(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定装置によって測定された脳内のトレーサーからの電磁波の強度に基づいて、脳内の前記トレーサーの動態をコンパートメント解析するコンパートメント解析方法であって、
前記測定装置によって測定された脳内の脳血管に該当する第1のコンパートメントにおける電磁波の強度、又は前記第1のコンパートメントにおけるインプット関数と、前記測定装置によって測定された脳内の脳組織に該当する第2のコンパートメントにおける電磁波の強度と、前記測定装置によって測定された脳内の脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントにおける電磁波の強度とに基づいて、前記各コンパートメント間を前記トレーサーが移行するときの速度定数を算出する速度定数算出段階
を備え、
前記トレーサーは、H217Oであるコンパートメント解析方法。
測定装置によって測定された脳内のトレーサーからの電磁波の強度に基づいて、脳内の前記トレーサーの動態をコンパートメント解析するコンパートメント解析装置であって、
前記測定装置によって測定された脳内の脳血管に該当する第1のコンパートメントにおける電磁波の強度、又は前記第1のコンパートメントにおけるインプット関数と、前記測定装置によって測定された脳内の脳組織に該当する第2のコンパートメントにおける電磁波の強度と、前記測定装置によって測定された脳内の脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントにおける電磁波の強度とに基づいて、前記各コンパートメント間を前記トレーサーが移行するときの速度定数を算出する速度定数算出部
を備え、
前記トレーサーは、H217Oであるコンパートメント解析装置。
コンピュータを、測定装置によって測定された脳内のトレーサーからの電磁波の強度に基づいて、脳内の前記トレーサーの動態をコンパートメント解析するコンパートメント解析装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記測定装置によって測定された脳内の脳血管に該当する第1のコンパートメントにおける電磁波の強度、又は前記第1のコンパートメントにおけるインプット関数と、前記測定装置によって測定された脳内の脳組織に該当する第2のコンパートメントにおける電磁波の強度と、前記測定装置によって測定された脳内の脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントにおける電磁波の強度とに基づいて、前記各コンパートメント間を前記トレーサーが移行するときの速度定数を算出する速度定数算出部
として機能させ、
前記トレーサーは、H217Oであるプログラム。
コンピュータを、測定装置によって測定された脳内のトレーサーからの電磁波の強度に基づいて、脳内の前記トレーサーの動態をコンパートメント解析するコンパートメント解析装置として機能させるプログラムを記録した記録媒体であって、
前記コンピュータを、
前記測定装置によって測定された脳内の脳血管に該当する第1のコンパートメントにおける電磁波の強度、又は前記第1のコンパートメントにおけるインプット関数と、前記測定装置によって測定された脳内の脳組織に該当する第2のコンパートメントにおける電磁波の強度と、前記測定装置によって測定された脳内の脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントにおける電磁波の強度とに基づいて、前記各コンパートメント間を前記トレーサーが移行するときの速度定数を算出する速度定数算出部
として機能させ、
前記トレーサーは、H217Oであるプログラムを記録した記録媒体。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、一実施形態に係るコンパートメント解析システム100の利用環境の一例を示す。コンパートメント解析システム100は、脳内のH
217Oの動態をコンパートメント解析するシステムである。ここで、H
217Oとは、質量数の大きい同位体の水分子を多く含み、通常の水より比重の大きい水のことである。なおまた、H
217Oは、この発明における「トレーサー」の一例であってよい。
【0021】
コンパートメント解析システム100は、コンパートメント解析装置110、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置120、入力装置130、及び出力装置140を備える。コンパートメント装置110は、MRI装置120、入力装置130、及び出力装置140とそれぞれ電気的に接続されている。なおまた、MRI装置120は、この発明における「測定装置」の一例であってよい。
【0022】
コンパートメント解析装置110は、MRI装置120によって測定された脳内のH
217Oからの核磁気共鳴信号の強度に基づいて、脳内のH
217Oの動態をコンパートメント解析する装置である。なおまた、核磁気共鳴信号は、この発明における「電磁波」の一例であってよい。
【0023】
MRI装置120は、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を3次元画像にする装置である。より具体的に説明すると、MRI装置120は、脳内の核磁気共鳴信号の強度を測定する。
【0024】
入力装置130は、コンパートメント解析装置110にデータや情報、指示等を与えるための装置である。
【0025】
出力装置140は、コンパートメント解析装置110からデータや情報を受け取って、人間に認識できる形で提示する装置である。
【0026】
図2は、コンパートメント解析装置110のブロック構成の一例を示す。コンパートメント解析装置110は、画像データ取得部111、画像データ出力部112、指示受付部113、領域区分部114、コンパートメント特定部115、強度データ取得部116、速度定数算出部117、画像データ記憶部118、及び関心領域情報格納部119を備える。以下、各構成要素の機能及び動作を説明する。
【0027】
画像データ取得部111は、脳内が撮影された3次元画像データを、MRI装置120から取得する。
【0028】
画像データ出力部112は、脳内が撮影された3次元画像データを、出力装置140へ出力する。
【0029】
指示受付部113は、コンパートメント解析の対象とすべき脳の関心領域を指定する旨の指示を、入力装置130を介して受け付ける。
【0030】
領域区分部114は、脳を複数のボクセルに区分する。より具体的に説明すると、領域区分部114は、指示受付部113が受け付けた指示によって指定された脳の関心領域を複数のボクセルに区分する。ここで、ボクセルとは、体積の要素であり、3次元空間における直方体単位の値を表す。例えば、縦10(cm)×横10(cm)×高さ5(cm)の立体が関心領域である場合、縦×横の平面は、マトリクスに区分することができる。ここで、マトリクスに区分されて得られる各格子状の平面は、ピクセルと呼ばれる。この場合、ボクセルは、ピクセルに高さを乗じたものとなる。なおまた、ボクセルは、この発明における「区分領域」の一例であってよい。
【0031】
コンパートメント特定部115は、脳を区分した複数の各ボクセル内の脳の部位が、脳血管に該当する第1のコンパートメント、脳組織に該当する第2のコンパートメント、脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントのうち、いずれのコンパートメントに該当するか特定する。より具体的に説明すると、コンパートメント特定部115は、領域区分部114が区分した複数の各ボクセル内の脳の部位が、各コンパートメントのうち、いずれのコンパートメントに該当するか特定する。
【0032】
強度データ取得部116は、脳内のボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度を示すデータを、MRI装置120から取得する。
【0033】
速度定数算出部117は、MRI装置120によって測定された脳内の第1のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度と、MRI装置120によって測定された脳内の第2のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度と、MRI装置120によって測定された脳内の第3のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度とに基づいて、各コンパートメント間をH
217Oが移行するときの速度定数を算出する。より具体的に説明すると、速度定数算出部117は、コンパートメント特定部115が第1のコンパートメントに該当すると特定したボクセルにおける核磁気共鳴信号の強度と、コンパートメント特定部115が第2のコンパートメントに該当すると特定したボクセルにおける核磁気共鳴信号の強度と、コンパートメント特定部115が第3のコンパートメントに該当すると特定したボクセルにおける核磁気共鳴信号の強度とに基づいて、各コンパートメント間をH
217Oが移行するときの速度定数を算出する。
【0034】
図3は、関心領域情報格納部119に格納される情報の一例をテーブル形式で示す。関心領域情報格納部119には、ボクセルID、座標、コンパートメント、及び強度の各情報が対応付けられて格納される。
【0035】
ボクセルIDの情報は、複数のボクセルの中で各ボクセルを一意に識別するための識別符号である。座標の情報は、ボクセルIDによって識別されるボクセルの位置を特定するための情報である。コンパートメントの情報は、ボクセルIDによって識別されるボクセル内の脳の部位が該当するコンパートメントを示す情報である。強度の情報は、ボクセルIDによって識別されるボクセル内における核磁気共鳴信号の強度を示す情報である。
【0036】
図4は、コンパートメント解析装置110の動作フローの一例を示す。この動作フローの説明においては、
図1から
図3を共に参照する。
【0037】
医師は、患者にH
217Oを注射する前に、MRI装置120にて患者の脳内を撮影する。MRI装置120は、核磁気共鳴現象を利用して脳内の情報を3次元画像データにして、コンパートメント解析装置110へ出力する。
【0038】
コンパートメント解析装置110の画像データ取得部111は、脳内が撮影された3次元画像データを、MRI装置120から取得すると(S101)、その3次元画像データを画像データ出力部112へ送ると共に、画像データ記憶部118に記憶させる。
【0039】
コンパートメント解析装置110の画像データ出力部112は、画像データ取得部111から送られた3次元画像データを受け取ると、その3次元画像データを、出力装置140へ出力する(S102)。このようにして、出力装置140は、脳内が撮影された3次元画像を出力することになる。
【0040】
医師は、出力装置140から出力された脳内の3次元画像において、コンパートメント解析の対象とすべき脳の関心領域を決定する。例えば、患者が虚血障害であれば、医師は、その虚血部位を関心領域として決定する。そして、医師は、入力装置130を利用して、決定した関心領域を指定する旨の指示を行う。
【0041】
コンパートメント解析装置110の指示受付部113は、コンパートメント解析の対象とすべき脳の関心領域を指定する旨の指示を、入力装置130を介して受け付けると(S103)、指定された脳の関心領域を示すデータを、領域区分部114へ送る。例えば、指示受付部113は、脳の関心領域を示すデータとして、3次元画像において、指定された脳の関心領域の外縁を示す複数の座標を示すデータを、領域区分部114へ送る。
【0042】
コンパートメント解析装置110の領域区分部114は、指示受付部113から送られたデータを受け取ると、画像データ格納部118に格納されている3次元画像データを参照して、指示受付部113から受け取ったデータによって示される関心領域を複数のボクセルに区分する(S104)。例えば、領域区分部114は、関心領域を数十〜数百、又はそれ以上のボクセルに区分する。そして、領域区分部114は、各ボクセルの位置を特定するための座標の情報を、各ボクセルを識別するためのボクセルIDの情報に対応付けて、関心領域情報格納部119に格納する。ここで、座標の情報は、例えば、ボクセルの8つの頂点の座標とすることができる。
【0043】
コンパートメント解析装置110のコンパートメント特定部115は、関心領域情報格納部119にボクセルの位置の情報が格納されると、画像データ格納部118に格納されている3次元画像データを参照して、脳を区分した複数の各ボクセル内の脳の部位が、脳血管に該当する第1のコンパートメント、脳組織に該当する第2のコンパートメント、脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントのうち、いずれのコンパートメントに該当するか特定する(S105)。ここで、脳血管、脳組織、脳溝又は脳室の各部位に存在する水の環境は、それぞれ異なっている。これら各部位においては、Hの緩和時間も異なるものとなる。MRI装置120は、このような情報に基づいて、脳の3次元画像を生成している。したがって、コンパートメント特定部115は、例えば、3次元画像データを画像解析することによって、各ボクセル内に写っている脳の部位が、脳血管、脳組織、脳溝又は脳室の各部位のうち、いずれの部位に該当するか特定することができる。そして、コンパートメント特定部115は、各ボクセル内の脳の部位に該当するコンパートメントを特定すると、その情報を、関心領域情報格納部119に格納する。
【0044】
医師は、これらステップS101〜S105の処理が成された後に、患者にH
217Oを注射する。そして、医師は、MRI装置120にて患者の脳内のボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度を経時的に測定する。ここで、
17Oは、結合しているHに影響を与える。したがって、H
217OのHに起因する核磁気共鳴信号の強度は、脳内に存在するH
216OのHとは異なる強度となる。一方、患者に注射されるH
217Oは、脳に到達するまでに血液中のH
216Oに薄められてしまう。したがって、MRI装置120にてH
217OのHに起因する明瞭な核磁気共鳴信号を得るためには、H
217Oの含量が天然水よりも高濃度に濃縮されたものが必要である。具体的には、10(%)以上に濃縮されたH
217Oを用いるようにすることが好ましい。なおまた、MRI装置120が核磁気共鳴信号の強度を測定する領域の単位となるボクセルは、ステップS104にて区分されたボクセルである。例えば、MRI装置120は、コンパートメント解析装置110の関心領域情報格納部119に格納されているボクセルの位置の情報を参照しながら、脳内のボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度を測定する。そして、MRI装置120は、経時的に測定した脳内のボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度を示すデータを、コンパートメント解析装置110へ順次出力する。
【0045】
コンパートメント解析装置110の強度データ取得部116は、脳内のボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度を示すデータを、MRI装置120から順次取得すると(S106)、脳内にH
217Oが達した時点のデータによって示される脳内のボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度の情報を、関心領域情報格納部119に格納する。ここで、脳内にH
217Oが達した時点とは、例えば、H
217Oを注射してから所定時間が経過した時点としたり、脳内の所定部位における核磁気共鳴信号の強度が所定のしきい値を超えた時点としたりすることができる。
【0046】
コンパートメント解析装置110の速度定数算出部117は、関心領域情報格納部119にボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度の情報が格納されると、第1のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度と、第2のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度と、第3のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度とに基づいて、各コンパートメント間をH
217Oが移行するときの速度定数を算出する(S107)。ここで、核磁気共鳴信号の強度は、その部位におけるH
217Oの濃度とみなすことができる。即ち、ある部位にH
217Oが存在している場合、その部位における核磁気共鳴信号の強度は、H
217Oの濃度とみなすことができる。
【0047】
以下の説明においては、第1のコンパートメントにおけるある時刻tのH
217Oの濃度をBl(t)とし、第2のコンパートメントにおける同時刻tのH
217Oの濃度をBr(t)とし、第3のコンパートメントにおける同時刻tのH
217Oの濃度をC(t)とする。また、以下の説明においては、第1のコンパートメントから第2のコンパートメントへH
217Oが移行するときの速度定数をK1とし、第2のコンパートメントから第1のコンパートメントへH
217Oが移行するときの速度定数をK2とし、第1のコンパートメントから第3のコンパートメントへH
217Oが移行するときの速度定数をK3とし、第3のコンパートメントから第1のコンパートメントへH
217Oが移行するときの速度定数をK4とし、第3のコンパートメントから第2のコンパートメントへH
217Oが移行するときの速度定数をK5とし、第2のコンパートメントから第3のコンパートメントへH
217Oが移行するときの速度定数をK6とする。
【0048】
このとき、Br(t)の時間変化dBr(t)/dtは、例えば、式(1)のように表すことができる。
【0050】
また、C(t)の時間変化dC(t)/dtは、例えば、式(2)のように表すことができる。
【0052】
また、Bl(t)の時間変化dBl(t)/dtは、例えば、式(3)のように表すことができる。
【0054】
速度定数算出部117は、関心領域情報格納部119に格納されているボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度の値を、式(1)〜(3)のBl(t)、Br(t)、C(t)に適用すると共に、ガウスニュートン法、共役傾斜法、最小二乗法、修正マルコート法、シンプレックス法等の通常の数学的手法により速度定数K1〜K6を算出する。
【0055】
このように、脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントとの関係を想定して得られた速度定数K1、K2は、脳血管と脳組織の関係のみを想定した2コンパートメントモデルによる解析法にて算出されるK1、K2とは異なる値となる可能性がある。また、脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントとの関係を想定して得られた速度定数K3〜K6は、脳血管と脳組織の関係のみを想定した2コンパートメントモデルによる解析法によっては得られなかった速度定数である。
【0056】
以上説明したように、コンパートメント解析システム100によっては、脳内の脳血流の動態を解析するためのパラメータとして、2コンパートメントモデルによる解析により得られる速度定数よりも有用な速度定数を算出することができる。例えば、詳細な場所毎の血流や脳脊髄液の循環動態を把握することができる。既存検査では、空間分解能が悪く(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)なら10(mm)×10(mm)のピクセル(信号取得単位)、MRIなら1(mm)×1(mm)ピクセル(これ以下も可能))、局所の詳細な脳血流量画像は取得することができない。更に、脳脊髄液の流れは全く勘案されていない。これに対して、本発明によれば、局所の詳細な脳血流、脳脊髄液動態をより精確に把握することができるため、患者に適用すべき治療法を決定するための高度な判断基準が得られる。例えば、脳梗塞患者では、血栓溶解療法を行うべきか否かの高度な判断基準が得られる。つまり、血栓溶解療法により、脳ダメージ部の回復が見込めるか否かが既存検査よりも明確に判定することができる。また、脳血管の機能情報(脳血流、脳脊髄液循環能力)が得られ、脳血管が血栓溶解療法に耐え得るか等の判定に用いることができる可能性がある。また、近年、認知症の結果として、脳脊髄液循環量が少なくなっていることも示唆されている。この点から言えば、脳脊髄液循環を精確に把握することができ、診断だけでなく、脳脊髄液を正常に戻す治療薬等の開発に貢献し得る可能性もある。
【0057】
なおまた、この発明における「トレーサー」は、H
217Oに代えて、放射性薬品とすることもできるが、次のような理由からH
217Oを用いることが好ましい。既存の放射性薬剤は、半減期が短い(例えば、
15Oの半減期は、数分と極端に短い。)ため、診断剤としての効能が長続きしない。このため、在庫できず、脳梗塞等の緊急患者には適用することができない。脳梗塞は、発症から数時間以内の診断、治療が最も効果的であるが、この急性期での診断ができないという致命的な欠点を持つ。また、放射性同位元素であり、本質的に安全な物質ではない。診断剤の形態も、SPECT製剤等では、生理的な物質ではなく、人体が通常取り込まない化学物質を使用している点も欠点である。これに対して、H
217Oは、水であることから、より精確な生理機構を反映した結果を取得することができる。更に、放射性診断薬を使用することができる施設は、全国で1000件以下であるが、今般提案したMRI用の製剤であれば、放射性診断施設の3倍以上で実施することができる可能性がある。なおまた、トレーサーとして放射性薬剤を用いる場合、この発明における「測定装置」は、MRI装置120に代えて、PET(Positron Emission Tomography)装置やSPECT装置を用いる。
【0058】
また、この発明における「速度定数算出部」は、速度定数を算出するにあたり、各コンパートメントについて、任意の個数のボクセルの信号強度を用いるようにしてもよい。
【0059】
また、この発明における「速度定数算出部」は、第1のコンパートメントにおける電磁波の強度を用いずに、各コンパートメント間をトレーサーが移行するときの速度定数を算出することもできる。その場合、この発明における「速度定数算出部」は、第1のコンパートメントにおける電磁波の強度に代えて、トレーサーが患者に投与された後に、患者の動脈血から採取されたトレーサー量の経時的な測定結果を用いて、各コンパートメント間をトレーサーが移行するときの速度定数を算出する。または、この発明における「速度定数算出部」は、第1のコンパートメントにおける電磁波の強度に代えて、トレーサーの脳血管への導入量を想定するインプット関数を用いて、各コンパートメント間をトレーサーが移行するときの速度定数を算出する。
【0060】
図5は、本実施形態に係るコンパートメント解析装置110を構成するコンピュータ800のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ800は、ホストコントローラ801により相互に接続されるCPU(Central Processing Unit)802、RAM(Random Access Memory)803、及びグラフィックコントローラ804、及びディスプレイ805を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ806により相互に接続される通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ809を有する入出力部と、入出力コントローラ806に接続されるROM(Read Only Memory)810、フレキシブルディスクドライブ811、及び入出力チップ812を有するレガシー入出力部とを備える。
【0061】
ホストコントローラ801は、RAM803と、高い転送レートでRAM803をアクセスするCPU802、及びグラフィックコントローラ804とを接続する。CPU802は、ROM810、及びRAM803に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御をする。グラフィックコントローラ804は、CPU802等がRAM803内に設けたフレームバッファ上に生成する画像データを取得し、ディスプレイ805上に表示させる。これに代えて、グラフィックコントローラ804は、CPU802等が生成する画像データを格納するフレームバッファを、内部に含んでもよい。
【0062】
入出力コントローラ806は、ホストコントローラ801と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROMドライブ809を接続する。ハードディスクドライブ808は、コンピュータ800内のCPU802が使用するプログラム、及びデータを格納する。CD−ROMドライブ809は、CD−ROM892からプログラム、又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供する。
【0063】
また、入出力コントローラ806には、ROM810と、フレキシブルディスクドライブ811、及び入出力チップ812の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM810は、コンピュータ800が起動時に実行するブートプログラム、及び/又はコンピュータ800のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスクドライブ811は、フレキシブルディスク893からプログラム、又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供する。入出力チップ812は、フレキシブルディスクドライブ811を入出力コントローラ806へと接続すると共に、例えばパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ806へと接続する。
【0064】
RAM803を介してハードディスクドライブ808に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク893、CD−ROM892、又はIC(Integrated Circuit)カード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM803を介してコンピュータ800内のハードディスクドライブ808にインストールされ、CPU802において実行される。
【0065】
コンピュータ800にインストールされ、コンピュータ800をコンパートメント解析装置110として機能させるプログラムは、コンピュータ800を、ステップS107において、MRI装置120によって測定された脳内の第1のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度と、MRI装置120によって測定された脳内の第2のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度と、MRI装置120によって測定された脳内の第3のコンパートメントにおける核磁気共鳴信号の強度とに基づいて、各コンパートメント間をH
217Oが移行するときの速度定数を算出する速度定数算出部117として機能させる。
【0066】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS105において、脳を区分した複数の各ボクセル内の脳の部位が、脳血管に該当する第1のコンパートメント、脳組織に該当する第2のコンパートメント、脳溝又は脳室に該当する第3のコンパートメントのうち、いずれのコンパートメントに該当するか特定するコンパートメント特定部115と、コンパートメント特定部115が第1のコンパートメントに該当すると特定したボクセルにおける核磁気共鳴信号の強度と、コンパートメント特定部115が第2のコンパートメントに該当すると特定したボクセルにおける核磁気共鳴信号の強度と、コンパートメント特定部115が第3のコンパートメントに該当すると特定したボクセルにおける核磁気共鳴信号の強度とに基づいて、ステップS107において、各コンパートメント間をH
217Oが移行するときの速度定数を算出する速度定数算出部117として機能させてもよい。
【0067】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS104において、脳を複数のボクセルに区分する領域区分部114と、領域区分部114が区分した複数の各ボクセル内の脳の部位が、各コンパートメントのうち、いずれのコンパートメントに該当するか、ステップS105において特定する領域区分部114として機能させてもよい。
【0068】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS103において、コンパートメント解析の対象とすべき脳の関心領域を指定する旨の指示を、入力装置130を介して受け付ける指示受付部113と、指示受付部113が受け付けた指示によって指定された脳の関心領域を、ステップS104において、複数のボクセルに区分する領域区分部114として機能させてもよい。
【0069】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS101において、脳内が撮影された3次元画像データを、MRI装置120から取得する画像データ取得部111として機能させてもよい。
【0070】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS102において、脳内が撮影された3次元画像データを、出力装置140へ出力する画像データ出力部112として機能させてもよい。
【0071】
更に、当該プログラムは、コンピュータ800を、ステップS106において、脳内のボクセル毎の核磁気共鳴信号の強度を示すデータを、MRI装置120から取得する強度データ取得部116として機能させてもよい。
【0072】
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ800に読み込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である画像データ取得部111、画像データ出力部112、指示受付部113、領域区分部114、コンパートメント特定部115、強度データ取得部116、速度定数算出部117、画像データ記憶部118、及び関心領域情報格納部119として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ800の使用目的に応じた情報の演算、又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有のコンパートメント解析装置110が構築される。
【0073】
一例として、コンピュータ800と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU802は、RAM803上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェース807に対して通信処理を指示する。通信インターフェース807は、CPU802の制御を受けて、RAM803、ハードディスクドライブ808、フレキシブルディスク893、又はCD−ROM892等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェース807は、ダイレクトメモリアクセス方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU802が転送元の記憶装置、又は通信インターフェース807からデータを読み出し、転送先の通信インターフェース807、又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
【0074】
また、CPU802は、ハードディスクドライブ808、CD−ROM892、フレキシブルディスク892等の外部記憶装置に格納されたファイル、又はデータベース等の中から、全部、又は必要な部分をダイレクトメモリアクセス転送等によりRAM803へと読み込ませ、RAM803上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU802は、処理を終えたデータを、ダイレクトメモリアクセス転送等により外部記憶装置へと書き戻す。
【0075】
このような処理において、RAM803は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM803、及び外部記憶装置等をメモリ、記憶部、又は記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なおまた、CPU802は、RAM803の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM803の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM803、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
【0076】
また、CPU802は、RAM803から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索、置換等を含む各種の処理を行い、RAM803へと書き戻す。例えば、CPU802は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数、又は定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、又は等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合、又は不成立であった場合に、異なる命令列へと分岐し、又はサブルーチンを呼び出す。
【0077】
また、CPU802は、記憶装置内のファイル、又はデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU802は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
【0078】
以上に示したプログラム、又はモジュールは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク893、CD−ROM892の他に、DVD(Digital Versatile Disk)、又はCD(Compact Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto−Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク、又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク、又はRAM等の記憶媒体を記録媒体として使用して、ネットワークを介したプログラムをコンピュータ800に提供してもよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更、又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更、又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示したシステム、方法、装置、プログラム、及び記録媒体における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現し得ることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。