酸を本質的に含有しないものである。それらは、DSC熱分析において遊離酸及び/又はカルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩に関連する融解温度を示さない。従って、金属カルボキシレート塩のDSC熱分析は、75℃以下、又は73℃以下、又は70℃以下、又は65℃以下の融解温度を何ら示さない。
【0070】
好ましい金属カルボキシレート塩は、75℃以上、又は80℃以上、又は85℃以上、又は90℃以上、又は95℃以上、又は100℃以上、又は105℃以上のDSC融解温度を有する。
【0071】
DSC測定は、ASTM法D3418に従ってPerkin Elmer System 7熱分析システムを用いて行うことができる。例えば、報告されるデータは、それぞれ第1の融解データからのTmax(Tmax第1メルト)及び第2の融解データからのTmax(Tmax第2メルト)である。Tmax第1メルトを得るためには、反応器のグラニュールのサンプルをその融解範囲を超える温度まで10℃/分のプログラムされた速度で加熱する。特定的には、サンプルを(1)−20℃に10分間保ち、(2)−20℃から200℃まで10℃/分で加熱し、(3)200℃に10分間保った。Tmax第2メルトを得るためには、サンプルを上記のようにその融解範囲を超える温度まで10℃/分のプログラムされた速度で加熱し、その結晶化範囲より低い温度(−20℃)まで10℃/分のプログラムされた速度で冷却し、この低い温度に10分間保ち、10℃/分のプログラムされた速度で200℃に再加熱し、報告されるデータは第1メルトからのものである。
【0072】
カルボキシレート金属塩は、次の一般式によって表すことができる。
M(Q)x(OOCR)y
【0073】
(ここで、Mは第3〜16族並びにランタニド及びアクチニド系列からの金属、好ましくは第8〜13族からの金属、より一層好ましくは第13族からの金属であり、1つの特定的な例はアルミニウムであり;
Qはハロゲン、水素、ヒドロキシ又はヒドロキシド、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、シラン又はスルホネート基であり;
Rは1〜100個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;
xは0〜3の整数であり、yは1〜4の整数であり、xとyとの合計は金属の原子価に等しい。)
【0074】
上記式中のRは同一であっても異なっていてもよい。Rの非限定的な例には、2〜100個の炭素原子を有するヒドロカルビル基があり、これにはアルキル、アリール、芳香族、脂肪族、環状、飽和又は不飽和のヒドロカルビル基が包含される。本発明の1つの実施形態において、Rは、8個以上の炭素原子、好ましくは12個以上の炭素原子、より一層好ましくは14個を超える炭素原子を有するヒドロカルビル基である。別の実施形態において、Rは、17〜90個の炭素原子、好ましくは17〜72個の炭素原子、特に好ましくは17〜54個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を含む。1つの実施形態において、Rは6〜30個の炭素原子を含み、8〜24個の炭素原子を含むのがより一層好ましく、16〜18個の炭素原子を含むのが特に好ましい(例えばパルミチル及びステアリル)。
【0075】
上記の式中のQの非限定的な例には、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アリールアルキル、アリールアルケニル又はアルキルアリール、アルキルシラン、アリールシラン、アルキルアミン、アリールアミン、アルキルホスフィド、アルコキシ(1〜30個の炭素原子を有するもの)のような基を含有する1種以上の同一又は異なる炭化水素が包含される。炭化水素含有基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもいいし、さらには置換されていてもよい。また、1つの実施形態におけるQは、ハライド、サルフェート又はホスフェートのような無機基である。
【0076】
前記カルボキシレート金属塩は、アルミニウムカルボキシレート、例えばアルミニウムモノ−、ジ−及びトリステアレート、アルミニウムオクトエート、オレエート及びシクロヘキシルブチレートを含むことができる。さらにより一層好ましい実施形態において、カルボキシレート金属塩は、トリステアリン酸アルミニウム(CH3(CH2)16COO)3Al、ジステアリン酸アルミニウム(CH3(CH2)16COO)2−Al−OH、及びモノステアリン酸アルミニウムCH3(CH2)16COO−Al(OH)2を含む。
【0077】
好ましい実施形態において、前記カルボキシレート金属塩は、カルボン酸、及び/又はカルボン酸の第1族塩、及び/又はカルボン酸の第2族塩を本質的に含有しないものである。ここで、カルボン酸は、式A(OOCR)zで表され、ここで、Aは水素、第1族金属、第2族金属又はそれらの組合せであり、Rは6〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、zは1又は2であってAの原子価に等しい。カルボキシレート金属塩の別の例には、チタンステアレート、スズステアレート、カルシウムステアレート、亜鉛ステアレート、ホウ素ステアレート及びストロンチウムステアレートがある。
【0078】
カルボキシレート金属塩を帯電防止剤、例えば脂肪族アミン、例えばKEMAMINE AS 990/2亜鉛添加物、エトキシル化ステアリルアミンとステアリン酸亜鉛とのブレンド、又はKEMAMINE AS 990/3、エトキシル化ステアリルアミンとステアリン酸亜鉛とオクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートとのブレンドと組み合わせることができる。これらのブレンドは共に、米国テネシー州メンフィス所在のChemtura Corporation社から入手できる。
【0079】
商品として入手できるカルボキシレート金属塩はしばしば、カルボキシレート金属塩の合成後に残留物として通常残る遊離のカルボン酸又はその誘導体を含有する。理論に縛られるものではないが、金属カルボキシレート塩の周囲温度及び約25℃以上における流動性の問題は、少なくとも一部は、カルボキシレート金属塩中に存在する遊離のカルボン酸又はその第1族若しくは第2族塩の画分のせいである。
【0080】
ここで好ましい触媒組成物は、遊離のカルボン酸を含有しないか又は遊離のカルボン酸を本質的に含有しない(「実質的に含有しない」とも言う)金属カルボキシレート塩又は金属カルボキシレート塩及び連続性添加剤を包含する。「実質的に含有しない」とは、金属カルボキシレート塩がDSC分析においてその酸又はその第1族若しくは第2族塩に対応する融解温度を示さないことを言う。
【0081】
別の実施形態において、カルボン酸を本質的に含有しない金属カルボキシレート塩は、クロマトグラフィーで測定した時に金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約1重量%以下の合計カルボン酸、好ましくは金属カルボキシレート塩の総重量を基準として約0.5重量%以下、より一層好ましくは約0.1重量%以下の合計カルボン酸を有する。
【0082】
ある実施形態において、遊離酸を本質的に含有しない金属カルボキシレート塩は、3.0より大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒で金属カルボキシレート塩を抽出することによって、得ることができる。この極性溶媒は、未精製金属カルボキシレート塩中に存在する遊離の酸を含む極性化合物の抽出の改善をもたらす。1つの実施形態においては、触媒化合物と組み合わされる金属カルボキシレート塩は、カルボン酸、カルボン酸の第1族塩及び/又はカルボン酸の第2族塩を除去するために有機溶媒で前もって抽出されたものであり、ここで、この有機溶媒は、C1−C10アルコール、C1−C10ケトン、C1−C10エステル、C1−C10エーテル、C1−C10アルキルハロゲン化物、C1−C10アルキロニトリル、C1−C10ジアルキルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される。別の実施形態において、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、メチルブテレート(buterate)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される。
【0083】
溶媒の誘電率は、次の式におけるεによって規定される:
F=(QQ’)/(εr2
ここで、Fは、溶媒中で距離rだけ隔てられた2つの電荷Q及びQ’の間の引力である。多くの溶媒の誘電率はよく知られており、例えばCRC Handbook of Chemistry and Physics第59版のE-55〜E-62頁に見出すことができる。
【0084】
好ましい溶媒は、25℃における誘電率が3以上、又は5以上、又は7以上、又は10以上、又は12以上、又は15以上、又は17以上のものである。ある種の実施形態において、溶媒は25℃における誘電率が少なくとも20のものであることができる。
【0085】
追加の連続性添加剤/助剤
上記の抽出された金属カルボキシレート塩に加えて、1種以上の追加の連続性添加剤を、例えば反応器中の静電気レベルの調節を補助するために、用いることが望ましいこともある。ここで用いた時、用語「連続性添加剤又は助剤」及び「ファウリング防止剤」とは、気相又はスラリー相重合方法において反応器のファウリングを減らし又はなくすのに有用な化合物又は化合物の混合物(例えば固体又は液体)を意味する。ここで、ファウリングは、反応器壁のシーティング、入口及び出口管の詰まり、大きい凝集物の形成、又はその他の当業者に周知の形の反応器の不調を含む任意の数の現象によって明らかにされ得る。本発明において、これらの用語は互換的に用いることができる。連続性添加剤は、触媒組成物の一部として用いることもでき、また、触媒組成物とは独立して反応器中に直接導入することもできる。ある種の実施形態において、連続性添加剤は、ここに記載される担持触媒組成物の無機酸化物上に担持される。
【0086】
連続性添加剤の非限定的な例には、脂肪酸アミン、アミド−炭化水素又はエトキシル化アミド化合物、例えば国際公開WO96/11961号に「表面変性剤」として記載されたもの;カルボキシレート化合物、例えばアリールカルボキシレート及び長鎖炭化水素カルボキシレート、並びに脂肪酸−金属錯体;アルコール、エーテル、サルフェート化合物、金属酸化物及び他の当技術分野において周知の化合物がある。連続性添加剤のいくつかの特定的な例には、1,2−ジエーテル有機化合物、酸化マグネシウム、ARMOSTAT 310、ATMER 163、ATMER AS-990、及び他のグリセロールエステル、エトキシル化アミン(例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデシルアミン)、アルキルスルホネート、及びアルコキシル化脂肪酸エステル;STADIS 450及び425、KEROSTAT CE 4009及びKEROSTAT CE 5009、クロムN−オレイルアントラニレート塩、ジ−t−ブチルフェノール及びMedialan酸のカルシウム塩;POLYFLO 130、TOLAD 511(α−オレフィン−アクリロニトリルコポリマー及びポリマー状ポリアミン)、EDENOL D32、アルミニウムステアレート、ソルビタンモノオレエート、グリセロールモノステアレート、メチルトルエート、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、トリエチルアミン、3,3−ジフェニル−3−(イミダゾール−1−イル)プロピン並びに類似化合物がある。ある種の実施形態において、追加の連続性添加剤は、記載したカルボキシレート金属化合物(随意に本項に記載した他の化合物と共に)である。
【0087】
前記の追加の連続性添加剤の内の任意のものを追加の連続性添加剤として、単独で又は組合せとして、用いることができる。例えば、抽出された金属カルボキシレート塩をアミン含有調節剤と組み合わせる{例えば、抽出された金属カルボキシレート塩をKEMAMINE(Chemtura Corporation社より入手可能)又はATMER(ICI Americas Inc.社より入手可能) 類に属する任意の類の製品と組み合わせる}ことができる。例えば、抽出された金属カルボキシレート塩を帯電防止剤、例えば脂肪族アミン、例えばKEMAMINE AS 990/2亜鉛添加物、エトキシル化ステアリルアミンとステアリン酸亜鉛とのブレンド、又はKEMAMINE AS 990/3、エトキシル化ステアリルアミンとステアリン酸亜鉛とオクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートとのブレンドと組み合わせることができる。
【0088】
ここに開示される実施形態において有用なその他の追加の連続性添加剤は、当業者によく知られたものである。どの追加連続性添加剤を用いるかに拘わらず、適切な追加の連続性添加剤を選択するに当たっては、反応器中に毒が導入されないように注意を払うべきである。さらに、選択された実施形態において、追加の連続性添加剤は、所望の範囲で静電気を配向させるのに必要最小量で用いるべきである。
【0089】
追加の連続性添加剤は、上に挙げた2種以上の追加の連続性添加剤との組合せとして、又は追加の連続性添加剤と抽出されたカルボキシレート金属塩との組合せとして、反応器に加えることができる。追加の連続性添加剤は、溶液又はスラリー(例えば鉱油とのスラリー)の形で反応器に加えることもでき、個別の供給流として反応器に加えることもでき、反応器に加える前に他の供給物と一緒にすることもできる。例えば、一緒にされた触媒−静電気調節剤の混合物を反応器に供給する前に、追加の連続性添加剤と触媒又は触媒スラリーとを一緒にすることができる。
【0090】
ある種の実施形態において、追加の連続性添加剤は、ポリマー生産速度を基準として約0.05〜約200ppmw、又は約2〜約100ppmw、又は約2〜約50ppmwの範囲の量で、反応器に加えることができる。ある種の実施形態において、追加の連続性添加剤は、ポリマー生産速度を基準として約2ppmw又はそれを超える量で反応器に加えることができる。
【0091】
触媒組成物
触媒組成物を製造するための方法は一般的に、触媒化合物とカルボン酸を本質的に含有しない金属カルボキシレート塩とを接触させることを伴う。接触とは、一緒にすること、ブレンドすること、混合すること等も指すことができることとする。
【0092】
1つの実施形態において、金属カルボキシレート塩は、触媒組成物中に約0.1〜約20重量%存在させる。この範囲内で、金属カルボキシレート塩は、触媒組成物中に、触媒組成物の総重量を基準として約0.5%以上、又は1%以上、又は2%以上、又は3%以上、又は4%以上、又は5%以上、又は6%以上、又は7%以上、又は8%以上、又は9%以上、又は10%以上存在させるのが好ましい。この範囲内でまた、金属カルボキシレート塩は、触媒組成物中に、触媒組成物の総重量を基準として約25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下存在させるのが好ましい。金属カルボキシレート塩は、上に開示した任意の上限及び任意の下限を含む範囲の量で、触媒組成物中に存在させることができる。
【0093】
1つの実施形態においては、メタロセン触媒(及び随意としての別の触媒)を、前記の金属カルボキシレート塩と一緒にし、接触させ、ブレンドし、且つ/又は混合する。触媒は、担持させることができる。別の実施形態において、この方法の工程は、触媒を形成させ、例えば担持された触媒を形成させ、そしてこの触媒を抽出された金属カルボキシレート塩と接触させることを含む。例示的実施形態において、触媒組成物は、触媒、活性剤又は助触媒、及び担体を含むことができる。
【0094】
当業者であれば、用いる触媒系及び金属カルボキシレート及び/又は他の添加剤化合物によっては、例えば触媒系の活性の低下を防ぐために、一定の温度及び圧力条件が必要とされるであろうことを認識する。
【0095】
1つの実施形態においては、連続性添加剤を本発明の触媒組成物とは独立して反応器中に直接導入する。1つの実施形態において、連続性添加剤は、カルボン酸を本質的に含有しないこの金属カルボキシレート塩を含む。
【0096】
別の実施形態において、担持された触媒系の存在下における反応器中への連続性添加剤の直接導入は、温度及び圧力、混合装置のタイプ、一緒にすべき成分の量、並びにさらには反応器中への触媒/連続性添加剤の組合せ物の導入のためのメカニズム等の1つ以上の条件に応じて、変化し得る。
【0097】
ある類の実施形態において、任意の時点における連続性添加剤の量対反応器中で製造されるポリマーの量の比は、0.5ppm〜1000ppmの範囲であることができ、別の実施形態においては1ppm〜400ppmの範囲、さらに別の実施形態においては5ppm〜50ppmの範囲であることができる。
【0098】
本発明の方法において用いるために企図される技術及び装置は、理解される。混合又は接触技術は、任意の機械的混合手段、例えば振り混ぜ、撹拌、タンブリング及びローリングを伴うものであることができる。企図される別の技術は、流動化の利用を伴うもの、例えば循環ガスが接触をもたらす流動床反応器中での流動化の利用を伴うものである。
【0099】
1つの実施形態においては、担持されたメタロセン触媒を金属カルボキシレート塩と共に、担持触媒のかなりに部分が金属カルボキシレート塩と混合され且つ/又は実質的に接触するような時間、タンブリングする。また、金属カルボキシレート塩を反応器中に導入する前に助触媒又は活性剤(例えばMAO又はMMAOのような有機金属化合物)と予混合することもできる。
【0100】
別の実施形態において、触媒系は担持されたものであり、好ましくは担持された触媒系は実質的に乾燥させ、予備成形し且つ/又は自由流動性(さらさらしている)のものである。ある実施形態においては、予備成形した担持触媒系を金属カルボキシレート塩と接触させる。金属カルボキシレート塩は、溶液状、エマルション状又はスラリー状であることができる。これはまた、自由流動性の粉体のような固体の形にあってもよい。別の実施形態においては、金属カルボキシレート塩と担持された触媒系、例えば担持されたメタロセン触媒系とを、窒素雰囲気下でロータリーミキサー中で(特に好ましくはこのミキサーはタンブルミキサーである)又は流動床混合プロセスで、接触させる。
【0101】
別の例示的実施形態においては、メタロセン触媒を担体と接触させて担持された触媒化合物を形成させる。この実施形態においては、触媒化合物用の活性剤を別の担体と接触させて担持された活性剤を形成させる。この特定実施形態においては、次いで、別々に担持された触媒と活性剤とを混合する前に、金属カルボキシレート塩を、担持された触媒化合物又は担持された活性剤と、任意の順序で混合し、別個に混合し、同時に混合し、又は担持された触媒若しくは担持された活性剤の内の一方のみ(好ましくは担持された活性剤)と混合する。
【0102】
ある類の実施態様において、活性剤成分の金属対メタロセン触媒化合物の金属のモル比は、0.3:1〜10000:1の範囲、好ましくは100:1〜5000:1の範囲、特に好ましくは50:1〜200:1の範囲とする。
【0103】
1つの実施形態において、非担持触媒及び連続性添加剤を反応器中に同時に注入する方法も提供される。1つの実施形態においては、触媒は非担持のもの、例えば米国特許第5317036号及び同第5693727号の各明細書並びに欧州特許公開第0593083A号公報に記載されたような液体の形にあるものである。液体の形の触媒を、連続性添加剤と共に反応器に、例えば国際公開WO97/46599号に記載された注入方法を用いて、供給することができる。
【0104】
1つの実施形態においては、前記触媒組成物20gが約25℃〜約50℃の温度において45秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径7mmの穴を有し、該漏斗は幹を持たないものである)。別の実施形態においては、前記触媒組成物20gが約25℃〜約50℃の温度において10秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径10mmの穴を有し、該漏斗は幹を持たないものである)。さらに別の実施形態においては、前記触媒組成物20gが約25℃〜約50℃の温度において5秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径12mmの穴を有し、該漏斗は幹を持たないものである)。
【0105】
重合方法
重合方法には、溶液、気相、スラリー相及び高圧法又はそれらの組合せが包含され得る。例示的実施形態においては、1種以上のオレフィン(そのうちの少なくとも1種はエチレン又はプロピレンである)の気相又はスラリー相重合が提供される。
【0106】
上記の本発明の触媒及び触媒系は、広範な温度及び圧力にわたって任意の予重合及び/又は重合プロセスに使用するのに好適である。温度は−60℃〜約280℃の範囲、好ましくは50℃〜約200℃の範囲、さらにより一層特定的な実施形態においては60℃〜120℃の範囲、さらに別の実施形態においては70℃〜100℃の範囲、さらに別の実施形態においては80℃〜95℃の範囲であることができる。
【0107】
1つの実施形態において、本発明の方法は、2〜30個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子、より一層好ましくは2〜8個の炭素原子を有する1種以上のオレフィンモノマーの溶液、高圧、スラリー又は気相重合法に向けられる。本発明は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等のような2種以上のオレフィン又はコモノマーの重合に特によく適している。
【0108】
本発明の方法において有用なその他のモノマーには、エチレン性不飽和モノマー、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役又は非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマー及び環状オレフィンが包含される。本発明において有用な非限定的なモノマーには、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン類、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンが包含され得る。本発明の方法の例示的実施形態においては、エチレンと共に4〜15個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子、特に好ましくは4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のα−オレフィンを有するコモノマーが気相法で重合されて、エチレンのコポリマーが製造される。本発明の方法の別の実施形態においては、エチレン又はプロピレンを少なくとも2種の異なるコモノマー(そのうちの1つは随意にジエンであってもよい)と重合させて、ターポリマーを生成させる。
【0109】
1つの実施形態において、本発明は、プロピレンを単独で重合させるため、又はプロピレンとエチレン及び/若しくは4〜12個の炭素原子を有する他のオレフィンを含む1種以上の他のモノマーとを重合させるための重合法、特に気相又はスラリー相法に向けられる。この重合方法は、エチレン及び随意としてのα−オレフィンと触媒組成物とを反応器中でエチレンポリマー又はコポリマーを製造するための重合条件下で接触させることを含むことができる。
【0110】
好適な気相重合法は、例えば米国特許第4543399号、同第4588790号、同第5028670号、同第5317036号、同第5352749号、同第5405922号、同第5436304号、同第5453471号、同第5462999号、同第5616661号及び同第5668228号、同第5627242号、同第5665818号及び同第5677375号の各明細書並びに欧州特許公開第0794200A号、同第0802202A号、同第0891990A2号及び同第634421B号の各公報に記載されたものである。
【0111】
スラリー重合法においては一般的に、約1〜約50気圧の範囲及びそれ以上の圧力並びに0℃〜約120℃の範囲の温度が採用される。スラリー重合法においては、エチレン及びコモノマー及びしばしば水素が触媒と共に添加された液状重合希釈剤媒体中で固体粒状ポリマーの懸濁液が形成される。希釈剤を含むこの懸濁液は、断続的に又は連続的に反応器から取り出され、揮発性成分がポリマーから分離され、(随意に蒸留後に)反応器にリサイクルされる。重合媒体中に用いられる液状希釈剤は、3〜7個の炭素原子を有するアルカンであるのが典型的であり、分枝鎖状アルカンであるのが好ましい。用いられる媒体は、重合条件下において液状であり且つ比較的不活性であるべきである。プロパン媒体を用いた場合には、反応希釈剤の臨界温度及び圧力以上においてこの方法を操作しなければならない。ヘキサン又はイソブタン媒体を用いるのが好ましい。
【0112】
本発明の重合技術は、粒子形重合又はスラリー法と称され、温度はポリマーが溶液状になる温度より低く保たれる。かかる技術は当技術分野においてよく知られており、例えば米国特許第3248179号明細書に記載されている。他のスラリー法には、ループ反応器を用いるもの及び直列、並列又はそれらの組合せの複数の撹拌反応器を利用するものが包含される。スラリー法の非限定的な例には、連続ループ又は撹拌タンク法が包含される。また、米国特許第4613484号明細書(参考用に本明細書に取り入れる)にもスラリー法のその他の例が記載されている。溶液法の例は、米国特許第4271060号、同第5001205号、同第5236998号及び同第5589555号の各明細書に記載されている。
【実施例】
【0113】
本発明をその特定実施形態に関連して説明してきたが、上記の説明は本発明を例示するためのものであり、その範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本発明が属する分野の当業者には、他の局面、利点及び変更が明らかであろう。
【0114】
従って、以下の実施例は、本発明の化合物をどのように製造して使用するかの完全な開示及び説明を当業者に与えるためのものであり、発明者が発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。
【0115】
比較例の金属カルボキシレート塩
比較用の金属カルボキシレート塩は、商品として入手できるアルミニウムジステアレート22のサンプルだった(米国テネシー州メンフィス所在のChemtura Corporation社)(AlSt2と記す)。AlSt2とは、11〜12重量%の灰分、〜0.5重量%の含水量及び3〜4重量%の遊離脂肪酸含有率を有していた。
【0116】
本発明の金属カルボキシレート塩
本発明の金属カルボキシレート塩は、表1に示したような様々な溶媒で抽出することによって調製した。抽出では、既知量のジステアリン酸アルミニウムを、AlSt2と示した溶媒とを撹拌しながら一緒にすることによって、抽出した。次いで溶媒を取り除き、抽出されたジステアリン酸アルミニウム(AlSt2−E)を乾燥させ、篩にかけ、抽出によって取り除かれた材料の量を測定するためにもう一度計量した。
【0117】
用いた溶媒の誘電率は周知であり、例えばCRC Handbook of Chemistry and Physics 59th EditionのE-55〜E-62頁に見出すことができる。メタノールは25℃における誘電率32.63を有する。エタノールは25℃における誘電率24.30を有する。イソプロパノール(2−プロパノール)は25℃における誘電率20.1を有する。
【表1】
【0118】
触媒組成物
触媒組成物を製造するために、示されたジステアリン酸アルミニウム(例えば抽出されたAlSt2−E又は比較例のAlSt2)と、表2に記載した担持メタロセン触媒化合物とを一緒にして、触媒組成物を製造した。この触媒組成物を無酸素条件下でセラム瓶中に所定量のカルボキシレート金属塩と共に装填した。この混合物を低タンブリングスピード下で示した時間の間、乾式ブレンドした。
【0119】
触媒Aは、自由流動性の固体としての、脱水シリカ上に担持させたビス(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド及びMAOである。触媒Bは、脱水シリカ上のジメチルシリル−ビス−テトラヒドロインデニルジルコニウムジクロリド及びMAOを含有する。
【0120】
流動性試験
触媒組成物の流動性を測定するために、漏斗試験を用いた。以下の手順は、触媒流動性を測定するために従った工程を概説する。触媒サンプルは空気及び湿分に対して敏感なので、試験は無酸素条件下で実施した。開口角度60°の円錐形の口及び底穴を有するガラス漏斗を試験用に用いた。この試験用漏斗は、底穴から突き出た幹を持たないものだった。漏斗の開口寸法は12mm、10mm及び7mmだった。
【0121】
工程は次の通りだった。(1)触媒サンプル20gを漏斗中に入れて漏斗の底をシールした。(2)測定を開始するために、漏斗の底のシールを取り除き、ストップウォッチを用いて触媒全部が漏斗を流れ抜けるための時間を測定した。(3)ストップウォッチの時間を記録し、より小さい底孔を有する漏斗を用いて手順を繰り返したが、触媒サンプルがある寸法の漏斗を流れ抜けなかったら、それより小さい寸法を有する漏斗を用いた試験をしなかった。
【0122】
流動性試験の結果を表2に示す。本発明のブレンド触媒は総じて、対応する比較用のブレンド触媒より良好な流動特性を示した。
【表2】
【0123】
さらに、例2からのステアリン酸アルミニウムの抽出された部分をさらに特徴付けするために、GC/MSデータを得た。表3中の次の結果が得られた。表3において、面積%はメタノール溶媒ピークを除いた後に100%に正規化したものである。
【表3】
【0124】
また、触媒組成物中にブレンドされるステアリン酸アルミニウムの量を変えて様々な実験を実施した。表4に示したように、3重量%の装填量では、比較例と本発明との間に触媒組成物の流れ特性の大きな変化はなかった。しかし、5重量%のステアリン酸アルミニウムの装填量では、本発明のAlSt2−Eを用いることによって流動特性の非常に大きな改善が達成される。
【表4】
【0125】
別の実施例において、AlSt2をメタノール及びアセトンで抽出した。次いでこのAlSt2−Eを触媒化合物(触媒A)と一緒にし、流動性試験を実施した。結果は下記の表5の通りである。
【表5】
*AlSt2から抽出したメタノール抽出5〜6重量%
**AlSt2から抽出したアセトン抽出4〜5重量%
【0126】
実験室重合反応器を用いて、触媒活性に対するAlSt2の抽出の効果も評価した。結果は下記の表6の通りである。
【表6】
【0127】
DSC測定
DSC測定は、ASTM法D3418に従ってPerkin Elmer System 7熱分析システムを用いて行った。例えば、報告されるデータは、それぞれ第1の融解データからのTmax(Tmax第1メルト)及び第2の融解データからのTmax(Tmax第2メルト)である。Tmax第1メルトを得るためには、反応器のサンプルのグラニュールをその融解範囲を超える温度まで10℃/分のプログラムされた速度で加熱する。特定的には、サンプルを(1)−20℃に10分間保ち、(2)−20℃から200℃まで10℃/分で加熱し、(3)200℃に10分間保った。Tmax第2メルトを得るためには、サンプルを上記のようにその融解範囲を超える温度まで10℃/分のプログラムされた速度で加熱し、その結晶化範囲より低い温度(−20℃)まで10℃/分のプログラムされた速度で冷却し、この低い温度に10分間保ち、10℃/分のプログラムされた速度で200℃に再加熱する。
【0128】
簡潔性の目的で、ある範囲だけをここに明示的に開示するが、
明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせることができ、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせることができ、同様に、明示的に記載されていない範囲を説明するために、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせることができる。
【0129】
引用したすべての文献は、その取り込みを許可するすべての法域については、その開示が本発明の説明と一致する程度に、参照によってすべてここに取り込まれるものとする。
なお本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
(1)a.触媒化合物;及び
b.金属カルボキシレート塩:
を含む触媒組成物であって、
前記金属カルボキシレート塩がカルボン酸を本質的に含有せず、示差走査熱量分析によって測定した時に該金属カルボキシレート塩が75℃又はそれより低い融解ピークを何ら示さないようなものである、前記組成物。
(2)前記カルボン酸が式RCOOH(ここで、Rは6〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である)で表される、上記(1)に記載の触媒組成物。
(3)前記金属カルボキシレート塩が次式:
MQx(OOCR)y
(ここで、Mは元素周期表からの第13族金属であり;
Qはハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、シラン又はスルホネート基であり;
Rは12〜30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;
xは0〜3の整数であり;
yは1〜4の整数であり;そして
xとyとの合計は金属Mの原子価に等しい)
で表される、上記(1)又は(2)に記載の触媒組成物。
(4)前記金属カルボキシレート塩がカルボン酸アルミニウムを含む、上記(1)又は(2)に記載の触媒組成物。
(5)前記金属カルボキシレート塩がモノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム又はそれらの組合せを含む、上記(1)又は(2)に記載の触媒組成物。
(6)前記触媒組成物が担体及び活性剤をさらに含み、前記触媒化合物がチタン、ジルコニウム又はハフニウム原子を含むメタロセン触媒化合物である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の触媒組成物。
(7)前記メタロセン触媒化合物が
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2、
テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)MX2、
(テトラメチルシクロペンタジエニル)(ブチルシクロペンタジエニル)MX2、
Me2Si(インデニル)2MX2、
Me2Si(テトラヒドロインデニル)2MX2、
(n−プロピルシクロペンタジエニル)2MX2、
(n−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、
(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、
HN(CH2CH2N(2,4,6−Me3フェニル))2MX2、
HN(CH2CH2N(2,3,4,5,6−Me5フェニル))2MX2、
(プロピルシクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)MX2、
(ブチルシクロペンタジエニル)2MX2、
(プロピルシクロペンタジエニル)2MX2及びそれらの組合せ
(ここで、MはZr又はHfであり、XはF、Cl、Br、I、Me、Bnz、CH2SiMe3及びC1−C5アルキル又はアルケニルより成る群から選択される)
より成る群から選択される、上記(6)に記載の触媒組成物。
(8)前記触媒組成物が担体及び活性剤を含み、前記触媒化合物が(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)2ZrX2及びそれらの組合せ(ここで、XはF、Cl、Br、I及びMeより成る群から選択される)から選択されるメタロセン触媒化合物である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の触媒組成物。
(9)前記金属カルボキシレート塩を前記触媒組成物に、該触媒組成物の総重量を基準として約0.1重量%〜約20重量%存在させた、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の触媒組成物。
(10)前記触媒組成物20gが約25℃〜約50℃の温度において45秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径7mmの穴を有し、該漏斗は幹を持たないものである)、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の触媒組成物。
(11)前記触媒組成物20gが約25℃〜約50℃の温度において10秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径10mmの穴を有し、該漏斗は幹状部を持たないものである)、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の触媒組成物。
(12)前記触媒組成物20gが約25℃〜約50℃の温度において5秒未満で漏斗を流動通過する(ここで、該漏斗は、開口角度60°の円錐口を有するガラス漏斗であり、該漏斗の底に直径12mmの穴を有し、該漏斗は幹を持たないものである)、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の触媒組成物。
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の触媒組成物の製造方法であって、
a. 遊離のカルボン酸を抽出するために前記金属カルボキシレート塩と3.0又はそれより大きい25℃における誘電率を有する有機溶媒とを一緒にし;
b. 抽出された金属カルボキシレート塩を乾燥させ;そして
c. 乾燥済の抽出された金属カルボキシレート塩を前記触媒と一緒にする
ことを含む、前記方法。
(14)前記有機溶媒がC1−C10アルコール、C1−C10ケトン、C1−C10エステル、C1−C10エーテル、C1−C10アルキルハライド、C1−C10アルキロニトリル、C1−C10ジアルキルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される、上記(13)に記載の方法。
(15)前記有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド及びそれらの組合せより成る群から選択される、上記(13)に記載の方法。
(16)前記の乾燥済の抽出された金属カルボキシレート塩と触媒とを一緒にする工程が乾式ブレンディングを含む、上記(13)〜(15)のいずれかに記載の方法。
(17)エチレンポリマー又はコポリマーを製造するための重合方法であって、
エチレン及び随意としてのα−オレフィンと上記(1〜12のいずれかに記載の重合触媒組成物とを反応器中でエチレンポリマー又はコポリマーを製造するための重合条件下で接触させる工程を含む、前記方法。
(18)金属カルボキシレート塩を含む連続性添加剤を前記反応器中に前記触媒組成物とは独立的に加える工程をさらに含み、該連続性添加剤中の金属カルボキシレート塩が遊離の酸を本質的に含有しない、上記(17)に記載の方法。
図1
図2
図3
図4