特許第5859638号(P5859638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5859638-自動車用ディーゼルエンジンの運転方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859638
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】自動車用ディーゼルエンジンの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20160128BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20160128BHJP
   F01N 3/033 20060101ALI20160128BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20160128BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20160128BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20160128BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20160128BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20160128BHJP
   F02D 9/04 20060101ALI20160128BHJP
   F02M 26/02 20160101ALI20160128BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160128BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   F01N3/023 A
   F01N3/035 A
   F01N3/033 K
   F01N3/08 B
   F01N3/28 301Q
   F02D41/04 360A
   F02D23/00 E
   F02D21/08 311B
   F02D9/04 C
   F02M25/07 570P
   B01D53/86 241
   B01D46/42 B
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-508689(P2014-508689)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2014-520228(P2014-520228A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2011006216
(87)【国際公開番号】WO2012152301
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2013年12月26日
(31)【優先権主張番号】102011100677.3
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182349
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 誠治
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】オートヴィン・バルテス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ベックマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトホルト・ケッペラー
(72)【発明者】
【氏名】ジークフリート・ミュラー
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−223076(JP,A)
【文献】 特開2005−009316(JP,A)
【文献】 特開2010−236460(JP,A)
【文献】 特開2002−227630(JP,A)
【文献】 特開2010−013974(JP,A)
【文献】 特開2010−174701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01D 46/42、53/86
F02D 9/00−41/00
F02M 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス浄化装置を有する自動車用ディーゼルエンジンの運転方法であって、酸化触媒コンバータ(34)と微粒子フィルタ(35)とSCR触媒コンバータを含み、ディーゼルエンジン(1)から排出される排気ガスは、前記微粒子フィルタ(35)と前記SCR触媒コンバータを通過する前に、前記酸化触媒コンバータ(34)に誘導される自動車用ディーゼルエンジン(1)の運転方法において、
前記微粒子フィルタ(35)の再生は煤を時々加熱燃焼させて行われ、前記微粒子フィルタ(35)の再生が実行されている間には、前記ディーゼルエンジン(1)は、ラムダ値(λ)の目標値として1.0の空燃比で運転され、排気ガスには前記酸化触媒コンバータ(34)を出た後に、かつ前記微粒子フィルタ(35)に入る前に空気が混合され、前記微粒子フィルタ(35)に堆積した煤の燃焼を可能とし、
前記ラムダ値(λ)を設定するために、始めに空燃比のインプット値としてλ=1.10からλ=1.15の間の範囲が設定され、次にラムダ値(λ)の下限をλ=0.95からλ=0.98、上限をλ=1.0からλ=1.05とする値の間の範囲で、空燃比がフィードバックコントロールして設定される
ことを特徴とする自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項2】
空気の混合は前記ディーゼルエンジンの吸入流路から空気の分岐を通して、ターボチャージャによって行われることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項3】
前記微粒子フィルタ(35)の再生の間に、前記微粒子フィルタ(35)に堆積した煤を、あらかじめ設定可能な速度で燃焼する流量の空気が混合されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項4】
前記混合空気の量が、前記微粒子フィルタ(35)に堆積した煤があらかじめ設定可能な速度で燃焼するように、前記微粒子フィルタの下流に配置された温度センサで調節して設定されることを特徴とする請求項3に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項5】
前記混合空気の量が、前記微粒子フィルタ(35)に堆積した煤があらかじめ設定可能な速度で燃焼するように、前記微粒子フィルタの下流に配置されたラムダセンサで調節して設定されることを特徴とする請求項3に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項6】
酸化触媒コンバータ(34)には三元触媒層が用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項7】
微粒子フィルタの再生が行われていない間には、前記ディーゼルエンジン(1)は、ディーゼルエンジンに特有の空気過剰状態で運転され、排気ガスには前記SCR触媒コンバータを通過する前にアンモニア及び/又はアンモニアを分離できる機能を持つ還元剤が添加されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項8】
排気管からの窒素酸化物の排出が、あらかじめ設定可能な量を超えたと判定された場合、前記ディーゼルエンジンの運転が、通常のディーゼルエンジン特有の空気過剰から、前記ラムダ値(λ)の目標値での運転に切り替えられることを特徴とする請求項7に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項9】
排気ガスは前記微粒子フィルタ(35)を通過する前に及び/又は後に前記SCR触媒コンバータに誘導されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項10】
排気ガスがSCR触媒コンバータとしての前記微粒子フィルタ(35)の層に誘導されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項11】
排気ガスがウォールフローフィルタとして形成された微粒子フィルタに誘導され、該微粒子フィルタの流路の少なくとも下流部にはSCR材料の層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項12】
排気ガスがウォールフローフィルタで形成された微粒子フィルタに誘導され、該微粒子フィルタの流路の軸方向前方部分にはSCR材料の層が形成され、該微粒子フィルタの軸方向後方部分には層が形成されていないか、もしくは酸化触媒として作用する層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項13】
前記ディーゼルエンジンは、排気ガスリサイクル無し、または、高圧排気ガスリサイクルまたは低圧排気ガスリサイクル、または、高圧排気ガスリサイクルと低圧排気ガスリサイクルの両方、のいずれかを選択して運転されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項14】
前記ディーゼルエンジンは高圧排気ガスリサイクルと低圧排気ガスリサイクルで運転され、全体の排気ガスリサイクル流量における低圧部分は、前記微粒子フィルタの下流に配置された排気ガス堰止めバルブによって調節されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項15】
前記微粒子フィルタ(35)の再生の間、高圧排気ガスリサイクルの割合は零まで減少されることを特徴とする請求項14に記載の自動車用ディーゼルエンジンの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒コンバータ、微粒子フィルタ、SCR(Selective Catalytic Reduction−選択的触媒還元)触媒コンバータを含む排気ガス浄化装置を有する自動車用ディーゼルエンジンの運転方法に関し、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、微粒子フィルタ及びSCR触媒コンバータを通過する前に、酸化触媒コンバータに誘導される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディーゼルエンジンに組み込まれる排気ガス浄化装置が記述されていて、これには酸化触媒コンバータ、微粒子フィルタ及びSCR触媒コンバータが相前後して配置されている。
【0003】
一般に微粒子フィルタとSCR触媒コンバータを備えた排気ガス浄化装置には、煤の燃焼による微粒子フィルタの加熱再生を行うと、運転条件によっては酸化窒素(NO)が大部分変換されないまま周囲に放出される問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開特第99/39809 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような排気ガス浄化装置を備えた自動車用ディーゼルエンジンにおいて、煤の燃焼による微粒子フィルタの加熱再生を行っても、NOを低減できる運転方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を備える運転方法によって解決される。
【0007】
本発明の方法は、時々行われる煤の加熱燃焼による微粒子フィルタの再生において、微粒子フィルタの再生が実行されている間には、ディーゼルエンジンはラムダ値が少なくとも約1.0の空燃比で運転され、排気ガスには酸化触媒コンバータを出た後、微粒子フィルタに入る前に空気が混合されることによって、微粒子フィルタに堆積した煤を燃焼させることを可能とすることを特徴とする。
【0008】
本発明は、ディーゼルエンジンが、λ値が少なくとも約1.0の空燃比で運転された場合は、代表的に使われるディーゼル酸化触媒コンバータでは、高い排気ガス温度においても、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などの排気ガス成分を減少させて、NOが無害成分に変換され得るという認識に基づいている。ディーゼル酸化触媒コンバータのための触媒組成(formulation)は、酸素貯蔵機能を持つものも持たないものも、当業者はその構成に詳しく、ここでは詳細に立ち入らない。代表的なものは、層を有する担体触媒であり、金属またはセラミック担体に、貴金属を含むウォッシュコート層が形成されている。貴金属はプラチナ類、特にプラチナ自体であることが望ましい。
【0009】
SCR触媒コンバータとは、触媒が酸化条件すなわちλ>1.0において、NOをアンモニア(NH)によって選択的に、連続して低減できる触媒コンバータである。
【0010】
この関連において、空気と燃料の比を特徴付けるλ値は、通例通り燃焼室内の空気と燃料の混合気における実際の空気量と、燃料を完全燃焼させるのに最低限必要な理論空気量の比と理解される。従って、空気が過剰の希薄な空燃混合気にあっては、λ値は1より大きい。燃料過剰の濃密な空燃混合気では、その反対にλ値は1より小さい。排気ガスシステムに酸素の供給源またはシンクが無い場合、排気ガスのλ値(排気ガスλ)は空燃混合気のλ値(燃焼λ値)に一致し、この値の元にエンジンが運転される。以下において、区別の必要が無い場合、説明を容易にするため単にλ値、または短くしてλという用語を用いる。
【0011】
本発明で提示する排気ガスが微粒子フィルタに入る前の排気ガスへの空気の混合により、排気ガス中の空気がいずれにしても大きく増加し、微粒子フィルタ再生のための煤の燃焼を行うことができる。ここで相応の高温まで昇温することが必要となる。加熱による煤の燃焼には、典型的な例として、排気ガス温度、もしくは微粒子フィルタの温度が550°C以上となることが必要とされる。通常目指す燃焼速度は、普通は650°Cを超えて始めて得られる。このような高い排気ガス温度は、同様に排気ガス浄化システムに含まれるSCR触媒コンバータのNO変換に関する有効性を直ちに大きく低下させる。SCR触媒コンバータが微粒子フィルタの比較的近くに置かれている場合は、この現象が特に顕著となる。ここでは酸化触媒コンバータが、微粒子フィルタ再生の間に、その機能を代行することができる。これによって、微粒子フィルタ再生の間にも、排気ガスからのNOの除去が可能となる。
【0012】
微粒子フィルタとして、炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウムを素材としたウォールフローフィルタを使うことが望ましく、これは任意に流路壁面に触媒効果を有する層を持つことができる。
【0013】
酸化触媒コンバータと微粒子フィルタの間で、排気ガスに空気を供給するために二次エアポンプを用いることができる。同様に、圧縮空気タンクからの空気の取り出しや、吸い込み流路を分岐してターボチャージャによって空気を供給することが可能である。多量の空気を提供するための装置として、空気量可変のものが望ましく、空気量調整可能な装置が特に望ましい。
【0014】
本発明の発展形態では、三元触媒層を有する酸化触媒コンバータが使われている。三元触媒層とは触媒材料として、ほぼλ=1.0の狭い範囲において、NOだけでなく、COやHCなどの排気ガス成分を減少させて無害の成分に変換できる触媒材料が利用される三元触媒層である。代表的な例では、触媒層はプラチナ及び/又はパラジウムならびにロジウム、更に酸化セリウムなどの材料が含まれていて、これらは酸素を蓄え、放出することができる。相応の触媒コンバータの構成について、特にオットーエンジンの排気ガス浄化に適用されるものは当業者に良く知られている。これらを実施することで、特に微粒子フィルタ再生時の、特にNO除去を含む有害排気ガス成分の除去を極めて有効に行うことができる。
【0015】
更に本方法の発展形態では、微粒子フィルタ再生の間に、微粒子フィルタ(35)に堆積した煤があらかじめ設定した速度で燃焼するような空気量の混合がなされる。煤の燃焼速度は、望ましくは温度センサを使って算出される。このセンサは、煤の燃焼によって放散される暖気量を、引き起こされた温度上昇の結果として、微粒子フィルタの後で及び/又はその内部で直接検出できる。煤の燃焼速度は排気ガスにおける酸素の分圧によるので、煤の燃焼は混合される空気量によって制御または調整が可能である。このように、混合される空気量を減らして、従って煤の燃焼速度を遅くして、ないしは低く保って、例えば微粒子フィルタのオーバーヒートを回避できる。望ましい煤の燃焼速度を実現するために、ラムダセンサによって調整又は制御された空気供給も可能である。煤の燃焼を促進する空気を外部の供給源に求めているので、空気供給量に左右されないエンジンの運転が可能となる。
【0016】
本方法の更なる発展形態では、微粒子フィルタの再生が行われていない時には、ディーゼルエンジンは通常のディーゼルエンジン運転に特有の空気過剰状態での運転となり、排気ガスにはSCR触媒コンバータを通過する前に、アンモニアまたはアンモニアを分離できる還元剤、特に水溶性の尿素溶液が添加される。SCR触媒コンバータによってNOの還元が実現する。同時に酸化触媒コンバータによって、排気ガスの被酸化性成分が取り除かれる。
【0017】
本方法の更なる発展形態では、排気ガスは微粒子フィルタを通過する前及び/又は後に、SCR触媒コンバータに導かれる。SCR触媒コンバータは、独立した部材として微粒子フィルタの前及び/又は後に配置することができる。本発明の更なる特別な実施形態として、排気ガスがSCR触媒コンバータとして構成された微粒子フィルタの層に導入される。SCR材料からなる微粒子フィルタの層は、微粒子フィルタのフィルタとして機能する流路壁の未処理ガス側又は清浄ガス側に形成できる。清浄ガス側は、少なくとも微粒子フィルタの下流部において、SCR材料からなる層を持つことが望ましい。
【0018】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細を、以下に有利な実施形態と図面を用いて説明する。上述した特徴と特徴の組み合わせ、及び以下に示す図面の記述及び/又は図面にのみ表された特徴と特徴の組み合わせは、既に記述した組み合わせのみでなく、新たな組み合わせまたは単独で、発明の趣旨を逸脱することなく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、自動車用ディーゼルエンジンと、それに接続された排気ガス浄化装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に排気ガス浄化装置が接続された自動車用ディーゼルエンジン1の有利な実施形態を概略的に示し、以下にこの方法の使用に関して説明する。ディーゼルエンジン1は、二段階からなる供給系と二段階からなる排気ガス再生系を有し、作動シリンダ3と詳細を図示しない燃焼室を持つエンジンブロック2を含む。ここで作動シリンダ3ないしそれぞれの燃焼室は、高圧ポンプ4によって燃料の供給を受けることができる。作動シリンダ3ないしそれぞれの燃焼室は、空気供給システム5を通して燃焼空気の供給を受けることができ、排気流路6を通して作動シリンダ3から排気ガスが排出されることができる。空気供給システム5には、空気フィルタ7、高圧排気ガスターボチャージャ11として形成された第1の排気ガスターボチャージャの第1のコンプレッサ10、低圧排気ガスターボチャージャ9として形成された第2の排気ガスターボチャージャの第2のコンプレッサ8、供給空気クーラ12、及びスロットルバルブ13が配置されている。
【0021】
排気流路6には、エンジンブロック2から出て排気ガスの流れ方向に、高圧排気ガスターボチャージャ11に付属する第1のタービン14、低圧排気ガスターボチャージャ9に付属する第2のタービン15及び排気ガス浄化装置16が配置されている。ここで、排気ガス浄化装置16は、排気ガスからの微粒子を除去する微粒子フィルタ35及び上流に接続された酸化触媒コンバータ34を有する。更に排気ガス浄化装置16を早急に必要な稼働温度又は高温にするための図示しない電気加熱要素を配置しても良い。加熱要素は酸化触媒コンバータ34の前に直接配置することが望ましい。酸化触媒コンバータ34は三元触媒機能を有する層を持ったいわゆるディーゼル酸化触媒コンバータが望ましく、特に金属箔担体から構成されていることが望ましい。電気加熱要素も、配置されるならば、被覆された金属箔担体で形成されていることが望ましい(いわゆる電気加熱触媒)。
【0022】
微粒子フィルタ35は、焼結合金製またはハニカムボディのウォールスルーフィルタユニットとして形成される。微粒子フィルタ35には、酸化触媒として機能する材料及び/又はSCR材料からなる触媒層を形成することが望ましい。SCR材料は、酸化条件の元で、貯蔵された及び/又は添加されたアンモニア(NH)を選択NO還元剤として、選択的かつ連続的にNOを還元することができる。望ましい触媒材料として、鉄または銅を含むゼオライトがある。SCR材料は、微粒子フィルタ35のフィルタ効果面の未処理ガス側及び/又は清浄ガス側に配置することができる。通常のハニカムボディのウォールスルーフィルタとしての微粒子フィルタ35の望ましい実施形態として、相応するSCR材料の層が、未処理ガスに晒される流路壁面に形成されている。特にこの場合、SCR層が、単に部分的に微粒子フィルタ35の流路壁面の入口側又は出口側に形成されていると有利になり得る。一例として、微粒子フィルタ35の軸方向の始めの部分で、全長の50%程度にSCR材料の層を形成することができる。軸方向の後ろの部分には層を形成しないこともできるし、酸化触媒効果を有する層を形成しても良い。
【0023】
アンモニア成分を含む排気ガスを増加させるため、酸化触媒コンバータ34と微粒子フィルタ35の間に、添加装置38が配置されている。アンモニアまたはアンモニアを分離できる機能を持つ還元剤、たとえば尿素水溶液を排気流路6に噴射することができる。配分の均一化を改善するために、図示しない混合器を排気流路6の下流側に配置しても良い。
【0024】
更に排気流路6には、微粒子フィルタ35の下流にSCR触媒コンバータユニット36が配置されている。これは微粒子フィルタ35のSCR材料層と同じく、NHによるNOの選択還元機能を有する。とりわけSCR触媒コンバータ36は、自動車のエンジンから遠い車体下部に配置され、特にマフラー内に配置される。特に好ましいこととして、微粒子フィルタの加熱再生の間、どのような場合でも排気流路6における取り付け位置が、550°Cの温度以上に上がらないことがある。熱の放散に関して、排気流路6の相応のサイズ決めとともに、微粒子フィルタ35を幾何学的に遠ざけることによって、約800°Cまで加熱される微粒子フィルタ35とSCR触媒コンバータ36の間で250°C以上の温度降下を実現することができる。
【0025】
SCR触媒コンバータ36は、相応する層を有するハニカムボディからなるモノリス型の排気ガス浄化構造物で形成されている。層は銅又は鉄を担体とするゼオライト層が望ましい。SCR触媒コンバータ36は、担体として例えば五酸化バナジウム/酸化チタン/酸化タングステンからなる押し出しハニカムボディで形成することもできる。SCR触媒コンバータユニット36が、微粒子フィルタ層のSCR材料と比べて異なる低温域での触媒効果を有していることが特に望ましい。更に実施形態として比較的大きなNHの蓄積機能を有することが望ましい。熱による脱離や積載条件による抜け落ちによって生じるNHの環境への放散を回避するために、SCR触媒コンバータ36の下流側に別の酸化触媒コンバータをいわゆる遮断触媒として配置することができるが、これに関しては個別に図示しない。
【0026】
更に酸化触媒コンバータ34と微粒子フィルタ35の間に2次空気供給装置39が配置されている。これは必要に応じて、可変量の空気を排気流路6に噴射することができる。2次空気供給装置39は供給装置38の下流側に描かれているが、これは上流側に配置されても良いし、供給装置38と一体に形成しても良い。これにより圧縮空気により助長される渦が形成され、供給装置38によって排気ガスに添加された尿素水溶液の分散が可能となる。2次空気供給装置39は、ポンプまたはアキュムレータと接続しても良い。
【0027】
第2のコンプレッサ8の下流にて、高圧排気ガスターボチャージャ11を迂回するコンプレッサバイパス18が分岐している。コンプレッサバイパス18にはコンプレッサバイパスバルブ19が配置されていて、第2のコンプレッサ8で圧縮された清浄空気もしくは清浄空気と排気ガスの混合気が、エンジン1の運転状況に応じて、またその結果としてのコンプレッサバイパスバルブ19の状態に応じて大量に、または少量だけ第1のコンプレッサ10を迂回することができる。このようにして、エンジン1のチャージ圧は調節可能となり、エンジン1が低回転の場合は、高圧排気ガスターボチャージャ11は、排気ガス圧力が低すぎるため運転状態とならず、第1のコンプレッサ10はコンプレッサバイパス18によって迂回されることができる。
【0028】
排気流路6には同様に、バイパス20、21が配置されていて、それぞれタービン14、15を迂回し、すなわち第1のタービンバイパス20には第1のタービンバイパスバルブ22が配置され、第2のタービンバイパス21には第2のタービンバイパスバルブ23が配置されている。エンジン1が低回転で、その結果排気ガス圧力が低い場合には、高圧排気ガスターボチャージャ11はまだ稼働できず、この運転状態では第1のタービンバイパスバルブ22は、排気ガス流量が第1のタービンバイパス20を経て、第1のタービン14を迂回できるように制御され、これによってすべての排気ガス流量が低圧排気ガスターボチャージャ9のタービン15の稼働のために利用可能となる。
【0029】
エンジン1の回転数が非常に高い場合には、排気ガスターボチャージャ9、11のタービン14、15に作用する排気ガス圧力が高く、それによってこれらは高い回転数に到達する。このため排気ガスターボチャージャ9、11のコンプレッサ8、10のコンプレッサ出力が向上し、清浄空気と排気ガスの混合気のチャージ圧力が上がる。この圧力は、あらかじめ設定した値を超えてはならないので、このあらかじめ設定した値に達した場合には、タービンバイパス20、21の1つ又は両方をいわゆるウェイストゲートとして用いることができる。この時、タービンバイパスバルブ22、23は次のように制御できる。すなわち、例えばこれらを部分的に解放して、排気ガス流量の一部をタービン14、15を迂回させ、これによってタービン14、15に働いてこれを駆動する排気ガス圧力を低減する。この結果、排気ガスターボチャージャ9、11のコンプレッサ8、9によって圧縮される気体の圧縮が減り、すなわちチャージ圧力を低くできる。
【0030】
低圧排気ガスターボチャージャ9と高圧排気ガスターボチャージャ11のこのような配置によって、エンジン1の出力は、さまざまな回転数範囲において最適化され、その都度最適なチャージ圧力を準備できる。この結果、特にいわゆるターボラグ、すなわちこのようなエンジン1におけるチャージ圧の欠損または低下による低回転時の出力低下を防止でき、またはこのような問題を少なくとも著しく低減することができる。このようにして、このエンジン1によって駆動される自動車の走行特性と燃料消費を最適化することができる。
【0031】
微粒子フィルタ35の下流において、すなわち排気流路6の低圧側において、排気流路6から低圧排気ガスリサイクル(AGR)流路24が枝別れして、低圧排気ガスターボチャージャ9の第2のコンプレッサ8の上流側で、かつ空気フィルタ7の下流側で再び空気供給システム5に合流している。排気流路6に配置された排気ガス堰止めバルブ17によって、低圧排気ガスリサイクル流路24を経てリサイクルされる排気ガスの流量もしくはその割合を調整できる。堰止めバルブ17の下流側で、かつSCR触媒コンバータ36の上流側に、自由型または結合型のアンモニアを含む還元剤の第2の添加装置を配置することができるが、これは図示されていない。これによってアンモニアの供給が、微粒子フィルタ35のSCR層とSCR触媒コンバータ36のそれぞれの運転条件と有効性に適合して、個別に望ましい形で行える。排気ガスせき止めバルブ17は低圧排気ガスリサイクル流路24の分岐部の後に図示されているが、SCR触媒コンバータ36の後に配置しても良い。
【0032】
低圧排気ガスリサイクル流路24において、排気流路6の分岐部の下流側に、低圧排気ガスリサイクル流の流れ方向に低圧排気ガスリサイクルクーラ25及び低圧排気ガスリサイクルバルブ26が配置されている。低圧排気ガスリサイクル流の冷却は、低圧排気ガスリサイクルクーラ25を無くして、利用される配管の長さによって行っても良いし、配管の構成によっても良い。低圧排気ガスリサイクル流量の冷却により、排気ガスリサイクル運転におけるコンプレッサ8、10が許容範囲外の高温にならないことを確実にする。
【0033】
低圧排気ガスリサイクル流路24において、低圧排気ガスリサイクルクーラ25の上流側に別のSCR触媒コンバータ37を配置することができる。これによってリサイクルされる排気ガスに場合によっては含まれる窒素酸化物及び/又はアンモニア、もしくは酸素を減少させることができる。このようにして、更に堆積と腐食現象を回避もしくは減少させることができ、エンジン1の燃焼室で起こる燃料燃焼過程を良好にすることができる。別のSCR触媒コンバータ37は、更にまたフィルタ機能を担うことができ、低圧流路をリサイクルされる排気ガスから、少なくとも比較的大きな粒子が除去される。更に酸化触媒コンバータ34、もしくは微粒子フィルタ35の上流側及び/又は下流側に、1つの又は複数の別の浄化機能を持つ排気ガス後処理要素、例えば別の酸化触媒コンバータ、SCR触媒コンバータ及び/又は窒素酸化物吸収触媒などを排気流路6に配置することができるが、これらは個別に図示していない。SCR触媒コンバータ36の下流側に酸化触媒として効果のある排気ガス浄化要素を配置することは特に望ましく、これにより残留アンモニア成分を排気ガスから取り除くことができる。
【0034】
高圧排気ガスターボチャージャ11のタービン14の上流側で、すなわち排気流路6の高圧側で、排気流路6の排気ガスマニホールド33から高圧排気ガスリサイクル流路27が分岐し、空気供給システム5のスロットルバルブ13の下流で合流している。この高圧排気ガスリサイクル流路27によって、高圧排気ガスリサイクル流量は高圧排気ガスリサイクルバルブ28を経て空気供給システム5に誘導できる。ここに示した実施形態では、高圧排気ガスリサイクル流路27において高圧排気ガスリサイクルクーラ29が配置されていて、これは場合によっては低圧排気ガスリサイクルクーラ25と構造上及び/又は機能上同じものであっても良い。高圧排気ガスリサイクル流の冷却は、たとえば高圧排気ガスリサイクル流路27の配管の長さによっても良い。低圧排気ガスリサイクルクーラ25及び/又は高圧排気ガスリサイクルクーラ29にはバイパスを、特に供給量を可変とする調節手段を設けることもできるが、ここでは個別に図示していない。
【0035】
ここに示すディーゼルエンジン1はつまり排気ガスリサイクルを備えていて、排気ガスは高圧排気ガスターボチャージャ11のタービン14の上流側で、相応する高圧流路を経て取り出すことができ、また排気ガス浄化装置16の下流側で、排気流路6の相応する低圧流路を経て取り出すことができる。そして場合によっては冷却の後に、低圧排気ガスターボチャージャ9のコンプレッサ8の上流側で供給することができ、また空気供給システム5のスロットルバルブ13の下流側、従って燃焼室3に供給することが可能である。エンジン1の運転に関して以下の選択肢がある。すなわち、排気ガスリサイクルを使用しない方法、高圧排気ガスリサイクルまたは低圧排気ガスリサイクルを使用する方法、更に高圧排気ガスリサイクルと低圧排気ガスリサイクルを同時に使用する方法で、いずれも排気ガスリサイクル量は可変である。従って、排気ガスの可変低圧成分と可変高圧成分を持ち、広い範囲に変更できる排気ガスリサイクル比率を有する燃料を燃焼室3に供給することができる。排気ガスリサイクル量、すなわちリサイクルされる排気ガス流量、従って排気ガスリサイクル率の設定は、排気ガス堰止めバルブ17及び/又は低圧排気ガスリサイクルバルブ26、更に高圧排気ガスリサイクルバルブ28を調節手段として行われ、リサイクル排気ガス総量に占める低圧成分及び高圧成分は、それぞれ広い範囲で設定可能である。このようにして全体として、清浄な排気ガスリサイクル流量、排気ガスリサイクル流量の良好な冷却、排気ガスリサイクルクーラ25、29における煤汚れの防止が実現でき、空気供給システム5において、排気ガスリサイクル流と清浄空気の良好な混合が可能となる。高い排気ガスリサイクル率が可能となり、内燃機関1の均質な、または少なくとも部分的に均質な運転が可能となる。
【0036】
排気ガス堰止めバルブ17及び低圧排気ガスリサイクルバルブ26は、パイロットコントロールを実行する排気ガスリサイクル制御のアジャスタである。低圧排気ガスリサイクルバルブ26も排気ガス堰止めバルブ17も特に連続的に調節変更が可能である。排気ガス堰止めバルブ17とコンプレッサ8の前の低圧排気ガスリサイクルバルブ26によって、排気ガスリサイクル流の総量に占める低圧分を調節でき、従って排気ガス総量も影響を受ける。低圧排気ガスリサイクル流量を供給するのに十分に大きな圧力低下が起こる限りにおいて、さしあたり低圧排気ガスリサイクルバルブ26によってのみ調節が可能である。この事態が解消されると、追加して排気ガス堰止めバルブ17が、低圧排気ガスリサイクルバルブ26を介して圧力低下を上げるためにいくらか作動可能となる。これによって低圧排気ガスリサイクル流と清浄空気の混合が確実に行われる。更に別の利点として、とりわけ、低圧流路を通ってリサイクルされる排気ガスは、清浄で脈動がほとんど無いことがある。また、低圧分が高い状態でリサイクルされた排気ガスは、比較的高い排気ガス流量をタービン14、15に送ることができるので、高いコンプレッサ出力を使うことができる。リサイクルされた排気ガスは、コンプレッサ8、9の後で性能の良い供給空気クーラ12に導かれるので、清浄空気と排気ガスを含む燃焼ガスの温度を比較的低く保つことができる。内燃機関1は必要に応じて、高圧排気ガスリサイクルだけでなく低圧排気ガスリサイクルでも、またその両方でも運転することができる。
【0037】
空気供給システム5において、供給空気クーラ12を迂回する供給空気クーラバイパス30によって、供給空気クーラ12の煤汚れを防止することができる。いわゆる煤汚れの危険性は、例えば水蒸気と、場合によっては微粒子を含む混合気が、供給空気クーラ12において露点以下に冷却され、結露が生じる場合に発生する。
【0038】
清浄空気と排気ガスの混合気の全て、またはその一部は、供給空気クーラ12の上流側で分岐した供給空気クーラバイパス30を経て、供給空気クーラ12を迂回され、これによって供給空気クーラ12で冷却されず、従って温度が露点以下に下がることが無い。清浄空気と排気ガスの混合気に対して必要があれば、すなわち混合気の温度が高い場合は、相変わらず供給空気クーラ12による効果的な冷却が可能なことを確実にするために、コンプレッサ8、9の下流側で、かつ供給空気クーラ12の上流側に空気供給システム5において温度センサ31を配置して、温度があらかじめ設定した値になった場合には、供給空気クーラバイパス30に配置された供給空気クーラバイパスバルブ32が適切に制御され、これによってこの供給空気クーラバイパスバルブ32は、例えば全開又は全閉になり、また別の実施形態では一部開放となる。
【0039】
エンジン1と排気ガス後処理システム16の最適な運転のため、複数の別のセンサが排気流路6と空気供給システム5に配置されているが、図面を見やすくするため、ここでは図示しない。これらは温度状況や圧力状況を把握するための温度センサ及び/又は圧力センサであり、排気ガスマニホールド33の出口側、タービンバイパス20、21の内側、酸化触媒コンバータ34と微粒子フィルタ35の組み合わせからなるコンパクトなユニットとしての排気ガスリサイクルモジュールの入口側及び/又は出口側またはその内部、SCR触媒コンバータ36の入口側及び/又は出口側、空気フィルタ7の入口側及び/又は出口側、コンプレッサ8、10の入口側及び/又は出口側、排気ガスリサイクル流路24、27の内部、及び必要に応じてその他の場所に配置される。特に清浄空気の流量を把握するために、空気フィルタ7の下流に空気流量センサを配置する。更に排気流路6に排気ガスセンサ類、例えばラムダセンサをマニホールド33の内部に配置し、また酸化触媒コンバータ34もしくは微粒子フィルタ35の前に及び/又は後ろに配置する。
【0040】
配置されたセンサからの信号は図示しない制御装置によって処理され、その信号とあらかじめ記憶した特性曲線と特性マップからエンジン1の全般運転状況を、特に排気流路6と空気供給システム5について算出し、アクチュエータを作動させることで制御及び/又は調整して調節することが可能である。特に低圧流路と高圧流路における排気ガスリサイクル流量、及びトルクもしくは平均作動圧、及び回転数に関するエンジン1の負荷状況が算出可能で、また調節が可能である。更に燃焼サイクルごとの燃料噴射量、噴射圧、噴射時間、噴射時機などの燃料噴射パラメータの調節が可能である。
【0041】
以下にエンジン1ないしは排気ガス浄化システム16の運転について詳細に記述する。
【0042】
通常の走行条件において、すなわち走行により暖められたエンジン1と運転可能な排気ガス浄化システム16において、エンジン1は通常のディーゼルエンジンの運転に典型的な空気過剰状態で運転されている。排気ガスにおけるCOとHCの酸化可能な有害物質の除去は、主に酸化触媒コンバータ34によって行われる。排気ガスに含まれる微粒子は微粒子フィルタ35で除去され、排気ガスに含まれる窒素酸化物は微粒子フィルタ35のSCR層及び/又はSCR触媒コンバータ36によって除去される。
【0043】
窒素酸化物の除去については、還元剤を添加するための配分率を制御して又は調整して設定することで行う。ここで還元剤の添加は、現在の窒素酸化物の反応量に関するSCR層ないしSCR触媒コンバータ36の実際の効果に基づいて供給装置38及び/又は別の供給装置で行うことが好ましい。窒素酸化物の減少率があらかじめ定めた目標値に少なくともほとんど達するために、配分率の設定はモデルに基づき、計算モデルの支援のもと、あらかじめ得られた特性曲線と特性マップによって、エンジン1及び/又は排気ガス浄化装置16のあらかじめ定めた運転規模での実際の値に応じて行われる。この際にエンジン1の特に窒素酸化物未処理排出に関するデータと微粒子フィルタ35ないし触媒ユニット36の後に置かれた窒素酸化物センサのデータが評価される。目標値からの逸脱は、配分率を反対側へ変更することによって十分に補償される。
【0044】
微粒子フィルタ35の機能については、煤の堆積が絶え間なく監視される。このために計測技術で求められる微粒子フィルタ35における差圧が、排気ガス流量と排気ガス温度を考慮して堆積モデルをもとに評価され、煤の堆積に関する見積値が算出される。煤の堆積があらかじめ定めた限界値を超えると、微粒子フィルタ35の加熱再生が要求される。微粒子フィルタ再生の実行に関するあらかじめ定めることのできる判断条件が満たされると、エンジン1の通常の稼働は中断され、特別運転に切り替わる。煤の燃焼に必要な温度は微粒子フィルタ35の入口側で約550°Cから700°Cであり、エンジン1の燃焼パラメータを変更することと、酸化触媒コンバータ34での熱エネルギーの解放によりこの温度に到達できる。
【0045】
微粒子フィルタ35ないし排気流路6全体の温度が高いため、微粒子フィルタ35のSCR層ないしSCR触媒コンバータユニット36の有効性が著しく低下する特徴がある。それにもかかわらず窒素酸化物の減少を達成するために、エンジン1は微粒子フィルタ再生の間に、ラムダ値としての空燃比が少なくとも約λ=1.0で運転される。約1.0の燃焼λの元で、排気ガスλも同様に約1.0であり、窒素酸化物の削減及び排気ガスの酸化可能成分の削減は、酸化触媒コンバータ34によって効果高く実現できる。排気管からの窒素酸化物の排出が、あらかじめ決めた範囲を超えたと判定された時点で、λが約1.0となるエンジン運転状態へ移行する。この時には窒素酸化物の削減のためのアンモニアの供給は必要とされないし、有効でもないので、ここで終えるか中断される。
【0046】
目標値を約1.0として燃焼λを調節するために、始めに空燃比としてλ=1.10からλ=1.15の範囲のインプット値を設定することが望ましい。これに関して、空気供給量と排気ガスリサイクル量の稼動点に応じたインプット値は、スロットルバルブ13を作動させることによって、又は排気ガスターボチャージャ9、11又は排気ガスリサイクルバルブ26、28の調整手段によって定められ、λインプット値に必要な燃料の量は、燃料のプレ噴射、メイン噴射、付加的なポスト噴射での合計値によって定める。典型的な例では、スロットルバルブは70%から95%閉じられていて、ブーストプレッシャバルブは5%から45%、ウェイストゲートは25%から45%閉じられている。望ましくは高圧排気ガスリサイクルバルブ28は全閉として、排気ガスリサイクル量は低圧排気ガスリサイクルバルブ26及び排気ガス堰止めバルブ17を操作して調節する。遅れて行われ、出力に影響しない、クランクアングルの死点後80°以上での燃料のポスト噴射量の計算上のインプット値を削減すると、λの目的値に到達するには濃密化が行われる。この正確な値は、酸化触媒コンバータ34の後方において、センサによって、直接得られた排気ガスの酸素含有データを処理することと、ポスト噴射量の調整によって設定する。この場合、あらかじめ定めた領域内で振動するλ値をフィードバックコントロールして設定することが望ましい。特にλの目的領域の下限をλ=0.95からλ=0.98として、上限をλ=1.0からλ=1.05とあらかじめ定める。望ましい振動周期は1から5Hzである。以上の設定の間、酸化触媒コンバータ34において、CO及びHC、更にNOの反応量が非常に高くなる可能性が観察されている。
【0047】
排気ガスλが1.0に近い値となるように実施した調節によって、微粒子フィルタ35の入口側では排気ガスはほとんど酸素成分が無い状態となり、煤の燃焼ができない。必要な酸素成分を調節するために、本発明では2次空気供給装置39を作動させて、微粒子フィルタ35の前で排気ガスの酸素成分を増加させている。ここにおいて、あらかじめ定めることのできる煤燃焼速度が実現できるように2次空気供給を調節する。このために、制御変数として微粒子フィルタ35における排気ガス温度勾配を用いることができて、これは例えば入口側と出口側に配置した温度センサを用いて算出することができる。このようにして、一方ではフィルタ再生時間を短くすることが可能であり、他方では高すぎる煤燃焼比によるオーバーヒートに起因する微粒子フィルタ35の損傷を回避できる。
【0048】
微粒子フィルタの再生が終わるか別の要求が出て終わりにしなければならない場合は、まず第一に開始前の設定に戻される。すなわち、2次空気供給装置39を止めて、エンジン1をディーゼルエンジンに固有の空気過剰の通常運転とし、必要に応じた窒素酸化物還元剤の添加が再び開始される。
【0049】
時々実施される微粒子フィルタの加熱再生時において、上述した理論上のエンジン運転によってNOの環境への放出は減少できるが、付加的な対策を行えば、更に改善することができる。その1つとして、特に微粒子フィルタ再生の間に、エンジン1からの未処理NOの放散を減少させる方法として、低圧排気ガスリサイクル率を最大値に達するまで上げる。望ましくは、低圧排気ガスリサイクル率にとって有利となるように、高圧リサイクル率は零まで減少させる。
【0050】
この関連において、一般的には微粒子フィルタ再生の回数を減らす、もしくはその頻度を減らす努力がなされる。そのためにエンジン1の通常運転で、特に微粒子フィルタ35の温度がおよそ300°Cまたはそれ以上の場合、未処理NOの排出を増加させることができる。酸化触媒コンバータ34での酸化によって、二酸化窒素(NO)が増加し、これは煤の酸化もしくは微粒子フィルタの連続的な再生をもたらす(連続再生トラップ効果)。これによって微粒子フィルタ35の煤の堆積率が低下し、加熱再生はほとんど必要がなくなる。別の好ましい副作用として、未処理NOの排出が特徴的にエンジン1の燃料消費を減少させることが合わせて起こる。酸化触媒コンバータ34の上流で尿素もしくはアンモニアを添加することでNOの発生が増加し、従って連続再生トラップ効果が可能となる。これに関して、追加の添加ユニットを配置することも可能であり、必要に応じて実用化することができる。
図1