(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、マグネシウム合金の連続鋳造装置では、マグネシウム合金の溶湯が保持炉からタンディッシュを経由して連続鋳造用鋳型に給湯され、連続鋳造用鋳型による一次冷却、直接水冷による二次冷却を経て凝固され、連続鋳造用鋳型の延長方向に引抜かれて鋳造物に形成される。
そして、この連続鋳造装置は、一般的に縦型(垂直型)連続鋳造装置と横型(水平型)連続鋳造装置とに分類することができる。
【0003】
例えば、特許文献1に、マグネシウム合金の鋳造物を連続鋳造するための横型連続鋳造装置が開示されている。
特許文献1に開示されている連続鋳造装置410は、
図4に示すように、溶解炉(図示省略)と、保持炉420と、加圧装置430と、溶湯供給管440と、タンディッシュ450と、鋳型取付盤460と、連続鋳造用鋳型470と、引抜装置480と、を備えて構成されている。このうち、タンディッシュ450上部の開口部451には、溶湯を大気雰囲気から遮蔽するステンレス製の蓋板452が設けられている。
【0004】
このように蓋板452を設けてマグネシウム合金の溶湯を大気雰囲気から遮蔽するのは、周知のように、マグネシウム合金の溶湯の反応性が非常に高いためである。つまり、マグネシウム合金の溶湯Mは大気との接触により、酸化物を生成したり、水素を吸収したりし易く、鋳造物Wの品質が低下してしまう。そこで、そのような品質低下を防ぐため、蓋板452を設けて遮蔽し、さらにタンディッシュ450内にアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスGを導入して不活性ガス雰囲気としている。
【0005】
また、例えば、特許文献2に、マグネシウム合金の鋳造物を連続鋳造する縦型連続鋳造装置が開示されている。
この特許文献2に開示されている連続鋳造装置500には、
図5に示すように、保持炉501から連続鋳造用鋳型502内に供給したマグネシウム合金の溶湯Mの溶湯表面を大気雰囲気から遮蔽するステンレス(SUS)製の蓋板503が連続鋳造用鋳型502上部に設けられている。そして、この蓋板503には、マイクロ波湯面レベル測定装置(マイクロ波の周波数帯域が20〜30GHz、その放射角が30°以下)504が、蓋板503の遮蔽機能を損なわないように配置されており、これによって溶湯の湯面高さの制御を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2のようにステンレス製の蓋板452、503を用いてタンディッシュ450や連続鋳造用鋳型502を遮蔽すると、溶湯表面の様子を確認することができないという問題があった。
【0008】
これは、特許文献1のような連続鋳造装置410の場合、鋳造物Wに向けて噴射される冷却水の噴射方向が、タンディッシュ450の側壁に設けられた連続鋳造用鋳型470に向けられているため、連続鋳造用鋳型470と鋳造物Wの間から冷却水が浸入するおそれがある。前記したとおり、マグネシウム合金の溶湯は反応性が非常に高く、極めて急激な化学反応が生じるおそれがある。そのため、そのような場合には溶湯表面の様子を確認して鋳造を即座に中止する必要があるが、それを行うことができない。
【0009】
溶湯表面の確認は、蓋板452を外せば可能であるが、たとえ不活性ガスGでタンディッシュ450内を満たしていても酸化物(介在物)等の生成量や水素の混入量が多くなり、鋳造物Wの品質低下を招く。そのため、常時または断続的に蓋板452を外すことは好ましくないという問題がある。
【0010】
仮に、鋳造中に蓋板452を外して溶湯表面を確認する場合、次のようなことも懸念される。例えば、特許文献1のような連続鋳造装置410の場合、構造上、冷却水の噴射位置とタンディッシュ450上部の開口部451との距離が短くなる。そのため、連続鋳造用鋳型470から出てきた鋳造物Wに向けて噴射された冷却水が飛び散ってタンディッシュ450内に混入し、極めて急激な化学反応が生じるおそれもある。
【0011】
すなわち、鋳造中に蓋板452を外すことは極力避けたいという要望がある反面、溶湯表面の確認は行いたいという要望がある。
【0012】
また、鋳造物Wを安定的に製造するため、湯面高さを監視し、制御したいという要望もあり、これに用いられるのがマイクロ波湯面レベル測定装置504である。マイクロ波湯面レベル測定装置504は、溶湯表面に向けてマイクロ波を送受信する送受信部505と、当該送受信部505と接続された制御部(図示省略)とを有しているが、マイクロ波は蓋板503を透過することができない。そのため、マイクロ波湯面レベル測定装置504を設けようとした場合、蓋板503等にマイクロ波を通過させるための隙間(貫通孔)を設ける必要がある。酸化物(介在物)等の生成防止や水素の混入防止を考慮すれば、マイクロ波湯面レベル測定装置504の設置に伴う蓋板503等の隙間は好ましくないという問題がある。
【0013】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、タンディッシュ上部の蓋板を外すことなく溶湯表面の様子を確認することができるとともに、簡易な構成でありながら湯面高さを監視し、制御することのできる連続鋳造装置および連続鋳造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決した本発明は、マグネシウムまたはマグネシウム合金の溶湯を保持する保持炉と、上部に開口部を有する容器であり、前記保持炉から供給された前記溶湯をその内部に貯留し、貯留した前記溶湯を連続鋳造用鋳型に連続供給するタンディッシュと、を備えた連続鋳造装置であって、前記タンディッシュの上方に設けられ、当該タンディッシュ内の溶湯の湯面高さを測定するレーザ測定器と、前記開口部を塞ぎ、前記レーザ測定器から発射されたレーザ光を透過するレーザ光透過手段および前記タンディッシュ内を視認できる透明な耐熱性ガラスで形成された視認手段を有する蓋板と、を有し、前記視認手段は、当該蓋板
の同一平面内において前記レーザ光透過手段とは別に設けられていることを特徴とする。
【0015】
このようにすると、蓋板のレーザ光透過手段によってレーザ測定器を用いたタンディッシュ内の溶湯の湯面高さの測定が可能となる。また、蓋板の視認手段によって溶湯表面を容易に確認することができる。
【0017】
本発明においては、前記レーザ測定器を前記溶湯の湯面から500mm以上離間させて設けるのが好ましい。このようにすると、レーザ測定器が熱によって故障するのを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明は、前記したいずれかの連続鋳造装置を用いてマグネシウムまたはマグネシウム合金の鋳造物を水平に引き出して鋳造する連続鋳造方法であって、前記蓋板を介して前記レーザ測定器により湯面高さを測定するレーザ測定ステップと、前記レーザ測定ステップにて測定される溶湯の湯面高さに応じて前記保持炉から供給する前記溶湯の供給量を調節する供給量調節ステップと、を含み、前記供給量調節ステップは、前記連続鋳造用鋳型から引き出される前記鋳造物の直径が85mm以上であるときは、前記レーザ測定器によって測定される前記湯面高さが、前記連続鋳造用鋳型の中心線から350mm以上となるように前記供給量を調節し、前記連続鋳造用鋳型から引き出される前記鋳造物の直径が85mm未満であるときは、前記レーザ測定器によって測定される前記湯面高さが、前記連続鋳造用鋳型の中心線から300mm以上となるように前記供給を調節することを特徴とする。
【0019】
このようにすると、レーザ測定ステップにて湯面高さを監視し、鋳造物の直径に応じて溶湯の供給量を適切に保つことが可能となる。そのため、溶湯の圧力を一定以上に保つことが可能となり、鋳造物を安定的に連続鋳造できる。また、蓋板を用いているので、溶湯表面の様子を確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タンディッシュ上部の蓋板を外すことなく溶湯表面の様子を確認することができるとともに、簡易な構成でありながら湯面高さを監視し、制御することのできる連続鋳造装置を提供することができる。
【0021】
また、本発明によれば、タンディッシュ上部の蓋板を外すことなく溶湯表面の様子を確認することができるとともに、簡易な構成でありながら湯面高さを監視し、制御することのできる連続鋳造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照して本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
本発明は、マグネシウム合金の鋳造物を連続的に鋳造することのできる連続鋳造装置および連続鋳造方法に関する。
【0024】
[連続鋳造装置]
(連続鋳造装置の全体的な構成)
まず、
図1を参照して、連続鋳造装置の全体的な構成の一例について説明する。
図1に示すように、連続鋳造装置1は、溶解炉(図示省略)と、保持炉2と、加圧装置3と、溶湯供給管4と、タンディッシュ5と、鋳型取付盤6と、連続鋳造用鋳型7と、引抜装置8とを備えて構成されている。なお、この連続鋳造装置1は、いわゆる横型(水平型)であっても、縦型(垂直型)であってもよいが、以下の説明では、横型の場合を例に説明する。
【0025】
前記した構成の連続鋳造装置1の場合、溶解炉(図示省略)で溶融された溶湯Mが、連続鋳造用鋳型7で鋳造物Wに凝固されるまで流れる溶湯経路9が形成されている。溶湯経路9は、溶解炉(図示省略)、保持炉2、溶湯供給管4、タンディッシュ5、鋳型取付盤6、連続鋳造用鋳型7の順に溶湯Mが流れるように形成されている。溶湯経路9は、この溶湯経路9中の上部に形成された後記する開口部22、52がそれぞれ蓋板23、53等によって覆われており、略全体が密閉状態に形成される。
また、保持炉2には加圧装置3が設けられており、溶湯Mの流動性が高められている。
【0026】
(溶湯および鋳造物)
溶湯Mは、溶解炉(図示省略)で溶融され、溶湯経路9に供給される溶融金属である。溶解炉で溶融され、保持炉2に供給される溶湯M中には、一般に、0.数〜2mm程度の大きさの介在物が含まれている。
また、鋳造物Wは、連続鋳造装置1によって溶湯Mを連続鋳造して凝固させた鋳片(鋳塊)であり、例えば、直径X(
図2参照)が数10〜100mm程度の丸棒に鋳造される。
【0027】
(保持炉)
保持炉2は、溶解炉(図示省略)から供給された溶湯Mを所定の温度に保温した状態で一時的に貯溜する炉であり、略密閉容器状に形成されている。保持炉2は、略容器状に形成された保持炉本体21と、この保持炉本体21の上部に形成された開口部22を閉塞する蓋板23と、から主に形成されている。保持炉2には、溶解炉(図示省略)から供給される溶湯Mを取り込む給湯口2aと、保持炉2内の溶湯Mをタンディッシュ5に供給する溶湯供給管4と、保持炉本体21に設けられた加圧ガス供給部34に接続された加圧装置3と、が設けられている。
【0028】
保持炉2内の溶湯Mの表面と蓋板23との間の空間には、溶湯Mを酸化させないカバーガスとして、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスGが圧縮された状態で注入されて充満されている。このため、蓋板23および加圧装置3を備えた保持炉2は、気体加圧式保持炉となっている。給湯口2aは、蓋板23あるいは保持炉本体21の上部に設けられる。
【0029】
保持炉本体21は、溶湯Mを貯溜する例えば有底円筒状の容器であり、溶解量が数100kg〜数t程度のものからなる。この保持炉本体21の側壁上部には、不活性ガスGの供給口を形成する加圧ガス供給部34が設けられている。
【0030】
蓋板23は、保持炉本体21の開口部22を閉塞して保持炉2内を密閉状態にし、保持炉本体21内の溶湯Mが大気と接触して酸化するのを防止するための蓋体である。蓋板23は、保持炉本体21の開口部22の上部に開閉可能に設けられている。この蓋板23は、例えば、耐食性、耐熱性に優れているステンレス鋼製等の板状部材からなる。その蓋板23には、溶湯供給管4が挿通される設置孔23aが設けられている。
【0031】
(加圧装置)
加圧装置3は、保持炉2内の溶湯Mを加圧する加圧手段であり、例えば、保持炉2内の溶湯Mの表面を圧縮ガスで押圧する装置である。加圧装置3は、気体加圧方式の加圧手段からなる。以下、気体加圧方式の加圧装置3を使用した場合を例に挙げて説明する。
【0032】
加圧装置3は、例えば、気体を圧縮する圧縮機31と、この圧縮機31を制御する制御装置32と、圧縮機31および制御装置32を駆動させるための電源33と、を備えて構成されている。加圧装置3の加圧は、溶湯Mの種類等によって相違するが、1〜100kPaである。
【0033】
なお、加圧装置3の加圧が1kPa未満である場合には、溶湯Mを押圧する力が弱くなることにより、溶湯経路9を流れる溶湯Mの流れが遅くなるため、後記するフィルタ4cを通過する単位時間当たりの通湯量が所望量よりも少なくなるので好ましくない。また、加圧装置3の加圧が100kPaを超える場合には、溶湯Mを押圧する力が強くなることにより、溶湯経路9を流れる溶湯Mの流れが速くなるため、連続鋳造用鋳型7を通過する際の速度が所望とする速度よりも速くなるので好ましくない。また、湯漏れの危険性が増すためよくない。
【0034】
圧縮機31は、例えば、アルゴンガスやヘリウムガス等の不活性ガスGを圧縮するコンプレッサ等からなり、不活性ガス供給用の配管を介して保持炉本体21の加圧ガス供給部34に接続されている。
【0035】
(溶湯供給管)
溶湯供給管4は、保持炉2内の溶湯Mをタンディッシュ5に供給するための配管であり、一端側に保持炉側開口部4aを有し、他端側にタンディッシュ側開口部4bを有している。この溶湯供給管4は、保持炉2とタンディッシュ5との間を繋ぐ配管であり、保持炉側開口部4aが保持炉2内の下部に配置され、タンディッシュ側開口部4bがタンディッシュ5内の上部に配置されている。保持炉2内において、溶湯供給管4は、保持炉2の天井面を形成する蓋板23の設置孔23aから垂下した状態に配置され、下端の保持炉側開口部4aが、酸化膜が形成される溶湯Mの表層と、スラッジが溜まる溶湯M中の底層との間の位置に配置されている。その溶湯供給管4は、例えば、内径が80mmのステンレス鋼管あるいは鋼管からなる。
【0036】
(タンディッシュ)
タンディッシュ5は、保持炉2から供給された溶湯Mを保温した状態で一時的に貯溜する炉である。タンディッシュ5は、略容器状に形成された筐体51と、この筐体51の上部の開口部52を閉塞する蓋板53と、から主に形成された密閉状の容器である。
【0037】
タンディッシュ5には、このタンディッシュ5内の溶湯Mを濾過するフィルタ4cと、連続鋳造用鋳型7をタンディッシュ5の外側側壁に取り付けるための鋳型取付盤6と、が設けられている。なお、このタンディッシュ5内の溶湯Mも、タンディッシュ5が溶湯供給管4を介して保持炉2に連通していることにより、前記加圧装置3によって溶湯Mが加圧された状態になっている。
【0038】
筐体51は、連続鋳造用鋳型7側の側壁に、溶湯Mを連続鋳造用鋳型7に供給する溶湯供給口54が形成されている。
蓋板53は、筐体51の開口部52を開閉自在に閉塞してタンディッシュ5内を密閉状態にするための蓋体である。蓋板53は、筐体51内の溶湯M上の空間に不活性ガスGを充満させた密閉空間にすることにより、溶湯Mが大気と接触して酸化するのを防止している。
【0039】
(フィルタ)
フィルタ4cは、溶湯Mの流れを遮るようにして設けられており、溶湯Mが浄化された状態で連続鋳造用鋳型7に供給されるようになっている。つまり、フィルタ4cは、溶湯M中の介在物が、タンディッシュ5から連続鋳造用鋳型7側(下流側)へ流れるのを阻止したり、介在物を取り除いたりするための濾過機である。フィルタ4cは、例えば、ステンレス鋼等の金属製の網目状のものからなる。
【0040】
(鋳型取付盤)
鋳型取付盤6は、連続鋳造用鋳型7をタンディッシュ5に固定するための部材であり、筐体51内の溶湯Mが吐出される溶湯供給口54が設けられた外壁55と、連続鋳造用鋳型7との間に介在されている。鋳型取付盤6は、例えば、耐熱性の略リング状の部材からなり、一端側(上流側)が筐体51の溶湯供給口54に連通した状態にタンディッシュ5に固定され、他端側(下流側)が連続鋳造用鋳型7の注入口(図示省略)に連通した状態に連続鋳造用鋳型7に固定されている。
【0041】
(連続鋳造用鋳型)
連続鋳造用鋳型7は、タンディッシュ5の溶湯供給口54から型内に供給された溶湯Mを冷却しながらこの連続鋳造用鋳型7から送り出すことによって、所定の形状に成型する冷却鋳型である。連続鋳造用鋳型7は、例えば、棒状の鋳造物Wを連続鋳造する略筒状の型面を有している。この連続鋳造用鋳型7は、例えば、熱伝導率の高い銅、アルミニウム合金、ステンレス鋼、または黒鉛製のものからなる。連続鋳造用鋳型7には、例えば、この連続鋳造用鋳型7および鋳造物Wを強制的に一次冷却するウォータジャケットや二次冷却する冷却水噴射ノズル装置等からなる冷却装置(図示省略)と、連続鋳造用鋳型7の鋳造面に潤滑剤を供給して鋳造物Wが鋳造面に焼き付くのを防止する潤滑剤供給装置(図示省略)と、が設けられている。略筒状の連続鋳造用鋳型7の上流側開口端は、タンディッシュ5の溶湯供給口54に連通している。
【0042】
(引抜装置)
引抜装置8は、連続鋳造用鋳型7から鋳造物Wを引き出して搬送する装置であり、例えば、電動モータ(図示省略)によって回転される複数のローラ8a、8b等を備えている。ローラ8aは、例えば、連続鋳造用鋳型7の開口端の近傍の下側から鋳造物Wが送られる鋳造方向に沿って、鋳造物Wの下側に敷設するように複数配置され、このローラ8aに対向する上側に、ローラ8bが配置されている。
引抜装置8によって搬送された鋳造物Wは、電動鋸(図示省略)等により、所定長さに切断して保管することができる。
【0043】
連続鋳造装置1の全体的な構成の概要は以上に説明したとおりである。本発明では、このような構成の装置において、
図2に示すように、タンディッシュ5の上方に、当該タンディッシュ5内の溶湯Mの湯面高さを測定するレーザ測定器10を設けている。
【0044】
レーザ測定器10は、タンディッシュ5内に向けてレーザ光を発射し、タンディッシュ5内の溶湯Mに当たって反射した当該レーザ光を受光して、溶湯Mとの距離、すなわち湯面高さを測定する。
【0045】
そのため、本発明における蓋板53は、レーザ測定器10のレーザ光を透過するレーザ光透過手段53aを有する必要がある。
また、本発明における蓋板53は、溶湯表面の様子を視認するため、タンディッシュ5内を視認できる視認手段53bを有する必要がある。
【0046】
本発明における蓋板53は、レーザ光透過手段53aおよび視認手段53bとして、蓋板53の一部または全部に耐熱ガラスで形成した耐熱ガラス板を使用するのが好ましい。
このようにすると、耐熱ガラス板はレーザ光を透過するので、蓋板53の一部または全体がレーザ光を透過することができる。すなわち、蓋板53の一部または全体がレーザ光透過手段53aとなり、湯面高さを測定することができる。また、耐熱ガラス板は透明であるので、蓋板53の一部または全体が視認性を有することになる。すなわち、蓋板53の一部または全体が視認手段53bとなり、タンディッシュ5内の溶湯Mの様子を確認することができる。
ここで、蓋板53の一部に耐熱ガラスで形成した耐熱ガラス板を使用する場合としては、例えば、ステンレス製の蓋板53の一部に、表面から裏面に掛けて貫通する孔部(図示省略)を設け、当該孔部に耐熱ガラス板を取り付ける態様を挙げることができる。以下、このような態様を視認窓と呼ぶ。視認窓を設ける場合はこれを複数設け、一つの視認窓をレーザ光透過手段53a用とし、他の視認窓を視認手段53b用などとすることもできる。
【0047】
また、蓋板53の全部に耐熱ガラスで形成した耐熱ガラス板を使用する場合とは、すなわち、蓋板53全体を耐熱ガラス板で形成するということである。このようにすれば、耐熱ガラス板は透明であるので、蓋板53そのものがレーザ光透過手段53aと視認手段53bを有しているということができる。
【0048】
なお、レーザ測定器10は、溶湯Mから500mm以上離して設置するのが好ましい。設置距離がこれよりも短いと、溶湯Mの熱によってレーザ測定器10が故障する可能性が高くなり、継続的または断続的かつ安定的に湯面高さを測定することができないおそれがある。
【0049】
以上に説明した連続鋳造装置1によれば、蓋板53が、レーザ測定器10から発射されたレーザ光を透過するレーザ光透過手段53aと、タンディッシュ5内を視認できる視認手段53bと、を有しており、さらに、タンディッシュ5の上方に、タンディッシュ5内の溶湯Mの湯面高さを測定するレーザ測定器10を有している。そのため、タンディッシュ5上部の蓋板53を外すことなく溶湯表面の様子を確認することができるとともに、湯面高さを監視し、制御することが可能となる。
【0050】
[連続鋳造方法]
(湯面高さの制御)
以上に説明した連続鋳造装置1を用いれば、好適に湯面高さを監視し、制御する連続鋳造方法を具現できる。
図3に示すように、かかる連続鋳造方法は、鋳造物Wを水平に引き出して連続鋳造するものであり、レーザ測定ステップS1と、供給量調節ステップS2と、を含んでなる。
【0051】
(レーザ測定ステップ)
レーザ測定ステップS1は、前記した蓋板53を介してレーザ測定器10により湯面高さを測定するステップである。
レーザ測定ステップS1は、マグネシウム合金の鋳造物Wの連続鋳造中、継続的にまたは断続的に行われる。継続的に行う場合の時間的間隔は任意に設定することができる。例えば、1分毎、5分毎などとすることができる。
【0052】
このステップで測定された湯面高さのデータは、例えば、
図2に示す制御装置32に送信されたり、場合によっては、図示しないモニターなどの表示装置にて、その旨が表示されたりする。
【0053】
(供給量調節ステップ)
次いで行う供給量調節ステップS2は、レーザ測定ステップS1にて測定される湯面高さに応じて保持炉2から供給する溶湯Mの供給量を調節するステップである。
【0054】
レーザ測定ステップS1で送信された湯面高さのデータは、前記したように制御装置32に送信されたり、場合によっては、図示しないモニターなどの表示装置にて、その情報が表示されたりする。
【0055】
そのため、制御装置32は、予めハードディスクなどの記憶手段に格納されたプログラムに従って、例えば、圧縮機31の圧力を適宜に調節し、それにより保持炉2からタンディッシュ5への溶湯Mの供給量を調節する。つまり、湯面高さのデータに基づいて溶湯Mの供給量をフィードバック制御する。
【0056】
一例として挙げれば、連続鋳造用鋳型7から引き出される鋳造物Wの直径Xが85mm以上であるときは、レーザ測定器10によって測定される湯面高さHが、連続鋳造用鋳型7の中心線CLから350mm以上となるように、つまり、X≧85mmの場合、H≧350mmとなるように、保持炉2からの溶湯Mの供給量を調節する。
【0057】
また、連続鋳造用鋳型7から引き出される鋳造物Wの直径Xが85mm未満であるときは、レーザ測定器10によって測定される湯面高さHが、連続鋳造用鋳型7の中心線CLから300mm以上となるように、つまり、X<85mmの場合、H≧300mmとなるように、保持炉2からの溶湯Mの供給量を調節する。
【0058】
このように、鋳造物Wの直径Xに適した湯面高さを確保することで、溶湯Mの圧力を適切に得ることができる。そのため、鋳造物Wを安定的に連続鋳造することができる。
【0059】
なお、保持炉2からの溶湯Mの供給量を調節する操作は、表示装置に表示された情報に基づいて作業者が圧縮機31の圧力を調節して行うこともできる。
【0060】
溶湯Mの湯面高さHの上限は特に規定されていないが、タンディッシュ5の開口部52の上端に近づき過ぎると蓋板53が損傷したり、溶湯Mの供給量を誤って操作した場合に開口部52から溢れたりするおそれがある。そのため、開口部52の上端から少なくとも100mm程度のクリアランスを保持するように設定するのが好ましい。
【0061】
よって、鋳造物Wの直径Xが85mm以上のとき、または鋳造物Wの直径Xが85mm未満のときを問わず、それぞれに規定された湯面高さH以下(連続鋳造用鋳型7の中心線CLからの高さ350mm以下または300mm以下)となっているときは、圧縮機31の圧力を昇圧し、溶湯Mの供給量を増加させる。反対に、湯面が開口部52の上端から100mm程度以内となっているときは、圧縮機31の圧力を減圧し、溶湯Mの供給量を減少させる。このように制御すれば、常時、溶湯Mの湯面高さを適切な範囲に維持することができ、溶湯Mの圧力を適切に保つことができるので、鋳造物Wを安定的に連続鋳造することが可能となる。
【0062】
以上に説明した連続鋳造方法によれば、蓋板53を介してレーザ測定器10により湯面高さを測定することができ、また、鋳造物Wの直径Xに応じその湯面高さを適切に調節することができる。つまり、タンディッシュ5上部の蓋板53を外すことなく溶湯表面の様子を確認することができるとともに、湯面高さを監視し、制御することが可能となる。