(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択される少なくとも一種のハロゲン元素を含有する不純物を含むホスト材料を、第2族元素の酸化物及び第2族元素の炭酸塩からなる群より選択されるアルカリ性無機吸着材料、並びに、非アルカリ性無機吸着材料と混合して昇華精製する工程を含む、有機電界発光素子の発光層を形成するホスト材料の昇華精製方法。
前記アルカリ性無機吸着材料の昇華精製時の使用量が、前記ホスト材料に対して0.01〜1質量倍である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のホスト材料の昇華精製方法。
前記非アルカリ性無機吸着材料の昇華精製時の使用量が、前記ホスト材料に対して0.01〜1質量倍である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホスト材料の昇華精製方法。
昇華精製時の前記アルカリ性無機吸着材料と前記非アルカリ性無機吸着材料の使用比率が、アルカリ性無機吸着材料:非アルカリ性無機吸着材料の質量比で1:0.1〜0.1:1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のホスト材料の昇華精製方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0011】
本発明において、置換基群A、置換基群Bを下記のように定義する。
(置換基群A)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントリルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミダゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)、ホスホリル基(例えばジフェニルホスホリル基、ジメチルホスホリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0012】
(置換基群B)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントリルなどが挙げられる。)、シアノ基、ヘテロ環基(芳香族ヘテロ環基も包含し、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、テルル原子であり、具体的にはピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリル、フリル、チエニル、セレノフェニル、テルロフェニル、ピペリジル、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピロリジノ、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基、シロリル基などが挙げられる。)が挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、前記置換基群Aから選択される基を挙げることができる。
【0013】
本発明は、有機電界発光素子の発光層を形成するホスト材料であって、発光層の成膜に供する前の、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択される少なくとも一種のハロゲン元素を含有する不純物を含むホスト材料を、後述の特定のアルカリ性無機吸着材料及び非アルカリ性無機吸着材料と混合して昇華精製することで、不純物として含まれていたハロゲン元素がたった一回の昇華精製により大幅に除去できることを見出したものである。本発明の昇華精製方法でホスト材料を精製することで、昇華精製の回数を従来法より削減することができるため、工程が簡便になり、また歩留まりが大幅に向上する。
通常、ホスト材料の合成にはハロゲン元素含有化合物が使用され、合成されたホスト材料には素子の耐久性に悪影響を与えうる量のハロゲン不純物が含まれるのが一般的である。従って、合成されたホスト材料は精製工程を経るのが一般的であり、種々の精製方法の中でも不純物の除去能が高いことから昇華精製を行うのが望ましいとされていた。しかしながら、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素及びヨウ素の中でも従来の昇華精製方法では塩素は比較的除去されにくかった。本発明者の検討によれば、フッ素及び塩素の存在は、素子の耐久性に大きな悪影響を与えるが、本発明の昇華精製方法によれば、ハロゲン原子の中でもフッ素及び塩素が他のハロゲン元素と比べより効率的に除去されやすく、たった一回の昇華精製回数でも高い効果を得ることができる。
以下に、本発明のホスト材料の昇華精製方法について詳細に説明する。
【0014】
〔ホスト材料の昇華精製方法〕
本発明のホスト材料の昇華精製方法は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より選択される少なくとも一種のハロゲン元素を含有する不純物を含むホスト材料を、第2族元素の酸化物及び第2族元素の炭酸塩からなる群より選択されるアルカリ性無機吸着材料、並びに、非アルカリ性無機吸着材料と混合して昇華精製する工程を含む。本発明の昇華精製方法に供するホスト材料は、有機電界発光素子の発光層を形成するホスト材料である。
ホスト材料の昇華精製において、上述の特定のアルカリ性無機吸着材料と非アルカリ性無機吸着材料との2種類の吸着材料を組み合わせて使用することにより、本発明の効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推定される。ホスト材料中に含まれるハロゲンはイオンの形で存在するものと、ハロゲン化有機化合物の形で存在すものがあると考えられる。第2族元素のアルカリ性無機吸着材料はイオンのハロゲンXと結びつきやすく、例えばCaOならCaX
2のような塩となって吸着されることが考えられる。また、ハロゲン化有機化合物は直接非アルカリ性無機吸着材料に吸着される。更に、ハロゲン化有機化合物が非アルカリ性無機吸着材料に吸着されても一部イオン化してイオンの形でのコンタミネーションになったり、塩となっても有機化合物と反応してハロゲン化有機化合物となってしまったりしていたものが、上述の特定のアルカリ性無機吸着材料と非アルカリ性無機吸着材料とにより相補的に吸着されてコンタミネーション量が減少したためと推定される。
【0015】
本発明におけるアルカリ性無機吸着材料は、周期表の第2族に属する典型元素の酸化物及び炭酸塩から選ばれる。アルカリ性無機吸着材料は一種類の材料のみからなっていてもよいし、二種類以上の材料を組み合わせてなるものであってもよい。
周期表の第2族に属する典型元素の酸化物は、通常MOで表されるアルカリ性無機吸着材料であり、周期表の第2族に属する典型元素の炭酸塩は、通常MCO
3で表されるアルカリ性無機吸着材料である。ここで、Mは周期表の第2族に属するBe(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)又はRa(ラジウム)である。これらの中でも、ハロゲンとの反応性や反応後の安定性の観点から、Mg、Ca、Sr、Baが好ましく、より好ましくはMg、Caであり、最も好ましくはCaである。
また上記酸化物は昇華精製における加熱時に何の分解反応も起こさないが、上記炭酸化物は昇華精製における加熱時に二酸化炭素(CO
2)を発生すると考えられ、これにより昇華装置内部の圧力が上昇し、ホスト材料を昇華させるためにより高温条件が必要となってくる。従って、素子の性能に差が生じるわけではないが、昇華精製がより簡便であるという理由では、本発明のアルカリ性無機吸着材料としては上記酸化物がより好ましい。
本発明におけるアルカリ性無機吸着材料としては、MgO、CaO、SrO、BaO、MgCO
3、CaCO
3、SrCO
3、及びBaCO
3からなる群より選択されることがハロゲン不純物の除去能が高いという理由で好ましく、より好ましくはCaO、MgO、BaO、MgCO
3、BaCO
3であり、更に好ましくはCaO、MgO、BaOであり、最も好ましくはCaOである。
【0016】
本発明における非アルカリ性無機吸着材料は、吸着性を有する非アルカリ性の無機材料である限り特に限定されない。ここで、「吸着性を有する」とは、反応して固定化することを意味し、「非アルカリ性」とは、水と反応してアルカリ性となりにくいことを意味し、「無機材料」とは、炭素の同位体やCO・CO
2・CS
2など陰性の元素との炭素化合物、炭酸塩、炭化金属は含むが、炭素で構成される化合物を除いた化合物を意味する
非アルカリ性無機吸着材料としては、ホスト材料を精製する過程で水分が混入することを防ぐ観点から、分子中に水酸基等の極性基を有さない非極性の吸着材料が、水との親和性が低いことから好ましい。一方で、水酸基等の極性基を有する極性の吸着材料も使用可能であり、極性の吸着材料を使用する際には、昇華精製の前に加熱及び/又は減圧処理することで、充分に水分を除去してから使用することが好ましい。
非アルカリ性無機吸着材料は、チタン、水素化チタン、活性炭、活性アルミナ、及びモレキュラシーブスからなる群より選択されることが好ましく、チタン、水素化チタン及び活性炭からなる群より選択されることが吸着後の安定性の観点からより好ましい。
【0017】
昇華精製時に、昇華精製する対象であるホスト材料と、上記アルカリ性無機吸着材料及び非アルカリ性無機吸着材料とは、混合されている状態で昇華精製に供せられる。「混合されている状態」とは材料同士が接している状態を意味し、撹拌等により均質となっているのが好ましい。また混合に供される各材料の粒径は、100μm未満であることが望ましい。
【0018】
アルカリ性無機吸着材料の昇華精製時の使用量は、ホスト材料に対して0.01〜1質量倍であることが好ましく、0.05〜0.5質量倍であることがより好ましく、0.1〜0.2質量倍であることが更に好ましい。
非アルカリ性無機吸着材料の昇華精製時の使用量は、ホスト材料に対して0.01〜1質量倍であることが好ましく、0.05〜0.5質量倍であることがより好ましく、0.1〜0.2質量倍であることが更に好ましい。
昇華精製時のアルカリ性無機吸着材料と非アルカリ性無機吸着材料の使用比率は、アルカリ性無機吸着材料:非アルカリ性無機吸着材料の質量比で、1:0.1〜0.1:1であることが好ましく、1:0.5〜0.5:1であることがより好ましい。
【0019】
本発明によれば、従来の方法よりホスト材料の精製回数を低減することができるが、複数回の精製を行ってもよい。この際、アルカリ性無機吸着材料と非アルカリ性無機吸着材料とを用いない従来の昇華精製と組み合わせて、本発明の昇華精製を行ってもよい。従来の昇華精製と本発明の昇華精製とを併用する場合、順序は特に限定されないが、最後の昇華精製が本発明の昇華精製であることが効率よく不純物を除去できるので好ましい。
昇華精製の回数は、本発明の昇華精製と従来の昇華精製とを併用する場合には従来の昇華精製との合計で、2回以下であることが好ましく、1回のみ(即ち本発明の昇華精製のみ)であることが、収率及び工程の省力化の面で好ましい。また、従来の昇華精製を1回行った後に本発明の昇華精製を1回行うことも、更に高純度のホスト材料が効率よく得られるので好ましい。
【0020】
昇華精製の方法は、上述のアルカリ性無機吸着材料と非アルカリ性無機吸着材料とを使用する限り特に制限されず、一般的な方法を用いることができる。例えば、加熱部に昇華精製する試料(ホスト材料)を置き、試料を加熱することにより昇華させ、昇華した試料を凝結させて回収する。ここで、加熱部は、最初に純粋な試料が昇華する温度より低い温度、例えば純粋なホスト材料の昇華温度より通常100℃以上、好ましくは10℃以上低い温度とし、通常60秒以上、好ましくは10分間保持する。これにより、不純物だけが昇華するようにし、不純物を除去することが好ましい。次に、純粋なホスト材料の昇華温度に近い温度、具体的には、ホスト材料の昇華温度より通常+5℃以内、好ましくは+1℃以内の温度とすることで、高い分離能の昇華精製を行うことができる。また、昇華した試料を凝結させる際の温度は、ホスト材料の昇華温度より10℃以上低くすることが好ましく、より好ましくはホスト材料の昇華温度より50℃以上低くすることであり、更に好ましくはホスト材料の昇華温度より100℃以上低くすることである。
昇華精製は減圧下で行われることが好ましく、窒素ガス、希ガス類などの不活性ガスの雰囲気下で行われることも好ましい。
減圧下及び不活性ガスの雰囲気下で行うことで、ホスト材料に酸化等の反応が生じることを防ぐことができる。
昇華精製時の減圧度は、1Pa以下とすることが好ましく、1×10
−2Pa以下であることが更に好ましい。
昇華精製時の酸素濃度は0.1ppm以下であることが好ましく、0.01ppm以下であることがより好ましい。
【0021】
〔ホスト材料〕
本発明は、本発明のホスト材料の昇華精製により精製されたホスト材料にも関する。この昇華精製によって、ホスト材料に含まれる不純物、例えば、ホスト材料の合成に使用された基質や反応試薬、中間体、触媒等が除去される。本発明では、前述のように特に不純物として含まれるハロゲン元素の量を低減することが重要である。ここでハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が比較的混入しやすいので除くことが重要であり、塩素及びフッ素、とりわけフッ素は耐久性に大きく影響するために、特に除くことが好ましい。
本発明の昇華精製を経たホスト材料は、不純物として含まれるフッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各元素の質量濃度の合計が、前記ホスト材料を構成する全元素に対して5ppm以下であることが好ましい。
また、フッ素の元素質量濃度が1ppm未満で、塩素の元素質量濃度が臭素及びヨウ素の各々の元素質量濃度よりも少ないことも好ましい。
また、塩素の元素質量濃度が2ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。
これらのハロゲン原子の元素質量濃度は低いことが好ましく、全く検出されないことが好ましいが、素子の耐久性に大きな影響を与えるフッ素原子及び塩素原子を優先的に除去することで、少ない昇華精製回数でありながら充分な性能を得ることができるため、好ましい。
【0022】
ハロゲン元素の定量的分析には、元素分析、ガスクロマトグラフィー分析、HPLC分析、マス(質量)分析を行なう方法があるが、元素分析は感度が低く、また、定量するには値の振れが大きく望ましくない。また、ガスクロマトグラフィーについては揮発性の高い低分子量化合物については有効な分析手段であるが、高沸点化合物については好ましくない。HPLC分析については、ハロゲンイオンについてはイオンクロマトグラフィーで分析でき、あらかじめ保持時間が判明しているものではハロゲン元素をそれぞれ定量的に分析することができる。しかしながら、HPLCでの不純物定量分析では、約100ppmの濃度分析が限界であり、%純度でいえば小数点2桁までが限界(純度99.9X%まで)である。
【0023】
これらの検出限界の問題を解決する方法の一つとして、燃焼‐イオンクロマトグラフ法と呼ばれる方法が挙げられる。この方法では、固体試料1〜100mgを加熱し、生成したガスを電気炉で完全燃焼してその吸収液をイオンクロマトグラフィーで測定することにより、ハロゲン元素をそれぞれ定量的に分析することができる。市販の装置としては、三菱化学アナリティック製AQF−100型が使用できる。この分析手法により、試料中のハロゲン元素濃度は1ppmまで測定が可能である。
【0024】
本発明の昇華精製方法に供されるホスト材料は特に限定されず、従来公知のホスト材料が適用可能である。ホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料であっても、電子輸送性ホスト材料であってもよいが、正孔輸送性ホスト材料を好ましく用いることができる。
本発明に用いられるホスト材料として、以下の化合物が挙げられる。例えば、ピロール、インドール、カルバゾール(例えばCBP(4,4’−ジ(9−カルバゾイル)ビフェニル))、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ジベンゾチオフェン(例えば3,3’−ジ(4−ジベンゾチオフェン)ビフェニル))、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレン、ペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体及びそれらの誘導体(置換基や縮環を有していてもよい)、トリフェニレン誘導体等の芳香族炭化水素化合物等を挙げることができる。
本発明の作製方法においては、ホスト材料として、後述しているようなカルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体及びトリフェニレン誘導体が好ましく、ジベンゾチオフェン誘導体及びトリフェニレン誘導体がより好ましい。
【0025】
本発明における発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起エネルギー(T
1エネルギー)が、後述する燐光発光材料のT
1エネルギーより高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0026】
また、本発明の発光層におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0027】
本発明においては、ホスト材料として、カルバゾール誘導体又はジベンゾチオフェン誘導体である一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0028】
一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物は発光層中に30〜99質量%含まれることが好ましく、40〜97質量%含まれることがより好ましく、50〜95質量%含まれることが特に好ましい。また、一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物を、複数の有機層に用いる場合はそれぞれの層において、70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0029】
前記ホスト材料は下記一般式(4−1)又は(4−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0031】
(一般式(4−1)及び(4−2)中、d、eは0〜3の整数を表し、少なくとも一方は1以上である。fは1〜4の整数を表す。R
8は置換基を表し、R
8は複数存在する場合、R
8は互いに異なっていても同じでも良い。また、R
8の少なくとも1つは下記一般式(5)で表されるカルバゾリル基又はジベンゾチオフェニル基を表す。)
【0033】
(一般式(5)中、R
9はそれぞれ独立に置換基を表す。Xは窒素原子又は硫黄原子を表す。gは0〜8の整数を表す。*は一般式(4−1)又は(4−2)におけるベンゼン環との結合位置を表す。)
【0034】
R
8はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、又は一般式(5)で表される置換基である。R
8が一般式(5)を表さない場合、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
【0035】
R
9はそれぞれ独立に置換基を表し、具体的にはハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であり、好ましくは炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下の置換又は無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6以下のアルキル基である。
gは0〜8の整数を表し、電荷輸送を担うカルバゾール骨格又はジベンゾチオフェン骨格を遮蔽しすぎない観点から0〜4が好ましい。また、合成容易さの観点から、カルバゾール骨格又はジベンゾチオフェン骨格が置換基を有する場合、窒素原子又は硫黄原子に対し、対称になるように置換基を持つものが好ましい。
*は一般式(4−1)又は(4−2)におけるベンゼン環との結合位置を表す。Xが窒素原子の時、カルバゾリル基は9位(すなわち、窒素原子)でベンゼン環と結合していることが好ましく、Xが硫黄原子の時、ジベンゾチオフェニル基は1位でベンゼン環と結合していることが好ましい。
【0036】
一般式(4−1)において、電荷輸送能を保持する観点で、dとeの和は2以上である事が好ましい。また、他方のベンゼン環に対しR
8がメタで置換することが好ましい。その理由として、オルト置換では隣り合う置換基の立体障害が大きいため結合が開裂しやすく、耐久性が低くなる。また、パラ置換では分子形状が剛直な棒状へと近づき、結晶化しやすくなるため高温条件での素子劣化が起こりやすくなる。具体的には以下の構造で表される化合物である事が好ましい。
【0038】
上記式において、R
8は一般式(4−1)におけるR
8と同義であり、h及びiはそれぞれ独立に、0又は1であり、0が好ましい。
R
9はそれぞれ独立に置換基を表す。Xは窒素原子又は硫黄原子を表す。gは0〜8の整数を表す。
R
9及びgの好ましい範囲は上述の一般式(5)におけるものと同様である。
Xが窒素原子の時、カルバゾリル基は9位(すなわち、窒素原子)でベンゼン環と結合していることが好ましく、Xが硫黄原子の時、ジベンゾチオフェニル基は1位でベンゼン環と結合していることが好ましい。
【0039】
一般式(4−2)において、電荷輸送能を保持する観点で、fは2以上である事が好ましい。fが2又は3の場合、同様の観点からR
8が互いにメタで置換することが好ましい。具体的には以下の構造で表される化合物である事が好ましい。
【0041】
上記式においてR
9はそれぞれ独立に置換基を表す。Xは窒素原子又は硫黄原子を表す。gは0〜8の整数を表す。
R
9及びgの好ましい範囲は上述の一般式(5)におけるものと同様である。
Xが窒素原子の時、カルバゾリル基は9位(すなわち、窒素原子)でベンゼン環と結合していることが好ましく、Xが硫黄原子の時、ジベンゾチオフェニル基は1位でベンゼン環と結合していることが好ましい。
【0042】
一般式(4−1)及び(4−2)が水素原子を有する場合、水素の同位体(重水素原子等)も含む。この場合化合物中の全ての水素原子が水素同位体に置き換わっていてもよく、また一部が水素同位体を含む化合物である混合物でもよい。好ましくは一般式(5)におけるR
9が重水素によって置換されたものであり、特に好ましくは以下の構造が挙げられる。
【0044】
更に置換基を構成する原子は、その同位体も含んでいることを表す。
【0045】
一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、種々の公知の合成法を組み合わせて合成することが可能である。
最も一般的には、カルバゾール誘導体に関してはアリールヒドラジンとシクロヘキサン誘導体との縮合体のアザーコープ転位反応の後、脱水素芳香族化による合成(L.F.Tieze,Th.Eicher著、高野、小笠原訳、精密有機合成、339頁(南江堂刊))が挙げられる。また、得られたカルバゾール誘導体とハロゲン化アリール化合物のパラジウム触媒を用いるカップリング反応に関してはテトラヘドロン・レターズ39巻617頁(1998年)、同39巻2367頁(1998年)及び同40巻6393頁(1999年)等に記載の方法が挙げられる。反応温度、反応時間については特に限定されることはなく、前記文献に記載の条件が適用できる。また、mCPなどのいくつかの化合物は市販されているものを好適に用いる事ができる。
ジベンゾチオフェン誘導体は、ビフェニルと二塩化硫黄を塩化アルミニウム存在下で反応させて得られたジベンゾチオフェンとハロゲン化アリール化合物から、パラジウム触媒を用いるカップリング反応で得ることができる。
【0046】
本発明の一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物は、真空蒸着プロセスで薄層を形成することが好ましいが、溶液塗布などのウェットプロセスも好適に用いることが出来る。化合物の分子量は、蒸着適性や溶解性の観点から2000以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、800以下であることが特に好ましい。
また蒸着適性の観点では、分子量が小さすぎると蒸気圧が小さくなり、気相から固相への変化がおきず、有機層を形成することが困難となるので、250以上が好ましく、300以上が特に好ましい。
【0047】
一般式(4−1)及び(4−2)は、以下に示す構造若しくはその水素原子が1つ以上重水素原子で置換された化合物であることが好ましい。
【0049】
上記式においてR
8及びR
9はそれぞれ独立に置換基を表す。
【0050】
以下に、本発明における一般式(4−1)及び(4−2)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
また、ホスト材料として、トリフェニレン誘導体も好ましく、下記一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体(以下単に「トリフェニレン誘導体」と称する場合がある)が好ましい。
一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体は炭素原子と水素原子のみからなり、化学的安定性の点で優れるため、駆動耐久性が高く、高輝度駆動時の各種変化がおきにくいという効果を奏する。
【0060】
一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体は、分子量が400〜1200の範囲であることが好ましく、より好ましくは400〜1000であり、更に好ましくは400〜800である。分子量が400以上であれば良質なアモルファス薄膜が形成でき、分子量が1200以下であると溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正の面で好ましい。
【0061】
一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体はその用途が限定されることはなく、発光層だけでなく有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0063】
(一般式(Tp−1)において、R
12〜R
23はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は、シアノ基、アルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基であるか、又は、これらを組み合わせてなる基を表す。ただし、R
12〜R
23が全て水素原子になることはない。)
【0064】
R
12〜R
23が表すアルキル基としては、置換基若しくは無置換の、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又はtert−ブチル基である。
【0065】
R
12〜R
23として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基であることが更に好ましい。
フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基(これらは更にアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、ベンゼン環であることが特に好ましい。
【0066】
一般式(Tp−1)におけるアリール環の総数は2〜8個であることが好ましく、3〜5個であることが好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0067】
R
12〜R
23は、それぞれ独立に、総炭素数が20〜50であることが好ましく、総炭素数が20〜36であることがより好ましい。この範囲とすることで、良質なアモルファス薄膜が形成でき、溶媒への溶解性や昇華及び蒸着適正が良好になる。
【0068】
本発明の一の態様において、前記一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体は下記一般式(Tp−2)で表されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0070】
(一般式(Tp−2)中、複数のAr
1は同一であり、シアノ基、アルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。)
【0071】
Ar
1が表すアルキル基及びアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R
12〜R
23で挙げたものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0072】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体は、下記一般式(Tp−3)で表されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0074】
(一般式(Tp−3)中、Lは、シアノ基、アルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、若しくはトリフェニレニル基で置換されていてもよいフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基を表す。nは1〜6の整数を表す。)
【0075】
Lが表すn価の連結基を形成するアルキル基、フェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、又はトリフェニレニル基としては、R
12〜R
23で挙げたものと同義である。
Lとして好ましくは、アルキル基若しくはベンゼン環で置換されていてもよいベンゼン環、フルオレン環、又はこれらを組み合わせて成るn価の連結基である。
以下にLの好ましい具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。なお具体例中*でトリフェニレン環と結合する。
【0077】
nは1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
【0078】
本発明の他の態様において、前記一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体は、下記一般式(Tp−4)で表されるトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
【0080】
(一般式(Tp−4)において、複数存在する場合のAr
2は同一であり、Ar
2はシアノ基、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、又はこれらを組み合わせてなる基を表す。p、及びqはそれぞれ独立に0又は1を表すが、pとqが同時に0になることはない。p、及びqが0を表す場合、Ar
2は水素原子を表す。)
【0081】
Ar
2として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基であり、より好ましくは、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリフェニレニル基を組み合わせてなる基である。
Ar
2は、メタ位が炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリフェニレニル基、又はこれらを組み合わせてなる基で置換されたベンゼン環であることが特に好ましい。
【0082】
本発明にかかるトリフェニレン誘導体を有機電界発光素子の発光層のホスト材料や発光層に隣接する層の電荷輸送材料として使用する場合、発光材料より薄膜状態でのエネルギーギャップ(発光材料が燐光発光材料の場合には、薄膜状態での最低励起三重項(T
1)エネルギー)が大きいと、発光がクエンチしてしまうことを防ぎ、効率向上に有利である。一方、化合物の化学的安定性の観点からは、エネルギーギャップ及びT
1エネルギーは大き過ぎない方が好ましい。一般式(Tp−1)で表されるトリフェニレン誘導体の膜状態でのT
1エネルギーは、52kcal/mol以上80kcal/mol以下であることが好ましく、55kcal/mol以上68kcal/mol)以下であることがより好ましく、58kcal/mol以上63kcal/mol以下であることが更に好ましい。特に、発光材料として燐光発光材料を用いる場合には、T
1エネルギーが上記範囲となることが好ましい。
【0083】
T
1エネルギーは、材料の薄膜の燐光発光スペクトルを測定し、その短波長端から求めることができる。例えば、洗浄した石英ガラス基板上に、材料を真空蒸着法により約50nmの膜厚に成膜し、薄膜の燐光発光スペクトルを液体窒素温度下でF−7000日立分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定する。得られた発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長をエネルギー単位に換算することによりT
1エネルギーを求めることができる。
【0084】
以下に、本発明にかかるトリフェニレン誘導体の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
上記本発明にかかる芳香族炭化水素化合物として例示した化合物は、国際公開第05/013388号パンフレット、国際公開第06/130598号パンフレット、国際公開第09/021107号パンフレットに記載の方法で合成できる。
合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0090】
なお、トリフェニレン誘導体は、発光層以外にも、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層に含有されることがより好ましいが、その用途が限定されることはなく、有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。本発明にかかるトリフェニレン誘導体の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層のいずれか、若しくは複数に含有することができる。
トリフェニレン誘導体が含有される、発光層と陰極の間の発光層に隣接する有機層は電荷ブロック層又は電子輸送層であることが好ましく、電荷ブロック層であることがより好ましい。
トリフェニレン誘導体を発光層に隣接する層に含有することで、素子の効率と耐久性が向上する。発光層が励起されると励起子が発光層と隣接層の界面に偏り、隣接層を破壊する現象が起こるが、トリフェニレン誘導体は耐久性の高い構造を有しているため、励起子により破壊されにくいため、上記のような効果が得られると考えられる。
【0091】
トリフェニレン誘導体は合成容易さの観点から炭素原子と水素原子のみからなることが好ましい。
トリフェニレン誘導体を発光層以外の層に含有させる場合は、70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。トリフェニレン誘導体を発光層に含有させる場合は、発光層の全質量に対して0.1〜99質量%含ませることが好ましく、1〜95質量%含ませることがより好ましく、10〜95質量%含ませることが更に好ましい。
【0092】
有機電界発光素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、本発明にかかるトリフェニレン誘導体のガラス転移温度(Tg)は60℃以上400℃以下であることが好ましく、65℃以上300℃以下であることがより好ましく、80℃以上180℃以下であることが更に好ましい。
【0093】
〔有機電界発光素子〕
以下、本発明の有機電界発光素子について説明する。
本発明は、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、前記発光層が本発明のホスト材料の昇華精製方法により精製されたホスト材料を含有する有機電界発光素子を提供する。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
【0094】
<有機電界発光素子の層構成>
有機電界発光素子が有する有機層の構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記陽極上に又は前記陰極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記陽極又は前記陰極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0095】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0096】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0097】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0098】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0099】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0100】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0101】
−有機層の形成−
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法、インクジェット法、スプレー法等の溶液塗布プロセスによっても好適に形成することができる。液塗布プロセスを使用することで、生産性の向上、有機EL素子の大面積化などにつながることが考えられる。
【0102】
乾式法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。
これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してもよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0103】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。
【0104】
有機電界発光素子用材料を塗布液として用いる場合、塗布液中の含有量は、全固形分を基準として、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜40質量%、更に好ましくは0.3〜30質量%である。粘度は、一般的には1〜30mPa・s、より好ましくは1.5〜20mPa・s、更に好ましくは1.5〜15mPa・sである。
【0105】
塗布液は、有機電界発光素子用材料を所定の有機溶媒に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体又は層上に塗布して用いることが好ましい。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下のポリテトラフロロエチレン(PTFE)製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。
【0106】
溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等の公知の有機溶媒を挙げることができる。
【0107】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、クメンエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、等が挙げられ、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼンがより好ましい。芳香族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、3以下である。
【0108】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールがより好ましい。アルコール系溶媒の比誘電率は通常、10〜40である。
【0109】
ケトン系溶媒としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネートが好ましい。ケトン系溶媒の比誘電率は通常、10〜90である。
【0110】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等が挙げられ、オクタン、デカンが好ましい。脂肪族炭化水素系溶媒の比誘電率は通常、1.5〜2.0である。
【0111】
アミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチル正孔ムアミド、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。アミド系溶媒の比誘電率は通常、30〜40である。
【0112】
上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0113】
また、芳香族炭化水素系溶媒(以下、“第一の溶媒”ともいう)と、第一の溶媒より比誘電率の高い第二の溶媒とを混合して使用してもよい。
第二の溶媒としては、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒を使用することが好ましく、アルコール系溶媒を使用することがより好ましい。
第一の溶媒と第二の溶媒との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜70/30である。第一の溶媒を60質量%以上含有する混合溶媒が好ましい。
【0114】
有機層形成用塗布液に、重合性基を有する化合物を含有し、該重合性基を有する化合物の重合反応により有機層を形成するポリマーを形成する場合には、有機膜の塗布後、加熱又は光照射することにより、重合反応が進行し、ポリマーを形成することができる。
塗布後の加熱温度及び時間は、重合反応が進行する限り特に限定されないが、加熱温度は一般的に100℃〜200℃であり、好ましくは120℃〜160℃がより好ましい。加熱時間は一般的に1分〜120分であり、1分〜60分が好ましく、より好ましくは1分〜30分である。
【0115】
また、UV照射による重合反応、白金触媒による重合反応、塩化鉄などの鉄触媒による重合反応等が挙げられる。これら重合方法は、加熱による重合方法と併用してもよい。
【0116】
(発光層)
本発明に係る発光層は、本発明のホスト材料の昇華精製方法により精製されたホスト材料を含有する。本発明に係る発光層は更に、発光材料を含有することが好ましく、本発明の効果がより奏されることから、燐光発光材料を含有することがより好ましい。これは、発光過程の始状態と終状態のスピン多重度が同じものが蛍光で、そうでないものが燐光だが、燐光のスピン多重度が異なる遷移は禁制のため励起状態の時間が長くなり、燐光発光材料とコンタミネーションが反応し易くなるため、燐光発光材料を用いる場合は特に発光材料と混ざるホスト材料のコンタミネーションを除去する必要があるためである。
以下、発光材料について説明する。
【0117】
<発光材料>
本発明における発光層が含有してもよい発光材料は、特に限定されず、例えば、蛍光発光材料、燐光発光材料などが挙げられるが、燐光発光材料が好ましい。
【0118】
(蛍光発光材料)
蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の錯体やピロメテン誘導体の錯体に代表される各種錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体、ピレン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0119】
(燐光発光材料)
燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい発光性材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、及びCe錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が好ましい。更に、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0120】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、0.1nm〜100nmであるのが好ましく、中でも、外部量子効率の観点で、1nm〜50nmであるのがより好ましく、20nm〜40nmであるのが更に好ましい。
【0121】
本発明の素子における発光層は、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成が好ましい。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは一種であっても二種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は一種であっても二種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられるが、少なくとも一種は本発明に係るホスト材料である。
更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は一層であっても二層以上の多層であってもよい。また、それぞれの発光層が異なる発光色で発光してもよい。
本発明の素子における発光層が、ホスト材料と発光材料とを含有する場合、発光層におけるホスト材料の含有量は、15〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましく、50〜95質量%であることが更に好ましい。また発光層における発光材料の含有量は、0.1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
【0122】
また、本発明における発光層が含有する発光材料としては、以下に述べるような、イリジウム錯体が好ましい。
発光層中のイリジウム錯体は、発光層を形成する全化合物の質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることがより好ましく、2質量%〜40質量%含有されることが更に好ましい。
【0123】
[イリジウム錯体]
イリジウム錯体としては、以下に示す一般式(E−1)で表されるイリジウム錯体を用いることが好ましい。
【0126】
一般式(E−1)中、Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。
A
1はZ
1と窒素原子と共に5又は6員のヘテロ環を形成する原子群を表す。
B
1はZ
2と炭素原子と共に5又は6員環を形成する原子群を表す。
(X−Y)はモノアニオン性の二座配位子を表す。
n
E1は1〜3の整数を表す。
【0127】
n
E1は1〜3の整数を表し、好ましくは2又は3である。
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に、炭素原子又は窒素原子を表す。Z
1及びZ
2として好ましくは炭素原子である。
【0128】
A
1はZ
1と窒素原子と共に5又は6員のヘテロ環を形成する原子群を表す。A
1、Z
1及び窒素原子を含む5又は6員のヘテロ環としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環などが挙げられる。
錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点から、A
1、Z
1及び窒素原子で形成される5又は6員のヘテロ環として好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環であり、より好ましくはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環であり、更に好ましくはピリジン環、イミダゾール環であり、最も好ましくはピリジン環である。
【0129】
前記A
1、Z
1及び窒素原子で形成される5又は6員のヘテロ環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、フッ素原子である。
【0130】
置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、短波長化させる場合には電子供与性基、フッ素原子、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、フッ素原子、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また長波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばシアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。
【0131】
窒素上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。
前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。これら形成される環は置換基を有していてもよく、置換基としては前述の炭素原子上の置換基、窒素原子上の置換基が挙げられる。
【0132】
B
1はZ
2と炭素原子を含む5又は6員環を表す。B
1、Z
2及び炭素原子で形成される5又は6員環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。
錯体の安定性、発光波長制御及び発光量子収率の観点からB
1、Z
2及び炭素原子で形成される5又は6員環として好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ピリジン環、ピラゾール環であり、更に好ましくはベンゼン環、ピリジン環である。
【0133】
前記B
1、Z
2及び炭素原子で形成される5又は6員環は置換基を有していてもよく、炭素原子上の置換基としては前記置換基群Aが、窒素原子上の置換基としては前記置換基群Bが適用できる。炭素上の置換基として好ましくはアルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、シアノ基、フッ素原子である。
【0134】
置換基は発光波長や電位の制御のために適宜選択されるが、長波長化させる場合には電子供与性基、芳香環基が好ましく、例えばアルキル基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基、芳香族ヘテロ環基などが選択される。また短波長化させる場合には電子求引性基が好ましく、例えばフッ素原子、シアノ基、ペルフルオロアルキル基などが選択される。
【0135】
窒素上の置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基であり、錯体の安定性の観点からアルキル基、アリール基が好ましい。前記置換基同士は連結して縮合環を形成していてもよく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、フラン環などが挙げられる。これら形成される環は置換基を有していてもよく、置換基としては前述の炭素原子上の置換基、窒素原子上の置換基が挙げられる。
また前記A
1、Z
1及び窒素原子で形成される5又は6員のヘテロ環の置換基と、前記B
1、Z
2及び炭素原子で形成される5又は6員環の置換基とが連結して、前述と同様の縮合環を形成していてもよい。
【0136】
(X−Y)で表される配位子としては、従来公知の金属錯体に用いられる種々の公知の配位子があるが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社 山本明夫著 1982年発行等に記載の配位子(例えば、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロアリール配位子(例えば、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)が挙げられる。(X−Y)で表される配位子として好ましくは、ジケトン類あるいはピコリン酸誘導体であり、錯体の安定性と高い発光効率が得られる観点から以下に示されるアセチルアセトネート(acac)であることが最も好ましい。
【0138】
*はイリジウムへの配位位置を表す。
(X−Y)で表される配位子としては下記一般式(l−1)〜(l−15)が好ましいが、本発明はこれらに限定されない。
【0141】
*は一般式(E−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。Rx、Ry及びRzはそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
【0142】
Rx、Ry及びRzが置換基を表す場合、該置換基としては前記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。好ましくは、Rx、Rzはそれぞれ独立にアルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基、フッ素原子、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、フェニル基である。Ryは好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、アリール基のいずれかであり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、置換されていても良いフェニル基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基のいずれかである。これら配位子は素子中で電荷を輸送したり励起によって電子が集中する部位ではないと考えられるため、Rx、Ry、Rzは化学的に安定な置換基であれば良く、本発明の効果にも影響を及ぼさない。
【0143】
一般式(I−15)におけるR
I1〜R
I4は、各々独立に、水素原子又は置換基群Aから選ばれる置換基を表し、BはCR又は窒素原子を表す。Rは水素原子、置換基群Aから選ばれる置換基を表す。R
I5〜R
I7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO
2R’、−C(O)R’、−NR’
2、−NO
2、−OR’、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Aを有していてもよい。R’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。*は一般式(E−1)におけるイリジウムへの配位位置を表す。
R
I1、R
I5、R
I6、R
I7は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)
2、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)
2、−CN、−NO
2、−SO
2、−SOR”、−SO
2R”、又は−SO
3R”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
R
I1〜R
I7の好ましい範囲は、後述の一般式(E−3)におけるR
T1〜R
T7の好ましい範囲と同様である。Bとして好ましくはCRであり、Rとして好ましくは水素原子、アリール基であり、より好ましくは水素原子、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等)であり、特に好ましくは水素原子、フェニル基である。
【0144】
(X−Y)としてより好ましくは(I−1)、(I−4)、(I−15)であり、特に好ましくは(I−1)、(I−15)である。これらの配位子を有する錯体は、対応する配位子前駆体を用いることで公知の合成例と同様に合成できる。例えば国際公開2009−073245号46ページに記載の方法と同様に、市販のジフルオロアセチルアセトンを用いて以下に示す方法で合成する事ができる。
【0145】
一般式(E−1)で表されるIr錯体の好ましい態様は、一般式(E−2)で表されるIr錯体である。
【0147】
一般式(E−2)中、A
E1〜A
E8はそれぞれ独立に、窒素原子又はC−R
Eを表す。
R
Eは水素原子又は置換基を表す。
(X−Y)はモノアニオン性の二座配位子を表す。
n
E2は1〜3の整数を表す。
【0148】
A
E1〜A
E8はそれぞれ独立に、窒素原子又はC−R
Eを表す。R
Eは水素原子又は置換基を表し、R
E同士が互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては、前述の一般式(E−1)において述べた縮合環と同様のものが挙げられる。R
Eで表される置換基としては、前記置換基群Aとして挙げたものが適用できる。
A
E1〜A
E4として好ましくはC−R
Eであり、A
E1〜A
E4がC−R
Eである場合に、A
E3のR
Eとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はフッ素原子であり、特に好ましく水素原子、又はフッ素原子であり、A
E1、A
E2及びA
E4のR
Eとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、フッ素原子、又はシアノ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、又はフッ素原子であり、特に好ましく水素原子である。
【0149】
A
E5〜A
E8として好ましくはC−R
Eであり、A
E5〜A
E8がC−R
Eである場合に、R
Eとして好ましくは水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルオキシ基、シアノ基、又はフッ素原子であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、アリール基、ジアルキルアミノ基、シアノ基、又はフッ素原子であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、トリフルオロメチル基、又はフッ素原子である。また可能な場合は置換基同士が連結して縮環構造を形成してもよい。発光波長を短波長側にシフトさせる場合、A
E6が窒素原子であることが好ましい。
(X−Y)、及びn
E2は一般式(E−1)における(X−Y)、及びn
E1と同義であり好ましい範囲も同様である。
【0150】
前記一般式(E−2)で表される化合物のより好ましい形態は、下記一般式(E−3)で表される化合物である。
【0152】
一般式(E−3)中、R
T1、R
T2、R
T3、R
T4、R
T5、R
T6及びR
T7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO
2R’’’、−C(O)R’’’、−NR’’’
2、−NO
2、−OR’’’、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。R’’’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
AはCR’’’’又は窒素原子を表し、R’’’’は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、−CN、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO
2R’’’’’、−C(O)R’’’’’、−NR’’’’’
2、−NO
2、−OR’’’’’、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。R’’’’’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
R
T1〜R
T7、及びR’’’’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。これらのうち、R
T1とR
T7、又はR
T5とR
T6で縮環してベンゼン環を形成する場合が好ましく、R
T5とR
T6で縮環してベンゼン環を形成する場合が特に好ましい。
置換基Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)
2、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)
2、−CN、−NO
2、−SO
2、−SOR”、−SO
2R”、又は−SO
3R”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
(X−Y)は、モノアニオン性の二座配位子を表す。n
E3は1〜3の整数を表す。
【0153】
R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、シクロヘキシル基、t−ブチル基等が挙げられ、メチル基が特に好ましい。
R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるシクロアルキル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基Zを挙げることができる。R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるシクロアルキル基として、好ましくは環員数4〜7のシクロアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるアルケニル基としては好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、1−プロペニル、1−イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。
R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるアルキニル基としては、好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばエチニル、プロパルギル、1−プロピニル、3−ペンチニルなどが挙げられる。
【0154】
R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるペルフルオロアルキル基は、前述のアルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられたものが挙げられる。
【0155】
R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0156】
R
T1〜R
T7、及びR’’’’で表されるヘテロアリール基としては、好ましくは、炭素数5〜8のヘテロアリール基であり、より好ましくは、5又は6員の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、ピロリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンズオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンズイソオキサゾリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、イミダゾリジニル基、チアゾリニル基、スルホラニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、7ピリドインドリル基などが挙げられる。好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、チエニル基であり、より好ましくは、ピリジル基、ピリミジニル基である。
【0157】
R
T1〜R
T7、及びR’’’’として好ましくは、水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ペルフルオロアルキル基、ジアルキルアミノ基、フッ素原子、アリール基、ヘテロアリール基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、アリール基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。置換基Zとしては、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子、シアノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0158】
R
T1〜R
T7、及びR’’’’は任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。形成されるシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールの定義及び好ましい範囲はR
T1〜R
T7、及びR’’’’で定義したシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基と同じである。
【0159】
n
E3は2又は3であることが好ましい。錯体中の配位子の種類は1〜2種類から構成されることが好ましい。
(X−Y)は、一般式(E−1)における(X−Y)と同義であり好ましい範囲も同様である。
【0160】
前記一般式(E−3)で表される化合物の好ましい形態の一つは、下記一般式(E−4)で表される化合物である。
【0162】
一般式(E−4)におけるR
T1〜R
T4、A、(X−Y)及びn
E4は、一般式(E−3)におけるR
T1〜R
T4、A、(X−Y)及びn
E3と同義であり、好ましい範囲も同様である。R
1’〜R
5’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO
2R’’’’’、−C(O)R’’’’’、−NR’’’’’
2、−NO
2、−OR’’’’’、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。R’’’’’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
R
1’〜R
5’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)
2、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)
2、−CN、−NO
2、−SO
2、−SOR”、−SO
2R”、又は−SO
3R”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
また、R
1’〜R
5’における好ましい範囲は、一般式(E−3)におけるR
T1〜R
T7、R’’’’と同様である。またAがCR’’’’を表すと共に、R
T1〜R
T4、R’’’’、及びR
1’〜R
5’のうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、R
T1〜R
T4、R’’’’、及びR
1’〜R
5’のうち、0〜2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0163】
前記一般式(E−3)で表される化合物の好ましい別の形態は、下記一般式(E−5)で表される化合物である。
【0165】
一般式(E−5)におけるR
T2〜R
T6、A、(X−Y)及びn
E5は、一般式(E−3)におけるR
T2〜R
T6、A、(X−Y)及びn
E3と同義であり、好ましい範囲も同様である。R
6’〜R
8’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロビニル基、−CO
2R’’’’’、−C(O)R’’’’’、−NR’’’’’
2、−NO
2、−OR’’’’’、ハロゲン原子、アリール基又はヘテロアリール基を表し、更に置換基Zを有していてもよい。R’’’’’はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
R
T5、R
T6、R
6’〜R
8’は、任意の2つが互いに結合して縮合4〜7員環を形成してもよく、該縮合4〜7員環は、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、該縮合4〜7員環は更に置換基Zを有していてもよい。
Zはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、−R”、−OR”、−N(R”)
2、−SR”、−C(O)R”、−C(O)OR”、−C(O)N(R”)
2、−CN、−NO
2、−SO
2、−SOR”、−SO
2R”、又は−SO
3R”を表し、R”はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ペルハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
また、R
6’〜R
8’における好ましい範囲は、一般式(E−3)におけるR
T1〜R
T7、R’’’’と同様である。またAがCR’’’’を表すと共に、R
T2〜R
T6、R’’’’、及びR
6’〜R
8’のうち、0〜2つがアルキル基又はフェニル基で残りが全て水素原子である場合が特に好ましく、R
T2〜R
T6、R’’’’、及びR
6’〜R
8’のうち、0〜2つがアルキル基で残りが全て水素原子である場合が更に好ましい。
【0166】
一般式(E−4)又は(E−5)で表される燐光発光材料を用いる場合、一般式(1)で表される化合物は、発光層又は電子輸送層に含有されることが好ましく、発光層に含有されることがより好ましい。
【0167】
一般式(E−1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に列挙するが、以下に限定されるものではない。
【0171】
上記一般式(E−1)で表される化合物として例示した化合物は、特開2009−99783号公報に記載の方法や、米国特許7279232号等に記載の種々の方法で合成できる。合成後、カラムクロマトグラフィー、再結晶等による精製を行った後、昇華精製により精製することが好ましい。昇華精製により、有機不純物を分離できるだけでなく、無機塩や残留溶媒等を効果的に取り除くことができる。
【0172】
一般式(E−1)で表される化合物は、発光層に含有されることが好ましいが、その用途が限定されることはなく、更に有機層内のいずれの層に更に含有されてもよい。
【0173】
(電荷輸送層)
電荷輸送層とは、有機電界発光素子に電圧を印加した際に電荷移動が起こる層をいう。
具体的には正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層又は電子注入層が挙げられる。
なお、塗布法により形成される電荷輸送層が正孔注入層、正孔輸送層、又は電子ブロック層であれば、低コストかつ高効率な有機電界発光素子の製造が可能となる。
【0174】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
本発明に関し、有機層として、電子受容性ドーパントを含有する正孔注入層又は正孔輸送層を含むことが好ましい。
【0175】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
【0176】
正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0165〕〜〔0167〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0177】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリノラート)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。また、発光層のホスト材料をそのまま用いても良い。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0178】
−電子ブロック層−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0179】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0169〕〜〔0170〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0180】
<封止容器>
本発明の素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
封止容器については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0171〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0181】
(駆動)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0182】
本発明の発光素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0183】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であっても良い。
【0184】
本発明における有機EL素子は、共振器構造を有しても良い。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は特開平9−180883号明細書に記載されている。第2の態様の場合の計算式は特開2004−127795号明細書に記載されている。
【0185】
本発明の有機電界発光素子の外部量子効率としては、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。外部量子効率の数値は20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、若しくは、20℃で素子を駆動したときの100〜300cd/m
2付近での外部量子効率の値を用いることができる。
【0186】
本発明の有機電界発光素子の内部量子効率は、30%以上であることが好ましく、50%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましい。素子の内部量子効率は、外部量子効率を光取り出し効率で除して算出される。通常の有機EL素子では光取り出し効率は約20%であるが、基板の形状、電極の形状、有機層の膜厚、無機層の膜厚、有機層の屈折率、無機層の屈折率等を工夫することにより、光取り出し効率を20%以上にすることが可能である。
【0187】
本発明の有機電界発光素子は、350nm以上700nm以下に極大発光波長(発光スペクトルの最大強度波長)を有するものが好ましく、より好ましくは350nm以上600nm以下、更に好ましくは400nm以上520nm以下、特に好ましくは400nm以上470nm以下である。
【0188】
(本発明の発光素子の用途)
本発明の発光素子は、発光装置、ピクセル、表示素子、表示装置、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、照明装置、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、又は光通信等に好適に利用できる。特に、発光装置、照明装置、表示装置等の発光輝度が高い領域で駆動されるデバイスに好ましく用いられる。
【0189】
次に、
図2を参照して本発明の発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、前記有機電界発光素子を用いてなる。
図2は、本発明の発光装置の一例を概略的に示した断面図である。
図2の発光装置20は、透明基板(支持基板)2、有機電界発光素子10、封止容器16等により構成されている。
【0190】
有機電界発光素子10は、基板2上に、陽極(第一電極)3、有機層11、陰極(第二電極)9が順次積層されて構成されている。また、陰極9上には、保護層12が積層されており、更に、保護層12上には接着層14を介して封止容器16が設けられている。なお、各電極3、9の一部、隔壁、絶縁層等は省略されている。
ここで、接着層14としては、エポキシ樹脂等の光硬化型接着剤や熱硬化型接着剤を用いることができ、例えば熱硬化性の接着シートを用いることもできる。
【0191】
本発明の発光装置の用途は特に制限されるものではなく、例えば、照明装置のほか、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電子ペーパ等の表示装置とすることができる。
【0192】
(照明装置)
次に、
図3を参照して本発明の実施形態に係る照明装置について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る照明装置の一例を概略的に示した断面図である。
本発明の実施形態に係る照明装置40は、
図3に示すように、前述した有機EL素子10と、光散乱部材30とを備えている。より具体的には、照明装置40は、有機EL素子10の基板2と光散乱部材30とが接触するように構成されている。
光散乱部材30は、光を散乱できるものであれば特に制限されないが、
図3においては、透明基板31に微粒子32が分散した部材とされている。透明基板31としては、例えば、ガラス基板を好適に挙げることができる。微粒子32としては、透明樹脂微粒子を好適に挙げることができる。ガラス基板及び透明樹脂微粒子としては、いずれも、公知のものを使用できる。このような照明装置40は、有機電界発光素子10からの発光が散乱部材30の光入射面30Aに入射されると、入射光を光散乱部材30により散乱させ、散乱光を光出射面30Bから照明光として出射するものである。
【実施例】
【0193】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0194】
<実施例1>
[ホスト材料の精製例]
(実施例1−1)ホスト材料H−1の精製
ジベンゾチオフェンとハロゲン化ビフェニル化合物から、パラジウム触媒を用いるカップリング反応により、下記構造のホスト材料H−1の粗結晶(以下、「粗1」と表記)を得た。
【0195】
【化35】
【0196】
この粗結晶を以下に記載の昇華精製方法A(比較方法)で精製し、ホスト材料H−1の比較精製結晶(以下、「比昇A1」と表記)を得た。
【0197】
(昇華精製方法A)
ホスト材料H−1の粗結晶650mgを、昇華精製温度260℃、昇華精製圧力1×10
−2Paの条件下で昇華精製した。
【0198】
上記の粗結晶(「粗1」)を、上記の昇華精製方法A(比較方法)で2回精製して得たホスト材料H−1の比較精製結晶(以下、「比昇A2」と表記)、及び上記の昇華精製方法A(比較方法)で4回精製して得たホスト材料H−1の比較精製結晶(以下、「比昇A4」と表記)もそれぞれ得た。
【0199】
上記の粗結晶(「粗1」)を、以下に記載の昇華精製方法B(本発明の方法)で精製し、ホスト材料H−1の精製結晶(以下、「昇B1」と表記)を得た。
【0200】
(昇華精製方法B)
ホスト材料H−1の粗結晶650mgを、酸化カルシウム(CaO)100mg及び水素化チタン(TiH
2)100mgと混合し、昇華精製温度260℃、昇華精製圧力1×10
−2Paの条件下で昇華精製した。
【0201】
上記の粗結晶(「粗1」)を、上記の昇華精製方法A(比較方法)で1回精製した後、更に上記の昇華精製方法B(本発明の方法)で精製し、ホスト材料H−1の精製結晶(以下、「昇A1B1」と表記)を得た。
【0202】
上記の粗結晶(「粗1」)を、上記の昇華精製方法A(比較方法)で1回精製した後、更に以下に記載の昇華精製方法B’(本発明の方法)で精製し、ホスト材料H−1の精製結晶(以下、「昇A1B’1」と表記)を得た。
【0203】
(昇華精製方法B’)
ホスト材料H−1の粗結晶650mgを、酸化マグネシウム(MgO)100mg及び水素化チタン(TiH
2)100mgと混合し、昇華精製温度260℃、昇華精製圧力1×10
−2Paの条件下で昇華精製した。
【0204】
上記の粗結晶(「粗1」)を、以下に記載の昇華精製方法C(比較方法)で精製し、ホスト材料H−1の比較精製結晶(以下、「比昇C1」と表記)を得た。
【0205】
(昇華精製方法C)
ホスト材料H−1の粗結晶650mgを、水素化チタン(TiH
2)100mgと混合し、昇華精製温度260℃、昇華精製圧力1×10
−2Paの条件下で昇華精製した。
【0206】
上記の粗結晶(「粗1」)を、以下に記載の昇華精製方法D(比較方法)で精製し、ホスト材料H−1の比較精製結晶(以下、「比昇D1」と表記)を得た。
【0207】
(昇華精製方法D)
ホスト材料H−1の粗結晶650mgを、酸化カルシウム(CaO)100mgと混合し、昇華精製温度260℃、昇華精製圧力1×10
−2Paの条件下で昇華精製した。
【0208】
(実施例1−2)ホスト材料H−2の精製
トリフェニレンとハロゲン化ビフェニル化合物から、パラジウム触媒を用いるカップリング反応により、下記構造のホスト材料H−2の粗結晶(以下、「粗1」と表記)を得た。
【0209】
【化36】
【0210】
上記の粗結晶(「粗1」)を、上記の昇華精製方法B(本発明の方法)で精製し、ホスト材料H−2の精製結晶(以下、「昇B1」と表記)を得た。
【0211】
(実施例1−3)ホスト材料H−3の精製
カルバゾールとハロゲン化ビフェニルのパラジウム触媒を用いるカップリング反応により、下記構造のホスト材料H−3(CBP)の粗結晶(以下、「粗1」と表記)を得た。
【0212】
【化37】
【0213】
上記の粗結晶(「粗1」)を、上記の昇華精製方法B(本発明の方法)で精製し、ホスト材料H−3の精製結晶(以下、「昇B1」と表記)を得た。
【0214】
実施例1−1〜1−3で得られたホスト材料の粗結晶及び各精製結晶について、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のハロゲン元素濃度を「燃焼イオンクロマトグラフ法」により測定した。具体的には、試料約5mg精秤し、石英ボート上に乗せ、燃焼式ハロゲン分析装置(ダイアインスツルメンツ製AQF−100)により測定を行った。測定したハロゲン元素濃度の結果を下記表1〜3にそれぞれ示す。なお表1〜3において、ハロゲン元素濃度の値が「−」となっているものは、ハロゲン元素濃度が1ppm未満であり、検出されなかったことを意味する。また表1〜3において、各粗結晶の収量を100とした際の、各精製結晶の収量を収率として相対値で記載する。
【0215】
<実施例2>
(実施例2−1)[素子の作製]
ホスト材料以外の、有機電界発光素子の作製に用いた材料は全て昇華精製を行い、高速液体クロマトグラフィー(東ソーTSKgel ODS−100Z)により純度(254nmの吸収強度面積比)が99.9%以上であることを確認した。
厚み0.5mm、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□(Ω/sq.ともいう))を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極(ITO膜:膜厚100nm)上に真空蒸着法にて以下の有機層を順次蒸着した。
第1層(正孔注入層):HAT−CN:膜厚10nm
第2層(正孔輸送層):NPD:膜厚30nm
第3層(発光層):ホスト材料H−1の昇A1B1及びIr(ppy)
3(質量比90:10):膜厚30nm
第4層(正孔ブロック層):H−1(ホスト材料H−1の比昇A2):膜厚10nm
第5層(電子輸送層):Alq
3:膜厚40nm
この上に、フッ化リチウム0.1nm(電子注入層)及び金属アルミニウム100nmをこの順に蒸着し陰極とした。
この積層体を、大気に触れさせることなく、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、本発明の有機電界発光素子1−1を得た。同様に、第3層のホスト材料としてホストH−1の「昇A1B1」の代わりに下記表1中に示す材料を用いることにより、本発明の素子1−2及び1−3、並びに、比較素子1−1〜1−6を得た。
【0216】
(有機電界発光素子の性能評価)
得られた各素子を以下の方法で耐久性の観点で評価した。結果を表1に示す。
(a)耐久性
各素子を輝度が5000cd/m
2になるように直流電圧を印加して発光させ続け、輝度が半分の2500cd/m
2になるまでに要した時間を耐久性の指標とし、「昇A1B1」の材料を使用した素子の耐久性を100とした際の相対値で記載した。耐久性は数字が大きいほど優れており好ましい。
【0217】
【表1】
【0218】
表1の結果から分かるように、本発明の昇華精製方法B及びB’は、従来の技術である昇華精製方法A(比較方法)と比べ、ハロゲン元素の除去能が高く、少ない昇華精製の回数でハロゲン不純物を充分に除去できる。従って、本発明の昇華精製方法によれば、ホスト材料の高い収率と、該ホスト材料を使用した素子の高い耐久性とを同時に満足することが出来る。また本発明の昇華精製方法によれば、素子の耐久性に強い悪影響を与える不純物であるフッ素及び塩素が他のハロゲン元素と比べより効率的に除去される。更に、比較素子1−5及び1−6との比較から、本発明に係るアルカリ性無機吸着材料及び非アルカリ性無機吸着材料のいずれか一方のみの使用では本発明の効果は得られず、それらの組み合わせにより初めて本発明の効果が得られることが分かる。
【0219】
(実施例2−2)
次に、第3層のホスト材料として実施例2−1におけるホスト材料H−1の代わりにホスト材料H−2を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を表2に示した。また、耐久性の結果は、「昇B1」の材料を使用した素子の結果を100とした際の相対値で記載した。
【0220】
【表2】
【0221】
(実施例2−3)
次に、第3層のホスト材料として実施例2−1におけるホスト材料H−1の代わりにホスト材料H−3を用いた以外は、素子1−1と同様にして素子を作製し、評価した結果を表3に示した。また、耐久性の結果は、「昇B1」の材料を使用した素子の結果を100とした際の相対値で記載した。
【0222】
【表3】
【0223】
表2及び表3の結果からも明らかのように、異なる骨格のホスト材料を使用した場合にも、本発明の昇華精製方法によれば、一回の昇華精製でハロゲン不純物を充分に除去できる。従って、本発明の昇華精製方法によれば、ホスト材料の高い収率と、該ホスト材料を使用した素子の高い耐久性とを同時に満足することが出来る。
【0224】
以下に実施例及び比較例で用いた化合物の構造を示す。
【0225】
【化38】