(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860101
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ポリシリコンドープ領域を有するバックコンタクト型太陽電池のトレンチプロセス及び構造
(51)【国際特許分類】
H01L 31/068 20120101AFI20160202BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
H01L31/06 300
H01L31/04 440
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-137839(P2014-137839)
(22)【出願日】2014年7月3日
(62)【分割の表示】特願2011-513520(P2011-513520)の分割
【原出願日】2009年4月29日
(65)【公開番号】特開2014-212339(P2014-212339A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】61/060,921
(32)【優先日】2008年6月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/431,684
(32)【優先日】2009年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505379467
【氏名又は名称】サンパワー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スミス、デービッド、ディー.
【審査官】
井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/050889(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/130188(WO,A2)
【文献】
特開2008−021993(JP,A)
【文献】
特開平03−209780(JP,A)
【文献】
特開平09−306853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池基板の上に第1の誘電体層を形成する工程と、
前記太陽電池基板はN型シリコンウエハを含み、通常動作時に太陽に向けられるよう設けられた前記太陽電池の前面に対向する太陽電池基板の裏面上であって、前記第1の誘電体層の上に、P型ドープ領域及びN型ドープ領域を形成する工程と、
前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域との間を分離するトレンチを形成する工程と、
前記トレンチ内に第2の誘電体層を堆積する工程と
を備え、
前記P型ドープ領域上に設けられた第1のドーパント源から拡散されたドーパントが前記太陽電池基板上のP型ドープ領域を形成し、
前記N型ドープ領域上に設けられた第2のドーパント源から拡散されたドーパントが前記太陽電池基板上のN型ドープ領域を形成する、
太陽電池を製造する方法。
【請求項2】
太陽電池基板の上に第1の誘電体層を形成する工程と、
前記太陽電池基板はN型シリコンウエハを含み、通常動作時に太陽に向けられるよう設けられた前記太陽電池の前面に対向する太陽電池基板の裏面上であって、前記第1の誘電体層の上に、ポリシリコン層を形成する工程と、
前記ポリシリコン層を2つの領域に分離するトレンチ形成する工程と、
前記トレンチを形成する工程の後に、前記2つの領域の一方の上に設けられた第1のドーパント源から前記2つの領域の前記一方にドーパントを拡散させることにより、前記太陽電池基板の前記裏面上のP型ドープ領域を形成する工程と、
前記トレンチを形成する工程の後に、前記2つの領域の他方の上に設けられた第2のドーパント源から前記2つの領域の前記他方にドーパントを拡散させることにより、前記太陽電池基板の前記裏面上のN型ドープ領域を形成する工程と、
前記トレンチ内に第2の誘電体層を堆積する工程と
を備え、
前記P型ドープ領域は、前記第1の誘電体層上に形成される前にP型ドーパントでプリドープされるポリシリコンを含み、
前記N型ドープ領域は、前記第1の誘電体層上に形成される前にN型ドーパントでプリドープされるポリシリコンを含む、
太陽電池を製造する方法。
【請求項3】
前記第2の誘電体層は、窒化シリコンを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板の前記裏面側で、第1の金属接触子を前記P型ドープ領域と電気的に接続する工程と、
前記基板の前記裏面側で、第2の金属接触子を前記N型ドープ領域と電気的に接続する工程と
をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記トレンチの表面に不規則なテクスチャ加工を施す工程をさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記トレンチの表面にパッシベーション層を形成する工程さらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
太陽電池基板上に第1誘電体層を形成する工程と、
前記太陽電池基板上のP型ドープ領域を形成するべく、前記P型ドープ領域上に設けられた第1のドーパント源からドーパントを拡散させる工程と、
前記太陽電池基板上のN型ドープ領域を形成するべく、前記N型ドープ領域上に設けられた第2のドーパント源からドーパントを拡散させる工程と、
前記P型ドープ領域と前記N型ドープ領域との間にトレンチを形成する工程と
を備え、
前記P型ドープ領域および前記N型ドープ領域は、前記太陽電池基板に対して外付けされており、
前記トレンチは、前記P型ドープ領域および前記N型ドープ領域の下の第1誘電体層を分離している、
太陽電池を製造する方法。
【請求項8】
前記トレンチは、前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域が形成された後に形成される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
太陽電池基板上に第1誘電体層を形成する工程と、
前記第1誘電体層の上に、ポリシリコン層を形成する工程と、
前記ポリシリコン層を2つの領域に分離するトレンチ形成する工程と、
前記トレンチ形成する工程の後に、前記2つの領域の一方の上に設けられた第1のドーパント源から前記2つの領域の前記一方にドーパントを拡散させて、前記太陽電池基板上のP型ドープ領域を形成する工程と、
前記トレンチ形成する工程の後に、前記2つの領域の他方の上に設けられた第2のドーパント源から前記2つの領域の前記他方にドーパントを拡散させて、前記太陽電池基板上のN型ドープ領域を形成する工程と
を備え、
前記P型ドープ領域および前記N型ドープ領域は、前記太陽電池基板に対して外付けされており、
前記トレンチは、前記P型ドープ領域および前記N型ドープ領域の下の第1誘電体層を分離している、
太陽電池を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2008年6月12日出願の米国仮出願61/060921号明細書の優先権を主張するものであり、前記出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して太陽電池に関し、これに限定されないが、特に、太陽電池の製造プロセス及び構造に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽電池は、太陽の放射を電気エネルギーに変換するよく知られたデバイスである。太陽電池は、半導体プロセス技術を利用して、半導体ウエハ上に形成される。太陽電池は、P型ドープ領域及びN型ドープ領域を含む。太陽放射が太陽電池に衝突すると、ドープ領域を移動する電子及びホール(正孔)が生成され、ドープ領域間に電位差が生じる。バックコンタクト型の太陽電池では、ドープ領域及びこれら領域に接続されるインターデジテイト加工された(櫛歯型)金属コンタクトの接触子は、太陽電池の裏面側に設けられる。この接触子により、外部電気回路と太陽電池を接続でき、太陽電池の電力が回路に供給される。
【0004】
太陽電池の効率は、太陽電池の発電能力に直結する重要な特性である。したがって、一般的に、太陽電池の効率を上げる技術が望まれている。本発明は、太陽電池の効率向上を可能とする新規な太陽電池構造を製造するプロセスを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態では、太陽電池は、ポリシリコンのP型ドープ領域及びN型ドープ領域をシリコンウエハのような基板の裏面側に備える。トレンチ構造は、P型ドープ領域をN型ドープ領域から分離する。P型ドープ領域及びN型ドープ領域はそれぞれ、薄い誘電体層上に形成されてもよい。トレンチ構造は、太陽放射の集光効率を向上させるためにテクスチャ表面を含んでもよい。他にも有用な効果を奏するが、上記のような構造は、隣接するP型ドープ領域及びN型ドープ領域の間の分離することによりドープ領域が接触する領域である空間電荷領域における再結合が妨げられるため、太陽電池の効率を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこれら及びその他の特徴は、添付の特許請求の範囲及び添付の図面を含む本開示全てを参照することにより、当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る太陽電池構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る太陽電池構造を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図4】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図5】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図6】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図7A】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図8A】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図7B】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図8B】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図9】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図10】本発明の実施形態による太陽電池の製造を示した図である。
【
図11】従来の太陽電池の性能と本発明の実施形態による太陽電池とを比較した非光照射時のI‐V曲線を示している。
【
図12】本発明の実施形態による太陽電池の製造方法の流れ図である。
【0008】
異なる図面に渡って同一の参照番号が使用されている場合は、同一の又は同様な要素を示している。また、図面は、実寸で描かれてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示では、材料、プロセスパラメータ、工程、構造の例のような様々な詳細事項が記載されるが、これらは、本発明の実施形態を理解するために提供されている。一つ又は複数のこれら詳細事項がなくとも本発明を実施可能であることは、当業者であれば理解できる。また、本発明の側面を曖昧にしない目的から、周知の詳細事項についての記載及び図示を省略している。
【0010】
基板にP型及びN型のドープ領域を持つ太陽電池では、互いに分離された境界又は隣接した境界を持つようにP型ドープ領域とN型のドープ領域とが形成される。しかしながら、ポリシリコン内の電荷キャリアの寿命は非常に低く、ポリシリコンドープ領域が接触する空間電荷領域で起こる再結合が非常に高いことから、発明者は、ポリシリコンドープ領域に関しては上記の通りでないことを発見した。すなわち、発明者は、互いに接触するポリシリコンドープ領域は、効率に対してマイナスの影響を与えることを発見した。本発明の実施形態では、ポリシリコンドープ領域及び一般に形成されたドープ領域に関連するこのような問題を解決する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る太陽電池構造の断面を概略的に示している。
図1に示す例の太陽電池は、ドープ領域101、102が、前面105に対向する裏面106に設けられたバックコンタクト型の太陽電池である。前面105は、通常、動作時に太陽に向けられる。ドープ領域101、102は、薄い誘電体層113上に形成されている。誘電体層113は、5〜40オングストロームの厚さに形成されていてもよい。一実施形態では、誘電体層113は、基板103の表面に20オングストロームの厚さに熱的成長された二酸化シリコンであってもよい。また、誘電体層113は、窒化シリコンであってもよい。誘電体層113は、表面パッシベーション(安定化)を可能とする。ドープ領域101、102のポリシリコンは、誘電体層113全域に電界を印加し、この電界によって少数キャリアは誘電体界面からはじき出される。
【0012】
図1に示す例では、ドープ領域101は、P型ドープ領域であり、ドープ領域102は、N型ドープ領域である。また、この例では、基板103は、N型シリコンウエハである。基板103は、P型シリコンウエハ又は別の種類のウエハであってもよく、その他の構成も基板の種類に応じて適切に変更されることは、当業者にとって明らかである。どのような太陽電池であっても、複数のP型及びN型ドープ領域が設けられるが、
図1では、図示を簡略化するため、それぞれ一つのみ示されている。
【0013】
ドープ領域101、102は、低圧化学気相堆積(LPCVD)によって約2000オングストロームの厚さに形成されドープされたポリシリコンを含んでもよい。また、ドープ領域101は、P型ドーパント(例えば、ホウ素)をドープしたポリシリコンであり、ドープ領域102は、N型ドーパント(例えば、リン)をドープしたポリシリコンであってもよい。ポリシリコンは、誘電体層113上に堆積され、拡散によりドープしてもよい。あるいは、誘電体層113上に堆積させる前に、ポリシリコンのプリドープを行ってもよい。ポリシリコンは、高温プロセスに適応可能であり、より高い熱量を使用可能となることから、ドープ領域101、102を形成する材料に好適である。
【0014】
図1に示すように、ドープ領域101、102は、トレンチ104によって分離され、トレンチは、ドープ領域101及びドープ領域102間のギャップとして機能する。
【0015】
トレンチ104は、例えば、レーザートレンチエッチング又は周知のエッチング方法により形成してもよい。一実施形態では、トレンチ104は、約100ミクロンの幅を持つ。トレンチ104は、ドープ領域101、102のポリシリコンをドープする拡散工程の前又は後に形成するようにしてもよい。トレンチ104が、拡散工程の前に形成される場合は、パッシベーション領域112は、拡散工程で形成されたN型パッシベーション領域を含んでもよい。
【0016】
一実施形態では、トレンチ104を形成するだけでなく、トレンチ104の表面に不規則に凹凸をつけたテクスチャ表面114も形成されるようなプロセスを使用してトレンチ104を形成する。不規則に凹凸をつけたテクスチャ表面114は、太陽電池の裏面において入射する太陽光を収集する、すなわち両面受光型の配置において、集光を改善する。トレンチ104を形成し、不規則なピラミッド型の凹凸を表面114につけるのに、水酸化カリウム及びイソプロピルアルコールを含むウェットエッチングプロセスを利用してもよい。トレンチ104は、基板103に1〜10ミクロン(例えば、3ミクロン)の深さで形成されてもよい。
【0017】
窒化シリコン107の形で形成される誘電体を、トレンチ104内に堆積する。窒化シリコン107は、好ましくは、正の固定された相対的に大きい電荷密度を持ち、トレンチ104の下のシリコン表面を蓄積状態とし、良好な表面パッシベーションを提供する。窒化シリコン107の正の固定された電荷密度は、窒化シリコン107の形成に使用される堆積プロセスの一部において、自然に発生する。一実施形態では、窒化シリコン107は、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)により約400オングストロームの厚さに形成される。その結果形成される蓄積層は、少数キャリア、すなわちN型材料内の正電荷を持つホールをはじき出す。トレンチ104は、また、ポリシリコンに空間電荷領域が形成されるのを防ぐ。その代わり、P型ポリシリコンの下に位置する単結晶シリコン内に、空間電荷が発生する。この領域では、粒界により寿命が低減されることがないので、寄生的な再結合が抑制される。また、この空間電荷領域の一部が、トレンチ104内のウエハ表面を横切っている。窒化シリコン107内の正電荷は、この領域の幅を狭めると同時に、空間電荷領域におけ領域の影響を低減している。
【0018】
図1に示す太陽電池構造を製造するプロセスの流れとしては、例えば、薄い誘電体層113を基板103の裏面上に形成する工程と、ドープされていないポリシリコン層をこの薄い誘電体層113上に形成する工程と、このポリシリコン層にドープして、P型及びN型のドープ領域101、102を形成する工程と、ドープしたポリシリコン層をエッチングしてトレンチ104及びテクスチャ表面114を形成する工程と、パッシベーション領域112を形成する工程と、トレンチ104内に窒化シリコン107を形成する工程とを備えてもよい。ドープされていないポリシリコン層にドーパントを拡散するのに替えて、周知の堆積、マスキング、及びエッチング技術を使用して誘電体層113上にプリドープポリシリコンを堆積することにより、ドープ領域101及び102を形成してもよい。窒化シリコン107は、凹凸が付けられたテクスチャ加工をした表面ではなく、平らな表面を持つのが好ましい。しかしながら、窒化シリコン107の平坦性は然程重要ではなく、改めて平坦化工程を行う必要はない。例えば、窒化シリコン107の平坦性は、堆積する際に自動的に得られるものであってもよい。トレンチ104は、ドープ領域101、102のドーピングの前に形成されてもよいし、後に形成されてもよい。
【0019】
図2に示すように、窒化シリコン107を貫通してそれぞれドープ領域101、102と電気的に接続するように、インターデジテイト加工された(櫛歯型)金属接触子108、109を形成してもよい。外部電気回路を、このインターデジテイト加工された(櫛歯型)金属接触子108、109に取り付け、太陽電池に接続することによい電力を得るようにしてもよい。
図2に示す例では、金属接触子108は、正の電気端子に接続され、金属接触子109は、負の電気端子に接続するようにしてもよい。
【0020】
図1に示したトレンチ構造は、複数の観点で、上述のポリシリコン寄生的空間電荷再結合に関連する問題を解決する。第1に、トレンチ104は、ドープ領域101、102を分離するので、これらドープ領域は物理的に接触しない。これにより、ポリシリコン膜に空間電荷領域が存在するのを防ぐことができる。第2に、トレンチ104の下に形成される蓄積層が少数キャリアをはじき出すので、表面パッシベーション効果を向上させることができる。第3に、トレンチ104内のテクスチャ表面114が、太陽放射の集光率を向上させる。これは、太陽電池の効率を上げるのに貢献する。
【0021】
図3〜10は、本発明の実施形態に係る太陽電池の製造工程を描いた断面図である。太陽電池には、複数のP型ドープ領域及びN型ドープ領域が設けられるが、図示を簡略化するため、ここではそれぞれ1つのみ示されている。
【0022】
図3〜10に示す実施形態では、まず初めに、基板303の裏面に薄い誘電体層313を形成する(
図3)。基板303は、例えば、N型シリコンウエハであってもよい。誘電体層313は、5〜40オングストローム(例えば、20オングストローム)の厚さに形成されてもよい。一実施形態において、誘電体層313は、基板103の表面に熱的成長された二酸化シリコンであってもよい。また、誘電体層313は、例えば、窒化シリコンであってもよい。次に、ドープされていないポリシリコン層322が、誘電体層313上に形成される。ポリシリコン層322は、例えば、LPCVDにより約2000オングストロームの厚さに形成されてもよい。次いで、ドープされた二酸化シリコン層323が、ポリシリコン層322上に形成される(
図4)。二酸化シリコン層323は、後に形成されるドープ領域、この例ではP型ドープ領域301に対するドーパント源として機能する(
図7A又は
図8Bを参照)。したがって、二酸化シリコン層323は、ホウ素のようなP型ドーパントでドープされてもよい。二酸化シリコン層323を、P型ドープ領域301が形成される領域のポリシリコン層322上に残すようにパターニングする(
図5)。二酸化シリコン層323は、APCVDにより約1000オングストロームの厚さに形成されてもよい。
【0023】
ドープされた二酸化シリコン層324が、二酸化シリコン層323及びポリシリコン層322上に形成される(
図6)。二酸化シリコン層324は、後に形成されるドープ領域、この例ではN型ドープ領域302に対するドーパント源として機能する(
図7A又は
図8Bを参照)。したがって、二酸化シリコン層324は、リンのようなN型ドーパントでドープされてもよい。二酸化シリコン層324は、APCVDにより約2000オングストロームの厚さに形成されてもよい。
【0024】
ドープ領域を分離するトレンチは、第1のトレンチ形成プロセスでドープ領域を形成する前に形成してもよいし、第2のトレンチ形成プロセスでドープ領域を形成した後に形成してもよい。
図7A及び
図8Aは、第1のトレンチ形成プロセスの工程を示しており、
図7B及び
図8Bは、第2のトレンチ形成プロセスの工程を示している。両トレンチ形成プロセスは、共に、
図6に示すプロセスから続くプロセスであり、
図9に示すプロセスへと進む。
【0025】
第1のトレンチ形成プロセスでは、熱ドライブイン工程により、二酸化シリコン323、324から下に位置するポリシリコン層322へと、ドーパントを拡散させて、ポリシリコン層322にP型及びN型ドープ領域、すなわちP型ドープ領域301及びN型ドープ領域302を形成する(
図7A)。熱ドライブイン工程は、
図6に示す構造を加熱することにより行ってもよい。好ましいドライブ条件により実行すると、例えば、1e20cm−3よりも大きい濃度でドープされたポリシリコン層が膜厚全体に渡って均一に形成され、ポリシリコンの下では、例えば、1e18cm−3以下の少ないドーピング濃度となる。熱ドライブイン工程により、二酸化シリコン層323の下のポリシリコン層322に、P型ドープ領域301が形成され、二酸化シリコン層324の下のポリシリコン層322に、N型ドープ領域302が形成される。
【0026】
そして、二酸化シリコン層324、二酸化シリコン層323、P型ドープ領域301、N型ドープ領域302、及び薄い誘電体層313がエッチングされ、トレンチ304が形成される(
図8A)。トレンチのエッチングは、最後のエッチング工程が基板303上で止まる複数工程のエッチングプロセスを含んでもよい。例えば、トレンチ304は、約100ミクロンの幅に形成される。しかしながら、P型ドープ領域301とN型ドープ領域302が互いに接触しない限りにおいて、トレンチの最小幅ついて既知の限界は存在していない。トレンチ304は、レーザートレンチングを含む周知のエッチングプロセスによって形成してもよい。一実施形態において、トレンチ304は、太陽放射の集光効率を向上させるテクスチャ表面314を持つ。また、一実施形態において、水酸化カリウム及びイソプロピルアルコールを含むウェットエッチングプロセスを、トレンチ304を形成し、不規則なピラミッド型の凹凸を表面314につけるのに利用してもよい。トレンチ304は、基板303に、1〜10ミクロン(例えば、3ミクロン)の深さで形成されてもよい。
【0027】
薄い(200オングストロームより薄い、例えば100オングストロームの)パッシベーション層310を、トレンチ304の表面314上に形成してもよい。パッシベーション層310は、例えば、表面314又は堆積された窒化シリコン層上に熱的成長された二酸化シリコンを含んでもよい。
【0028】
第2のトレンチ形成プロセスでは、二酸化シリコン324、二酸化シリコン322、及び薄い誘電体層313からなる
図6に示す構造をエッチングして、トレンチ304を形成する(
図7B)。トレンチ304の表面上に、テクスチャ表面314を形成してもよい。トレンチのエッチングは、太陽電池のドープ領域が形成される前にトレンチが形成される点を除いて、第1のトレンチ形成プロセスと実質的に同じである。
【0029】
第1のトレンチ形成プロセスと同様に、熱ドライブイン工程により、二酸化シリコン323、324から下に位置するポリシリコン層322へと、ドーパントを拡散させて、P型ドープ領域301及びN型ドープ領域302を形成する(
図8B)。この場合、第2のトレンチ形成プロセスにおいて、拡散プロセスの間に、トレンチ304の下に位置する基板303にパッシベーション領域315が形成される。パッシベーション領域315は、拡散されたN型ドーパントを含んでいてもよい。一実施形態において、熱ドライブインの間に、拡散炉にPOC13(オキシ塩化リン)を導入することによってパッシベーション領域315を形成してもよい。パッシベーション領域315は、
図1に示したパッシベーション領域112と同じ役割を果たす。
【0030】
第1及び第2のトレンチ形成プロセスにおいて、トレンチ304は、P型ドープ領域301を、N型ドープ領域302から物理的に分離するギャップとして機能する。太陽電池の製造プロセスは、
図8A又は
図8Bに示すプロセスから、
図9に示すプロセスへと続く。
【0031】
図9では、窒化シリコン層307の誘電体が、トレンチ304に形成される。
図9に示す例では、窒化シリコン層307は、層323及び層324上にも形成される。窒化シリコン層307は、好ましくは、正の固定された相対的に大きい電荷密度を持ち、トレンチ304の下のシリコン表面を蓄積状態とし、良好な表面パッシベーションを提供する。窒化シリコン層307における正の固定された電荷密度は、例えば、PECVDプロセスの一部として、自然に発生させてもよい。一実施形態において、窒化シリコン層307は、PECVDによって、約400オングストロームの厚さに形成される。窒化シリコン層307は、好ましくは、平坦な表面(例えば、堆積表面)を持つように形成される。
図9及び
図10において、パッシベーション領域312は、使用されるトレンチ形成プロセスに応じて、パッシベーション層310(
図8A参照)又はパッシベーション層315(
図8B参照)のいずれかを表している。
【0032】
次いで、窒化シリコン層307を貫通し、層323及び324をそれぞれ通じてドープ領域301、302と電気的に接続するように、インターデジテイト加工された(櫛歯型)金属接触子308、309が形成される(
図10)。外部電気回路を、このインターデジテイト加工された(櫛歯型)金属接触子308、309に取り付け、太陽電池に接続することにより電力を得るようにしてもよい。
図10の例では、金属接触子308は、正の電気端子に接続され、金属接触子309は、負の電気端子に接続されてもよい。このようにして製造された太陽電池は、
図1に示した太陽電池と同様な効果を提供する。
【0033】
図11は、非光照射時のI‐V(すなわち、電流‐電圧)曲線を示しており、従来の太陽電池の性能と、本発明の実施形態による太陽電池の性能とを比較したものである。ここに示したI‐V曲線は、"dark"の曲線であり、太陽電池に、直接太陽放射が注ぎ込んでいない時に計測された曲線である。
【0034】
I‐V曲線は、N型シリコンとP型ドープ領域との間に形成されるダイオードについてのものである。
図11に示す例では、横軸は、ダイオードに掛かる電圧を表し、縦軸は、ダイオードで生じた電流を表している。プロット401は、P型ポリシリコンドープ領域とN型ポリシリコンドープ領域が接触している従来の太陽電池のI‐V曲線、プロット402は、典型的なSunpower Corporation A300(登録商標)太陽電池のI‐V曲線、そしてプロット403は、
図1〜9を参照して説明したP型ドープ領域とN型ドープ領域との間にトレンチを備える太陽電池のI‐V曲線である。プロット402も、プロット404で表される理想的なI‐V曲線に近い形状を示しているが、プロット403の方が、より理想に近い形状をしている。プロット405は、理想的なダイオードのI‐V特性を示しており、図では、電流が10倍になる毎に60ミリボルト増加する傾きの線となっている。
【0035】
図12は、本発明の実施形態に係る太陽電池を製造する方法600の流れ図である。方法600では、ドープ領域がポリシリコン層に形成される(ステップ601)。このドープ領域は、例えば、ドープされた二酸化シリコン層をドープされていないポリシリコン層上に堆積し拡散工程を行う、プリドープ二酸化シリコン層を堆積する、又はドープされていないポリシリコン層を堆積した後にドーパントのインプランテーション工程を行うことにより、形成することができる。ドープ領域が形成されるポリシリコン層を、P型ドープ領域をN型ドープ領域から分離するトレンチを形成するようにエッチングする(ステップ602)。又は、ドープ領域が形成される前に、トレンチを形成してもよい。太陽放射の集光効率を上げるために、トレンチがテクスチャ表面を含んでも良い。基板の大部分からトレンチ材料を隔離するために、パッシベーション層又は基板の拡散領域のようなパッシベーション領域を形成する(ステップ603)。そして、トレンチの中に、窒化シリコン層の誘電体が堆積される(ステップ604)。最後に、窒化シリコンを貫通してP型及びN型ドープ領域と電気的に接続するように、インターデジテイト加工された(櫛歯型)金属接触子を形成してもよい。
【0036】
以上記載したように、改善された太陽電池形成及び構造を提供することができる。本発明の特定の実施形態が記載されたが、これらの実施形態は、本発明を明確に例示する目的で示したものであり、限定する目的で提供されていない。また、本開示を読むことにより、様々な改良を加えた実施形態が考えられることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願明細書に記載の実施形態によれば、以下の構成もまた開示される。
[項目1]
通常動作時に太陽に向けられるよう設けられた前面及び前記前面に対向する裏面を有するシリコン基板と、
ポリシリコンを含むP型ドープ領域及びN型ドープ領域と、
前記基板上の前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域それぞれの下に設けられる第1の誘電体層と、
前記N型ドープ領域から前記P型ドープ領域を分離するトレンチと、
前記トレンチに形成される第2の誘電体層と
を備える太陽電池構造。
[項目2]
前記第1の誘電体層は、前記シリコン基板の表面に5から40オングストロームの厚さで形成される二酸化シリコンを含む項目1に記載の太陽電池構造。
[項目3]
前記トレンチは、前記太陽電池の前記裏面に入射する太陽放射を吸収するテクスチャ表面を有する項目1に記載の太陽電池構造。
[項目4]
前記第2の誘電体層と前記基板との間に、パッシベーション層をさらに備える項目1に記載の太陽電池構造。
[項目5]
前記トレンチの下の基板に拡散パッシベーション領域をさらに備え、
前記パッシベーション領域は、N型ドーパントでドープされている項目1に記載の太陽電池構造。
[項目6]
前記第2の誘電体層を貫通して前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域と電気的に接続されるインターデジテイト加工された金属接触子をさらに備える項目1に記載の太陽電池構造。
[項目7]
太陽電池基板の上に第1の誘電体層を形成する工程と、
前記太陽電池基板は、通常動作時に太陽に向けられるよう設けられた前面及び前記前面に対向する裏面を有するN型シリコンウエハを含み、前記太陽電池基板の前記裏面側であって前記第1の誘電体層の上にP型ドープ領域及びN型ドープ領域を形成する工程と、
前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域との間を分離するトレンチを形成する工程と、
前記トレンチ内に第2の誘電体層を堆積する工程と
を備える太陽電池を製造する方法。
[項目8]
前記トレンチは、前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域が形成される前に形成される項目7に記載の方法。
[項目9]
前記第2の誘電体層は、窒化シリコンを含む項目7に記載の方法。
[項目10]
前記太陽電池基板の前記裏面側で、第1の金属接触子を前記P型ドープ領域と電気的に接続する工程と、
前記太陽電池基板の前記裏面側で、第2の金属接触子を前記N型ドープ領域と電気的に接続する工程と
をさらに備える項目7に記載の方法。
[項目11]
前記P型ドープ領域は、前記第1の誘電体層上に堆積される前にP型ドーパントでプリドープされるポリシリコンを含み、前記N型ドープ領域は、前記第1の誘電体層上に形成される前にN型ドーパントでプリドープされるポリシリコンを含む項目7に記載の方法。
[項目12]
前記P型ドープ領域を形成する工程は、
ドーパント源からポリシリコン層へとドーパントを拡散する工程を含み、
前記ドーパント源は、前記ポリシリコン層上に形成された層の材料である項目7に記載の方法。
[項目13]
前記ドーパント源は、P型ドープ二酸化シリコン層を含む項目12に記載の方法。
[項目14]
前記トレンチの表面に不規則なテクスチャ加工を施す工程をさらに備える項目7に記載の方法。
[項目15]
シリコン基板の裏面側であって誘電体層上に形成されたポリシリコンを含むP型ドープ領域及びN型ドープ領域と、
前記P型ドープ領域と前記N型ドープ領域との間を分離するトレンチ構造と
を備える太陽電池構造。
[項目16]
前記シリコン基板は、N型シリコン基板を含む項目15に記載の構造。
[項目17]
前記トレンチの表面は、不規則なテクスチャ加工が施されている項目15に記載の構造。
[項目18]
前記誘電体層は、5から40オングストロームの厚さで形成された二酸化シリコンを含む項目15に記載の構造。
[項目19]
前記トレンチ構造の表面に形成されたパッシベーション層をさらに備える項目15に記載の構造。
[項目20]
前記トレンチ構造の下の前記基板に設けられるパッシベーション領域をさらに含む項目15に記載の構造。