特許第5859964号(P5859964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5859964抗増殖性化合物、その抱合体、そのための方法ならびにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859964
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】抗増殖性化合物、その抱合体、そのための方法ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/097 20060101AFI20160202BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20160202BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20160202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160202BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160202BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   C07K5/097ZNA
   A61K39/395 Z
   A61K37/02
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
【請求項の数】16
【全頁数】105
(21)【出願番号】特願2012-523678(P2012-523678)
(86)(22)【出願日】2010年8月2日
(65)【公表番号】特表2013-501055(P2013-501055A)
(43)【公表日】2013年1月10日
(86)【国際出願番号】US2010044078
(87)【国際公開番号】WO2011017249
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2013年7月5日
(31)【優先権主張番号】61/230,932
(32)【優先日】2009年8月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/232,883
(32)【優先日】2009年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513169973
【氏名又は名称】メダレックス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】MEDAREX, L.L.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ヘン
(72)【発明者】
【氏名】コン・キアン
(72)【発明者】
【氏名】サンジーブ・ギャングウォー
(72)【発明者】
【氏名】キアン・チャン
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/138561(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102004030227(DE,A1)
【文献】 国際公開第2010/034724(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/057805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/00− 5/097
C07D 417/00−417/14
A61K 31/00− 31/80
A61K 38/00− 38/42
A61K 39/00− 39/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】

[式中、
nは、0、1または2であり;
、RおよびRは、独立して、H、無置換または置換C−C10アルキル、無置換または置換C−C10アルケニル、無置換または置換C−C10アルキニル、無置換または置換アリール、無置換または置換ヘテロアリール、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキニル)、(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換シクロ脂肪族、無置換または置換ヘテロシクロ脂肪族、無置換または置換アリールアルキル、あるいは無置換または置換アルキルアリールであり;
は、
【化2】

であり;ならびに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)またはCO(C−Cアルキニル)である]
によって表される構造を有する化合物またはその医薬的に許容されるエステル、Rのカルボキシル基でα−アミノ酸のα−アミノ基と結合したその医薬的に許容されるアミド、あるいはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
式(II−a)
【化3】

[式中、
4aは、
【化4】

である]
によって表される構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(II−a’):
【化5】

[式中、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、CHO(C−Cアルキル)、CHO(C−Cアルケニル)、CHO(C=O)(C−Cアルキル)またはCHOC(=O)(C−Cアルケニル)であり;ならびに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C(=O)C−CアルキルまたはC(=O)C−Cアルケニルである]
によって表される構造を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(II−b):
【化6】

によって表される構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(II−b’):
【化7】

[式中、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、CHO(C−Cアルキル)、CHO(C−Cアルケニル)、CHO(C=O)(C−Cアルキル)またはCHOC(=O)(C−Cアルケニル)であり;ならびに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C(=O)C−CアルキルまたはC(=O)C−Cアルケニルである]
によって表される構造を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式:
























によって表される構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式(II−c)
【化8】
[式中、
13は、Me、n−Pr、CHOMeまたはCHOC(=O)CHCH(Me)であり;R14は、MeまたはC(=O)Meであり;ならびにR15は、HまたはC−Cアルキルである]
によって表される構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
抗体に抱合されている請求項1に記載の化合物を含む、抱合体。
【請求項9】
式(IV):
[D(XC(XZ (IV)
[式中、
Dは、請求項1に記載の化合物であり;
Zは、抗体であり;
およびXは、スペーサー基であり;
Cは、Val−Cit、Ala−Val、Val−Ala−Val、Lys−Lys、Ala−Asn−Val、Val−Leu−Lys、Cit−Cit、Val−Lys、Ala−Ala−Asn、Lys、Cit、SerおよびGluからなる群から選択される1から5個のアミノ酸からなる配列からなるものであって、Citは、シトルリンを示すものであり
aおよびbの各々は、独立して、0または1であり;ならびに
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である]
によって表される構造を有する抱合体。
【請求項10】
式(V−a)
D−(XC(X−R31 (V−a)
[式中、
31は、抗体における官能基との反応に適した官能基であり;
Dは、請求項1に記載の化合物であり;
およびXは、スペーサー基であり;
Cは、Val−Cit、Ala−Val、Val−Ala−Val、Lys−Lys、Ala−Asn−Val、Val−Leu−Lys、Cit−Cit、Val−Lys、Ala−Ala−Asn、Lys、Cit、SerおよびGluからなる群から選択される1から5個のアミノ酸からなる配列からなるものであって、Citは、シトルリンを示すものであり;ならびに
aおよびbの各々は、独立して0または1である]
によって表される構造を有する化合物を含む、抗体との抱合体を製造するための組成物。
【請求項11】
式(V−b)
【化9】

[式中、
nは、0、1または2であり;
、RおよびRは、独立して、H、無置換または置換C−C10アルキル、無置換または置換C−C10アルケニル、無置換または置換C−C10アルキニル、無置換または置換アリール、無置換または置換ヘテロアリール、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキニル)、(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換シクロ脂肪族、無置換または置換ヘテロシクロ脂肪族、無置換または置換アリールアルキル、あるいは無置換または置換アルキルアリールであり;
4’は、
【化10】


であって、
12は、H、C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルであり;ならびに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)またはCO(C−Cアルキニル)であり;
およびXは、スペーサー基であり;
Cは、Val−Cit、Ala−Val、Val−Ala−Val、Lys−Lys、Ala−Asn−Val、Val−Leu−Lys、Cit−Cit、Val−Lys、Ala−Ala−Asn、Lys、Cit、SerおよびGluからなる群から選択される1から5個のアミノ酸からなる配列からなるものであって、Citは、シトルリンを示すものであり;ならびに
aおよびbは、独立して、0または1であって;
基R4’は、aが1である場合に基Xまたはaが0である場合に基Cのいずれかに、そのカルボキシルまたはアミン基を介して結合している]
によって表される構造を有する化合物を含む、抗体との抱合体を製造するための組成物。
【請求項12】
式(V−d):
【化11】

[式中、
13は、Me、n−Pr、CHOMeまたはCHOH(=O)CHCH(Me)であり、R14は、MeまたはC(=O)Meであり;ならびにR15は、HまたはC−Cアルキルであり;R16は、(CHNHまたは(CHNHC(=O)NHであり;R17は、C(Me)またはMeであり;ならびにpは、0または1である]
によって表される構造を有する化合物を含む、抗体との抱合体を製造するための組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物または請求項8に記載の抱合体を含む、癌の治療剤。
【請求項14】
式(VIII−a)
【化12】

[式中、
は、Hまたはアミン保護基であり、Rは、H、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、アリール、シクロ脂肪族、アルキルシクロ脂肪族、アリールアルキルまたはアルキルアリールである]
によって表される構造を有する化合物。
【請求項15】
式(VIII−b)
【化13】

[式中、
およびR10は、独立して、Hまたはアミン保護基であり、R11は、H、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、アリール、シクロ脂肪族、アルキルシクロ脂肪族、アリールアルキルまたはアルキルアリールである]
によって表される構造を有する化合物。
【請求項16】
式:


によって表される構造を有する化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツブリシンに構造的に関連している化合物、リガンドを有するその抱合体、このような化合物および抱合体を製造および使用するための方法、ならびにこのような化合物および抱合体を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ツブリシンは、元々、粘液細菌Archangium gephyraまたはAngiococcus disciformisの培養物から単離された細胞毒素であり、その際、各生物はツブリシンの異なる混合物を産生する(非特許文献1;特許文献1)。その結晶構造および生合成経路は明らかにされており(非特許文献2)、その生合成遺伝子は塩基配列が決定されている(特許文献2)。ツブリシンの生合成前駆体であるプレツブリシンもまた、それ自体が顕著な活性を有することが示されている(非特許文献3)。(第1著者または発明者および年によって本明細書に引用されている文献についての完全な引用は、本明細書の最後に列挙されている。)
【0003】
ツブリシンは、ホモプシン、ドラスタチンおよびクリプトフィシンを包含する天然に存在する抗有糸分裂性ポリペプチドおよびデプシペプチドの一群に属する(非特許文献4)。ポリペプチドまたはデプシペプチド以外の抗有糸分裂薬、例えば、パクリタキセル、メイタンシンおよびエポチロンも存在する。有糸分裂の間、細胞の微小管が再構築して紡錘体を形成するが、その際、プロセスは、微小管成分タンパク質α−およびβ−チューブリンの迅速な組立および分解を必要とする。分子レベルでは、正確な阻害メカニズムは薬剤ごとに異なることもあるが、抗有糸分裂薬は、このプロセスを阻害し、細胞が有糸分裂することを妨げる。ツブリシンは、チューブリンの微小管への組み立てを妨げることによって、影響を受けた細胞をG/M相で蓄積させ、アポトーシスを引き起こす(非特許文献5)。逆に、パクリタキセルは、微小管に結合し、その分解を妨げることによって同じ最終結果をもたらす。
【0004】
ツブリシンは、1個のタンパク新生アミノ酸サブユニットおよび3つの非タンパク新生アミノ酸サブユニット:N−メチルピペコリン酸(Mep)、イソロイシン(Ile)、ツブバリン(Tuv)およびツブフェニルアラニン(Tup,Rは下記式(I)中のHに等しい)またはツブチロシン(Tut,RはOHに等しい)から構成されるテトラペプチジル骨格を有する。約12種の天然のツブリシン(A、Bなどと名付けられている)が公知であり、それらの間の構造的な変化の部位は、式(I)および表1に示されるように残基R、RおよびRである:
【化1】
【表1】
【0005】
非特許文献6は、ツブリシンAの抗増殖特性を研究し、パクリタキセルおよびビンブラスチンなどの他の抗有糸分裂薬よりも効力が高く、異種移植片アッセイにおいて、様々な癌細胞株に対して活性を有することを見出した。さらに、ツブリシンAは、癌細胞ではアポトーシスを誘発したが、正常な細胞では誘発せず、インビトロアッセイでは極めて強力な抗血管形成特性を示した。他のツブリシンの抗有糸分裂特性もまた評価されており、一般に、非ツブリシン抗有糸分裂薬の抗有糸分裂特性と比較して有望であることが見出されている(例えば、非特許文献7〜9を参照されたい)。これらの理由のため、ツブリシンは、抗癌薬として多大な関心が寄せられている(例えば、非特許文献10および4を参照されたい)。
【0006】
多数の公報が、ツブリシンの合成に関する試みを記載しており、非特許文献7および11〜19が含まれる。他の公報は、ツブリシン類似体または誘導体の調製および評価を介して構造活性相関(SAR)研究を記載している:非特許文献7、20〜24および特許文献3〜9。SAR研究は、主に、Mep環、Tuvサブユニットの残基RおよびRならびにTup/Tutサブユニットの芳香環または脂肪族炭素鎖における構造変化を調査した。
【0007】
Domling et al. 2005は、ポリマーまたは生体分子として一般に記載されるパートナー分子を有するツブリシンの抱合体を開示するが、実際の実施例では、パートナー分子としてのポリエチレングリコール(PEG)に限られている。ツブリシンの抱合体を開示している他の文献は、特許文献10〜17および非特許文献25および26である。特許文献12は、薬物(ツブリシンを包含)に抱合してそれらの生物活性および水溶解性を向上させることができるポリ陰イオン性ポリペプチドを開示する。
【0008】
特許文献18および非特許文献27は、ツブリシンがTup/Tutカルボキシル基に結合しているヒドラジド−ジスルフィドリンカー部分を介してシクロデキストリンに共有結合しているシクロデキストリンに基づいた製剤を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】Reichenbachら,WO98/13375 A1(1998)
【特許文献2】Hoefleら,US2006/0217360 A1(2006)
【特許文献3】Domlingら,US2005/0239713 A1(2005)
【特許文献4】Ellmanら,WO2009/012958 A2(2009)
【特許文献5】Hoefleら,DE100 08 089 A1(2001)
【特許文献6】Hoefleら,US2006/0128754 A1(2006)
【特許文献7】Richter,WO2008/138561 A1(2008)
【特許文献8】Vlahovら,WO2009/055562 A1(2009)
【特許文献9】Wipfら,US2010/0047841 A1(2010)
【特許文献10】Boydら,US2008/0279868 A1(2008)
【特許文献11】Boydら,US7,691,962 B2(2010)
【特許文献12】Vlahovら,US2008/0248052 A1(2008)
【特許文献13】Vlahovら,US2008/0248052 A1(2008)
【特許文献14】Vlahovら,US2010/0048490 A1(2010)
【特許文献15】Leamonら,WO2009/002993 A1(2009)
【特許文献16】Lowら,WO2009/026177 A1(2009)
【特許文献17】Leungら,US2002/0169125 A1(2002)
【特許文献18】Davisら,US2008/0176958 A1(2008)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Sasse et al., J. Antibiotics 2000, 53 (9), 879-885.
【非特許文献2】Steinmetz et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 4888-4892.
【非特許文献3】Ullrich et al., Angew. Chemie Int. Ed. 2009, 48, 4422-4425.
【非特許文献4】Hamel et al., Curr. Med. Chem. - Anti-Cancer Agents 2002, 2, 19-53.
【非特許文献5】Khalil et al., ChemBioChem 2006, 7, 678-683.
【非特許文献6】Kaur et al., Biochem. J. 2006, 396, 235-242.
【非特許文献7】Balasubramanian et al., J. Med. Chem. 2009, 52 (2), 238-240.
【非特許文献8】Steinmetz et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 4888-4892.
【非特許文献9】Wipf et al., Org. Lett. 2004, 6 (22), 4057-4060.
【非特許文献10】Domling et al., Mol. Diversity 2005, 9, 141-147.
【非特許文献11】Domling et al., Ang. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 7235-7239.
【非特許文献12】Hoefle et al., Pure Appl. Chem. 2003, 75 (2-3), 167-178.
【非特許文献13】Neri et al., ChemMedChem 2006, 1, 175-180.
【非特許文献14】Peltier et al., J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 16018-16019.
【非特許文献15】Sani et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 3526-3529.
【非特許文献16】Sasse et al., Nature Chem. Biol. 2007, 3 (2), 87-89.
【非特許文献17】Shankar et al., SYNLETT 2009, 8, 1341-1345.
【非特許文献18】Shibue et al., Tetrahedron Lett. 2009 50, 3845-3848.
【非特許文献19】Wipf et al., Org. Lett. 2004, 6 (22), 4057-4060.
【非特許文献20】Balasubramanian et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2008, 18, 2996-2999.
【非特許文献21】Patterson et al., Chem. Eur. J. 2007, 13, 9534-9541.
【非特許文献22】Patterson et al., J. Org. Chem. 2008, 73, 4362-4369.
【非特許文献23】Wang et al., Chem. Biol. Drug. Des 2007, 70, 75-86.
【非特許文献24】Wipf et al., Org. Lett. 2007, 9 (8), 1605-1607.
【非特許文献25】Leamon et al., Cancer Res. 2008, 68 (23), 9839-9844.
【非特許文献26】Reddy et al., Mol. Pharmaceutics 2009, 6 (5), 1518-1525.
【非特許文献27】Schluep et al., Clin. Cancer Res. 2009, 15 (1), 181-189.
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ツブリシンに構造的に関連し、多くの癌細胞に対して細胞毒性または細胞増殖抑制性を有し、抗有糸分裂性機構によって作用すると考えられる新規な抗増殖性化合物を開示している。これらの化合物は、癌細胞に対して標的送達するための抗体などのリガンドに抱合させることができる。
【0012】
ある態様において、本発明は、式(II)
【化2】
[式中、
nは、0、1または2であり;
、RおよびRは、独立して、H、無置換または置換C−C10アルキル、無置換または置換C−C10アルケニル、無置換または置換C−C10アルキニル、無置換または置換アリール、無置換または置換ヘテロアリール、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキニル)、(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換シクロ脂肪族、無置換または置換ヘテロシクロ脂肪族、無置換または置換アリールアルキル、あるいは無置換または置換アルキルアリールであり;
は、
【化3】
であり;ならびに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)またはCO(C−Cアルキニル)である]
によって表される構造を有する化合物またはその医薬的に許容されるエステル、Rのカルボキシル基でα−アミノ酸のα−アミノ基と結合したその医薬的に許容されるアミドまたはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0013】
好ましいRは、カルボキシルに対してアルファに位置するメチル基の立体化学を有する
【化4】
であり、より好ましくは、天然のツブリシン、すなわち:
【化5】
に相当するものである。
【0014】
本発明はまた、式(II)に記載の化合物を合成するのに有用な新規の中間体を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、癌細胞などの標的細胞への選択的な送達のためのリガンド(好ましくは、抗体、より好ましくは、モノクローナル抗体、最も好ましくは、ヒトモノクローナル抗体)に対してリンカー部分を介して抱合された本発明の化合物を提供する。
【0016】
別の態様において、リガンドに対する抱合に適した本発明の化合物およびリンカー部分を含む組成物が提供される。
【0017】
別の態様において、本発明は、癌にかかっている対象における癌細胞の細胞増殖を阻害するための方法であって、治療上有効量の本発明の化合物またはリガンド(特に、抗体)を有するその抱合体をその対象に投与することを特徴とする方法を提供する。別の態様において、癌細胞の細胞増殖を阻害するための方法であって、かかる細胞を、かかる癌細胞の増殖を阻害するのに十分な条件下で、本発明の化合物またはリガンド(特に、抗体)を有するその抱合体と接触させることを特徴とする方法が提供される。癌細胞は、結腸直腸癌、肝臓癌、前立腺癌、乳房癌、メラノーマ、膠芽細胞腫、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、多発性骨髄腫、腎臓癌、白血病またはリンパ腫細胞でありうる。リガンドが抗体である場合、癌細胞で発現される抗原に結合することが好ましい。
【0018】
別の態様において、かかる癌にかかっている対象における癌の治療方法であって、治療上有効量の本化合物またはリガンド(特に、抗体)を有するその抱合体を対象に投与することを特徴とする方法が提供される。別の態様において、癌の治療剤の製造のための本化合物(またはリガンド(特に、抗体)を有するその抱合体)の使用が提供される。これらの態様において、癌は、結腸直腸癌、肝臓癌、前立腺癌、乳房癌、メラノーマ、膠芽細胞腫、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、多発性骨髄腫、腎臓癌、白血病またはリンパ腫でありうる。リガンドが抗体である場合、抗体が癌の細胞で発現される抗原に結合することが好ましい。
【0019】
別の態様において、かかる癌にかかっている対象における癌の治療剤の製造のための本化合物またはリガンド(好ましくは、抗体)を有するその抱合体の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1aおよび1bは、合わせて本化合物を調製するためのスキーム1を示す。
図2図2は、本化合物を調製するためのスキーム2を示す。
図3図3は、本化合物を調製するためのスキーム3を示す。
図4図4は、ペプチジルリンカーおよびマレイミド反応基を本化合物に結合させるのに適したスキーム4を示す。
図5図5は、本化合物を調製するためのスキーム5を示す。
図6図6は、本化合物を調製するためのスキーム6を示す。
図7図7は、本化合物を調製するためのスキーム7を示す。
図8図8a、8bおよび8cは、本化合物を調製するために有用な中間体を調製するためのスキーム8、9および10をそれぞれ示す。
図9図9は、図8a〜8cに示されるような中間体が本化合物に変換されうる方法を図示するスキーム11を示す。
図10図10は、図8a〜8cに示されるような中間体が本化合物に変換されうる方法を図示するスキーム12を示す。
図11図11aおよび11bは、2種類の異なるタイプの癌細胞に対する本化合物の第1の組におけるH チミジン細胞増殖アッセイのプロットを示す。
図12図12aおよび12bは、2種類の異なるタイプの癌細胞に対する本化合物の第2の組におけるATP発光増殖アッセイのプロットを示す。図12cおよび12dは、2種類の異なるタイプの癌細胞に対する本化合物の同じ第2の組におけるH チミジン細胞増殖アッセイのプロットを示す。
図13図13は、H チミジン細胞増殖アッセイにおける本化合物の抱合体の腎臓癌細胞に対する活性を示す。
図14図14は、異種移植実験における本化合物の抱合体の腎臓癌細胞に対する活性を示す。
図15図15は、本化合物を調製するのに有用な中間体を調製するためのスキーム13を示す。
図16図16は、スキーム13により調製された中間体から本化合物を調製するためのスキーム14を示す。
図17図17は、本発明の抱合準備(conjugation-ready)化合物を調製するためのスキーム15を示す。
図18図18は、本発明の抱合準備化合物を調製するためのスキーム16を示す。
図19図19は、本化合物を調製するのに有用な中間体を調製するためのスキーム17を示す。
図20図20aおよび20bは、合わせて、スキーム17の中間体から本化合物の調製のためのスキーム18を示す。
図21図21は、スキーム18に用いられる中間体を調製するためのスキーム19を示す。
図22図22は、本化合物の調製に用いられる中間体の合成のためのスキーム20を示す。
図23図23は、スキーム20の中間体から本化合物を調製するためのスキーム21を示す。
図24図24は、本化合物を調製するのに有用なさらなる別の中間体を調製するためのスキーム22を示す。
図25図25は、スキーム22の中間体から本化合物を調製するためのスキーム23を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「抗体」は、抗体全体および任意の抗原結合フラグメント(すなわち「抗原結合部分」)またはその単一鎖を意味する。抗体全体は、ジスルフィド結合によって中間接続されている少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。重鎖はそれぞれ、重鎖可変領域(V)と、3つのドメイン、すなわちCH1、CH2およびCH3を含む重鎖定常領域とを含む。軽鎖はそれぞれ、軽鎖可変領域(VまたはV)と、単一のドメイン、すなわちCを含む軽鎖定常領域とを含む。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性と、その間に存在するより保存性の高いフレームワーク領域(FR)とにさらに細分することができる。VおよびVはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端へと下記の順序、すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4で配置されている3つのCDRおよび4つのFRを含む。可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。定常領域は、抗体と、免疫系(例えば、エフェクター細胞)の様々な細胞および古典的補体系の第1成分(Clq)を包含する宿主組織または因子との結合を介在することができる。抗体が抗原Xに対して、5×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは6×10−9M以下、より好ましくは3×10−9M以下、なおより好ましくは2×10−9M以下のKで結合する場合に、その抗体は、抗原Xに「特異的に結合」すると言われる。抗体は、キメラであるか、ヒト化されているか、あるいは、好ましくはヒトであってよい。重鎖定常領域は、糖鎖形成タイプまたは程度に影響を及ぼすか、抗体半減期を延長するか、エフェクター細胞または補体系との相互作用を高めるかまたは減らすか、またはある他の特性を調節するように操作されうる。この操作は、1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、付加もしくは欠失によって、またはあるドメインを、他の免疫グロブリンタイプからのドメインと置き換えることによって、または前記の組合せによって達成することができる。
【0022】
抗体の「抗体フラグメント」および「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)は、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の1つまたはそれ以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメント、例えば、(i)Fabフラグメント、すなわち、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、すなわち、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合されている2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)主にFabとヒンジ領域の一部とであるFab’フラグメント(例えば、Abbas et al., Cellular and Molecular Immunology, 6th Ed., Saunders Elsevier 2007を参照されたい);(iv)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(v)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(vi)VドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);(vii)単離された相補性決定領域(CDR);ならびに(viii)ナノボディ、すなわち、単一の可変領域および2つの定常領域を含有する重鎖可変領域などによって行うことができることが示されている。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、すなわちVおよびVは、別々の遺伝子によってコードされるが、VおよびV領域が対になって一価分子を形成する単一タンパク質鎖(単一鎖FvまたはscFvとして公知)としてそれらを調製できる合成リンカーによって組換え方法を使用してこれらを結合させることができる;例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい。そのような単一鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語のうちに包含される。
【0023】
「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する(例えば、抗原Xに特異的に結合する単離された抗体は、抗原X以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、抗原Xに特異的に結合する単離された抗体は、他の種からの抗原X分子などの他の抗原に対する交差反応性を有することもある。ある実施形態では、単離された抗体は、ヒト抗原Xに特異的に結合し、他の(非ヒト)抗原X抗原とは交差反応しない。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学薬品を実質的に含み得ない。
【0024】
「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一の結合特異性および特定のエピトープに対する親和性を示す単一の分子組成の抗体分子の製剤を意味する。
【0025】
「ヒト抗体」は、フレームワークおよびCDR領域の両方(および存在する場合には定常領域)がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を意味する。ヒト抗体は、天然または合成修飾を包含する後の修飾を包含していてもよい。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基を包含していてもよい(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボで体細胞突然変異によって導入される突然変異)。しかしながら、「ヒト抗体」には、マウスなどの他の哺乳動物種の生殖系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移行されている抗体は含まれない。
【0026】
「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を意味する。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合しているヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得られるB細胞を包含するハイブリドーマによって製造される。
【0027】
「脂肪族」は、規定された数の炭素原子(例えば、「C脂肪族」、「C〜C脂肪族」または「CからC脂肪族」のようであり、ここで、後者2つの用語は、1から5個の炭素原子を有する脂肪族部分に関する同意語である)を有するか、または炭素原子の数が明確に規定されていない場合、1から4個の炭素原子(不飽和脂肪族部分の例では2から4個の炭素)を有する直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和、非芳香族の炭化水素部分を意味する。
【0028】
「アルキル」は、飽和脂肪族部分を意味し、その際、炭素原子数の表記に関しては同じ規定を適用することができる。一例として、C〜Cアルキル部分には、これらに限られないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、1−ブチル、2−ブチルなどが包含される。
【0029】
「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する脂肪族部分を意味し、その際、炭素原子数の表記に関しては同じ規定を適用することができる。一例として、C〜Cアルケニル部分には、これらに限られないが、エテニル(ビニル)、2−プロペニル(アリルまたはプロパ−2−エニル)、cis−1−プロペニル、トランス−1−プロペニル、E−(またはZ−)2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタジエニル(ブタ−1,3−ジエニル)などが包含される。
【0030】
「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する脂肪族部分を意味し、その際、炭素原子数の表記に関しては同じ規定を適用することができる。一例として、C〜Cアルキニル基には、エチニル(アセチルエニル)、プロパルギル(プロパ−2−イニル)、1−プロピニル、ブタ−2−イニルなどが包含される。
【0031】
「脂環式」は、1から3個の環を有し、それぞれの環が3から8個(好ましくは3から6個の)炭素原子を有する飽和または不飽和、非芳香族の炭化水素部分を意味する。「シクロアルキル」は、各環が飽和である脂環式部分を意味する。「シクロアルケニル」は、少なくとも1個の環が少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する脂環式部分を意味する。「シクロアルキニル」は、少なくとも1個の環が少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する脂環式部分を意味する。実例として、脂環式部分には、これらに限られないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチルおよびアダマンチルが包含される。好ましい脂環式部分は、シクロアルキルのもの、特にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。
【0032】
「ヘテロ脂環式」は、少なくとも1個のその環において、3個まで(好ましくは1から2個)の炭素がN、OまたはSから独立して選択されるヘテロ原子で置き換えられていて、前記NおよびSが所望により、酸化されていてよく、かつ前記Nが所望により、四級化されていてよい脂環式部分を意味する。同様に「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロシクロアルケニル」および「ヘテロシクロアルキニル」は、それぞれ少なくとも1個のその環において、そのように修飾されているシクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル部分を意味する。例示的なヘテロ脂環式部分には、アジリジニル、アゼチジニル、1,3−ジオキサニル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3−ジオキソラニル、テトラヒドロ−1,1−ジオキソチエニル、1,4−ジオキサニル、チエタニルなどが包含される。
【0033】
「アルコキシ」、「アリールオキシ」、「アルキルチオ」および「アリールチオ」は、それぞれ−O(アルキル)、−O(アリール)、−S(アルキル)および−S(アリール)を意味する。例としてはそれぞれ、メトキシ、フェノキシ、メチルチオおよびフェニルチオである。
【0034】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0035】
「アリール」は、環がそれぞれ3から7個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の環が芳香族である単環式、二環式または三環式環系を有する炭化水素部分を意味する。環系中の環は、相互に縮合しているか(ナフチルにおいてのように)、または相互に結合していてもよく(ビフェニルにおいてのように)、かつ非芳香環に縮合または結合していてもよい(インダニルまたはシクロヘキシルフェニルにおいてのように)。さらなる実例では、アリール部分には、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントラセニルおよびアセナフチルが包含される。
【0036】
「ヘテロアリール」は、環がそれぞれ3から7個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1個の環が、N、OまたはSから独立して選択される1から4個のヘテロ原子を含有する芳香環であり、前記NおよびSが所望により、酸化されていてもよく、ならびに前記Nが、所望により、四級化されていてもよい、単環式、二環式または三環式環系を有する炭化水素部分を意味する。そのような少なくとも1個のヘテロ原子を含有する芳香環は、他のタイプの環に縮合していてよいか(ベンゾフラニルまたはテトラヒドロイソキノリルにおいてのように)、または他の種類の環に直接結合していてもよい(フェニルピリジルまたは2−シクロペンチルピリジルにおいてのように)。さらなる一例では、ヘテロアリール部分には、ピロリル、フラニル、チオフェニル(チエニル)、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、N−オキソピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、シノリニル、キノザリニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニル、インドリル、ベンゾチオフェニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フェノチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、ジベンゾチオフェニル、アクリジニルなどが包含される。
【0037】
「置換または非置換C〜Cアルキル」または「所望により置換されているヘテロアリール」においてのように、「置換または非置換」または「所望により置換」という語句を使用することによって、ある部分が、置換されていてもよいと示されている場合、そのような部分は、好ましくは1から5個の数、より好ましくは1から2個の数の1つまたはそれ以上の独立して選択される置換基を有していてもよい。置換基および置換パターンは、当業者であれば選択することができるが、その際、置換基が結合した部分が、化学的に安定であり、当分野で公知の技術、さらには本明細書に記載の方法によって合成することができる化合物が提供される。
【0038】
「アリールアルキル」、「(ヘテロシクロ脂肪族)アルキル」、「アリールアルケニル」、「アリールアルキニル」、「ビアリールアルキル」などは、場合によっては、アリール、ヘテロシクロ脂肪族、ビアリールなどの部分で置換され、場合によっては、アルキル、アルケニルまたはアルキニル部分の開環(不飽和)価、例えば、ベンジル、フェネチル、N−イミダゾイルエチル、N−モルホリノエチルなどで置換されたアルキル、アルケニルまたはアルキニル部分を意味する。反対に、「アルキルアリール」、「アルケニルシクロアルキル」などは、場合によっては、アルキル、アルケニルなどの部分で置換され、場合によっては、例えば、メチルフェニル(トリル)またはアリルシクロヘキシルなどで置換されたアリール、シクロアルキルなどの部分を意味する。「ヒドロキシアルキル」、「ハロアルキル」、「アルキルアリール」、「シアノアリール」などは、場合によっては、1つまたはそれ以上の特定の置換基(場合によっては、ヒドロキシル、ハロなど)で置換されたアルキル、アリールなどの部分を意味する。
【0039】
例示として、許容可能な置換基には、以下に限定されないが、アルキル(特に、メチルまたはエチル)、アルケニル(特に、アリル)、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロ脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、ハロ(特に、フルオロ)、ハロアルキル(特に、トリフルオロメチル)、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル(特に、ヒドロキシエチル)、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−O(ハロアルキル)(特に、−OCF)、−O(シクロアルキル)、−O(ヘテロシクロアルキル)、−O(アリール)、アルキルチオ、アリールチオ、=O、=NH、=N(アルキル)、=NOH、=NO(アルキル)、−C(=O)(アルキル)、−C(=O)H、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NH(ヒドロキシアルキル)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、−NHC(=NH)NH、−OSO(アルキル)、−SH、−S(アルキル)、−S(アリール)、−S(シクロアルキル)、−S(=O)アルキル、−SO(アルキル)、−SONH、−SONH(アルキル)、−SON(アルキル)などが含まれる。
【0040】
置換される部分が脂肪族部分である場合、好ましい置換基は、アリール、ヘテロアリール、シクロ脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−O(ハロアルキル)、−O(シクロアルキル)、−O(ヘテロシクロアルキル)、−O(アリール)、アルキルチオ、アリールチオ、=O、=NH、=N(アルキル)、=NOH、=NO(アルキル)、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NH(ヒドロキシアルキル)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、−NHC(=NH)NH、−OSO(アルキル)、−SH、−S(アルキル)、−S(アリール)、−S(=O)アルキル、−S(シクロアルキル)、−SO(アルキル)、−SONH、−SONH(アルキル)および−SON(アルキル)である。より好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(アリール)、=O、=NOH、=NO(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)および−NHC(=NH)NHである。
【0041】
置換される部分がシクロ脂肪族、ヘテロシクロ脂肪族、アリールまたはヘテロアリール部分である場合、好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−O(ハロアルキル)、−O(アリール)、−O(シクロアルキル)、−O(ヘテロシクロアルキル)、アルキルチオ、アリールチオ、−C(=O)(アルキル)、−C(=O)H、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、アジド、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NH(ヒドロキシアルキル)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)、−NHC(=NH)NH、−OSO(アルキル)、−SH、−S(アルキル)、−S(アリール)、−S(シクロアルキル)、−S(=O)アルキル、−SO(アルキル)、−SONH、−SONH(アルキル)および−SON(アルキル)である。より好ましい置換基は、アルキル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、−O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)(アルキル)、−C(=O)H、−COH、−C(=O)NHOH、−C(=O)O(アルキル)、−C(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−C(=O)NH、−C(=O)NH(アルキル)、−C(=O)N(アルキル)、−OC(=O)(アルキル)、−OC(=O)(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)O(アルキル)、−OC(=O)O(ヒドロキシアルキル)、−OC(=O)NH、−OC(=O)NH(アルキル)、−OC(=O)N(アルキル)、−NH、−NH(アルキル)、−N(アルキル)、−NH(アリール)、−NHC(=O)(アルキル)、−NHC(=O)H、−NHC(=O)NH、−NHC(=O)NH(アルキル)、−NHC(=O)N(アルキル)および−NHC(=NH)NHである。
【0042】
「C−Cアルキル」または「5から10%」のように範囲が示されている場合、かかる範囲には、最初の例では、CおよびC、2番目の例では、5%および10%のような範囲の終点が含まれる。
【0043】
(例えば、構造式中の関連する立体中心で太字または斜体の結合によって、構造式中でEまたはZ配置を有するような二重結合の描写によって、あるいは立体化学命名法の使用によって)特定の立体異性体が特に示されていなければ、純粋な化合物ならびにその混合物として、全ての立体異性体が本発明の範囲に含まれる。特に断りがなければ、各エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体、ならびにその組み合わせおよび混合物は、全て本発明に包含される。
【0044】
当業者は、化合物が本明細書で用いられる構造式中に示されているものと等価である互変異性体型(例えば、ケトおよびエノール型)、共鳴型および双性型を有し、この構造式には、このような互変異性体型、共鳴型または双性型が包含されることを認識する。
【0045】
「医薬的に許容されるエステル」は、インビボ(例えば、ヒトの体内)で加水分解して親化合物またはその塩を生じるか、あるいはそれ自体、親化合物と同様の活性を有するエステルを意味する。適当なエステルには、C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルエステル、特に、メチル、エチルまたはn−プロピルが含まれる。
【0046】
「医薬的に許容される塩」は、医薬製剤に適した化合物の塩を意味する。化合物が1つまたはそれ以上の塩基性基を有する場合、その塩は、酸付加塩、例えば、硫酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、塩酸塩、乳酸塩、メチル硫酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、メシル酸塩、ラクトビオン酸塩、スベリン酸塩、トシル酸塩などであり得る。化合物が1つまたはそれ以上の酸性基を有する場合、その塩は、塩、例えば、カルシウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、アンモニウム塩、亜鉛塩、ピペラジン塩、トロメタミン塩、リチウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、4−フェニルシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン塩、ナトリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などでありうる。多形結晶形態および溶媒和物はまた、本発明の範囲内に包含される。
【0047】
式(II)の化合物の好ましい実施形態は、式(II−a)によって表される
【化6】
[式中、n、R、RおよびRは、式(II)に関して本明細書中、上記で定義されているとおりであり、R4aは、
【化7】

である]。
【0048】
式(II−a)の化合物では、天然に存在するツブリシンのTup/Tutに相当するサブユニットは、サイズおよび脂溶性において、少なくとも2個分の炭素、カルボン酸基の直後の2個の脂肪族炭素原子の欠失を介して低減されている。すなわち、アミノ基は、カルボン酸基に対してγ−である代わりに、ここではα−に位置する。Rが4−アミノフェニルアラニンである場合、アミン基は、脂溶性をさらに低減させる極性部分を形成する。SAR研究によって、脂溶性は、ツブリシンおよびそれらの類似体または誘導体の生物学的活性で重要な因子であることが示されている。Steinmetz et al. 2004およびNeri et al. 2006は両方とも、より脂溶性の天然に存在するツブリシン、すなわち、Tutサブユニット(式Iにおいて、RがOHである)の代わりに、Tupサブユニット(式Iにおいて、RがHである)を有するものは、より高い生物学的活性を有することを開示している。さらに、この活性の差異は、Tuvサブユニット中の11−アシルオキシ残基(式(I)中の基R)のサイズおよび脂溶性に関わらず保持された(Steinmetz et al. 2004)。これらの結果は、脂溶性Tup/Tutサブユニットが特に重要なSARエレメントであることを示す。
【0049】
上記の観察は、Balasubramanian et alによる2つの研究において一部確認されている。第1には(Balasubramanian et al. 2008)、Tupサブユニット中のカルボキシル基に対してアルファ位の炭素でジメチル化されている類似体が、同じ位置で脱メチル化されているが、その他は同一の類似体と比較されている。インビトロチューブリン阻害IC50が比較されたが、それらの相対的な脂溶性に基づいて予測され得るように、ジメチル化された類似体はより高い抗増殖性活性を有した。しかしながら、この傾向は、3種の類似体(1種はα−炭素脱メチル化、1種はモノメチル化および1種はジメチル化)が比較された第2の研究では同様にいかなかった(Balasubramanian et al. 2009)。その場合、最も活性な類似体は、脱メチル化されたものであったが、モノメチル化されたもの、すなわち、天然Tupサブユニットを有するものは、最も低い活性を有するものであった。しかしながら、後者の類似体は、分子中の他の部分に、本質的に不活性にするさらなる修飾を有し、このことによって、あるとすればどのようなSAR推論を下すことができるかが不明になっている。
【0050】
Patterson et al. 2007およびEllman et al. 2009は、ツブリシンDと、フェネチルまたはγ−カルボキシ基のいずれかのみがTupサブユニット中に保持されている類似体との細胞毒性を比較した。フェネチル保持類似体は、3種の癌細胞株に対してツブリシンDよりも3.6から13.6分の1の低い活性を有したが、より低い脂溶性γ−カルボキシル基が保持されている場合、25.7から62.5分の1の低い活性である、さらに高い活性の喪失が存在した。すなわち、活性の序列は下記の通りであった:
【化8】
【0051】
上記の文献は、個別に、および組み合わせで、Tup位置での脂溶性がツブリシンの生物学的活性に関して特に重要であることを示唆している。したがって、これらの先行技術は、それぞれ、少なくとも2個の脂肪族炭素を失わせ、かつ結果としてTup/Tut位置での脂溶性を減少させるであろうことから、Tupサブユニットを式(II−a)に記載のフェニルアラニン(Phe)、4−アミノフェニルアラニン(4−NHPhe)、ノルバリンまたは他のRサブユニットで置き換えることは望ましくないことを示唆している。
【化9】
【0052】
式(II)の化合物の他の好ましい実施形態は、式(II−b)によって表される:
【化10】
[式中、n、R、RおよびRは、式(II)に関して本明細書中、上記で定義される通りである]。Tup芳香環の4位に−NH基を包含する化学式は、文献中で見出すことができるが(Domling 2005aおよび2005b)、そのような形態を有する化合物の製造方法についての開示は存在していない。
【0053】
式(II)、(II−a)および(II−b)において、Rは、好ましくは、H、C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルケニルであり、より好ましくは、イソロイシル基、すなわち:
【化11】
である。
【0054】
式(II)、(II−a)および(II−b)において、Rは、好ましくは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、CHO(C−Cアルキル)、CHO(C−Cアルケニル)、CHO(C=O)(C−Cアルキル)またはCHOC(=O)(C−Cアルケニル)であり;より好ましくは、H、Me、Et、n−Pr、CHOMe、CHOEt、CHO(n−Pr)、CHOC(=O)i−Bu、CHOC(=O)n−Pr、CHOC(=O)CH=CHまたはCHOC(=O)Meであり、特に好ましくは、Me、n−Pr、CHOMe、CHOC(=O)i−BuおよびCHO(n−Pr)である。
【0055】
式(II)、(II−a)および(II−b)において、Rは、好ましくは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C(=O)C−CアルキルまたはC(=O)C−Cアルケニルであり;より好ましくは、H、Me、EtまたはC(=O)Meである。
【0056】
好ましくは、式(II)および(II−a)において、RおよびR4aは:
【化12】

である。
【0057】
式(II)、(II−a)および(II−b)において、、nは、好ましくは、1であり、式(II)の例において、Rは、好ましくは、メチルであり;すなわち、Mepサブユニット中の環は、好ましくは、N−メチルピペリジニルのものである
【0058】
式(II−a)に記載の化合物の好ましい態様は、式(II−a’)
【化13】
によって示されるものであって、
式中、R4aは、式(II−a)に関して上記で定義されるとおりであり、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、CHO(C−Cアルキル)、CHO(C−Cアルケニル)、CHO(C=O)(C−Cアルキル)またはCHOC(=O)(C−Cアルケニル)であり;およびRは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C(=O)C−CアルキルまたはC(=O)C−Cアルケニルである。好ましくは、Rは、H、Me、Et、n−Pr、CHOMe、CHOEt、CHOC(=O)i−Bu、CHOC(=O)n−Pr、CHOC(=O)CH=CHまたはCHOC(=O)Meであり;より好ましくは、Me、n−Pr、CHOMe、CHOC(=O)i−BuまたはCHO(n−Pr)である。好ましくは、Rは、H、Me、EtまたはC(=O)Meである。
【0059】
式(II−b)に記載の化合物の好ましい態様は、式(II−b’)
【化14】
によって示されるものであって、
式中、Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、CHO(C−Cアルキル)、CHO(C−Cアルケニル)、CHO(C=O)(C−Cアルキル)またはCHOC(=O)(C−Cアルケニル)であり;およびRは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C(=O)C−CアルキルまたはC(=O)C−Cアルケニルである。好ましくは、Rは、H、Me、Et、n−Pr、CHOMe、CHOEt、CHOC(=O)i−Bu、CHOC(=O)n−Pr、CHOC(=O)CH=CHまたはCHOC(=O)Meであり、およびRは、H、Me、EtまたはC(=O)Meである。
【0060】
のカルボキシル基がエステル化される場合、好ましくは、前記エステルは、C−Cアルキルエステル、例えば、Me、EtまたはPrエステルである。あるいは、前記カルボキシル基は、アンモニアまたはアルキルアミンでアミド化されうる。
【0061】
別の態様において、本発明は、式(II−c)
【化15】
によって表される構造を有する化合物を提供するものであって、
式中、R13は、Me、n−Pr、CHOMeまたはCHOC(=O)CHCH(Me)であり;R14は、MeまたはC(=O)Meであり;ならびにR15は、HまたはC−Cアルキル(好ましくは、H、MeまたはEt)である。
【0062】
式(II−b)、(II−b’)および(II−c)において、カルボキシル基に対してアルファに位置するメチルの立体化学は、好ましくは、天然に存在するツブリシン、すなわち:
【化16】
に相当するものである。
【0063】
好ましい態様において、本化合物は、R(または場合によっては、R4a)におけるカルボキシル基と、α−アミン酸のα−アミン基とのアミド形態である。α−アミノ酸は、タンパク新生アミノ酸、4−アミノフェニルアラニン、ノルバリン、ノルロイシンおよびシトルリンからなる群から選択されうる。好ましくは、α−アミノ酸は、アラニン、ノルバリン、グリシン、リシン、アルギニン、シトルリン、ノルロイシン、4−アミノフェニルアラニンおよびフェニルアラニンからなる群から選択される。また、好ましくは、α−アミノ酸の絶対配置は、タンパク新生のもの、すなわち、L型である。この好ましい態様において、R(またはR4a)は、好ましくは:
【化17】
である。
【0064】
式(II)に記載の本化合物の具体的な例には、化合物(III−a)から(III−y)が含まれる。本化合物のいくつかは、Rカルボキシル基とα−アミノ酸のα−アミン基とで結合した医薬的に許容されるエステル化合物または医薬的に許容されるアミド化合物あるいはそのメチルエステル化合物として示される。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【0065】
本発明はまた、本化合物の合成で利用できる新規な中間体を提供する。式(VIII−a)に記載の化合物は、図面および本明細書の実施例に示されているように、式(II)または(II−b)に記載の化合物の調製に用いることができる。
【化43】
【0066】
式(VIII−a)において、Rは、Hまたはアミン保護基であり、Rは、H、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、アリール、シクロ脂肪族、アルキルシクロ脂肪族、アリールアルキルまたはアルキルアリールである。好ましくは、Rは、H、Boc(t−ブトキシカルボニル)、Troc(2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル)、Bpoc((1−メチル−1−(4−ビフェニル)エトキシカルボニル))、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)、Aloc(アリルオキシカルボニル)、メチルアミンまたはFmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)である。好ましくは、Rは、HまたはC−Cアルキル(特に、Me)である。
【0067】
本化合物の合成に有用な別の新規な中間体は、式(VIII−b)に記載の構造を有する。本化合物を調製するための式(VIII−b)の化合物の使用は、図面および本明細書の実施例に示されている。
【化44】
【0068】
式(VIII−b)において、RおよびR10は、独立して、Hまたはアミン保護基であり、R11は、H、C−C10アルキル、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、アリール、シクロ脂肪族、アルキルシクロ脂肪族、アリールアルキルまたはアルキルアリールである。好ましくは、RおよびR10は、独立して、H、Boc、Troc、Bpoc、Cbz、Aloc、メチルアミンおよびFmocから選択される。好ましくは、R11は、HまたはC−Cアルキル(特に、Me)である。好ましくは、RおよびR10が各々アミン保護基である場合、それらは異なるアミン保護基である。
【0069】
式(VIII−a)および(VIII−b)の化合物のためのさらなる適当なアミン保護基は、出典明示により本明細書に取り込まれるGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, pp. 464-653 (John Wiley & Sons, New York, 1999)で開示されている。
【0070】
他の態様では、式(IV)によって表される本発明による細胞毒性化合物およびリガンドを含む抱合体を提供する:
[D(XC(XZ (IV)
[式中、Zはリガンドであり;Dは、本発明による細胞毒性化合物であり;−(XC(X−は、これらがZおよびDを結合するため、「リンカー部分」または「リンカー」と総称される]。リンカー内において、Cは、化合物Dの目的の生物学的作用部位で切断されるように設計されている切断可能な基であり;XおよびXは、これらは、DとCおよびCとZの間をそれぞれ空けるため、スペーサー部分(または「スペーサー」)と総称され;下付文字aおよびbは独立して0または1であり(すなわち、Xおよび/またはXは適宜存在する);ならびに下付文字mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10(好ましくは1、2、3または4)である。D、X、C、XおよびZは、下記の本明細書中でより十分に定義される。
【0071】
リガンドZ、例えば、抗体は、標的とする機能を供する。その抗原または受容体が局在する標的組織または細胞に結合することによって、リガンドZは、その抱合体をそこへ方向付ける。好ましくは、標的組織または細胞は、癌組織または細胞であり、抗原または受容体は、腫瘍関連抗原、すなわち、癌性細胞によってユニークに発現されるか、あるいは非癌性細胞と比較して癌細胞によって過剰発現される抗原である。標的組織または細胞で基Cが切断されることにより、化合物Dが放出され、局所的にその細胞毒性作用が付与される。ある場合において、この抱合体は、エンドサイトーシスによって標的細胞中に内部移行され、切断が標的細胞内で起こる。このようにして、化合物Dの正確な送達が、目的の作用部位で達成され、その結果、必要な投薬が低減される。また、化合物Dは、通常、その抱合された状態で生物学的に不活性(または、顕著に低い活性)であり、これにより、標的ではない組織または細胞に対して望ましくない毒性が減少される。抗癌薬は、多くの場合、一般に細胞に対して高い毒性を有するので、これは重要な問題である。
【0072】
下付文字mによって表されるように、リガンドZの各分子は、抱合のために利用できる部位Dの数および用いられる実験条件に応じて、1個より多い化合物Dと抱合しうる。当業者は、リガンドZの個々の分子それぞれが整数個の化合物Dと抱合される一方で、抱合体の製剤は、統計平均を反映して、化合物DのリガンドZに対する非整数比に関して分析されうることを認める。
【0073】
リガンドZおよびその抱合体
好ましくは、リガンドZは、抗体である。利便性と簡略化のためであって、限定するものではないが、リガンドZの抱合について本明細書中で詳述されている以後の記載は、それが抗体であるという文脈で記載されているが、当業者であれば、他のタイプのリガンドZが必要な変更を加えて抱合できることを理解するであろう。例えば、リガンドとしての葉酸との抱合体は、その表面上に葉酸受容体を有する細胞を標的とし得る(Vlahov et al. 2008a、2008bおよび2010; Leamon et al. 2009)。同じ理由で、下記の詳細な説明は、主に、抗体Zの化合物Dに対する1:1比率に関して記載されている。
【0074】
好ましくは、リガンドZは、腫瘍関連抗原に対する抗体であり、そのようなリガンドZを含む抱合体は、癌細胞を選択的に標的とすることが可能である。このような抗原の例には、メソテリン、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD19、CD22、CD30、CD70、B7H4(O8Eとしても公知)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、RG1、CTLA−4およびCD44が包含される。抗体は、動物(例えば、マウス)、キメラであるか、ヒト化されているか、または好ましくは、ヒトであってよい。抗体は、好ましくは、モノクローナル、特にモノクローナルヒト抗体である。前記抗原のうちの一部に対するヒトモノクローナル抗体の調製は、KormanらのUS2009/0074660A1(B7H4);Rao−NaikらのUS2009/0142349A1 A2(CD19);KingらのWO2008/070569A2(CD22);KelerらのUS7,387,776B2(2008)(CD30);TerrettらのUS2009/0028872A1(CD70);KormanらのUS6,984,720B1(2006)(CTLA−4);KormanらのUS2009/0217401A1(PD−1);Huangらの2008/0279868A1(PSMA);LuらのUS2010/0034826A1号(PTK7);HarkinsらのUS7,335,748B2(2008)(RG1);TerrettらのWO2009/045957A1(メソテリン);およびXuらのUS2010/0092484A1(CD44)に開示されており;それらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0075】
リガンドZはまた、アフィボディ、ドメイン抗体(dAb)、ナノボディ、ユニボディ、DARPin、アンチカリン、ヴァーサボディ、デュオカリン、リポカリンまたはアヴィマー(avimer)などの抗体フラグメントまたは抗体模倣物質であってもよい。
【0076】
リガンドZ上のいくつかの異なる反応性基のうちのいずれか1つが抱合部位であり得、これには、リシン残基中のε−アミノ基、懸垂炭水化物部分、カルボン酸基、ジスルフィド基およびチオール基が包含される。反応性基の各タイプは、いくつかの利点と欠点を有するトレードオフを示す。抱合に適した抗体反応性基に関する総説については、例えば、出典明示により本明細書に取り込まれるGarnett, Adv. Drug Delivery Rev. 53 (2001), 171-216およびDubowchik and Walker, Pharmacology & Therapeutics 83 (1999), 67-123を参照されたい。
【0077】
一実施形態では、リガンドZは、リシンε−アミノ基を介して抱合される。ほとんどの抗体は、複数の露出したリシンε−アミノ基を有し、(下記の本明細書でさらに記載されているように)ヘテロ二官能性薬剤を用いた修飾を包含する当分野で公知の技術を用いて、アミド、尿素、チオ尿素またはカルバメート結合を介して抱合されうる。しかしながら、多くのε−アミノ基のうちのどの基を反応させ、どのような方法で反応させるを制御することは困難であり、抱合体の調製時にバッチ間で異なる可能性が存在する。また、抱合は、抗体の元々の立体構造を維持するために重要なプロトン化ε−アミノ基の中和を引き起こすことがあり、あるいは抗原結合部位の付近またはその部位のリシンで生じることがあるが、いずれも望ましくない。
【0078】
他の実施形態では、リガンドZは、多くの抗体がグリコシル化されているように、炭水化物側鎖を介して抱合されうる。この炭水化物側鎖は、過ヨウ素酸塩で酸化されてアルデヒド基を発生し、次いでアミンと反応して、セミカルバゾン、オキシムまたはヒドラゾンなどの中でイミン基を形成しうる。所望であれば、このイミン基は、シアノ水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって、より安定なアミン基に変換することができる。炭水化物側鎖を介した抱合についてのさらなる開示においては、例えば、出典明示により本明細書に組み込まれるRodwell et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83、2632-2636 (1986)を参照されたい。リシンε−アミノ基を用いる場合と同様に、抱合部位の位置および化学量論の再現性に関して懸念がある。
【0079】
さらなる別の実施形態では、リガンドZは、カルボン酸基を介して抱合されうる。一実施形態では、末端カルボン酸基は、官能化されてカルボヒドラジドを生じ、次いでアルデヒドを保有する抱合部分と反応される。Fisch et al., Bioconjugate Chemistry 1992, 3, 147-153を参照されたい。
【0080】
なお別の実施形態では、抗体Zは、抗体Z上のシステイン残基および抱合体の他の部分上の硫黄を架橋するジスルフィド基を介して抱合されうる。いくつかの抗体は、遊離のチオール(スルフヒドリル)基を欠如しているが、例えば、ヒンジ領域にジスルフィド基を有する。このような場合、遊離チオール基は、元々のジスルフィド基を還元させることによって調製することができる。次いで、このようにして調製されたチオール基は、抱合のために用いることができる。例えば、出典明示により本明細書に組み込まれるPackard et al., Biochemistry 1986, 25, 3548-3552; King et al., Cancer Res. 54, 6176-6185 (1994);およびDoronina et al., Nature Biotechnol. 21(7), 778-784 (2003)を参照されたい。この場合も、抱合部位の位置および化学量論、ならびに抗体の元々の構造に起こり得る破壊に関する懸念が存在する。
【0081】
多くの方法は、元々のジスルフィド結合を壊すことなく、遊離チオール基を抗体に導入するために知られており、これらの方法は、本発明のリガンドZを用いて実施することができる。用いられる方法に応じて、予測可能な数の遊離スルフヒドリルを所定の位置に導入することが可能である。ある手法では、システインが別のアミノ酸に置換されている変異抗体が調製される。例えば、EigenbrotらのUS2007/0092940A1;Chilkoti et al., Bioconjugate Chem. 1994, 5, 504-507;UrnovitzらのUS4,698,420(1987);Stimmel et al., J. Biol. Chem., 275(39), 30445-30450(2000);BamらのUS7,311,902B2(2007);Kuan et al., J. Biol. Chem., 269(10), 7610-7618(1994); Poon et al., J. Biol. Chem., 270(15), 8571-8577(1995)を参照されたい。他の手法では、さらなるシステインがC末端に加えられる。例えば、Cumber et al., J. Immunol., 149, 120-126 (1992);King et al, Cancer Res., 54, 6176-6185 (1994); Li et al.. Bioconjugate Chem., 13, 985-995(2002);Yang et al., Protein Engineering, 16, 761-770(2003);およびOlafson et al., Protein Engineering Design & Selection, 17. 21-27 (2004)を参照されたい。遊離システインを導入するための好ましい方法は、LiuらのWO2009/026274A1が教示するものであり、この方法では、システインを有するアミノ酸配列が抗体の重鎖のC末端に加えられる。この方法は、既知の数のシステイン残基(重鎖1つ当たり1個)を、抗原結合部位から離れた既知の位置に導入するものである。この段落で引用されている文献の開示は、全て出典明示により本明細書に取り込まれる。
【0082】
さらなる別の実施形態では、リシンε−アミノ基は、2−イミノチオランまたはN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)などのヘテロ二官能性試薬を用いて改変されて、ε−アミノ基をチオールまたはジスルフィド基に変換し、いわばシステイン代替物が調製されうる。しかしながら、この方法は、適当なε−アミノ基と同じ抱合位置および化学量論の制限を受ける。
【0083】
さらなる別の好ましい実施形態では、リガンドZは、チオール基の求核性付加生成物を介して受容部分に抱合される。好ましい受容部分は、マレイミド基であり、その抗体チオール基との反応は、下記で一般的に図示される。このチオール基は、元々のものであるか、または上記のように導入されたものであってよい。
【化45】
【0084】
リンカー−(XC(X
上記のように、本発明の抱合体のリンカー部分は、3個までのエレメント、すなわち、切断可能な基C、ならびに任意のスペーサーXおよびXを含む。
【0085】
切断可能な基Cは、生理学的条件下で切断可能な基であり、好ましくは、抱合体が血漿中で全身に循環している間は比較的安定であるが、抱合体がその目的の作用部位、すなわち、標的細胞付近、その位置またはその中に達すると容易に切断されるように選択される。好ましくは、前記抱合体は、抗体Zが標的細胞の表面上に提示される抗原に結合すると、標的細胞によるエンドサイトーシスによって内部移行される。その後、基Cの切断は、標的細胞の小胞体(初期エンドソーム、後期エンドソームまたは特にリソソーム)で起きる。
【0086】
一実施形態では、基Cは、pH感受性の基である。血漿中のpHは中性よりもやや高いが、リソソーム内部のpHは約5の酸性である。よって、その切断が酸で触媒される基Cは、血漿中の速度よりもリソソーム内部では数桁も速い速度で切断される。適切な酸感受性の基の例には、出典明示により本明細書に組み込まれるShenらのUS4,631,190(1986);ShenらのUS5,144,011(1992);Shen et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 102, 1048-1054(1981)およびYang et al., Proc. Natl Acad. Sci (USA). 85, 1189-1193(1988)に記載されるように、cis−アコニチルアミドおよびヒドラゾンが包含される。
【0087】
別の実施形態において、基Cは、ジスルフィドである。ジスルフィドは、周囲チオール濃度に依存した速度でチオール−ジスルフィド交換メカニズムによって切断され得る。グルタチオンおよび他のチオールの細胞内濃度がそれらの血清濃度よりも高いため、ジスルフィドの切断速度は細胞内でより高い。さらに、チオール−ジスルフィド交換の速度は、ジスルフィドの立体化学的および電子的特性(例えば、アルキル−アリールジスルフィド対アルキル−アルキルジスルフィド;アリール環上での置換など)を調節し、高まった血清安定性または特定の切断速度を有するジスルフィド結合を設計することによって改変することができる。抱合体におけるジスルフィド切断可能な基に関するさらなる開示については、例えば、出典明示により本明細書に取り込まれるThorpe et al., Cancer Res. 48, 6396-6403 (1988); SantiらのUS2005/0287155A1;NgらのUS6,989,452B2(2006);NgらのWO2002/096910A1;BoydらのUS7,691,962B2;およびSufiらのWO2008/083312A2を参照されたい。
【0088】
好ましい基Cは、血清中のプロテアーゼによる切断とは対照的に、目的とする作用部位でプロテアーゼによって優先的に切断されるペプチド結合を含む。典型的には、基Cは、1から20個のアミノ酸、好ましくは1から6個のアミノ酸、より好ましくは1から3個のアミノ酸を含む。アミノ酸は、天然および/または非天然α−アミノ酸でありうる。天然アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるものか、さらに、それに由来するアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、シトルリンおよびO−ホスホセリンである。用語アミノ酸にはまた、アミノ酸類似体および模倣物が包含される。類似体は、天然アミノ酸と同じ一般的なHN(R)CHCOH構造を有する化合物であるが、但し、R基が天然アミノ酸の中では見出されないものである。類似体の例には、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン−スルホキシドおよびメチオニンメチルスルホニウムが包含される。アミノ酸模倣物質は、α−アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、それと同様に機能する化合物である。用語「非天然アミノ酸」は、「D」立体化学的形態を表すことが意図されており、天然アミノ酸は「L」形態である。
【0089】
好ましくは、基Cは、プロテアーゼのための切断認識配列であるアミノ酸配列を含有する。多くの切断認識配列は当分野で公知である。例えば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれるMatayoshi et al. Science 247: 954(1990);Dunn et al. Meth. Enzymol. 241: 254(1994);Seidah et al. Meth. Enzymol. 244: 175(1994);Thornberry, Meth. Enzymol. 244: 615(1994);Weber et al. Meth. Enzymol. 244: 595(1994);Smith et al. Meth. Enzymol. 244: 412(1994);およびBouvier et al. Meth. Enzymol. 248: 614(1995)を参照されたい。
【0090】
細胞によって内部移行されることが意図されていない抱合体においては、基Cは、標的組織付近の細胞外マトリックスに存在するプロテアーゼ、例えば、付近の死滅細胞から放出されるプロテアーゼまたは腫瘍関連プロテアーゼによって切断されるように選択することができる。典型的な細胞外腫瘍関連プロテアーゼとしては、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、チメットオリゴペプチダーゼ(TOP)およびCD10である。
【0091】
細胞によって内部移行されるように設計される抱合体においては、基Cは、好ましくは、エンドソームまたはリソソームプロテアーゼ、特にリソソームプロテアーゼによる切断について選択されたアミノ酸配列を含む。このようなプロテアーゼの非限定的な例には、カテプシンB、C、D、H、LおよびS、特にカテプシンBが包含される。カテプシンBは、配列−AA−AA−(式中、AAは塩基性または強水素結合性アミノ酸(リシン、アルギニンまたはシトルリンなど)であり、AAは疎水性アミノ酸(フェニルアラニン、バリン、アラニン、ロイシンまたはイソロイシンなど)である)、例えば、Val−Cit(ここで、Citはシトルリンを示す)またはVal−Lysでペプチドを優先的に切断する。(この場合、文脈が特に示していない限り、アミノ酸配列は、HN−AA−AA−COHのように、N−から−C方向に記されている)。カテプシン−切断基に関するさらなる情報については、出典明示により本明細書に組み込まれるDubowchik et al., Biorg. Med. Chem. Lett. 8, 3341-3346(1998); Dubowchik et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 8 3347-3352(1998);およびDubowchik et al., Bioconjugate Chem. 13, 855-869(2002)を参照されたい。ペプチジルリンカーの切断に利用できる別の酵素としては、Ala−Ala−Asnを優先的に切断するリソソームシステインプロテアーゼであるレグマインである。
【0092】
一実施形態において、基Cは、2つのアミノ酸配列−AA−AA(ここで、AAはリシン、アルギニンまたはシトルリンであり、AAは、フェニルアラニン、バリン、アラニン、ロイシンまたはイソロイシンである)を含むペプチドである。別の実施形態において、Cは、Val−Cit、Ala−Val、Val−Ala−Val、Lys−Lys、Ala−Asn−Val、Val−Leu−Lys、Cit−Cit、Val−Lys、Ala−Ala−Asn、Lys、Cit、SerおよびGluからなる群から選択される1から5個のアミノ酸からなる配列からなる。
【0093】
単一のアミノ酸からなる切断可能な基Cの調製および設計は、その開示が参照によって本明細書に組み込まれるChenらのUS2010/0113476A1に開示されている。
【0094】
基Cはまた、光切断可能なもの、例えば、光への曝露時に切断されるニトロベンジルエーテルであってよい。
【0095】
基Cは、抗体Zまたは化合物Dに直接結合していてもよい。すなわち、場合によっては、スペーサーXおよびXは存在しなくてもよい。例えば、基Cがジスルフィドである場合、2個の硫黄のうちの1個は、抗体Z上のシステイン残基またはその代替物であってよい。あるいは、基Cは、抗体の炭水化物側鎖上のアルデヒドに結合しているヒドラゾンであってもよい。あるいは、基Cは、抗体Zのリシンε−アミノ基と一緒に形成されたペプチド結合であってよい。好ましい実施形態において、化合物Dは、化合物Dにおけるカルボキシルまたはアミン基へのペプチジル結合を介して基Cに直接結合されている。
【0096】
スペーサーXは、存在する場合、基Cが抗体Zによる抗原結合を立体的に障害しないように、または抗体Zが基Cの切断を立体的に障害しないように、基Cと抗体Zとの間に空間的な分離を提供する。さらに、スペーサーXは、高い溶解性または低い凝集特性を抱合体に与えるために用いることができる。スペーサーXは、あらゆる組み合わせで組み立てることができる1つまたはそれ以上のモジュラーセグメントを含んでよい。スペーサーXに適切なセグメントの例としては下記である:
【化46】
[式中、下付文字rは、1から24、好ましくは2から4である]。これらのセグメントが組み合わされて、
【化47】
などのスペーサーXを調製することができる。
【0097】
スペーサーXは、存在する場合、化合物Dが基Cの切断を立体的にまたは電子的に障害しないように、基Cと化合物Dとの間に空間的な分離を提供する。スペーサーXはまた、さらなる分子量および化学官能性を抱合体に導入するために用いられ得る。一般に、さらなる質量および官能性は、抱合体の血清半減期および他の特性に影響を及ぼすはずである。したがって、スペーサー基の賢明な選択により、抱合体の血清半減期を調節することができる。スペーサーXについて上記したように、スペーサーXもまた、モジュラーセグメントから組み立てることができる。
【0098】
スペーサーXもしくはXのいずれかまたは両方は、自己犠牲部分を含んでいてもよい。自己犠牲部分は、(1)基Cと抗体Zまたは細胞毒素Dのいずれかに結合し、かつ(2)基Cからの切断が、反応順序を開始し、場合によっては、抗体Zまたは細胞毒素Dから自己犠牲部分自体の剥離を生じるような構造を有する部分である。言い換えると、抗体Zまたは細胞毒素Dから離れた部位での反応(基Cからの切断)が、X−ZまたはX−D結合の分裂を引き起こす。自己犠牲部分は、スペーサーXの場合に存在することが望ましい。なぜなら、抱合体からの切断後、スペーサーXまたはその部分が細胞毒素Dに結合したままであると、抗体Zの生物学的活性が損なわれることがあるためである。自己犠牲部分の使用は、切断可能な基Cがポリペプチドである場合に特に望ましい。
【0099】
パートナー分子D上のヒドロキシルまたはアミノ基に結合する典型的な自己犠牲部分(i)〜(v)は、下記に示されている:
【化48】
【0100】
自己犠牲部分は、点線aおよびbの間の構造であり、内容を示すために示されている隣接する構造特徴を有している。自己犠牲部分(i)および(v)は、化合物D−NHに結合している(すなわち、化合物Dはアミノ基を介して抱合されている)一方で、自己犠牲部分(ii)、(iii)および(iv)は、化合物D−OHに結合している(すなわち、化合物Dは、ヒドロキシルまたはカルボキシル基を介して抱合されている)。点線bでアミド結合が切断されると、アミド窒素がアミン窒素として放出され、反応順序が開始されて点線aで結合の切断が生じ、場合によっては、結果としてD−OHまたはD−NHの放出が生じうる。自己犠牲部分に関するさらなる開示については、出典明示により本明細書に取り込まれるCarl et al., J. Med. Chem., 24 (3), 479-480 (1981);CarlらのWO81/01145(1981);Dubowchik et al., Pharmacology & Therapeutics, 83, 67-123 (1999);FirestoneらのUS6,214,345B1(2001);Toki et al., J. Org. Chem. 67, 1866-1872 (2002);Doronina et al., Nature Biotechnology 21 (7), 778-784 (2003) (erratum, p. 941);BoydらのUS7,691,962B2;BoydらのUS2008/0279868A1;SufiらのWO2008/083312A2;FengらのUS7,375,078B2;およびSenterらのUS2003/0096743A1を参照されたい。
【0101】
化合物D−リンカー組成物
本発明の抱合体は、好ましくは、化合物Dおよびリンカー(XC(Xを最初に結合させて、式(V−a):
D−(XC(X−R31 (V−a)
[式中、R31は、抗体Z上の官能基と反応して抱合体を形成するのに適した官能基である]
によって表される薬物リンカー組成物を生成することによって調製される。適当な基R31の例には:
【化49】
[式中、
32は、Cl、Br、F、メシレートまたはトシレートであり、R33は、Cl、Br、I、F、OH、−O−N−スクシンイミジル、−O−(4−ニトロフェニル)、−O−ペンタフルオロフェニルまたは−O−テトラフルオロフェニルである]
が含まれる。適当な部分D−(XC(X−R31の調製に一般的に有効な化学合成は、出典明示により本明細書に取り込まれる、NgらのUS7,087,600B2(2006);Ngらの米国特許第6,989,452B2号(2006);Ngらの米国特許第7,129,261B2号(2006);NgらのWO02/096910A1;Boydらの米国特許第7,691,962B2号;Chenらの米国特許第2006/0004081A1号;Gangwarらの米国特許第2006/0247295A1号;Boydらの米国特許第2008/0279868A1号;Gangwarらの米国特許第2008/0281102A1号;Gangwarらの米国特許第2008/0293800A1号;SufiらのWO2008/083312A2;およびChenらの米国特許第2010/0113476A1号に開示されている。
【0102】
好ましい態様において、R31は、マレイミド基であり、細胞毒性化合物−リンカー分子は、式(V−b):
【化50】
[式中、
nは、0、1または2であり;
、RおよびRは、独立して、H、無置換または置換C−C10アルキル、無置換または置換C−C10アルケニル、無置換または置換C−C10アルキニル、無置換または置換アリール、無置換または置換ヘテロアリール、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2O(C−C10アルキニル)、(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換(CH1−2OC(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルケニル)、無置換または置換C(=O)(C−C10アルキニル)、無置換または置換シクロ脂肪族、無置換または置換ヘテロシクロ脂肪族、無置換または置換アリールアルキル、あるいは無置換または置換アルキルアリールであり;
4’は、
【化51】
であって、
12は、H、C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルであり;ならびに
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、CO(C−Cアルキル)、CO(C−Cアルケニル)またはCO(C−Cアルキニル)であり;
およびXは、スペーサー基であり;
Cは、切断可能な基であり;ならびに
aおよびbは、独立して、0または1であって;
基R4’は、aが1である場合に基Xまたはaが0である場合に基Cのいずれかに対して、カルボキシルまたはアミン基を介して結合している]
によって表されうる。
【0103】
好ましくは、R4’におけるカルボキシルまたはアミン基と、基XまたはCとの結合は、場合によっては、アミド結合による。
【0104】
構造
【化52】
において、カルボキシル基に対してアルファに位置するメチル基の立体化学は、好ましくは、天然に存在するツブリシンのもの、すなわち:
【化53】
に相当する。
【0105】
好ましくは、式(V−b)において、nは、1であり、Rは、イソロイシン残基であり、aは、0であり、bは、1であり、Cは、1から5個のアミノ酸(好ましくは、1から2個)であり、R4’は、酵素学的に切断可能であるペプチジル結合によってCに結合されており、Rは、Meである。この好ましい態様は、式(V−c):
【化54】
によって表され、
ここで、R、RおよびR4’は、式(V−b)に関して定義されるとおりであり、各AAは、独立して、天然アミノ酸であり、Xは、CHCHNHC(=O)(CH2−5またはC(=O)(CH2−5である。好ましいアミノ酸AAは、リシン、シトルリン、アラニン、バリン、グリシンおよびフェニルアラニンである。
【0106】
式(V−b)において、Rは、好ましくは、H、C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルケニルであり、より好ましくはイソロイシン残基、すなわち:
【化55】
である。
【0107】
式(V−b)および(V−c)において、Rは、好ましくは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、CHO(C−Cアルキル)、CHO(C−Cアルケニル)、CHO(C=O)(C−Cアルキル)またはCHOC(=O)(C−Cアルケニル)であり;より好ましくは、H、Me、Et、CHOMe、CHOEt、CHOC(=O)i−Bu、CHOC(=O)n−Pr、CHOC(=O)CH=CHまたはCHOC(=O)Meである。
【0108】
式(V−b)および(V−c)において、Rは、好ましくは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C(=O)C−CアルキルまたはC(=O)C−Cアルケニルであり;より好ましくは、H、Me、EtまたはC(=O)Meである。
【0109】
式(V−b)および(V−c)において、R4’は、好ましくは、
【化56】
であり、R4’は、
【化57】
であって、R12は、H、MeまたはEtであることが特に好ましい。
【0110】
式(V−b)において、nは、好ましくは、1であり、Rは、好ましくは、メチルであり;すなわち、Mepサブユニット中の環は、好ましくは、N−メチルピペリジニルのものである。
【0111】
別の態様において、本発明は、式(V−d)
【化58】
によって表される構造を有する化合物を提供するものであり、
式中、R13は、Me、n−Pr、CHOMeまたはCHOC(=O)CHCH(Me)であり;R14は、MeまたはC(=O)Meであり;R15は、HまたはC−Cアルキル(好ましくは、H、MeまたはEt)であり;R16は、リシン((CHNH)またはシトルリン((CHNHC(=O)NH)側鎖基であり;R17は、バリン(C(Me))またはアラニン(Me)側鎖基であり;pは、0または1である。
【0112】
本発明の具体的な細胞毒性化合物リンカー構築物の例は、以下に式(VI−a)から(VI−t)として示される。化合物−リンカー(VI−n)が特に好ましい。それらは、マレイミド基を有し、下記のような手順によってそのスルフヒドリル基を介して抗体に抱合するために準備されている。
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【0113】
下記は、リシンε−アミノ基を2−イミノチオランと反応させ、続いて、上記のようなマレイミド含有薬物−リンカー部分と反応させることによって、遊離チオール基を抗体に導入することに基づく例示的な手順である。最初に、抗体は、50mMのNaClおよび2mMのジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)を含有する0.1Mのリン酸緩衝液(pH8.0)中で緩衝液を交換され、5〜10mg/mLに濃縮される。チオール化は、前記抗体に2−イミノチオランを付加することによって達成される。加えられる2−イミノチオランの量は、先行実験によって決定することができ、抗体ごとに変動する。先行実験において、2−イミノチオランの増加量の滴定液が抗体に加えられ、続いて、抗体と室温(室温、約25℃)で1時間インキュベートされ、抗体は、SEPHADEX(商標)G−25カラムを用いて50mMのpH6.0 HEPES緩衝液中で脱塩され、導入されたチオール基の数は、ジチオジピリジン(DTDP)と反応させることによって迅速に決定される。チオール基とDTDPとの反応によって、チオピリジンが遊離され、これを324nmで分光学的にモニターされうる。0.5〜1.0mg/mLのタンパク質濃度の試料が典型的に用いられる。280nmでの吸光度は、試料中のタンパク質の濃度を正確に決定するために用いることができ、次いで、各試料のアリコット(0.9mL)は、0.1mLのDTDP(エタノール中で5mMのストック溶液)と室温で10分間インキュベートされる。緩衝液のみとDTDPとの盲験試料もまた、並べてインキュベートされる。10分後、324nmでの吸光度で測定され、チオール基の数は、19,800M−1のチオピリジンの吸光係数を用いて定量される。
【0114】
典型的には、抗体1個当たり約3個のチオール基のチオール化レベルが望ましい。例えば、ある抗体を用いると、これは、15倍モル過剰量の2−イミノチオランを加え、続いて室温で1時間インキュベーションすることによって達成することができる。次いで、抗体は、2−イミノチオランと所望のモル比でインキュベートされ、次いで、抱合緩衝液(5mMのグリシンおよび2mMのDTPAを含有する50mMのpH6.0 HEPES緩衝液)中で脱塩される。チオール化物質は氷上で維持され、その間に導入されたチオールの数が上記のように定量される。
【0115】
導入されたチオールの数が確認された後、薬物−リンカー部分がチオール1個当たり3倍モル過剰量で加えられる。抱合反応は、5% ジメチルスルホキシド(DMSO)の最終濃度または同様の代わりの溶媒を含有する抱合緩衝液中で進められる。一般に、薬物−リンカーストック溶液は、100% DMSO中に溶解される。ストック溶液は、チオール化抗体に直接加えられ、十分量のDMSOを加えて10%の最終濃度にするか、または10% DMSOの最終濃度含有する抱合緩衝液中で予め希釈し、続いて同等体積のチオール化抗体に加えられる。
【0116】
抱合反応混合物は、撹拌しながら室温で2時間インキュベートされる。インキュベーション後、抱合反応混合物は、遠心分離され、0.2μmフィルターで濾過される。抱合体の精製は、多くの方法を用いてクロマトグラフィーによって達成することができる。ある方法において、抱合体は、5mMのグリシンおよび50mMのNaClを含有する50mMのpH7.2 HEPES緩衝液で予め平衡にしたSEPHACRYL(商標)S200カラム上でサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製される。クロマトグラフィーは28cm/hの線流速で行われる。抱合体を含有するフラクションが収集され、貯留され、濃縮される。別の方法において、精製は、イオン交換クロマトグラフィーに通して達成することができる。条件は、抗体ごとに変動し、各場合で最適化されるべきである。例えば、抗体−薬物抱合体反応混合物は、5mMのグリシンを含有する50mMのpH5.5 HEPES中で予め平衡化されたSP−SEPHAROSE(商標)カラムに適用される。抗体抱合体は、pH5.5で平衡緩衝液中で0〜1MのNaCl勾配を用いて溶出される。抱合体を含有する該当フラクションは貯留され、製剤緩衝液(5mMのグリシンおよび100mMのNaClを含有する50mMのpH7.2 HEPES緩衝液)に対して透析される。
【0117】
当業者は、上記の条件および方法が例示であって、限定するものではなく、抱合のためのその他の手法も当該技術分野で知られており、本発明で使用可能であることを理解する。
【0118】
前記の技術を用いて、本発明の化合物は、抗体2A10、抗PSMA抗体(HuangらのUS2009/0297438);2H5、抗CD70抗体(TerrettらのUS2009/0028872);1F4、抗CD70抗体(CocciaらのWO2008/074004);または6A4、抗メソテリン抗体(TerrettらのWO2009/045957)を用いて抱合された。生じた抱合体は、Abが抗体を表す下記の式によって描写されうる。当業者であれば、これらの式において、細胞毒素−抗体化合物の比率は、簡潔のために1:1として示されているが、実際には、この比は通常、2から3のようにより大きいことを認識するであろう。
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【0119】
医薬組成物
他の態様において、本開示は、医薬的に許容される添加剤と共に製剤化された本開示の化合物を含む医薬組成物を提供する。これは所望により、抗体または他の薬物などの1つまたはそれ以上のさらなる医薬的活性成分を含有していてもよい。前記医薬組成物は、他の治療薬、特に他の抗癌薬との併用療法において投与することができる。
【0120】
医薬組成物は、1つまたはそれ以上の添加剤を含んでいてもよい。使用することができる添加剤には、担体、界面活性剤、増粘剤または乳濁剤、固体結合剤、分散剤または懸濁助剤、溶解補助剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、保存剤、等張化剤およびこれらの組合せが包含される。適切な添加剤の選択および使用は、出典明示により本明細書に取り込まれるGennaro, ed., Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)に教示されている。
【0121】
好ましくは、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または点滴による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物は、酸の作用およびそれを不活性化させ得るその他の自然条件から保護するための材料でコーティングすることができる。「非経口投与」という語句は、通常、注射による腸内および局所投与以外の投与方法を意味し、これには、以下に限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内注射ならびに点滴が包含される。あるいは、医薬組成物は、非経口経路、例えば、投与の局所、表皮または粘膜経路、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下または局所などを介して投与されうる。
【0122】
医薬組成物は、無菌水溶液または分散液の形態であってもよい。それらはまた、マイクロエマルション、リポソームまたは高い薬物濃度を達成するのに適したその他の規則構造中に製剤化されうる。
【0123】
担体物質を組み合わせて単一の製剤を製造することができる有効成分の量は、治療される対象および特定の投与方法に応じて変動し、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100パーセント以外で、この量は、医薬的に許容される担体と組み合わせて有効成分の約0.01パーセントから約99パーセント、好ましくは、有効成分の約0.1パーセントから約70パーセント、最も好ましくは、約1パーセントから約30パーセントの範囲である。
【0124】
投与計画は、治療効果を生じるように調整される。例えば、単一のボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割投薬量が時間をかけて投与されてもよく、あるいは、投薬量がその状況の緊急性に示されるように比例して減少され、もしくは増加されうる。投与を容易にし、投薬を均一にするための投薬単位形態で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。「投薬単位形態」は、治療されるべき対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を意味し、各単位は、所望される治療効果を生じるように算出された予め決定された量の活性化合物を、必要とされる医薬担体と共に含有する。
【0125】
投薬量は、宿主体重当たり、約0.0001から100mg/kg、より一般的には0.01から5mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重もしくは10mg/kg体重でありうるか、または1〜10mg/kgの範囲内でありうる。典型的な治療計画としては、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回または3〜6ヶ月に1回の投与である。好ましい投与計画には、下記の投与スケジュール:(i)4週間ごとに6回の投与、次いで3ヶ月ごと;(ii)3週間ごと;(iii)3mg/kg体重で1回、続いて1mg/kg体重で3週間ごとのうちの1つを用いて、静脈内投与による1mg/kg体重または3mg/kg体重が包含される。ある方法において、投薬量は、約1〜1000μg/mLの血漿抗体濃度が達成されるように調節され、ある方法では約25〜300μg/mLである。
【0126】
本発明の化合物の「治療上有効量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の減少、疾患症状から開放されている期間の頻度および持続期間の増加、または疾患の苦痛による機能欠陥もしくは機能障害の予防を生じる。例えば、腫瘍を有する対象の治療においては、「治療上有効量」は、好ましくは、治療されていない対象と比較して、少なくとも約20%、より好ましくは、少なくとも約40%、さらにより好ましくは、少なくとも約60%、なおより好ましくは、少なくとも約80%まで腫瘍の増殖を阻害する。治療上有効量の治療化合物は、典型的にヒトであるが、別の哺乳動物でありうる対象において、腫瘍サイズを減少させるか、あるいは別段に症状を軽減させることができる。
【0127】
医薬組成物は、放出制御または徐放性製剤であり得、これには、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系が包含される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生物分解可能な生体適合性ポリマーが用いられ得る。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0128】
治療組成物は、出典明示により本明細書に組み込まれる(1)無針皮下注射デバイス(例えば、US5,399,163;5,383,851;5,312,335;5,064,413;4,941,880;4,790,824;および4,596,556);(2)微小注入ポンプ(US4,487,603);(3)経皮デバイス(US4,486,194);(4)点滴装置(US4,447,233および4,447,224);および(5)浸透デバイス(US4,439,196および4,475,196)などの医療機器によって投与されうる。
【0129】
ある実施形態において、医薬組成物は、インビボで適正な分布が確かめられるように製剤化することができる。例えば、本発明の治療化合物が血液脳関門を通過したことを確かめるために、それらは、リポソーム中に製剤化され、特定の細胞または臓器への選択的な輸送を高めるための標的部分をさらに含みうる。例えば、US4,522,811;5,374,548;5,416,016;および5,399,331;V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685;Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038;Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140;M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180;Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134;Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090;Keinanen and Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123;およびKillion and Fidler (1994) Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0130】
用途
本発明の化合物またはその抱合体は、以下に限定されないが、頭部、頚部、鼻腔、副鼻腔、上咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺および傍神経節腫の腫瘍を包含する頭頚部の癌;肝臓および胆樹の癌、特に肝細胞癌腫;腸管癌、特に結腸直腸癌;卵巣癌;小細胞および非小細胞肺癌(SCLCおよびNSCLC);線維肉腫、悪性線維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫および胞状軟部肉腫などの乳癌肉腫;急性前骨髄球性白血病(APL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および慢性骨髄性白血病(CML)などの白血病;中枢神経系の腫瘍、特に脳癌;多発性骨髄腫(MM)、ホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B系列大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫およびT細胞未分化大細胞リンパ腫などのリンパ腫が包含される過剰増殖性疾患などの疾患を治療するために使用することができる。臨床的には、本明細書に記載の方法の実施および組成物の使用は、癌性増殖のサイズもしくは数の減少および/または付随する症状(適用可能な場合には)の低減を生じる。病理学的には、本明細書に記載の方法の実施および組成物の使用は、癌細胞の増殖の阻害、癌または腫瘍のサイズの減少、さらなる腫瘍転移の予防、および腫瘍血管形成の阻害などの病理学的に関連する応答を生じる。このような疾患を治療する方法は、治療上有効量の本発明の組み合わせを対象に投与することを特徴とする。前記方法は、必要であれば繰り返されてもよい。特に、癌は、結腸直腸癌、肝臓癌、前立腺癌、乳癌、黒色腫、神経膠芽細胞腫、肺癌、膵臓癌、卵巣癌、多発性骨髄腫、腎臓癌、白血病(特にALL、APLまたはAML)またはリンパ腫でありうる。
【0131】
本発明の化合物またはそれらの抱合体は、抗体、アルキル化薬、血管形成阻害薬、代謝拮抗薬、DNA開裂薬、DNA架橋剤、DNAインターカレーター(DNA intercalator)、DNA小溝結合薬、エンジイン、熱ショックタンパク質90阻害薬、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、免疫調節薬、微小管安定化剤、ヌクレオシド(プリンまたはピリミジン)類似体、核外輸送阻害薬、プロテアソーム阻害薬、トポイソメラーゼ(IまたはII)阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬およびセリン/トレオニンキナーゼ阻害薬を含むその他の抗癌薬または細胞毒性薬と組み合わせて投与することができる。具体的な抗癌薬または細胞毒性薬には、β−ラパコン、アンサマイトシンP3、オーリスタチン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カリスタチンA、カンプトテシン、カペシタビン、CC−1065、シスプラチン、クリプトフィシン、ダウノルビシン、ジソラゾール、ドセタキセル、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、ダイネミシンA、エポチロン、エトポシド、フロクスウリジン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲルダナマイシン、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、17−(2−ジメチルアミノエチル)アミノ17−デメトキシゲルダナマイシン(17−DMAG)、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イマチニブ、インターフェロン、インターロイキン、イリノテカン、マイタンシン、メトトレキサート、マイトマイシンC、オキサリプラチン、パクリタキセル、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、チオテパ、トポテカン、トリコスタチンA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、レナリドマイド(REVLIMID(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))およびセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))が包含される。
【実施例】
【0132】
本発明の実施は、下記の実施例を参照してさらに理解することができ、これらは例示のために供されるのであって、限定のためではない。
【0133】
実施例1−スキーム1
スキーム1(図1aおよび1b)は、本化合物の製造方法を示す。
【0134】
チオアミド化合物2
2,2−ジエトキシアセトニトリル1(25g,193mmol)を、300mLのメタノール(MeOH)中の(NHS(40mL,265mmol,45%水溶液)と室温(RT)で混合させた。反応混合液を終夜室温に保った後、減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(EtOAc)中に溶解させた。EtOAc溶液を、飽和NaHCO溶液、続いて食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。EtOAcを蒸発させて、チオアミド化合物2(26g,159mmol,82%)を白色の固形物として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.01 (s, 1H), 3.67 (m, 4H), 1.22 (t, J = 7.2 Hz, 6H).
【0135】
2−(ジエトキシメチル)チアゾール−4−カルボン酸メチル3
100gのモレキュラ・シーブス(3A)を、300mLのMeOH中のチオアミド化合物2(25g,153mmol)およびブロモピルビン酸メチル(20mL,163mmol)の反応混合物に加えた。混合物を1.5時間還流させ、冷まし、セライト(登録商標)に通して濾過した。濾液を濃縮し、カラム(ジクロロメタン(DCM):EtOAc,8:1)に通して、カルボン酸チアゾール化合物3(34.5g,140mmol,91%)を固形物として得て、さらに精製することなく次の工程に用いた。
【0136】
2−ホルミルチアゾール−4−カルボン酸メチル4
チアゾール−4−カルボキシレート化合物3(30g,122mmol)を300mLのアセトン中に溶解させ、これにHCl溶液(21mL,2M)を加えた。反応混合物を室温で終夜保ち、次いで反応混合物を加熱し、60℃で2時間保った。続いて、反応混合液を冷まし、減圧下で蒸発させて、残渣を得て、200mLのDCMに溶解させた。次いで、DCM溶液を飽和NaHCO溶液、続いて食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。DCM溶液を濾過し、減圧濃縮して、濃縮溶液を得て、エーテルによりトリチュレートして、2−ホルミルチアゾール−4−カルボン酸メチル4(14g,82mmol,2工程で54%)を白色の固形物として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 133-8-p110.16 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 8.53 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 4.01 (s, 3H).
【0137】
スルフィンイミン化合物7
(S)−2−メチルプロパン−2−スルフィンアミド5(7.3mL,68mmol)を、100mLのテトラヒドロフラン(THF)中に溶解させ、これにTi(OEt)(27mL,130mmol)および3−メチル−2−ブタノン6(8g,41mmol)を室温で加えた。反応混合液を終夜還流し、続いて冷まし、食塩水溶液に加えた。得られた混合液を濾過し、該ケークをEtOAcで洗浄した。有機相を濃縮して、残渣を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM:EtOAc,4:1)に付して、スルフィンイミン化合物7(9.5g,37mmol,75%)を油状物として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.53 (m, 1H), 2.29 (s, 3H), 1.22 (s, 9H), 1.12 (d, J = 4.2 Hz, 3H), 1.10 (d, J = 4.2 Hz, 3H) MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 190.12, 実測値, 190.
【0138】
化合物8
リチウムジイソプロピルアミド(「LDA」60mL,108mmol,1.8M)を200mLのエーテルに−78℃で加え、続いて、200mLのエーテル中のスルフィンイミン化合物7(18.9g,100mmol)に加え、得られた反応混合物を40分間攪拌した。ClTi(OiPr)(203mmol,48.4mL)を反応混合液に加え、該溶液を60分間攪拌した。180mLのTHF中の2−ホルミルチアゾール−4−カルボン酸メチル4(12.5g,72.6mmol)溶液を反応混合液にゆっくり加えた。−78℃でさらに2時間後、酢酸およびTHF(1/5v/v,4.9mL)の混合液を加えた。混合液を1時間にわたり5℃に温め、続いて食塩水溶液中に注ぎ入れた。次いで、所望の生成物を、エーテルおよびEtOAc溶液を用いて食塩水溶液から抽出した。続いて、有機相を無水MgSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を2つのカラム(DCM:EtOAcおよびヘキサン:EtOAc)に通して、化合物8(19.6g,54mmol,75%)を油状物として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 361.12, 実測値, 361.
【0139】
化合物9
200mLのTHF中の化合物8(19g,52.7mmol)の溶液を、−78℃に冷却し、その後、Ti(OEt)(21.7mL,105mmol)をゆっくり加えた。60分後、溶液が透明になってきたら、NaBH(31mmol,1.17g)を加え、2時間後(長時間の反応はエステルを減少させた)に10mLのMeOHを加えた。次いで、該混合液を0℃に温め、大量の氷中で1mL HOAcに注ぎ入れた。混合液を濾過し、該ケークをEtOAcで洗浄した。分離後、有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。最終残渣をカラム(DCM:EtOAc,1:4)に通して、化合物9(19g,52mmol,99%)を油状物として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.1 (s, 1H), 5.54 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 5.16 (m, 1H), 3.92 (s, 3H), 3.42 ((m, 1H), 3.32 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 2.25 (m, 1H), 1.88 (m, 1H), 1.68 (m, 1H), 1.26 (s, 9H), 0.91 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.87 (d, J = 6.7 Hz, 3H). 13CNMR (100 MHz, CDCl3) δ 177.9, 162.1, 146.6, 127.7, 67.9, 58.6, 56.4, 52.5, 40.8, 33.9, 23.1, 19.8, 17.4. MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 363.13, 実測値, 363.
【0140】
ジメチル化化合物10
水素化ナトリウム(9.69mmol,60%,387mg)を、5℃で6mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の化合物9の溶液、続いて60分後にヨウ化メチル(607μL,9.7mmol)に加えた。反応混合物を3時間攪拌し、続いて該混合物を氷冷した飽和NHCl溶液に注ぎ入れた。エチルエーテルを加え、有機相を食塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濃縮して残渣を得た。残渣をカラム(ヘキサン:EtOAc 1:4)に通して、ジメチル化化合物10(314mg,0.805mmol,33%)を液体として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.17 (s, 1H), 4.87 (dd, J = 11.0 Hz, J = 2.5 Hz, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.50 (s, 3H), 3.40 (m, 1H), 2.58 (s, 3H), 1.99 (m, 1H), 1.83 (m, 2H), 1.25 (s, 9H), 0.98 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.95 (d, J = 6.7 Hz, 3H) MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 391.16, 実測値, 391.
【0141】
モノメチルアミン化合物11
HCl溶液(ジオキサン中で4N,0.5mL)を、5mLのMeOH中のジメチル化化合物10(370mg,0.95mmol)溶液に加えた。反応混合液を60分間攪拌し、続いて減圧下で蒸発させて、モノメチルアミン化合物11(362mg)をそのHCl塩として得て、さらに精製することなく次の工程に用いた。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 287.14, 実測値, 287.
【0142】
アミド化合物12
モノメチルアミン化合物11(362mg,1.12mmol)、Fmoc化合物22(Wipf et al., 2007に従って調製した;1.2g,3.38mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA,976μL,5.6mmol)を、5mLのDMF中で室温にて混合させた。24時間撹拌後、該混合液を濃縮し、残渣をEtOAc中に溶解させた。有機相をNaHCO、食塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濃縮して残渣を得た。残渣をカラム(ヘキサン:EtOAt:MeOH 7:3:0.6)に通してアミド化合物12(466mg,0.75mmol,67%)を油状物として得た。(ES+) m/z, 計算値: m+1, 622.2, 実測値, 622.
【0143】
化合物13
アミド化合物12(466mg,0.75mmol)を、5%のピペリジンを含有する8mLのDCM中に室温で溶解させた。1時間後、該混合物を減圧下で蒸発させ、残渣をカラムに通して油状物(150mg)を得、続いて2mL DCM中のピペコリン酸(D)−N−メチル23(Peltier et al., 2006に従って調製した「D−Mep」;50mg,0.35mmol)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(「HATU」,126mg,0.33mmol)、DIEA(152μL,0.84mmol)と混合させた。2.5時間攪拌後、該溶媒を蒸発させて、残渣を得、EtOAc中に溶解させた。続いて、有機相を飽和NaHCO、食塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濃縮して残渣を得た。残渣をカラム(DCM:MeOH 0−10%)に通して、化合物13(99mg,0.188mmol,25%)を油状物として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 525.3, 実測値, 525.
【0144】
酸化合物14
化合物13(99mg,0.18mmol)を、MeOHおよび水(3:1 v:v)の3mLの混合液中に溶解させ、これにNaOH(370μL,0.37mmol,1M)を加えた。2時間撹拌後、反応混合液を中和し、濃縮し、残渣を得た。残渣をC−18カラム(水(1% トリフルオロ酢酸(「TFA」)):アセトニトリル(ACN)(1% TFA),0−100%)に通して、酸化合物14(78mg,0.125mmol,69%)をTFA塩として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 511.29, 実測値, 511.
【0145】
化合物15
DIEA(24μL,137μmol)を、DMF(0.5mL)中の酸化合物14(9mg,14.4μmol,TFA塩)およびHATU(6mg,15μmol)の溶液に室温で加えた。全ての酸化合物14が活性化した(HPLCによりモニターした)後、ツブフェニルアラニン(Peltier et al., 2006に従って調製した;6.5mg,27μmol,HCl塩)を加えた。20分間攪拌後、該反応混合液をC−18カラム(水(1% TFA):ACN(1% TFA),0−100%)に通して、化合物15(2.5mg,3μmol,21%)を白色のTFA塩として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 700.4, 実測値, 700.
【化87】
【0146】
化合物16
DIEA(20μL,0.11mmol)を、0.5mLのDMF中の酸化合物14(12mg,0.019mmol,TFA塩)、フェニルアラニンメチルエステル(5.3mg,0.024mmol,HCl塩として)およびHATU(11.4mg,0.03mmol)の溶液に加えた。30分後、反応混合液をC−18カラム(水(1% TFA):ACN(1% TFA) 0−100%)に通して、化合物16(4.2mg,0.005mmol,26%)を白色のTFA塩として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 672.89, 実測値, 672.5. 化合物16はまた、上記で化合物(III−c)とも称される。
【0147】
化合物17
DIEA(7μL,0.04mmol)を、DMF中の酸化合物14(5mg、0.008mmol)、ノルバリンメチルエステル(「NVaM」,2mg,0.012mmol)およびHATU(4.5mg,0.012mmol)の溶液に加えた。該混合物を30分間攪拌した後、粗混合物をC−18カラム(水(1% TFA):ACN(1% TFA) 0−100%)に通して、化合物17(1.3mg,0.0017mmol,21%)を白色のTFA塩として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 624.85, 実測値, 624.5. 化合物17は上記で化合物(III−e)とも称される。
【化88】
【0148】
酸化合物18
NaOH溶液(75μL,0.75mmol,10M)を、MeOHおよびTHFの混合液中の化合物16(168mg,0.25mmol)の溶液に加えた。終夜攪拌後、混合液を中和し、凍結乾燥させた。該固形物をさらに精製することなく次の工程に用いた。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 658.36, 実測値, 658.4. 化合物18は上記で化合物(III−o)とも称される。
【0149】
ノルバリルアミド化合物19
DIEA(5μL,0.03mmol)を、DMF中の酸化合物18(5mg,0.006mmol)、HATU(3.5mg,0.009mmol)およびNVaM(1.5mg,0.009mmol)の溶液に加えた。30分間攪拌後、反応混合液をC−18カラム(水(1% TFA):ACN(1% TFA) 0−100%)に通して、ノルバリルアミド化合物19(2.2,0.0025mmol,40%)を白色のTFA塩として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 772.02, 実測値, 771.5. ノルバリルアミド化合物19は、上記で化合物(III−f)とも称される。
【0150】
化合物24、25および26
これらの3つの化合物を、上記と同様の手順を用いて、酸化合物14または18から合成した。該生成物をC−18カラム(水(1% TFA):ACN(1% TFA) 0−100%)により全て精製した。収率は25〜50%で変動した。化合物24: MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 743.4, 実測値 743. 化合物25: MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 686.39, 実測値 686.5. 化合物26: MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 700.40, 実測値 700.5.
【化89】
【化90】
【化91】
【0151】
化合物24は上記で化合物(III−g)とも称される。
【0152】
化合物26a
化合物14を、化合物16について記載の同じ手順に従って、Ala−Phe OMeとカップリングさせた。該生成物をC−18カラム(水(1% TFA):ACN(1% TFA),0−100%)により精製した。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 743, 実測値 743.4. 化合物26aは上記で化合物(III−l)とも称される。
【化92】
【0153】
実施例2−スキーム2
本実施例は、スキーム2(図2)に示される化合物の合成を記載する。
【0154】
化合物28
フェニルアラニンメチルエステル(10mg,46.5μmol)およびHATU(14.7mg,38.6μmol)を、0.5mL DMF中の化合物27(Peltier et al., 2006に従って調製;10mg,15.5μmol,ギ酸塩)の溶液、続いてDIEAに室温で加えた。30分間攪拌後、DMSO(2mL)を加え、反応混合液をC−18カラム(水(5mM ギ酸アンモニウム,pH7.2):ACN 0−100%)に直接付して、化合物28(3.2mg,25%)を白色の固形物(ギ酸塩)として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 758.41, 実測値 758.4. 化合物28は上記で化合物(III−h)とも称される。
【0155】
化合物29
無水酢酸(30μL,290μmol)を、0.5mLのピリジン中の化合物28(3.2mg,3μmol,ギ酸塩)の溶液に0℃で加えた。24時間撹拌した後、溶媒を反応混合液から蒸発させ、残渣を通常のシリカカラム(DCM:MeOH 0−10%)に通して、化合物29(2.0mg,83%)を油状物として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 800.42, 実測値 800.4. 化合物29は上記で化合物(III−i)とも称される。
【0156】
O−アセチル,N,O−アセタール化合物29a
化合物29(2mg,2.4μmol)を、0.5mL MeOH中に溶解させ、これに、ジオキサン中の4N HClを1滴加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、次いで該混合液を濃縮し、残渣をDMSO中に溶解させ、続いてC−18カラム(水(20mM ギ酸アンモニウム,pH6.1):ACN(0−100%)に通して、凍結乾燥させてO−アセチル,N,O−アセタール化合物29a(1.38mg,75%)を白色の固形物(ギ酸塩)として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 730, 実測値 730.4. O−アセチル,N,O−アセタール化合物29aは、上記で化合物(III−m)とも称される。
【0157】
N,O−アセタール化合物29b
化合物28(5mg,6μmol)をMeOH中に溶解させ、これにジオキサン中の4N HClを1滴加えた。該反応液を24時間撹拌し、次いで該溶液を濃縮し、さらに精製することなく次の工程に用いた。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 687, 実測値 688.4. N,O−アセタール化合物29bは、上記で化合物(III−n)とも称される。
【0158】
O−メチル,N,O−アセタール化合物29c
N,O−アセタール化合物29b(約5mg,7.2μmol)をDMF中に溶解させ、これに硫酸ジメチル(3μL,37μmol)およびNaH(2mg,50μmol,鉱油中で60%)を0℃で加えた。1時間後、該混合液をDMSO中に溶解させ、C−18カラム(水(20mM ギ酸アンモニウム,pH6.1):ACN(0−100%))に通して、O−メチル,N,O−アセタール化合物29cを半固形物(0.31mg,5%;同じMWの同定されていない化合物を含有する混合物)として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 702, 実測値 702.4. O−メチル,N,O−アセタール化合物29cは、上記で化合物(III−k)とも称される。
【0159】
実施例3−スキーム3
スキーム3(図3)は、式(II−b)に記載の化合物を調製するための手順を示す。
【0160】
アルコール化合物30
TFA(171mL)を、DCM(272mL)中の(S)−tert−ブチル−1−ヒドロキシ−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−2−イルカルバメート20(Erlansonらの米国特許第7,214,487 B2号;13.9g,46.9mmol)溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温に温め、反応を25分間進行させた。該溶液を濃縮して、9.2gの粗(S)−2−アミノ−3−(4−ニトロフェニル)プロパン−1−オールを白色の固形物として得た。THF(87mL)および水(87mL)中のこの粗生成物および炭酸ナトリウム(12.4g,117.3mmol)の溶液に、N−カルボエトキシフタルイミド(「CEPT」,12.3g,56.3mmol)を加えた。反応混合液を室温で4時間撹拌し、EtOAc(150mL)を加えた。水相をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して粗残渣を得、ヘキサン中で0−100% EtOAcのグラジエントでシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーで精製して、12.3gのアルコール化合物30を得た。MS: (+) m/z 327.0 (M+1).
【0161】
トリフレート化合物31
無水DCM(18mL)中のアルコール化合物30(1g,3.06mmol)溶液に、ピリジン(0.274mL,3.36mmol)を−78℃で加えた。該反応混合物を−78℃で5分間攪拌し、次いでトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.568mL,3.36mmol)を加えた。反応混合液を−78℃で45分間撹拌し、続いて室温で45分間攪拌した。沈殿物を濾過して除き、濾液を、DCMでシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.84gのトリフレート化合物31を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.10 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.81 (2H, m), p7.74 (2H, m), 7.36 (2H, J = 8.8 Hz), 5.13 (1H, t, J = 10.0 Hz), 4.99 (1H, m), 4.80 (1H, dd, J = 4.8, 5.6 Hz), 3.52 (1H, dd, J = 3.2, 11.2 Hz), および 3.27 (1H, dd, J = 5.6, 8.8 Hz).
【0162】
ジエステル化合物32
ジエチルメチルマロネート(0.71mL,4.12mmol)を、無水THF(4.7mL)中の水素化ナトリウム(0.161g,鉱油中で60%の分散液,4.03mmol)懸濁液に0℃で滴下して加えた。反応混合液を0℃で10分間攪拌し、続いて室温で10分間攪拌した。生じた溶液を、無水THF(9.4mL)中のトリフレート化合物31(0.84g,1.83mmol)溶液に0℃でゆっくり加えた。反応混合液を0℃で終夜攪拌した後、飽和NHCl水溶液(20mL)を加えた。該水溶液をEtOAcで抽出し、有機相を合わせて、食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得た。粗生成物を、ヘキサン中で0〜50% EtOAcのグラジエントでシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.57gのジエステル化合物32を得た。MS: (+) m/z 483.3 (M+1).
【0163】
モノエステル化合物33
6N HCl(10mL)および酢酸(10mL)中のジエステル化合物32の溶液を145℃で2日間加熱した。該有機溶液を濃縮して、0.41gの粗(R)−4−アミノ−2−メチル−5−(4−ニトロフェニル)ペンタン酸の塩酸塩を白色の固形物として得た。
【0164】
2,2−ジメトキシプロパン(「DMP」,4mL,32.6mmol)を、無水MeOH(20mL)中の粗生成物の塩酸塩および濃HCl(1mL)の溶液に加えた。該反応混合液を60℃で終夜加熱した。有機溶液を濃縮して、0.43gの粗(R)−メチル 4−アミノ−2−メチル−5−(4−ニトロフェニル)ペンタノエートの塩酸塩を白色の固形物として得た。
【0165】
トリエチルアミン(0.44mL,3.1mmol)を、ACN(10mL)中の粗(R)−メチル 4−アミノ−2−メチル−5−(4−ニトロフェニル)ペンタノエートの塩酸塩および二炭酸−ジ−tert−ブチル(0.369g,1.69mmol)の溶液に室温で加えた。反応混合液を室温で4時間撹拌し、次いで該溶媒を蒸発させた。水(20mL)を加え、水溶液をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中で0−30% EtOAcのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーで精製して、0.31gのモノエステル化合物33を無色の油状物として得た。MS: (+) m/z 267.3 (M-99).
【0166】
カルボン酸化合物34
6N HCl中のモノエステル化合物33(0.31g,0.846mmol)溶液を130℃で1.5時間加熱した。有機溶液を濃縮して、0.244gのカルボン酸化合物34を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 253.1 (M+1).
【0167】
ニトロ酸化合物35
化合物34a(80.4mg,0.149mmol,Patterson et al., 2008に従って調製した)を、DCM(0.76mL)中のペンタフルオロフェノール(41.1mg,0.224mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(「DIC」,0.0255mL,0.164mmol)の0.2M溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温に温め、室温で終夜攪拌した。該溶媒を蒸発させた。EtOAc(18mL)を加え、EtOAcで反応管をすすぎながら粗生成物を濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、粗物質をさらに精製することなく用いた。DMF(0.6mL)を、粗生成物、続いて、カルボン酸化合物34(0.129g,0.448mmol)およびDIEA(0.13mL,0.745mmol)に加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、溶媒を蒸発させて除去した。粗生成物を、1% NHOHを含有するDCM中で10−20% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.11gのニトロ酸化合物35を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 773.4 (M+1).
【0168】
アミノ酸化合物36
MeOH(5mL)中のニトロ酸化合物35(0.11g,0.142mmol)およびパラジウム炭素(10%,15mg)溶液を、水素雰囲気下で4時間攪拌した。該触媒を濾過して除去し、濾液を濃縮して、91mgのアミノ酸化合物36を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 743.5 (M+1). アミノ酸化合物36は上記で化合物(III−b)とも称される。
【0169】
メチルエステル化合物36a
HCl(1滴,37%)を、MeOH(0.5mL)中のアミノ酸化合物36(1.9mg,2.5mmol)および2,2−ジメトキシプロパン(「DMP」,0.05mL,0.41mol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で2時間攪拌し、続いて濃縮した。粗生成物をプレパラティブHPLCにより精製して、1.7mgのメチルエステル化合物36aを白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 757.5 (M+1). エステル化合物36aは、式(III−t)としても本明細書で示される。
【0170】
実施例4−スキーム4
スキーム4(図4)は、抱合用に準備されたペプチジルリンカーおよび反応性官能基を本化合物に結合させるための方法を示す。
【0171】
化合物37
DMF(0.3mL)中のDIEA、Fmoc−Lys(Boc)−OH(17.3mg,0.037mmol)およびHATU(12.8mg,0.0336mmol)の溶液を室温で5分間撹拌した。溶液のpHは8〜9の間に保った。次いで、DMF(2mL)およびDIEA中のアミノ酸化合物36(25mg,0.0336mmol)の溶液を、pHを8〜9の間に保ちながら反応混合液に加えた。室温で15分間攪拌し、次いで飽和NHCl溶液(5mL)を加えて反応をクエンチした。水溶液をEtOAcで抽出し、有機相を合わせて、乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、DCM中で0−20% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーで精製して、36.1mgの化合物37を得た。MS: (+) m/z 1193.6 (M+1).
【0172】
化合物38
ピペリジンを、DMF(2mL)中の化合物37(36.1mg,0.0302mmol)の溶液に、pHを9から10の間に保ちながら加えた。室温で20分間攪拌し、次いで有機溶液を濃縮して29.3mgの粗遊離α−アミノ化合物を得た。
【0173】
DIEAを、DMF(0.3mL)中の6−マレイミドヘキサン酸(7.0mg,0.0332mmol)およびHATU(11.5mg,0.0302mmol)溶液に、pHを8から9の間に保ちながら加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌した。次いで、DMF(2mL)中のDIEAおよび粗遊離アミノ化合物を、pHを8および9の間に保ちながら加えた。反応混合液を室温で15分間攪拌し、次いで粗生成物をプレパラティブHPLCにより精製して、9.1mgの化合物38を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 1164.6 (M+1).
【0174】
化合物39
TFA(1.5mL)を、DCM(1.5mL)中の化合物38(9.1mg,0.0078mmol)の溶液に加えた。該反応混合液を室温で15分間攪拌し、次いで粗生成物をプレパラティブHPLCにより精製して、5.0mgの所望化合物39のTFA塩を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 1064.8 (M+1). 化合物39の遊離塩基構造は、上記で化合物(VI−b)としても示される。化合物39のいくつかのアミド化合物もまた、その製造過程の副産物として単離した。MS: (+) m/z 1063.6 (M+1). 該アミド化合物は、式(VI−q)としても本明細書にて示される。
【化93】
【0175】
実施例5−スキーム5
スキーム5(図5)は、式(II−b)に記載の化合物を調製するための別の手順を示す。
【0176】
アミノエステル化合物42
1,4−ジオキサン(6.7mL)中の4.0N HClを、エタノール(17mL)中の化合物41(Patterson et al., 2008に従って調製した;1g,2.66mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で2時間攪拌し、次いで濃縮して0.82gのアミノエステル化合物42を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 273.3 (M+1).
【0177】
アジドエステル化合物43
塩化オキサリル(1.71mL,19.95mmol)およびDMF(0.33mL,4.26mmol)を、ヘキサン(176mL)中のアジドイソロイシン(Lundquist et al., Org.Lett. 2001, 3, 781;0.669g,4.26mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で1時間攪拌し、濾過し、濃縮して、酸塩化物を得た。酸塩化物およびDIEA(2.32mL,13.3mmol)を、DCM(26.7mL)中のアミノエステル化合物42(0.82g,2.66mmol)の溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温に温め、室温で終夜攪拌した。食塩水を加えて反応をクエンチし、水溶液をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中で0−50% EtOAのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.86gのアジドエステル化合物43を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 412.3 (M+1).
【0178】
トリエチルシリル化合物44
2,6−ルチジン(1.22mL,10.45mmol)およびトリエチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(1.14mL,5.02mmol)を、DCM(11mL)中のアジドエステル化合物43(0.86g,2.09mmol)の溶液に0℃で加えた。反応混合液を1時間にわたり室温に温め、続いて室温でさらに1時間撹拌した。食塩水を加えて反応をクエンチし、水溶液をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中で0−30% EtOAcのグラジエントを用いて溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、1.1gのトリエチルシリル化合物44を得た。MS: (+) m/z 526.4 (M+1).
【0179】
N−メチル化合物45
THF(6.5mL)中のトリエチルシリル化合物44(1.04g,1.98mmol)溶液を−45℃に冷却し、ヘキサメチルジシラジドカリウム(トルエン中で0.5M,4.75mL,2.37mmol)を加えた。生じた混合物を−45℃で20分間攪拌した。ヨウ化メチル(0.37mL,5.94mmol)を加え、反応混合液を4時間にわたり室温に温め、その後、反応をエタノール(10mL)でクエンチした。粗生成物をEtOAcで希釈し、食塩水で洗浄し、水相をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中で0−30% EtOAcのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.91gのN−メチル化合物45を得た。MS: (+) m/z 540.4 (M+1).
【0180】
化合物46
脱酸素化したAcOH/HO/THF(65mL,3:1:1,v/v/v)中のN−メチル化合物45(1.0g,1.85mmol)溶液を室温で36時間撹拌した。トルエン(250mL)を加え、溶液を濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中で0−100% EtOAcのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.46gの化合物46を油状物として得た。MS: (+) m/z 426.3 (M+1).
【0181】
メチルエーテル化合物47
ヘキサメチルジシラジドカリウム(「KHMDS」,トルエン中で0.5M,2.54mL,1.27mmol)を、THF(5mL)中の化合物46(0.45g,1.06mmol)の溶液に−78℃で加えた。反応混合液を−78℃で20分間攪拌した。ヨウ化メチル(0.2mL,3.18mmol)を加え、反応混合液を2時間にわたり−20℃に温め、その後、飽和NHCl溶液で反応をクエンチした。水溶液をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、無水NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の0−50% EtOAcのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.41gの化合物47を無色の油状物として得た。 MS: (+) m/z 440.3 (M+1).
【0182】
化合物48
EtOAc(10mL)中のD−Mep(0.45g,3.14mmol)の溶液に、ペンタフルオロフェノール(0.64g,3.47mmol)およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」,0.72g,3.47mmol)を加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、次いで沈殿物を濾過し、EtOAcで洗浄した。得られた濾液に、化合物47(0.46g,1.05mmol)およびパラジウム炭素(10重量%,0.36g)を加えた。反応混合液を水素雰囲気下で終夜攪拌した。触媒を濾過して除き、続いて濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物を、EtOAc中で0−5% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.43gの化合物48を無色の油状物として得た。MS: (+) m/z 539.4 (M+1).
【0183】
カルボン酸化合物49
脱酸素化した1,4−ジオキサン(8mL)中の化合物48(0.43g,0.80mmol)の溶液に、脱酸素化した水酸化リチウム水溶液(0.6M,4mL)を室温で加えた。反応混合液を室温で2時間攪拌し、次いで減圧下で濃縮した。粗生成物を、1% NHOHを含有するDCM中で10−30% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.3gのカルボン酸化合物49を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 511.4 (M+1).
【0184】
ニトロ酸化合物50
カルボン酸化合物49(80mg,0.157mmol)を、DCM(0.8mL)中のペンタフルオロフェノール(43.3mg,0.235mmol)およびDIC(0.0269mL,0.173mmol)の0.2M溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温に温め、かかる温度で終夜攪拌した。溶媒を蒸発させた。酢酸エチル(18mL)を加え、反応管をEtOAcですすぎながら、粗生成物を濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、粗物質をさらに精製することなく用いた。DMF(0.6mL)を粗生成物に加え、、続いてカルボン酸化合物34(0.136g,0.47mmol)およびDIEA(0.137mL,0.785mmol)を加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、続いて溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物を、1% NHOHを含有するDCM中で10−20% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.1gのニトロ酸化合物50を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 745.4 (M+1).
【0185】
アミノ酸化合物51
MeOH(5mL)中のニトロ酸化合物50(0.1g,0.134mmol)およびパラジウム炭素(10%,14mg)の混合物を、水素雰囲気下で4時間攪拌した。触媒を濾過して除き、濾液を減圧下で濃縮して、87.3mgのアミノ酸化合物51を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 715.5 (M+1).アミノ酸化合物51は、上記で化合物(III−j)とも称される。
【0186】
実施例6−スキーム6
スキーム6(図6)は、式(II−b)に記載の化合物を調製するためのさらなる別の手順を示す。
【0187】
ヒドロキシニトロ化合物52
化合物27(スキーム2)(16.4mg,0.0275mmol)を、DCM(0.2mL)中のペンタフルオロフェノール(7.6mg,0.0413mmol)およびDIC(0.0094mL,0.0606mmol)の0.2M溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温に温め、室温で終夜攪拌した。溶媒を蒸発させた。EtOAc(3mL)を加え、反応管をEtOAcですすぎながら粗生成物を濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、粗物質をさらに精製することなく用いた。DMF(0.1mL)を粗生成物に加え、続いて、カルボン酸化合物34(スキーム3)(20.8mg,0.083mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.024mL,0.138mmol)を加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、次いで溶媒を蒸発させた。粗生成物を、DCM中で0−10% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーで精製して、14.9mgのヒドロキシニトロ化合物52を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 831.5 (M+1).
【0188】
アセチルニトロ化合物53
ピリジン(0.23mL)中のヒドロキシニトロ化合物52(14.9mg,0.018mmol)の0.1M溶液を0℃に冷却し、無水酢酸(0.054mL,0.57mmol)を加えた。反応混合液を2時間にわたり室温に温め、室温で24時間攪拌した。反応混合液を0℃に冷却し、1,4−ジオキサンおよび水の1:1混合液を加えた。反応混合液を室温に温め、続いてこの温度で12時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をプレパラティブHPLCで精製して、2.2mgのアセチルニトロ化合物53を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 873.2 (M+1).
【0189】
アセチルアミノ化合物54
メタノール(0.2mL)中のアセチルニトロ化合物53(2.2mg,0.0025mmol)およびパラジウム炭素(10%,1mg)の混合物を、水素雰囲気下で4時間攪拌した。触媒を濾過して除去し、濾液を濃縮した。粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、0.1mgのアセチルニトロ化合物54を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 843.2 (M+1).アセチルアミノ化合物54は、上記で化合物(III−a)とも称される。
【0190】
実施例7−スキーム7
スキーム7(図7)は、本化合物を調製するためのさらなる別の手順を示す。
【0191】
化合物55
化合物34a(スキーム3)(70mg,0.13mmol)を、DCM(0.66mL)中のペンタフルオロフェノール(35.9mg,0.195mmol)およびDIC(0.0223mL,0.143mmol)の0.2M溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温で温め、室温で終夜攪拌した。溶媒を蒸発させた。EtOAc(16mL)を加え、反応管をEtOAcですすぎながら粗生成物を濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、粗物質をさらに精製することなく用いた。DMF(0.5mL)を粗生成物に加え、続いてp−ニトロフェニルアラニン(82.0mg,0.39mmol)およびDIEA(0.114mL,0.65mmol)を加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、次いで溶媒を蒸発させた。粗生成物を、1% NHOHを含有するDCM中で10−20% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、65.2mgの化合物55を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 731.0 (M+1).
【0192】
化合物56
MeOH(3mL)中の化合物55(65.2mg,0.089mmol)およびパラジウム炭素(10%,9.4mg)の混合液を水素雰囲気下で4時間攪拌した。触媒を濾過して除き、濾液を濃縮して、33.8mgの化合物56を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 701.2 (M+1).化合物56は、上記で化合物(III−d)とも称される。
【0193】
実施例8−スキーム8
スキーム8(図8a)は、本化合物を調製するための中間体として有用な式(vIII−b)に記載の化合物を調製するための方法を示す。
【0194】
Bocエステル化合物58
DMF(Acros,無水,50mL)中のアミノエステル化合物57(Chem−Impex,5g,19.18mmol)および二炭酸−ジ−tert−ブチル(「(Boc)O」,Aldrich,4.6g,21.10mmol)の溶液に、トリエチルアミン(「TEA」,Aldrich,8.36mL,60mmol)を加えた。反応混合液を0.5時間撹拌した。HPLC分析により反応の完了が示された。反応混合液をEtOAc(500mL)で希釈し、有機相を水(200mL)、続いて食塩水(200mL)で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、DCM中の0−5% MeOHを用いて120gのCombiFlashカラムで精製して、白色の固形物としてBocエステル化合物58(5.6g,81%)を得た。1HNMR (DMSO) δ 8.18 (d, 2 H), 7.47 (d, 2 H), 7.38 (d, 1H), 4.23 (m, 1 H), 3.60 (s, 3 H), 3.15 (m, 1 H), 2.95 (m, 1 H), 1.23 (s, 9 H).
【0195】
アルケン化合物59
ドライアイスアセトン中で−78℃に冷却したDCM(Acros,無水,2mL)中のBocエステル化合物58(230mg,0.68mmol)の溶液に、DIBAL(Aldrich,DCM中で1M,1mL)をゆっくり加えた。反応混合液を攪拌し、3時間にわたり−20℃に温めた。(1−エトキシカルボニルエチリデン)−トリフェニルホスホラン(Aldrich,492mg,1.36mmol)を加えた。反応混合液を−20℃で1時間攪拌した。反応混合液をEtOAc(100mL)で希釈し、得られた有機相を水(50mL)、続いて食塩水(50mL)で洗浄し、無水MgSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の0−50% EtOAcを用いて10gのCOMBIFLASH(登録商標)カラムで精製して、白色の固形物としてアルケン化合物59(151mg,59%)を得た。1HNMR (DMSO) δ 8.18 (d, 2 H), 7.47 (d, 2 H), 7.22 (d, 1H), 6.51 (d, 1 H), 4.48 (m, 1 H), 4.11 (q, 2 H), 2.80-2.94 (m, 2 H), 1.62 (s, 3 H), 1.23 (s, 9 H), 1.16 (t, 3 H).
【0196】
アリールアミン化合物60
EtOH(Acros,無水,3mL)中のアルケン化合物59(148mg,0.39mmol)および炭上のPd(Aldrich,10%,50mg)の溶液をH下で終夜攪拌した。反応混合液をDCM(10mL)で希釈し、セライト(登録商標)に通して濾過した。濾液を濃縮し、粗生成物を、DCM中で0−20% MeOHを用いて4gのCOMBIFLASH(登録商標)カラムで精製して、アリールアミン化合物60を白色の固形物(102mg,75%)として得た。1HNMR (DMSO) δ 7.18 (d, 2 H), 7.11 (s, 2 H), 6.71 (d, 1 H), 3.98 (q, 2 H), 3.51 (m, 1 H), 2.57 (m, 2 H), 2.41 (m, 1 H), 1.63 (m, 1 H), 1.37 (m, 1 H), 1.29 (s, 9 H), 1.09 (t, 3 H), 0.99 (d, 3 H), MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 351.2, 実測値 351.2.
【0197】
実施例9−スキーム9
スキーム9(図8b)は、本化合物を調製するための中間体として有用な式(VIII−b)に記載の化合物を調製するための別の方法を示す。
【0198】
アミノ酸化合物61
MeOH(0.5mL)中のカルボン酸化合物24(スキーム3,図3)(4.4mg,0.0025mmol)およびパラジウム炭素(10%,1mg)の混合物を、水素雰囲気下で終夜攪拌した。触媒を濾過して除き、濾液を濃縮して、3.5mgのアミノ酸化合物61を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 223.3 (M+1).
【0199】
実施例10−スキーム10、11および12
スキーム10(図8c)は、本化合物を調製するための中間体として有用な式(VIII−b)に記載の化合物を調製するための別の方法を示す。
【0200】
化合物62
メタノール(20mL)中のモノエステル化合物33(スキーム3,図3)(0.34g,0.93mmol)およびパラジウム炭素(10%,50mg)の混合物を、水素雰囲気下で終夜攪拌した。触媒を濾過して除き、濾液を濃縮して、0.29gの化合物62を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 237.3 (Bocなし).
【0201】
スキーム11(図9)は、式(VIII−b)に記載の化合物が本化合物を調製するために用いることができる方法を図示する。Bocエステル化合物62は、最初に芳香族アミン基をFmoc基で保護し、TFAで処理することで脂肪族アミン基からBoc基を取り除き、カルボン酸α,α−ジメチル−p−フェニルベンジルフェニルエステル(8Cl)で処理して、そこにBpoc基を導入し、次いでFmoc基をピペリジンで取り除くことによって、Bpocエステル化合物62aに変換される。Bpocエステル化合物62aは、HATUを用いてカルボン酸化合物とカップリングされて中間体エステル化合物を生じ、次いでLiOHで加水分解されて化合物64を生じる。水素化により化合物64からCbz保護基を取り除き、6−マレイミドヘキサン酸を用いてHATUによりカップリングさせ、Bpoc基を酢酸で取り除き、アミノ酸化合物65を得た。化合物34aを用いたHATUによるカップリング(スキーム3,図3)により化合物66を得た。Boc保護基をTFAで取り除いて、抱合のために用いられる化合物67を得た。
【0202】
式(VIII−b)の化合物を利用するさらなる別の態様がスキーム12(図10)に示されている。化合物34aを出発物質とし、化合物68を用いてHATUによりカップリングさせてBocエステル化合物69を得る。Boc基をTFAで取り除き、エステル化合物をLiOHで加水分解して、アミノ酸化合物36を得、スキーム4(図4)に示されるように合成して抱合に適した組成物を調製しうる。
【0203】
実施例11−化合物70
化合物70
ツブリシンD(Peltier et al., 2006に従って調製した;2mg,2.4μmol)をMeOH中に0℃で溶解させた。この溶液に、HCl(0.1M)を1滴加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、次いで溶液を減圧下で蒸発させて、残渣を得、短カラム(DCM:MeOH 0−10%)に通して、化合物70(1.3mg,1.6μmol,67%)を油状物として得た。MS (ES+) m/z, 計算値: m+1, 772.42, 実測値, 772.
【化94】
【0204】
当業者は、特に上記で示された方法以外に、一般的な方法が本化合物を調製するために用いられうることを理解する。例えば、化合物14(化合物49と同一である)は、Tupサブユニットに関して他の化合物とカップリングさせることによって多くの他の本化合物を調製するために用いられうる。別の例として、化合物9(スキーム1)、化合物44および46(スキーム5)で用いられる試薬を変えることによって、特に例示されているものを超える式(II)の基RおよびRを変えた化合物が合成されうる。
【0205】
この実施例は、細胞毒素−リンカー構築物(VI−b)および抗CD70モノクローナル抗体2H5(TerrettらのUS2009/0028872A1;CocciaらのWO2008/074004A2)の抱合体の調製を記載している。これは、他の抱合体を調製する際に使用される手順の例である。
【0206】
20mMのリン酸ナトリウム、50mMのNaCl、100μMのDTPA、pH7.5中で約5mg/mLの抗CD70抗体2H5を、13倍モル過剰量の2−イミノチオランでチオール化した。チオール化反応を、継続的に混合しながら室温で1時間進行させた。
【0207】
チオール化の後、抗体を、抱合緩衝液(50mMのHEPES,5mMのグリシン,2mMのDTPA,pH6.0)に、PD10カラム(Sephadex G−25)により緩衝液交換した。チオール化された抗体濃度を280nmで決定した。チオール濃度は、ジチオジピリジンアッセイを用いて測定した。
【0208】
DMSO中の構築物(VI−b)の5mM ストックを、抗体の1チオール当たり3倍モル過剰量で加え、室温で90分間混合させた。抱合後、DMSO中の100mMのN−エチルマレイミドを、1抗体当たりのチオールの10倍モル過剰量で加えて、未反応のチオール基をクエンチした。このクエンチ反応は、混合を続けながら室温で1時間行った。
【0209】
抗CD70抗体薬物抱合体を、陽イオン交換クロマトグラフィー精製前に、0.2μmで濾過した。SP SEPHAROSE(商標)高速陽イオン交換カラム(CEX)を、50mMのHEPES、5mMのグリシン、1MのNaCl、pH6.0からなる5カラム容量(CV)で再生させた。再生後、カラムを、3CVの平衡緩衝液(50mMのHEPES、5mMのグリシン、pH6.0)で平衡化した。抱合体を負荷し、カラムを平衡緩衝液で1回洗浄した。抱合体を50mMのHEPES、5mMのグリシン、200mMのNaCl、pH6.0で溶出した。溶出液をフラクションで集めた。次いで、カラムを50mMのHEPES、5mMのグリシン、1MのNaCl、pH6.0で再生させてタンパク質凝集体および未反応の(VI−b)をいずれも除去した。
【0210】
モノマー抗体抱合体を含有するフラクションを貯留した。抗体抱合体濃度および置換比を、280および252nmで吸光度を測定することによって決定した。
【0211】
精製された溶出液の貯留物を、透析によって、30mg/mLのスクロース、10mg/mLのグリシン、pH6.0に緩衝液交換した。透析後、デキストラン40を試料に10mg/mLで加えた。濃度および置換比(SR)を280および252nmでの吸光度を測定することによって決定した。SRは、抗体1モル当たり細胞毒素2.2モルであった。
【0212】
実施例13−増殖アッセイ
この実施例は、一般に、本発明の化合物またはその抱合体の抗増殖活性をアッセイするために用いられる手順を記載している。ヒト腫瘍細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)、P.O.Box 1549、Manassas、VA 20108、USAから入手し、ATCCからの説明書に従って培養した。細胞は、それぞれATPアッセイまたはHチミジンアッセイのために、96ウェルプレートに1.0×10または1.0×10細胞/ウェルで3時間播種した。遊離(抱合していない)化合物またはその抱合体の1:3の連続希釈液をウェルに加えた。プレートを24から72時間インキュベーションした。Hチミジンプレートを、1ウェル当たり1.0μCiのH−チミジンで全インキュベーション期間のうちの最後の24時間パルス標識し、回収し、Top Count Scintillation Counter(Packard Instruments、Meriden、CT)で読み取った。CELLTITER−GLO(登録商標)Luminescent Cell Viabilityキットを製造業者のマニュアルに従って使用して、ATPプレート中のATPレベルを測定し、GLOMAX(登録商標)20/20ルミノメーターで読み取った(いずれもPromega製、Madison、WI、USA)。PRISM(商標)ソフトウェア、バージョン4.0(GraphPad Software、La Jolla、CA、USA)を用いて、EC50値、すなわち、薬剤が細胞増殖を50%阻害または減少させる濃度を決定した。
【0213】
実施例14−細胞毒素インビトロ活性
HチミジンもしくはATP発光アッセイまたはそれらの両方を用いて、本発明の化合物の活性を、下記の癌細胞株:HCT−15(結腸直腸癌、多剤耐性(MDR));Hep3B(肝臓癌);LNCaP(前立腺癌、アンドロゲン受容体陽性(AR));MDA−MB−231(乳癌、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびHer2陰性(三重陰性));A2058(黒色腫);U−87MG(神経膠芽細胞腫);NCI−H460(NSCLC);A549(NSCLC);HPAC(膵臓癌、原発性);PC3(前立腺癌、AR);BT474(乳癌、Her2強陽性(Her2hi));SKOV3(卵巣癌、Her2hi);786−O(腎臓癌);UO−31(腎臓癌、MDR);NCI−H740(SCLC);DMS53(SCLC);SK−BR3(乳癌、Her2hi);ZR−75(乳癌、エストロゲン受容体陽性);OVCAR3(卵巣癌);HL−60(APL);OVCAR8/Adr(卵巣癌、MDR);CEM−C1(ALL);Nomo−1(AML);RPMI−8226(MM));Raji(リンパ腫);SW−480(結腸直腸癌、転移性);SW−620(結腸直腸癌);およびH226(肺癌)に対してアッセイした。(全ての化合物を全ての細胞系に対してアッセイしたのではない。)
【0214】
下記の化合物を対照細胞毒素または比較細胞毒素として使用した:ドキソルビシン(Dox)、細胞毒素CBI(シクロプロパ[c]ベンゾ[e]インドール−4−オン群のDNA小溝アルキル化薬)、ツブリシンD(Tub D,表1)およびMMAFのメチルエステル(「MMAF」,オーリスタチン関連化合物;Sutherland et al., J. Biol. Chem. 2006, 281(15), 10540-10547を参照されたい)。
【化95】
【0215】
図11aおよび11bは、48時間のインキュベーション期間における、比較化合物として細胞毒素CBIおよびツブリシンDを用いたHL−60および786−O細胞の各々に対する本発明の化合物のHチミジン増殖アッセイに関する例示プロットを示す。
【0216】
図12aおよび12bは、72時間のインキュベーション期間における、HL−60および786−O細胞の各々に対する本発明の化合物の2番目のセットのATP発光増殖アッセイに関する例示プロットを示す。図12cおよび12dは、72時間のインキュベーション期間における、HL−60および786−O細胞の各々に対する同じセットの化合物のHチミジン増殖アッセイに関するプロットを示す。各場合において、ドキソルビシンを比較化合物として用いた。
【0217】
表2は、72時間のインキュベーション期間における、Hチミジン方法を用いる増殖アッセイのデータを提供する。
【表2】















【表3】

【表4】

【0218】
表3は、上記のように、48、72または96時間のインキュベーション期間におけるATP発光増殖アッセイのデータを示している。
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】


【0219】
さらに、下記のEC50値は、ATPアッセイおよび72時間インキュベーション期間を用いて、H226細胞系に対する下記の化合物について測定した:化合物36a(0.307nM);化合物109(1.609nM);および化合物112(0.67〜1.16nM)。下記のEC50値は、ATPアッセイおよび48時間インキュベーション期間を用いて、OVACAR8/Adr細胞株に対する下記の化合物について測定した:化合物36a(17.05nM);化合物84a(>300nM);化合物84b(47.2nM);化合物109(24.9nM);および化合物112(12nM)。
【0220】
実施例15−抱合体インビトロ活性
図13は、CD70陽性である786−O腎臓癌細胞に対して測定したHチミジン増殖アッセイにおける本発明の抱合体の活性を示す。インキュベーション期間は72時間であった。図13の曲線から抽出されたEC50値は、その他の実験からのデータとともに表4に示される。細胞株LNCapは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現する前立腺癌細胞株であり;H226は、メソテリンを発現する肺癌細胞株である。抱合に用いた抗体としては、2A10、抗PSMA抗体(HuangらのUS2009/0297438);2H5、抗CD70抗体(TerrettらのUS2009/0028872);1F4、抗CD70抗体(CocciaらのWO2008/074004);および6A4、抗メソテリン抗体(TerrettらのWO2009/045957)であった。対照として、SufiらのWO2008/083312(「Cpd.J」、DNA小溝結合/アルキル化薬)の化合物Jを結合パートナーとして使用し、ジフテリア毒素(「DTX」)を抱合されない非特異的な対照として使用した。
【表10】
【0221】
データは、抱合体が細胞毒素をCD70陽性786−O細胞に効率的に送達するためにはCD70特異的抗体が必要であることを示す:別の抗原(PSMA)に特異的である抗体2A10抱合体は、活性が低いか、または活性を有さない。逆に、抗CD70抗体の全ての抱合体は、活性であった。化合物(VI−a)および(VI−b)の抱合体は、周知の抱合パートナーであり、その抱合体のうちの1つが臨床試験中である化合物J抱合体と活性が同程度であった。2A10−(VI−a)および2A10−(VI−b)の活性を、2A10−CBIの活性と比較すると、化合物(VI−a)および(VI−b)の抱合体は、極めて低い非特異的な毒性を示すことに留意すべきである。
【0222】
実施例16−抱合体のインビボ活性
CD70陽性ヒト腎臓癌786−O細胞(Cat.CRL−1932、ATCCから元々入手)をATCCの説明書に従ってインビトロで培養した。当該細胞を回収し、DPBS/MATRIGEL(商標)の200μL当たり2,500,000個の細胞(1:1)を、CB17.SCIDマウスの側腹部領域の皮下に移植した。腫瘍を、Fowler Electronic Digital Caliper(Model 62379−531;Fred V.Fowler Co.,Newton、MA、USA)を用いて三次元で毎週測定し、データを、Studylog Inc.(South San Francisco、CA、USA)製のStudyDirectorソフトウェアを用いて電子的に記録した。動物を、体位、毛づくろいおよび呼吸変化、さらに傾眠について毎日調べた。動物はまた、体重を毎週測定し、体重の低下が≧20%であれば、安楽死させた。腫瘍が194mmの平均サイズに達したら、それぞれ6匹のマウスの群を、単一の腹腔内(IP)用量の試験抱合体(例えば、2H5−(VI−b))およびアイソタイプ対照(2A10−(VI−b))を用いて、0.3μmol/kg体重で処置した。腫瘍体積(LWH/2)およびマウスの体重を、各実験経過を通して記録し、最初の投薬後約2ヶ月間進行させた。Excelスプレッドシートマクロを用いて、腫瘍サイズの平均、SDおよび中央値を算出した。データは、Prismソフトウェアのバージョン4.0を用いてグラフにした。
【0223】
異種移植片の実験結果を図14に示し、ここで、図の表示は、前の実施例および図13中の意味と同じである。データは、CD70786−O細胞に対する本発明の化合物の抱合体のインビボ活性を示す。抗CD70抗体2H5を有する化合物(VI−a)および(VI−b)の両抱合体は、全実験過程を通して、平均腫瘍サイズを半分より減少させた一方で、ベヒクル対照または抗PSMA抗体2A10を有する抱合体が投与された場合、腫瘍平均体積は2倍よりも大きくなった。
【0224】
実施例17−スキーム13
スキーム13(図15)は、本化合物を調製するのに有用である鏡像異性的に純粋な4−ニトロツブフェニルアラニン(4−NOTup)82aおよび82bを調製するための方法を示す。
【0225】
化合物80
二炭酸−ジ−tert−ブチル(90.5mg,0.42mmol)を、0.7M NaOH水溶液(1mL)中のスキーム3(0.1g,0.35mmol)の化合物34の混合物に加えた。反応混合液を室温で3時間攪拌し、次いで0.5N HClでpH3まで酸性にした。該水溶液をEtOAcで3回抽出し、続いて有機相を合わせて、乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、DCM中で0−20% メタノールのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.117gの化合物80を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 253.1 (M+1 Bocなし).
【0226】
(−)−メントールエステル化合物81aおよび81b
DCC(87.8mg,0.43mmol)を、DCM(1.5mL)中の化合物80、(−)−メントール(66.6mg,0.43mmol)および4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(「DMAP」,10.4mg,0.085mmol)の溶液に室温で加えた。該反応混合液を室温で3時間撹拌し、続いて沈殿物を濾過して除いた。次いで濾液を濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中で0−20% EtOAcのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、55.7mgのエステル化合物81aを白色の固形物として得て、55.7mgのエステル化合物81bを白色の固形物として得た。エステル81aについてのMS:(+) m/z 391.2 (M+1 Bocなし); エステル81bについてのMS: (+) m/z 391.2 (M+1 Bocなし).
【0227】
4−NOTup化合物82aおよび82b
6N HCl(40mg,0.082mmol)中のエステル化合物81aの溶液を、130℃で1.5時間加熱した。反応混合液を濃縮して、23.5mgの4−NOTup化合物82aを白色の固形物として得た。1H NMR (D2O, 400 MHz): δ 8.04 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.33 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 3.50 (m, 1H), 3.03 (dd, 1H, J = 6.8, 14.4 Hz), 2.89 (dd, 1H, J = 7.6 Hz, 14.4 Hz), 2.45-2.39 (m, 1H), 1.92-1.84 (m, 1H), 1.62-1.55 (m, 1H), および0.98 (d, 3H, J = 7.2 Hz); MS: (+) m/z 253.1 (M+1).4−NOTup化合物82bを、同一スケールで同一手順により白色の固形物(23.5mg)として得た。1H NMR (D2O, 400 MHz): δ 8.03 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.33 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 3.50 (m, 1H), 2.93 (dd, 2H, J = 2.0, 7.6 Hz), 2.54-2.48 (m, 1H), 1.86-1.78 (m, 1H), 1.60-1.53 (m, 1H), および 0.98 (d, 3H, J = 6.8 Hz); MS: (+) m/z 253.1 (M+1).
【0228】
実施例18−スキーム14
スキーム14(図16)は、4−NOTup化合物82aおよび82bから本化合物への変換を示す。
【0229】
ニトロ酸化合物83a
スキーム3(10mg,0.019mmol)の化合物34aを、DCM(0.2mL)中のペンタフルオロフェノール(5.1mg,0.028mmol)およびN,N’−ジイソプロピル−カルボジイミド(「DIC」,0.0032mL,0.021mmol)の0.2M溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温に温め、かかる温度で終夜攪拌した。該溶媒を蒸発させた。EtOAc(1.8mL)を加え、反応管をEtOAcですすぎながら粗生成物を濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、粗ペンタフルオロフェニル化合物をさらに精製することなく用いた。DMF(0.2mL)を粗エステル化合物に加え、、続いて4−NOTup化合物82a(10.7mg,0.037mmol)およびDIEA(0.013mL,0.074mmol)を加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、次いで溶媒を蒸発させて取り除いた。粗生成物を、DCM中で1% NHOHを含有する0−20% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、12.9mgのニトロ酸化合物83aを白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 773.4 (M+1).
【0230】
別の経路のニトロ酸化合物83a:
DIEAを、pHを8〜9に保ちながら、DMF(0.3mL)中の化合物34a(10mg,0.019mmol)およびHATU(7.8mg,0.020mmol)溶液に加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌した。次いで、DMF(1mL)中のDIEAおよびニトロアミン化合物82a(5.4mg,0.019mmol)を、pHを8〜9に保ちながら加えた。反応混合液を室温で15分間撹拌し、続いて粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、13.4mgのニトロ酸化合物83aを白色の固形物として得た。
【0231】
ニトロ酸化合物83bを、同一スケールで同一の別の経路で調製し、白色の固形物(13.4mg)として得た。MS: (+) m/z 773.4 (M+1).
【0232】
アミン化合物84a
MeOH(0.37mL)中のニトロ酸化合物83a(7.5mg,0.0097mmol)およびパラジウム炭素(10%,1.1mg)の混合物を水素雰囲気下で4時間攪拌した。該触媒を濾過して取り除き、濾液を濃縮した。粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、6.2mgのアミン化合物84aを白色の固形物として得た。1H NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 8.06 (s, 1H), 7.36 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.17 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 5.70 (dd, 1H, J = 2.8, 10.8 Hz), 4.71 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 4.44-4.35 (m, 2H), 3.74( d, 1H, J = 9.6 Hz), 3.49-3.45 (m, 1H), 3.36-3.35 (m, 1H), 3.30-3.25 (m, 1H), 3.13 (s, 3H), 3.14-3.04 (m, 1H), 2.93 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 2.74 (s, 3H), 2.48-2.28 (m, 3H), 2.15 (s, 3H), 2.19-2.03 (m, 2H), 1.95-1.86 (m, 4H), 1.80-1.71 (m, 2H), 1.71-1.57 (m, 3H), 1.24-1.13 (m, 1H), 1.16 (d, 3H, J = 7.2 Hz), 1.04 (d, 3H, J = 6.4Hz), 1.02 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 0.94 (t, 3H, J = 7.2 Hz), and 0.84 (d, 3H, J = 6.8 Hz); MS: (+) m/z 743.4 (M+1).
【0233】
ニトロ酸化合物83bを、8mgスケールで同じ手順を用いて、アミン化合物84bに水素化した。アミン化合物84bを白色の固形物(6.7mg)として得た。1H NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 8.06 (s, 1H), 7.35 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.16 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 5.70 (dd, 1H, J = 2.8, 11.2 Hz), 4.72 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 4.49-4.32 (m, 2H), 3.75 (d, 1H, J = 10.0 Hz), 3.49-3.45 (m, 1H), 3.36-3.35 (m, 1H), 3.33-3.31 (m, 1H), 3.12 (s, 3H), 3.12-3.04 (m, 1H), 2.91 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 2.74 (s, 3H), 2.57-2.52 (m, 1H), 2.45-2.37 (m, 1H), 2.33-2.28 (m, 1H), 2.15 (s, 3H), 2.19-2.13 (m, 1H), 2.03-1.88 (m, 5H), 1.81-1.57 (m, 5H), 1.24-1.13 (m, 1H), 1.17 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 1.04 (d, 3H, J = 6.4Hz), 1.02 (d, 3H, J = 7.2 Hz), 0.94 (t, 3H, J = 7.2 Hz), and 0.84 (d, 3H, J = 6.4 Hz); MS: (+) m/z 743.4 (M+1).
【0234】
化合物84aおよび84bはまた、各々、式(III−r)および(III−s)で本明細書に示されている。
【0235】
実施例19−スキーム15
スキーム15(図17)は、単一アミノ酸(シトルリン)リンカーを有する本発明の抱合が準備された化合物の合成を示す。
【0236】
化合物85
DMF(4mL)中のスキーム10(0.22g,0.654mmol)の化合物62、Fmoc保護シトルリン(0.39g,0.981mmol)およびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(「EDCI」,0.188g,0.981mmol)の混合物を室温で終夜攪拌した。飽和NHClを加えて反応をクエンチし、水溶液をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、DCM中で0−100% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.42gの化合物85を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 716.4 (M+1).
【0237】
化合物86
ピペリジンを、pHを9〜10に保ちながらDMF中の化合物85(0.248g,0.346mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で20分間攪拌し、次いで濃縮して、0.17gの化合物86を得た。MS: (+) m/z 494.4 (M+1).
【0238】
化合物87
水(3mL)中のLiOH(26.6mg,1.11mmol)を、THF(2mL)中の化合物86(0.17g,0.346mmol)溶液に加えた。反応混合液を室温で2時間攪拌し、次いで溶媒を部分的に除去した。水溶液をHClでpH2〜3まで酸性にし、濃縮した。残渣をDMF(2mL)中に再懸濁させ、N−スクシンイミジル 6−マレイミドヘキサノエート(0.16g,0.519mmol)およびDIEA(0.091mL,0.519mmol)を加えた。反応混合液を室温で10分間攪拌し、次いで粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、0.198gの化合物87を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 673.4 (M+1).
【0239】
化合物88
TFA(0.5mL)を、DCM(0.5mL)中の化合物87(12.5mg,0.019mmol)溶液に室温で加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌し、次いで濃縮して、12.8mgの化合物88を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 573.4 (M+1).
【0240】
化合物89
DIEAを、pHを8〜9に保ちながら、DMF(0.3mL)中のスキーム3の化合物34a(5mg,0.0093mmol)およびHATU(3.9mg,0.010mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌した。次いで、DMF(1mL)中のDIEAおよび化合物88(12.8mg,0.019mmol)を、pHを8〜9に保ちながら加えた。反応混合液を室温で15分間撹拌し、続いて粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、8.6mgの化合物89を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 1093.8 (M+1). 化合物89はまた、式(VI−m)として本明細書に示されている。
【0241】
化合物90
DIEAを、pHを8〜9に保ちながら、DMF(0.3mL)中のスキーム5の化合物49(5mg,0.0098mmol)およびHATU(4.1mg,0.011mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌した。続いて、DMF(1mL)中のDIEAおよび化合物88(13.5mg,0.0196mmol)を、pH8〜9を保ちながら加えた。反応混合液を室温で15分間攪拌し、次いで粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、8.9mgの化合物90を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 1065.6 (M+1). 化合物90は、式(VI−p)としても本明細書に示されている。
【0242】
実施例20−スキーム16
スキーム16(図18)は、ジペプチド(シトルリン−バリン)リンカーを有する、本発明の抱合が準備されている化合物の調製を示す。
【0243】
化合物91
DIEAを、pHを8〜9に保ちながら、DMF(0.5mL)中のFmoc保護バリン(62.3mg,0.184mmol)およびHATU(63.6mg,0.167mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌した。続いて、DMF(1mL)中のDIEAおよびスキーム15の化合物86(82.5mg,0.167mmol)を、pHを8〜9に保ちながら加えた。反応混合液を室温で15分間攪拌し、次いで0.05% TFA溶液を加えて反応をクエンチした。水溶液をEtOAcで抽出し、有機相を合わせて、乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、DCM中で0−20% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.13gの化合物91を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 815.5 (M+1).
【0244】
化合物92
ピペリジンを、pHを9〜10に保ちながら、DMF中の化合物91(0.144g,0.177mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で20分間攪拌し、次いで濃縮した。残渣をTHF(2.5mL)中に溶解させ、水(1.3mL)中のLiOH(16.3mg,0.681mmol)を加えた。反応混合液を室温で2時間攪拌し、次いで溶媒を部分的に除去した。水溶液をHClでpH2〜3まで酸性にし、続いて濃縮した。残渣をDMF(2.5mL)中に再懸濁し、次いでN−スクシンイミジル 6−マレイミドヘキサノエート(0.105g,0.341mmol)およびDIEA(0.060mL,0.341mmol)を加えた。反応混合液を室温で10分間攪拌し、次いで粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、0.116gの化合物92を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 772.5 (M+1).
【0245】
化合物93
TFA(0.6mL)を、DCM(1mL)中の化合物92(14.4mg,0.019mmol)溶液に室温で加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌し、続いて濃縮して、14.7mgの化合物93を白色の固形物として得た。1H NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 7.58 (dd, 2H, J = 1.6, 8.4 Hz), 7.21 (dd, 2H, J = 2.8, 8.8 Hz), 6.79 (s, 2H), 4.48 (m, 1H), 4.13 (d, 1H, J = 7.6 Hz), 3.57-3.46 (m, 3H), 3.33-3.32 (m, 1H), 3.22-3.09 (m, 2H), 2.91-2.80 (m, 1H), 2.27 (t, 2H, J = 7.2 Hz), 2.09-1.85 (m, 3H), 1.81-1.54 (m, 8H), 1.35-1.29 (m, 3H), 1.19 (d, 1.5 H, J = 6.8 Hz), 1.18 ( d, 1.5 H, J = 7.2 Hz), 0.98 (d, 3H, J = 2.4 Hz), 0.96 (d, 3H, J = 2.8 Hz); MS: (+) m/z 672.4 (M+1).
【0246】
化合物94
DIEAを、pHを8〜9に保ちながら、DMF(0.3mL)中のスキーム3の化合物34a(11mg,0.0204mmol)およびHATU(7.8mg,0.0204mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌した。次いで、DIEAおよびDMF(1mL)中の化合物93(14.7mg,0.019mmol)を、pHを8〜9に保ちながら加えた。反応混合液を室温で15分間攪拌し、続いて粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、18.9mgの化合物94を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 1192.6 (M+1). 化合物94はまた、式(VI−n)として本明細書に示されている。
【0247】
化合物27のアセテート
無水酢酸(0.248mL)を、ピリジン(2.6mL)中のスキーム2の化合物27(Peltier et al., 2006;0.13g,0.218mmol)の溶液に0℃で加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌した。反応混合液を0℃に冷却し、水および1,4−ジオキサン(12mL,v/v 1:1)の溶液を加えた。反応混合液を室温で終夜攪拌し、次いで濃縮した。粗生成物を、DCM中で10−20% MeOHのグラジエントを用いてシリカゲルから溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、0.114gの化合物27のアセテートを白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 639.4 (M+1).
【化96】
【0248】
化合物95
DIEAを、pHを8〜9に保ちながら、DMF(0.3mL)中の化合物27のアセテート(3.8mg,0.0059mmol)およびHATU(2.5mg,0.0065mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で5分間攪拌した。次いで、DMF(1mL)中のDIEAおよび化合物93(5.6mg,0.0071mmol)を、pHを8〜9に保ちながら加えた。反応混合液を室温で15分間撹拌し、続いて粗生成物をプレパラティブHPLCで精製して、6.5mgの化合物95を白色の固形物として得た。MS: (+) m/z 1292.7 (M+1). 化合物95はまた、式(VI−o)として本明細書に示されている。
【0249】
実施例21−スキーム17
本実施例は、スキーム17(図19)に関して、本化合物の調製に有用な中間体である酸化合物108の合成を記載する。
【0250】
メチルエステル化合物100
ジオキサン中のHCl(8.3mL,4M,33.2mmol)を、MeOH(10mL)中のスキーム1の化合物9(8g,22.1mmol)の溶液に加えた。反応混合液を室温で攪拌した。20分後、溶液を減圧下で蒸発させて、メチルエステル化合物100を油状物(6.5g)として得て、さらに精製することなく次の工程に用いた。
【0251】
プロピルアミン化合物101
プロパナール(700μL、7.36mmol)およびNaBH(OAc)(2.8g,13.2mmol)を、DCM(10mL)中のメチルエステル化合物100(1.96g,6.6mmol)の溶液に加えた。反応混合液を5℃で攪拌した。1時間後、該混合物をEtOAc中に溶解させ、7% KCO溶液で2回、続いて食塩水で洗浄した。EtOAc層を無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で蒸発させて残渣を得、カラム(MeOH:DCM.0−10%)に通して、プロピルアミン化合物101(1.12g,60%)を油状物として得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.17 (s, 1H), 5.43 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H), 3.07-2.87 (m, 2H), 2.82-2.70 (m, 1H), 2.54 (s, 1H), 2.45-2.26 (m, 2H), 2.16-2.02 (m, 1H), 1.73 (m, 2H), 1.05-0.94 (m, 9H). MS m/z C14H25N2O3S (M+1)+ 計算値 301.2, 実測値 301.
【0252】
化合物102
(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(「PyBop」,1.28g,2.47mmol)、HOBt(0.33g,2.47mmol)、Boc保護イソロイシン(430μL,2.47mmol)を、DCM(5mL)中のプロピルアミン化合物101(570mg,1.9mmol)溶液に加えた。反応混合液を室温で攪拌した。20分後、EtOAc(200mL)を加え、有機相を10% クエン酸(2回)、飽和NaHCOおよび食塩水で洗浄した。EtOAc層を無水NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で蒸発させて、残渣を得て、カラムに通して、化合物102(0.55g)を油状物として得た。MS m/z C25H44N3O6S (M+1)+ 計算値 514.3, 実測値 514.3.
【0253】
アジドエステル化合物104
DCM(3mL)中の酸塩化物103(2mmol,Lundquist et al., 2001;スキーム5のアジドエステル化合物43の調製における上記を参照のこと)を、DCM(10mL)およびDIEA(871μL,5mmol)中の化合物102(0.55g,1.1mmol)溶液に加えた。反応混合液を5℃で攪拌した。10分間攪拌し、次いで該混合液を減圧下で蒸発させて、残渣を得て、カラムに通してアジドエステル化合物104(300mg)を油状物として得た。MS m/z C31H53N6O7S (M+1)+ 計算値 653.4, 実測値 653.
【0254】
化合物106
1mLのEtOAc中のペンタフルオロフェニルエステル化合物105(2.1mmol,Peltier et al., 2006)の溶液を、EtOAc(5mL)中のアジドエステル化合物104(300mg,0.46mmol)およびPd/C(10%,50mg)の溶液に加えた。反応フラスコを、バルーンを用いてHで充填し、室温で終夜攪拌した。終夜攪拌し、次いで反応混合液を濾過し、減圧下で濃縮し、次いでカラム(MeOH:DCM,0−10%)に通して、化合物106(170mg)を油状物として得た。MS m/z C38H66N5O8S (M+1)+ 計算値 752.5, 実測値 752.5.
【0255】
化合物107
NaOH(120μL,1.2mmol,10M)を、MeOH(10mL)中の化合物106(170mg,0.22mmol)の溶液に室温で加えた。2時間攪拌後、反応混合液を濃HClでpH2まで酸性にした。次いで、反応混合液を減圧下で蒸発させ、逆相カラム(ACN:HO,0.1% TFAで0−100%)に通した。凍結乾燥後、化合物107(63mg)を白色の粉末として得た。HPLCプロファイルにより、回転異性体の混合物であることが示された。MS m/z C26H45N4O5S (M+1)+ 計算値 525.3, 実測値 525.
【0256】
酸化合物108
無水酢酸(60μL,0.64mmol)を、ピリジン(1mL)中の化合物107(63mg,0.12mmol)溶液に5℃で加えた。温度を徐々に室温まで上げた。終夜反応させ、次いで水(100μL)を加えた。さらに5時間後、揮発性有機物を減圧下で除去して残渣を得て、逆相カラム(ACN:HO,0.1% TFAで0−100%)に通して、酸化合物108(42mg)を油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.35 (s, 1H), 5.71 (dd, J = 11.4, 1.4 Hz, 1H), 4.63 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 3.97 (t, J = 16.4 Hz, 1H), 3.65-3.42 (m, 2H), 3.21-3.05 (m, 2H), 2.87 (s, 3H), 2.34-2.14 (m, 4H), 2.13 (s, 3H), 2.03-1.46 (m, 10H), 1.29-1.06 (m, 1H), 1.04-0.85 (m, 15H). MS m/z C28H47N4O5S (M+1)+ 計算値 567.3, 実測値 567.
【0257】
実施例22−スキーム18および19
スキーム18(図20aおよび20b)は、前記実施例で調製した酸化合物108として用いる本化合物の合成を示す。
【0258】
HATUによるカップリングの一般的な手順
HATU(1.2倍過剰量)およびDIEA(4倍過剰量)を、DMF中の酸化合物108の溶液に5℃で加えた。反応混合液を10分間攪拌し、次いで対応するアミン化合物を加えた。反応混合液をさらに10分間攪拌し、DMSOおよび0.1% TFA溶液で希釈した。生じた混合物を逆相カラム(ACN:HO,0.1%TFAで0−100%)に通した。収集したフラクションを分析し、所望のフラクションを凍結乾燥して、対応する生成物を得た。
【0259】
化合物109
酸化合物108およびフェニルアラニンメチルエステルのカップリングから得た。MS m/z C38H58N5O7S (M+1)+ 計算値 728.4, 実測値 728.4. 化合物109はまた、構造(III−x)として上記に示されている。
【0260】
化合物111
酸化合物108および化合物110のカップリングから得た(下記の調製)。MS m/z C42H63N6O9S (M+1)+ 計算値 827.4, 実測値 827.5.
【0261】
化合物112
2mLのMeOH中の化合物111(5mg,6μmol)の溶液に、Pd/C(10%,10mg)を加えた。反応フラスコを、バルーンを用いてHで充填し、室温で2時間攪拌した。次いで、反応混合液を濾過し、減圧下で濃縮し、逆相カラム(ACN:HO,0.1% TFAで0−100%)に通して、化合物112(2.1mg)を白色の粉末として得た。MS m/z C42H67N6O7S (M+1)+ 計算値 799.5, 実測値 799.5. 化合物112はまた、構造(III−y)として上記に示されている。
【0262】
化合物114
酸化合物108および化合物113のカップリングから得た(下記の調製)。MS m/z C41H64N5O7S (M+1)+ 計算値 770.4, 実測値 770.
【0263】
化合物116
酸化合物108および化合物115のカップリングから得た(下記の調製)。MS m/z C61H95N11O13S (M+2)+ 計算値 610.9, 実測値 611. 化合物116はまた、構造(VI−t)として上記に示されている。
【0264】
化合物117
酸化合物108およびアルファ−N−アセチルリジンメチルエステルのカップリングから得た。MS m/z C37H63N6O8S (M+1)+ 計算値 751.4, 実測値 751.5.
【0265】
化合物110
スキーム8のアルケン化合物59(メチルエステルの代わりにエチルエステルとする,1g、2.6mmol)を、5% TFAを含有するDCM(10mL)中に溶解させ、反応混合液を5℃で攪拌した。40分後、混合液を減圧下で乾燥させて、化合物110(0.3g,100%)を半固形物として得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.22-8.17 (m, 2H), 7.50 (dd, J = 9.0, 2.2 Hz, 2H), 6.58 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.45 (td, J = 9.8, 5.3 Hz, 1H), 4.19 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.35-3.28 (m, 1H), 3.06 (dd, J = 13.2, 9.6 Hz, 1H), 1.55 (d, J = 0.9 Hz, 3H), 1.27 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
【0266】
化合物113
HCl(2.5mL,10mmol,4M)を、MeOH(10mL)中の化合物118(2g,5.5mmol,Peltier et al., 2006)溶液に加え、反応混合液を室温で攪拌した。20分後、反応混合液を減圧下で乾燥させて、化合物113(2g,100%)を半固形物として得た。粗生成物をさらに精製することなく次の工程反応に用いた。MS m/z C13H19NO2 (M+1)+ 計算値 222.1, 実測値 222.
【化97】
【0267】
スキーム19(図21)は、上記の化合物116の合成で用いられる化合物115の合成を示す。
【0268】
化合物120
DIEA(697μL,12mmol)およびバリン t−ブチルエステル化合物543(627mg,3mmol)を、6−マレイミドヘキサン酸(「6−MHA」,622mg,3mmol)およびHATU(1.14g,3mmol)の10mLのDCM溶液に加えた。20分後、EtOAc(200mL)を加えた。有機相を、10% クエン酸、飽和NaHCO溶液および食塩水で洗浄した。次いで、無水NaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発により除去した。生じた残渣をカラム(ヘキサン:EtOAc,0−80%)に通して、化合物120(900mg)を油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.66 (s, 2H), 5.94 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.44 (dd, J = 8.7, 4.5 Hz, 1H), 3.49 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.31-2.06 (m, 3H), 1.73-1.54 (m, 4H), 1.45 (s, 9H), 1.37-1.25 (m, 2H). MS m/z C19H31N2O5 (M+1)+ 計算値 367.2, 実測値 367.
【0269】
化合物121
化合物120(1g,2.73mmol)を、3mLのTFAを含有する20mLのDCM中に室温で溶解させた。1時間後、混合液を蒸発により乾燥させて、化合物121(1g)を油状物として得て、さらに精製することなく用いた。MS m/z C15H23N2O5 (M+1)+ 計算値 311.2, 実測値 311.
【0270】
化合物123
DIEA(920μL,5.28mmol)および化合物122(500mg,1.32mmol;下記のスキーム22および実施例25を参照のこと)に、Fmoc保護シトルリン(524mg,1.32mmol)およびHATU(601mg,1.58mmol)の10mLのDMF溶液を加えた。20分後、200mLのEtOAcを加えた。有機相を、10% クエン酸、飽和NaHCO溶液および食塩水で洗浄した。次いで、無水NaSOで乾燥させ、EtOAcを蒸発させた。生じた残渣をカラム(MeOH:DCM;0−10%)に通して、固形物を得た。この固形物を、5% ピペリジンを含有するDMF(5mL)中に溶解させた。1時間後、溶液を蒸発させ、残渣を逆相カラム(ACN:HO;0.1% TFAで0−100%)に通して、化合物123(212mg)を得た。MS m/z C27H46N5O6 (M+1)+ 計算値 536.3、実測値 536.4.
【0271】
化合物124
DIEA(404μL,2.4mmol)および化合物560(321mg,0.6mmol)を、化合物550(180mg,0.58mmol)およびHATU(220mg,0.58mmol)の5mLのDMF溶液に加えた。20分後、200mLのEtOAcを加えた。有機相を10% クエン酸、飽和NaHCO溶液および食塩水で洗浄した。次いで、無水NaSOで乾燥させ、EtOAcを蒸発させた。生じた残渣をカラム(MeOH:DCM;0−20%)に通して、化合物124(240mg)を油状物として得た。MS m/z C42H66N7O10 (M+1)+ 計算値 828.5, 実測値 828.5.
【0272】
化合物115
化合物124(240mg,0.29mmol)をTFAおよびDCM(1:1)の5mL溶液中に溶解させた。3時間後、混合液を蒸発により乾燥させ、得られた化合物115をさらに精製することなく用いた。NMRにより、2種類の異性体の混合物(5:1)を得た。主要な異性体を記載する: 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.27 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.58 (dd, J = 8.5, 1.9 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.79 (s, 2H), 4.48 (dd, J = 13.3, 8.1 Hz, 1H), 4.14 (dd, J = 7.5, 4.9 Hz, 1H), 3.62-3.38 (m, 3H), 3.25-2.97 (m, 3H), 2.96-2.78 (m, 2H), 2.70-2.40 (m, 1H), 2.32-2.21 (m, 2H), 2.11-1.92 (m, 2H), 1.94-1.83 (m, 1H), 1.82-1.70 (m, 1H), 1.70-1.49 (m, 7H), 1.19 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 0.97 (dd, J = 6.8, 2.8 Hz, 6H). MS m/z C33H50N7O8 (M+1)+ 計算値 672.4, 実測値 672.
【0273】
実施例23−スキーム20
スキーム20(図22)は、本化合物の調製に用いられる中間体である化合物131の合成を示す。
【0274】
化合物125
スキーム1の化合物9(3g,8.29mmol)を、THF(20mL)および硫酸ジメチル(1.2mL,12.4mmol)中に溶解させた。この溶液に、NaH(552mg,13.8mmol)を5℃で1.5時間かけて少しずつ加えた。次いで反応混合液を飽和NHCl溶液に注ぎ入れた。EtOAcを反応混合液に加え、有機相を食塩水で洗浄し、乾燥させ、減圧下で蒸発させて残渣を得た。生じた残渣をカラム(ヘキサン:EtOAc,0−100%)に通して、化合物125(1.2g)を油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.12 (s, 1H), 4.95 (dd, J = 10.0, 3.3 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 3.50 (s, 3H), 3.45-3.40 (m, 2H), 1.93-1.79 (m, 2H), 1.74-1.65 (m, 1H), 1.20 (s, 9H), 0.84 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.80 (d, J = 6.8 Hz, 3H). MS m/z C16H29N2O4S2 (M+1)+ 計算値 377.1, 実測値 377.2.
【0275】
化合物126
ジオキサン中のHCl(1mL,4mmol)を、MeOH(10mL)中の化合物125(0.7g,1.86mmol)溶液に加えた。反応混合液を室温で攪拌した。20分後、揮発物を減圧下で蒸発させて化合物126(0.8g)を油状物として得、さらに精製することなく次の反応工程に用いた。MS m/z C12H21N2O3S (M+1)+ 計算値 273.1, 実測値 273.
【0276】
化合物127
5℃でDCM(10mL)およびDIEA(1.8mL,10mmol)中の化合物126(616mg,2mmol)溶液に、5mLのDCM中の化合物103(スキーム17,6mmol)を加えた。反応混合液を室温で3時間攪拌した。3時間後、反応混合液を飽和NaHCO溶液およびEtOAcに注ぎ入れた。有機相を食塩水で洗浄し、乾燥させ、蒸発させた。生じた残渣をカラム(ヘキサン:EtOAc,0−50%)に通して、化合物127(594mg,72%)を半油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.18 (s, 1H), 6.47 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 4.60-4.52 (m, 1H), 4.23-4.13 (m, 1H), 3.96-3.95 (m, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.44 (s, 3H), 2.21-2.08 (m, 1H), 1.94-1.84 (m, 2H), 1.84-1.71 (m, 1H), 1.52-1.38 (m, 1H), 1.35-1.20 (m, 1H), 1.07 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 0.95-0.85 (m, 9H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 176.00, 168.63, 161.92, 146.90, 128.24, 78.81, 70.34, 58.97, 52.72, 50.76, 40.48, 38.62, 32.24, 24.32, 19.13, 18.13, 16.25, 11.82. MS m/z C18H30N5O4S (M+1)+ 計算値 412.2, 実測値 412.3.
【0277】
化合物129
ヘキサメチルジシラジドカリウム(「KHMDS」,0.19mmol,0.375mLのトルエン溶液)を、化合物127(50mg,0.12mmol)のTHF(0.5mL)溶液に−43℃で加えた。20分後、化合物128(0.36mmol,137μL,Abe et al., 1997)を加えた。2時間後、100μLのMeOHを加え、反応混合液を飽和NHCl溶液に注ぎ入れた。次いでEtOAcを加えた。相を分離し、続いて有機相を食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発により除去した。生じた残渣をカラム(ヘキサン:EtOAc,0−50%)に通して、化合物129(51mg)を半固形物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.16 (s, 1H), 5.70 (s, 1H), 5.43 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 5.32 (d, J = 12.3 Hz, 1H), 4.39 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 3.92 (d, J = 11.7 Hz, 3H), 3.53-3.44 (m, 1H), 3.37 (d, J = 10.5 Hz, 3H), 2.41 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 2.37-2.11 (m, 4H), 1.92 - 1.68 (m, 2H), 1.37-1.21 (m, 1H), 1.12 - 0.85 (m, 18H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 175.24, 172.79, 171.21, 161.90, 147.09, 128.25, 78.44, 68.69, 63.35, 58.71, 52.48, 43.23, 38.63, 34.91, 31.01, 25.73, 25.25, 22.58, 22.56, 22.48, 20.45, 19.62, 16.14, 10.65. MS m/z C24H40N5O6S (M+1)+ 計算値 526.3, 実測値 424.3 (N,O アセタールの開裂).
【0278】
化合物130
化合物129(200mg,0.38mmol)および105(Peltier et al., 2006;4mmol)を、室温にてPd/C(150mg,10%)を含有する5mLのEtOAc中で混合した。反応フラスコを排気し、バルーンを用いてHで再充填した。室温で終夜攪拌し、次いで混合液を濾過し、溶媒を蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(SiO,MeOH:DCM,0−10%)後、化合物130(97mg)を固形物として得た。MS m/z C31H53N4O7S (M+1)+ 計算値 625.4, 実測値 625.5.
【0279】
化合物131
水酸化トリブチルスズ(181mg,0.59mmol)を、10mL 1,2−ジクロロエタン中の化合物130(97mg,0.16mmol)溶液に加えた。67℃で22時間後、混合液を蒸発させ、逆相カラム(ACN:(20mM NH(HCO)緩衝液,pH7),5−100%)に通して、化合物131(34mg)を固形物として得た。MS m/z C30H51N4O7S (M+1)+ 計算値 611.3, 実測値 510 (N, Oアセタールでの開裂).
【0280】
実施例24−スキーム21
スキーム21(図23)は、化合物131を前駆体として用いる本化合物の合成を示す。
【0281】
化合物132
化合物60(スキーム8,200mg,0.57mmol)を、20% TFAを含有する2mLのDCM中に室温で溶解させた。1時間後、揮発物を蒸発させて、化合物132(200mg)を黄色の固形物として得て、さらに精製することなく用いた。
【0282】
化合物133
DIEA(43μL,0.2mmol)を、化合物131(30mg,0.049mmol)およびHATU(22.3mg,0.059mmol)のDMF(1mL)溶液に−43℃で加えた。10分後、化合物132(15mg,0.06mmol)を加えた。次いで、混合物を室温に上げた。最終混合物を逆相カラム(ACN:(20mM NH(HCO)緩衝液,pH7),5−100%)に通して、化合物133(20mg)を白色の粉末として得た。MS m/z C44H73N6O8S (M+1)+ 計算値 843.5, 実測値 843.5. 化合物133はまた、上記で構造(III−u)としても示されている。
【0283】
化合物134
化合物133(2mg,2.4μmol)を、0.5mLのメタノール中に溶解させ、溶液のpHを1M HClで1に調整した。終夜攪拌し、次いで揮発物を蒸発させ、残渣を逆相カラム(ACN:(20mM NH(HCO)緩衝液,pH7),5−100%)に通して、化合物134(0.7mg)を白色の粉末として得た。MS m/z C40H65N6O7S (M+1)+ 計算値 773.5, 実測値 773.5. 化合物134はまた、上記で構造(III−v)としても示されている。
【0284】
化合物135
化合物133(2mg,2.4μmol)を、0.5mLのn−プロパノール中に溶解させ、溶液のpHを1M HClで1に調整した。終夜攪拌し、次いで混合液を蒸発させて、残渣を逆相カラム(ACN:(20mM NH(HCO)緩衝液,pH7),5−100%)に通して、化合物135(0.4mg)を白色の粉末として得た。MS m/z C42H69N6O7S (M+1)+ 計算値 802.5, 実測値 801.5. 化合物135はまた、上記で構造(III−w)としても示されている。
【0285】
実施例25−スキーム22
スキーム22(図24)は、本化合物の調製のための中間体として有用である化合物142を調製するための方法を示す。
【0286】
化合物136
NaOH(800μL,10M,8mmol)を、スキーム8の化合物59(1.65g,4.37mmol)を含有するTHFおよびMeOH(1:1)の20mL溶液に加えた。終夜攪拌し、次いで、溶液のpHを、5℃で3N HClを用いて1に調整した。溶媒の蒸発後、200mLのEtOAcを加えた。分離後、有機相を食塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、EtOAcを蒸発させた。残渣をカラム(MeOH:DCM;0−10%)に通して、化合物136(1.2g)を油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.21-8.12 (m, 2H), 7.41-7.32 (m, 2H), 6.62 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.82-4.57 (m, 2H), 3.15-3.02 (m, 1H), 2.90 (dd, J = 13.3, 7.2 Hz, 1H), 1.71 (d, J = 1.2 Hz, 3H), 1.41 (s, 9H).
【0287】
化合物137
DMF−ジ−t−ブチルアセタール(1mL,4mmol)を、133℃で化合物136(128mg,0.36mmol)の6mL トルエン溶液中に加えた。10分後、反応混合液を冷まし、溶媒を蒸発させた。残渣をカラム(ヘキサン:EtOAc;0−30%)に通して、化合物137(133mg)を油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.19-8.10 (m, 2H), 7.39-7.30 (m, 2H), 6.39 (dd, J = 9.1, 1.5 Hz, 1H), 4.63 (d, J = 39.1 Hz, 2H), 3.03 (dd, J = 13.2, 6.2 Hz, 1H), 2.90 (dd, J = 13.3, 7.0 Hz, 1H), 1.67 (d, J = 1.5 Hz, 3H), 1.47 (s, 9H), 1.39 (s, 9H).
【0288】
化合物122
化合物137(540mg,1.22mmol)、Pd/C(136mg,10%)および3N HCl(0.3mL)を、DCMおよびMeOHの混合液(30mL:5mL)に加えた。フラスコを、バルーンを用いてHで充填した。室温で終夜攪拌し、次いで混合液を濾過し、濃縮して、化合物122(550mg)を半固形物として得た。MS m/z C21H35N2O4 (M+1)+ 計算値 379.3, 実測値 223 (Bocの喪失).
【0289】
化合物138
化合物136(100mg,0.28mmol)およびPd/C(20mg,10%)を、室温で水素バルーン下にて、MeOHおよびDCM(1:1 v:v)の5mLの混合液中で混合させた。終夜攪拌し、次いで該混合液を濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて、化合物138(95mg)を油状物として得て、さらに精製することなく次の反応工程に用いた。MS m/z C17H27N2O4 (M+1)+ 計算値 323.2, 実測値 223.
【0290】
化合物139
化合物138(10mg,0.03mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(「TBDMSCl」,4.5mg,0.03mmol)およびイミダゾール(4mg,0.06mmol)を、1mLのDMF中に室温で混合させた。Fmoc保護シトルリン(24mg,0.06mmol)、N,N’−ジスクシンイミジル オキサレート(「DSO」,8mg,0.06mmol)およびDIEA(20μL,0.12mmol)を、さらに1mLのDMF中に室温で混合させた。1時間後、2種類の溶液を混合し、混合液を室温に保った。終夜攪拌し、EtOAcを加え、溶液を10% クエン酸水溶液および食塩水で洗浄した。次いで、有機相を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。生じた残渣をカラム(MeOH:DCM,0−10%)に通して、化合物139(7mg)を油状物として得た。MS m/z C38H48N5O8 (M+1)+ 計算値 702, 実測値 702.
【0291】
化合物141
化合物139(10mg,0.014mmol)を、5% ピペリジンを含有する1mLのDMF中に溶解させた。20分後、溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を、1mLのDMF中のN−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート140(5.6mg,0.028mmol)およびDIEA(5μL,0.028mmol)と混合させた。10分後、溶媒を減圧下で反応混合液から除去し、カラム(MeOH:DCM,0−20%)に通して、化合物141(6mg)を固形物として得た。MS m/z C31H45N6O9 (M+1)+ 計算値 645, 実測値 645.
【0292】
化合物142
化合物141(6mg,0.01mmol)を、10% TFAを含有する1mLのDCM中に溶解させた。10分後、溶媒を減圧下で蒸発させて、化合物142(6mg)を得て、さらに精製することなく次の反応工程に用いた。
【0293】
実施例26−スキーム23
スキーム23(図25)は、スキーム22に従って調製した化合物142の本化合物への合成を示す。
【0294】
化合物145
150μLのMeOH中のHCl(30μmmol)を、0.7mLのMeOH中のスキーム2の化合物27(5mg,8.3μmmol)の溶液に5℃で加えた。温度を徐々に室温まで上げた。終夜攪拌し、次いで混合液を蒸発させ、0.7mlのピリジン中に溶解させた。この溶液に、AcO(28μL,296μmmol)を5℃で加えた。温度を徐々に室温まで上げ、終夜攪拌し、続いて50μLのHOを加えた。3時間後、揮発物を蒸発させ、生じた残渣を蒸発させて、化合物145(4.7mg)を半固形物として得た。MS m/z C27H45N4O7S (M+1)+ 計算値 569.3, 実測値 569.
【0295】
化合物146
DIEA(6μL,34μmol)および化合物142(5.5mg,8.3μmol)を、化合物530(4.7mg,8.3μmmol)およびHATU(3.2mg,8.4μmol)の0.5mLのDMF溶液に5℃で加えた。20分後、生じた混合物を逆相カラム(ACN:(20mM NH(HCO)緩衝液,pH7),5−100%)に通して、化合物146(4.5mg)を白色の固形物として得た。MS m/z C53H79N10O13S (M+1)+ 計算値 1095.5, 実測値 1095.5. 化合物146はまた、上記で構造(VI−r)としても示されている。
【0296】
化合物147
DIEA(1.4μL,8μmol)および1滴の飽和NHCl溶液を、化合物146(2mg,1.8μmol)およびHATU(1.6mg,4.6μmol)の0.5mLのDMF溶液に加えた。10分後、混合液を逆相カラム(ACN:(20mM NH(HCO)緩衝液,pH7),5−100%)に通して、化合物147(0.5mg)を半固形物として得た。MS m/z C53H80N11O12S (M+1)+ 計算値 1094.6, 実測値 1094. 化合物147はまた、上記で構造(VI−s)としても示されている。
【0297】
実施例27−4−アミノツブフェニルアラニンジアステレオマー
化合物122(上記実施例25)は、下記のようにジアステレオマー148aおよび148bの3:1混合物であることを決定した。
【化98】
【0298】
化合物122(10mg,0.026mmol)を、TFAおよびDCM(1:1)の2mLの混合液中に室温で溶解させた。3時間後、溶媒を蒸発させ、残渣を逆相カラム(ACN:HO;0.1% TFAで0−100%)に通して、化合物149aおよび149bの3:1混合物を得た。この混合物中の主要な異性体は、混合物のNMRスペクトルを、化合物150から調製した化合物149aの基準サンプルのNMRスペクトルと比較することによって構造149aと同定した。
【化99】
【0299】
濃HNO(10μL)を、ツブフェニルアラニン150(Peltier et al., 2006;6mg,0.025mmol)の200μLの濃HSO溶液に5℃で加えた。20分後、溶液を2mLの冷7% KCO溶液に注ぎ入れた。次いで10mLのEtOAcを加えた。分離後、有機相を蒸発により乾燥させ、残渣を逆相カラム(ACN:HO;0.1% TFAで0−100%)に通して、ニトロ化合物151(5mg)を得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.27-8.21 (m, 2H), 7.56-7.49 (m, 2H), 3.69-3.58 (m, 1H), 3.07 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 2.73-2.61 (m, 1H), 2.04-1.91 (m, 1H), 1.64 (ddd, J = 14.7, 8.2, 4.9 Hz, 1H), 1.20 (d, J = 7.1 Hz, 3H). MS m/z C12H17N2O4 (M+1)+ 計算値 253.1, 実測値 253.
【0300】
次いで、ニトロ化合物151を以下のように化合物149aに変換した:ニトロ化合物151(5mg,0.01mmol)を、5mLのMeOH中のPd/C(10mg,10%)と室温で混合させた。フラスコを、バルーンを用いてHで充填した。1時間後、混合液を濾過し、蒸発させて、化合物149a(4.5mg)を得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.08-7.03 (m, 2H), 6.83-6.79 (m, 2H), 3.51-3.41 (m, 1H), 2.84-2.78 (m, 2H), 2.68-2.58 (m, 1H), 2.04-1.92 (m, 1H), 1.60 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 1.18 (d, J = 7.0, Hz, 3H). MS m/z C12H19N2O2 (M+1)+ 計算値 223.1, 実測値 223. このNMRスペクトルに基づいて、148a/148bおよび149a/149b混合物の主要な構成成分の構造を同定した。
【0301】
化合物122の試料を逆相カラム(ACN:HO;0.1% TFAで0−100%)に通し、微量の異性体を含有するフラクションを収集し、凍結乾燥させた。次いで、得られた生成物をTFAおよびDCMで処理して、Boc基を除去した。1時間後、溶媒を蒸発させて、生成物を得て、そのNMRスペクトルを化合物149aのものと比較し、化合物149bであると同定した。化合物149b: 1H NMR (400 MHz, CD3OD) 7.36-7.23 (m, 2H), 7.22-7.09 (m, 2H), 3.59-3.40 (m, 1H), 3.04-2.84 (m, 2H), 2.61-2.45 (m, 1H) 2.07-1.87 (m, 1H), 1.73-1.58 (m, 1H), 1.21-1.09 (d, J = 7.2 Hz, 3H).
【0302】
化合物148a、148b、149aおよび149bは、4−アミノツブフェニルアラニンサブユニットを有する本化合物を調製するために用いることができ、当該アルファ−メチル基の立体化学は、上記で例示される合成方法を適宜変更して用いて定義されるものである。化合物82aおよび82b(実施例17)はまた、同様の用途に用いることができる。
【0303】
前記の発明の詳細な説明には、本発明の態様の特定の部分に主として、または単独で関連する一部が含まれる。それは、明確性および利便性のためであり、ある特定の特徴が開示されている単なる一部よりも大きく関連し、本明細書の開示では、異なる部分で見出された情報の適当な組み合わせの全てが含まれることが理解されるべきである。同様に、本明細書に記載の様々な図面および記載は本発明の特定の態様に関するものであるが、ある特定の特徴がある特定の図面または態様の中で開示されている場合、かかる特徴もまた、適当な範囲で、別の図面または態様の中で、別の特徴との組み合わせにおいて、あるいは一般的な発明において用いることができることも理解されるべきである。
【0304】
さらに、本発明がある好ましい態様について特に記載されているが、本発明は、かかる好ましい態様に限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0305】
引用文献
下記の全ての引用文献は、筆頭著者(または発明者)によって省略した形で引用されており、本明細書より早い日付のものが下記に提供される。これらの文献の各々は、全ての目的のために出典明示により本明細書に取り込まれる。
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図1-2】
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