特許第5859620号(P5859620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5859620
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】衛生薄葉紙ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/42 20060101AFI20160128BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   A47K10/42 B
   B65D83/08 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-201949(P2014-201949)
(22)【出願日】2014年9月30日
【審査請求日】2015年10月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】足立 多佳彦
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−034803(JP,A)
【文献】 米国特許第2432611(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/42
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部に取出口を有し、一枚を引き出すと次の一枚の一部が引き出されるように複数枚の衛生薄葉紙が折り畳み重ねられてなる束を収めて、前記取出口から一枚ずつ取り出せるようにした衛生薄葉紙ディスペンサーであって、
前記上面部に対面し底面側に付勢された上側舌片と
この上側舌片に形成された通紙部と、
前記上側舌片に対面し上面部側に付勢された底側舌片と、
前記上側舌片と底側舌片との間に束を差し込み可能に開口する挿入口とを有し、
前記挿入口から挿入された束が衛生薄葉紙ディスペンサー内部で前記上側舌片と底側舌片とによって挟持され、かつ、挟持された束から前記通紙部を介して取出口から衛生薄葉紙を取り出させる、ことを特徴とする衛生薄葉紙ディスペンサー。
【請求項2】
上側舌片が折曲げ成形可能な可撓性シートにより形成されている、請求項1記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【請求項3】
上側舌片が上面部の縁から延出する縁片が衛生薄葉紙ディスペンサー内部側に折り返されて形成されている、請求項1又は2記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【請求項4】
上面部に取出口を有し、一枚を引き出すと次の一枚の一部が引き出されるように複数枚の衛生薄葉紙が折り畳み重ねられてなる束を収めて、前記取出口から一枚ずつ取り出せるようにした衛生薄葉紙ディスペンサーであって、
前記上面部に対面し上面部側に付勢された底側舌片と、
前記底側舌片と上面部との間に束を差し込み可能に開口する挿入口とを有し、
前記挿入口から挿入された束が衛生薄葉紙ディスペンサー内部で底側舌片と上面部とによって挟持されことを特徴とする衛生薄葉紙ディスペンサー。
【請求項5】
底側舌片が折曲げ成形可能な可撓性シートにより形成されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【請求項6】
底側舌片が上面部と対面する底面部の縁から延出する縁片が衛生薄葉紙ディスペンサー内部側に折り返されて形成されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生薄葉紙の束を収めて、取出口から一枚ずつ取り出せるようにした衛生薄葉紙ディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
主に水洗い後の手や埃・水滴の拭き取りに用いられるペーパータオル、紙ワイプ、主に調理用で水分・油分の拭き取りや吸収に用いられるキッチンペーパーや、主に鼻かみ、化粧落とし等に用いられるティシュペーパーなどの衛生薄葉紙は、一枚を引き出すと次の一枚の一部が引き出されるように複数枚の衛生薄葉紙が折り畳み重ねられてなる束とされ、上面部に取出口を有する据え置き型ともいえる衛生薄葉紙ディスペンサー内に収めて、その取出口からポップアップ式に取り出して使用されることがある。
【0003】
従来のこの種の衛生薄葉紙ディスペンサーは、束を内部の底に載置して、上面部の取出口から取り出すものであり、衛生薄葉紙の使用にともなって束の高さが低くなると、束上面と衛生薄葉紙ディスペンサーの上面部に形成された取出口との距離が離れ、本来取出口から一部露出されるべき衛生薄葉紙の一部が内部に落ち込んでしまったり、露出がされてもその部分が僅かで摘まみにくくなるなど、ポップアップ性が悪化することがあった。
【0004】
このような束上面と取出口の距離が離間しないように、取出口を有する上面部を可動式にして束上面に載せるようにした衛生薄葉紙ディスペンサーも知られるが、このようなものであっても、特に、束を構成する衛生薄葉紙の残り枚数が僅かになった際に束が軽くなることにより、衛生薄葉紙の取出口からの引き出し時に可動式の上面部が浮いてしまい、衛生薄葉紙ディスペンサー内部で束が踊り、束を構成する衛生薄葉紙の折り畳みが乱れて取出口から露出すべき一部が取出口から出てこずに、可動式上面部の内面側に残って連続的な取出しができなくなることがあった。
【0005】
特に、この種の衛生薄葉紙の束は、図7に示すように、軟質の包装フィルム160によって包装され、その包装フィルム160にミシン目線等によってスリット状の裂開口170が形成されるようにして製品化されているものがあり、その裂開口170を広げて束20ごと取り出して使用する態様のほか、裂開口170を開口させただけの包装フィルム160によって束20が包装された状態のまま衛生薄葉紙ディスペンサー内へセットして、裂開口170及び衛生薄葉紙ディスペンサーの取出口を介して順次取り出せるようになっている。このため、特に、裂開口170を開口させただけの包装フィルム160によって包装された状態のまま衛生薄葉紙ディスペンサー内へセットして使用する場合には、上述の束20を構成する衛生薄葉紙の枚数が少なくなった際に生ずる束の乱れが包装フィルム内で起こるとともに、包装フィルム160自体も変形してより一層取り出し性を悪化させることがあった。
【0006】
また、従来のこの種の衛生薄葉紙ディスペンサーでは、束を交換するにあたって、そのどこかに設けられた蓋をあけて交換したり、上述の可動式の上面部を有するものでは、これを取り上げて交換する必要があり、その交換に手間がかかるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−34803号公報
【特許文献2】実用新案登録第3141190号公報
【特許文献3】特開2000−168860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、取出口から露出されるべき衛生薄葉紙の一部が内部に落ち込み難く、また、衛生薄葉紙ディスペンサー内での束が乱れたり崩れたりせず、衛生薄葉紙の使用開始から使用終了まで安定して取出口からポップアップして衛生薄葉紙を引き出すことができ、しかも、束の交換も容易な衛生薄葉紙ディスペンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
【0010】
〔請求項1記載の発明〕
上面部に取出口を有し、一枚を引き出すと次の一枚の一部が引き出されるように複数枚の衛生薄葉紙が折り畳み重ねられてなる束を収めて、前記取出口から一枚ずつ取り出せるようにした衛生薄葉紙ディスペンサーであって、
前記上面部に対面し底面側に付勢された上側舌片と
この上側舌片に形成された通紙部と、
前記上側舌片に対面し上面部側に付勢された底側舌片と、
前記上側舌片と底側舌片との間に束を差し込み可能に開口する挿入口とを有し、
前記挿入口から挿入された束が衛生薄葉紙ディスペンサー内部で前記上側舌片と底側舌片とによって挟持され、かつ、挟持された束から前記通紙部を介して取出口から衛生薄葉紙を取り出させる、ことを特徴とする衛生薄葉紙ディスペンサー。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
上側舌片が折曲げ成形可能な可撓性シートにより形成されている、請求項1記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
上側舌片が上面部の縁から延出する縁片が衛生薄葉紙ディスペンサー内部側に折り返されて形成されている、請求項1又は2記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
上面部に取出口を有し、一枚を引き出すと次の一枚の一部が引き出されるように複数枚の衛生薄葉紙が折り畳み重ねられてなる束を収めて、前記取出口から一枚ずつ取り出せるようにした衛生薄葉紙ディスペンサーであって、
前記上面部に対面し上面部側に付勢された底側舌片と、
前記底側舌片と上面部との間に束を差し込み可能に開口する挿入口とを有し、
前記挿入口から挿入された束が衛生薄葉紙ディスペンサー内部で底側舌片と上面部とによって挟持されることを特徴とする衛生薄葉紙ディスペンサー。
【0014】
〔請求項5記載の発明〕
底側舌片が折曲げ成形可能な可撓性シートにより形成されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【0015】
〔請求項6記載の発明〕
底側舌片が上面部と対面する底面部の縁から延出する縁片が衛生薄葉紙ディスペンサー内部側に折り返されて形成されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の衛生薄葉紙ディスペンサー。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、取出口から露出されるべき衛生薄葉紙の一部が内部に落ち込み難く、また、衛生薄葉紙ディスペンサー内での束が乱れたり崩れたりせず、衛生薄葉紙の使用開始から使用終了まで安定して取出口からポップアップして衛生薄葉紙を引き出すことができ、しかも、束の交換も容易な衛生薄葉紙ディスペンサーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の衛生薄葉紙ディスペンサーの斜視図である。
図2】本発明の実施形態の衛生薄葉紙ディスペンサーの使用方法を説明するための断面図である。
図3】本発明の実施形態の他の衛生薄葉紙ディスペンサーの斜視図である。
図4】本発明の上側舌片を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態の別の衛生薄葉紙ディスペンサーの斜視図である。
図6】本発明の他の実施形態の衛生薄葉紙ディスペンサーの斜視図である。
図7】衛生薄葉紙の束を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次いで、本発明の実施の形態を図1〜7を参照しながら以下に詳述する。
【0019】
(第一実施形態)
本実施形態に係る衛生薄葉紙ディスペンサー(以下、ディスペンサーという)1は、ディスペンサー1の外郭をなす上面部11、一対の長側面部12、底面部13及び一方の短側面部14で囲まれる一方短側面開放の略直六面体の箱形状をなし、その上面部11の中央部に長手方向に沿って取出口11Aが形成され、例えば、洗面台等において前据え置いて、前記取出口11Aから衛生薄葉紙2を引き出して使用する。もちろん、底面部13等の適宜の外面を壁面に接着するなどして壁面設置して使用してもよく、本発明に係るディスペンサー1は、その上面部11を上方に向けて使用する態様に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態に係るディスペンサー1の上記各面部11,12,13,14は、公知の熱可塑性樹脂などのエンジニアリングプラスチックや可撓性シート材によって形成することができる。例えば、熱可塑性樹脂を加熱成形熱して剛体として形成してもよいし、折曲げ成形可能な可塑性シート材を折曲げ形成して準剛体として形成してもよい。ディスペンサー1の外殻をなす各面部11,12,13,14は、使用時の必要な強度を確保できる程度の適宜の剛性を有する素材によって適宜に形成すればよい。
【0021】
他方、本実施形態に係るディスペンサー1では、直六面体の一方短側面に面部を有さず、大きく開口して束の挿入口15とされている。このようにディスペンサー1の一方短側面に面部を形成せずに広く開口させて挿入口15とすることで、図2の特に(a),(b)に示すようにディスペンサー内部への束20の出し入れ、特に挿入がしやすくなる。但し、図1に示すように、一方短側面の全面を開口させるのではなく、図3に示すように、上面部11、底面部13の縁近傍に面部11x,13xを形成するようにしてもよい。なお、図示はしないが長側面部12の近傍に面部を形成してもよい。
【0022】
他方、本実施形態に係るディスペンサー1は、各面部11,12,13,14で構成される外殻内、すなわちディスペンサー内方において、上面、より具体的には上面部の内側面に対面して底面側に付勢された上側舌片30が形成されている。図1図3図5に示す形態では、上側舌片30は、上面部11の開口側縁から延在する縁片を折り返してディスペンサー内部側に折込み入れることで、前記上面部11と一体的に形成している。但し、上側舌片30と上面部11とは一体的に形成されている必要はなく、例えば、各面部とは別の板材を上面部11に接着、熱融着するなどして形成してもよい。また、図1図3図5に示す形態では、上側舌片30及び上面部11と上側舌片30との連接部分が可撓性素材により形成されており、その可撓性素材に起因する弾性力、より具体的には縁片の折曲げに対する復元性と縁片自体の弾性力によって、上側舌片30に底面側への付勢力を付与している。但し、上側舌片30の付勢力は、折曲げ復元性のみによって付与してもよいし、上側舌片30の弾性力のみによって付与してもよい。また素材に起因するものにも限定されない。例えば、図4のように上側舌片30となる別体の板部材を、金属製やゴム製の板バネ31を介して上面部11や面部11xなどに連結するようにして付勢力を付与することができる。この場合には、上面部11や上記板部材となる上側舌片30は、弾性力を有さない素材で構成してもよい。但し、上面部11と上側舌片30を一体的としたもののが接着の手間がなく製造が容易となるため望ましい。
【0023】
他方、本実施形態に係るディスペンサーは、上側舌片30とともに前記ディスペンサー内方において、前記上側舌片30に対面して上面側に付勢された底側舌片40が形成されている。図1図3図5に示す形態では、底側舌片40は、底面部13の開口側縁から延在する縁片を折り返してディスペンサー内部側に折込み入れることで、前記底面部13と一体的に形成している。但し、上側舌片30と同様に各面部と一体的である必要はなく、底側舌片40も底面部13とは一体的に形成されている必要はない。例えば、各面部とは別の板材を底面部13に接着、熱融着するなどして形成してもよい。また、図1図3図5に示す形態では底側舌片40及び底面部13と底側舌片40との連接部分が可撓性素材により形成されており、上側舌30と同様に、その可撓性素材に起因する弾性力、より具体的には縁片の折曲げに対する復元性と縁片自体の弾性力によって、底側舌片40に上面側への付勢力を付与している。但し、底側舌片40の付勢力も、折曲げ復元性のみによってもよいし、底側舌片40の弾性力のみによって付与してもよい。また素材に起因するものにも限定されない。上側舌片と同様に、別体の板部材を、金属製やゴム製等の板バネを介して底面部13や面部13xなどに連結するようにして付勢力を付与することができる。この場合には、底面部13や上記板部材となる底側舌片40は、弾性力を有さない素材とすることができる。但し、底面部13と底側舌片40とを一体的とするが接着の手間がなく製造が容易であるため望ましい。
【0024】
本実施形態に係るディスペンサー1では、上記挿入口15と上側舌片30及び底側舌片40との構成によって、前記挿入口15から衛生薄葉紙の束20を上側舌片30と底側舌片40との間に容易に挿入でき、また、その挿入された束20が上側舌片30と底側舌片40との付勢力によってそれらの間に挟持される。特に、図1図3図5に示す例の如く各舌片30,40を、縁片の折曲げにより形成し、その挿入口側近傍をディスペンサー内方に向かって湾曲させるようにすると、挿入口15から各舌片30,40の間への束20をスムーズに挿入できるようになるので望ましい。
【0025】
また、上記各舌片30,40を図1図3図5に示す例の如く上面部11、底面部13の各縁から延在する縁片をディスペンサー内方に折曲げ、その可撓性に起因する弾性力等によって付勢力を付与するのであれば、ディスペンサー1を一枚又は複数枚の折曲げ可能な可撓性シート材からなるブランクシートを適宜に設計して折曲げ組み立てることで形成することができ、このようにするのが望ましい。ブランクシートの具体的形状は、図示例の直六面体の適宜の展開形状に各面部同士を接続する適宜の接着代や差し込み連結するための差し込み片や差し込み片挿通孔を設けた形状とすればよい。
【0026】
他方で、本実施形態に係るディスペンサー1では、上記上側舌片30の特に上面部11に形成された取出口11Aに対面する位置に通紙部30Aが形成されている。この通紙部30Aは、図1及び図3に示すように上側舌片30に形成された孔、又は図5に示すように上側舌片30に形成された切り欠きであり、係る通紙部30Aを設けることで、特に図2(c)のように上側舌片30と底側舌片40との間に挟持された束20から引き出された衛生薄葉紙2がその通紙部30Aを通って上面部11に形成された取出口11Aへ至ることが可能となっている。通紙部30Aの大きさは、取出口11Aへの衛生薄葉紙の導通を妨げない範囲で適宜に設計でき、好ましくは、取出口11Aより広くするのが望ましい。
【0027】
ここで、本実施形態のディスペンサーに用いる衛生薄葉紙の束20は、方形の衛生薄葉紙2が二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接する衛生薄葉紙の折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されたものであり、係る積層構造の衛生薄葉紙の束は、最上位又は最下位に位置する一枚の折り返し片を引っ張ると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により引きずられる。
【0028】
本実施形態に係るディスペンサー1は、図2に示すように、上記構造の衛生薄葉紙の束20を、その上面が上述の上面部11側に向かうようにして、挿入口15から各舌片30,40の間に挿入し、挿入後に束20から上記通紙部30A及び取出口11Aを介してディスペンサー外に引き出すようにして使用する。この際、本実施形態のディスペンサー1では、各舌片30,40の間に束20が挟持された状態で束20から衛生薄葉紙2が取出口11Aを介してディスペンサー外に引き出すことができ、また、衛生薄葉紙の使用によって束20の厚み(高さ)が減ってきても、各舌片30,40の付勢力によって上側舌片30と底側舌片40との間が狭まっていき、束20が挟持された状態が維持されるため、安定的な引き出しが可能となる。特に、上側舌片30と底側舌片40とを、それらの付勢力によって束20の非挿入時に互いに接するようにしておくのが望ましく、このようにすることで、常に束20の上下面に各舌片30,40が接して支持されるようになり、使用にともなって束を構成する衛生薄葉紙が極僅かとなって束の厚みが極薄になってもディスペンサー内で束が躍ることがなく、束の折りの乱れも防止され、最後まで安定して衛生薄葉紙を取り出せるようになる。
【0029】
また、本実施形態のディスペンサー1では、各舌片30,40の付勢力のバランスは、ディスペンサー内方の適宜の高さ位置、すなわち上面部11と底面部13との間の適宜の位置で拮抗するようにする。特に底側舌片40の付勢力は、未使用時の束20の重さと上側舌片30の付勢力に抗してこれを上面側の適宜の位置まで押し上げる程度の付勢力とするのが望ましい。この付勢力の調整は、各舌片30,40の素材の弾性力や形状、板バネ31の選択等の公知の技術によって調整することができる。このような各舌片30,40の付勢力のバランスとすることで、本実施形態に係るディスペンサー1では、各舌片30,40の間に挿入された束20から順次衛生薄葉紙が引き出されることによってその束20の厚みが低下するとともに束重量の変化によって底側舌片40による束20の押し上げ力が作用し、束20の上面とディスペンサー1の上面部11と間の距離がほぼ一定に保たれるか、若干近くなるようになり、使用時において取出口11Aから一部露出する衛生薄葉紙の一部が取出口11Aからディスペンサー内に落ち込むことが効果的に防止され、また、意図せず落ち込んでも取出口11Aから再度引き出すことが容易となる。
【0030】
上述のとおり本実施形態のディスペンサー1では、上記のとおり広く開口した挿入部15から束20の挿入が容易で束の交換が容易であるが、さらに図7に示すような軟質の包装フィルム160に包装されたまま使用しても、使用後に残る軟質の包装フィルム160を挿入口15から引き出すだけでよく、その除去も容易である。そして、特に束20を軟質の包装フィルム160で包装したまま使用しても、その包装フィルム160から取り出して使用しても各舌片30,40による効果を同様に奏する。
【0031】
なお、上側舌片30と底側舌片40の大きさは、束20の上面及び底面を効果的に挟持できる、より具体的には束20の上面や底面を被覆できる程度の大きさとするのが望ましい。また、特に底側舌片40は、束20の底面に対して面接する部分を広くするのが望ましい。例えば、上面側に過度に凸となるように湾曲していると、束20の厚みが薄くなった際に底側舌片40の湾曲に沿って束20が変形するように束20が反り、取出口11Aから取り出す際の抵抗が高くなりスムーズに引き出し難くなるおそれがある。束底面に対する部分を広くするために、例えば、底側舌片40に適宜の折り目を入れたり、熱成形したりすることができる。
【0032】
(第二実施形態)
次いで、本発明の第二実施形態を説明する。上記第一実施形態と同様の構成については、説明を省略する。本実施形態は、図6に示すように上記第一実施形態における上側舌片を有さない形態である。
【0033】
本実施形態のディスペンサーは、束非挿入時における底側舌片40の位置をより上面側に近い位置、より好ましくは上面部11に接するように形成する位置として、底側舌片40とディスペンサー1の上面部11の内面側との間で束20を挟持するようにし、第一実施形態における上側舌片30が担う束20の上面の押持を上面部11の内側面と底側舌片40の付勢力によって行なうものである。本実施形態においても、上記第一実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
1…衛生薄葉紙ディスペンサー、2…衛生薄葉紙、11…上面部、11x…面部、11A…取出口、12…長側面部、13…底面部、13x…面部、14…短側面部、15…挿入口、20…衛生薄葉紙の束、30…上側舌片、30A…通紙部、31…板バネ、40…底側舌片。
【要約】
【課題】衛生薄葉紙の使用開始から使用終了まで安定して取出口からポップアップして衛生薄葉紙を引き出すことができ、しかも、束の交換も容易な衛生薄葉紙ディスペンサーを提供する。
【解決手段】
上面部11に対面し底面側に付勢された上側舌片30と、この上側舌片30に形成された通紙部30Aと、前記上側舌片30に対面し上面側に付勢された底側舌片40と、前記上側舌片30と底側舌片40との間に束を差し込み可能に開口する挿入口15とを有し、前記挿入口15から挿入された束がディスペンサー内部で前記上側舌片30と底側舌片40とによって挟持され、かつ、挟持された束から前記通紙部を介して取出口から衛生薄葉紙を取り出させるようにした衛生薄葉紙ディスペンサーにより解決される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7