特許第5859871号(P5859871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5859871被検体の固定具、被検体支持システム及びMRI装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859871
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】被検体の固定具、被検体支持システム及びMRI装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   A61B5/05 390
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-32267(P2012-32267)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-165918(P2013-165918A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢ニ
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−154910(JP,U)
【文献】 特開2009−106651(JP,A)
【文献】 実開昭50−121669(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0172793(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0152667(US,A1)
【文献】 実開平03−118703(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0136412(US,A1)
【文献】 特表2010−501294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0080333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の左手を固定するための第1のホルダと、
前記被検体の右手を固定するための第2のホルダと、を備え、
前記第1のホルダおよび前記第2のホルダのうちの一方のホルダは、前記被検体の腹背軸に対応したY軸の方向から見て、前記被検体の頭尾軸に対応したZ軸に対して、前記Y軸および前記Z軸の両方の軸に垂直なX軸の方向にα度傾くように設けられるとともに、前記第1のホルダおよび前記第2のホルダのうちの他方のホルダは、前記Y軸の方向から見て、前記Z軸に対して前記X軸の方向に−α度傾くように設けられる固定具。
【請求項2】
前記第1のホルダの高さと前記第2のホルダの高さとを調節する高さ調節機構を有する、請求項に記載の固定具。
【請求項3】
前記第1のホルダと前記第2のホルダとの左右方向の距離を調節する左右調節機構を有する、請求項1又は2に記載の固定具。
【請求項4】
前記第1のホルダを有する第1のフレームと、前記第2のホルダを有する第2のフレームとを備えた請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の固定具。
【請求項5】
前記第1のフレームと前記第2のフレームは、ネジによって固定される、請求項4に記載の固定具。
【請求項6】
前記第1のホルダは、前記Z軸の方向から見て、前記Y軸に対して前記X軸の方向に−γ度傾くように設けられるとともに、前記第2のホルダは、前記Z軸の方向から見て、前記Y軸に対して前記X軸の方向にγ度傾くように設けられる、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の固定具。
【請求項7】
前記第1のホルダおよび前記第2のホルダは、前記X軸の方向から見て、前記Z軸に対して前記Y軸の方向に−β度傾くように設けられる、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の固定具。
【請求項8】
前記第1のホルダは、前記被検体の左手からのMR信号を電気信号に変換する第1のコイルを装着できるように構成されており、
前記第2のホルダは、前記被検体の右手からのMR信号を電気信号に変換する第2のコイルを装着できるように構成されている、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の固定具。
【請求項9】
前記第1のホルダは、前記被検体の左手からのMR信号を電気信号に変換する第1のコイルを内蔵できるように構成されており、
前記第2のホルダは、前記被検体の右手からのMR信号を電気信号に変換する第2のコイルを内蔵できるように構成されている、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の固定具。
【請求項10】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは、剛性素材が用いられたリジッドコイル又は柔軟素材が用いられたフレックスコイルである請求項8又は9に記載の固定具。
【請求項11】
前記被検体を支持する被検体支持システムであって、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の固定具と、
前記被検体の上半身を支持する上半身支持部材と、
を備える被検体支持システム。
【請求項12】
前記被検体の両肘を支持する肘支持部材を有し、
前記肘支持部材は、右肘を下から支持する右肘支持台と、左肘を下から支持する左肘支持台とを有する、請求項11に記載の被検体支持システム。
【請求項13】
請求項1〜10に記載の固定具又は請求項11又は12に記載の被検体支持システムを有しており、請求項1〜10に記載の固定具に両手が載置された被検体を撮像するMRI装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置における固定具及び被検体支持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MRI装置において、両手及び両手首を同時に撮影する方法として、専用の固定具が作成されてきた。専用の固定具はおおよそ平坦な面に両手を挟み込んで固定している。また、固定具には受信コイルが内蔵されていた。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106651
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される両手及び両手首の固定具では、両手及び両手首の体軸に対しての横断面(アキシャル:Axial)、冠状面(コロナル:Coronal)及び矢状面(サジタル:Sagittal)を撮影しようとすると、撮影範囲が交錯してクロストークアーチファクトが発生する問題があった。例えば、冠状面の撮影について説明する。図10は従来の両手及び両手首の固定具の断面図である。なお、図10では頭尾軸(Z軸又はSI軸)から見た図である。図示されるように、右手HD(R)及び左手HD(L)は第1コイルC1と第2コイルC2で挟まれた状態で撮影が行われる。ここでは、掌が第2コイルC2に接するよう配置している。右手HD(R)及び左手HD(L)は生理的に親指側が厚いため、正しい右冠状面Cor(R)及び左冠状面Cor(L)は中心部に向かい傾斜し、山形に設定する必要がある。同時に右冠状面Cor(R)及び左冠状面Cor(L)を撮影すると、撮影面が重なった部分でクロストークアーチファクトCA0が発生する。このため、正しい冠状面での撮影が困難であった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み、両手及び両手首を同時に撮影する際に、クロストークアーチファクトを発生しない最適な位置及び角度をガイドする固定具、被検体支持システム及びMRI装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の固定具は、被検体の右手及び右手首が載置される第1の載置面を有する第1の載置部と、被検体の左手及び左手首が載置される第2の載置面を有する第2の載置部と、を備える。そして被検体の腹背軸(AP軸)に対して、第1の載置部と第2の載置部とが所定角度傾いて配置される。
【0007】
第2の観点の固定具は、被検体の右手及び右手首が載置される第1の載置面を有する第1の載置部と、被検体の左手及び左手首が載置される第2の載置面を有する第2の載置部と、を備える。そして、被検体の頭尾軸(SI軸)に対して、第1の載置部と第2の載置部とが所定角度傾いて配置される。
【0008】
第3の観点の固定具は、第2の観点に記載の固定具において、被検体の腹背軸(AP軸)に対して、第1の載置部と第2の載置部とが所定角度傾いて配置される。
第4の観点の固定具は、第1の観点から第3の観点のうちのいずれか一項に記載の固定具において、第1の載置部の高さと第2の載置部の高さとを調節する高さ調節機構を有することを特徴としている。
第5の観点の固定具は、第1の観点から第4の観点のうちのいずれか一項に記載の固定具において、第1の載置部と第2の載置部との左右方向の距離を調節する左右調節機構を有する。
【0009】
第6の観点の固定具は、第1の観点から第5の観点のうちのいずれか一項に記載の固定具において、被検体の胴体を左右からまたぎ、頭尾軸(SI軸)方向から見て門型のフレームからなる載置台を備え、載置台は、門型の内側に第1の載置部と前記第2の載置部とを着脱する。
第7の観点の固定具は、第6の観点に記載の固定具において、載置台は、右載置台と左載置台とを含み、右載置台と左載置台とがネジ留めされて門型のフレームになる。
第8の観点の固定具は、第1の観点から第7の観点のうちのいずれか一項に記載の固定具において、第1の載置部と前記第2の載置部とは、被検体の両手および/又は両手首からのMR信号を電気信号に変換する変換手段を有する。
第9の観点の固定具は、第8の観点に記載の固定具において、変換手段はコイルエレメントを含み、第1の載置部又は前記第2の載置部は、剛体に組み入れた剛体コイル又は可撓性の可撓体に組み込んだ可撓性コイルである。
【0010】
第10の観点の被検体支持システムは、被検体を支持する被検体支持システムであって、第1の観点から第9の観点のうちのいずれか一項に記載の固定具と、被検体の上半身を支持する上半身支持部材と、を備える。
第11の観点の被検体支持システムは、第10の観点に記載の被検体支持システムにおいて、被検体の両肘を支持する肘支持部材を有することを特徴としている。
第12の観点の被検体支持システムは、第11の観点に記載の被検体支持システムにおいて、肘支持部材は、右肘を下から支持する右肘支持台と、左肘を下から支持する左肘支持台と、を有する。
第13の観点のMRI装置は、第1の観点から第9の観点のうちのいずれか一項に記載の固定具、又は第10〜12の観点に記載の被検体支持システムを有しており、第1〜第9の観点に記載の固定具に両手が載置された被検体を撮像する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固定具及び被検体支持システムは、MRI装置において、両手及び両手首を同時に撮影する際に、両手及び両手首の体軸に正確な冠状面(コロナル:Coronal)、矢状面(サジタル:Sagittal)及び横断面(アキシャル:Axial)が撮影可能にする。また、撮影時間の短縮、左右の形状の比較及び造影効果の比較が可能となる。MRI装置は、診断価値の優れた画像を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】被検体HB、MRI装置10、固定具20及び支持具30を示す斜視図である。
図2】(a)は、図1の側面図である。 (b)は、図1の足方向からの図である。
図3】支持具30の斜視図である。
図4】(a)は、固定具20をY軸方向から見た図である。 (b)は、固定具20をX軸方向から見た図である。 (c)は、固定具20をZ軸方向から見た図である。
図5】(a)は、フレックスルコイル25fを展開した上面図である。 (b)は、フレックスルコイル25fを手に固定した上面図である。 (c)は、フレックスルコイル25fをZ軸方向から見た図である。
図6】(a)は、リジットコイル25rをY軸方向から見た上面図である。 (b)は、リジットコイル25rをZ軸方向から見た図である。
図7】横断面(アキシャル:Axial)を撮影する場合の撮影領域FOVとクロストークアーチファクトCAの発生位置を示した図である。
図8】冠状面(コロナル:Coronal)を撮影する場合の撮影領域FOVとクロストークアーチファクトCAの発生位置を示した図である。
図9】矢状面(サジタル:Sagittal)を撮影する場合の撮影領域FOVとクロストークアーチファクトCAの発生位置を示した図である。
図10】従来の固定具を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、発明を実施するための最良の形態について、MRI装置で被検体を撮像するときに使用される固定具20及び支持具30について説明する。しかし、本発明の固定具20及び支持具30は、この形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、被検体、MRI装置10、固定具20及び支持具30を示す斜視図である。図2(a)は、図1の側面図であり、図2(b)は、図1の足方向からの図である。なお、MRI装置及び器具の三軸は図に示した被検体HBの頭足方向がZ軸方向とし、重力方向をY軸とし、Z軸とY軸とに垂直な軸をX軸としている。
【0015】
MRI装置10は、マグネットシステム11、テーブル12、クレードル13、図示しない操作部、及び制御部から構成されている。テーブル12は、上下方向(Y軸方向)に移動する。テーブル12の上部に設置されたクレードル13は、水平方向(Z軸方向)に移動してマグネットシステム11の中心の空間部(ボア)の内部及び外部へ移動する。
【0016】
被検体HBは、クレードル13に載置される。通常、MRI装置10による両手及び両手首の撮影には、数十分から1時間程度の撮影時間を要し、造影検査の場合には、さらに時間を要する。このため、被検体HBは、同じ姿勢を長時間保持する必要がある。支持具30は、被検体HBが楽な姿勢をするためにクレードル13に設置され、さらに、固定具20は、被検体HBの両手及び両手首を撮影しやすく且つ楽な姿勢をとるために設置される。
【0017】
図3は、支持具30の斜視図である。図示されるように支持具30は、第1支持具30a、第2支持具30b及び第3支持具30cで構成される。支持具は、被検体HBの上半身の背部に第1支持具30aが設置される。被検体HBの上肢の下部に第2支持具30bが設置される。被検体HBの下肢の下部に第3支持具30cが設置される。なお、第2支持具30bは、左右の上肢を補助するために2つ設置される。被検体HBの上半身が、第1支持具30aによって斜めに起こされている。
【0018】
支持具30は、非磁性体であるウレタンなどの弾性素材で形成される。第1支持具30aの外形は、X軸方向から見ると楔形で形成される。また、第1支持具30aの+Y側の面は、被検体の一般的な背中形状に合わせてくぼみが形成されている。第1支持具30aは、被検体HBの上半身が半座位になるよう形成されている。半座位は、被検体HBの両手を腹部近傍の前方に出しやすい姿勢である。
【0019】
また、第2支持具30bの外形は、ほぼ直方体で形成され、第2支持具30bの+Y側の面は、被検体HBの一般的な腕又は肘形状に合わせてくぼみが形成されている。2個の第2支持具30bは、被検体HBの両肘の下部近傍に置かれることで両上肢を腹部近傍の前方に安定させる。
【0020】
第3支持具30cの外形は、X軸方向から見るとおおよそ三角柱の外形で形成される。第3支持具30cの+Y側の面は、被検体HBの一般的な上腿及び下腿の形状に合わせてくぼみが形成されている。第3支持具30cは、被検体HBの膝下に置かれることで両下肢を屈曲させて半座位の姿勢を安定させている。なお、支持具30は、被検体HBの姿勢を安定させるためのものであり、その他、マジックテープ(登録商標)などの部材を用いて被検体HBの体を保持してもよい。
【0021】
図4は、固定具20が図示されている。図4(a)は、固定具20をY軸方向から見た図であり、図4(b)は、固定具20をX軸方向から見た図であり、図4(c)は、固定具20をZ軸方向から見た図である。
【0022】
固定具20は、非磁性体のABS樹脂等のプラスチックの剛性素材で形成される。固定具20の外形は、被検体をまたぐような門型の形状であり、被検体HBの上に配置された際には、固定具20は、被検体HBの腹部及び上腿付近を囲う。
【0023】
図4(c)で示されるように、固定具20は、第1フレーム21と第2フレーム22とで形成される。また、第1フレーム21は、上部第1フレーム21aと下部第1フレーム21bで構成される。同様に、第2フレーム22は、上部第2フレーム22aと下部第2フレーム22bで構成される。
【0024】
上部第1フレーム21aの一端には幅調整領域CWが形成され、上部第2フレーム22aの一端にも幅調整領域CWが形成されている。幅調整領域CWは、第1フレーム21と第2フレーム22とが重なり合い、且つX軸方向に移動可能なように段差部が形成される。また、幅調整領域CWは、ネジ29が貫通し幅方向に調整可能な長穴が形成される。固定具20は、第1フレーム21と第2フレーム22との重なり合う量を確定した後、幅Wが変化しないようネジ29で固定される。
【0025】
上部第1フレーム21aの他端には高さ調整領域CHが形成され、上部第2フレーム22aの他端にも高さ調整領域CHが形成されている。下部第1フレーム21bの一端には高さ調整領域CHが形成され、下部第2フレーム22bの一端にも高さ調整領域CHが形成されている。高さ調整領域CHは、上部第1フレーム21aと下部第1フレーム21bとが、又は上部第2フレーム22aと下部第2フレーム22bとが重なり合い、且つY軸方向に移動可能なように段差部が形成される。また、高さ調整領域CHは、ネジ29が貫通し、高さ方向に調整可能な長穴が形成される。固定具20は、第1フレーム21と第2フレーム22との重なり合う量を確定した後、高さHが変化しないようネジ29で固定される。
【0026】
つまり、固定具20は、被検体HBの体の幅に合わせてX軸方向の幅Wをスライドさせて調整し、被検体HBの腹厚に合わせてY軸方向の高さHをスライドさせて調節できる。なお、実施形態では、固定具20はネジを用いて幅又は高さを調整したが、これに限定されず、嵌め合わせ等で調整してもよい。
【0027】
また、上部第1フレーム21a及び上部第2フレーム22aは、それぞれの一端から水平(X軸方向)に伸びる部分、途中から斜め下方向に伸びる傾斜部分SL、さらに、垂直方向(Y軸方向)に多端まで伸びる部分からなる。つまり、固定具20の門型の角部は、傾斜部分SLを有している。
【0028】
その傾斜部分SL部には、第1ホルダ23及び第2ホルダ24がそれぞれ形成される。第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、樹脂などを用いた弾性素材で形成される。弾性素材は、弾性力があるため、適度な圧力でホルダを保持可能である。第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、それらのホルダの一部又は全部がマジックテープ(登録商標)などの帯状の柔軟素材を用いて形成してもよい。帯状の柔軟素材は、受信コイル25を装着した手又は手首の大きさによらず、操作者が適切な圧力で固定することができる。なお、第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、弾性素材又は帯状の柔軟素材でなくても、受信コイル25を固定できる部材であれば、剛体のクリップ等でもよい。
【0029】
MRI装置10の操作者は、検査目的又は被検体HBに好適な受信コイル25を選択して、第1ホルダ23及び第2ホルダ24に固定する。具体的には、受信コイル25を装着した手又は手首が第1ホルダ23及び第2ホルダ24内に挿入される。そして、第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、手又は手首を、被検体HBが苦痛を感じない程度の圧力で、且つ受信コイル25の装着位置がずれない程度に固定する。
【0030】
第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、図4(a)で示されるように、第1ホルダ23がZ軸に対してX軸方向にα度で配置され、第2ホルダ24がZ軸に対してX軸方向に−α度で配置される。また、図4(b)で示されるように、第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、Z軸に対してY軸方向に−β度に配置される。さらに、図4(c)で示されるように、第1ホルダ23は、Y軸に対してX軸方向に−γ度で配置され、第2ホルダ24は、Y軸に対してX軸方向にγ度で配置される。第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、図示される角度に配置することで、クロストークアーチファクトが発生しない。また、被検体HBは、その両手及び両手首に苦痛を感じることなく自然な姿勢でその両手及び両手首を第1ホルダ23及び第2ホルダ24に配置できる。
【0031】
図4(a)では、第1ホルダ23がZ軸に対してX軸方向にα度で配置され、第2ホルダ24がZ軸に対してX軸方向に−α度で配置された。つまり、被検体HBは、両肘から両手を内側に向いている。これとは逆に、第1ホルダ23がZ軸に対してX軸方向に−α度で配置され、第2ホルダ24がZ軸に対してX軸方向にα度で配置されてもよい。つまり、被検体HBは、両肘から両手を外側に向いて配置してもよい。
【0032】
次に、MR信号を電気信号に変換する変換手段である受信コイル25について説明する。受信コイル25は、フレックスルコイル25f(flex coil)又はリジットコイル25r(rigid coil)を含む。図5は、フレックスルコイル25fについて説明し、図6はリジットコイルについて説明する。
【0033】
図5は、フレックスルコイル25fの一例を図示している。図5(a)は、フレックスルコイル25fを展開した上面図であり、図5(b)は、フレックスルコイル25fを手に固定した上面図であり、図5(c)は、フレックスルコイル25fをZ軸方向から見た図である。フレックスルコイル25fは、枠部26と貫通孔27で構成され、枠部26が柔軟素材で形成されている。フレックスルコイル25fは、枠部26と貫通孔27とによりはしご状の外観を呈し、両手及び両手首に密着し易いように形成されている。
【0034】
図5(a)に示されたように、MRI装置10の操作者は、展開されたフレックスルコイル25fの片側に被検体HBの手HDを載置する。その後、図5(b)に示されたように、操作者は、手HDを載せていな方のフレックスルコイル25fを折り曲げて被検体HBの手HDを覆う。被検体HBの手HDを覆ったフレックスルコイル25fは、図5(c)に示されたように、手の掌及び甲部並び手首をまんべんなく覆っている。操作者は、両方の手HDに装着したフレックスルコイル25fを第1ホルダ23及び第2ホルダ24に装着する。
【0035】
図6は、リジットコイル25rの一例を図示している。図6(a)は、リジットコイル25rをY軸方向から見た上面図であり、図6(b)は、リジットコイル25rをZ軸方向から見た図である。リジットコイル25rは、プラスチックなどの剛性素材で形成され、図6(a)に示されるように矩形に形成された筒部28で構成されている。図6(b)に示されるように、筒部28は、扁平の筒状に形成されている。MRI装置10の操作者は、被検体HBの手HDを扁平の筒部28の中に配置し、弾性素材でできた充填物(不図示)などを入れて固定する。図6(b)に点線で示されるように、手の掌側が所定の位置に固定しやすいように、扁平の筒部28の内面が掌形状28pに形成されてもよい。
【0036】
リジットコイル25rを使用する場合、操作者は、被検体HBの手HDを2通りの方法で固定できる。一つの方法は、操作者が、リジットコイル25rを第1ホルダ23及び第2ホルダ24に装着しておき、被検体HBに手を挿入してもらって固定する。もう一つの方法はまた、操作者が、被検者HBの手が挿入されたリジットコイル25rを第1ホルダ23及び第2ホルダ24に装着する。
【0037】
図7図8及び図9は、第1ホルダ23及び第2ホルダ24の撮影領域FOVとクロストークアーチファクトCAの発生位置を示した図である。図7は、横断面(アキシャル:Axial)を撮影する場合の撮影領域FOVとクロストークアーチファクトCAの発生位置を示し、図8は、冠状面(コロナル:Coronal)を撮影する場合の撮影領域FOVとクロストークアーチファクトCAの発生位置を示し、図9は、矢状面(サジタル:Sagittal)(sagittal)を撮影する場合の撮影領域FOVとクロストークアーチファクトCAの発生位置を示した図である。なお、図示している被検体HBの右手HD(R)の頭尾方向をz1軸、左手HD(L)の頭尾方向をz2軸とし、右手HD(R)の腹背方向をy1軸、左手HD(L)の腹背方向をy2軸とし、右手HD(R)のz1軸とy1軸と直交する軸をx1軸、左手HD(L)のz2軸とy2軸と直交する軸をx2軸として説明する。
【0038】
図7に示されるように、横断面(アキシャル:Axial)を撮像する際、被検体HBのz1軸とz2軸との方向が異なる。MRI装置10(図1を参照。)でMRI画像を撮影する際に、操作者は、右横断面Tra(R)及び左横断面Tra(L)の角度と撮影範囲THとを設定し、さらに右横断面Tra(R)の撮影領域FOV(R)及び左横断面Tra(L)の撮影領域FOV(L)を設定する。右横断面Tra(R)は、z1軸に対して垂直に設定され、左横断面Tra(L)は、z2軸に対して垂直に設定される。両方の撮影領域FOVは、受信する信号の範囲が設定される。
【0039】
右横断面Tra(R)と左横断面Tra(L)とが重なる領域は、クロストークアーチファクトCA1が発生するが、撮影領域FOVの外部である。このため、このクロストークアーチファクトCA1は、撮影画像に影響を与えない。したがって、MRI装置10を使った横断面の撮影において、操作者は、z1軸及びz2軸と直交する横断面の設定と撮影領域FOVの設定を行い、両手及び両手首に対して鮮明な横断画像を撮影できる。
【0040】
図8に示されるように、冠状面(コロナル:Coronal)を撮像する際、被検体HBのy1軸とy2軸との方向が異なる。MRI装置10(図1を参照。)でMRI画像を撮影する際に、操作者は、右冠状面Cor(R)及び左冠状面Cor(L)の角度と撮影範囲THとを設定し、さらに右冠状面Cor(R)の撮影領域FOV(R)及び左冠状面Cor(L)の撮影領域FOV(L)を設定する。右冠状面Cor(R)は、y1軸に対して垂直に設定され、左冠状面Cor(L)は、y2軸に対して垂直に設定される。両方の撮影領域FOVは、受信する信号の範囲が設定される。
【0041】
右冠状面(コロナル:Coronal)Cor(R)と左Cor(L)とが重なる領域は、クロストークアーチファクトCA2が発生するが、撮影領域FOVの外部である。このため、クロストークアーチファクトCA2は、撮影画像に影響を与えない。したがって、MRI装置10は、両手及び両手首の冠状面の撮影において、y1軸及びy2軸にそれぞれ直交した鮮明な冠状画像を撮影できる。
【0042】
また、図9に示されるように、矢状面(サジタル:Sagittal)を撮像する際、被検体HBのx1軸とx2軸との方向が異なる。MRI装置10(図1を参照。)でMRI画像を撮影する際に、操作者は、右矢状面Sag(R)及び左矢状面Sag(L)の角度と撮影範囲THとを設定し、さらに右矢状面Sag(R)の撮影領域FOV(R)及び左矢状面Sag(L)の撮影領域FOV(L)を設定する。右矢状面Sag(R)は、x1軸に対して垂直に設定され、左矢状面Sag(L)は、x2軸に対して垂直に設定される。両方の撮影領域FOVは、受信する信号の範囲が設定される。
【0043】
右矢状面Sag(R)と左矢状面Sag(L)とが重なる領域は、クロストークアーチファクトCA3が発生するが、撮影領域FOVの外部である。このため、このクロストークアーチファクトCA3は、撮影画像に影響を与えない。したがって、MRI装置10は、両手及び両手首の矢状面の撮影において、x1軸及びx2軸にそれぞれ直交した鮮明な矢状画像を撮影できる。
【0044】
本実施形態では、支持具30がクレードル13に設置されたが、必ずしも第1支持具30a、第2支持具30b及び第3支持具30cのすべてを使用する必要はない。被検者HBの体型によって、まったく支持具30を使用しなくてもよいし、第1支持具30a、第2支持具30b及び第3支持具30cのいずれか一つのみを使用してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、第1ホルダ23及び第2ホルダ24に受信コイル25を装着する例を示した、しかし、第1ホルダ23及び第2ホルダ24に受信コイル25を内蔵してもよい。その際、第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、フレックスコイルに相当する柔軟素材で形成する構成と、リジットコイル25rに相当する剛性素材で形成する構成とがある。
【0046】
本実施形態では、第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、Z軸に対してX軸方向にα度(−α度)で配置された。また、第1ホルダ23及び第2ホルダ24は、Y軸に対してX軸方向に−γ度(γ度)に配置された。本実施形態では、これらの角度は固定の例示のみであったが、MRI装置10の操作者が、適宜調整できるようにしてもよい。調整する際には、第1ホルダ23及び第2ホルダ24の角度が互いに同じ角度になるように調整することが望ましい。
【符号の説明】
【0047】
C … コイル
CA … クロストークアーチファクト
Cor … 冠状面(コロナル:Coronal)
FOV … 撮影領域
HB … 被検体
HD … 手
Sag … 矢状面(サジタル:Sagittal)
TH … 撮影範囲
Tra … 横断面(アキシャル:Axial)
W … 幅
10 … MRI装置
11 … マグネットシステム
12 … テーブル
13 … クレードル
20 … 固定具
21 … 第1フレーム、22 … 第2フレーム
23 … 第1ホルダ、 24 … 第2ホルダ
25 … 受信コイル
25f … フレックスルコイル
25r … リジットコイル
26 … 枠部
28 … 筒部
27 … 貫通孔
29 … ネジ
30 … 支持具

図1
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図6
図7
図8
図9
図10