(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860064
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】溶鉄及び鋼を製造する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C21B 13/12 20060101AFI20160202BHJP
C21B 11/10 20060101ALI20160202BHJP
C21C 5/28 20060101ALI20160202BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
C21B13/12
C21B11/10
C21C5/28 A
F27D17/00 104G
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-551980(P2013-551980)
(86)(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公表番号】特表2014-510193(P2014-510193A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】US2012020287
(87)【国際公開番号】WO2012102843
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年12月4日
(31)【優先権主張番号】12/931,277
(32)【優先日】2011年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513189889
【氏名又は名称】エナジー インディペンデンス オブ アメリカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン、アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ロービス、テリー・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー、リチャード・オーウェン
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−129914(JP,A)
【文献】
特表2000−515931(JP,A)
【文献】
特表2004−538363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 11/00−13/14
C21C 5/00− 5/56
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼プロセスにおいて、効率を高め、コストを削減し、かつ汚染排出物を減少させるための方法であって、
大気に対して密閉された加圧チャンバ内で、還元剤を用いて粉鉄鉱石または鉄鉱石精鉱から金属化率を高めた鉄及び炭素からなる鉄炭素中間物を生成し、同時に揮発性物質を生成するステップと、
前記中間物を製鉄炉へ搬送するステップと、
前記製鉄炉内で前記中間物を溶融して溶鉄を製造するステップと、
前記溶鉄を、製鉄及び製鋼の2つの機能を果たすことができる一体化された装置を構成すべく前記製鉄炉に対して構造的連結部を介して結合された製鋼炉内で、鋼に転換するステップとを統合的に含み、
前記製鉄炉が、前記中間物を溶融するプロセス中に2次ガスを放出する溶融浴が組み込まれた溝形誘導炉であり、
前記製鉄炉が回動可能であり、前記製鉄炉を一方向に回動させると所定量の溶鉄が前記製鋼炉に直接注がれるように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記還元剤を用いて粉鉄鉱石または鉄鉱石精鉱から金属化率を高めた鉄炭素中間物を生成する前記ステップにおいて、前記還元剤が炭素質材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大気に対して密閉された加圧チャンバが、炭素系物質と鉄鉱石または鉄鉱石精鉱とからなる環状体によって囲繞される炭素質材料製のコアを含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コアが、前記加圧チャンバ内に酸素含有ガスを導入するためのガス注入装置を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記製鉄炉内で前記中間物を溶融して溶鉄を製造する前記ステップにおいて、前記加圧チャンバ内においてシステム圧力を維持しながら、前記中間物を所定のシーケンスを以て前記製鉄炉に供給することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記製鋼炉内で前記溶鉄を鋼に転換する前記ステップにおいて、前記製鋼炉が塩基性酸素製鋼炉であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
熱損失を最小限に抑え、かつ製鋼効率を高めるために、所定量の溶鉄が製鉄炉から前記塩基性酸素製鋼炉内に直接注がれるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記製鉄炉を、一方向に回動させると溶鉄が前記塩基性酸素製鋼炉に直接注がれ、前記方向とは反対の方向に回動させるとスラグが排出されるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記揮発性物質を分解しかつ脱硫することによって、クリーンな合成ガスを発生させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記合成ガスから水銀を除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記製鉄炉の下流に前記製鋼炉が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記製鋼炉内で前記溶鉄を鋼に転換する前記ステップにおいて、前記製鋼炉が電気アーク製鋼炉であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記環状体が2つの方向から加熱されるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項14】
金属酸化物を炭素質材料とともに熱処理することによって溶融金属を生成するための装置であって、
大気に対して密閉され、装入端部及び取出端部を有し、かつ押しラムを備えた金属化リアクタと、
鉱石及び炭素質材料からなる鉄炭素中間物を生成するべく前記リアクタ内に酸素含有ガスを注入するように構成された注入装置と、
前記中間物を溶融し、2次ガスを発生させるべく構成された製鉄炉であって、前記中間物を溶融するプロセス中に2次ガスを放出する溶融浴が組み込まれた溝形誘導炉である、該製鉄炉と、
前記リアクタの前記取出端部の下流に配置された、前記製鉄炉内への前記中間物の供給を制御するためのバルブ機構と、
前記中間物を溶融金属に転換するのを補助するべく前記製鉄炉における熱エネルギー投入量を増加させるために、前記製鉄炉内の前記2次ガスを燃焼させるべく構成されたバーナ手段と、
前記製鉄炉に物理的に結合された、鋼を製造するための製鋼炉とを含み、
前記製鉄炉を前記製鋼炉に対して構造的連結部を介して結合させることにより、製鉄及び製鋼の2つの機能を果たすことができる一体化された装置が形成されるようにし、
前記製鉄炉が回動可能であり、前記製鉄炉を一方向に回動させると所定量の溶鉄が前記製鋼炉に直接注がれるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
前記製鉄炉からCO2を含有する燃焼生成物を取り出すべく構成された吸引手段と、
前記燃焼生成物を清浄化し、前記CO2を2COに転換するためのガス清浄システムと、
前記2COを有用な生成物に転換する手段とを更に含むことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼の製造に関するものであり、2002年6月25日に発行された本願出願人の米国特許第6,409,790 B1号(以下、「参照特許」と呼ぶ。)の改良発明である。
【0002】
この参照特許には、炭素質ベースの冶金を行うための方法及び装置が開示されており、具体的に溶鉄を製造する場合に2つの別個のステップが含まれている。第1のステップは、水平管型リアクタ内で鉄及び炭素からなる鉄炭素生成物を形成するステップであり、ここで、生成された高温の鉄炭素生成物(中間物)が垂直リアクタ内に送り出される間、水平リアクタの取出端部から挿入された水平ランスから酸素含有ガスが注入される。第2のステップは、垂直ランスを用いて酸素含有ガスを注入することによって、「メルタ/ホモジナイザ」と呼ばれる垂直リアクタ内で鉄炭素生成物を溶融し、該鉄炭素生成物を、保持リザーバ内へ供給される溶鉄に転換するステップである。
【0003】
具体的には、本発明は、参照特許に加えられた改良点に関連し、高炉内で製造される溶鉄(鉄鋼業界において「溶銑」としてよく知られている)に匹敵する溶鉄の製造に関連する。
【背景技術】
【0004】
鉄鋼業界は1998年3月に「鉄鋼産業技術ロードマップ(Steel Industry Technology Roadmap)」と題された包括的な出版物を発行しており、その11ページには以下の記述がある。
【0005】
鉄製錬分野における究極の目的は、石炭及び粉鉱石または精鉱から直接溶鉄を製造する石炭ベースのプロセスを開発することである。溶鉄は、脈石を含まず、顕熱を持ち続けるので、固体鉄よりも好ましい。石炭は、その豊富さ及び価格の低さのおかげで、コークスや天然ガスよりも明らかに好ましい。可能であれば、粉鉱石または精鉱を使用すると、造粒コストを削減することになる。これらの新しいプロセスは、高い製錬強度や生産性を有しているはずである。高生産性並びにコークス製造及び造粒の廃止は、資本コストを大幅に削減することになる。
【0006】
実質上、ロードマップの究極の目的は、幾つかのプラントを1つの効率的なプラントと置き換えることであったし、今尚そうである。本願出願人は、参照特許に開示されている主題が、石炭及び粉鉱石または精鉱を用いて直接溶鉄を製造するという究極の目的に対する解決策であると考えた。そこで、特許出願を行い、参照特許が発行された。
【0007】
上記の構想を実行に移すために、パイロットプラントを建設し、試験を開始した。数多くの問題が発見された。最も深刻な問題は、以下の通りであった。
【0008】
1つ目の問題。水冷型酸素注入ランスの銅製先端部におけるステンレス鋼製の外管(シース)の溶融が漏水を起こし、過熱蒸気による散発的な爆発が起こった。これにより、従業員は危険にさらされ、うち1名は重度のやけどを負って入院を余儀なくされた。ステンレス製シースの溶融を防止するために、銅製先端部のサイズを大きくする対策を講じた。しかし残念なことに、ランス先端部に過剰な付着物の蓄積が生じ、その結果、酸素の流れパターンが壊れてしまった。
【0009】
2つ目の問題。ランス先端部からの酸素含有ガスの一様な流れは、均一な生成物を生成するために最も重要であり、炭素約6%を含む金属化率約50%の鉄炭素中間物(鉄及び炭素からなる中間物)が、高炉仕様の炭素飽和溶鉄に転換するのに適している。ランス先端部に蓄積される付着物によって引き起こされる問題を挙げると、早過ぎる溶融、過酸化、低すぎる金属化率、完全に還元されていない供給材料などであった。
【0010】
3つ目の問題。水平リアクタ内で、特にその取出端部に向けて、水冷ランスからの冷却効果に起因する過度の熱損失が発生した。
【0011】
4つ目の問題。水平リアクタ自体の取出端部に付着物が残り、その結果、チャージャ(装入機)の押しラムによる水平リアクタの内容物の前進を妨げる物理的妨害が生じ、それ故に予定外のシャットダウンを余儀なくされた。
【0012】
5つ目の問題。水平金属化リアクタの下流及び保管場所の上流での付着物の蓄積は、ホモジナイザ/メルタが配置されることになる垂直部分においても認められ、シャットダウンが引き起こされ、付着物による詰まりを除くための棒で高温の付着物材料を突くためにアクセスを提供するための可動装置が必要となった。
【0013】
6つ目の問題。溶融炉に供給された、溶鉄よりも軽い鉄炭素中間物は、溶融浴において金属を含む溶液中に沈む代わりに、溶融浴の上に浮かんでとどまることになり、中間物がそのように浮かんでいることは、中間物から溶鉄への迅速かつ完全な転換の妨げになる。
【0014】
1つ目、2つ目及び3つ目の問題に対処するために、ランス先端部から水平金属化リアクタの取出端部まで到達する力強い噴流を作るべく酸素含有ガスの注入圧を上昇させるとともに、注入ランスが水平金属化リアクタのチャージャを介してコールドエンドから導入されるように、注入ランスを、ランス先端部が鉄鉱石及び灰の温度が初期融解温度を下回る場所に位置するように、再配置することを決定した。これにより、新しいチャージャの作製が必要となった。新しいチャージャにおいては、マンドレルの中心にランスを挿通する準備をし、マンドレルを貫通して配置されたランス及び押しラムを貫通して配置されたマンドレルで構成された構造体が得られた。
【0015】
4つ目の問題、すなわち金属化リアクタの取出端部での付着物の蓄積によって引き起こされる阻害に関連する問題に対処するために、最初のチャージャよりも構造的に頑強な新しいチャージャを作製し、さらに、上記阻害を克服するために、新しいチャージャの押す力を高めるための新しい制御装置を備えたブースタ油圧ポンプを付加することによって油圧を上昇させた。
【0016】
5つ目の問題に対処するために、金属化リアクタの下流及び保管場所の上流における付着物の蓄積を防止するべく、参照特許に記載されているホモジナイザ/メルタ(符号11)を完全に不要になること及び、メルタとしての機能及び溶鉄の保管場所としての機能をともに果たすように、詳細に後述するような特定の変更を加えて、アジャックス・マグネサーミック社(Ajax Magnethermic)製などの溝形誘導炉(induction channel furnace:ICF)内で、鉄及び炭素からなる鉄炭素中間物の溶融を行うことを決定した。
【0017】
溶融浴の上に浮かんでいる中間物の問題に対処するために、浮かんでいる中間物を高温浴面下に沈めるべく構成された黒鉛ブロックを備えた、垂直に振動する機械式ダンカ(dunker)を開発した。ここでは、中間物中の炭素が、水平金属化リアクタ内で反応しなかった鉄の未反応酸素、つまり、Fe
2O
3、Fe
3O
4、及びFeOの還元を完了する。
【0018】
いくつかの変更を加えることで、本願出願人は、上述の問題を克服し、容認可能な中間物を生成することに成功した。該中間物には、石炭から得られた炭素が、水平金属化リアクタ内において粉鉱石または精鉱から作られた金属化率を高めた鉄とともに一体的に埋め込まれている。
【0019】
さらに、2つの有用なガスが同時に製造される。1つのガスは水平金属化リアクタ内で鉄鉱石の金属化率を高める間に発生し、もう1つのガスは中間物を溶融する間に発生する。
【0020】
上記を要約すると、本願出願人は、実質的に、様々な比率の鉱石及び石炭を受け入れ、なおかつ、溶鉄に転換する(該溶鉄は後で低価格の鋼に転換される)のに非常に適した組成を有する中間物の生成を経て溶鉄を製造するように適合された方法及び装置を発明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の主目的は、上記の、1998年3月に発行された鉄鋼産業技術ロードマップに述べられている究極の目的にふさわしい低価格の石炭を用いて粉鉱石及び精鉱から直接溶鉄を製造することである。
【0022】
本発明の別の目的は、コークス及び鉄鉱石ペレットを用いて高炉内で溶鉄を製造する従来のプロセスよりも高い効率で、鉄鉱石と石炭との混合物を溶鉄に転換するために本発明を実行するための効率的な方法及び装置を提供することである。
【0023】
従って、本発明の別の目的は、コークス及び鉄鉱石ペレットを用いて高炉内で溶鉄を製造する従来のプロセスに比べて、熱損失を大きく減少させる方法及び装置を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、高炉内にペレット、焼結鉱及びコークスを供給し、高炉が今度は主たる二酸化炭素(CO
2)排出体となるような従来のプロセスに比べて、排出物を大きく減少させる方法及び装置を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、鉄及び炭素からなる鉄炭素中間物の反応を促進させかつ溝形誘導炉(ICF)内の溶銑浴中で構成物質と混ぜ合わせることによって、溶銑浴内で鉄炭素中間物の迅速な液化及び同化を生じさせるために、鉄炭素中間物をICF内の溶銑浴中に沈めるのを助けるダンキング(液体に浸ける)手段を提供することによって炉のライニングを保護しつつも、ICFをより効率的にすることである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、溝形誘導炉(ICF)を、製鋼炉(例えば、塩基性酸素製鋼炉(basic oxygen steelmaking furnace:BOF)や電気アーク製鋼炉(electric arc furnace:EAF))に対して物理的に統合することであるが、例として、以下の説明では、ICFとBOFとの統合を開示する。ここで、ICFは、鉄及び炭素の中間物を溶銑に転換するべく構成されているが、BOFは、溶銑及びスクラップを鋼に転換する。ICF及びBOFを互いに構造的に結合させることにより、資本コスト及び操業コストを削減し、効率を高め、排出物を最小限に抑えるようなハイブリッド式の二重目的の(製鉄及び製鋼の2つの機能を果たすことができる)構造が得られる。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、クレーンの使用を必要とすることなく、ICF及びBOFの両炉を半径方向に回動させることによって、直接ICFからBOFに溶銑を直接注ぐことができるように、ICFとBOFとを物理的に相互接続することである。
【0028】
本発明のまた別の目的は、改良された製鉄方法が必要とされる状況において鋼を製造せずに溶銑のみを製造する場合に、ICFそれ自体を提供することである。
【0029】
従って、本発明の別の目的は、二酸化炭素(CO
2)、温室効果ガスを、肥料などの有用な生成物に転換することができる方法及び装置を提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から見えてくるであろう。添付の図面を参照すると、本方法、すなわち、鉄及び炭素からなる鉄炭素中間物を生成し、それを溶鉄に転換し、該溶鉄を後で鋼に転換する方法を実行するための特定の装置構造が説明されている。本発明は他の非鉄鉱に適用することもできるので、本明細書に開示されている方法及び装置は鉄鉱の加工のみに限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】石炭及び粉鉱石または精鉱から直接溶鉄を製造するためのプラント。
【
図2A】金属化率を高めた鉄に炭素が物理的に埋め込まれている実際の鉄炭素中間物。
【
図3】中間物を生成する一連の金属化リアクタの斜視図。
【
図4】中間物搬送システムを備えた誘導溶融炉の部分拡大図。
【
図5】ガスの清浄化及び、CO
2含有ガスからの肥料(オキサミド)の同時製造を行う本発明のプラントの側面図。
【
図6】塩基性酸素転炉(BOF)としてよく知られている製鋼炉と溝形誘導炉(ICF)としてよく知られている製鉄炉との統合を示す図。
【
図7】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図8】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図9】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図10】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図11】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図12】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図13】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図14】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図15】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図16】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図17】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【
図18】ICF内で製造された溶鉄及びBOF内で製造された鋼を用いて同時に行われる、溶鉄を製造しかつそれを鋼に転換する一連の操業ステップの1つ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明について詳細に説明する前に、本発明は、他の実施形態を用いることによっても実施することができるので、添付の図面に示されている部品の詳細または配置に限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書に含まれる専門用語は説明のためのものであり、制限的なものではないことも理解されたい。
【0034】
図1は、本発明のプラントを概念的に示している。このプラントは、2つの一連の装置群(それぞれ符号20(a)及び20(b)で示されている)であって各々が幾つかの全く同じ金属化リアクタ(そのうちの1つが符号21で示されている)を含むものと、2つの溶融炉(それぞれ符号A及びBが付されている)と、金属化リアクタ内で生成された高温の鉄炭素中間物を2つの溶融炉A及びBへ供給するコンベヤで構成されている。
【0035】
本発明のプラントをより詳細に説明するにあたり、2つの一連の装置群及び2つの炉は全く同じであるので、本願出願人は、一連の装置群20(a)及び炉Aについてのみ説明する。
【0036】
一連の装置群の真下には、2つのコンベヤ(それぞれ符号22(a)及び23(a)で示されている)がそれぞれ配置されており、コンベヤ22(a)は固定されており、コンベヤ23(a)はシャトルコンベヤとして搬送可能であるように構成されている。冗長性を提供するために、シャトルコンベヤ23(a)は、炉Aに搬送可能であるのみならず、炉Bの端部へも搬送可能であるように構成されている。シャトルコンベヤ23(a)が高温の鉄炭素中間物を炉Aのみならず炉Bへもその長さ方向に沿って分配することができるように、炉Aは、炉の長さ方向に沿って等間隔で配置された3つの全く同じ供給開口部(符号24で示されている)を有している。シャトルコンベヤ23(a)の先端には、炉Aまたは炉Bへ供給される鉄炭素中間物を溶融浴に沈めるためのダンカ(符号25で示されている)が配置されている。シャトルコンベヤ23(b)もまた、炉A及び炉Bの両炉への供給を行うことができることに留意されたい。
【0037】
図2を参照すると、鉄炭素金属化リアクタ21の斜視図及び断面図が示されており、鉄炭素金属化リアクタ21は、石炭を供給するべく構成されたフィードホッパ26と、鉱石及び石炭の混合物を供給するべく構成されたフィードホッパ27とを備えている。符号28はチャージャを表しており、チャージャ28はマンドレル29及び主ラム(プッシャ)30で構成され、リアクタ21の装入端部においてマンドレル29の中心にランス31が挿通されている。石炭コア(符号32で示されている)は図中において黒い色で示されている物質であり、ランス31が挿通されており、かつ鉄と石炭との混合物からなる環状体33によって完全に囲繞される。リアクタ21の取出端部(符号34が付されている)は、高温放射チャンバで構成され、かつ始動バーナ取付用の入口ポート35を有している。コンベヤ22(a)は幾つかの金属化リアクタから鉄炭素中間物を受け取るので、金属化リアクタ21から主コンベヤ22(a)(
図1を参照)への鉄炭素中間物の供給を所定のシーケンスを以て制御するために、サージ抑制容器(供給を平滑化するための供給制御装置)としての役割を果たすスライドゲート(符号35(a)で示されている)を取出チャンバ34の下流に設けてある。金属化リアクタ21は、断熱材及び耐火材料でライニングされており、該耐火物には、互いに対向する方向などの2つの方向から環状体33を加熱するための熱エネルギーを供給するために、リアクタ21内に熱を放射(輻射)するための加熱煙道(heating flue)が複数組み込まれていることに留意されたい。加熱煙道は、当分野でよく使用されているので図に示していないが、常に鋼製のシェル(符号39で示されている)で覆われている。
図2Aは、鉄炭素中間物の実際の構造を示しており、石炭由来の炭素が鉱石由来の鉄中に点在していることがはっきりと示されている。このような中間物は溶鉄を製造するための原料であり、中間物を溶融することによって溶鉄が製造される。石炭を用いて鉄鉱石の金属化率を高める間、水素(H
2)リッチガスが生成される。このガスは、エネルギー源として極めて有用であり、出口ポート37から放出される。
【0038】
図3を参照すると、一連の装置群20(a)が、フィードホッパ26及び27への供給材料の分配コンベヤを表す符号40を除いてその大部分が
図1及び
図2で説明されている部品とともに示されている。他の機器については、以下の通りである。供給材料を地表面から引き上げるためのスキップホイスト(符号41で示されている)と、炉排気吸引ダクト(符号42で示されている)と、排気装置(符号43で示されている)と、燃焼排ガス注入マニホールド(符号44で示されている)と、中間物の供給中の粉塵排出を最小限に抑えるために炉A内へ供給される前に鉄炭素中間物からスクリーン滓を分離する分粒スクリーン(符号45で示されている)。
【0039】
図4を参照すると、一連の装置群20(a)の一部分と、溝形誘導炉Aと、炉Bの一部分とが示されている。
図1〜
図3で説明したものに加えて、内部を示すために前面部を取り除いた炉Aが示されており、炉Aの左側には黒鉛浸漬ブロック(符号46で示されている)がある。他の部品には、溶融浴72内に沈められている溶銑の上に浮かんでいる鉄炭素中間物を押し下げるダンカ25の上部構成要素と、尚も炉A内から連続的に燃焼ガスを取り出しながら炉の回動を可能にするスイベルジョイント47と、炉床48とが含まれ、該炉床の上方においては、酸化鉄から得られる酸素と、沈められている鉄炭素中間物中に含まれる炭素とを反応させることによって放出されるCOを燃焼させる。
【0040】
図5を参照すると、プラントの側面図が示されている。ここでは、コンベヤ22(a)及びコンベヤ23(a)が、垂直パイプ(stand pipe)(符号49で示されている)に置き換えられている。その下流に設けられたバルブ50及び51によって、溝形誘導炉A内への直接的な鉄炭素中間物の供給が制御され、炉Aから垂直パイプ49の底部に向けて燃焼排ガス(N
2+CO
2)が排出される。配管系(符号52で示されている)が熱交換器53に連結されており、熱交換器53は、水銀を含む比較的低温のガスを清浄化ベッド54(a)または清浄化ベッド54(b)へ供給する。これら2つの清浄化ベッドは、交互に使用されるものであり、上記ガスから水銀を抽出するための活性炭が含まれている。熱交換器53の下流においては、脱硫装置55が、脱硫装置55の上流に配置されたソーベント再生器56とともに、高温ガス清浄部の下流部分を形成している。脱硫装置55の下流には、一酸化炭素(CO)をシアンに転換するコンバータとして働く2つのリアクタ59(a)及び59(b)が配置されており、ソーベント再生器の下流には、硫黄回収システム(符号57で示されている)が配置されている。硫黄回収システム57は、硫黄を、市場で商品として売ることができる(市場性のある)元素の形態で回収する働きをする。脱硫ガスは、第2の熱交換器(符号58で示されている)によって成分調整される。リアクタ59(a)及び59(b)は、交互にシアンの発生器と触媒の再生器になる。リアクタ59(a)及び59(b)の下流には、液化機(符号60で示されている)が設けられている。液化機の下流には、セパレータ61及びポンプ62が設けられている。ポンプ62によりシアンがカラム63へ押し上げられ、カラム63内ではシアンを含水させることで緩効性肥料オキサミドが形成される。フィルタープレス65の上流には沈殿槽64が、下流には乾燥機66がそれぞれ配置されている。市場性のある肥料としての最終製品は、スタッカ67によって保管場所68まで運ばれる。
【0041】
図6は、BOF及びICF(両炉とも本明細書の「発明が解決しようとする課題」の項において言及されている)の統合による製鋼と製鉄との統合を示している。これにより、以下の3つのステップ、すなわち、
・石炭を用いて、粉鉱石または精鉱からなる鉄鉱石の金属化率を高め、かつ中間物を形成するステップと、
・上記中間物を溶融し、溶鉄を製造するステップと、
・上記溶鉄に酸素を吹き込み、鋼を製造するステップと
を、1つの、低価格の、効率的な、物理的に統合された方法にまとめることが実行可能である。
【0042】
金属化及び溶融の方法については既に詳細に説明したので、
図7ないし
図18においては、鉄及び炭素からなる鉄炭素中間物を供給するステップと、該中間物を溶融して溶鉄にするステップと、製鋼ステップとについて説明する。
【0043】
図7は、ヒュームをフード70内に回収しつつ、垂直ランス69によってBOF内に酸素を吹き込んで鉄を鋼に転換する間に、ICF内へ鉄炭素中間物を供給するシャトルコンベヤ23(a)またはコンベヤ23(b)を、溶融浴上に浮かんでいる材料(符号71で示されている)とともに示している。ホイスト(符号73で示されている)は、ランス69を昇降させる働きをする。
【0044】
図8は、溶融浴の上に浮かんでいる中間物の上方に黒鉛ブロック46を配置するダンカ25を除いて、
図7と同じである。
【0045】
図9は、浮かんでいる中間物を黒鉛ブロック46によって浴72内に沈めた後の様子を示している。
【0046】
図10は、ICFに傾斜姿勢をとらせ、ストッパロッド(符号74で示されている)を用いてICFからの溶鉄の流出を防止しながら、BOFから鍋75内にスラグを注入する様子を示している。
図11は、スライドゲート77を用いてBOFの底部からレードル(取鍋)76内へ鋼をタッピング(出鋼)する様子を示している。BOFのスラギング及びタッピングは、他の構造によって達成することもできることに留意されたい。
【0047】
図12は、BOF内の熱がタッピングされ、タッピングホール密閉材料78がBOFのタップホール(符号79で示されている)に落とされる様子を示している。
図13は、タップホール79を塞ぐプロセスにおける密閉材料78を示しており、
図14は、密閉されたタップホール79を示している。
【0048】
図15は、ICFを反時計回り方向に傾けることによって、中間物の溶融によって生じかつICFからあふれ出ているスラグ(符号80で示されている)を用いてICFのスラギングを行う様子を示している。
図16は、シュート82によってBOFにスクラップ(符号81で示されている)を装入することができるように、ICFを時計回り方向に傾動させる様子を示している。このとき、ストッパロッド74は下降位置にあり、スクラップの装入中にICFからBOF内へ溶銑が流出しないようにしている。
図17は、ICF及びBOFが傾斜姿勢をとっている間、ストッパロッド74は上昇位置にあり、溶鉄(符号83で示されている)はICFからBOF内へ流出し、所定量の溶鉄をスクラップ81の上にディスペンスすることができることを示している。この時点で、ICFを傾斜姿勢から立位まで回動させ、フード70をBOFの口の上まで回動させ、酸素ランスホイスト73をBOF内へ下げてランス69から酸素を吹き込むことによって溶鉄から鋼への転換を開始する。それと同時に、コンベヤ23(a)または(b)をICFの装入孔24の上に配置する。コンベヤ23(a)または(b)によって鉄炭素中間物を供給する同じ機能を説明する
図7と同じ
図18に示されているように、溶鉄及びスクラップを鋼に転換している間に、鉄炭素中間物を、溶融するためにICF内へ供給し続け、ICF内で鉄炭素中間物を溶融して溶鉄にして浴72を形成し、溶鉄及びスクラップを鋼に転換する。それと同時に、包括的に、
図1ないし
図5に示されかつ説明されているように、金属化リアクタ21内で石炭を用いて粉鉄鉱石または精鉱の金属化率を高める。
【0049】
非鉄金属への本発明の適用に関しては、本明細書に開示されている本発明の変形形態が可能であるが、本発明は、本明細書に開示されている趣旨から逸脱するものではない。全体として見れば、本発明は、従来のプラクティスや冶金に対して大幅に改善されており、本発明は、低価格の原料を用いることができ、本発明が、少額の資本投資しか必要としないが、エネルギー効率がよくかつ環境に優しいものであることを申し上げたい。