特許第5860006号(P5860006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5860006切り屑除去加工用の工具、そのパーツ及びねじ接合部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860006
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】切り屑除去加工用の工具、そのパーツ及びねじ接合部
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/00 20060101AFI20160202BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B23C5/00 A
   B23C5/10 D
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-128551(P2013-128551)
(22)【出願日】2013年6月19日
(62)【分割の表示】特願2007-110826(P2007-110826)の分割
【原出願日】2007年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-176844(P2013-176844A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2013年7月19日
(31)【優先権主張番号】0600875-9
(32)【優先日】2006年4月20日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】アイザック カカイ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ レヒト
(72)【発明者】
【氏名】マグナス オールトランド
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ラルソン
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−223284(JP,A)
【文献】 特開2005−034939(JP,A)
【文献】 特開2006−150509(JP,A)
【文献】 特開2006−150508(JP,A)
【文献】 特表平10−504767(JP,A)
【文献】 特表2003−514201(JP,A)
【文献】 特表2002−524712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00− 9/00
B23B 51/00−51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り屑除去金属加工用の工具であって、
共通の中心軸に沿って配向された第一のパーツ及び第二のパーツと、
該第一及び第二のパーツを互いに着脱可能に結合するねじ接合部と、を備え、
該ねじ接合部は、
前記第一のパーツの中空スペースの開口部に配置された雌ねじと、
前記第二のパーツの雄状ピンの自由端に配置された雄ねじと、を含み、
個々のねじは、頂部と底部を有するつるまき状の溝部を画定する二つのフランクとによって規定される輪郭形状を有するつるまき状ねじ山を含み、
前記雄ねじの第一のフランクは前記雄状ピンの自由端の反対方向を向き、前記雌ねじの第一のフランクは前記中空スペースの開口部の反対方向に向いて、前記雄状ピンを前記中空スペースにねじ込むときに互いに圧接し、前記雄ねじの第二のフランクは前記雄状ピンの自由端の方向に向き、前記雌ねじの第二のフランクは前記中空スペースの開口部の方向に向いて、前記雄状ピンをまわして前記中空スペースから引き出すときに互いに圧接し、前記雄ねじ及び前記雌ねじの前記第一のフランクは前記中心軸に対して第一の角度で傾斜し、該第一の角度は前記雄ねじの前記第二のフランク及び前記雌ねじの前記第二のフランクのそれぞれが前記中心軸に対して傾斜する第二の角度よりも小さく、二つの前記雄ねじ及び前記雌ねじの前記第一のフランクの前記第一の角度が等しい大きさであり、前記雌ねじの第二のフランクの第二の角度は前記雄ねじの第二のフランクの第二の角度より大きく、
前記第二のパーツの前記雄状ピンが、該雄状ピンの自由端側の反対側である前記雄ねじの前方と該雄状ピンの自由端側である前記雄ねじの背後とにそれぞれ配置された第一及び第二の回転対称な外側ガイド面を備え、前記第一のパーツの中空スペースが、該中空スペースの開口端部側である前記雌ねじの前方と該中空スペースの開口端部側の反対側である前記雌ねじの背後とにそれぞれ配置された第一及び第二の回転対称な内側ガイド面を備え、前記第一の外側ガイド面が前記第一の内側ガイド面と協働的に係合し、前記第二の外側ガイド面が前記第二の内側ガイド面と協働的に係合し、
前記雄ねじの前方に配置された前記第一の外側ガイド面の直径が、前記雌ねじの前方に配置された前記第一の内側ガイド面の内径より大きく、前記第一の外側ガイド面と前記第一の内側ガイド面との協働的な係合は圧入によるものであることを特徴とする工具。
【請求項2】
前記中心軸に対する前記第一のフランクの前記第一の角度が100〜120゜であることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記中心軸に対する前記第一のフランクの前記第一の角度が104〜115゜であることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項4】
前記中心軸に対する前記雄ねじ及び前記雌ねじの前記第二のフランクの前記第二の角度が115〜150゜であることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項5】
前記中心軸に対する前記雄ねじ及び前記雌ねじの前記第二のフランクの前記第二の角度が120〜140゜であることを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項6】
前記第二のパーツが硬い耐摩耗性物質を含む摩耗パーツを含み、前記第一のパーツが比較的柔らかな物質を含む基本ボディーを含み、前記第二のパーツが前記雄状ピン上に前記雄ねじを含むことを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項7】
前記摩耗パーツがミーリングカッタボディーを含み、前記基本ボディーが回転可能なシャフトを含むことを特徴とする請求項6に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第一の様態で、本発明は切り屑除去又は切削機械加工のための工具であって、共通の中心軸に沿って配向され、ねじ接合部によって着脱可能に互いに結合された二つのパーツを含むタイプの工具に関する。ねじ接合部は、一方において一方のパーツにおける中空スペースの開口部付近に位置する雌ねじと、他方において他方のパーツに含まれる雄状ピンの自由端付近に位置する雄ねじを含む。個別ねじは、頂部と一対の対向するフランクを有するつるまき状ねじ山を含み、それらが同様に底部を有するつるまき状溝部を画定する。雄ねじのねじ山の第一フランクはピンの端の反対側に向き、ピンが中空スペースにねじ込まれるときに中空スペースの開口部の反対側に向いた雌ねじのねじ山の第一フランクに圧接する。雄ねじのねじ山の第二フランクはピンの自由端の方に向き、ピンをまわして引き出すときに開口部に向いた雌ねじのねじ山の第二フランクに圧接する。
【0002】
別の様態で、本発明はまた、この工具の着脱可能なパーツに関する。
【0003】
実際には、このタイプの工具は、鋼及び鋼合金、鉄、アルミニウム、チタン、などの金属ワークピースを機械加工するために使用できる。
【背景技術】
【0004】
本出願は、35 U.S.C. §119の下で2006年4月20日に出願されたスウェーデン特許出願No.0600875−9の優先権を主張するものであり、その開示は参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
関連した回転切削工具として、二つのパーツをインターフェース又は接合部によって結合したものがある。例えば、基本ボディーと切削ボディー又は摩耗パーツが着脱可能に結合されているものである。実際には、そのような工具は、ドリル又はフライス、例えばシャンクエンド(shank end)又はならいフライス盤、などである。最新の工作機械では、基本ボディーが非常に高価になるので、経済的な理由により、それを、摩耗パーツであって限られた使用寿命しかない切削ボディーと一体化することはできない。言い換えると、本来の切削ボディーは別のユニットの形で作ることが利益になる。これを当業者は通常、“ルーズトップ(loose top)”と呼んでおり、これは摩耗したら交換することができる。これに対して基本ボディーはもっと長期間にわたって使用できる。
【0006】
回転式機械加工のためのルーズトップ工具の開発は、近年活発に行われており、いくつか異なる構成の工具が生まれている。それらは主として、ルーズトップと基本ボディーの間のインターフェース又は接合部に関して互いに異なっている。ルーズトップ工具が設計ソリューションに関する多数の提案の対象になっているということ自体、ルーズトップと基本ボディーの間のインターフェースの設計が、克服することが困難な技術的問題であるという証拠であると考えられる。すなわち、いくつかの異なる問題に考慮を払わなければならないが、それらはルーズトップと基本ボディーが異なる材料から、互いに別々の生産ユニットで製造されるという事情に基づくものだけでなく、工具が厳しい外部条件の下で、例えば強い熱放出、大きな切削力の影響、などの下で使用されるという事情にもよる。特に、シャンクエンド(shank end)又はならいフライス盤、などの小さな工具はいろいろな異なる応力を受け、それは異なる機能状態で大きく変化する。ルーズトップ、すなわち、例えばならいフライス盤の硬い着脱可能な切削ボディーは軸方向の引っ張り及び圧縮応力をそれぞれ受けるだけでなく、ルーズトップに異なる角度で作用する雑多な半径方向の力も受ける。したがって、ルーズトップと基本ボディーの間の実際に働くインターフェース又は接合部を形成することは、いくつかの,ときには相反する要請の微妙なバランスを見出すことである。
【0007】
関連した工具で、ルーズトップを基本ボディーに結合するためにねじ接合部が用いられていろいろな程度で成功を収めている。通常、後方の雄状ピンが円錐形又は円筒形の雄ねじを有するルーズトップに形成され、この雄ねじを、基本ボディーの前端に開口している中空スペースの対応する雌ねじにはめ込むことができる。関連した工具では、ルーズトップのリアピンには、ピンの雄ねじの前方及び背後に外側の円筒形ガイド面が形成される。雄ねじを基本ボディーの雌ねじに締め込むと、ガイド面が雌ねじの前方及び背後にそれぞれ形成された内側の円筒形ガイド面に係合して、ルーズトップを安定に固定し、特に半径方向の応力を受けたときにそれが曲がることを防ぐようになる。ある関連した工具では、ねじ接合部は円錐形のねじを有する。このねじ接合部の特性は、一方のねじの頂部が他方のねじの底部と面接触してルーズトップを固定しそれが曲がることを防ぐことである。理論上は、協力動作するガイド面の数を減らすことができるならこれは魅力的なアイデアである。しかし、実際には、連続生産が少なくとも経済的に現実的であるためには、二つの工具パーツの製造に高い寸法精度が要求される。ある関連した切削工具では、ルーズトップはピンの雄ねじに隣接して単一の円錐形ガイド面を含む。
【0008】
従来知られているすべての切削工具用のねじ接合部に共通していることは、ねじがルーズトップを軸方向に動かす力は、ねじ込むとき(ねじが引く形で働く)と外すとき(ねじが圧す形で働く)で同じ大きさであり、あまり強力に締めることで過重な負荷がかかるとねじが変形する可能性があるということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、着脱可能に結合された二つのパーツの間でねじ接合部を使用する上記の関連した切削工具の問題を解決して改良された工具を提供する。したがって、ねじのねじ山の耐久性を損なうことなく大きな締め付け力を発生する能力に関して改善された性質を有するねじ接合部を含む工具が提供される。言い換えると、雄ねじの引込フランクが雌ねじに大きな引っ張り力を伝達でき、しかもねじのねじ山への損傷を回避できるように個別ねじのねじ山の材料の利用を最適化した工具ねじ接合部が提供される。さらに、工具の二つのパーツの迅速かつ簡単な結合と分解をそれぞれ可能にするねじ接合部を含む工具が提供される。ある特定の様態では、基本ボディーとルーズトップを二つのパーツとする回転式工具であって、ルーズトップを基本ボディーに安定して固定することができ、それにもかかわらず迅速かつ簡単に交換することが可能な工具が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態のある様態によれば、切り屑除去加工のための工具が提供される。この工具は、共通の中心軸に沿って配向された第一及び第二のパーツと、第一及び第二のパーツを着脱可能に結合するねじ接合部を含む。ねじ接合部は、第一のパーツの中空スペースの開口部に配置された雌ねじ、第二のパーツの雄状ピンの自由端に配置された雄ねじを含む。個々のねじは、頂部とつるまき状の底部を有する溝部を画成する二つのフランクによって規定される輪郭形状を有するつるまき状のねじ山を有する。雄ねじのねじ山の第一のフランクはピンの自由端と反対方向に向き、雌ねじのねじ山の第一のフランクは中空スペースの開口部と反対方向に向き、ピンを中空スペースにねじ込むときに互いに圧接する。雄ねじのねじ山の第二のフランクはピンの自由端の方向に向き、雌ねじのねじ山の第二のフランクは中空スペースの開口部の方向に向き、ピンを中空スペースからねじを回して引き出すときに互いに圧接する。雄ねじと雌ねじのねじ山の第一のフランクは中心軸に対して第一の角度で傾斜し、それは第二のフランクが中心軸に対して傾斜する第二の角度よりも小さい。
【0011】
本発明の実施形態の別の様態によれば、切り屑除去加工のための工具のパーツが提供される。このパーツは、中心軸に沿って伸びる雄状のピンの自由端に隣接して配置された雄ねじを含む。雄ねじは、つるまき状のねじ山を含み、それは周縁の頂部と一対の対向するフランクを有し、それらが底部を有するつるまき状の溝部を画定する。一対の対向するフランクの第一のものはピンの自由端の方向に向き、中心軸に対して第一の角度で傾斜し、それは一対の対向するフランクの第二のものが中心軸に対して傾斜する第二の角度よりも小さい。
【0012】
本発明の実施形態のさらに別の様態によれば、共通の中心軸に沿って第一及び第二のパーツを着脱可能に互いに結合するねじ接合部が提供される。第一のパーツは中空スペースの開口部を規定し、第二のパーツは自由端まで伸びる雄状のピンを含む。ねじ接合部は第一のパーツの中空スペースに配置された雌ねじ、及び第二のパーツの雄状ピンに配置された雄ねじを含む。雌ねじは、雌つるまき状ねじ山を含み、それは第一の周縁頂部の対向側面に配置された雌つるまき状ねじ山の第一及び第二のフランクによって規定される第一の輪郭形状を有し、それが第一の底部を有する雌つるまき状溝部を画定している。雌つるまき状ねじ山の第一のフランクは中空スペースの開口部と反対方向に向き、雌つるまき状ねじ山の第二のフランクは中空スペースの開口部の方向に向いている。雄ねじは、雄つるまき状ねじ山を含み、それは第二の周縁頂部の対向側面に配置された雄つるまき状ねじ山の第一及び第二のフランクによって規定される第二の輪郭形状を有し、それが第二の底部を有する雄つるまき状溝部を画定している。雄つるまき状ねじ山の第一のフランクは雄状ピンの自由端と反対方向に向き、雄つるまき状ねじ山の第二のフランクは雄状ピンの自由端の方向に向いている。雄つるまき状ねじ山の第一のフランクと雌つるまき状ねじ山の第一のフランクはピンを中空スペースにねじ込むときに互いに圧接し、雄つるまき状ねじ山の第二のフランクと雌つるまき状ねじ山の第二のフランクはピンを中空スペースからねじを回して引き出すときに互いに圧接する。雄ねじと雌ねじのねじ山の第一のフランクは中心軸に対して第一の角度で傾斜し、雄ねじと雌ねじのねじ山の第二のフランクは中心軸に対して第二の角度で傾斜し、これは第一の角度よりも大きい。
【0013】
本発明の実施形態の別の様態によれば、異なるフランクを含むねじ接合部の二つの協力動作するねじ山が形成される。特に、それぞれのねじ山の第一のフランクはねじ込むことに関連して引込ように作用し、それに与えられるフランク角度は、ねじを回して引き出すことに関連して圧接するように作用する第二のフランクのフランク角度よりも小さい。このようにして、個々のねじ山は、押圧フランクの内側区域にそれに比例して大きな量の物質(余分物質)を獲得する、すなわち、ねじ山は押圧フランクの区域が強化される。したがって、ねじ込むときにねじ山に加わる最終的な引っ張り力は強化する割増物質に吸収されて分布する。有利な結果として、圧縮力に比べて大きな引っ張り力をねじ山に加えてもねじ山の損傷を回避できる。
【0014】
本明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を図示するものであり、上述した一般的な記載及び以下の詳細な記載と合わせて本発明の特徴を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】切削工具のある実施形態に係わるシャンクエンド・フライスの形で二つのパーツを示す一部切断斜視図である。
図2図1に示された切削工具に含まれる、部分切断された基本ボディーから間隔をあけたルーズトップ示す分解斜視図である。
図3】ルーズトップに含まれる、雌ねじが設けられた基本ボディーの中空スペースに雄ねじが部分的に挿入されているピンを示す一部切断側面図である。
図4】締め付けられて雄ねじが基本ボディーの雌ねじと完全に係合しているルーズトップを示す同様の側面図である。
図5】ルーズトップだけの側面図である。
図6】雌ねじの輪郭形状を示す基本ボディーの一部を通る拡大縦断面図である。
図7】雄ねじの輪郭形状を示すルーズトップのピンの一部を通る拡大縦断面図である。
図8】雄ねじに含まれるいくつかのねじ山を示す別の拡大縦断面図である。
図9】ねじ込むときの雄ねじと雌ねじの協力動作を示す縦断面図である。
図10】ねじを回して引き出すときの雄ねじと雌ねじの協力動作を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図2は、例えば、金属ワークピースの切り屑除去加工のための工具を示す。工具は、二つのパーツ、例えば、基本ボディー1といわゆるルーズトップ2をフライス・ボディーの形で含み、それらはねじ接合部によって着脱可能に結合される。図示されているように、基本ボディー1は長く細い形状を有し、前端3と後端4を含む。基本ボディー1の形は、回転対称であり、例えば基本ボディー1の外側は円筒面5,並びに円錐面6を含む。中心の貫通孔7を含むことによって基本ボディー1は管状にすることもできるが(図2を参照)、基本ボディーはむく(solid)であってもよい。
【0017】
ルーズトップ2は、フロントヘッド8とリアピン9を含む。雄ねじ10がリアピン9に形成され、基本ボディー1の前端3に開口する中空スペース12の雌ねじ11と協力して動作するように配置されている。この開口部は、平面であってもよいリング状のショルダー面13によって囲まれている。ルーズトップのヘッド8には、いくつかの切れ刃14,15が形成されている。ある切れ刃15は、つるまき状で仮想的な回転対称な包絡面に沿って伸び、別の切れ刃14は真直でフロントヘッド8の端面に位置している。
【0018】
図5に最も良く見られるように、ヘッド8は後方のリング状の接触面8aを有し、それがショルダー面13に落ち着く。さらに、二つの平担面8bもキーグリップとするためにフロントヘッド8に形成される。
【0019】
ルーズトップ2と基本ボディー1は共通の中心軸Cに沿って配向され、組み立てられたアセンブリは矢印Pの方向に回転させることができる(図1と2参照)。
【0020】
図示した実施形態の例では、二つのねじ10,11は円錐の基本形を有する。さらに、一対の協力動作するガイド面16,17がそれぞれのねじの前方に位置し、回転対称な形を有する。例えば、ガイド面16,17は円筒形で互いに精密に嵌合するようになっている。
【0021】
この例では、協力動作するガイド面18,19も回転対称な形を有し、例えば円筒形であり、それぞれのねじの背後に配置される。面18,19も互いに対して比較的精密に嵌合するが、この場合は寸法精度の要求は前方ガイド面16,17の場合より多少ゆるくなっている。
【0022】
あるいはまた、前方ガイド面16,17の嵌合は、面16の直径がガイド面17の内径よりわずかに大きい圧入であることが好適である。
【0023】
ねじ10,11が円筒形でなく円錐の基本形を有する利点は、図3に見られるように、ねじを互いに係合させる前に雄ねじ10を雌ねじ11に相当な距離だけ挿入することができるという点である。これは、雄ねじ10を雌ねじ11に最終的に締め付けるためにほんの一回又は数回ねじをまわすだけでよいということを意味する。すなわち、図3に見られる状態から、ルーズトップ2を約1.5回まわすだけで、図4に見られるような最終的に締め付けられた状態にすることができる。
【0024】
次に図6〜10に眼を転ずると、図6は雌ねじ11の設計を示し、図7は雄ねじ10の設計を示している。図7では、雄ねじ10の略円錐状(又は切頭円錐状)形態を規定する仮想的な母線20が、円錐角とも呼ばれる角度γで延びている。図示のように、角度γはほぼ6゜である。つるまき状ねじ山10とも呼ばれるねじ10は、頂部21と二つのフランク22,23によって規定される輪郭形状を有し、それらが底部25を有する同様のつるまき状溝部24を画定している。
【0025】
同様の仕方で、雌ねじはねじ山11を含み、頂部21aと二つのフランク22a,23aによって規定される輪郭形状を有し、それらが底部25aを有する同様のつるまき状溝部24aを画定している。雄ねじ山10の第一のフランク22はピン9の自由端9aの反対方向に向き、雄ねじ10を雌ねじ11にねじ込むとき雌ねじ山11の協力動作する第一のフランク22aに圧接する。フランク22aは中空スペース12の開口部の反対方向に向いている。ねじをまわして引き出すとき、雄ねじ山10の第二のフランク23は雌ねじ山11の協力動作する第二のフランク23aに圧接する。第一のフランク22,22aはねじ込むことに関連して引き込むように作用するので、これらは“引込フランク”とも呼ばれる。他方、フランク23,23aは“押圧フランク”とも呼ばれる。
【0026】
個別ねじ山の引込フランク22,22aのそれぞれは、中心軸Cに対して角度αで傾斜しており、この角度αは、中心軸Cに対して押圧フランク23,23aがなす角度βよりも小さい。
【0027】
図示された実施形態の例では、角度αはほぼ108゜であり、角度βはほぼ129゜である。しかし、角度α、βはこれらの値に限られない。特に、雄ねじ山10の引込フランク22のフランク角度αは小さくとも100゜、大きくても120゜である。好適には、角度αは104〜115゜という範囲にある。対応する雌ねじ山11の引込フランク22aのフランク角度αは雄ねじ山10の引込フランク22のフランク角度αと、その具体的な値に関わりなく対応しなければならない。したがって、ねじ込むときの引込フランク22,22aの間で面接触が保証される。
【0028】
押圧フランク23,23aがなすフランク角度βは小さくとも角度αと等しい大きさであり、上記の角度129゜から外れることがある。実際には、角度βは小さくとも115゜(角度αは115゜よりも小さいとして)であり、150゜を超えない。好適には、角度βは120〜140゜という範囲、又は124〜134゜という範囲にある。実際には、角度βは角度αより少なくとも15゜大きい。
【0029】
押圧フランク23,23aの間の面接触の必要性は、引込フランク22,22aの間の面接触の必要性よりも少ないので、押圧フランク23,23aがなすフランク角βは異なってもよい。特に、押圧フランク23aのフランク角度は、押圧フランク23のフランク角度よりも多少大きくなってもよい。
【0030】
次に図8を参照すると、これは雄ねじ山10の設計をさらに詳細に示している。図8の断面図、並びに図7の断面図は、図5における軸方向の切断面A−Aで見たものである。
【0031】
図8で最も良く見られるように、ねじ山10の頂部21は仮想的な円錐面を規定する母線20の一部を成す直線の長さによって決まる所定の幅を有する。頂部表面21は、凸な移行表面26,27を介してフランク22,23に移行する。同様な仕方で、フランク22,23は丸い、この場合は凹である移行表面28,29を介して溝部の底部25に移行する。この例では、溝部の底部25が母線20と平行な母線30に接していることによって溝部24は長さ全体にわたって同じ深さを有する。
【0032】
破線31によって仮想的なねじ山の輪郭のフランクが示されており、これは対称であり、フランク角度はねじ山の両側で等しい大きさであると考えられる。押圧フランク23を引込フランク22よりも大きなフランク角度で形成することによって、仮想的なフランク31に比べて実際のフランク23には余分な材料が形成され、その結果押圧フランク23の近傍が補強されたことになる。ねじ込みに関連してねじ山10に作用する合力をRと表すと、これは軸方向成分Kaと半径方向成分Krのベクトル和である。押圧フランク23に余分な補強材料があることによって、ねじ山が通常の対称な形である場合、すなわち仮想的なフランク31を有する場合に比べて、力Rが吸収されるとともに、かなり広い面積に沿って分布することができる。
【0033】
一般に、雌ねじ11の溝部24aは、雄ねじ山10の輪郭に比べて大きな輪郭を有し、ねじの間に遊びが生ずる。これは図9図10で最も良く見られる。図9は、ねじの締め付けに関連してねじ接合部を示しており、図10は、ねじの取り外しに関連してねじ接合部を示している。どちらの場合も、個々のねじ山の頂部21,21a及びそれぞれのねじ山が突出する溝部の底部25,25aの間に遊びがある。図9によるねじ込みのとき、雄ねじ山10の引込フランク22は雌ねじ山11の引込フランク22aに圧接し、その間、押圧フランク23,23aは互いに接触していない。図10によるまわして引き出す動作では、その逆の関係が成立する、すなわち、雄ねじ山10の押圧フランク23は、雌ねじ山11の押圧フランク23aに圧接し、その間、引込フランク22,22aは互いに接触していない。
【0034】
上述のように二つのねじ山を非対称な輪郭で形成することによって、引っ張り力を(それが雄ねじ山10に作用する力であるか、雌ねじ山11に働く反作用力であるかどうかに関わりなく)吸収しなければならないねじ山の側面に補強が施される。したがって、ねじ接合部は、ルーズトップ2をまわして引き出すときに必要な圧縮力よりも大きな引っ張り力に抗することができる。言い換えると、ねじ接合部の機能が最適化される、すなわち、ルーズトップ2の安定な固定が大きな固定力によって行われ、それはねじ山を損傷することを回避し、まわして引き出すための大きな圧縮力よりも重要である。ここで、一般にまわして引き出すことは、ねじ込むときより、特にねじが円錐形の基本形を有するとき、ゆるやかな力で行われるということを指摘しておかなければならない。上述した実施形態の例によるねじ接合部の別の利点は、それが少ない回数のねじ回転で(実際には、3乃至5回転で)実行でき、締め付けることとゆるめることが、それぞれ、短い、限られた回転運動で(1又は2回転で)実行できるということである。
【0035】
この実施形態の例では、工具はエンドミルの形態であり、ルーズトップ2は全体を単一の硬い材料、例えば超硬合金から作られるが、基本ボディー1の少なくとも前方部分は比較的柔らかい材料、例えば鋼、から製造される。
【0036】
あるいはまた、ユニークなねじ接合部を用いて切削工具に含まれる他のパーツ、すなわち、単なるルーズトップと回転可能な基本ボディー以外のパーツ、を着脱可能に結合することもできる。上述のように雄ねじは超硬合金を含み、雌ねじの材料は鋼を含むようにすることも、あるいはまた、二つのねじを同じ又は同様の材料、例えば鋼、で製造することもできる。また協力して動作する二つのねじにいろいろな仕方で変更を加えることができる。例えば、ねじが上述のように円錐の基本形をもつようにしても、あるいはまた、ねじの基本形を円筒形にすることもできる。さらに、ねじが円錐形の場合、円錐角は6゜から上方に、並びに下方に変えることができる。さらに、ねじの巻き数及びねじのピッチを、それぞれ変えることができる。また、二つのねじの前方及び/又は背後のガイド面を、例としてあげたエンドミルの場合であっても、省略することができる。さらに、雄ねじと雌ねじの間に必要な遊びも、例えばねじ接合部を含む工具のタイプによって、変えることができる。さらに、ねじのスタートの数も変えることができる。
【0037】
すなわち、回転工具、例えばエンドミルにおいては、工具パーツの間のトルクの伝達が雄ねじを雌ねじにねじ込むような仕方でねじが設けられているときには、ねじは自動ロックするように作られる。
【0038】
本発明はいくつかの好ましい実施形態に関して開示されたが、添付のクレームとその同等物によって規定される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、記載された実施形態には多くの改良、変更、及び変化が可能である。したがって、本発明は説明された実施形態に限られるものではなく、その完全な範囲は以下の特許請求の範囲によって定められるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 基本ボディ
2 ルーズトップ
10 雄ねじ
11 雌ねじ
21,21a 頂部
22,22a,23,23a フランク
24,24a 溝部
25,25a 底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10