(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出された前記現在位置及び前記走行方向に基づいて、車両の前進時に設定される前進走行軌跡と、前記車両の後進から前進への走行再開時に設定される前進走行軌跡との間の距離を検出する距離検出部と、検出された距離が所定距離であるか否かを判定する所定距離判定部とを更に備え、前記所定距離を前記所定距離判定部の判定結果に基づいて検出することを特徴とする請求項1又は2記載の作業機用の制御装置。
前記作業機が、農作業用資材の散布装置であって、前記散布装置は、前記走行速度検出部の検出結果が0m/s、及び前記進行方向判定部の判定結果が後進であるとの検出結果に基づいて、散布動作が停止するように制御されていることを特徴とする請求項1又は2記載の作業機用の制御装置。
前記作業機が、農作業用資材の散布装置であって、前記散布装置は、前記走行速度検出部の検出結果が0m/s、及び前記進行方向判定部の判定結果が後進であるとの検出結果に基づいて、散布動作が停止するように制御されているとともに、前記所定距離判定部の判定結果が、前記前進走行軌跡上で散布される前記農業用資材の散布範囲の一部以上が重なる距離であるとの検出結果に基づいて、散布動作の動作停止を保持するように制御されていることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の作業機用の制御装置。
車両の前進・後進・停止の各状態によって異なる動作を行い、且つ前記車両の前記各状態と連動する作業機用の制御方法であって、測位システムにより得られた車両の位置情報に基づいて、前記車両の走行方向を検出する走行方向検出工程と、前記位置情報に基づいて、前記車両の走行距離と走行時間から該車両の走行速度を検出する走行速度検出工程と、前記位置情報に基づいて、変化する前記車両の現在位置を所定時間毎に検出する現在位置検出工程と、前記位置情報に基づいて、前記車両の停止位置の直前において検出された走行方向と、前記車両の前記停止位置からの走行再開時に検出された走行方向とでなす角度を検出する角度検出工程と、前記位置情報に基づいて、前記停止位置の直前における前記走行方向の検出時の前記車両の進行方向が前進であって、且つ前記車両の前記停止位置からの走行再開時に検出された前記角度が所定角度以下であるときに後進であると判定し、前記停止位置の直前における前記走行方向の検出時の前記車両の進行方向が後進であって、且つ前記車両の停止位置からの走行再開時に検出された前記角度が所定角度以下であるときに前進であると判定する進行方向判定工程と、前記車両の前進と後進の各状態を、前記進行方向判定工程での判定結果に基づいて検出する検出工程とを備えていることを特徴とする作業機用の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に説明する車両は、作業機の作業に応じた走行性能を有するものであり、作業機が農作業に用いられるものである場合、この作業機を牽引又は備えて、圃場を走行可能なトラクタが挙げることができる。
【0019】
以下に説明する作業機は、車両に牽引又は備えられて、この車両の走行に伴って各種作業を行うものであり、この作業機が農作業に用いられるものである場合、農作業に用いられる散布装置を挙げることができる。
【0020】
以下に説明する農業用資材とは、肥料や薬剤或いは種子等であり、この肥料や薬剤は、粒状又は粉状、更には液状のものを含む。この農業用資材の散布装置とは、肥料や薬剤或いは種子等を散布するものである。
【0021】
以下に説明する散布装置は、トラクタ等の車両に牽引又は備えられ、この車両と一体となって走行しながら前述の農業用資材を散布するものであって、例えば、ブロードキャスタ、ブームスプレーヤ、マニュアスプレッダ等を含む。
【0022】
以下に説明する車両の走行方向とは、この車両の進行方向(前進・後進)にかかわらず走行する方向である。
【0023】
以下、本発明に係る第1実施形態の制御装置1を
図1及び
図2に基づいて説明する。以下で説明する各実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0024】
図1は、制御装置1の構成を含むブロック図である。制御装置1は、車両Aに配されたコントローラ10及び作業機の一例である散布装置A’に接続され、コントローラ10の操作によって、散布装置A’の各種設定及び始動・停止を行うようにされている。
【0025】
この制御装置1は、位置情報検出部B、演算・記憶部C、走行方向検出部1A、走行速度検出部1B、現在位置検出部1C、角度検出部1D、進行方向判定部1E、前後進検出部1Fが備えられており、これらによる検出結果・演算結果・判定結果に基づいて、散布装置A’の各種動作を制御するものである。
【0026】
図2は、車両Aの走行方向及び散布状態・散布停止状態を示す図であり、図中、実線矢印は、車両Aの前進走行A1及び散布状態を示し、破線矢印は、車両Aの後進走行A2及び散布停止状態を示している。また、前進走行A1と後進走行A2との間の丸印は、車両Aが停止した停止位置P10を示している。また、前進走行A1上及び後進走行A2上の丸印は、車両Aの走行中に設定される通過点P1〜P4及び停止位置P10直前の最新の通過点P4に設定される走行方向検出地点PSを示している。
【0027】
散布装置A’の散布動作に係る制御装置1の制御開始及び制御停止は、コントローラ10の操作による指示で行う手段を採用することができる。このコントローラ10からの制御開始指示がされると、位置情報検出部B、演算・記憶部C、走行方向検出部1A、走行速度検出部1B、現在位置検出部1C、角度検出部1D、進行方向判定部1Eの入出力動作、検出動作、演算動作、判定動作を含む各種制御が開始される。
【0028】
散布装置A’は、車両Aに牽引又は一体に備えられて、この車両Aと一体となって圃場(図示せず)を走行しながら農業用資材を散布し、走行速度によって農業用資材の散布量が制御されるようになっている。
【0029】
散布装置A’の散布動作の動力は、車両Aから伝達された駆動力を利用することが有効である。このような駆動力を利用する手段としては、例えば、車両Aから伝達された駆動力を必要な動力伝達系(図示せず)を介して、車両AのPTO(Power Take Off)軸に接続する手段を採用することができる。
【0030】
制御装置1は、コントローラ10の制御開始指示後に、車両Aを前進走行A1させることで農業用資材の散布を開始させ、車両Aの走行停止によって農業用資材の散布を停止させるように制御する。また、散布開始指示以降は、散布停止指示がされない限り、車両Aの前進走行A1によって農業用資材の散布を行う制御が継続され、散布停止指示がされると、車両Aが前進走行A1しても、農業用資材の散布停止状態が保持されるように制御する。
【0031】
また、制御装置1は、走行速度検出部1Bによる車両Aの走行速度が0m/sであるとの検出結果に基づいて、散布装置A’の散布動作を停止させるように制御し、進行方向判定部1Eによる車両Aが後進走行A2であるとの判定結果を検出し、この検出結果に基づいて散布装置A’の散布動作を停止させる制御するようにされている。
【0032】
更に、制御装置1は、走行速度検出部1Bによる車両Aの走行速度が0m/sを超えたとの検出結果に基づいて、散布装置A’の散布動作を開始させるように制御し、進行方向判定部1Eによる車両Aが前進走行A1であるとの判定結果を検出し、この検出結果に基づいて散布装置A’の散布動作を開始させる制御をするようにされている。
【0033】
走行速度検出部1Bによって検出される車両Aの走行速度は、位置情報検出部Bによって検出される位置情報に基づくものである。そのため、車両Aが駆動輪のスリップによって走行不能状態になっても、走行速度を0として検出することができる。したがって、駆動輪の回転にかかわらず、車両Aが停止状態(走行速度が0m/s)である場合には、散布装置A’の散布動作を停止させることができる。
【0034】
散布装置A’の農業用資材の散布量は、走行速度検出部1Bで検出される走行速度に基づき、この走行速度に対応する散布量となるように制御されている。そのため、車両Aの走行中の速度変化に応じた散布量で農業用資材を散布でき、これにより、農業用資材の散布を均一に行うことができる。
【0035】
位置情報検出部Bは、測位システム(以下、GPSという)2から送信される車両Aの位置情報を受信するとともに、この車両Aの現在位置を検出して、検出した位置情報を演算・記憶部Cに送信するように制御されている。
【0036】
演算・記憶部Cは、CPU(図示せず)が実行する各種プログラムや、各種アプリケーションプログラム、及び各種データ等を記憶したROM(図示せず)、位置情報、各種検出情報、各種設定情報、演算結果等を一時的に記憶するRAM(図示せず)を備えている。そして、このROM及びRAMから、コントローラ10による制御開始及び停止、各種検出・判定開始及び停止、各種検出結果・判定結果の送受信等の各種要求に基づく、各種プログラムや各種データの出し入れ、この各種要求に基づく演算が行われるように制御されている。
【0037】
走行方向検出部1Aは、演算・記憶部Cに記憶された車両Aの位置情報に基づいて車両Aの走行方向を検出し、検出した走行方向情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。入力される走行方向情報は、演算・記憶部Cに逐次記憶されるとともに、更新(上書き)されるように制御され、常に、最新の走行方向情報が得られるようになっている。
【0038】
走行速度検出部1Bは、演算・記憶部Cに入力された車両Aの位置情報に基づいて、車両Aの走行距離と走行時間から演算された車両Aの走行速度を検出して、この走行速度情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。入力される走行速度情報は、演算・記憶部Cに逐次記憶されるとともに、更新(上書き)されるように制御され、常に、最新の走行速度情報が得られるようになっている。
【0039】
現在位置検出部1Cは、演算・記憶部Cに記憶された車両Aの位置情報に基づいて、変化する車両Aの現在位置を所定時間毎に検出し、検出した現在位置情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。入力される現在位置情報は、演算・記憶部Cに逐次記憶されるとともに、更新(上書き)されるように制御され、常に、最新の現在位置情報が得られるようになっている。
【0040】
また、演算・記憶部Cに記憶された車両Aの現在位置情報に基づいて、
図2に示すように、車両Aの走行中に、通過点P1〜P4を順次設定し、設定した通過点P1〜P4を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0041】
ここで、所定時間とは、通過点P1〜P4が、車両Aの前後進を判定できるように設定できる時間であればよいが、具体的には、1秒〜数秒程度が望ましい。
【0042】
このとき、演算・記憶部Cでは、入力される通過点P1〜P4をカウントしており、このカウント情報に基づいて、カウント数が一定数(本形態では4個であるがこの個数に限らない)を超えると、最も古い通過点を削除するように制御されている。
【0043】
また、車両Aの走行停止時に通過点P1〜P4の最新の通過点P4を車両Aの走行方向検出地点PSとして設定し、設定した走行方向検出地点PSを演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0044】
尚、前述のように設定される通過点P1〜P4をカウントし、最も古い通過点を削除する制御に限らず、この通過点のカウントを行わず、車両Aの走行制御中において設定される通過点P1〜P4を走行制御終了まで削除しないようにしてもよい。
【0045】
角度検出部1Dは、演算・記憶部Cに記憶された位置情報に基づいて検出される車両Aの停止位置P10から、位置情報に基づいて検出され、停止位置P10の直前において設定された走行方向検出地点PSにわたる範囲で検出された車両Aの走行方向L1と、車両Aの停止位置P10からの走行再開時に検出された車両Aの走行方向L2とでなす角度θを検出するとともに、検出した角度情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0046】
進行方向判定部1Eは、
図2に示すように、停止位置P10から走行方向検出地点PSにわたる走行方向L1での車両Aの進行方向が前進走行A1であって、且つ停止位置P10からの走行再開時に検出された角度θが所定角度以下であるときに後進走行A2であると判定し、判定された後進情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0047】
また、進行方向判定部1Eは、
図2に示すように、停止位置P10から走行方向検出地点PSにわたる走行方向L1での車両Aの進行方向が後進走行A2であって、且つ停止位置P10からの走行再開時に検出された角度θが所定角度以下であるときに前進走行A1であると判定し、判定された前進情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0048】
また、進行方向判定部1Eは、停止位置P10から走行方向検出地点PSにわたる走行方向L1での車両Aの進行方向が前進走行A1であって、且つ停止位置P10からの走行再開時に検出された角度θが所定角度を超えている場合、前進走行A1であると判定し、判定された前進情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0049】
また、進行方向判定部1Eは、停止位置P10から走行方向検出地点PSにわたる走行方向L1での車両Aの進行方向が後進走行A2であって、且つ停止位置P10からの走行再開時に検出された角度θが所定角度を超えている場合、後進走行A2であると判定し、判定された後進情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0050】
前後進検出部1Fは、演算・記憶部Cに記憶された進行方向情報に基づいて、車両Aの前進走行A1と後進走行A2の各状態を検出するとともに、検出した前進情報及び後進情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。
【0051】
そして、
図2に示すように、検出された前進情報及び後進情報に基づいて、車両Aが後進走行A2であるときに、散布装置A’の散布動作を停止させる制御をするとともに、車両Aが前進走行A1であるときに、散布装置A’の散布動作を開始させる制御をするようになっている。
【0052】
以上した構成の制御装置1によると、GPS2による位置情報に基づく各検出結果及びこの検出結果に基づく各設定結果に基づいて車両Aの前後進を判定し、この判定結果に基づいて前進のときに散布動作を開始させ、後進のときに散布動作を停止させるように制御することができる。したがって、前述のPTO軸の駆動回転や駆動輪の回転にかかわらず、車両Aが後進状態にある場合には、散布装置A’の散布動作を停止させることができる。
【0053】
車両Aの前後進の判定は、走行速度が0m/sを少しでも超えたときに開始するようにしてもよいし、後進操作を前進操作するような誤操作によって、農業用資材の過散布を防止するために、車両Aの走行開始からあらかじめ設定した走行速度になったときに、車両Aの前後進の判定を行うようにしてもよい。
【0054】
後者の場合、仮に、後進操作を前進操作するような誤操作をしても、その直後に散布動作が行われないので、誤操作したときに車両Aを停止操作することで、農業用資材の過散布を防止することができる。
【0055】
車両Aの前後進の判定が開始される走行速度について限定するものではないが、この走行速度による移動距離によって農業用資材の散布に影響が生じないようにできる走行速度であればよい。
【0056】
トラクタ等の農作業に使用される車両Aは、小回りが行い難く、圃場内をジグザグ状に走行して農業用資材を散布する場合、単純に円弧状に転回するだけでは大回り過ぎて、散布済みの散布済みコースから隣接する散布予定コースに移動できないということがある。そのため、車両Aを後進させることで切り替えしを行って転回することで、散布済みの散布済みコースから隣接する散布予定コースに移動するようにしている。
【0057】
この車両Aの切り替えしは、車両Aが散布済みコースから円弧状に転回して、隣接する散布予定コース上に直交するように位置したときに、直角に車両Aの向きを変えることで、車両Aが散布予定コース上で、且つこの散布予定コースと平行に位置させるようにすることが、最も効率的ではあるが、このような切り返しは、現実的には不可能である。
【0058】
そのため、前述の所定角度を90°以下に設定すれば、確実に車両Aの前後進を判定することができ、これによって、散布装置A’の散布動作の開始・停止を確実に制御することができる。
【0059】
前述したように、散布装置A’の散布動作は、車両Aの前進走行A1においてのみ行われるように制御されているが、車両Aの前進走行A1が農業用資材を散布するための進行方向であって、車両Aの実際の進行方向と同じ方向とは限らない場合がある。この場合、車両Aの実際の進行方向にかかわらず、車両Aの制御開始指示後において、農業用資材の散布をする際の車両Aの進行方向を前進走行A1となるように規定するとよい。
【0060】
そのため、車両Aの制御開始操作後の走行が前進走行A1となるように規定する前進規定操作部(図示せず)を備え、この前進規定操作部の制御開始指示を車両Aの走行前に行うことによって、この指示直後に走行する車両Aの進行方向を前進走行A1として規定する制御が行われるようにするとよい。
【0061】
このような制御によると、車両Aの進行方向にかかわらず、前述の前進規定操作部に対する制御開始指示後の車両Aの進行方向を前進走行A1として規定できる。この規定後には、散布装置A’の散布動作に関する前述の各種制御によって、車両Aの前進時において散布装置A’の散布動作を開始させ、車両Aが停止したとき及び後進走行A2したときに、散布装置A’の散布動作を停止させることができる。
【0062】
また、車両Aの制御開始操作後の進行方向を前進走行A1であると規定する他の制御として、前述の前進規定操作部の操作によって、停止位置P10で停止する直前の進行方向が前進走行A1であったと設定するようにし、更に、前述の前進規定操作部を操作した停止位置P10において、通過点P4を設定するとともに、通過点P4を走行方向検出地点PSとして設定する制御としてもよい。
【0063】
このような制御によると、停止位置P10で停止する直前の車両Aの進行方向が前進走行A1であったと設定され、且つ停止位置P10に走行方向検出地点PSが設定されるので、この走行方向検出地点PSから車両Aを走行させたときの角度θが所定角度以下であるときに後進走行A2であると判定され、この判定結果に基づいて散布装置A’の散布動作を停止させることができる。
【0064】
図3は、制御装置1が制御する散布装置A’の制御方法を含むコンピュータプログラムのフローチャートである。このプログラムは、コントローラ10からの制御開始指示により起動するプログラムであり(ステップS1)、プログラムの起動後に車両Aの進行方向の検出が開始される(ステップS2)。
【0065】
前述の制御開始指示後、前述の前進規定操作部を操作して、この操作直後の車両Aの進行方向が前進走行A1であることを規定することにより、その直後における車両Aの走行が前進走行A1であるとして設定される(ステップS3)。
【0066】
ステップS3後の車両Aの前進走行A1によって散布装置A’の散布動作が開始される(ステップS4)。車両Aが前進走行A1であるとき、走行速度検出部1Bにより、車両Aの位置情報に基づく車両Aの走行距離と走行時間から車両Aの走行速度の演算が開始されるとともに、散布装置A’の散布動作が開始される。このとき、散布装置A’は、演算された走行速度に応じた散布量となるように制御され、この制御によって、走行中における農業用資材の散布を均一に行えるようになっている。
【0067】
車両Aの走行中には、現在位置検出部1Cが変化する車両Aの現在位置を所定時間毎に検出し(ステップS5)、この検出結果に基づいて車両Aの走行中に、通過点P1〜P4を順次設定する(ステップS6)。このとき、通過点P1〜P4をカウントしており、このカウント情報に基づいて、カウント数が4個を超える(5カウント)と(ステップS7)、最も古い通過点P1を削除する(ステップS8)。そして、車両Aの前進走行A1が停止すると(ステップS9)、散布装置A’の散布動作が停止する。(ステップS10)、このとき、車両Aが停止した位置に停止位置P10を設定し(ステップS11)、この停止位置P10の直前の最新の通過点P4を車両Aの走行方向検出地点PSとして設定する(ステップS12)。更に、停止位置P10と、この停止位置P10の直前に設定された走行方向検出地点PSにわたる範囲で検出された車両Aの走行方向L1を設定する(ステップS13)。
【0068】
ステップS5〜ステップS13については、車両Aの後進走行A2においても、前進走行A1と同様に行われる。
【0069】
停止位置P10から車両Aが走行再開すると(ステップS14)、車両Aの停止位置P10からの走行再開時に検出された走行方向L2を設定し(ステップS15)、走行方向L1と走行方向L2とでなす角度θを検出する(ステップS16)。検出された角度θが所定角度以下であるか否かを判定し、この角度θが所定角度以下であれば(ステップS17)、走行再開時の車両Aが後進走行A2であるとして判定され(ステップS18)、検出された角度θが所定角度を超えていれば、走行再開時の車両Aが前進走行A1であるとして判定される(ステップS19)。
【0070】
ステップS19で設定された車両Aの進行方向を検出し(ステップS20)、車両Aの進行方向が後進走行A2であると検出されると(ステップS21)、散布装置A’の散布動作が停止し(ステップS22)、車両Aが前進走行A1であると検出されると(ステップS23)、散布装置A’の散布動作を開始する(ステップS24)。
【0071】
尚、ステップS22以降は、ステップS23、S24を経て、農業用資材の散布終了まで、ステップS5〜ステップS22と同じステップが行われ、散布装置A’の農業用資材の散布終了時に、制御停止操作をすることによってこのプログラムが終了する。
【0072】
このような散布方法によって、GPS2による位置情報に基づく各検出結果及びこの検出結果に基づく各設定結果に基づいて車両Aの前後進を判定し、この判定結果に基づいて前進のときに散布動作を開始させ、後進のときに散布動作を停止させるように制御することができる。したがって、前述のPTO軸の駆動回転や駆動輪の回転にかかわらず、車両Aが後進状態にある場合には、散布装置A’の散布動作を停止させることができる。
【0073】
作業機による作業をより効率的に行うためには、作業済みの作業範囲と新たに作業する作業範囲とが重ならないように作業を行うことが好ましい。
【0074】
例えば、作業機が農業用資材を散布する散布装置A’であって、農業用資材が肥料や種子である場合、圃場内をジグザグ状に走行して農業用資材を散布する際、一方向の走行時に散布された散布範囲(作業済みの作業範囲)に、他方向の走行時に散布される散布範囲(新たに作業する作業範囲)が重ならないようにすることで、農業用資材を圃場に平均的に散布することができる。
【0075】
このような散布動作となるように散布装置A’を制御するには、以下に説明する本発明に係る第2実施形態の制御装置1’により達成できる。以下、この制御装置1’を
図4及び
図5に基づいて説明する。尚、第1実施形態の制御装置1と重複する部位についての説明は、同符号を付けることによって省略する。
【0076】
図4は、制御装置1’の構成を含むブロック図である。制御装置1’は、車両Aに配されたコントローラ10及び散布装置A’に接続され、コントローラ10の操作によって、散布装置A’の各種設定及び始動・停止を行うようにされている。
【0077】
この散布装置A’の散布幅は、あらかじめ設定されており、基本的に、散布開始から散布終了まで、設定を変更しない限り同じ散布幅で散布され、この散布幅が、
図5に示す散布範囲W1、W2となる。
【0078】
制御装置1’は、散布装置A’の散布動作中における車両Aの前進走行A1時に設定される前進走行軌跡L30と、車両Aの後進から前進への走行再開時に設定される新たな前進走行軌跡L31との間の距離Wを検出する距離検出部1Gと、検出された距離が所定距離であるか否かを判定する所定距離判定部1Hと、所定距離判定部1Hの判定結果に基づいて所定距離を検出する所定距離検出部1Iとを備えている。
【0079】
ここで所定距離とは、前進走行軌跡L30において散布された農業用資材の散布範囲W1に、前進走行軌跡L31において散布される農業用資材の散布範囲W2が重なる距離Wである。
【0080】
前進走行軌跡L30、L31は、演算・記憶部Cに記憶された車両Aの現在位置情報に基づいて、車両Aの前進走行A1中に設定される通過点P1〜P4に沿うように設定されるものであり、車両Aの前進走行A1中において順次設定されるとともに、演算・記憶部Cに入力される。
【0081】
距離検出部1Fは、
図5に示すように、演算・記憶部Cに記憶された前進走行軌跡L30、L31に基づいて、この前進走行軌跡L30、L31間の距離Wを検出するとともに、検出した距離情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。また、演算・記憶部Cに入力される距離情報は、更新(上書き)されるように制御され、常に、最新の距離情報が得られるようになっている。
【0082】
所定距離判定部1Hは、検出された距離Wが所定距離、すなわち、前進走行軌跡L30において散布された農業用資材の散布範囲W1に、前進走行軌跡L31において散布される農業用資材の散布範囲W2が重なる距離Wであるか否かを判定するとともに、その判定結果情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。また、演算・記憶部Cに入力される判定結果情報は、更新(上書き)されるように制御され、常に、最新の判定結果情報が得られるようになっている。
【0083】
所定距離検出部1Iは、演算・記憶部Cに記憶された判定結果情報に基づいて、判定結果が所定距離であるか否かを検出するとともに、検出した距離情報を演算・記憶部Cに入力するように制御されている。また、演算・記憶部Cに入力される距離情報は、更新(上書き)されるように制御され、常に、最新の距離情報が得られるようになっている。
【0084】
そして、
図5に示すように、検出された距離情報に基づいて、距離Wが所定距離であるときに、散布装置A’に散布動作停止を保持させるように制御し、距離Wが所定距離でないときに、散布装置A’に散布動作を開始させるように制御するようになっている。
【0085】
このような制御装置1’によると、車両Aの進行方向が後進から前進となったときに、即座に散布装置A’の散布動作開始をさせず、前進走行軌跡L30において散布された農業用資材の散布範囲W1に、前進走行軌跡L31において散布される農業用資材の散布範囲W2が重ならない距離となったときに、散布装置A’の散布動作を開始させることができる。
【0086】
したがって、前進走行軌跡L30上で既に農業用資材が散布された散布範囲W1に、前進走行軌跡L31上において農業用資材を重ねることなく散布することができる。これによって、農業用資材を圃場に平均的に散布することができるとともに、農業用資材の無駄を省くことができるので、農業用資材の散布を効率的に行うことができる。
【0087】
尚、前進走行軌跡L31上で散布装置A’の散布動作が行われると、この前進走行軌跡L31が前進走行軌跡L30として新たに設定され、この新たに設定された前進走行軌跡L30以降において車両Aが後進から前進したときに前進走行軌跡L31として設定される。
【0088】
図6は、制御装置1’が制御する散布装置A’の制御方法を含むコンピュータプログラムのフローチャートである。
【0089】
尚、
図6に示すフローチャートにおいては、
図3に示すフローチャートにおけるステップS23とステップS24との間において、散布範囲W1、W2間の距離Wを検出させる制御、距離Wが散布範囲W1、W2が重なる距離である場合に、散布装置A’の散布動作停止を保持させる制御、距離Wが散布範囲W1、W2が重ならない距離である場合に、散布装置A’の散布動作を開始させる制御に関連するプログラムであり、
図3に示すフローチャートにおけるステップS1〜ステップS24のプログラムを備えるものであるため、ステップS23以降のステップを図示し、これらのステップを除くステップについては、図示及び説明を省略する。
【0090】
車両Aが前進走行A1であるとの検出後(ステップS23)、農業用資材の散布中に設定された前進走行軌跡L30と、走行再開時に順次設定される前進走行軌跡L31との間の距離Wを検出する(ステップS25)。検出された距離Wが散布範囲W1、W2とが重なる距離(所定距離)Wであるか否かを判定し(ステップS26)、この距離を所定距離として検出すると(ステップS27)、散布動作停止を保持させ(ステップS28)、この距離を非所定距離として検出すると(ステップS29)、散布装置A’の散布動作を開始させる(ステップS30(ステップS24))。
【0091】
ステップS25〜ステップS30は、車両Aの前進走行A1中において継続して行われており、散布装置A’の散布動作中における車両Aの前進走行A1において、距離Wが散布範囲W1、W2が重なっている距離Wであるという検出結果である場合、散布装置A’の散布動作を停止させることができるようにしている。また、車両Aの前進走行A1中における散布装置A’の散布動作の停止後に、距離Wが散布範囲W1、W2が重ならない距離Wであるという検出結果である場合、散布装置A’の散布動作を開始させることができるようにしている。
【0092】
このような散布方法によって、車両Aの進行方向が後進走行A2から前進走行A1となったときに、即座に散布装置A’の散布動作開始をさせず、前進走行軌跡L30において散布された農業用資材の散布範囲W1に、前進走行軌跡L31において散布される農業用資材の散布範囲W2が重ならない距離となったときに、散布装置A’の散布動作を開始させることができる。
【0093】
したがって、前進走行軌跡L30上で既に農業用資材が散布された散布範囲W1に、前進走行軌跡L31上において農業用資材を重ねることなく散布することができる。これによって、農業用資材を圃場に平均的に散布することができるとともに、農業用資材の無駄を省くことができるので、農業用資材の散布を効率的に行うことができる。