(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859859
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】外装部材用固定具
(51)【国際特許分類】
B60R 19/24 20060101AFI20160202BHJP
F16B 5/10 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
B60R19/24 D
B60R19/24 R
F16B5/10 H
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-15551(P2012-15551)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2013-154703(P2013-154703A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 博文
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕嗣
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−254977(JP,A)
【文献】
実開昭60−148174(JP,U)
【文献】
特開平07−332322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00−19/56
F16B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネル側に取り付けられて外装部材の長手方向の一端部を係合した状態で、前記外装部材の温度変化による伸縮や寸法誤差を吸収可能な固定具において、
前記車体パネルに固定されて前記外装部材の延び方向に配置される空間部を有しているリテーナと、
前記空間部に対し抜止め可能かつ圧接力に抗して所定距離だけ摺動可能に配置される基部、及び前記基部の前方へ突出されて前記外装部材の一端部を係合する保持部を有しているクリップとからなり、
前記空間部は、略矩形空洞であり、上下部ないしは左右部のうち、一方が幅広部に形成され、他方が幅細部に形成されており、
前記基部は、前記空間部の幅広部に嵌合する幅広部と、前記空間部の幅細部に嵌合する幅細部とからなると共に、前記空間部に設けられた段差状の受け部に係止してその空間部に対し最前方位置で抜け止めする係止突起と、前記空間部の対向面に撓み変形可能に圧接する弾性突起とを形成していることを特徴とする車両の外装部材用固定具。
【請求項2】
前記空間部の幅広部を区画している外面と前記空間部の幅細部を区画している外面との対向内面に形成されて前記クリップを車幅方向に位置決めする幅方向調整用リブと、前記空間部の幅細部の対向面に形成されて前記クリップを高さ方向に位置決めする高さ方向調整用リブとを有していることを特徴とする請求項1に記載の車両の外装部材用固定具。
【請求項3】
前記保持部は、前記基部より幅広に形成されていると共に、前記外装部材として、バンパーの一端部を一方側より挿入して挟持する凹状の第1係合部、及びフェンダーライナーの端部を他方向から挿入して挟持する逆凹状の第2係合部からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の外装部材用固定具。
【請求項4】
前記第1係合部と第2係合部とを仕切っている中間壁部は、揺動可能に設けられていると共に、前記第1係合部にバンパーの一端部を挿入した状態で、前記第2係合部に前記フェンダーライナーの端部を挿入することにより揺動変位不能となることを特徴とする請求項3に記載の車両の外装部材用固定具。
【請求項5】
前記第1係合部は、前記第1係合部と第2係合部とを仕切っている中間壁部、及び前記中間壁部と対向している外壁部、並びに前記中間壁部と外壁部とを連結している連結壁部とで区画されると共に、前記中間壁部から内部に突設されて前記バンパーに設けられた取付孔に係合する係止爪を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載の車両の外装部材用固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部材をパネル側に取り付ける固定具のうち、特に車体パネル側に取り付けられて外装部材の一端部を係合する構造において、外装部材の温度変化による伸縮や寸法誤差を吸収可能にする場合に好適な車両用の外装部材用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は特許文献1に開示のバンパー固定具を車体パネル及びバンパーと共に示している。符号1は車体後方のホイールハウス付近の側壁であり、側壁1の下側が一段低い凹部42に形成されている。凹部42には、バンパ固定具であるクリップ10が複数のねじなどで取り付けられた後、リヤバンパー2の折曲部45がそのクリップ10に対して温度変化による伸縮を吸収可能に取り付けられる。具体的には以下の通りである。
【0003】
まず、リヤバンパー2は、車幅方向に配置されてパネル補強部に固定される主部、及び主部の両側に一体化されて車体前後方向に配置される折曲部45からなる。両折曲部45は、上縁部がパネル側凹部42の上壁42aに対応して湾曲され、延び方向端がホイールハウス43の外縁に連続されるよう湾曲されている。上壁2aには複数の取付孔2bが形成されている。各取付孔2bは折曲部の延び方向に延びる長孔である。また、延び方向外端壁32には取付孔33が上端手前に形成されている。
【0004】
クリップ10は、バンパー側折曲部45の上壁42aに沿わせるべく、その延び方向一端側をホイールハウス43側に向けた状態で湾曲され、その上辺部には取付孔2bに対応して複数の係止片部20が溝21内に揺動可能に設けられている。各係止片部20は、上向きの爪部20a付きであり、先端側が基端側を支点として撓む。また、バンパー側延び方向外端壁32に対する取付け部として、取付孔22a付きの起立板部22を有している。起立板部22は、他の周壁部分との間に隙間が両側に設けられ、所定の荷重までは通常の起立姿勢を維持し、リヤバンパー2の温度変化に基づく伸縮等の所定以上の荷重が加わったときは基端側を支点として弾性変位するよう設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−125977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構造において、バンパー側折曲部45は、上壁2aが長孔の取付孔2bと係止片部の爪部20aとの複数箇所での係合により、延び方向外端壁32が取付孔33を起立板部の取付孔22aに一致させて留め具34を両取付孔22a、33に押し込んで連結することにより、パネル側凹部42に対しクリップ10を介して温度変化による伸縮を吸収可能に取り付けられる。
【0007】
ところが、以上の構造は、バンパー側折曲部45の温度変化により伸縮をクリップ側の起立板部22の撓み変形を利用して吸収するため、通常時の剛性を維持しながら起立板部22の揺動量ないしは吸収度合いを大きく確保し難く、その点から用途的に制約され易かった。また、この構造では、自動車等の車両において、タイヤの周囲を覆うフェンダーの内側にフェンダーライナーを付設するため、バンパーを車体に組み付ける際にバンパーの折曲部端側にそのフェンダーライナーの端部をクリップを介して取り付けることがある(例えば、特開2002−308150号公報)が、そのようなタイプに転用できない。
【0008】
本発明は以上のような課題を解決したものである。その目的は、車両用外装部材の温度変化による伸縮や寸法誤差などを吸収可能にする構造において、吸収度合を任意な大きさに設定でき、しかも汎用性に富む外装部材用固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、形態例を参考にして特定すると、車体パネル(1)側に取り付けられて外装部材(4又は/及び5)の長手方向の一端部を係合した状態で、前記外装部材の温度変化による伸縮や寸法誤差などを吸収可能な固定具において、前記パネル(1)に固定されて前記外装部材の延び方向に配置される空間部(25)を有しているリテーナ(2)と、前記空間部(25)に対し抜止め可能かつ圧接力に抗して所定距離だけ摺動可能に配置される基部(30)、及び前記基部の前方へ突出されて前記外装部材の一端部を係合する保持部(35)を有しているクリップ(3)とからなり、
前記空間部(25)は、略矩形空洞であり、上下部ないしは左右部のうち、一方が幅広部(25a)に形成され、他方が幅細部(25b)に形成されており、前記基部(30)は、前記空間部の幅広部に嵌合する幅広部(30a)と、前記空間部の幅細部に嵌合する幅細部(30b)とからなると共に、前記空間部に設けられた段差状の受け部(26a)に係止してその空間部に対し最前方位置で抜け止めする係止突起(33a)と、前記空間部の対向面に撓み変形可能に圧接する弾性突起(34a)とを形成していることを特徴としている。
【0010】
以上の本発明は、請求項2〜6で特定したように具体化されることがより好ましい。
(ア)、前記空間部の幅広部(25a)
を区画している外面と前記空間部の幅細部(25b)を区画している外面との対向内面に形成されて前記クリップを車幅方向に位置決めする幅方向調整用リブ(27)と、前記空間部の幅細部(25b)の対向面に形成されて前記クリップを高さ方向に位置決めする高さ方向調整用リブ(28)とを有している構成である(請求項2)。
【0011】
(イ)、前記保持部(35)は、前記基部より幅広に形成されていると共に、前記外装部材として、バンパー(4)の一端部を一方側より挿入して挟持する凹状の第1係合部(36)、及びフェンダーライナー(5)の端部を他方向から挿入して挟持する逆凹状の第2係合部(37)からなる構成である(請求項
3)。
(ウ)、前記第1係合部(36)と第2係合部(37)とを仕切っている中間壁部(35b)は、揺動可能に設けられていると共に、前記第1係合部(36)にバンパー(4)の一端部を挿入した状態で、前記第2係合部(37)に前記フェンダーライナー(5)の端部を挿入することにより揺動変位不能となる構成である(請求項5)。
(エ)、前記第1係合部(36)は、前記第1係合部と第2係合部とを仕切っている中間壁部(35b)、及び前記中間壁部と対向している外壁部(35a)、並びに前記中間壁部と外壁部とを連結している連結壁部(35c)とで区画されると共に、前記中間壁部から内部に突設されて前記バンパー(4)に設けられた取付孔(43)に係合する係止爪(38)を有している構成である(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、
図1に示されるごとく、パネルに固定されるリテーナが外装部材の延び方向に配置される空間部を有し、クリップがその空間部に対し基部を抜止め可能かつ圧接力に抗して所定距離だけ摺動可能に配置している。従って、本発明の固定具を用いた場合は、外装部材が温度変化による伸縮や寸法誤差などに起因してその一端部とクリップ側保持部とが近寄りすぎたり離れても、リテーナ側空間部に対する基部の圧接力に抗した位置調整により一端部を保持部に確実に係合可能となる。同時に、外装部材がその一端部を保持部に係合した態様で熱変形などによって伸縮すると、クリップがその伸縮を吸収すべくリテーナ側空間部に対し基部を圧接力に抗して摺動する。これにより、本発明の固定具では、車両用外装部材(例えば、バンパーやフェンダーライナーなど)の温度変化による伸縮や寸法誤差を吸収可能にする構造において、吸収度合を任意の大きさに設定でき、また外装部材に応じてクリップの保持部だけを変更するだけで他は兼用できため汎用性に優れている。
【0013】
また、この発明では、
図1から分かるごとく、係止突起がリテーナ側空間部の段差状受け部に当たってクリップの基部を確実に抜け止めする点、弾性突起が空間部の対向面に撓み変形可能に圧接して摺動されるため摺動調整後に何もしなくても不用意に動かない点などの利点がある。
また、クリップの基部及びリテーナの空間部が上下部ないしは左右部のうち、一方が幅広部に形成され、他方が幅細部に形成されているため誤組み付けを確実に防止できる。
【0014】
請求項
2の発明で
は、空間部がクリップ(基部)を車幅方向に位置決めする幅方向調整用リブ及び高さ方向に位置決めする高さ方向調整用リブを有しているため、クリップ側基部の摺動性を維持しつつ確実に位置だし可能となる。
【0015】
請求項
3の発明では、保持部が基部より幅広に形成されているため幅広な外装部材であっても安定した状態に挟持可能となり、また、保持部がバンパー用の凹状第1係合部、及びフェンダーライナー用の逆凹状第2係合部とからなるためバンパーとフェンダーライナーとを関係付けて保持する上で好適なものとなる。
【0016】
請求項
4の発明では、第1係合部と第2係合部とを仕切っている中間壁部が揺動可能になっているため
図1のごとくバンパーの一端部を第1係合部に挿入し易く、かつバンパーの一端部を第1係合部に挿入した状態で、第2係合部にフェンダーライナーの端部を挿入することにより揺動変位不能となるため外れ難いものとなる。
【0017】
請求項
5の発明では、第1係合部が第2係合部とを仕切っている中間壁部から内部に突設されてバンパーに設けられた取付孔に係合する係止爪を有していることから、第1係合部にバンパーの一端部を挟持し、第2係合部にフェンダーライナーの端部を挟持した使用状態において、少なくともバンパーの一端部については確実に外れなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】形態例の固定具の使用例及び作動を示し、(a)は
図7(b)のA1−A1線に沿った断面図、(b)は
図7(c)のA−A線に沿った断面図、(c)はクリップが(b)の最大突出位置から最小突出位置に摺動した断面図である。
【
図2】上記固定具の外観を示し、(a)は第1係合部側を上にした状態図、(b)は第2係合部側を上にした状態図である。
【
図3】
図2の固定具のリテーナを模式化して示し、(a)は
図2(a)に対応した上面図、(b)は
図2(b)に対応した下面図である。
【
図4】(a)は
図3の固定具の側面図、(b)は
図3のB−B線に沿った断面図、(c)は
図3のC−C線に沿った断面図である。
【
図5】上記固定具を構成しているクリップ単品を示し、(a)は
図3(a)に対応した上面図、(b)は側面図、(c)は
図3(b)に対応した下面図である。
【
図6】上記固定具を構成しているリテーナの要部を示し、(a)は正面図、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図、(c)は(a)のE−E線に沿った断面図である。
【
図7】(a)は上記固定具を構成しているリテーナの全体図、(b)は
図8(a)の矢印X方向から見た模式図、(c)は
図8(b)の矢印X1方向から見た模式図である。
【
図8】(a)は車両リア側のホイールハウス廻りを示す模式図、(b)は(a)の状態からバンパーを外した模式図である。
【
図9】(a)は特許文献1の要部構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態例について図面を参照しながら説明する。この説明では、用途例を説明した後、固定具構造の細部を明らかにする。なお、
図3及び
図4のリテーナは、空間部を区画しているリテーナ部分を
図2の破線に沿って切出した態様で示している。
【0020】
(用途例)形態例の固定具は、車体側パネル1に固定されるリテーナ2と、リテーナ2の空間部25に組み付けられて外装部材(4や5)の長手方向の一端部を係合するクリップ3とからなり、車体パネル1側に取り付けられる外装部材(4や5)の長手方向の一端部を係合した状態において、その外装部材の温度変化による伸縮や寸法誤差などを吸収可能な構造となっている。
【0021】
図8は一例として自動車の後方側面を示している。符号10と15はパネル1を構成しているインナーパネルとアウターパネル、4はリアバンパー、5はフェンダーライナーである。まず、インナーパネル10は、ホイールハウス14を区画していると共に、リアバンパー4で覆われる後方下側のパネル部11、パネル部11の上側に配設された後方上側のパネル部12などで構成されている。アウターパネル15は、ホイールハウス14に対応したフェンダー13を一体に形成し、また、後方下側のパネル部11を露出すると共にパネル部12を開口部16から露出している。パネル部12には開口部16に応じた形状のリアランプが配設される。パネル部11には、リテーナ2が上側前後方向に沿って装着されると共に、リアバンパー4の折曲部41がリテーナ2及び該リテーナ2に組み付けられるクリップ3を介して係合保持される。
【0022】
ここで、リアバンパー4は、車幅方向に配置される主部40と、主部40の両端から車体前方にそれぞれ延びる折曲部41とからなる。そして、リアバンパー4は、主部40が従来と同じく不図示の補強部材などを介してインナーパネル側に固定された状態で、両側の折曲部41が車体側面へ廻り込む。両側の折曲部41は、上縁部42がアウターパネル15の下縁対応部に連続し、延び方向端部44がホイールハウス14側のフェンダー13と連続する形状である。
【0023】
そして、各折曲部41は、リテーナ2及びクリップ3などを介して長さ方向の伸縮を吸収可能に係合保持される。この場合、折曲部41の上縁
部42は、図示を省略したが、内側に折り曲げられたフランジ部及び該フランジ部に設けられた複数の取付孔を有し、リテーナ本体20の上縁に設けられた係止部23に係合される。これに対し、延び方向端部44は、
図7(c)及び
図1のごとく内面側に直角に突設された係合片部45を有し、後述するリテーナ2に組み込まれたクリップ3に係合保持された状態で温度変化による伸縮などを吸収可能となる。係合片部45には取付孔46が貫通形成されている。
【0024】
フェンダーライナー5は、
図7(b)及び
図1のごとくホイールハウス14に設けられる後車輪15の上部分に対応して湾曲された板状の部品であり、本体50の対応する端部51が上記折曲部41の延び方向端部44と共にクリップ23側に係合され、他端部がねじSなどにより対応するインナーパネル側に固定される。この端部51は、係合片部
45と同様に本体50の端縁から略直角に突設されている。
【0025】
一方、リテーナ2は、樹脂成形体であり、
図7(a)のごとく後端部22から延び方向端部21の少し手前を形成している細長形状の本体20と、本体20に一体化されてホイールハウス14側に対向している幅広形状の延び方向端部21とからなる。本体20は、上縁に設けられた上記した係止部23、及び幅中間に設けられた不図示の複数の取付孔、並びに下縁に設けられた複数の突起24などを有し、パネル部11に対して突起24を介して位置決めされると共に、前記取付孔に挿通されるねじSなどにより固定される。延び方向端部21は、前記係止部23と同じ上縁の係止部23、及び折曲部41の延び方向に配置されている空間部25などを有している。なお、
図7(b)において、Hは車体の高さ方向を示し、Lは折曲部41の延び方向(車体の略前後方向)を示し、Wは車幅方向を示している。
【0026】
(固定具構造)前記空間部25は、ホイールハウス14側に開口しており、ここに摺動可能に配置されるクリップ3と共に形態例の固定具を構成している。空間部25の形状は、
図6のごとく略矩形空洞であり、上下部ないしは左右部(車体幅方向の左右部つまり内側と外側)のうち、一方(車体内側に配置される側)が幅広部25aに形成され、他方(車体外側に配置される側)がそれよりも少し幅寸法を小さくした幅細部25bに形成されている。これは誤組み付けを防ぐため採用された構成である。
【0027】
また、空間部25は、幅広部25aの外面に設けられた小矩形状の窓26と、幅広部25aを区画している外面と幅細部25bを区画している外面との対向内面に形成された2組の幅方向(W)調整用のリブ27と、幅細部25bの対向内面に形成された高さ方向(H)調整用のリブ28とを有している。このうち、窓26は、空間部25の出入口用開口に近い側の内端面を段差状の受け部26aとしている。リブ27及びリブ28は、
図6(c)のごとく空間部25の出入口用開口から窓26に達する箇所まで延びている。リブ27はクリップ3を車幅方向に位置決めする。リブ28はクリップ3を高さ方向に位置決めする。
【0028】
これに対し、クリップ3は、樹脂成形体であり、空間部25に対し抜止め可能かつ圧接力に抗して所定距離だけ摺動可能に配置される基部30と、基部30の前方へ突出されてリアバンパー側の係合片部45及びフェンダーライナー5の一端部51をそれぞれ独立して係合する保持部35とを有している。
【0029】
基部30は、
図1及び
図5のごとく空間部側の幅広部25aに嵌合する幅広部30a、及び幅細部25bに嵌合する幅細部30bとからなり、幅広部30a側に形成されて前記受け部26aに係止して空間部25に対し最前方位置で抜け止めする係止突起33aと、幅細部30b側に突設されて空間部25の対向面に撓み変形可能に圧接する弾性突起34aとを有している。このうち、係止突起33aは、基部30の中間後側にあって、幅細部30b側に逆凹部32bを設け、かつ逆凹部32b内に幅広部30aに貫通したコ形状のスリット31bを介して区画された板部33(幅広部30a側の板部33)の先端ないしは揺動端側に立設されている。
【0030】
弾性突起34aは、基部30の中間前側にあって、幅広部30a側に凹部32aを設け、かつ凹部32a内にあって幅細部30bに貫通した2本の平行な直線状のスリット31a,31aを介して区画された両持ち梁状の撓み変形可能な板部34(幅細部30b側の板部34)の略前後中間に立設されている。この板部34は、凹部32aにより薄くなった板からなると共に、両側の直線スリット31aの存在により、弾性ないしは撓み変形が比較的に強くかつ安定したものとなっている。なお、符号34bは、弾性突起34aに対応して板部34の凹部32a側に設けられた窪みである。
【0031】
そして、クリップ3としては、基部30が空間部25に対して
図1(b)の最前方位置より、同(c)のごとく保持部35が空間部25を区画している開口端面に当たって規制されるまで弾性突起
34aの圧接力に抗して空間部内つまり退避方向(この方向は折曲部41の延び方向にほぼ一致している)へ摺動される。この場合、基部30の摺動特性は、上記した空間部側の幅方向に対向したリブ27、及び高さ方向に対向したリブ28の存在により、当たりが適度でなめらかに動くようになっている。また、クリップ3の摺動距離Mは、外装部材(リアバンパー4又は/及びフェンダーライナー5)の温度変化などによる伸縮程度に応じて、距離は設計し設定される。
【0032】
一方、保持部35は、基部30に比べて幅広に形成されており、外装部材としてリアバンパー4の係合片部45を一方側(車幅方向の外側から内側)より挿入して挟持する第1係合部36、及びフェンダーライナー5の対応する端部51を他方向(車幅方向の内側から外側)から挿入して挟持する第2係合部37とからなる。換言すると、保持部35は、側面視で概略S形状となっていて、外側より外壁部35a、中間壁部35b、内壁部35c、外壁部35aと中間壁部35bとを連結している連結壁部35d、中間壁部35bと内壁部35cとを連結している連結壁部35eとからなる。第1係合部36と第2係合部37とを仕切っている中間壁部35bは、
図1(a)のごとく揺動可能に設けられており、第1係合部36にリアバンパー側係合片部45を挿入した状態で、第2係合部37にフェンダーライナー5の端部51を挿入することにより揺動変位不能となる。このため、外装部材の組込手順は、リアバンパー側折曲部41をリテーナ本体20及びクリップ側第1係合部36に対応部を係合して取り付けた後、フェンダーライナー側の端部51をクリップ側第2係合部37に係合して取り付けることになる。
【0033】
また、第1係合部36は、外壁部35a及び中間壁部35b並びに連結壁部35dにより略凹状に区画形成されている。第1係合部36の内部は、外壁部35aと中間壁部35bとの対向面に設けられたリブ状当接部36aと、連結壁部35dの中央部を貫通した細長い貫通孔38と、中間壁部35bの中央内面に突設された係止爪39とを有している。当接部36a同士は、リアバンパー側係合片部45を隙間内に安定した状態で挟持されるようにする。貫通孔38は、係合片部45を第1係合部36から外側へ突出配置可能にしてリアバンパー4の挟持力を補強したり外れ難くする。係止爪39は、中間壁部35bにあって縦スリット38aと縦スリット38aとで区画された壁部分に設けられ、第1係合部の入口側(連結壁部35dから離れる側)を奥に行くほど突出量を増す傾斜面39aに形成し、奥側つまり連結壁部35dに近い側を垂直面39bに形成している。この構成は、
図1(b)のごとくリアバンパー側係合片部45が第1係合部36内に挿入される過程で傾斜面
39aに沿って押し入れ易くし、かつ、係止爪39が係合片部側取付孔46に係合した状態で外れ方向の負荷を受けても撓みに難くして保持力を向上する。
【0034】
第2係合部37は、中間壁部35b及び内壁部35c並びに連結壁部35eにより略逆凹状に区画形成されている。第2係合部37の内部は、内壁部
35cと中間壁部35bとの対向面に設けられたリブ状当接部37aを有している。当接部37a同士は、フェンダーライナー5の端部51を隙間内に安定した状態で挟持されるようにする。なお、第2係合部37にも、例えば、第1係合部側の係止爪に類似する係止爪を設けると共に、フェンダーライナー側端部51にその係止爪と係合する取付孔を設けて、取付強度を増大するようにしてもよい。
【0035】
なお、本発明の固定具は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は形態例を参考にして変更したり展開可能なものである。その一例としては、クリップの保持部は第1係合部又は第2係合部の何れか一方で構成してもよく、また、挟持構成ではなく他の部材で係合するような構成でもよい。また、外装部材としては、リアバンパー やフェンダーライナーに限られず、例えばフロントバンパー、更にはドア付近に設けられる各種装飾部材などでも差し支えない。
【符号の説明】
【0036】
1・・・車体パネル(10はインナーパネル、15はアウターパネル)
2・・・リテーナ(20は本体、21は延び方向端部、22は後端部)
3・・・クリップ(35は保持部)
4・・・リアバンパー(外装部材又はバンパーで、40は主部、41は折曲部)
5・・・フェンダーライナー(外装部材で、50は本体、51は端部)
30・・・基部(33aは係止突起、34aは弾性突起)
36・・・第1係合部(35aは外壁部、35bは中間壁部、35dは連結壁部)
37・・・第2係合部(35cは内壁部、35eは連結壁部)
39・・・係止爪(39aは傾斜面、39bは垂直面)
25・・・空間部(25aは幅広部、25bは幅細部、26aは受け部)
27・・・幅方向調整用リブ
28・・・高さ方向調整用リブ
38・・・貫通孔(38aはスリット)
39・・・係止爪(39aは傾斜面、39bは垂直面)
45・・・係合片部(46は取付孔)