(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記合流弁を、パイロットポートにパイロット圧が導入されることによって切換わる油圧パイロット切換弁として構成するとともに、この合流弁を上記タンク遮断位置に切換えるためのタンク遮断位置用パイロットポートと、このタンク遮断位置用パイロットポートにパイロット圧を導入するタンク遮断位置用パイロットラインを設け、上記ブーム上げ時合流弁切換手段として、ブーム上げ操作時に発生するブーム上げパイロット圧を上記タンク遮断位置用パイロットラインに導くブーム上げパイロットラインと、上記タンク遮断位置用パイロットラインをタンクに接続するパイロットドレンラインを設けるとともに、上記ブーム上げパイロットライン及び上記パイロットドレンラインにそれぞれ絞りを設けたことを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧回路。
上記合流通路が接続される上記第1回路のコントロールバルブを、中立位置で油圧アクチュエータへの油の供給を遮断する中立ブロック構成とする一方、クイックヒッチシリンダを駆動源として上記作業装置を上記アームに対して着脱するためのクイックヒッチ装置を有し、上記クイックヒッチシリンダを上記第3ポンプに、上記第3回路に対してパラレルに接続するとともに、上記第3ポンプとクイックヒッチシリンダを結ぶ管路に、クイックヒッチシリンダを作業装置取付状態に保持する保持弁を設け、かつ、上記作業装置の着脱時に上記合流弁を上記タンク遮断位置に切換えるクイックヒッチ時合流弁切換手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械の油圧回路。
上記合流弁を、パイロットポートにパイロット圧が導入されることによって切換わる油圧パイロット切換弁として構成するとともに、この合流弁を上記タンク遮断位置に切換えるためのタンク遮断位置用パイロットポートと、このタンク遮断位置用パイロットポートにパイロット圧を導入するタンク遮断位置用パイロットラインを設け、上記クイックヒッチ時合流弁切換手段として、上記タンク遮断位置用パイロットラインにパイロット油圧源からのパイロット一次圧を導く位置と上記タンク遮断位置用パイロットラインをタンクに接続する位置との間で切換わり作動する電磁切換弁である位置切換弁と、位置切換スイッチと、この位置切換スイッチの操作に基づいて上記位置切換弁を切換制御する制御手段を設けたことを特徴とする請求項3記載の建設機械の油圧回路。
上記ブーム上げ時合流弁切換手段として、ブーム上げ操作時に発生するブーム上げパイロット圧を上記タンク遮断位置用パイロットラインに導くブーム上げパイロットラインと、上記タンク遮断位置用パイロットラインをタンクに接続するパイロットドレンラインを設けるとともに、上記ブーム上げパイロットライン及び上記パイロットドレンラインにそれぞれ絞りを設け、上記位置切換弁からのパイロット一次圧と、上記ブーム上げパイロットラインからのブーム上げパイロット圧を高圧選択して上記タンク遮断位置用パイロットラインに導くように構成したことを特徴とする請求項4記載の建設機械の油圧回路。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、
図4に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が地面に対して鉛直な軸Xのまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、アーム4、作業装置としてのバケット5、及びこれらを作動させるブーム、アーム、バケット各シリンダ6,7,8から成る作業アタッチメント9が装着されて構成される。
【0004】
また、他の油圧アクチュエータとして、下部走行体1(左右のクローラ)を走行駆動する左右の走行モータ、及び上部旋回体2を旋回駆動する旋回モータ(いずれも図示省略)が設けられる。
【0005】
この油圧ショベルにおいて、特許文献1に示されているように、旋回動作と他のアクチュエータ動作の独立性を確保することを主眼として、回路全体を、
i 左右両側走行モータのうち一方の走行モータとブームシリンダとが属する第1回路と、
ii 他方の走行モータとアームシリンダとが属する第2回路と、
iii 旋回モータが属する第3回路と
に分け、この三つの回路を基本的には別ポンプ(第1〜第3ポンプ)で駆動する三回路/三ポンプ方式をとるものが公知である。
【0006】
この公知技術においては、たとえばブーム上げと旋回が同時に行われるブーム上げ/旋回操作時のブーム上げ動作を速やかに行わせることを目的として、第3回路の上流側に合流弁を設けている。
【0007】
この合流弁は、中立の第1位置と、第2位置とを有し、ブーム上げ/旋回時に第1位置から第2位置に切換わり、この第2位置で、第3ポンプから吐出される第3ポンプ油を旋回モータとパラレルにブームシリンダに供給する(第1ポンプ油と合流させる)ように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、ブーム上げ/旋回操作時点と、合流弁が第1位置から第2位置に切換わる時点の間に合流弁の応答遅れによってタイムラグが生じる。
【0010】
これを旋回モータから見ると、過渡的に、第3ポンプ油が単独供給される状態からブームシリンダとパラレルに供給される状態に変化し、旋回モータの最高圧力(旋回圧力)がリリーフ圧からブーム作動圧に急変するため、旋回ショックが生じ、操作性が悪いものとなっていた。
【0011】
そこで本発明は、ブーム上げ/旋回時の合流弁の切換えによる旋回ショックの発生を防止して良好な操作性を維持することができる建設機械の油圧回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、次の(A)〜(H)のすべての要件を具備するものである。
【0013】
(A) 下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載され旋回モータによって旋回駆動される上部旋回体と、この上部旋回体に取付けられた作業アタッチメントを有すること。
【0014】
(B) 上記作業アタッチメントは、ブームシリンダによって作動するブームと、アームシリンダによって作動するアームと、このアームの先端に着脱自在に取付けられた作業装置とを有すること。
【0015】
(C) 油圧アクチュエータ回路として、上記ブームシリンダが属する第1回路と、上記アームシリンダが属する第2回路と、上記旋回モータが属する第3回路を備え、上記第1〜第3各回路は油圧アクチュエータごとに作動を制御するための、ブーム用、アーム用、旋回用を含むコントロールバルブを有すること。
【0016】
(D) 上記第1回路の油圧源としての第1ポンプと、上記第2回路の油圧源としての第2ポンプと、上記第3回路の油圧源としての第3ポンプとを有すること。
【0017】
(E) 上記第3ポンプから吐出される第3ポンプ油を上記第1回路に供給する合流通路と、上記第3ポンプ油のうち旋回用コントロールバルブを通ってアンロード通路に流入するアンロード油をタンクに戻すタンク通路を有すること。
【0018】
(F) 上記第3ポンプと上記合流通路、及び上記アンロード通路と上記タンク通路を接続/遮断する合流弁を備えていること。
【0019】
(G) 上記合流弁は中立位置とタンク遮断位置とを有し、上記中立位置で、上記合流通路を上記第3ポンプに、上記タンク通路を上記アンロード通路にそれぞれ接続し、上記タンク遮断位置で、上記合流通路を上記第3ポンプに接続する一方、上記タンク通路を上記アンロード通路に対して遮断するように構成されていること。
【0020】
(H) ブーム上げ操作時に上記合流弁を上記タンク遮断位置に切換えるブーム上げ時合流弁切換手段を具備すること。
【0021】
この構成によれば、ブーム上げ操作があれば合流弁がタンク遮断位置に切換わり、第3ポンプ油が合流通路を通じて第1回路のブーム用コントロールバルブに送られる。
【0022】
つまり、ブーム上げ/旋回時、及びブーム上げ単独操作時の双方でブームシリンダに対する第3ポンプ油の合流が行われる。
【0023】
ここで、合流弁の中立位置とタンク遮断位置とでは、アンロード通路とタンク通路が接続されるか(中立位置)遮断されるか(タンク遮断位置)だけが異なり、ブーム上げ合流機能は同じであって両位置に機能の差がないため、ブーム上げ/旋回時に合流弁の応答遅れがあっても回路状態に変化がない。
【0024】
従って、旋回圧力の急変、すなわち旋回ショックが生じない。
【0025】
また、ブーム上げ単独操作時にブームシリンダに対する合流作用が行われることにより、ブーム上げ動作が高速で行われる。
【0026】
このため、深掘り作業時のような高速でのブーム動作が求められる作業時のサイクルタイムを短縮し、作業能率を向上させることができる。
【0027】
しかも、合流弁が増速弁機能を果たすため、独立した増速弁をバルブブロックに追加する必要がなく、バルブブロックの大形化及びコストアップを招くおそれがない。
【0028】
本発明において、上記合流弁を、パイロットポートにパイロット圧が導入されることによって切換わる油圧パイロット切換弁として構成するとともに、この合流弁を上記タンク遮断位置に切換えるためのタンク遮断位置用パイロットポートと、このタンク遮断位置用パイロットポートにパイロット圧を導入するタンク遮断位置用パイロットラインを設け、上記ブーム上げ時合流弁切換手段として、ブーム上げ操作時に発生するブーム上げパイロット圧を上記タンク遮断位置用パイロットラインに導くブーム上げパイロットラインと、上記タンク遮断位置用パイロットラインをタンクに接続するパイロットドレンラインを設けるとともに、上記ブーム上げパイロットライン及び上記パイロットドレンラインにそれぞれ絞りを設けるのが望ましい(請求項2)。
【0029】
この構成によれば、ブーム上げパイロット圧が絞りによって低減されるため、ブーム上げ操作中に他の操作が行われた場合に、ブーム上げパイロット圧が邪魔になって合流弁がタンク遮断位置から他の位置に切換わらないという事態の発生を回避することができる。
【0030】
一方、本発明において、上記合流通路が接続される第1回路のコントロールバルブを、中立位置で油圧アクチュエータへの油の供給を遮断する中立ブロック構成とする一方、クイックヒッチシリンダを駆動源として上記作業装置を上記アームに対して着脱するためのクイックヒッチ装置を有し、上記クイックヒッチシリンダを上記第3ポンプに、上記第3回路に対してパラレルに接続するとともに、上記第3ポンプとクイックヒッチシリンダを結ぶ管路に、クイックヒッチシリンダを作業装置取付状態に保持する保持弁を設け、かつ、上記作業装置の着脱時に上記合流弁を上記タンク遮断位置に切換えるクイックヒッチ時合流弁切換手段を設けるのが望ましい(請求項3〜5)。
【0031】
油圧ショベルにおいて、バケットまたは他の作業装置(ブレーカ等)の交換を含めた着脱作業を助ける手段として、
図5に示すようにアーム4の先端部にクイックヒッチ装置10が設けられる場合がある。
【0032】
このクイックヒッチ装置10は、固定、可動両フック11,12と、可動フック12を回動させるクイックヒッチシリンダ(油圧シリンダ)13とを備え、バケット5(作業装置)に設けられたアーム取付用及びリンク取付用の両ピン14,15の一方に固定フック11を引っ掛けた状態で、クイックヒッチシリンダ13を伸長作動させることにより、可動フック12を他方のピンに係合させてバケット5をアーム先端に取付け、またこれと逆の操作によってアーム先端から取外すように構成されている。
【0033】
このクイックヒッチ装置10を三ポンプ方式の油圧ショベルに採用する場合、クイックヒッチシリンダ13を、いずれかのポンプラインの上流側に、メイン回路に対してパラレルの状態で接続し、回路の圧損による圧力で作動させる構成をとることができる。
【0034】
ところが、上記のように回路の圧損のみでクイックヒッチシリンダ13を作動させる構成では、同シリンダ13の作動圧力が低くなるため、シリンダ負荷が大きい場合(たとえば同シリンダ13や可動フック12の回動支点部分に泥等が付着した場合)にクイックヒッチシリンダ13が圧力不足で十分作動しなくなるおそれがある。
【0035】
この場合、メイン回路の油圧アクチュエータを作動させて第3ポンプの圧力を上げることが考えられるが、油圧アクチュエータの作動によってクイックヒッチ装置10の位置が変わってしまい、掴み損ないや作業装置の不測の動きが発生するため、好ましくない。
【0036】
つまり、油圧アクチュエータを作動させずにポンプ圧を上げることが必要となる。
【0037】
この点の対策として、二ポンプ方式の油圧回路に一般に採用されているカット弁を用い、このカット弁を閉じてポンプ圧を上げた状態でクイックヒッチシリンダ13を作動させるように構成することが考えられる。
【0038】
しかし、カット弁を追加すると、このカット弁を含めたバルブブロック全体が大型化し、かつ、コストアップするため、とくにミニショベルのようにバルブスペースとコストに制限を受けるショベルには適用困難となる。
【0039】
この点、請求項3の構成によると、作業装置の着脱時に合流弁をタンク遮断位置に切換えることにより、合流通路が接続される第1回路のアクチュエータ操作(たとえば、ブーム上げ操作)が行われないことを前提として、第3ポンプ油のクイックヒッチシリンダ以外への流出先を遮断するブロック状態を形成するようにしたから、クイックヒッチシリンダを、第3回路の最高圧力で作動させることができる。
【0040】
従って、クイックヒッチ装置に泥等が付着した、シリンダ負荷が高い状態でもクイックヒッチシリンダを高圧で力強く作動させてクイックヒッチ動作を完遂させることができる。
【0041】
しかも、合流弁がカット弁機能を果たすため、カット弁をバルブブロックに追加する必要がない。
【0042】
従って、バルブブロックの大形化及びコストアップを招くおそれがなく、ミニショベルにも容易に適用することができる。
【0043】
この場合、上記合流弁を、パイロットポートにパイロット圧が導入されることによって切換わる油圧パイロット切換弁として構成するとともに、この合流弁を上記タンク遮断位置に切換えるためのタンク遮断位置用パイロットポートと、このタンク遮断位置用パイロットポートにパイロット圧を導入するタンク遮断位置用パイロットラインを設け、上記クイックヒッチ時合流弁切換手段として、上記タンク遮断位置用パイロットラインにパイロット油圧源からのパイロット一次圧を導く位置と上記タンク遮断位置用パイロットラインをタンクに接続する位置との間で切換わり作動する電磁切換弁である位置切換弁と、位置切換スイッチと、この位置切換スイッチの操作に基づいて上記位置切換弁を切換制御する制御手段を設けるのが望ましい(請求項4,5)。
【0044】
この構成によると、上記合流弁によるブロック状態とその解除の切換えをスイッチ操作のみによって簡単に行うことができる。
【0045】
また、上記ブーム上げ時合流弁切換手段として、ブーム上げ操作時に発生するブーム上げパイロット圧を上記タンク遮断位置用パイロットラインに導くブーム上げパイロットラインと、上記タンク遮断位置用パイロットラインをタンクに接続するパイロットドレンラインを設けるとともに、上記ブーム上げパイロットライン及び上記パイロットドレンラインにそれぞれ絞りを設け、上記位置切換弁からのパイロット一次圧と、上記ブーム上げパイロットラインからのブーム上げパイロット圧を高圧選択して上記タンク遮断位置用パイロットラインに導くように構成するのが望ましい(請求項5)。
【0046】
この構成によれば、ブーム上げ合流用のパイロット系とクイックヒッチ用のパイロット系を完全に独立してパラレルに設ける場合と比較して、パイロット構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によると、ブーム上げ/旋回時の合流弁の切換わりによる旋回ショックの発生を防止して良好な操作性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
第1実施形態(
図1,2参照)
第1実施形態に係る油圧回路においては、油圧アクチュエータ回路として、左走行モータ16とブームシリンダ6とバケットシリンダ8が属する第1回路Aと、右走行モータ17とアームシリンダ7が属する第2回路Bと、旋回モータ18が属する第3回路Cとを備えるとともに、第1回路Aの油圧源としての第1ポンプ19と、第2回路Bの油圧源としての第2ポンプ20と、第3回路Cの油圧源としての第3ポンプ21が設けられている。
【0050】
各回路A,B,Cには、油圧アクチュエータごとに、図示しないリモコン弁の操作によりストローク作動してアクチュエータ作動を制御する油圧パイロット式のスプール弁であるコントロールバルブ(方向切換弁)が設けられている。
【0051】
すなわち、第1回路Aには、ブーム用、バケット用、左走行用の各コントロールバルブ22,23,24、第2回路Bにはアーム用と右走行用の両コントロールバルブ25,26、第3回路Cには旋回用のコントロールバルブ27がそれぞれ設けられている。
【0052】
28は第3ポンプ21用のリリーフ弁である。
【0053】
なお、図の簡素化のため、他の各ポンプラインに設けられるリリーフ弁等、本発明とは直接関係のない要素、部分の図示を省略している。
【0054】
また、実機では第2回路Bに予備アクチュエータとそのコントロールバルブ、第3回路にドーザシリンダとそのコントロールバルブがそれぞれ設けられるが、ここでは図示省略している。
【0055】
第1及び第2両回路A,Bは、図示のように走行用コントロールバルブ24,26がポンプ油の流れの最上流側に位置し、走行操作時に第1ポンプ19から吐出された第1ポンプ油が左走行モータ16に、第2ポンプ20から吐出された第2ポンプ油が右走行モータ17にそれぞれ優先的に供給される。
【0056】
従って、両走行モータ16,17が同時に駆動される両走行時に、ポンプ流量を両走行モータ16,17に全量供給する操作が行われた場合、第1、第2両回路A,Bにおける走行モータ以外の油圧アクチュエータにはポンプ流量が供給されない。
【0057】
そこで、両走行時に他のアクチュエータ動作を確保する手段として、第3回路Cに合流弁29が設けられ、両走行時に、第3ポンプ21から第3回路C(旋回モータ18)に向けて吐出される第3ポンプ油を、第1、第2両回路A,Bに供給するように構成されている。
【0058】
この合流弁29とその関連構成を
図2を併用して説明する。
【0059】
合流弁29は、片側に第1及び第2両パイロットポート29a,29b、反対側に第3パイロットポート(タンク遮断位置用パイロットポート)29cを備え、パイロット圧の導入/停止、パイロット圧の種類により中立の第1位置イと、第2位置ロと、第3位置ハと、第4位置(タンク遮断位置)ニの間で切換わる四位置油圧パイロット切換弁として構成されている。
【0060】
すなわち、第1〜第3各パイロットポート29a,29b,29cのいずれにもパイロット圧が導入されない状態では、合流弁29は第1位置イにセットされ、第1パイロットポート29aにパイロット圧が導入されると第2位置ロに、第2パイロットポート29bにパイロット圧が導入されると第3位置ハに、第3パイロットポート29cにパイロット圧が導入されると第4位置ニにそれぞれ切換わる。
【0061】
この合流弁29は、二つの入力ポートと三つの出力ポートを備え、二つの入力ポートの一方が、第3ポンプ21のポンプライン30から分岐して旋回用コントロールバルブ27のブリードオフ通路を通るアンロード通路31に、他方が、ポンプライン30から分岐したパラレル通路32にそれぞれ接続されている。
【0062】
また、三つの出力ポートのうち、第1の出力ポートは第1合流通路33を介して第1回路Aに、第2の出力ポートは第2合流通路34を介して第2回路Bに、第3の出力ポートはタンク通路35を介して、タンクTに通じるタンクライン36にそれぞれ接続されている。
【0063】
合流弁29の第1パイロットポート29aは、シャトル弁37を介してブーム下げパイロットライン38と、パイロット油圧源39に通じるパイロット一次圧ライン40とに接続されている。
【0064】
一方、第2パイロットポート29bは、直接、パイロット一次圧ライン40に接続されている。
【0065】
また、パイロット一次圧ライン40には、第1及び第2両サイドバイパスライン41,42が接続され、第1サイドバイパスライン41はアーム用コントロールバルブ25のサイドバイパス部25aを通って、タンクTに通じるドレン通路43に接続されている。
【0066】
これに対し、第2サイドバイパスライン42は、アーム用以外の各コントロールバルブ(
図1の上から順に右走行用、左走行用、ブーム用、バケット用の各コントロールバルブ)26,24,22,23のサイドバイパス部26a,24a,22a,23aを直列に通ってドレン通路43に接続されている。
【0067】
ここで、右、左両走行用コントロールバルブ26,24のサイドバイパス部26a,24aは、同コントロールバルブ26,24の位置に関係なく常に開通状態となり、他のコントロールバルブ(アーム用、ブーム用、バケット用各コントロールバルブ25,22,23)のサイドバイパス部25a,22a,23aは中立で開通、作動状態でブロックとなるように構成されている。
【0068】
こうして、旋回以外の各コントロールバルブ25,26,24,22,23の操作状況に応じて、合流弁29の第1及び第2両パイロットポート29a,29bに対してパイロット一次圧が供給/遮断されるように構成されている。
【0069】
なお、合流弁29において、第3ポンプ油を第1合流通路33に導く通路44に絞り44aが設けられ、この絞り44aにより、後述するようにブーム上げ/旋回時に旋回圧力を高め、旋回加速性能を確保するように構成されている。
【0070】
一方、合流弁29の第3パイロットポート29cに第4位置用パイロットライン(タンク遮断位置用パイロットライン)45が接続され、ブーム上げ操作時に合流弁29を第4位置ニに切換えるためのブーム上げ時合流弁切換手段として、この第4位置用パイロットライン45に、ブーム上げ操作時にブーム上げパイロット圧が導入されるブーム上げパイロットライン46と、タンクTに通じるパイロットドレンライン47が分岐接続されている。
【0071】
これにより、ブーム上げ操作時に、合流弁29が第4位置ニに切換わるように構成されている。
【0072】
ブーム上げパイロットライン46及びパイロットドレンライン47にはそれぞれ絞り48,49が設けられ、この絞り48,49により、ブーム上げパイロット圧が低減されて第3パイロットポート29cに加えられるように構成されている。
【0073】
すなわち、第3パイロットポート29cには第1、第2両パイロットポート29a,29bに加えられるパイロット圧よりも低いパイロット圧が加えられるように構成されている。
【0075】
一切のアクチュエータ操作が無い状態では、合流弁29は図示の第1位置イにある。
【0076】
この第1位置では、第3ポンプ油が第1合流通路33を介して第1回路Aのブーム用、バケット用両コントロールバルブ22,23に供給可能となる。
【0077】
但し、このとき旋回操作がなければアンロード通路31がタンク通路35に接続されるため、第3ポンプ21のポンプ圧が上昇せず、ブームまたはバケット操作があってもアクチュエータ(ブーム、バケット両シリンダ6,8)は合流されない。
【0078】
(1) ブーム下げ操作が行われたとき
図1の状態からブーム下げ操作が行われると、ブーム下げパイロット圧が合流弁29の第1パイロットポート29aに供給されるため、合流弁29が第2位置ロに切換わる。
【0079】
この第2位置ロでは、アンロード通路31が第1、第2両合流通路33,34に接続される。
【0080】
ここで、図示のように第1合流通路33に対しては絞り44aによる絞り作用が働くため、第3ポンプ油は絞り作用を受けない第2合流通路34に優先的に流れてアーム用コントロールバルブ25に供給され、このときアーム非操作であればタンクTに流れる。
【0081】
つまり、第3ポンプ油はブームシリンダ6には供給されず、ブーム下げ/旋回時には、合流は行われないため、旋回圧力が、ブーム下げ圧力に同調して低下することがない。このため、良好な旋回加速性能を確保することができる。
【0082】
また、ブーム下げパイロット圧を合流弁29の第1パイロットポート29aに導くだけで合流弁29を第2位置ロに切換えることができるため、合流弁29を第2位置ロに切換えるための回路構成が簡単ですむ。
【0083】
一方、上記合流弁29の第2位置ロでアーム操作があれば、第3ポンプ油がアームシリンダ7に優先的に供給され、アームの動きが増速される。
【0084】
(2) 両走行操作と他のアクチュエータ操作が行われたとき
左右両走行用コントロールバルブ24,26が操作され、他のコントロールバルブは非操作であれば、サイドバイパスライン41,42がいずれもドレン通路43を通じてタンクTに連通するため、パイロット一次圧は合流弁29の両パイロットポート29a,29bのいずれにも導入されず、合流弁29は第1位置イにある。
【0085】
この状態で他のアクチュエータ操作が行われると、サイドバイパスライン41,42が、操作されたコントロールバルブのサイドバイパス部によってドレン通路43から遮断されるため、パイロット一次圧が第2パイロットポート29bに導入され、合流弁29が第3位置ハに切換わる。
【0086】
この第3位置ハでは、第3ポンプ油が、アンロード通路31を通り、第1、第2両合流通路33,34を介して第1、第2両回路A,Bに流れる。
【0087】
これにより、両走行時に走行以外のアクチュエータ動作を確保することができる。
【0088】
(3) ブーム上げ単独操作が行われたとき
ブーム用コントロールバルブ22がブーム上げ側に操作されると、ブーム上げパイロット圧が合流弁29の第3パイロットポート29cに導入される。
【0089】
このとき、ブーム下げパイロットライン38は図示しないブーム用リモコン弁を介してタンクTに連通し、第1、第2両サイドバイパスライン41,42もドレン通路43に接続されるため、合流弁29の第1、第2両パイロットポート29a,29bには、ブーム上げパイロット圧に対抗するパイロット圧は導入されない。
【0090】
これにより、合流弁29が第4位置ニに切換わる。
【0091】
この第4位置ニでは、アンロード通路31がタンク通路35に対して遮断されるため、旋回非操作でも第3ポンプ油が第1合流通路33を通り、第1ポンプ油と合流してブームシリンダ6に供給される。
【0092】
これにより、ブーム上げ単独動作が高速で行われる。
【0093】
このため、深掘り作業時のような高速でのブーム動作が求められる作業時のサイクルタイムを短縮し、作業能率を向上させることができる。
【0094】
しかも、合流弁29に第4位置ニを加えただけであるため、つまり合流弁29が増速弁機能を果たすため、独立した増速弁をバルブブロックに追加する必要がない。
【0095】
このため、とくにミニショベルのようなスペース、コスト面の制約を受ける建設機械において有利となる。
【0096】
ところで、ブーム上げ単独操作中に走行操作等の他の操作が行われた場合、第3パイロットポート29cのブーム上げパイロット圧が高いと、合流弁29が第1位置イまでしか戻らず、第2位置ロまたは第3位置ハに切換わらない事態が発生するおそれがある。
【0097】
この点、実施形態では、ブーム上げパイロット圧が絞り48,49によって低減されるため、第4位置側に付勢するバネ力を合算しても、第1パイロットポート29aまたは第2パイロットポート29bに加えられるパイロット圧よりは低い(そのように圧力及びバネ力が設定されている)ことから、合流弁29が第2位置ロまたは第3位置ハに確実に切換わる。
【0098】
なお、ブーム上げパイロット圧の最高値そのものを規制する構成をとる場合には、パイロットドレンライン47も絞り48,49も不要となる。
【0099】
(4) ブーム上げ/旋回操作が行われたとき
合流弁29は、上記のように第1、第2両パイロットポート29a,29bにパイロット圧が導入される操作がない限り、ブーム上げ操作があれば、ブーム上げ単独操作かブーム上げ/旋回操作かを問わず第4位置ニに切換わる。
【0100】
従って、第3ポンプ油が旋回モータ18とブームシリンダ6にパラレルに供給され、ブーム3の高速上げ動作を伴う旋回動作が行われる。
【0101】
ここで、合流弁29の第1(中立)位置イと第4(タンク遮断位置)とでは、アンロード通路31とタンク通路35が接続されるか(第1位置イ)遮断されるか(第4位置ニ)だけが異なり、ブーム上げ合流機能は同じであって両位置イ,ニに機能の差がないため、ブーム上げ/旋回時に合流弁29の応答遅れがあっても回路状態に変化がない。
【0102】
従って、旋回圧力の急変、すなわち旋回ショックが生じない。
【0103】
また、ブーム上げ/旋回時に、絞り44aによって旋回圧力を高め、旋回加速性能を確保することができる。
【0104】
第2実施形態(
図3参照)
第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0105】
第2実施形態においては、第1実施形態の回路にクイックヒッチシリンダ回路が組み込まれ、
図4のアーム4に対するバケット5等の作業装置の着脱時にも合流弁29が第4位置ニに切換わり、クイックヒッチシリンダ13を高圧で作動させるように構成されている。
【0106】
詳述すると、第3ポンプ21のポンプライン30の最上流側にクイックヒッチシリンダ13が電磁切換弁である掴み/外し切換弁50を介して接続されている。
【0107】
掴み/外し切換弁50は、非励磁で掴み位置イ、励磁で外し位置ロとなり、掴み位置イでクイックヒッチシリンダ13が伸長作動して
図5の可動フック12を押し出し、外し位置ロで同シリンダ13が縮小作動して同フック12を引っ張る。
【0108】
すなわち、掴み位置イで掴み動作が行われてバケット5等の作業装置をアーム先端に取付け、外し位置ロで外し動作が行われて作業装置をアーム先端から取外すことができる。
【0109】
ここで、クイックヒッチシリンダ13と第3ポンプ21を結ぶ管路に、同シリンダ13を伸長状態(作業装置取付状態)に保持するパイロットチェック弁である保持弁51が設けられている。
【0110】
一方、作業装置着脱時に合流弁29を第4位置ニに切換えるためのクイックヒッチ時合流弁切換手段として、第4位置用パイロットライン45に、シャトル弁52を介してブーム上げパイロットライン46と、パイロット油圧源39からのパイロット一次圧を導くパイロット一次圧ライン53が接続されている。
【0111】
ブーム上げパイロットライン46にパイロットドレンライン47が接続される点、及び両ライン46,47に絞り48,49が設けられる点は第1実施形態と同じである。
【0112】
パイロット一次圧ライン53には、電磁切換弁である位置切換弁54が設けられ、この位置切換弁54が励磁されたときに、図示のタンク位置イからパイロット圧供給位置ロに切換わって第3パイロットポート29cにパイロット圧(パイロット油圧源39の一次圧)が供給され、合流弁29が第4位置ニに切換わる。
【0113】
また、位置、掴み/外し両切換弁50,54を制御するための要素として、掴み/外し切換スイッチ55と、位置切換スイッチ56が設けられるとともに、この両スイッチ55,56の操作に基づいて両切換弁50,54を励磁/非励磁する制御手段としてのコントローラ57が設けられている。
【0114】
このコントローラ57により、位置切換スイッチ56がON操作されたときに位置切換弁54がパイロット圧供給位置ロに切換わって合流弁29が第4位置ニに切換わるとともに、掴み/外し切換スイッチ55の切換操作に応じて掴み/外し切換弁50が掴み位置イと外し位置ロの間で切換わるように構成されている。
【0115】
このコントローラ57の作用とクイックヒッチ動作を含めたこの回路の作用を説明する。
【0116】
オペレータは、上述したように、作業装置をアーム先端に取り付けたいとき、あるいは作業装置をアーム先端から取り外したいときには、掴み/外し切換スイッチ55を操作する。
【0117】
たとえば、作業装置をアーム先端に取り付けたいときは、掴み/外し切換スイッチ55を掴み側に切り換える。
【0118】
コントローラ57は、掴み/外し切換スイッチ55が掴み側に切り換わったことを検出すると、掴み/外し切換弁50を非励磁として掴み位置イとする。
【0119】
この状態で、第3ポンプ油がクイックヒッチシリンダ13のヘッド側に流入して同シリンダ13が伸長作動し、掴み動作が行われる。
【0120】
このとき、クイックヒッチ装置に泥等が付着した、シリンダ負荷が高い状態にあるときには、掴み動作がスムーズに動作しないときがある。
【0121】
この場合、オペレータは位置切換スイッチ56をON操作する。この位置切換スイッチ56のON操作によって、位置切換弁54を励磁してパイロット圧供給位置ロに切換える。
【0122】
これにより、合流弁29の第3パイロットポート29cにパイロット圧が供給されて合流弁29が第4位置ニに切換わる。
【0123】
このとき、第1合流通路33−ブーム用及びバケット用両コントロールバルブ22,23のラインは生かされるが、両コントロールバルブ22,23は中立ブロックであるため、ブーム操作またはバケット操作が行われない限り、第3ポンプ油は上記ラインには流れず、事実上、第3ポンプ油のクイックヒッチシリンダ13以外への流れが遮断される「ブロック状態」となる。
【0124】
このように回路を「ブロック状態」に切り換えることにより、第3ポンプ21の吐出圧力はリリーフ弁28で決まる最高圧力まで上昇するため、クイックヒッチシリンダ13はストロークエンドまで伸長作動し、強い力で掴み動作を行わせることができる。
【0125】
ここで、クイックヒッチシリンダ13は、容量が小さくて短時間でストロークエンドに達する。
【0126】
そこで、位置切換スイッチ56がON操作された時点から予め設定した時間(クイックヒッチシリンダ13がストロークエンドに達するのに必要な時間)が経過した時点で位置切換弁54を非励磁としてタンク位置イに戻すように構成するのがよい。
【0127】
この状態で、合流弁29は、アクチュエータ操作がなければ第1位置イに復帰し、アクチュエータ操作があればその操作に応じた位置(第2位置ロまたは第3位置)に切換わる。
【0128】
また、ブーム上げ操作が行われれば、シャトル弁52を介してブーム上げパイロット圧が加えられるため第4位置ニとなる。
【0129】
すなわち、回路が通常の作業状態となり、アクチュエータ操作に応じた作業を行うことができる。
【0130】
この通常作業中、クイックヒッチシリンダ13はアクチュエータ動作によって発生する圧力(「ブロック状態」のときよりも低い圧力)を加えられるため、油温低下による油の収縮やシリンダ内部漏れ等によるクイックヒッチ装置10のがたつきが防止される。
【0131】
また、クイックヒッチシリンダ13は保持弁51によって伸長状態、すなわち、作業装置取付状態に保持される。
【0132】
一方、作業装置取外し時には、オペレータは掴み/外し切換スイッチ55を外し側に操作する。この操作に基づいてコントローラ57は掴み/外し切換弁50を外し位置ロに切り換えるように指令する。これを受けて、掴み/外し切換弁47が励磁されて外し位置ロに切換わる。
【0133】
これにより、クイックヒッチシリンダ13が縮小作動して外し動作が行われる。
【0134】
また、このときに、クイックヒッチシリンダ13が思うように動作しないときは上述した掴み動作時と同様にオペレータは位置切換スイッチ50をON操作する。これにより掴み動作同様、回路を「ブロック状態」に切り換えて回路圧を高めることにより、スムーズな外し動作を行うことができる。
【0135】
なお、位置切換弁54の他の操作方法として、位置切換スイッチ56を、上記設定時間に相当する時間、継続してON操作する構成をとってもよい。
【0136】
他の実施形態
(1) クイックヒッチシリンダ回路を組み込む第2実施形態において、合流弁29を第4位置ニに切換えるための第3パイロットポートを二つ設け、ブーム上げ操作時のブーム上げパイロット圧と、作業装置着脱時のパイロット一次圧を別々の第3パイロットポートに導入する構成をとってもよい。
【0137】
(2) 上記両実施形態では、合流弁29の第1位置(中立位置)イで、旋回用コントロールバルブ27のブリードオフ通路を通るアンロード通路31を、独立して設けたタンク通路35に接続する構成としたが、アンロード通路31を第2回路Bのアーム用及び右走行用両コントロールバルブ19,20のブリードオフ通路を通ってタンクTに至るアンロード通路に接続する構成をとってもよい。