【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1態様によれば、(i)反応混合物中に液晶相を形成するのに十分な量の界面活性剤の存在下でリチウム塩を1つ以上の遷移金属塩と反応させるステップ、(ii)反応混合物を加熱してゾル−ゲルを形成するステップ、及び(iii)界面活性剤を除去して、メソポーラスな生成物を残すステップを含むメソポーラスなリチウム遷移金属化合物の合成方法が提供される。
【0011】
リチウム塩及び1つ以上の遷移金属塩は、ステップ(ii)で高分子金属酸化物網状構造を形成し得、これによりメソポーラスなリチウム遷移金属酸化物生成物が形成される。
【0012】
或いは、リチウム塩及び1つ以上の遷移金属塩は、ステップ(ii)で高分子金属リン酸素網状構造を形成し得、これによりメソポーラスなリチウム遷移金属リン酸塩生成物が形成される。リン酸塩を主成分とするゾル−ゲルを形成するために追加のリン酸塩試薬、例えばリン酸二水素アンモニウムが必要なことがある。好ましい実施形態では、リチウム塩を鉄塩及びリン酸塩と好ましくは酸性条件下で反応させて、メソポーラスなLiFePO
4を製造する。好ましくは、リチウム塩は硝酸リチウムであり、鉄塩はシュウ酸第一鉄二水和物または硝酸鉄(例えば、Fe(NO
3)
3・9H
2O)であり、リン酸塩はリン酸二水素アンモニウムである。或いは、鉄塩(例えば、クエン酸Fe(III))を追加のリン酸塩試薬なしでリン酸リチウム(例えば、LiH
2PO
4)と反応させて、高分子金属リン酸素網状構造を形成してもよい。場合により、反応混合物は硝酸を含む。有利には、LiFePO
4材料にメソ多孔性を付与することにより該材料の導電率が大きく高められ得ることが知見された。
【0013】
本発明は、リチウム遷移金属ホウ酸塩及びケイ酸塩、例えばLiMBO
3(ここで、MはFe、CoまたはMnであり得る)及びLi
2MSiO
4(ここで、MはFeまたはMnであり得る)を合成するためにも使用され得る。この場合、リチウム塩及び1つ以上の遷移金属塩はステップ(ii)で高分子金属ホウ素酸素または高分子金属ケイ素酸素網状構造のいずれかを形成し、これによりメソポーラスなリチウム遷移金属ホウ酸塩またはケイ酸塩生成物が形成される。この場合でも、ゾル−ゲルを形成するために追加のホウ酸塩またはケイ酸塩試薬が必要なことがあり、当業者は適当なゾル−ゲル試薬を認識している。
【0014】
リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)と同様に、LiMBO
3(ここで、MはFe、CoまたはMnであり得る)及びLi
2MSiO
4(ここで、MはFeまたはMnであり得る)は通常低い導電率を有する潜在的高エネルギー密度正極材料である。材料を本発明の方法に従って合成することにより、その導電率を高め、その材料をリチウム電池中に使用することができる。
【0015】
いずれの場合も、本発明の方法は、ゾル−ゲル合成と液晶テンプレート化を組み合わせることによりメソポーラスなリチウム遷移金属化合物を製造する。結果は、単相のメソポーラスなリチウム遷移金属化合物を製造するために容易に実施される便利な低温方法である。
【0016】
ここで、メソポーラスなコバルト酸リチウムの製造に特に言及して本発明を説明する。しかしながら、教示内容は当業者により一般的には上記したリチウム遷移金属化合物に適用され得る。コバルト酸リチウムは、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)または1つ以上の追加の遷移金属包含物を含むコバルト酸リチウム(例えば、LiCoMnO
2、LiCoNiO、LiCoAlO
2及びLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2)のいずれかを意味し、以後化合物コバルト酸リチウムと称する。いずれの場合も、1つ以上の遷移金属塩はコバルト塩を含む。LiCoO
2を製造するためには、ステップ(i)でリチウム塩をコバルト塩と反応させる。しかしながら、化合物コバルト酸リチウムを製造するためにリチウム塩をコバルト塩及び1つ以上の更なる遷移金属塩と反応させ、1つ以上の更なる塩は好ましくはNi、Mn及びAlからなる群から選択される遷移金属を含む。より好ましくは、試薬をLiCoMnO
2、LiCoNiO、LiCoAlO
2及びLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2からなる群から選択される化合物コバルト酸リチウム生成物を形成するように選択する。
【0017】
上に表した化学式は厳密に限定するものと意図されず、非化学量論的バリアントを包含すると理解されたい。
【0018】
メソポーラスなコバルト酸リチウムにより、市販の電池において通常相互に相いれないパラメーターである高いエネルギー及び高い再充電/放電レート特性を有するリチウムイオン電池を開発する可能性がある。メソポーラスなコバルト酸リチウムを主成分とする正極材料を使用する別の効果は、破損の主メカニズム(物理的分解により正極の電子抵抗が高くなる)がメソ多孔性により大きく妨害されるために電池サイクル寿命が向上することである。
【0019】
慣例的に、多孔質材料の孔径範囲は次のように定義される:ミクロポーラス 5nm未満、メソポーラス 5〜50nm、ナノポーラス 50〜100nm、マクロポーラス 100nm以上。しかしながら、範囲及び長距離秩序は非常に僅かに変わり得るのでこれらの定義を厳密に解釈するつもりはない。従って、本発明の方法により製造されるメソポーラスな材料の幾つかの孔は50nmより大きく、幾つかの孔は5nmより小さい。
【0020】
本発明の方法は単相のメソポーラスなリチウム遷移金属酸化物、好ましくはメソポーラスなコバルト酸リチウムを製造し得る。本発明に従って製造されるコバルト酸リチウム粉末をX線回折(XRD)分析、透過型電子顕微鏡(TEM)及びブルナウア−エメット−テラー(BET)表面積分析により特性決定され、メソポーラスであり且つ10m
2/gを超える、典型的には15m
2/g以上の比表面積を有していることが判明した。1つの実施例では、20m
2/gのBET表面積が記録された。
【0021】
液晶テンプレート化は、規則的に離間されているシリンダーの自己組織化アレイからなる秩序化液晶相を形成するために反応混合物中に高濃度の界面活性剤を使用する。シリンダーの間隔、よって最終テンプレート化生成物の孔径は選択した界面活性剤の鎖長によりコントロールされる。本発明の方法にとって好ましい液晶相であるヘキサゴナル相の場合、シリンダーはヘキサゴナルアレイで配置され、界面活性剤の疎水性部分がシリンダーの内部に向かって集中し、親水性、通常水性領域は外部に集中するように構成される。適切にコントロールされると、液晶テンプレート化により高秩序化テンプレート構造が得られ、その周りで材料が合成され得る。典型的には、液晶テンプレート化によりリオトロピック液晶相が使用でき、従って他のよりゆるく秩序化されている界面活性剤を用いる技術(例えば、ミセルテンプレート化)よりもより高い界面活性剤濃度で実施される。
【0022】
ゾル−ゲル方法は、無機及び/または有機金属塩前駆体からリチウム遷移金属酸化物粉末を含めた金属酸化物粉末の合成のために使用され得る低温方法であり、通常水性条件下で行う。ゾル−ゲル方法では、まず前駆体からコロイド状懸濁液(ゾル)を形成した後、ゾルを加水分解及び縮合反応により連続液相中に固相−M−O−M−高分子網状構造(ゲル)を形成することにより金属酸化物網状構造が形成される。その後、ゲルを加熱して酸化物生成物を乾燥し、所要により求められる結晶相を与える。金属塩前駆体の組合せを使用することにより、2、3、4、5またはそれ以上の金属包含物を含む混合金属酸化物ゾルが形成され得る。正極材料用の所望の混合金属酸化物にはLiCoO
2、LiCoMnO
2、LiCoNiO、LiCoAlO
2及びLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2が含まれる。
【0023】
ゾル−ゲル方法は他の金属化合物、例えばリン酸塩、ホウ酸塩及びケイ酸塩を合成するためにも使用され得る。この場合、高分子網状構造は金属リン酸素網状構造、金属ホウ素酸素網状構造、金属ケイ素酸素網状構造等である。
【0024】
非テンプレート化ゾル−ゲル合成から製造される金属酸化物粉末は通常約5m
2/g未満、より典型的には約1m
2/g未満の比表面積を有する個々に分散されている及び/または凝集されているサブミクロン及び/またはナノサイズ粒子からなる。これは、ゾル−ゲル合成によると小さい粒度を有するが限定された多孔性を有する酸化物生成物が製造されるからである。
【0025】
本発明の方法では、反応混合物中に液晶相を形成するのに十分な量の界面活性剤の存在下でリチウム塩を1つ以上の遷移金属塩と反応させる。反応混合物を加熱し、場合によりエージングしてゾル−ゲルを形成し、これにより金属酸化物の合成の場合には液晶相の親水性ドメイン中に高分子リチウム−遷移金属酸化物網状構造が形成される。言い換えれば、反応混合物の親水性領域、典型的には液晶相中のロッドまたはシリンダーの外の領域がゾル−ゲル方法によりリチウム遷移金属酸化物(−Li−O−M−)網状構造の合成を助けるために使用される。こうして、無機高分子金属酸化物網状構造が好ましくはヘキサゴナルアレイで配置されている界面活性剤ロッドの周りに形成し、これにより液晶テンプレートが金属酸化物構造に導入される。次いで、界面活性剤を除去すると、メソポーラスな酸化物生成物が形成される。
【0026】
好ましくは、1つ以上の遷移金属塩には、液晶相がそれぞれ高分子−Li−O−Co−網状構造または−Li−O−Co−O−M−網状構造の形成を助けるLiCoO
2、すなわち化合物コバルト酸リチウムを製造するためのコバルト塩が含まれる。
【0027】
界面活性剤は、ゾル−ゲルから適当な方法、例えば溶媒抽出または熱分解により除去され得る。界面活性剤を除去すると、単相の三次元的に結合しているメソポーラス構造を有する酸化物生成物が残る。
【0028】
合成された生成物、好ましくは合成された酸化物生成物は少なくとも部分的に非晶質形態をとるようである。非晶質材料は通常電池材料として使用するためには望ましくなく、従って材料を所望の結晶相に変換するために生成物を焼成することが好ましい。界面活性剤除去及び焼成段階を組み合わせること、例えば界面活性剤を焼成に適した温度で熱分解することにより除去することが好都合である。通常、生成物を適切な結晶相に変換するために約400℃以上の温度が使用され得るが、焼成温度が高くなるとメソポーラスな生成物中の孔が崩壊する可能性が高くなることを本発明者らは知見した。こうなると、達成可能な表面積の拡大が対応して低下する。従って、(孔の一体性を維持するために)できるだけ低いが、正しい結晶性を得るために十分に高い焼成温度を使用することが望ましい。電池グレードLiCoO
2を液晶テンプレート化合成するための好ましい焼成温度は400〜700℃、より好ましくは400〜600℃の範囲である。リン酸鉄リチウムを合成するためには、焼成温度は好ましくは450〜700℃の範囲、より好ましくは450〜650℃の範囲である。
【0029】
材料を液晶テンプレート化方法によりうまく合成するためには、通常反応混合物中に所望の液晶相を形成した後この相を合成反応の実質的すべての間維持することが重要である。反応条件を例えば望ましくない副生成物を除去したり及び/またはステップ(i)及び(ii)で界面活性剤濃度を所望範囲に維持することにより注意深くコントロールしないと、液晶相は不安定になることがあり得る。液晶相が不安定化すると、メソポーラスな生成物を形成するのに適していない望ましくないミセル相、すなわちよりゆるく秩序化されている構造が形成される恐れがある。むしろ、生成物は単に全くまたは殆ど相互接続性を持たず、比表面積が小さいゆるく秩序化されているナノ粒子からなる傾向にある。
【0030】
従って、本発明の方法では、ステップ(i)及び(ii)で液晶相の不安定化を防止するように反応条件をコントロールすることが望ましく、理想的にはステップ(i)及び(ii)のすべてまたは実質的にすべてを通して相不安定化を防止するように反応条件をコントロールする。安定な液晶相、好ましくは安定なヘキサゴナル相が維持されるように反応混合物中の界面活性剤の濃度をコントロールすることが特に重要であり得る。
【0031】
安定な液晶相、特に好ましいヘキサゴナル液晶相を製造するための典型的な界面活性剤濃度は40〜60wt%であり、上記にてらしてステップ(i)及び(ii)のすべてまたは実質的にすべてを通して界面活性剤の濃度を上記範囲に維持することが好ましい。より好ましくは、界面活性剤濃度は45〜55wt%の範囲であり、更により好ましくは界面活性剤濃度は約50wt%である。この場合でも、ステップ(i)及び(ii)のすべてまたは実質的にすべてを通して、すなわちゾル−ゲル無機高分子網状構造の形成中、界面活性剤濃度を上記範囲に維持することが好ましい。
【0032】
本発明の方法の作用効果は、反応混合物に試薬を更に添加することを伴わないことである。換言すれば、金属塩、界面活性剤及び任意の試薬(例えば、上記したリン酸塩、ホウ酸塩またはケイ酸塩及び/または下記するキレート化剤)を組み合わせて反応混合物、好ましくは水性反応混合物を形成したら、合成中更なる試薬を添加する必要がなく、その結果界面活性剤濃度はその後希釈されない。こうして、単純で簡単な合成方法が提供されるだけでなく、界面活性剤濃度を変化させる恐れがある主メカニズムがステップ(i)及び(ii)中の水分損失であることを意味する。従って、これらのステップ中の水分損失を最小限とすることにより反応混合物中の界面活性剤濃度(よって、液晶相挙動)を簡単且つ効果的にコントロールすることができる。
【0033】
水分損失を最小限とする1つの好ましい方法は、液晶相が完全に乾燥しないように、よって相不安定化を受けないように反応温度をコントロールすることである。従来の金属酸化物のゾル−ゲル合成は60〜80℃の範囲の温度で進行し得るが、50〜60℃の範囲のより低い温度が通常本発明の方法のために適している。より好ましくは、反応混合物を55〜60℃の範囲の温度に加熱するが、この温度はコバルト酸リチウムの場合の70〜80℃という通常の非テンプレート化反応温度よりも低い。本発明者らは、55〜60℃の範囲の反応温度がゾル−ゲル合成の加水分解及び縮合反応の促進と反応混合物からの水分損失の低減の間の適切なバランスを与えることを知見した。低い反応温度を補うために、本発明のテンプレート化ゾル−ゲル合成を従来の対応する非テンプレート化合成よりも長く進行させることが好ましい。有利には、この任意のエージングプロセスにより、その後の加工ステップ(特に、任意の焼成ステップ)で崩壊しにくいより良好で、より相互接続され、高密度化されている高分子網状構造が作成され得る。
【0034】
反応温度をコントロールする代わりにまたはそれに加えて、ステップ(i)及び(ii)で生ずる水蒸気の逃散をコントロールすることにより水分損失を低減させることができる。従って、水分損失の程度をコントロールするように、より好ましくは水分損失を実質的に防止するようにテンプレート化ゾル−ゲル反応を場合により密封されたまたは部分的に密封された容器または反応容器中で実施する。
【0035】
本発明のために適したテンプレート化剤として作用させるために、ロッドまたはシリンダーからなる液晶相を形成し得る、より好ましくはH
1ヘキサゴナル相を形成し得る界面活性剤が通常必要である。多くの界面活性剤が当業者に公知であり、市販業者から容易に入手し得、反応混合物において所望の液晶相挙動を与える界面活性剤が本発明の方法で使用され得る。イオン性または非イオン性界面活性剤が適当であり得る。適しているイオン性界面活性剤には臭化セチルジメチルエチルアンモニウムまたは臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)が含まれ、適している非イオン性界面活性剤にはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドを主成分とするブロックコポリマー(一般的にPluronic(登録商標)界面活性剤として公知)、ポリオキシエチレンセチルエーテルまたはオクタエチレンエーテル(OEE)が含まれる。しかしながら、化学的に不活性であり、ゾル−ゲル反応に関与しない界面活性剤を選択することが好ましい。この点で、リチオ化界面活性剤(例えば、ラウリルエーテルリチウム酢酸塩)が反応混合物中の液晶相に対する望ましくない不安定化作用のために本発明の方法で使用するのに適さないことを知見した。
【0036】
好ましくは、界面活性剤はテンプレート化ゾル−ゲル合成の温度範囲で必要な液晶相を形成し得なければならない。秩序化テンプレートにおいて約5〜10nm、好ましくは7〜8nmの反復距離を与え得る鎖長(または、鎖長範囲)を有する界面活性剤を選択することも有利である。
【0037】
好ましくは、ゾル−ゲル反応を水性条件下で実施し、理想的には液晶相を不安定化し得る溶媒を排除した条件下で実施する。通常、有機溶媒(例えば、エタノール及びメタノール)は液晶相を壊し、これによりテンプレート構造を完全または部分的に崩壊し、所望のメソ多孔性を有する生成物を得ることができないので、これらの溶媒の使用を避けることが望ましい。
【0038】
場合により、試薬の混合を高め、反応する前駆体の表面積を最大限とし、(望ましくない多相生成物の形成を導く)金属酸化物の時期尚早の沈殿を防止するために反応混合物はキレート化剤を含む。例えば硝酸リチウムを硝酸コバルトと反応させてLi/O/Coを主成分とするゾルを製造する場合、通常反応混合物中に追加のキレート化剤が必要である。
【0039】
しかしながら、別のキレート化剤は必ずしも必要でない。例えば酢酸リチウムを酢酸コバルトと反応させてLi/O/Coを主成分とするゾル−ゲルを製造する場合、酢酸対イオンそれ自体がキレート化剤として作用し得、これにより別の試薬が必要でなくなる(換言すると、酢酸塩自己キレート)。
【0040】
一般的に、ゾル−ゲル試薬それ自体がキレート化特性を有していない場合にはキレート化剤が望ましい傾向にある。材料を本発明のテンプレート化ゾル−ゲル合成においてキレート化剤として作用させるためには、材料はテンプレート内の疎水性ドメインよりもむしろテンプレートのロッドまたはシリンダーの外の親水性ドメインでキレート化し得なければならない。本発明者らは予期せぬことに、クエン酸及びプロピオン酸が本発明の方法においてキレート化剤として作用し得、コストが安く、容易に入手し得るためにクエン酸が好ましいことを知見した。
【0041】
1つ以上の遷移金属塩は有機アニオン(例えば、酢酸塩、カルボン酸塩、クエン酸塩またはシュウ酸塩)または無機アニオン(例えば、硝酸塩、リン酸二水素塩またはリン酸塩)を含み得る。幾つかの場合には、1つ以上の更なる遷移金属塩は異なるアニオンを含み得るが、多くの場合各遷移金属試薬は同一のアニオンを含む。
【0042】
また、リチウム塩は有機アニオン(例えば、酢酸塩、カルボン酸塩、クエン酸塩またはシュウ酸塩)または無機アニオン(例えば、硝酸塩、リン酸二水素塩またはリン酸塩)を含み得る。通常(必須ではないが)、リチウム塩は1つ以上の遷移金属塩の少なくとも1つと同一のアニオンを含み、通常リチウム塩及び1つ以上の遷移金属塩はすべて同一のアニオンを含む。好ましくは、リチウム塩及び1つ以上の遷移金属塩のすべてが同一のアニオンを含み、アニオンは酢酸塩及び硝酸塩、より好ましくは硝酸塩から選択される。よって、LiCoO
2を酢酸リチウム及び硝酸コバルト、または硝酸リチウム及び硝酸コバルトのいずれかを含む反応混合物から合成することが好ましく、硝酸リチウム及び硝酸コバルトを含む反応混合物から合成することがより好ましい。通常硝酸塩が水もアルコールも含まない縮合生成物を生ずるので、硝酸塩を含むゾル−ゲル反応が本発明の方法にとって有利である。
【0043】
LiFePO
4のための好ましいゾル−ゲル前駆体の2つの例は、
クエン酸Fe(III)+LiH
2PO
4(H
3PO
4及びLi
3PO
4から製造)、
Fe(NO
3)
3・9H
2O+NH
4H
2PO
4+LiNO
3+クエン酸
である。
【0044】
本発明の第2態様によれば、(i)反応混合物中に液晶相を形成するのに十分な量の界面活性剤の存在下でリチウム塩を1つ以上の遷移金属塩と反応させるステップ、(ii)反応混合物を加熱してゾル−ゲルを形成するステップ、及び(iii)界面活性剤を除去して、メソポーラスな酸化物生成物を残すステップを含むメソポーラスなリチウム遷移金属酸化物の合成方法を提供する。
【0045】
本発明の第3態様によれば、(i)反応混合物中に液晶相を形成するのに十分な量の界面活性剤の存在下でリチウム塩を1つ以上の遷移金属塩と反応させるステップ、(ii)反応混合物を加熱してゾル−ゲルを形成するステップ、及び(iii)界面活性剤を除去して、メソポーラスなリン酸塩生成物を残すステップを含むリン酸鉄リチウムの合成方法を提供する。好ましくは、リチウム塩はリン酸塩である。或いは、ステップ(i)で追加のリン酸塩を添加してもよい。いずれの場合も、リン酸二水素塩が好ましいリン酸塩である。
【0046】
本発明の第4態様によれば、メソポーラスなリチウム遷移金属酸化物材料、好ましくはコバルト酸リチウム材料を提供する。本発明のメソポーラスな酸化物は好ましくは10m
2/gを超える、より好ましくは15m
2/g以上のBET表面積を有している。1つの実施形態では、リチウム遷移金属酸化物は化合物コバルト酸リチウムであり、好ましくはLiCoMnO
2、LiCoNiO、LiCoAlO
2及びLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2からなる群から選択される。代替実施形態では、リチウム遷移金属酸化物はLiCoO
2であり、好ましくは結晶構造を有するLiCoO
2である。
【0047】
本発明の第5態様によれば、上記したメソポーラスなリチウム遷移材料を含む電極を提供する。
【0048】
本発明の第6態様によれば、上記したメソポーラスなリチウム遷移材料を含む電池を提供する。好ましくは、電池はリチウム二次電池またはスーパーキャパシタであり得る。
【0049】
本発明の第2、第3、第4、第5及び第6態様の好ましい要件は第1態様に関連して上記した通りである。
【0050】
本発明の具体的実施形態を添付図面を参照して説明する。