(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部によって信頼度が高いと判定された計測基準箇所に基づいて算出された計測値が表示される表示部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図14に基づいて詳細に説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8及び記憶部9を備える。前記超音波診断装置1は、本発明における計測装置の実施の形態の一例である。
【0011】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された複数の超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。
【0012】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、前記制御部8からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2に供給する。また、前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0013】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための信号処理を行なう。例えば、前記エコーデータ処理部4は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等を含むBモード処理を行ない、Bモードデータを作成する。
【0014】
前記表示制御部5は、前記Bモードデータに対し、スキャンコンバータ(Scan Converter)による走査変換を行なってBモード画像データを作成し、このBモード画像データに基づくBモード画像を前記表示部6に表示させる。
【0015】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0016】
前記制御部8は、CPU(Central Processing Unit)であり、前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。例えば、前記送受信ビームフォーマ3、前記エコーデータ処理部4、前記表示制御部5の機能は、前記制御プログラムによって実行されてもよい。
【0017】
さらに、前記制御部8は、
図2に示された輪郭設定部81、評価値算出部82、平均値算出部83、判定部84の機能を実行させる。詳細は後述する。前記評価値算出部82は、本発明における評価値算出部の実施の形態の一例であり、その機能は本発明における評価値算出機能の実施の形態の一例である。また、前記平均値算出部83は、本発明における計測値算出部の実施の形態の一例であり、その機能は本発明における計測値算出機能の実施の形態の一例である。また、前記判定部84は、本発明における判定部の実施の形態の一例であり、その機能は本発明における判定機能の実施の形態の一例である。
【0018】
前記記憶部9は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリ(memory)などである。
【0019】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。ここでは、前記超音波診断装置1を用いて、被検体の血管に対する計測を行なう場合の作用について説明する。血管に対する計測は、例えば血管の短軸断面における血管壁の壁厚や血管径の計測などである。これら計測は、血管壁の動きを追跡して行われる。
【0020】
計測を行なうにあたり、先ず被検体に対して前記超音波プローブ2によって超音波の送受信を行なってエコー信号を取得する。前記超音波プローブ2の向きは、被検体の血管の走向方向に対して、前記超音波プローブ2のアジマス(azimuth)方向(超音波振動子の配列方向)が直交する向きとする。そして、前記超音波プローブ2によって取得されたエコー信号に基づいて、前記エコーデータ処理部4がBモードデータを作成する。このBモードデータは、ローデータ(raw data)であり、前記記憶部9に記憶される。超音波の送受信時に、リアルタイムのBモード画像が表示されてもよい。
【0021】
計測は、超音波の送受信終了後に行われる。具体的には、先ず前記記憶部9からBモードデータが読み出される。そして、このBモードデータに基づいて、前記表示制御部5がBモード画像データを作成して、
図3に示すように前記表示部6にBモード画像BIを表示させる。このBモード画像BIは、一点鎖線で示された血管BLの短軸断面の画像である。
【0022】
前記表示部6にBモード画像BIが表示されると、血管BLの血管壁の内壁を示す第一の円Cと、外壁を示す第二の円C2とを設定する。この第一の円C1及び第二の円C2の設定は、静止画のBモード画像BIにおいて行われる。具体的に、
図4のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1では、操作者は、前記操作部7を用いて前記表示部6に表示されたカーソル(図示省略)によって、
図5に示すように、前記Bモード画像BIにおいて血管BLの内壁の三点p1,p2,p3を指定する。ちなみに、
図5では、血管BLは図示省略している。
【0023】
次に、ステップS2では、前記輪郭設定部81は、
図6に示すように、前記ステップS1において指定された点p1,p2,p3を通る第一の円C1を設定する。この第一の円C1は、血管の内壁の輪郭を示す円である。
【0024】
ステップS2において前記第一の円C1が設定されると、ステップS3では、前記輪郭設定部81は、前記第一の円C1の外側にこの第一の円C1よりも径が大きい第二の円C2を設定する。例えば、前記輪郭設定部81は、
図7に示すように、前記点p1,p2,p3から前記円C1の外側に向かって、血管の外壁の輪郭を探索し、Bモード画像BIの輝度差又は輝度の変化率が所定の閾値よりも大きくなる点P1,P2,P3を特定する。ちなみに、前記輪郭設定部81は、エコー信号の強度(Bモードデータのデータ値)に基づいて輝度差又は輝度の変化率を算出し、前記P1,P2,P3を特定する。点P1,P2,P3が特定されると、前記輪郭設定部81は、
図8に示すように、点P1,P2,P3を通る第二の円C2を設定する。この第二の円C2は、血管の外壁の輪郭を示す円である。
【0025】
前記第一の円C1及び前記第二の円C2は、前記表示部6に表示されてもよいし、表示されなくてもよい。
【0026】
なお、ここでは円を設定することとしているが、円ではなく楕円が設定されてもよい。すなわち、前記第一の円C1の代わりに第一の楕円C1′が設定され、前記第二の円C2の代わりに第二の楕円C2′が設定されてもよい。
【0027】
以上のようにして前記第一の円C1及び前記第二の円C2が設定されると、血管BLの計測を開始する。計測は、前記第一の円C1及び前記第二の円C2(または、第一の楕円C1′及び第二の楕円C2′)上の点に基づいて行われる。ここでは、血管の拍動に伴う前記第一の円C1及び前記第二の円C2(または、第一の楕円C1′及び第二の楕円C2′)上の点の動きを追跡して、複数の時相において計測が行われる。計測は、血管の壁厚や血管径などの計測である。
【0028】
壁厚としては、各時相において平均の壁厚Wavが算出される。具体的には、例えば
図9に示す第一の円C1及び第二の円C2は同心円ではない場合、第一の円C1における点Pinと第二の円C2における点Poutとの距離Xが複数算出され、この複数の距離Xの平均値が、平均の壁厚として算出される。なお、
図9においては、前記第一の円C1及び前記第二の円C2において、点Pin,Poutはそれぞれ五点ずつしか図示されておらず、一部のみが図示されている。
【0029】
前記点Pin,Poutは、隣り合う複数画素からなる点である。この点Pin,Poutは、Bモード画像において動きを追跡する対象であり、例えば
図10に示されるような隣り合う複数の画素pid,pibの集合体である。点Pin,Poutの動きを追跡する手法としては、例えばオプティカルフロー法などの公知の手法が用いられる。
【0030】
図10では、第一の円C1における点Pinが図示されている。画素pidは、
図10においてドット(dot)を有する部分であり、この部分は血管の内腔に該当する。また、画素pibは、ドットを有さない部分であり、この部分は血管壁に該当する。従って、図において太線wlで示された前記画素pid及び前記画素pibの間が内壁の輪郭になる。すなわち、前記点Pinは、内壁の輪郭を含む。
【0031】
例えば、第一の円C1及び第二の円C2ではなく、第一の楕円C1′及び第二の楕円C2′が設定された場合、血管径としては、各時相において平均の血管径Davが算出される。血管径として、内径と外径の両方を算出してもよい。具体的には、
図11に示すように、前記第一の楕円C1′上の二点Pin,Pinの距離Yiが複数算出され、この距離Yiの平均値が内径の平均値として算出される。また、
図12に示すように、前記第二の楕円C2′上の二点Pout,Poutの距離Yoが複数算出され、この距離Yoの平均値が外径の平均値として算出される。
【0032】
なお、
図11及び
図12において、点Pin,Poutは、六点ずつしか図示されておらず、一部のみが図示されている。
【0033】
ちなみに、前記点Pin,Poutは、本発明における計測基準箇所の実施の形態の一例である。
【0034】
ここで、前記超音波プローブ2へのエコー信号の反射率が小さい部分は、計測誤差が大きい恐れがあるため、平均の壁厚Wav及び平均の血管径Davの算出に用いない点を特定した後に、計測を行なう。なお、平均の壁厚Wav及び平均の血管径Davの算出に用いない点は、計測自体を行なわなくてもよい。
【0035】
具体的に、計測のフローについて
図13のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS11では、平均の壁厚Wav及び平均の血管径Davの算出に用いない点を特定するための基準として、前記判定部84が前記超音波プローブ2へのエコー信号の反射率に関する基準評価値を算出する。
【0036】
基準評価値の算出について詳細に説明する。先ず、前記判定部84は、
図14に示された前記第一の円C1及び前記第二の円C2の一部分o1,o2,o3,o4における全ての点Pin,Poutについて、前記画素pid,pibの輝度の変化率Br(後述)の平均値Bravを算出する(第一の楕円C1′及び第二の楕円C2′も同様)。前記第一の円C1及び前記第二の円C2の一部分o1,o2,o3,o4は、血管壁の上部と下部に位置し、超音波の音線方向に対して直交或いは直交に近い角度を有する部分である。このように、超音波の音線方向に対して比較的大きい角度を有する部分は、前記超音波プローブ2へのエコー信号の反射率が大きく、血管壁とそれ以外の部分とのコントラストが明瞭である。前記第一の円C1及び前記第二の円C2の一部分o1,o2,o3,o4における点Pin,Poutは、本発明において、エコー信号の反射率が大きいとして予め設定された所定の計測基準箇所の実施の形態の一例である。
【0037】
前記第一の円C1及び前記第二の円C2の一部分o1,o2,o3,o4は、例えばその円周を複数に等分割して得られる一区画であってもよい。
【0038】
各点Pin,Poutの輝度の変化率Brは、各点Pin,Poutにおける全ての画素pidの輝度の平均と全ての画素pibの輝度の平均とに基づいて算出する。ここで、例えば前記画素pidは所定の閾値よりも大きい輝度を有する画素であり、前記画素pibは所定の閾値以下の輝度を有する画素である。
【0039】
次に、前記判定部84は、下記(式1)により、基準評価値Eを算出する。
E=k×Brav ・・・(式1)
ただし、k<1である。kは、血管壁の追跡をできるだけ正確に行うことができる輝度の変化率を、基準評価値Eとして得ることができる値に設定される。基準評価値Eは、本発明における基準評価値の実施の形態の一例である。
【0040】
次に、ステップS12では、前記平均値算出部83は、平均の壁厚Wavや平均の血管径Ravを算出する。その算出にあたり、前記判定部84は、前記各点Pin,Poutにおける輝度の変化率Brと前記基準評価値Eとを比較し、各点Pin,Poutに基づいて算出される計測値(前記距離X、前記距離Yi及び前記距離Yo)に対する信頼度を判定する。具体的には、前記判定部84は、E≦Brである点Pin,Poutに基づいて算出される計測値は信頼度が高く、平均の壁厚Wavや平均の血管径Davを算出する計測値として用いることができると判定する。ただし、前記判定部84による判定時に、前記計測値は算出されていなくてもよいし、算出されていてもよい。
【0041】
前記平均値算出部83は、前記判定部84によって特定されたE≦Brである点Pin,Poutのみを用いて前記距離X、前記距離Yi及び前記距離Yoを算出し、平均の壁厚Wavや平均の血管径Ravを算出する。これにより、E>Brである点Pin,Poutが除かれて、平均の壁厚Wavや平均の血管径Davが算出される。平均の壁厚Wavや平均の血管径Davは、本発明における反映値の実施の形態の一例である。
【0042】
前記距離Xを算出するための点Pin,Poutのうち、少なくともいずれか一点の輝度の変化率Brが前記基準評価値Eよりも小さければ、その距離Xは平均の壁厚Wavを算出するための距離には含めない。また、前記距離Yiを算出するための点Pin1,Pin2のうち、少なくともいずれか一点の輝度の変化率Brが前記基準評価値Eよりも小さければ、その距離Yiは内径の平均値を算出するための距離には含めない。さらに、前記距離Yoを算出するための点Pout1,Pout2のうち、少なくともいずれか一点の輝度の変化率Brが前記基準評価値Eよりも小さければ、その距離Yoは、外径の平均値を算出するための距離には含めない。
【0043】
前記各点Pin,Poutにおける輝度の変化率Brは、前記評価値算出部82によって算出される。この各点Pin,Poutにおける輝度の変化率Brは、本発明におけるエコー信号の反射率に関する評価値の実施の形態の一例である。
【0044】
前記平均値算出部83は、前記点Pin,Poutの血管の拍動に伴う動きを追跡し、例えば最小径の血管及び最大径の血管のそれぞれについて、平均の壁厚Wavや平均の血管径Davを算出し、変化率などを算出する。
【0045】
本例によれば、輝度の変化率Brが基準評価値Eよりも小さい点Pin,Poutから算出される距離X,Yi,Yoを含めないで、平均の壁厚Wavや平均の血管径Ravが算出されるので、エコー信号の反射率の影響によって、算出される平均値が不正確になることを防止することができる。
【0046】
次に、変形例について説明する。基準評価値Eの算出において、前記判定部84は、前記第一の円C1及び前記第二の円C2(または、第一の楕円C1′及び第二の楕円C2′)の一部分o1,o2,o3,o4における全ての点Pin,Poutではなく、一部の複数の点Pin,Poutについて、前記輝度の変化率Brの平均値Bravを算出してもよい。また、前記判定部82は、前記第一の円C1及び前記第二の円C2(または、第一の楕円C1′及び第二の楕円C2′)の一部分o1,o2,o3,o4のうちのいずれか一つ又は複数における全て又は一部の複数の点Pin,Poutについて、前記平均値Bravを算出してもよい。すなわち、前記判定部84は、例えば前記第一の円C1の一部分o1における全て又は一部の複数の点Pinについての前記平均値Bravを算出してもよい。また、前記判定部84は、例えば前記第一の円C1の一部分o1及びo3における全て又は一部の複数の点Pinについての前記平均値Bravを算出してもよい。
【0047】
また、前記判定部84は、下記(式2)により、前記基準評価値Eを算出してもよい。
E=k×Br ・・・(式2)
すなわち、前記判定部84は、前記第一の円C1及び前記第二の円C2(または、第一の楕円C1′及び第二の楕円C2′)の一部分o1,o2,o3,o4のいずれかにおける一点Pin,Poutについての前記輝度の変化率Brに前記係数k(k<1)を乗算して前記基準評価値Eを算出してもよい。
【0048】
さらに、点Pin,Poutにおける輝度の変化率Brは、点Pin,Poutにおける一部の画素から算出されてもよい。例えば、
図15に示すように、点Pinにおける輝度の変化率Brが、一点鎖線で囲まれた一部の画素pid1,pid2の平均と一部の画素pib1,pib2の輝度の平均とに基づいて算出されてもよい。
【0049】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態の超音波診断装置1のブロック構成は、第一実施形態と同様であり説明を省略する。
【0050】
第二実施形態の超音波診断装置1の作用について説明する。第二実施形態では、計測のフロー以外は第一実施形態と同様である。第二実施形態における計測のフローは、
図13に示す第一実施形態のフローとは異なり、基準評価値は設定されている。基準評価値は、第一実施形態とは異なっており後述する。
【0051】
本例における平均の壁厚Wavの算出及び平均の血管径Davの算出について説明する。平均の壁厚Wav又は平均の血管径Davが算出される前に、前記評価値算出部82は、前記点Pin及び前記点Poutについて、基準線blに対する生態組織構造の方向btの角度θを算出する。この角度θは、本発明における生体組織構造の方向性に関する評価値の実施の形態の一例である。また、前記基準線blの方向は、本発明における所定の基準方向の実施の形態の一例である。
【0052】
例えば、基準線blは、
図16に示すように、超音波の音線方向slであってもよく、この超音波の音線方向slと生体組織構造の方向btとの角度θが算出されてもよい。また、
図17に示すように、基準線blは、超音波の音線方向と直交する方向oslであってもよく、この直交する方向oslと生体組織構造の方向btとの角度θが算出されてもよい。
【0053】
生体組織構造の方向btは、ここでは血管壁の方向である。生体組織構造の方向btは、Bモード画像などの超音波画像におけるエコー信号の空間強度分布(輝度分布)から特定される。具体的には、点Pin,Poutにおける空間輝度分布に基づいて輝度勾配ベクトルを算出し、前記方向btを特定する。例えば、
図18に示すように、点Pin又は点Poutにおいて、水平方向に画素pid及び画素pibが並んでいる場合、水平方向を生体組織構造の方向btとする。また、
図19に示すように、点Pin又は点Poutにおいて、垂直方向に画素pid及び画素pibが並んでいる場合、垂直方向を生体組織構造の方向btとする。また、
図20に示すように、点Pin又は点Poutにおいて、斜め方向に画素pid及び画素pibが並んでいる場合、斜め方向を生体組織構造の方向btとする。
【0054】
前記平均値算出部83による平均の壁厚Wavや平均の血管径Davの算出にあたり、前記判定部84は、前記各点Pin,Poutにおける角度θと基準評価値E′とを比較して信頼度の判定を行なう。ここでの基準評価値E′は、基準線blに対して設定された角度である。例えば、前記判定部84は、点Pin,Poutにおいて算出された角度θが、例えば
図21に示すように、基準線blである超音波の音線方向slに対して±θth1の範囲内であれば(
図21においてドット(dot)で示された範囲内であれば)、その点Pin,Poutに基づいて算出される計測値(前記距離X、前記距離Yi及び前記距離Yo)は信頼度が高いと判定する。ここでは、±θth1が前記基準評価値E′である。
【0055】
また、前記判定部84は、点Pin,Poutにおいて算出された角度θが、例えば
図22に示すように、基準線blである超音波の音線方向と直交する方向oslに対して±θth2の範囲内ではない場合に(
図22においてドットで示された範囲内である場合に)、その点Pin,Poutに基づいて算出される計測値(前記距離X、前記距離Yi及び前記距離Yo)は信頼度が高いと判定する。ここでは、±θth2が前記基準評価値E′である。
【0056】
前記±θth1,±θth2は、デフォルト(default)で記憶されていてもよいし、操作者によって設定されてもよい。前記±θth1,±θth2は、本発明における基準評価値の実施の形態の一例である。前記θth1,θth2は、エコー信号の反射率を確保することができ、血管壁の追跡をできるだけ正確に行なうことができるか否かという観点から設定される。
【0057】
前記平均値算出部83は、前記判定部84によって前記±θth1,±θth2の範囲内であると判定されたPin,Poutを、平均の壁厚Wavや平均の血管径Davの算出に用いる。
【0058】
本例によれば、血管壁の動きをできるだけ正確に行うことができる角度を有する部分における点Pin,Poutを用いて平均の壁厚Wavや平均の血管径Davが算出されるので、エコー信号の反射率の影響によって、算出される平均値が不正確になることを防止することができる。
【0059】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、実際の血管壁の輪郭が、前記第一の円C1及び前記第二の円C2とは異なる場合があるため、前記輪郭設定部81は、前記第一の円C1及び前記第二の円C2における点を探索開始点として、Bモード画像において血管壁の輪郭を探索し、これを抽出してもよい。前記第一の円C1における点を探索開始点として抽出される血管壁の輪郭は、血管の内壁の輪郭である。また、前記第二の円C2における点を探索開始点として抽出される血管壁の輪郭は、血管の外壁の輪郭である。この場合、上述のようにして抽出された血管の内壁の輪郭上の点及び外壁の輪郭上の点を計測基準箇所として、上記実施形態と同様にして平均の壁厚Wavや平均の血管径Davなどの算出が行われる。
【0060】
前記血管の輪郭の抽出は、前記第一の円C1及び前記第二の円C2を設定することなく、以下のようにして行われてもよい。すなわち、先ず、操作者が、Bモード画像上において、
図23に示すように、血管壁の任意の複数点をカーソル等で指定する。
図23では、点pp1,pp2の二点が指定されている。前記輪郭設定部81は、前記点pp1,pp2を探索開始点として、内壁側と外壁側のそれぞれの方向へ向かって、内壁と外壁の探索を行なう。前記輪郭設定部81は、輝度差や輝度の変化率に基づいて、
図24に示すように、内壁の輪郭上の点ppi1,ppi2及び外壁の輪郭上の点ppo1,ppo2を特定する。
【0061】
次に、前記輪郭設定部81は、
図25に示すように、前記内壁上の点ppi1,ppi2及び外壁上の点ppo1,ppo2を探索開始点として、例えば矢印の方向へ向かって内壁及び外壁の探索を行ない、輪郭を抽出する。前記輪郭設定部81は、Bモード画像の輝度の変化率に基づいて、
図26に示すように、内壁の輪郭Oin及び外壁の輪郭Ooutを抽出する。なお、
図26では、前記内壁の輪郭Oin及び前記外壁の輪郭Ooutは、真円で示されているが、真円とは限らないものとする。
【0062】
なお、内壁の輪郭Oin及び外壁の輪郭Ooutの抽出手法は上述に限られるものではない。例えば、操作者がBモード画像上で内壁の輪郭と思われる点及び外壁の輪郭と思われる点をカーソル等で指定し、指定された点を探索開始点として、前記輪郭設定部81がBモード画像において内壁の輪郭及び外壁の探索を行ない抽出してもよい。
【0063】
また、上記各実施形態において、輝度の変化率の代わりに輝度差(輝度の変化量)が用いられてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態において、輝度の変化率や輝度差の代わりに、本発明における評価値として、エコー信号の強度(超音波画像の輝度)が用いられてもよい。この場合、前記評価値算出部82は、例えば、点Pin,Poutを構成する画素におけるエコー信号の強度の平均値(輝度の平均値)を前記評価値として算出する。また、前記評価値算出部82は、前記一部分o1,o2,o3,o4における全て(又は一部)の点Pin,Poutのエコー信号の強度の平均値の平均演算を行なう。そして、前記評価値算出部82は、この平均演算で得られた値を、上述の(式1)において、輝度の変化率Brの平均値Bravの代わりに用いて前記基準評価値Eを算出する。前記平均値算出部83は、このようにして算出された基準評価値Eと各点Pin,Poutにおけるエコー信号の強度の平均値とを比較し、この平均値が前記評価値E以上であるPin,Poutを用いて平均の壁厚Wavや平均の血管径Davを算出する。
【0065】
また、上記各実施形態においては、計測値として、平均の壁厚Wavや平均の血管径Davを算出する場合について説明したが、計測値として必ずしも平均値を算出する必要はない。例えば、前記判定部84によって信頼度が高いと判定された点Pin,Poutの追跡結果を、特開2012−90821号公報に記載されているように前記表示部6に表示してもよい。また、前記判定部84によって信頼度が高いと判定された点Pin,Poutの距離を、前記特開2012−90821号公報に記載されているように、一つだけ前記表示部6に表示してもよい。
【0066】
さらに、上記実施形態では、超音波診断装置において本発明に係る計測装置を実現する例について説明したが、本発明に係る計測装置は、超音波診断装置以外の機器において実施されてもよい。例えば、本発明に係る計測装置は、パーソナルコンピュータ(personal computer)などの汎用のコンピュータにおいて実施されてもよい。この場合、超音波診断装置から、Bモードデータなどのローデータ又はBモード画像データなどの画像データを、例えば汎用のコンピュータに取り込んで、この汎用のコンピュータにおいて、上記実施形態で説明した処理を行なう。