特許第5859873号(P5859873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859873
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】半導体不揮発性メモリ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20160202BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20160202BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20160202BHJP
   G11C 16/04 20060101ALI20160202BHJP
   H01L 21/8247 20060101ALI20160202BHJP
   H01L 27/115 20060101ALI20160202BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20160202BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20160202BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   H01L29/78 371
   G11C17/00 622Z
   G11C17/00 621Z
   H01L27/10 434
   H01L29/58 G
   H01L21/28 301A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-36674(P2012-36674)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-172097(P2013-172097A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】鷹巣 博昭
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−156361(JP,A)
【文献】 特開平11−150195(JP,A)
【文献】 特開平02−114568(JP,A)
【文献】 米国特許第04807003(US,A)
【文献】 米国特許第06287915(US,B1)
【文献】 特開2004−235313(JP,A)
【文献】 特開昭64−037876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
G11C 16/04
H01L 21/28
H01L 21/8247
H01L 27/115
H01L 29/423
H01L 29/49
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体表面領域の表面に、互いに間隔を置いて設けられた第2導電型のソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域表面であるチャネル形成領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域と前記チャネル形成領域の上にゲート絶縁膜を介して設けられたフローティングゲート電極と、
前記フローティングゲート電極とコントロール絶縁膜を介して容量結合したコントロールゲート電極と、
前記ドレイン領域内のトンネル領域と前記フローティングゲート電極領域との間に設けられたトンネル絶縁膜と、
を有し、
前記フローティングゲート電極は、アモルファスシリコン領域とポリシリコン領域とからなり、
前記アモルファスシリコン領域は、前記ポリシリコン領域の下面に配置されているとともに、前記トンネル絶縁膜を覆う形状で前記トンネル領域近傍にのみ局所的に形成されている電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置。
【請求項2】
前記トンネル絶縁膜は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜である請求項1記載の電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリセル(以下EEPROMセルと略す)は、P型シリコン基板上にチャネル領域を介してN型ソース領域とN型ドレイン領域が配置され、N型ドレイン領域上の一部にトンネル領域を設け、約100Åあるいはそれ以下の薄いシリコン酸化膜あるはシリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜などからなるトンネル絶縁膜を介してフローティングゲート電極が形成され、フローティングゲート電極上には薄い絶縁膜からなるコントロール絶縁膜を介してコントロールゲート電極が形成され、フローティングゲート電極はコントロールゲート電極と強く容量結合している。
【0003】
フローティングゲート電極およびコントロールゲート電極は、チャネル領域上に延設されておりチャネル領域のコンダクタンスはフローティングゲート電極の電位によって変化する。
【0004】
したがって、フローティングゲート電極中の電化量を変えることにより情報を不揮発性で記憶することができる。トンネル領域を兼ねたドレイン領域にコントロールゲートに対して約15v以上の電位差を与えることにより、フローティングゲートの電子をトンネル領域のトンネル絶縁膜を介してドレイン領域に放出したり、逆にフローティングゲート電極に注入したりすることができる。
【0005】
このようにして、フローティングゲートの電荷量を変化させて、不揮発性メモリとして機能させる。このようなEEPROMセルをマトリクス状に多数配置して、メモリアレイを形成し、大容量の不揮発性メモリ半導体装置を得る。ここで、特に電子を通過させるトンネル絶縁膜を有するトンネル領域は重要で、数十万回に及ぶ多数回のメモリセル情報の書き換えを可能にすることや、メモリ情報の数十年にわたる長期保存(電荷の保持)の要求に対して支配的な役目を果たす。
【0006】
トンネル領域およびトンネル絶縁膜の信頼性改善策として、ドレイン領域と隣接して不純物濃度の異なるトンネル領域を設けて書き換え特性や保持特性を向上させる例も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−160058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、改善例のようにドレイン領域と別に専用のトンネル領域を設ける半導体装置においては、占有面積が増大し半導体装置のコストアップに繋がるなどの問題点があった。また、書き換え特性や保持特性に顕著に影響を与えるトンネル領域のエッジへの配慮はなされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明は半導体装置を以下のように構成した。
第1導電型の半導体表面領域の表面に、互いに間隔を置いて設けられた第2導電型のソース領域とドレイン領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域との間の前記半導体領域表面であるチャネル形成領域と、前記ソース領域と前記ドレイン領域と前記チャネル形成領域の上にゲート絶縁膜を介して設けられたフローティングゲート電極と、前記フローティングゲート電極とコントロール絶縁膜を介して容量結合したコントロールゲート電極とからなる電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリにおいて、前記フローティングゲート電極は、アモルファスシリコン領域とポリシリコン領域とからなり、前記アモルファスシリコン領域は、前記ポリシリコン領域の下面であり、なおかつ、前記ドレイン領域内のトンネル領域と前記フローティングゲート電極領域との間に設けられたトンネル絶縁膜上に配置形成されている電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置とした。
【0010】
また、前記アモルファスシリコン領域は、前記ポリシリコン領域と平面的に整合する形状で、前記ポリシリコン領域の下面全面に形成されている電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置とした。
また、前記アモルファスシリコン領域は、前記ポリシリコン領域の下面であって、前記トンネル絶縁膜を覆う形状で前記トンネル領域近傍にのみ局所的に形成されている、電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置とした。
また、前記トンネル絶縁膜は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜である電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置とした。
【発明の効果】
【0011】
これらの手段によって、電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置における書き換え特性や保持特性に顕著に影響を与えるトンネル領域内のトンネル絶縁膜、特にトンネル領域のエッジ部へのストレスを抑制し、エッジ部のトンネル絶縁膜膜質の劣化を抑え、また、ポリシリコンの粒界による局所的な電界集中や偏りの発生を防止し、占有面積を増加することなくトンネル絶縁膜の劣化を抑制した高い信頼性を持つ電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置の第1の実施例を示す模式的断面図である。
図2】本発明による電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置の第2の実施例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では発明を実施するための形態を図面を用いて実施例により説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明による電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置の第1の実施例を示す模式的断面図である。
第1導電型のP型のシリコン基板101表面に、互いに間隔を置いて第2導電型のN型のソース領域201とドレイン領域202とが設けられ、ソース領域201とドレイン領域202との間のP型のシリコン基板101表面であるチャネル形成領域と、ソース領域201とドレイン領域202とチャネル形成領域の上には、例えばシリコン酸化膜からなる厚さ400Åのゲート絶縁膜301を介して、アモルファスシリコン領域502およびポリシリコン領域503の積層膜からなるフローティングゲート電極501が設けられ、フローティングゲート電極501上には、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜あるいはそれらの複合膜などからなるコントロール絶縁膜601を介して容量結合したポリシリコンなどからなるコントロールゲート電極701が形成されており、ドレイン領域202内のトンネル領域801とフローティングゲート電極501との間には、トンネル絶縁膜401が設けられており、トンネル絶縁膜401の膜厚は例えば80Åに設定され、ゲート絶縁膜301よりも小さく、トンネリング現象を起こし易いように形成されている。
【0015】
ここで、フローティングゲート電極501は、アモルファスシリコン領域502とポリシリコン領域503の積層膜として形成されており、アモルファスシリコン領域502は、ポリシリコン領域503と平面的に整合する形状で、ポリシリコン領域503の下面全面に形成されており、ドレイン領域内202のトンネル領域801とフローティングゲート電極501との間に設けられた、トンネル絶縁膜401を覆うように配置形成されている。
【0016】
トンネル絶縁膜401が形成されたトンネル領域801における、フローティングゲート電極501の材質が低温で形成でき、粒径も非常に細かいアモルファスシリコンであることによって、従来のポリシリコン材料によって形成された場合と比べて、電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置における書き換え特性や保持特性に顕著に影響を与えるトンネル領域801内のトンネル絶縁膜401、特にトンネル領域801のエッジ部へのストレスを低減抑制し、エッジ部のトンネル絶縁膜膜質の劣化を抑えることができる。
【0017】
また、従来のポリシリコン材料の粒界の存在による局所的な電界集中や偏りの発生を防止することも可能となり、トンネル絶縁膜の劣化を抑制した高い信頼性を持つ電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置を得ることができる。
ここでさらに、トンネル絶縁膜401を、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜とすることにより電子の通過による情報書き換えの回数の増加、および電荷保持特性の更なる向上に寄与できる。
【実施例2】
【0018】
図2は、本発明による電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置の第2の実施例を示す模式的断面図である。
図1に示した、第1の実施例と異なる点は、フローティングゲート電極501内のアモルファスシリコン領域502は、ポリシリコン領域503と平面的に整合せず、ドレイン領域内202のトンネル領域801とフローティングゲート電極501との間に設けられた、トンネル絶縁膜401を覆う領域にのみ局所的に配置形成されている点である。
【0019】
電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置における書き換え特性や保持特性に顕著に影響を与えるトンネル領域801内のトンネル絶縁膜401、特にトンネル領域801のエッジ部へのストレスを抑制し、エッジ部のトンネル絶縁膜膜質の劣化を抑えつつ、ソース領域201とドレイン領域202に挟まれたチャネル領域上のフローティングゲート電極501の材質を、従来と同様のポリシリコンとすることで、フローティングゲート電極501全体の導電性を向上させ、フローティングゲート電極501とチャネル領域との仕事関数差を従来と同等に保つ効果を有する。
【0020】
ここでさらに、トンネル絶縁膜401を、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の複合膜とすることにより電子の通過による情報書き換えの回数の増加、および電荷保持特性の更なる向上に寄与できる。
その他の説明については、図1と同一の符号を付記することで説明に代える。
【0021】
これらの手段によって、電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置における書き換え特性や保持特性に顕著に影響を与えるトンネル領域内のトンネル絶縁膜、特にトンネル領域のエッジ部へのストレスを抑制し、エッジ部のトンネル絶縁膜膜質の劣化を抑え、また、ポリシリコンの粒界による局所的な電界集中や偏りの発生を防止し、占有面積を増加することなくトンネル絶縁膜の劣化を抑制した高い信頼性を持つ電気的書き換え可能な半導体不揮発性メモリ装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0022】
101 P型のシリコン基板
201 ソース領域
202 ドレイン領域
301 ゲート絶縁膜
401 トンネル絶縁膜
501 フローティングゲート電極
502 アモルファスシリコン領域
503 ポリシリコン領域
601 コントロール絶縁膜
701 コントロールゲート電極
801 トンネル領域
図1
図2