特許第5859920号(P5859920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859920
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】水電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/34 20060101AFI20160202BHJP
   H01M 2/36 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   H01M6/34 A
   H01M2/36 101N
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-136386(P2012-136386)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-2873(P2014-2873A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】508346505
【氏名又は名称】日本協能電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 吉治
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】石川 忠
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 良明
【審査官】 山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第358688(JP,Z2)
【文献】 登録実用新案第358690(JP,Z2)
【文献】 特開2004−158209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/04−12,32−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦断方向とそれに直交する横断方向とを有し、外枠体と、前記外枠体の内面に固定された正極体と、前記外枠体の内部に位置する負極体とを含み、外部から液体を注入することによって発電する水電池において、
前記外枠体は、内部に注入された液体からなる注液域と前記注液域の上方に位置するスペースとを有し、前記外枠体を前記正極体が固定された部分が下側となるように配置したときに前記正極体及び前記負極体が前記注液域に位置し、前記固定された部分が上側となるように配置されたときに前記正極体及び前記負極体のいずれか一方が前記スペースにのみ位置し、前記注液域内に位置していないことを特徴とする前記水電池。
【請求項2】
前記横断方向へ延びて前記外枠体の外周面の面積を2等分する中心線と、前記中心線によって2分される第1区域と第2区域とを有し、前記負極体は前記第1及び第2区域の少なくとも前記第1区域側に位置しており、前記正極体は前記第1区域側にのみ位置する請求項1に記載の水電池。
【請求項3】
前記縦断方向において互いに対向する第1及び第2端部と、前記第1端部を形成する正極端子と、前記第2端部を形成する負極端子とを有し、前記外枠体が略円筒形状であり、前記正極体が前記正極端子と当接する前記外枠体の内周面に沿う半円形の薄板状であり、前記負極体が前記負極端子の一部に支持された棒状であって、前記負極体は前記中心線と交差し、前記正極体は前記中心線と交差しない請求項2に記載の水電池。
【請求項4】
前記第1及び第2区域のうちの少なくとも一方が前記縦断方向へ延びる平坦部を有する請求項2又は3に記載の水電池。
【請求項5】
前記注液域の液面に浮かぶフロートと、前記外枠体内の発生ガスを排気するための通気管とを備える通気システムを有し、前記通気管の一方端は前記外枠体の外面に形成された開口に連結され、前記通気管の他方端は前記フロートを貫通するジョイントに連結されており、前記ジョイントの開口端が前記スペースに位置する請求項1〜4のいずれかに記載の水電池。
【請求項6】
前記外枠体が、前記縦断方向において対向する第1及び第2面と、前記横断方向において対向する第3及び第4面とを有する略直方体状であって、前記第1面の外面には、前記通気管の一方端に連結されたタンクが配置されており、前記第3及び第4面の内面には、それぞれ薄板状の正極体が配置されており、前記負極体は前記正極体間に位置する請求項5に記載の水電池。
【請求項7】
前記フロートは、前記通気管の他方端側の部位に配置されたウエイトを有する請求項5又は6に記載の水電池。
【請求項8】
前記タンクは、通気孔と、排水孔と、前記排水孔側に位置するウエイトとを有し、前記外枠体の前記第1面に位置する開口に回転可能に連結される請求項に記載の水電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を注入することによって発電する水電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水等の液体(電解液)を注入することによって発電する水電池は公知である。例えば、特許文献1には、液体が流れる流路と、流路内に所定間隔離間して配置された正極体と負極体とを有する水電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−278762号公報(JP2007−278762A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された水電池では、流路内の液体が両電極に接触することによって電気化学反応が生じて両電極間に起電力が発生し、一定時間所要の電気エネルギーを取り出すことができる。
【0005】
本発明の課題は、従来の技術における水電池の改良であって、配置の向きを変えることによって、起電力のオンとオフとを容易に切り替えることのできる水電池の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、縦断方向とそれに直交する横断方向とを有し、外枠体と、前記外枠体の内面に固定された正極体と、前記外枠体の内部に位置する負極体とを含み、外部から液体を注入することによって発電する水電池を対象とする。
【0007】
本発明に係る水電池は、前記外枠体は、内部に注入された液体からなる注液域と前記注液域の上方に位置するスペースとを有し、前記外枠体を前記正極体が固定された部分が下側となるように配置したときに前記正極体及び前記負極体が前記注液域に位置し、前記固定された部分が上側となるように配置されたときに前記正極体及び前記負極体のいずれか一方が前記スペースにのみ位置し、前記注液域内に位置していないことを特徴とする。
【0008】
本発明の実施態様の一つは、前記横断方向へ延びて前記外枠体の外周面の面積を2等分する中心線と、前記中心線によって2分される第1区域と第2区域とを有し、前記負極体は前記第1及び第2区域の少なくとも前記第1区域側に位置しており、前記正極体は前記第1区域側にのみ位置する。
【0009】
本発明の他の実施態様の一つは、前記縦断方向において互いに対向する第1及び第2端部と、前記第1端部を形成する正極端子と、前記第2端部を形成する負極端子とを有し、前記外枠体が略円筒形状であり、前記正極体が前記正極端子と当接する前記外枠体の内周面に沿う半円形の薄板状であり、前記負極体が前記負極端子の一部に支持された棒状であって、前記負極体は前記中心線と交差し、前記正極体は前記中心線と交差しない。
【0010】
本発明のさらに他の実施態様の一つは、前記第1及び第2区域のうちの少なくとも一方が前記縦断方向へ延びる平坦面を有する。
【0011】
本発明のさらに他の実施態様の一つは、前記注液域の液面に浮かぶフロートと、前記外枠体内の発生ガスを排気するための通気管とを備える通気システムを有し、前記通気管の一方端は前記外枠体の外面に形成された開口に連結され、前記通気管の他方端は前記フロートを貫通するジョイントに連結されており、前記ジョイントの開口端が前記スペースに位置する。
【0012】
本発明のさらに他の実施態様の一つは、前記外枠体が、前記縦断方向において対向する第1及び第2面と、前記横断方向において対向する第3及び第4面とを有する略直方体状であって、前記第1面の外面には、前記通気管の一方端に連結されたタンクが配置されており、前記第3及び第4面の内面には、それぞれ薄板状の正極体が配置されており、前記負極体は前記正極体間に位置する。
【0013】
本発明のさらに他の実施態様の一つは、前記フロートは、前記通気管の他方端側の部位に配置されたウエイトを有する。
【0014】
本発明のさらに他の実施態様の一つは、前記タンクは、通気孔と、排水孔と、前記排水孔側に位置するウエイトとを有し、前記外枠体の前記第1面に位置する開口に回転可能に連結される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水電池によれば、外枠体に所要量の液体を注入し、外枠体をその正極体が固定された部分が下側になるように配置することによって正極体及び負極体が注液域に位置し、正極体と負極体とがイオン化反応して起電力が発生する。一方、かかる起電状態(オン状態)から上下の向きを逆にしたとき、すなわち、正極体の固定された部分が上側となるように水電池を配置したときには、正極体又は負極体のいずれか一方が注液域に位置せず、起電力が発生しない。したがって、水電池の配置態様(向き)を変えることによって起電力のオン、オフを切り替えることができるので、それを使用する電気機器の電源スイッチは不要であり、簡易な構造及び外観デザインとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態における水電池の斜視図。
図2】水電池の分解斜視図。
図3図1に示すIII−III線に沿う模式的断面図。
図4図1に示すIV−IV線に沿う模式的断面図。
図5】水電池内部に水が注入された状態における図3と同様の模式的断面図。
図6】水電池内部に水が注入され、起電状態にある図4と同様の模式的断面図。
図7】水電池内部に水が注入され、非起電状態にある図4と同様の模式的断面図。
図8】水電池を使用した電球ライトの展開斜視図。
図9】第2実施形態における水電池の斜視図。
図10図9に示すX−X線に沿う模式的断面図。
図11図9の配置態様における水電池の内部の様子を示す図。
図12】外枠体の第3面を配置面に当接させた配置態様における水電池の内部の様子を示す図。
図13】外枠体の第5面を配置面に当接させた配置態様における水電池の内部の様子を示す図。
図14】(a)図12の配置態様におけるタンクの内部の様子を示す図。(b)外枠体の第2面を配置面に当接させた配置態様におけるタンクの内部の様子を示す図。(c)外枠体の第1面が下方に位置する配置態様におけるタンクの内部の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1及び2を参照すると、水電池10は、略円筒状であって、縦断方向Y及び横断方向Xを有し、第1及び第2端部11,12と、第1及び第2端部11,12間において縦断方向Yに延びる筒状の外周面部14とを有する外枠体10aを含む。外枠体10aの第1端部11の表面には、水を内部に注入するための複数の注水口16が設けられている。外周面部14の一部には、その周方向において互いに対向する第1平坦部17と第2平坦部18が位置する。第1平坦部17には、発電時において水電池10の内部に発生する発生ガスを放出するための複数の排気口19が位置する。外枠体10aは、横断方向Xに延び、外周面部14を2等分する横中心線Q−Qを有し、説明の便宜上、横中心線Q―Qから第1平坦部17側の第1区域21と、横中心線Q−Qから第2平坦部18側の第2区域22とに区分される。第1及び第2平坦部17,18はいずれか一方のみが形成されていてもよく、起電状態と非起電状態とが視認できるように、第1区域21と第2区域22とに異なる色彩を付したり、模様、文字、商標等からなる装飾要素を付してもよい。
【0018】
水電池10は、円筒状の外形を形成する、例えば、金属製又はプラスチック製の中空の円筒体23と、その内周面に当接する薄膜状の正極体(カソード)24と、円筒体23の内部に配置される細棒状の負極体(アノード)25とをさらに含む。正極体24の外面全体には、活性炭とフッ素樹脂化合物等とを混合した正極活物質がスプレー塗布した接着剤を介して固定されている。また、正極体24は、通気孔19から内部に発生したガスを排出し易いようにするためにメッシュ状に形成することもできる。第1端部11は、中央に開孔を有する円形の第1封止カバー26と、縦断方向Yの外側へ凸となる正極端子27とから形成され、正極端子27の突起27aが第1封止カバー26の開孔に挿入された状態で正極端子27と第1封止カバー26とが嵌合される。第2端部12は、有頭ピン状の負極端子28と、ボルト状の第2封止カバー29とから形成される。負極端子28は、円形の頭部28aと、頭部28aの内面の中央部から縦断方向Yの内側に延び、外周面にねじ山(螺旋部)が設けられた支持部28bとを有する。第2封止カバー29は、断面円形の台座部位29aと、台座部位29aから縦断方向Yの内方に延びる、外周面にねじ山(螺旋部)が形成された円筒部位29bとを有する。第2封止カバー29は、台座部位29aと円筒部位29bとの中央においてそれらを貫通する透孔30と、台座部29aの外面に位置する細孔30aとを有する。
【0019】
第1封止カバー26は、接着又は溶接によって円筒体23の開口端に取り付けられており、第2封止カバー29は、円筒部位29bが円筒体23の開口端側の内面に設けられた螺旋部23aに螺合し、Oリング31を介して連結される。第2封止カバー29の透孔30の内周面には、市販の食塩(塩化ナトリウム)等を円筒中空状に固化した塩化物32が当接して配置されており、塩化物32の中空部には負極体25が挿通される。水電池10の組立状態において、塩化物32と負極体25とは第2封止カバー29内に配置された、疎水性繊維不織布又はプラスチックから形成された円形の止水用パッキン33と当接している。負極端子28の支持部28bは、第2封止カバー29の台座部位29aの細孔30aに挿通されて止水用パッキン33の中央に位置する貫通孔33aに挿入され、負極体25の一端25a側に設けられた螺旋孔35に螺合される。負極体25は、負極端子28の支持部28bによって円筒体23内において安定的に固定される。
【0020】
正極体24には、電気伝導性の良好な金属、例えば、塩化銀、ステンレス、銅合金や活性炭等を用いることができる。負極体25には、イオン化傾向の比較的に大きな電極活物質、例えば、金属マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等を用いることができる。
【0021】
図3及び図4を参照すると、正極体24は、断面略半円形の薄板状であって、縦断方向Yにおいて離間対向する第1及び第2端部24a,24bと、周面部14の周方向において離間対向する両側縁24cとを有し、通気孔19と対向して配置される。正極体24の第1端部24aは内方へ向かって僅かに屈曲した形状を有して正極端子27の内面に当接しており、第2端部24bは、第2封止カバー29の円筒部位29bに当接している。図4を参照すると、正極体24は、円筒体23の内周寸法よりも小さい外形状を有するものであって、その両側縁24cは横中心線Q−Qと交差していない。
【0022】
図5を参照すると、水電池10の内部には、注水口16から円筒体23の中空部全体の容積の約70〜80%の量の液体が注入されて注液領域38が形成されており、中空部の第1端部11側には液体が存在しないスペースSが形成される。図6に示すとおり、第1平坦部17が机や床面等の配置面40に接するように配置した状態において、水電池10の内部においてスペースSは第2区域22側に位置し、注液領域38の液面WLは仮想横中心線Q−Qとほぼ並行した状態となる。かかる状態において、正極体24は注液域38内に位置しているので、注入された液体が酸化反応触媒として作用して正極体24と負極体25との間にイオン化反応及びそれによる電位差が生じ、所要の起電力が発生する。「液体」としては、例えば、水、食塩水、電解液等を用いることができ、市販のミネラル水や水道水等であっても一定の電気伝導率を有しているので酸化反応触媒として利用することができる。それらの一般的に使用される水が水電池10の内部にオプションとして収納された塩化物32と接触しながら注入されることによってより電気伝導率の高い電解液として利用することができ、より高い起電力を発生させることができる。また、塩化物32が食塩を固化したものであれば第2封止カバー29とともに絶縁体としての機能を果たす。
【0023】
本実施形態の水電池10は、通常の単三形の乾電池と同様に、約1.0〜2.0Vの起電力を発生させることができる。したがって、単三形の乾電池によって電力供給される各種の家庭用電気機器の電力源として使用することができる。また、水電池10の各寸法、注入される液体の量、正極体及び負極体の大きさ等を調整することによって、単一、単二形等の単三形以外の形式の乾電池として利用したり、船舶の大型動力装置等の電力源として利用したりすることができる。本発明の水電池10の場合には、液体が注入されていない状態において放電しないので通常の乾電池に比べて長期保存が可能であって、数年〜数十年保存することができる。また、一度使用した後であっても内部の液体を取り出すことによって、長期間保存することが可能であって、アノードが残存している限りにおいて何度でも繰り返し再使用でき、かつ、カソードを含む外枠体10a自体は半永久的に使用できる。
【0024】
図7を参照すると、図6に示した水電池10の状態、すなわち、第1平坦部17が配置面40に当接した状態から180度回転されて、第2平坦部18が配置面40に当接した状態で配置されている。かかる状態において、注入された液体は重力方向へ移動して注液域38は第2区域22側、スペースSは第1区域21にそれぞれ位置し、正極体24は注液域38の液面WLよりも上方に位置する。図示したように、かかる態様においては、正極体24に水が触れない状態となるので、電気化学反応は生じず、起電力が発生しない状態となる。このように、水電池10を図6に示した第1平坦部17を配置面40に当接した起電状態(オン状態)から180度回転させて図7に示した第2平坦部18が配置面40に当接した非起電状態(オフ状態)にすることによって、起電力のオン・オフを簡易に切り替えることができる。
【0025】
また、水電池10を電力源として使用する電気機器において、その内部に収納された水電池10の配置がオン・オフ状態になるように電気機器自体の上下の向きを変えることによって、電気機器自体の電源の切り替えを容易に行うことができる。したがって、電気機器自体の手動の電源スイッチ等は不要であって、その外部構造及びデザインをより簡易なものとすることができる。
【0026】
図8を参照すると、例えば、1つの水電池10を電力源として内部に収納する、ソケット42を有する本体43と、蓋体44とを含む小型ライト45において、水電池10の内部に水を注入し、第1平坦部17が下方に位置する態様で小型ライト42のソケット43内に配置することによって、水電池10から起電力が供給されて小型ライト45の電球46が点灯する。次に、小型ライトを180度回転させて蓋体45の平坦な上面44aが当接面40に当接するように配置することによって、水電池10内部において注水域38が重力方向へ移動し、すなわち、第2区域22側に位置し、スペースSが第1区域21側に形成されて正極体24が水に触れない状態となり起電力が発生せず、電源がオフになって小型ライト45の電球46の灯りが消える。このように、小型ライト45等の家庭用電気機器自体の配置向きを変えることによって、その電源の切り替えを容易に行うことができるので、ボタン操作による電源スイッチ等は不要であって、より簡易な構成かつすっきりとした外観を有する。
【0027】
<第2実施形態>
図9を参照すると、本実施形態の水電池10は、縦断方向Yにおいて互いに対向する第1及び第2面51,52、横断方向Xにおいて互いに対向する第3及び第4面53,54、上下方向Zにおいて互いに対向する第5及び第6面55,56を有する角状の外枠体57と、外枠体57内の空気(ガス)を排出するための通気システムとを含む。水電池10は、縦断方向Yの寸法Lが約5.0〜10.0cm、横断方向Xの寸法Wが約1.0〜5.0cm、上下方向Zの寸法Hが約1.0〜5.0cmであって、約1.0〜2.0Vの起電力を発生することのできる比較的に大型のバッテリーである。また、外枠体57は、横断方向Xに延び、その外周面を2等分する中心線Qを有し、第6面56側の第1区域48と、第5面55側の第2区域49とに区分される。水電池10は、それを複合的に組み合わせることによって船舶や大型タンカーに備え付けられた電気機械装置の動力源にも使用可能であって、かかる場合には、各寸法L,W,Hは数メートル以上の大きさを有する。
【0028】
外枠体57は、合成樹脂製であって、第3及び第4面53,54の内面には矩形薄板状の正極体(カソード)60A,60Bがそれぞれ配置されており、外枠体57内には、棒状の負極体(アノード)66が挿抜可能に挿入される。正極体60A,60Bと負極体66とは第1区域48に位置し、正極体60A,60Bは負極体66よりも幅寸法が大きく、正極体60A,60B間に負極体66が位置する。また、外枠体57内には所要量の液体、例えば、外枠体57内全体の許容容量の約70〜80%の容量の液体が注入されて注液領域61が形成されており、注液領域61の上方にはスペースSが形成される。外枠体57の第2面52には、第6面56側の突出部52aに中央に開口80aを有する蓋体80が螺着されており、開口80aには、負極体66の端部66aが挿通される。蓋体80を取り外すことによって、外枠体57の内部に液体を注入、排出することができる。
【0029】
通気システムは、外枠体57の第1面51の外面に位置する通気用及び貯水用のタンク62と、タンク62に連結されるシリコーンゴム等の軟質部材から形成された通気管63とを有する。タンク62は第1面51に設けられた開口(取付孔)にゴム製の止水シール64を介して挿入される延出部65を有する。タンク62は延出部65を軸として外枠体57に対して360度回転可能に取り付けられており、使用を重ねることによって延出部65と止水シール64との摺動が繰り返されて後者が摩耗したときには、それを交換することができる。タンク62は、通気管63からタンク62に流れ込んできた発生ガスを排気するための通気孔67と、タンク62内に流れ込んできた液体を排出するための排水孔68とを有し、排水孔68は栓69で封止される。タンク62内には、通気孔67と排水孔68との間に分離壁70が設けられており、分離壁70の排水孔68側に通気管63に浸入してタンク62に移動した液体71が貯められる。また、タンク62の内壁と分離壁70の先端部との間にはクリアランス72が形成されており、タンク62の排水孔68側には、金属製のウエイト73が配置される。上記のとおり、タンク62は外枠体57に回転可能に連結されているところ、ウエイト73が排水孔68側に位置することから、図示するように外枠体57の第5面55が上方に位置する態様から上下を逆にして第6面56が上方に位置するように配置したとしても、ウエイト73の自重によってタンク62が回転して排水孔68側が下方に位置する。
【0030】
通気管63の他端63bには、ゴム製又はプラスチック製のフロート75がその中央部を貫通するジョイント76を介して連結される。フロート75内は中空であって、通気管63の他端63b側には金属製のウエイト77が配置されている。ウエイト77は、その質量がフロート75の約半分が液面WLから露出するように調整されている。ジョイント76のフロート75を貫通する側の端部は先細状であって、開口端76aを有する。本実施形態において、互いに連結されるタンク62、通気管63及びジョイント76は別体から構成されているが、それらの一部又は全部が一体に成形されていてもよい。
【0031】
図11に示すとおり、かかる構成を有する水電池10において、所要量の液体が外枠体57内に注入されることによって、フロート75が注液域61の液面上に浮き上がる。また、注入された液体が酸化反応触媒として作用して正極体60A,60Bと負極体66との間にイオン化反応及びそれによる電位差が生じ、所要の起電力が発生する。外枠体57は所要の大きさを有するものであるから、通常の単三形の水電池に比べて多量の起電力を発生させることができる。ただし、水電池10やその構成部材の大きさ、形状等を調整することによって、単三形等の市販の水電池として使用することもできる。
【0032】
発電してから一定時間経過した場合には、発電時の電気反応によって、外枠体57内にはガスが発生し、それによって外枠体57内の内圧が上昇し、その内部の空気は比較的に高圧となる。外枠体57は、強度を考慮して金属や合金等の硬質材料で形成することもできるが、コスト面や水電池10を使用する電気磁気機器の種類等を考慮してアルミやプラスチック等から形成することが好ましい。したがって、外枠体57をプラスチック等で形成した場合には、内部に充満した発生ガスの圧力によって外枠体57の一部にひび割れが生じて内部の水が漏れ出たりするおそれがある。かかる問題を解消するために、従来の水電池では、発生ガスを外部に放出するための排気口が水電池本体に設けられていた。しかし、排気口から発生ガスとともに内部の電解液が漏れ出て起電力の低下や漏電を生じるおそれがあった。
【0033】
本実施形態の場合には、フロート75が液面上に浮き上がってジョイント76の開口端76aがスペースS内に位置していることから、開口端76aからスペースS内の発生ガスの一部が通気管63内に流入してタンク62内に移動し、クリアランス72を通過して外部に放出される。それにより、外枠体57内の圧力を下げることができるので、発電時間の経過とともに多量に発生ガスが発生しても、それによる内圧によって外枠体57がひび割れ等するのを防止することができる。また、水電池10は、負極体66が蓋体80を介して外枠体57に挿抜可能に挿入されているので、一定時間発電して起電力が低下したときに、負極体66と外枠体57内の水とを新たなものに交換することによって、再び所要量の起電力を発生させることができる。図示していないが、正極体60A,60Bについても、第3及び第4面53,54の取付孔に正極体60A,60Bを取り外し可能に取り付けることによって、負極体66と同様に、起電力が低下したときに新たなものに交換してもよい。
【0034】
図12を参照すると、第3面53が配置面40に配置される態様の場合には、2枚の正極体60A,60B(アノード板)のうちの1枚の正極体60Aのみが注液域61内に位置して負極体66との間に起電力を発生させ、一方、正極体60BはスペースSに位置するので、図9に示すような2枚の正極体が注液域61内に位置する場合に比して電気化学的面積が半減し、比較的に小さな起電力を生じることになる。また、図13に示すとおり、第5面55側が配置面40に当接する配置態様のときには、負極体66がスペースSに位置して水と接触しない状態となるので、電気化学反応が生じず、起電力が発生しない。したがって、このように、配置面40に対する水電池10の位置(向き)を変えることによって、起電力を生じさせたり(オン状態)、起電力を半減させたり、起電力を発生しない状態(オフ状態)とすることができ、外枠体57の該面に電源を切り替えるための操作ボタン等は不要である。また、図9〜13を参照すると、外枠体57内のフロート75は、水電池10が配置面40に対してどのような向きで配置されていても、ウエイト77の位置する側が液面WL下に位置するように回転して浮上がりかかる状態が維持されるので、常にスペースS内の発生ガスを外部に放出させることができる。
【0035】
図14(a)を参照すると、第5面55を配置面40に当接した配置態様において、タンク62は外枠体57とともに180度回転して、ウエイト73が下側に位置する態様となる。また、図14(b)を参照すると、外枠体57の第2面52を配置面に当接させた配置態様において、タンク62内の液体71は下方、すなわち、第1面51側に位置して通気孔67から不用意に外部に漏れ出るおそれはない。また、図14(c)を参照すると、外枠体47の第1面51が下方に位置する配置態様において、タンク62内の液体71はウエイト73の収納された部位と分離壁70との間に位置し、分離壁70によって通気孔67側への移動が規制されるので、通気孔67から外部に漏れ出るおそれはない。
【0036】
図示していないが、例えば、正極体60A,60Bと負極体66とから延びるリード線81,82を電球に電気的に接続することによって、水電池10自体を持ち運び可能な電気ライトとして利用することもできる。かかる場合には、電気ライト本体としての水電池10の向きを変えることによって、電源のオン、オフ及び電力の強弱を調整することができるので、電源の切り替えスイッチが不要であって、簡易な構造及びシンプルな外観デザインを有することができる。また、例えば、通常の電気ライト等に使用される、消費電力が約0.5〜1.0WのLED電球に使用される場合には、連続して15〜30時間程度連続して点灯させることができる。
【0037】
水電池10を構成する各部材としては、前記の材料以外に、この種の物品に用いられる材料を制限なく用いることができる。また、水電池10の形状は、本実施形態1及び2の形状に限定されるものではなく、所要の起電力を生じる限りにおいて、扁平状、楕円形状などの各種公知の形状を有していてもよい。また、各実施形態における各構成部材の各種寸法は、必要な起電力の大きさに合せて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 水電池
10a 外枠体
11 第1端部
12 第2端部
21 第1区域
22 第2区域
24 正極体
25 負極体
27 正極端子
28 負極端子
38 注液域
57 外枠体
51 第1面
52 第2面
53 第3面
54 第4面
61 注液域
62 タンク
63 通気管
67 通気孔
68 排水孔
73 ウエイト
75 フロート
76 ジョイント
76a ジョイントの開口端
77 ウエイト
Q 中心線
S スペース
X 横断方向
Y 縦断方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14