特許第5859879号(P5859879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859879
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】採水用ノズル及びこれを備えた純水装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/12 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   B05B1/12
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-48031(P2012-48031)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-180285(P2013-180285A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年10月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用 博覧会名: 分析展2011・科学機器展2011 主催者名: 社団法人 日本分析機器工業会、日本科学機器団体連合会 開催日: 平成23年9月7日から9月9日「3日間」
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】川口 修
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−015860(JP,A)
【文献】 特開平06−031217(JP,A)
【文献】 特開2007−061756(JP,A)
【文献】 米国特許第06065683(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00855564(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−1/36
E03C1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水の採水に用いられる採水用ノズルであって、
内側に空間を有するノズル本体と、
前記ノズル本体の端部に在って、先端に行くほど細くなるように形成された、最先端部を有するノズル端部と、
前記ノズル端部の前記最先端部から前記ノズル本体の内側空間に向けて形成された、所定の流路幅を有する第一水路と、
前記ノズル端部の前記最先端部の側から見て前記第一水路を中心に側方へ延び、かつ前記最先端部の周辺から前記ノズル本体の内側空間に向けて形成された、前記第一水路の流路幅以下でかつ最大2mmの流路幅を有する第二水路と、
を有することを特徴とする採水用ノズル。
【請求項2】
前記ノズル端部の前記最先端部の側から見たとき、複数の前記第二水路が前記最先端部の前記第一水路を中心に放射状に均等に延びていることを特徴とする請求項1に記載の採水用ノズル。
【請求項3】
前記第二水路が5本以上形成されていることを特徴とする請求項2に記載の採水用ノズル。
【請求項4】
前記ノズル端部の前記最先端部における前記第一水路の流路断面積が10mm2以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の採水用ノズル。
【請求項5】
前記ノズル端部の前記最先端部を含んで水の流れ方向に平行な断面で見て、該最先端部の位置から該断面の外側の輪郭を描くように延びる2つの外形線によって前記ノズル本体の側に形成される角度が、90°以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の採水用ノズル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の採水用ノズルを備えた純水装置であって、該採水用ノズルを、そのノズル端部の最先端部が一番下に在る状態にして取付け可能であり、採水時に該ノズルから出る純水の線流速が1.8m/s以下になるように純水を該ノズルより流出させることを特徴とする純水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採水用ノズルに関し、特に、微量分析等で用いられる純水の採水用ノズル、および該採水用ノズルを備えた純水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微量分析、半導体製造工程など様々な場面で高純度の純水が使用されている。特に、微量分析等を行う研究所では、卓上の純水製造装置、または、これに接続されたディスペンサ等の採水装置、などを含む純水装置が要求される(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
こうした純水装置の採水口に取り付けられるノズルは単純な円筒型のものが一般的である。当該ノズルより流量1L/min以上で純水を採水する場合は、ノズル出口からの純水の飛散りや、ノズルから容器へ採水している純水への気泡の巻き込みを防止するために、ノズル内径がφ6mm以上(ノズル流路の流れ方向に直角な断面の面積(以下、流路断面積と称す。)が28mm2以上)のものが使われることが多い。この値よりノズル内径が小さいと、純水の飛散りが起こりやすくなる他、気泡の巻き込みにより純水に空気中に浮遊する不純物を取り込んでしまうため、水の純度を低下させてしまい、望ましくないからである。
【0004】
一方、内径がφ6mm以上(流路断面積が28mm2以上)の円筒型ノズルでは、純水を滴下採水するとノズルからの水滴が大きくなるため(φ6mmの場合、0.09mL)、メスフラスコ等の標線合わせ(メスアップ)など微量な調整を行うには適さない。現状は、一旦、先端径の小さい洗ビンに純水を入れ、この洗ビンからメスフラスコ等へ小さな水滴(0.05mL)を出すことでメスアップをしている。洗ビンに純水を入れることは、洗ビン内の純水に洗ビンからの溶出物が溶け込むことで純度を低下させてしまうため、望ましくない。
【0005】
つまり、従来の純水装置の採水口に取り付けられている円筒型ノズルでは、異なる流量の採水を行うと水の純度が犠牲になってしまうこと、また、洗ビンなど、一旦別の容器に水を移すなど、手間がかかっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】意匠登録第1345532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上で述べたように、微量の滴下採水を行う場合はノズル内径が小さいものが求められ、大流量採水を行う場合にはノズル内径が大きなものが求められており、現状の円筒型のノズル形状ではこれら相反する両方の要求を満足させることは困難であった。
【0008】
また、本発明者らの実験によれば、円筒型ノズルに流す純水の流量を大きくしていくと、ある流量から純水の飛散りが発生すると共に純水への気泡の巻き込みが多くなることが確認されている。これは、ノズルから出る水の線流速が増加することが要因である。さらに、円筒型ノズルから水を滴下する場合、該ノズルの内径(出口径または開口面積)を大きくしていくと、該ノズルからの一滴の量が増えることも分かっている。
【0009】
例えば内径4mm程度の単純な円筒型ノズルで2L/minのような大流量採水と一滴0.05mLの滴下採水の両方を可能にすることは難しく、水の純度低下を防止するのに限界があった。
【0010】
そこで本発明は、上述したような実情に鑑み、大流量採水と滴下採水の両方を可能とする採水用ノズル、および該採水用ノズルを備えた純水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、純水の採水に用いられる採水用ノズルに係るものである。このノズルは、ノズル本体とノズル端部を有しており、ノズル端部は第一水路と第二水路を有している。ノズル本体は内側に空間を有する。ノズル端部はノズル本体の端部に在って、先端に行くほど細くなるように形成されたもので、最先端部を有している。第一水路は、ノズル端部の最先端部からノズル本体の内側空間に向けて形成されており、所定の流路幅を有する。第二水路は、ノズル端部の最先端部の側から見て第一水路を中心に側方へ延び、かつ最先端部の周辺からノズル本体の内側空間に向けて形成されている。さらに、該第二水路は、第一水路の流路幅以下でかつ最大2mmの流路幅を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明の他の態様は、上記態様の採水用ノズルを備えた純水装置に係る。この装置は、該採水用ノズルを、そのノズル端部の最先端部が一番下に在る状態にして取付け可能であり、採水時に該ノズルから出る純水の線流速が1.8m/s以下になるように純水を該ノズルより供給する装置であることを特徴とする。
【0013】
上記の態様の採水用ノズルを、そのノズル端部の最先端部が一番下に在る状態にして純水装置に取付け、ノズル端部からメスフラスコ等の採水容器に純水を滴下する場合には、ノズル本体の内側空間に微流量で純水が供給される。この場合、ノズル本体の内側空間に供給された純水は、ノズル端部の第一水路および第二水路に進入するが、最先端部に位置する第一水路の流路幅を第二水路の流路幅以上に大きくしてあるので、最終的には純水が第一水路に集中し、最下に位置する最先端部から落下する。この時の一滴の量は、最先端部における第一水路の流路断面積に応じた液量になる。
【0014】
他方、上述した態様の採水用ノズルに純水を大流量で供給して、該採水用ノズルから容器に純水を採水する場合には、ノズル本体の内側空間に供給された純水は第一水路および第二水路に進入し、ノズル端部の下方へ第一流路と第二流路の両方を通って流れ出る。この時の液出量は、第一水路と第二水路の流路断面積を合計した総断面積に応じたものとなる。
【0015】
つまり、微流量での滴下採水時は最先端部のみから液出されるが、大流量採水のためにノズルへの給水流量を増していくと、最先端部に対応する第一水路だけでなく第二水路からも液出される。これにより、第一水路だけから液出するときの水の線流速と比べて、その線流速は低く抑えられるので、液出された純水への気泡の巻き込みは少なくなる。またノズルからの水の飛散りも発生しなくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、様々な流量において、純水の純度低下が防止でき、かつ手間のかからない採水が可能になる。つまり、純水の採水において、大流量採水と滴下採水を両立させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による採水用ノズルの一つの実施例(ノズルA)を示しており、(a)は側面図、(b)は該ノズルの先端部を水の出口側から見た図、(c)は(b)におけるX−X’断面図である。
図2図1の採水用ノズルのノズル先端部の変形例(ノズルB)を示す側面図である。
図3図1の採水用ノズルのノズル先端部の変形例(ノズルC)を示し、該ノズルの先端部を水の出口側から見た図である。
図4図1の採水用ノズルのノズル先端部の変形例(ノズルD)を示し、該ノズルの先端部を水の出口側から見た図である。
図5図1の採水用ノズルのノズル先端部の変形例(ノズルE)を示す側面図である。
図6図1の採水用ノズルのノズル先端部の変形例(ノズルF)を示し、該ノズルの先端部を水の出口側から見た図である。
図7図1の採水用ノズルのノズル先端部の変形例(ノズルG)を示し、該ノズルの先端部を水の出口側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明による採水用ノズルの一つの実施例(ノズルA)を示しており、(a)は側面図、(b)は該ノズルの先端部を水の出口側から見た図、(c)は(b)におけるX−X’断面図である。図2図7は該ノズル先端部の形状の変形例(ノズルB、ノズルC、ノズルD、ノズルE、ノズルF、ノズルG)を示している。
【0020】
本発明による採水用ノズルの基本形状は、図1(a)に示すように、吐出側となるノズル端部1が先端に行くほど細くなり、ノズルから滴下を行う際に一番下となる最先端部2を有している。そして、最先端部2からノズル本体3の内側部(空間)3aに向けて第一水路4が形成されている。さらに、図1(c)に示すように、ノズル端部1の最先端部2を含んで水の流れ方向に平行な断面で見て、その最先端部2の位置から該断面の外側の輪郭を描くように延びる2つの外形線2a,2bによってノズル本体3の側に形成される角度αが、所定の角度(ノズルAの例では90°)となっている。
【0021】
さらに、図1(b)に示すようにノズル端部1には、最先端部2を中心として放射状に均等に同形のスリット状切れ目5が入れられていて、それぞれのスリット状切れ目5は、最先端部2の周辺からノズル本体3の内側部3aに向けて連通する第二水路6を形成している。これにより、各々のスリット状切れ目5が形成している第二水路6は、第一水路4にも繋がっていて、最先端部2の側から見て第一水路4を中心に側方へ延びている。
【0022】
第一水路4の流路断面積(流れ方向に直角な断面の面積)については、液を一滴ずつ落とせるように、ある程度小さくする必要があるが、純水の滴下採水時に水の流れが第一水路4に集中しやすいように第一水路4の流路幅が第二水路6の流路幅以上に大きく設定されている。ここで、流路の断面で見て流路内に円を置いた場合に、置く事のできる円の最大直径を「流路幅」という事とする。
【0023】
上述した形状を有するノズルは、最先端部2が下向きにされた状態で、卓上の純水製造装置もしくは、これに接続されたディスペンサ等の採水装置、などを含む純水装置に取り付けて使用されるものとする。採水用ノズルをそのノズル端部の最先端部2が一番下に在る状態にして装置に取り付けられるように、例えばノズル端部1と反対側の端部の外周にネジを切っておくとよい。
【0024】
なお、図1に示したノズル形状の他、図3及び図4に示すようにスリット状切れ目5の本数を変更したノズルや、図6に示すようにスリット状切れ目5の形状を変更したノズル、また、図2及び図5に示すように最先端部2における上記の角度αを変更したノズルも本発明に含まれる。
【0025】
次に上述したノズルの作用および効果について述べる。
【0026】
上述したノズルに微流量で純水を供給して、該ノズルからメスフラスコ等の採水容器に純水を滴下する場合、ノズル本体3の内側部3aに供給された純水は、ノズル端部の第一水路4および第二水路6に進入するが、第一水路4の流路幅を第二水路6の流路幅以上に大きくしてあるので、最終的には第一水路4に集中し、最下に位置する最先端部2から落下する。この時の一滴の量は、最先端部2における第一水路4の流路断面積に応じた液量になる。
【0027】
他方、上述したノズルに純水を大流量で供給して、該ノズルから容器に純水を採水する場合は、ノズル本体3の内側部3aに供給された純水は、ノズル端部の第一水路4および第二水路6に進入し、ノズル端部1の下方へ第一流路4と第二流路6の両方を通って流れ出る。この時の液出量は、第一水路4と第二水路6の流路断面積を合計した総断面積に応じたものとなる。
【0028】
つまり、微流量での滴下採水時は最先端部2のみから液出されるが、大流量採水のためにノズルへの給水流量を増していくと、最先端部2に対応する第一水路4だけでなく最先端部2の周辺の第二水路6からも液出される。これにより、第一水路4だけから液出するときの水の線流速と比べて、その線流速は低く抑えられるので、液出された純水への気泡の巻き込みは少なくなる。またノズルからの水の飛散りも発生しなくなる。
【0029】
「実験例」
以下、本発明のノズルについて効果の検証を行った結果を示す。
【0030】
本発明者らは、図1に示したノズル(ノズルA)とこれを基本に形状変更した複数のノズル(図2図7に示したノズルB、ノズルC、ノズルD、ノズルE、ノズルF、ノズルG)を用意し、純水製造装置に接続されたディスペンサ等の採水装置から各々のノズルに平均流量3mL/minで純水を流通させ、滴下採水を試みた。
【0031】
ノズルA〜Gのノズル本体3の内側部3aはφ9mmの円柱穴(円筒)からなる。
【0032】
ノズルAは、最先端部2における上記の角度αを90°にし、最先端部2の側から見て長さ4.5mm,幅1.1mmのスリット状切れ目5をノズル端部1に最先端部2を中心とした均等な放射状の8方向に入れて、第一水路4と第二水路6を形成したものである。なお、最先端部2における第一水路4は、その横断面の形状を円と仮定すると、流路断面の直径は2.9mm、流路断面積は6.5mm2である。滴下の結果、水滴体積が0.05mL以下であり、良好な結果を得られた。
【0033】
また、ノズルB、ノズルC、ノズルDは、どれも最先端部2における上記の角度αが60°で、スリット状切れ目5の長さ4.5mmである。しかし、ノズルBは、スリット状切れ目5が幅1.1mmで均等な放射状の8方向に入れてある。ノズルCは、スリット状切れ目5が幅1.5mmで均等な放射状の6方向に入れてある。ノズルDは、スリット状切れ目5が幅1.6mmで均等な放射状の5方向に入れてある。ノズルB、ノズルC、ノズルDのそれぞれにおいて、最先端部2における第一水路4は、その横断面の形状を円と仮定すると、流路断面の直径は、2.9mm、3.0mm、2.7mm、流路断面積は6.5mm2、7.1mm2、5.8mm2である。いずれのノズルも、滴下の水滴体積は、0.05mL以下で良好であった。なお、ノズルCのスリット状切れ目5の幅を若干大きくして、少なくとも最先端部2における第一水路4の流路断面積を10mm2程度にしたノズルでも滴下の水滴体積は、0.05mL以下であった。
【0034】
一方、ノズルAの最先端部2における上記の角度αのみを120°に変えたノズルEでは、滴下の水滴の体積が0.08mLとなり、他の水滴体積よりも大きくなった。
【0035】
ノズルFとノズルGは、ノズルCのスリット状切れ目5を幅1.0mmとし、各スリット状切れ目5の、最先端部2側の端部とは反対の端部に円状くり抜きを入れたものあり、ノズルF、ノズルGの円状くり抜き部7の流路断面の直径は各々2.0mm、2.5mmである。ノズルFでの滴下の水滴体積は0.05mL以下で良好であったが、ノズルGでは円状くり抜き部7の水が盛り上りやすく、最先端部2からではなく、円状くり抜き部7の複数箇所から水滴がランダムに滴り落ちてきたため、水滴体積は0.1mL以上となった。なお、ノズルD(放射状の5方向にスリット状切れ目5を入れたもの)に関して、ノズルFとノズルGのように、各スリット状切れ目5の、最先端部2側の端部とは反対の端部に円状くり抜きを入れた場合も、第二水路6の円状くり抜き部7の流路断面の直径が最先端部2における第一水路4の流路断面の直径より大きな形状であると、最先端部2からの滴下は出来なかった。
【0036】
また、ノズルA〜Gをそれぞれ指ではじき、衝撃を与えると、幅1.6mmのスリット状切れ目5を有するノズルDや、円状くり抜き部7の流路断面の直径が2.0mmであるノズルFと2.5mmのノズルGでは、ノズル先端部1から水がドボドボと落ちてしまい、水の保持性に若干問題が観測された。
【0037】
以下の表1は、上記したノズルA〜Gの滴下採水試験のデータをまとめたものである。表1から、メスアップ等の微量な調整を可能にする一滴の体積0.05mL以下にするには、最先端部2における上記の角度αを90°以下にし、かつ、最先端部2に対応する第一水路4の流路断面積を10mm2以下にすることが望ましいと言える。なお、最先端部2における上記の角度αの下限値は30°以上であることが、ノズル製作の観点で望ましい。
【0038】
【表1】
【0039】
また、上記ノズルA〜Gに、2.5L/minと3.5L/minの流量で純水を流通させ、水の飛散りと純水への気泡の巻き込みについて確認を行った。以下の表2に示すように、線流速が1.8m/sを超えた採水条件(3.5L/minでのノズルD及びノズルF)以外は、どのノズルも純水の飛散りはなく、純水への気泡の巻き込みも少なく、良好な結果が得られた。
【0040】
したがって、表2から、上記ノズルA、B、C、D、E、F、Gの各種形状によれば、ノズルA〜Gのいずれかを備えた純水装置において、該ノズルから出る水の線流速が1.8m/s以下になる流量で該ノズルより採水を行うことが望ましいと言える。
【0041】
【表2】
【0042】
以上のように本発明によるノズルについていくつかの構成例を示したが、ノズル端部1における水路の形状は、最先端部2に対応する第一水路4を中心として放射状に均等に複数の第二水路6を形成したものに限定されない。例えば、最先端部2に対応する第一水路4を中心としてらせん状に一続きの水路を形成したものであってもよい。しかし、放射状の水路の方が単純な形状であるため安価に製造でき望ましい。
【0043】
また、スリット状切れ目5は、水道蛇口の整流板のように、水の流れる方向に2mm以上の奥行きがあることが望ましい。
【0044】
また、放射状水路を有するノズル形状においてスリット状切れ目5の本数は、最先端部2を中心として放射状に均等に3本以上あれば何本でも良いが、より望ましくは5本以上が良い。水の飛散りや気泡の巻き込みを防ぎつつ大流量での採水を可能にするには第一水路4と第二水路6の流路断面積を合わせた総断面積を大きくしなければならない。しかし、スリット状切れ目5の本数が3本でノズル径を変えずに総断面積を大きくするには第二水路6の幅を大きくすることになり、これより第一水路4の流路断面積も大きくなり、滴下時の一滴の量が多くなる。スリット状切れ目5が5本以上であれば、第一水路4の流路断面積を大きくすることなく水路の総断面積を大きくできるため、望ましい。
【0045】
また、ノズルの最先端部2側の端面を見たとき、第一水路4を中心に放射状にスリット状切れ目5が延びることで複数の第二水路6が形成されている。この第二水路6を形成するスリット状切れ目5は、ノズル端部1に形成される水路の総断面積を増やせるならば、切れ目5の長さ方向において連続していても、非連続でも良い。ただし、連続している方が、水が幾筋にもならず一筋に流れるため、採水がしやすく、望ましい。
【0046】
さらに、滴下採水する際は、ノズルに連続的に低流量で給水するのでも、パルス的(断続的)に水を給水するのでもよい。ただし、パルス的に給水したほうが、衝撃により水の切れがよく、水滴が落ち易いので望ましい。
【0047】
以上説明した本発明の採水用ノズルは、微量分析、半導体製造工程など様々な場面で使用される高純度の純水を製造する純水製造装置もしくは、これに接続されるディスペンサ等の採水装置、などを含む純水装置の水取出し口に好適である。
【符号の説明】
【0048】
A〜E 採水用ノズル
1 ノズル端部
2 最先端部
3 ノズル本体
2a,2b 外形線
3a ノズル本体の内側部
4 第一水路
5 スリット状切れ目
6 第二水路
7 円状くりぬき部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7