(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5859968
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ディスポーザ
(51)【国際特許分類】
B02C 18/00 20060101AFI20160202BHJP
E03C 1/266 20060101ALI20160202BHJP
B02C 18/18 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
B02C18/00 102A
E03C1/266 Z
B02C18/18 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-533916(P2012-533916)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(86)【国際出願番号】JP2011067308
(87)【国際公開番号】WO2012035897
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-210199(P2010-210199)
(32)【優先日】2010年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593047552
【氏名又は名称】株式会社フロム工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 宇喜雄
(72)【発明者】
【氏名】武田 拓真
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03455518(US,A)
【文献】
米国特許第02853249(US,A)
【文献】
特開2005−313007(JP,A)
【文献】
特開2000−262916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 18/00−18/38
E03C 1/266
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される回転板と、
前記回転板と同心に配置されて前記回転板を囲むリングの内側面に溝部と歯部が交互に形成された固定刃を備えるディスポーザにおいて、
前記固定刃を前記回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面における前記歯部の幅は前記溝部の幅より小さく、
前記固定刃の前記歯部には、前記回転板の回転軸方向の高さが最も高い高歯部、最も低い低歯部、及び前記高歯部と前記低歯部の中間の高さを有する中歯部の3種があって、
前記中歯部と前記低歯部は、その上端に、前記回転板の回転軸に近づくにしたがって低くなる傾斜面を備える
ことを特徴とするディスポーザ。
【請求項2】
前記固定刃を前記回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面における前記歯部の形状は、先端部が基部よりも細くなっている
ことを特徴とする請求項1に記載のディスポーザ。
【請求項3】
前記高歯部は前記リングに間隔を空けて配置されて、前記リングの内側面を複数の区画に分割し、
前記各区画には前記低歯部と前記中歯部が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のディスポーザ。
【請求項4】
前記区画には、前記低歯部だけが配置された低歯区画と、中央に前記中歯部が配置され、その前後に前記低歯部が配置された中低歯区画の2種があって、
前記低歯区画と前記中低歯区画は前記リングの内側面に交互に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のディスポーザ。
【請求項5】
前記固定刃の前記歯部は、前記回転板の回転軸方向の高さが高い高歯部と、高さが低い低歯部の2種があって、
前記高歯部は前記リングに間隔を空けて配置されて、前記リングの内側面を複数の区画に分割し、
前記各区画には前記低歯部が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のディスポーザ。
【請求項6】
前記低歯部は、前記区画のそれぞれに2本ずつ配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載のディスポーザ。
【請求項7】
NとMが互いに素の関係にある自然数である場合に、
前記回転板には、N個のスイングハンマーが等間隔に配置され、
前記固定刃には、M個の前記歯部が等間隔に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のディスポーザ。
【請求項8】
前記回転板には、2個のスイングハンマーが等間隔に配置されて、
前記固定刃には、奇数個の前記歯部が等間隔に配置されている、
ことを特徴とする請求項7に記載のディスポーザ。
【請求項9】
前記高歯部は、前記リングに2本ずつペアになって配置されて、前記ペアが前記リングの内側面を複数の区画に分割している
ことを特徴とする請求項5に記載のディスポーザ。
【請求項10】
前記固定刃を前記回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面における、前記溝部の断面形状の中心線は前記回転板を迎える方向に傾いている
ことを特徴とする請求項1に記載のディスポーザ。
【請求項11】
前記歯部は、前記回転板の回転軸に対して傾斜角を有するとともに、
前記傾斜角は前記回転板によって前記固定刃に押して当てられる厨芥を押し下げる方向に傾いている
ことを特徴とする請求項1に記載のディスポーザ。
【請求項12】
前記歯部の上端には、傾斜面が形成されていて、
前記傾斜面は前記固定刃の中心に向かう方向に低くなっている
ことを特徴とする請求項1に記載のディスポーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスポーザ、特に、リング状の固定刃と、前記固定刃と同心に配置された回転板を備えるディスポーザに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスポーザは、厨芥を破砕し、水と混合して、スラリーを生成する装置である。
【0003】
一般に、ディスポーザは、リング状の固定刃と、前記固定刃の内側に、前記固定刃と同心に配置された回転板を備えている。このようなディスポーザは、回転板の回転によって生じる遠心力で厨芥を固定刃に押し当てて、厨芥を破砕する(例えば、特許文献1)。なお、本明細書において、特許文献1に開示されたディスポーザを「従来技術品」と呼ぶことがある。
【0004】
固定刃は、金属製のリングの内面に多数の溝部と歯部を交互に配置して構成される。ここで、溝部とはリングの内面に形成された凹部を指し、歯部とはリングの内面に形成された凸部を指す。また、溝部の底部とは、溝部の最も低い部分(=リングの中心から遠い部分)をいう。歯部の頂部とは、歯部の最も高い部分(=リングの中心に近い部分)をいう。
【0005】
従来技術品の溝部と歯部は、固定刃をリングの回転中心軸に垂直な平面で切断した断面(水平断面)において、ほぼ矩形をなし、歯部の頂部の幅と溝部の底部の幅は、ほぼ等しい(特許文献1の
図8)。
【0006】
さて、ディポーザで厨芥を破砕して得られる粒子の寸法、つまり、スラリー中に含まれる厨芥粒子の寸法が大きいと、排水管の中で詰まる恐れがあるので、厨芥粒子の大きさは所定の寸法以下に制限される。また、厨芥粒子の寸法は、溝部の断面形状の大きさによって決まる。そのため、固定刃の溝部の断面形状は所定の大きさ以下に制限される。一方、溝部の断面形状を必要以上に小さくすると、厨芥が溝の中で詰まる恐れがある。本願発明者の経験によれば、溝部の断面積を9mm
2程度(幅4mm、深さ2.3mm)程度にすると、良好な結果が得られることが分っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−22913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
言うまでもないことだが、ディスポーザには処理速度(単位時間に破砕される厨芥の量)の向上と、小型化が求められている。
【0009】
言うまでもないことだが、回転板の回転速度(回転数)を大きくすれば、当然、処理速度は向上する。しかしながら、回転速度を大きくすると、騒音や振動が大きくなるという問題がある。また一般に、ディスポーザには、安価で入手が容易な誘導電動機が用いられるが、高回転の誘導電動機は高価で入手が容易でない。直流電動機は、回転速度の変更は比較的容易だが、ブラシの磨耗による交換が必要であり、使い勝手が悪いという問題がある。
【0010】
また、溝部の断面積を大きくすれば、回転板の回転速度を変えずに、処理速度を向上させることができる。しかしながら、前述したように、溝部の断面積を大きくすれば、厨芥粒子が大きくなり、排水管の中で詰まる恐れが生じる。
【0011】
また、溝部の数を増やせば、回転板の回転速度を変えずに、また厨芥粒子を大きくしないで、処理速度を向上させることができる。しかしながら、溝部の数を増やせば、固定刃の直径が大きくなるので、ディスポーザの小型化の要請と矛盾する。
【0012】
本発明は、以上のような背景の下でなされたものであり、回転板の回転速度、固定刃の直径、厨芥粒子の寸法を変えずに、処理速度を向上できるディスポーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のディスポーザは、回転駆動される回転板と、前記回転板と同心に配置されて前記回転板を囲む
リングの内側面に溝部と歯部が交互に形成され
た固定刃を備えるディスポーザにおいて、前記固定刃を前記回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面における前記歯部の幅は前記溝部の幅より小さ
く、前記固定刃の前記歯部には、前記回転板の回転軸方向の高さが最も高い高歯部、最も低い低歯部、及び前記高歯部と前記低歯部の中間の高さを有する中歯部の3種があって、前記中歯部と前記低歯部は、その上端に、前記回転板の回転軸に近づくにしたがって低くなる傾斜面を備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成に加えて、前記固定刃を前記回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面における前記歯部の形状が、先端部が基部よりも細くなるように構成してもよい。
【0015】
前記高歯部は前記リングに間隔を空けて配置されて、前記リングの内側面を複数の区画に分割し、前記各区画には前記低歯部と前記中歯部が配置されてもよい。
【0016】
前記区画には、前記低歯部だけが配置された低歯区画と、中央に前記中歯部が配置され、その前後に前記低歯部が配置された中低歯区画の2種があって、前記低歯区画と前記中低歯区画は前記
リングの内側面に交互に配置されてもよい。
【0017】
あるいは、前記固定刃の前記歯部は、前記回転板の回転軸方向の高さが高い高歯部と、高さが低い低歯部の2種があって、前記高歯部は前記
リングに間隔を空けて配置されて、前記
リングの内側面を複数の区画に分割し、前記各区画には前記低歯部が配置されてもよい。
【0018】
また、前記低歯部は前記区画のそれぞれに2本ずつ配置されるように構成されてもよい。
【0019】
あるいは、NとMが互いに素の関係にある自然数である場合に、前記回転板には、N個のスイングハンマーが等間隔に配置され、前記固定刃には、M個の前記歯部が等間隔に配置されてもよい。
【0020】
あるいは、前記回転板には、2個のスイングハンマーが等間隔に配置されて、前記固定刃には、奇数個の前記歯部が等間隔に配置されるようにしてもよい。
【0021】
また、前記高歯部は、前記
リングに2本ずつペアになって配置されて、前記ペアが前記
リングの内側面を複数の区画に分割しているように構成されてもよい。
【0022】
また、前記固定刃を前記回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面における、前記溝部の断面形状の中心線が前記回転板を迎える方向に傾くようにしてもよい。
【0023】
前記歯部は、前記回転板の回転軸に対して傾斜角を有するとともに、前記傾斜角は前記回転板によって前記固定刃に押して当てられる厨芥を押し下げる方向に傾いているようにしてもよい。
【0024】
また、前記歯部の上端には、傾斜面が形成されていて、前記傾斜面は前記固定刃の中心に向かう方向に低くなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、固定刃の歯部の幅が溝部の幅より小さいので、同じ寸法の固定刃に、より多数の溝部を配置することができる。そのため、ディスポーザの処理速度を大きくできる。また、固定刃の歯部の幅を小さくすると、回転板が固定刃から受ける摩擦抵抗を小さくできる。そのため、ディスポーザの消費電力を小さくできる。
【0026】
また、固定刃を回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面における歯部の形状を、先端部が基部よりも細くなるようすれば、歯部の機械的な強度を確保しながら、溝部の数を最大化することができる。
【0027】
また、固定刃に、高さの異なる3種の歯部、つまり高歯部、中歯部及び低歯部を形成すれば、高歯部で厨芥を粗く裁断した後に、中歯部で更に裁断し、最後に低歯部で細かく破砕できるので、厨芥を能率良く破砕することができる。つまり、ディスポーザの処理速度が向上する。
【0028】
また、NとMが互いに素の関係にある自然数である場合に、回転板に、N個のスイングハンマーが等間隔に配置され、固定刃に、M個の歯部が等間隔に配置(例えば、回転板に、2個のスイングハンマーが等間隔に配置されて、固定刃に、奇数個の歯部が等間隔に配置)されれば、全てのスイングハンマーが同時に歯部に当接することがないから、回転板(を駆動するモータ)の負荷を小さくできる。
【0029】
また、固定刃を回転板の回転軸に垂直な平面で切断した断面において、溝部の断面形の中心線が、回転板を迎える方向に傾くようにすれば、厨芥が溝部にスムーズに導入されるので、厨芥を更に能率良く破砕することができる。つまり、ディスポーザの処理速度が更に向上する。
【0030】
また、前記歯部に、前記回転板の回転軸に対して傾斜角を与えて、前記回転板によって前記固定刃に押して当てられる厨芥を押し下げる方向に傾ければ、破砕された厨芥がスムーズに排出される。また、前記歯部に傾斜角を与えると、前記歯部の長さを大きくできるので、ディスポーザの処理速度が向上する。
【0031】
また、歯部の上端に、前記固定刃の中心に向かう方向に低くなる傾斜面が形成されれば、歯部の上端に乗り上げた厨芥が傾斜面を滑って落下するので、厨芥を更に能率良く破砕することができる。つまり、ディスポーザの処理速度が更に向上する
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図4】固定刃を内側(
図2のA方向)から見た展開図である。
【
図5】固定刃を
図4のCC’線で切断した水平断面図である。
【
図7】固定刃の垂直断面図であり、(a)は中歯部の断面図、(b)は低歯部の断面図である。
【
図11】回転板と固定刃の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態の一例を示すディスポーザ1の概念的な断面図である。ディスポーザ1は、シンク2の下方に設置されて、シンク2から投下される厨芥(図示しない)を破砕する装置であり、上部ケーシング3と、上部ケーシング3の下方に取り付けられた下部ケーシング4と、下部ケーシング4の下方に取り付けられたモータハウジング5を備える。
【0035】
下部ケーシング4には、固定刃6が固定され、固定刃6の内側には回転板7が配置されている。回転板7は、モータハウジング5に内蔵された電動機(図示しない)で駆動されて、回転軸8回りに回転する。また、回転板7の上面にはスイングハンマー9が取り付けられて、スイングハンマー9はスイング軸10回りに回動する。なお、下部ケーシング4の内部の回転板7の上方の空間を破砕室11と呼び、回転板7の下方の空間を排出室12と呼ぶ。
【0036】
シンク2から投下された厨芥は、上部ケーシング3を通って、破砕室11に入る。破砕室11に入った厨芥は、回転板7の回転による遠心力で、回転板7の半径方向に飛ばされ、スイングハンマー9で叩かれて、固定刃6に押し付けられる。固定刃6に押し付けられた厨芥は、破砕されて、排出室12に落下し、排出管13から排出される。
【0037】
さて、このディスポーザ1を構成する固定刃6の形態を、
図2ないし
図6を参照しながら、詳細に説明する。ここで、
図2は固定刃6の平面図(
図1のA方向から見た図)であり、
図3は固定刃6の斜視図である。また、
図4は固定刃6を内側(
図2のB方向)から見た展開図である。また、
図5は固定刃6を
図4のCC’線で切断した水平断面図である。また、
図6は固定刃6の垂直断面図である。
【0038】
図2及び
図3から明らかなように、固定刃6は、全体として、リング状に形成されている。また、リングの内側面には、多数の溝部21と歯部22が交互に配置されている。ここで、溝部21は固定刃6の内面に形成された凹部を言い。歯部22は、固定刃6の内面に形成された凸部を言う。なお、
図2に示すように、回転板7はディスポーザ1の上方から見た場合に、反時計回り(矢印Rで示す方向)に回転する。
【0039】
また、
図3及び
図4から明らかなように、固定刃6は高さの異なる3種類の歯部22を備える。すなわち、固定刃6には、高さが固定刃6の高さに等しい高歯部22h、固定刃6の高さの1/2程度の高さを備える低歯部22l、及び、高歯部22hと低歯部22lの中間の高さを備える中歯部22mが形成されている。
【0040】
高歯部22hは、平面図(
図2)において、45°ピッチで円周上に配置されている。つまり、固定刃6には8本の高歯部22hがあって、円周方向に等間隔に配置されている。言い替えれば、固定刃6のリングは、高歯部22hによって8個の区画に分割されている。前記8個の区画には低歯部22lと中歯部22mが混在して配置されているX区画と、低歯部22lだけが配置されているY区画とがあって、X区画とY区画は交互に配置されている(
図4参照)。更に詳しく言えば、X区画の中央には中歯部22mが1本配置されていて、その両側、つまり中歯部22mと高歯部22hの間には4本の低歯部22lが配置されている。また、Y区画には、9本の低歯部22lが配置されている。
【0041】
このように、固定刃6は高さの異なる3種の歯部22、つまり高歯部22h、中歯部22m及び低歯部22mを備えるので、固定刃6に押し当てられた厨芥は高歯部22hで粗く裁断され、その後、中歯部22mで更に裁断され、最後に低歯部22lで細かく破砕され、排出室12に落下する。そのため、厨芥を能率良く破砕することができる。
【0042】
また、
図4に示すように、3種の歯部22(高歯部22h、中歯部22m、低歯部22l)は、いわゆるスキューを備えていて、歯部22の立面形は垂直軸(回転軸8に平行な軸)に対して右に20°傾いている。前述したように回転板7は、反時計回りに回転するので、
図4において厨芥は右側から歯部22に接近し、右側から歯部22に接近した厨芥はスキューによって下方に押し下げられて、排出室12に押し出されて落下する。その結果、厨芥が能率良く排出される。
【0043】
次に、歯部22(高歯部22h、中歯部22m、低歯部22l)の水平断面形状について説明する。
【0044】
図5から明らかなように、歯部22の幅W2は溝部21の頂部の幅W1より小さい。そのため、固定刃6には、従来技術品と比べて、多数の溝部21と歯部22が形成される。本実施形態において、固定刃6の内径は151.4mm、溝部21の幅W1は4mm、歯部22の幅W2は1.9mmなので、固定刃6には80個の溝部21と歯部22が形成される。仮に、幅W1及び幅W2をいずれも4mmにすれば、つまり従来技術品と同様に構成すれば、溝部21と歯部22は約60個しか形成できない。また、本実施形態の溝部21の断面積は約8.9mm
2であり、従来技術品とほぼ同じである。そのため、回転板7が1回転すると、従来品の約1.3倍(≒80/60)の容積の厨芥が破砕される。つまり、回転板7の回転速度が同じならば、従来技術品の約1.3倍の速度で厨芥が破砕される。
【0045】
歯部22の断面形は先細になっている、つまり歯部22の基部の幅W3を頂部の幅W2より大きくしている。そのため、歯部22の機械的な強度を損なわずに、溝部21の数を最大化することができる。
【0046】
歯部22の幅W2を小さくすることによって、回転板7が回転する時に、回転板7が固定刃6から受ける摩擦抵抗を小さくできる。そのため、モータの出力が小さくて済む。つまり、モータを小型化し、あるいは消費電力を小さくできる。
【0047】
歯部22の頂部の幅W2を更に小さくしてもよい。例えば、
図6に示すように、歯部22の頂部の幅W2を0に近く、つまり歯部22の断面形を三角形にしてもよい。このように構成すれば、回転板7が固定刃6から受ける摩擦抵抗を最小化することができる。したがって、モータの消費電力を小さくできる。
【0048】
回転板7は上から見て反時計回りに回転するので、
図5において、厨芥は回転板7は固定刃6の右側から左側に移動する。また、溝部21の水平断面形は回転板7を迎える方向に傾いている。つまり、溝部21の水平断面の中心線Mは右側に傾いている。このため、厨芥を溝部21の中に導入する時の抵抗が小さくなる。そのため、厨芥を効率よく破砕することができる。また、回転板7を駆動する動力を小さくすることができる。つまり、モータの消費電力を小さくできる。
【0049】
次に、中歯部22mと低歯部22lの垂直断面形状について説明する。
【0050】
図7に示すように、固定刃6を固定刃6の回転軸を含む平面で切断した断面(つまり、垂直断面)において、中歯部22m及び低歯部22lの上端に傾斜面22sを備えている。この傾斜面22sは、固定刃6の内側(回転軸8)に向かって低くなるように傾斜している。このため、厨芥が中歯部22m及び低歯部22lの上端に乗り上げても、厨芥は傾斜面22sを滑って固定刃6の内側に落下し、中歯部22m及び低歯部22lの上端に残らない。そのため、厨芥を能率良く破砕することができる。
【0051】
ここまで、3種の歯部22、つまり高歯部22h、中歯部22m及び低歯部22lを有する固定刃6について説明したが、固定刃6はこのような物には限られない。
図8あるいは
図9に示すように構成されてもよい。なお、
図8および
図9は、固定刃6の変形例を示す展開図であり、固定刃6を内側から見た図である。
【0052】
図8に示した固定刃6は、スキューを備えない点と、高歯部22hと低歯部22lを備えるが、中歯部22mを備えない点で、
図4に示したものと異なる。高歯部22hは固定刃6に等間隔に配置され、固定刃6は高歯部22hによって、いくつかの区画に分割され、該区画の中に複数の低歯部22lが配置されている。このように、
図8に示した固定刃6は、
図4に示したものに比べて、構造が簡単なので、製造が容易である。
【0053】
図9に示した固定刃6は、スキューを備えない点と、中歯部22mを備えない点で、
図8に示した固定刃6と共通し、高歯部22hを2個ずつ隣接して、つまり2個の高歯部22hをペアにして配置している点で異なる。なお、ここで「ペア」とは隣り合う2個の高歯部22hの間に低歯部22lが配置されていないことを意味する。このように2個の高歯部22hをペアにして配置しているので、厨芥を粉砕する場合に、高歯部22hの1個当たりの負荷が小さくなる。そのため、高歯部22hの摩耗が抑制される。
【0054】
隣接する高歯部22hの間(つまり「区画」)に配置される低歯部22lの数は、ディスポーザ1の処理対象の厨芥の種類等に応じて任意に選択できるが、発明者の実験結果によれば、
図10に示すように、各区画に低歯部22lを2本ずつ配置した場合にもっとも良好な結果が得られた。また、
図10に示した固定刃6は7本の低歯部が連続する区画を含むが、このような区画を備えることによって、厨芥のつまりを抑制できる。
【0055】
固定刃6に配置する高歯部22hの数も、任意に選択できるが、回転板7に複数(通常は2)個配置されるスイングハンマー9の全てが同時に、高歯部22hに当たることがないような配置と本数を選択すれば、回転板7(を駆動する電動機)に大きな負荷が掛かることを避けられる。例えば、
図11に示すように、回転板7に2個のスイングハンマー9を備える場合に、固定刃6に奇数個(71個)の歯部22(高歯部22h及び低歯部22lを、当ピッチ(ここでは、固定刃6の中心軸に対する中心角が等しいことをいう)で配置すれば、
図11のA部において、スイングハンマー9が高歯部22hに近づく時、B部においては、スイングハンマー9は高歯部22hに離れる位置にある。つまり、2個のスイングハンマー9が同じタイミングで歯部22に当ることがないので、回転板7(を駆動する電動機)に大きな負荷が掛からない。
【0056】
図11で示した例を一般化すると、回転板7にN個(ただし、Nは自然数)のスイングハンマー9を備える場合に、固定刃6にM個(ただし、MはNの倍数でない自然数、つまりNとMが互いに素の関係にある自然数)の歯部22を、当ピッチで配置すれば、N個のスイングハンマー9が同時に歯部22に当って、回転板7(を駆動する電動機)に大きな負荷が掛かることがない。例えば、回転板7に3個のスイングハンマー9を備える場合に、固定刃6に10個あるいは11個の歯部22を、当ピッチで配置すれば、3個のスイングハンマー9が同時に歯部22に当ることがない。
【0057】
以上説明したディスポーザ1の具体的構成は、本発明の実施形態を例示するものであって、本発明の技術的範囲は、上記の具体的構成に限定されるものではない。本発明は、特許の範囲に記載された技術的思想の範囲を逸脱しない限りにおいて、自由に、応用、変形あるいは改良して実施することができる。
【0058】
例えば、溝部21及び歯部22の形状に係る寸法や角度の数値は、あくまでも例示であって、本発明の技術的範囲はかかる寸法等を備えるものに限定されない。
【0059】
また、固定刃6に、8本の高歯部22hを円周方向に等間隔に配置する例(
図2参照)を示したが、高歯部22hの数や配置はこれには限定されない。高歯部22hの数は8本には限られない。高歯部22hは固定刃6の内周に間隔(等間隔には限られない)を空けて配置されて、固定刃6の内周を複数の区画に分割していればよい。
【0060】
あるいは、
図12に示すように、高歯部22hを連続して(間に低歯部22lを置かずに)配置して、一部(
図12では2箇所)に低歯部22lが連続する区画を配置してもよい。
【0061】
固定刃6の素材や製造方法は、各種公知の素材や方法を任意に選択できる。固定刃6の素材には一般に金属が選ばれるが、非金属材料、例えばセラミックを選ぶこともできる。ロストワックス法で鋳造すれば、機械加工量を最小にして、安価に製造することができる。あるいは、ロストワックス法と機械加工を組み合わせても、砂型を使って鋳造しても良いし、金属粉をプレスで成形して焼結してもよい。機械加工だけで製造してもよい。
【0062】
固定刃6の製造を容易にするために、歯部22(高歯部22h、中歯部22m、低歯部22l)の水平断面形状を簡略化しても良い。例えば、
図13に示すように、歯部22の片側の斜面が固定刃6(の外郭)を構成する円弧6aに対して垂直になるようにしても良い。あるいは、図示しないが、歯部22の両側の斜面が円弧6aに対して垂直になるようにしても良い。このような形状を選択すれば、斜面が円弧6aに対して傾斜している場合(
図5に示す形状)に比べて、製造(鋳造であっても機械加工であっても)が容易になる。
【0063】
なお、
図1に示したディスポーザ1の構成は、「概念的な構成」であって、本発明の説明に不要な構成要素、例えば、締結要素(ボルト、ナット)、軸受け、シール等の図示は省略している。またディスポーザ1とシンク2の取りあい部の詳細な構成についても図示は省略している。これら図示しなかった構成要素の有無や、その形態的特徴が、本発明の技術的範囲の解釈に影響しないことは言うまでない。
【0064】
なお、本出願は、2010年9月17日に出願された、日本国特許出願2010−210199号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2010−210199号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照して取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のディスポーザは、小型でありながら高速処理が可能なディスポーザとして、利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 ディスポーザ
2 シンク
3 上部ケーシング
4 下部ケーシング
5 モータハウジング
6 固定刃
7 回転板
8 回転軸
9 スイングハンマー
10 スイング軸
11 破砕室
12 排出室
13 排出管
21 溝部
22 歯部
22h 高歯部
22l 低歯部
22m 中歯部
22s 傾斜面