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特許5859654立体視及びマルチビューにおけるモデルベースのクロストーク低減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859654
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月10日
(54)【発明の名称】立体視及びマルチビューにおけるモデルベースのクロストーク低減
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/00 20060101AFI20160128BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20160128BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20160128BHJP
   G09G 5/02 20060101ALI20160128BHJP
【FI】
   H04N13/00 180
   G09G5/36 510V
   G09G5/00 X
   G09G5/00 550H
   G09G5/02 B
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-527133(P2014-527133)
(86)(22)【出願日】2011年8月25日
(65)【公表番号】特表2014-529954(P2014-529954A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2011049176
(87)【国際公開番号】WO2013028201
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】サマダニ・ラミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ネルソン リアン アン
【審査官】 佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/150529(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0175904(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/071488(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/128066(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00
G09G 5/00
G09G 5/02
G09G 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dディスプレイにおいてクロストークを低減する方法であって、該方法は、
前記3Dディスプレイにおける前記クロストークを複数のテスト信号を用いて明らかにし、順変換モデルを生成することと、
前記順変換モデルに入力画像信号を適用し、モデル化された信号を生成することと、
前記モデル化された信号を視覚モデルに適用し、視覚尺度を計算することと、
前記視覚尺度に基づいて前記入力画像信号を変更することと、
を含む、3Dディスプレイにおいてクロストークを低減する方法。
【請求項2】
前記3Dディスプレイにおける前記クロストークを明らかにすることは、前記複数のテスト信号を前記3Dディスプレイに入力することと、1組の出力信号を測定することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1組の出力信号を用い、前記順変換モデルを生成することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のテスト信号は、カラーパッチテスト信号と、チェッカーボードテスト信号と、白色テスト信号と、黒色テスト信号と、水平ライン状テスト信号と、垂直ライン状テスト信号とからなる群からの信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記順変換モデルは、空間変動オフセット及び利得変換と、色補正変換と、幾何補正変換と、空間変動ブラー変換とからなる群からの1組の変換を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モデル化された信号は、1組のクロストークモデル化された信号と、1組の所望の信号とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記視覚尺度は、クロストークモデル化された信号と、所望の信号との間の視覚差尺度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記視覚尺度に基づいて前記入力画像信号を変更することは、視覚的に変更された入力信号を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記視覚的に変更された入力信号を生成することは、前記入力画像信号の視覚特性を変動させることであって、それにより前記視覚的に変更された入力信号を前記入力画像信号の正準変換として生成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記視覚尺度を最小にすることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記視覚尺度を最小にすることは、
前記視覚的に変更された入力信号を前記順変換モデルに適用し、新たな1組のモデル化された信号を生成することと、
前記新たな1組のモデル化された信号を前記視覚モデルに適用し、前記視覚尺度が最小になるまで該視覚尺度を更新することと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
3Dディスプレイシステムであって、
3Dディスプレイ画面と、
前記3Dディスプレイ画面によって生じるクロストークを低減するクロストーク低減モジュールと、
を備え、前記クロストーク低減モジュールは、
マルチビューディスプレイ画面によって生じる前記クロストークをモデル化し、入力画像信号からモデル化された信号を生成する順変換モデルと、
視覚尺度を計算する視覚モデルと、
前記視覚尺度に基づいて前記入力画像信号を変更するクロストーク補正モジュールと、
を備える、3Dディスプレイシステム。
【請求項13】
前記順変換モデルは、空間変動オフセット及び利得変換と、色補正変換と、幾何補正変換と、空間変動ブラー変換とからなる群からの1組の変換を含む、請求項12に記載の3Dディスプレイシステム。
【請求項14】
前記モデル化された信号は、1組のクロストークモデル化された信号と、1組の所望の信号とを含む、請求項13に記載の3Dディスプレイシステム。
【請求項15】
前記視覚尺度は、クロストークモデル化された信号と、所望の信号との間の視覚差尺度を含む、請求項12に記載の3Dディスプレイシステム。
【請求項16】
前記クロストーク補正モジュールは、視覚的に変更された入力信号を生成する、請求項12に記載の3Dディスプレイシステム。
【請求項17】
前記クロストーク補正モジュールは、前記入力画像信号の視覚特性を変動させることによって、前記視覚的に変更された入力信号を前記入力画像信号の正準変換として生成する、請求項16に記載の3Dディスプレイシステム。
【請求項18】
前記視覚的に変更された入力信号を前記順変換モデルに適用して、新たな1組のモデル化された信号を生成し、前記新たな1組のモデル化された信号を前記視覚モデルに適用して、前記視覚尺度が最小になるまで該視覚尺度を更新する、請求項17に記載の3Dディスプレイシステム。
【請求項19】
3Dディスプレイとともに用いるクロストーク低減モジュールであって、
前記3Dディスプレイによって生じるクロストークをモデル化し、入力画像信号からモデル化された信号を生成する順変換モデルと、
視覚尺度を計算する視覚モデルと、
前記視覚尺度に基づいて前記入力画像信号を変更するクロストーク補正モジュールと、
を備える、クロストーク低減モジュール。
【請求項20】
前記視覚尺度は、前記3Dディスプレイによって生じる前記クロストークが、視聴者に対し視覚的に低減されるまで最小にされる、請求項19に記載のクロストーク低減モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dディスプレイにおいてクロストークを低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体視ディスプレイ及びマルチビューディスプレイは、3次元(「3D」)実世界シーンをより正確に視覚的に再現し視聴者に提供するために登場した。そのようなディスプレイは、視聴者が複数の視点から3D効果を体験することを可能にするために、アクティブメガネ、パッシブメガネ又は自動立体視レンチキュラーアレイの使用を必要とし得る。例えば、立体視ディスプレイは、視聴者の左眼と右眼とに別個の画像ビューを向ける。次に、視聴者の脳がこれらの異なるビューを比較し、視聴者が単一の3D画像ととらえるものを作り出す。
【0003】
3Dディスプレイにおいて生じる1つの大きな課題は、画像ビュー間のクロストークである。すなわち、一方の眼を対象とした画像ビューの一部が他方の眼に滲出又は漏出し、結果として望ましくないクロストーク信号が生じる。これらのクロストーク信号は、画像ビューの上に重なり、それによって3D画像の全体品質が下がる。3Dディスプレイにおけるクロストークを低減し補正する様々な手法が存在しているが、それらは、ハードウェア又は物理学に基づいた手法で実施するコストが高いことに加えて、特定のタイプのコンテンツ(例えばグラフィック画像)、特定のタイプの3Dディスプレイ(例えばアクティブメガネを必要とする3Dディスプレイ)、又は少数のビュー(例えば立体の場合は2つのビュー)に限定される傾向がある。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、添付の図面とともに読まれるときに、以下の詳細な説明との関連で最も良く理解され得る。類似の参照番号は全体を通じて類似の部分を指している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】クロストークを有する例示的な3Dディスプレイシステムの概略図である。
図2】3Dディスプレイにおけるクロストーク信号を明らかにして補正するシステムの概略図である。
図3図2の例示的なクロストーク低減モジュールをより詳細に示す図である。
図4】様々な実施形態による、図3のクロストーク低減モジュールを用いて3Dディスプレイにおけるクロストークを低減し補正するフローチャートである。
図5図3のクロストーク低減モジュールとともに用いる順変換モデルの概略図である。
図6図5の順変換モデルを生成するのに用いられ得る例示的なテスト信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
立体視3Dディスプレイ及びマルチビュー3Dディスプレイとともに用いるモデルベースのクロストーク低減システム及び方法が開示される。本明細書において大まかに説明されているように、クロストークは、視聴者の一方の眼を対象とした画像信号又はビューが、他方の眼を対象とした画像信号の上に重なる意図しない信号として見えるときに生じる。本明細書において、意図しない信号のことをクロストーク信号と呼ぶ。
【0007】
様々な実施形態において、3Dディスプレイにおいて現れるクロストーク信号は、順変換モデル及び視覚モデルを用いることによって低減され補正される。順変換モデルは、画像信号がディスプレイに入力されるときに生じるクロストーク信号の光学的側面、測光学的側面及び幾何学的側面を明らかにする。視覚モデルは、ディスプレイに入力される元の画像信号に対する視覚的忠実性が保たれるように、空間識別、色及び時間識別を含む顕著な視覚効果を計算に入れる。入力信号に非線形最適化を適用して、クロストーク信号を低減するか又は完全になくす。
【0008】
以下の説明において、実施形態の完全な理解を与えるように、多数の具体的な詳細が説明されることが理解される。しかしながら、実施形態はこれらの具体的な詳細に限定することなく実施され得ることが理解される。他の例では、実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを回避するために、既知の方法及び構造は詳細に説明されない場合がある。また、実施形態は互いに組み合わせて用いられ得る。
【0009】
ここで図1を参照すると、クロストークを有する例示的な3Dディスプレイシステムの概略図が説明される。3Dディスプレイシステム100は、例えば視差ディスプレイ、レンチキュラーベースのディスプレイ、ホログラフィックディスプレイ、プロジェクターベースのディスプレイ、ライトフィールドディスプレイ(light field display)等の立体視ディスプレイ画面又はマルチビューディスプレイ画面とし得る3Dディスプレイ画面105を有する。画像取得モジュール110は、ディスプレイ画面105において表示用の複数の画像ビュー又は信号を捕捉する1つ又は複数のカメラ(図示せず)を有し得る。例えば、立体視ディスプレイの場合、2つの画像ビューが捕捉され得る。一方は視聴者の左眼115用(左画像「L」125)であり、他方は視聴者の右眼120用(右眼画像「R」130)である。捕捉画像125及び130は、ディスプレイ画面105上に表示され、視聴者の左眼115において画像135として知覚され、視聴者の右眼120において画像140として知覚される。代替的に、画像取得モジュール110は、単にコンピューターが生成した3D又はマルチビューグラフィック情報を指し得る。
【0010】
ディスプレイ画面105によって生じたクロストークの結果として、画像135及び140にはクロストーク信号が重ね合わさっている。視聴者の左眼115用の画像135にはクロストーク信号145が重ね合わされ、視聴者の右眼120用の画像140にはクロストーク信号150が重ね合わされる。当業者によって理解されるように、視聴者によって知覚される画像内にクロストーク信号145及び150が存在すると画像の全体品質が影響を受ける。また、ゴースティング又は他の主観的な目に見えるアーチファクトと異なり、クロストーク信号は物理的実態であり、客観的に測定し、明らかにし、補正することができることが理解される。
【0011】
ここで図2を参照すると、3Dディスプレイにおいてクロストーク信号を明らかにして補正するシステムの概略図が説明される。3Dディスプレイシステム200は、例えば左画像「L」215又は右画像「R」220等の、3Dディスプレイ画面210に表示するための複数の画像ビュー又は信号を捕捉する画像取得モジュール205を有する。クロストーク低減モジュール225は、画像215及び220を取得し、3Dディスプレイ画面210によって生じるクロストークを低減し補正するモデルベースの手法を適用する。クロストーク低減モジュール225は画像215及び220を画像230及び235に変更し、次にこれらをディスプレイ画面210に入力する。結果として、画像240及び245はクロストークが大幅に低減されるか又は存在しない状態で視聴者の眼250及び255によって知覚される。当業者であれば、クロストーク低減モジュール225及び3Dディスプレイ画面210は(図示されるように)別個のデバイスにおいて実施され得るか、又は単一のデバイスに統合され得ることが理解される。
【0012】
図3は、図2の例示的なクロストーク低減モジュールをより詳細に示している。クロストーク低減モジュール300は、順変換モデル305と、視覚モデル310と、3Dディスプレイに割り当てられたクロストーク信号を低減し補正するクロストーク補正モジュール315とを有する。例えば左画像信号「L」320及び右画像信号「R」325等の、3Dディスプレイにおいて表示される複数の画像ビュー又は信号が与えられると、クロストーク低減モジュール300は、3Dディスプレイによって生じるクロストークを明らかにし、左クロストーク補正済み画像「LCC」355及び右クロストーク補正済み画像「RCC」360等の対応するクロストーク補正済み画像を生成する。
【0013】
順変換モデル305は、3Dディスプレイによって生じる直接信号及びクロストーク信号の光学的側面、測光学的側面及び幾何学的側面を明らかにする。すなわち、順変換モデル305は、画像取得(例えば画像取得モジュール205)から3Dディスプレイ(例えば3Dディスプレイ210)への順変換を明らかにすることによって、直接信号及びクロストーク信号を推定又はモデル化する。これは、テスト信号を入力として用いるときに、3Dディスプレイによって生成される出力信号を測定することによって行われる。当業者であれば理解するように、順変換モデル305は数学的関数F(.)によって表すことができる。
【0014】
様々な実施形態において、テスト信号は、左テスト信号及び右テスト信号の双方を共に含んでいてもよいし、又は個々の左テスト信号及び右テスト信号を含んでいてもよい。第1の場合、テスト信号LT及びRTは一緒に3Dディスプレイに送信され、本明細書においてLF及びRFと呼ばれる左出力信号及び右出力信号が生成され、順変換関数F(.)のパラメーターが推定される。すなわち、以下の式となる。
【数1】
【数2】
ここで、FLは左出力信号LFを明らかにするのに用いられる順モデルを表し、FRは右出力信号RFを明らかにするのに用いられる順モデルを表す。
【0015】
第2の場合、試験画像信号LT及びRTは3Dディスプレイに別個に送信され、左出力信号及び右出力信号が生成され、これらが測定される。すなわち、以下の式となる。
【数3】
【数4】
ここで、LDL及びRCLは、LTテスト信号のみが入力として用いられるときに視聴者の左眼に表示されることになる出力信号(LDL)及び右眼に表示されることになる出力信号(RCL)である。同様に、LCR及びRDRは、RTテスト信号のみが入力として用いられるときに視聴者の左眼に表示されることになる出力信号(LCR)及び右眼に表示されることになる出力信号(RDR)である。
【0016】
当業者であれば理解するように、LDL信号及びRDR信号は、クロストークがないときの各眼における所望の出力信号である一方、RCL信号及びLCR信号は、他方の眼に漏れるクロストークを表す。例えば、RCLは、左画像信号のみがディスプレイに送信されるときに右眼において見られるクロストークを表す一方、LCRは、右画像信号のみがディスプレイに送信されるときに左眼において見られるクロストークを表す。
【0017】
一実施形態では、加法モデル又は他のそのようなモデルを用いて、眼ごとの測定応答を合成し得る。すなわち、左眼についてLDL応答及びLCR応答を合成して、合成信号LDにし、右眼についてRCL応答及びRDR応答を合成して、合成信号RDにし得る。次に、合成された応答LD及びRDを用いて、順変換関数F(.)のパラメーターを推定し得る。この変換関数はディスプレイに依拠することに留意されたい。なぜならそのパラメーターは、用いられる特定の3Dディスプレイ(例えばレンチキュラーアレイディスプレイ、立体視アクティブグラスディスプレイ、ライトフィールドディスプレイ等)に依拠するためである。
【0018】
テスト信号により順変換モデル305が生成されると、入力画像信号(例えばL320及びR325)をクロス低減モジュール305に適用して、クロス補正済み画像信号(例えばLCC355及びRCC360)を生成し得る。まず、L入力信号320及びR入力信号325を順変換モデル305に適用し、モデル化されたクロストーク出力信号LF及びRF並びに所望の信号LDL及びRDRを用いて、3Dディスプレイによって生じるクロストークを明らかにする。次に、これらの信号を視覚モデル310に送信し、3Dディスプレイに表示される信号の視覚品質がそのクロストークによってどれだけ影響を受けるかを表す視覚尺度を求める。1つの例では、視覚モデル310は、中でも空間識別、色及び時間識別を含む視覚的効果を考慮に入れることによって、所望の信号LDL及びRDRと、モデル化されたクロストーク出力信号LF及びRFと間の視覚的差の尺度νを計算する。視覚モデル310は、そのような視覚的差の尺度を計算する任意の視覚モデルとし得ることが理解される。
【0019】
クロス補正モジュール315は、この尺度νを用いて入力画像信号L320及びR325を変更し、視覚的に変更された入力信号LM345及びRM350を生成する。一実施形態では、これは、入力信号のコントラスト、輝度及び色等の視覚パラメーター又は特性を変動させて、入力信号の正準変換として視覚的に変更された入力信号を生成することによって行われる。
【0020】
次に、視覚的に変更された入力信号LM345及びRM350を入力として順変換305に送信して、視覚尺度νを更新し、入力信号に対する変更によってクロストークが低減された(νの値が小さくなるほどクロストークが下がる)か否かを判断する。このプロセスは、クロストークが大幅に低減されるか又は完全になくなるまで、すなわち視聴者に対し視覚的に低減されるまで繰り返される。すなわち、非線形最適化は、νが最小化され、クロストークが出力信号LCC355及びRCC360において大幅に低減されるか又は完全になくなるまでνの値を通じて反復するように実行される。出力信号LCC355及びRCC360は、視覚尺度νが最小値にあるときの視覚的に変更された信号LM345及びRM350と同じであることが理解される。
【0021】
また、図3に示される様々な左画像信号及び右画像信号(例えば入力L320及びR325、出力LCC355及びRCC360)は説明の目的のみで示されることも理解される。複数の画像ビューをクロストーク低減モジュール300に入力し(例えばマルチビューディスプレイにおける複数の画像ビュー等)、対応するクロストーク補正された出力を生成し得る。すなわち、クロストーク低減モジュール300は、サポートするビュー数に関わらず、任意のタイプの3Dディスプレイについて実施することができる。
【0022】
次に、図4に注意を向けると、図4は、様々な実施形態による、図3のクロストーク低減モジュールを用いて3Dディスプレイにおけるクロストークを低減し補正するフローチャートを示している。まず、3Dディスプレイにおいて生じるクロストークを、複数のテスト信号を用いて明らかにし、順変換モデルを生成する(400)。順変換モデルが生成されると、画像信号をモデルに入力して、モデル化された信号を生成する(405)。これらのモデル化された信号は、例えば、上記で説明したLF信号及びRF信号並びにLD信号及びRD信号とし得る。
【0023】
次に、モデル化された信号を視覚モデルに適用して、3Dディスプレイ内に表示される信号の視覚品質がそのクロストークによってどれだけ影響を受けるかを示す視覚尺度を計算する(410)。次に、視覚尺度に基づいて入力信号を変更して(415)、視覚尺度が最小化されるまで順変換モデルに再適用する(420)。視覚尺度が最小化されると、変更されクロストーク補正された信号を、表示のために3Dディスプレイに送信する(425)。クロストーク補正された信号は、クロストークが視聴者に対し視覚的に低減されるようになっている。代替的には、当業者によって理解されるように、変更され、クロストーク補正された信号は、後に表示するために保存することができる。
【0024】
次に図5を参照して、図3のクロストーク低減モジュールとともに用いる順変換モデルの概略図を説明する。順変換モデル500は、順変換関数F(.)において表される測光学的要素、幾何学的要素及び光学的要素を明らかにする4つの主な変換、すなわち(1)空間変動オフセット及び利得変換505、(2)色補正変換510、(3)幾何学的補正変換515、及び(4)空間変動ブラー変換520、を有する。カラーパッチ、グリッドパターン、水平縞及び垂直縞、均一の白色レベル、黒色レベル及び階調レベル信号が暗室において3Dディスプレイに送信され、F(.)のパラメーターが推定される。
【0025】
空間変動オフセット及び利得変換505において、白色レベル信号及び黒色レベルを3Dディスプレイに送信して、その白色応答及び黒色応答を求め、利得オフセット出力を生成する。この利得オフセット変換を与えられると、次に、測定された色と色値とを適合させることによって色補正変換510を求める。階調入力パッチの測定された平均色値を用いて、入力色成分に適用される1次元ルックアップテーブルを求め、原色R、G及びB入力の測定された平均色値を用いて、既知の入力色値を用いた色混合行列を求める。空間的に再正規化された色を用いて適合度を計算することによって、少数のパラメーターを用いてデータを適合させる色補正変換510が可能になる。
【0026】
次に、幾何補正515を、例えば多項式メッシュ変換モデルを用いて求め得る。モデル化された信号のエッジにおいて良好な結果を得るのに、最終的な空間変動ブラー変換520が必要とされる。ブラーが適用されない場合、モデル化された信号において、好ましくないハローアーチファクトが見え続け得る。一実施形態では、空間変動ブラーのパラメーターは、水平方向及び垂直方向において別個のブラーカーネルを推定することによって求められ得る。順変換モデル500を生成するのに更なる変換が用いられ得ることが理解される。
【0027】
図6は、図5の順変換モデルを生成するのに用いられ得る例示的なテスト信号を示している。テスト信号600は、正方形605等の複数の色付き正方形を有するカラーパッチを表し、色補正510に用いられる。テスト信号610は幾何補正515に用いられるチェッカーボードであり、白色テスト信号615及び黒色テスト信号620は、空間変動利得及びオフセット変換505に用いられる。テスト信号625及び630は、空間変動ブラーパラメーターを求めるための水平ライン及び垂直ラインを含む。
【0028】
当業者であれば理解するように、本明細書において説明される順変換モデルを生成するのに他のテスト信号が用いられ得る。順変換モデルを生成する様々な変換を含むことに注意を払うことによって、図3のクロストーク低減モジュールが、表示される信号の視覚品質を改善しながら、任意のタイプの3Dディスプレイにおいて多岐にわたる入力信号についてクロストークを低減し補正することが可能になることも理解される。
【0029】
開示された実施形態の上記の説明は、任意の当業者が本開示を作成又は使用することを可能にするように提供されることが理解される。これらの実施形態に対する様々な変更が当業者には容易に明らかとなり、本明細書において定義される一般原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用することができる。したがって、本開示は本明細書に示される実施形態に限定されることを意図しておらず、本明細書に開示される原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲に当てはまるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6