【実施例1】
【0020】
図1は、本発明による差込み便器用おむつ66の組み立て後の内面からみた斜視図であり、
図2は、同じく外面からみた斜視図である。
この差込み便器用おむつ66の組み立て順序を
図3ないし
図5に基づき各工程順に説明する。
【0021】
(1)第1工程
図3において、(a−1)は、差込み便器用おむつ66の内面からみた図、(a−2)は、A−A線端面図である。
薄くて強度のある紙製のおむつ本体67を用意する。このおむつ本体67は、横幅が55〜60cm、縦幅が80〜85cmで、縦方向に略3等分して手前側が腰回り包み部68、後方側が腹回り包み部69で、中間部が股間回り包み部70となっており、この股間回り包み部70の部分の横幅は、35〜40cmにくびれている。前記腰回り包み部68の端部付近は、伸ばしたとき約20cmのゴム等の弾性材入りの腰部ギャザー73aとなっており、同様に、股間回り包み部70の両側付近は、伸ばしたとき約20cmがゴム等の弾性材入りの股間部ギャザー73bとなっており、伸ばさない状態では、約12cmに縮んでいる。このおむつ本体67の内側には、(a−2)に示すような肉厚のクッション材76が腰回り包み部68と股間回り包み部70と腰回り包み部68にかけて貼着されている。前記腰回り包み部68の両側縁には、2個ずつの面ファスナ72付きの固着片71が突出して設けられている。
【0022】
(2)第2工程
図3において、(b−1)は、差込み便器用おむつ66の内面からみた図、(b−2)は、B−B線端面図である。
前記股間回り包み部70と腹回り包み部69の境界付近に、直径2cm、長さ10cm程度に丸めた軟質材の突条体からなる男性器保持部80を約10cmの間隔をおいて長手方向に向けてクッション材76の上に貼着する。股間回り包み部70における略中心位置には、図中下端部が約8〜10cm(後述する差込み便器9の排便受け部14の直径と略同じ)の半円形で上端部が約20cmの長方形で全体として釣鐘形状の排泄孔74が、クッション材76と股間回り包み部70を貫通して穿設される。また、股間回り包み部70における略中心位置に、幅16cm程度、長さ40cm程度の内側防水紙62が前記男性器保持部80を保持しつつ貼着される。この内側防水紙62の略中央部分は、排泄孔74を覆うように貼着される。
【0023】
(3)第3工程
図4において、(c−1)は、差込み便器用おむつ66の内面からみた図、(c−2)は、C−C線端面図である。
排泄孔74の内縁部に沿って前記内側防水紙62の上面に幅が約5cmの内側ギャザーテープ77aがそれぞれ貼着される。この両側の内側ギャザーテープ77aは、内側縁部と両端が貼着され、貼着されない外側縁部は、ゴム等の弾性材入りで収縮するので、
図4(c−2)に示すように、排泄孔74側に立ち上がる。この内側ギャザーテープ77aの外側に、更に腰回り包み部68から股間回り包み部70を経て腹回り包み部69までの長い外側ギャザーテープ77bがそれぞれ貼着される。この両側の外側ギャザーテープ77bも内側ギャザーテープ77aと同様に内側縁部と両端が貼着され、貼着されない外側縁部は、ゴム等の弾性材入りで収縮するので、
図4(c−2)に示すように、内側に立ち上がる。
【0024】
(4)第4工程
図4において、(d)は、差込み便器用おむつ66の外面からみた図である。
おむつ本体67の外面には、前記排泄孔74を被覆するように、幅18cm程度、長さ30cm程度の外側防水紙63を貼着する。この外側防水紙63の上に、瓢箪型の便座固着紙61が貼着される。この便座固着紙61の外側面には、接着剤99が塗布され、剥離紙100で保護されている。この便座固着紙61は、
図7(a)に示すように、長方形部分と円形部分との間で剥離紙100に切れ込みを入れて剥離紙100aと剥離紙100bに分割してあり、外面にくる部分の剥離紙100aと剥離紙100bを分割して剥がせる構造となっている。また、便座固着紙61は、
図7(b)に示すように、長方形部分の便座固着紙61aと円形部分の便座固着紙61bを別個に用意して瓢箪型に貼り付けるようにしてもよい。このとき、便座固着紙61aと便座固着紙61b境界部分が重なるように貼り付ける。
【0025】
(5)第5工程
図5において、(e)は、差込み便器用おむつ66の外面からみた図である。
外側防水紙63と便座固着紙61に切り込み線60を入れる。この切り込み線60は、排泄孔74の半円形部分には、半円形よりやや小さな円形(後述する差込み便器9の排便受け部14を露出させるため)と、この円形部分の下端に小さな半円形(後述する差込み便器9の洗浄水ノズル17を露出させるため)の切り欠き89を設け、また、排泄孔74の長方形部分には、中心の縦直線と上端の横直線でT字状に切り込み線60を形成し、更に切り欠き89の周囲に放射状に切り込み線60を形成する。このような切り込み線60を形成することで、排泄孔74の周りに折り返すことのできる貼着代75となる。前記腹回り包み部69には、約12×42cmの細長い面ファスナ72が貼着される。
【0026】
(6)第6工程
図5において、(f)は、差込み便器用おむつ66の外面からみた図である。
腰回り包み部68に、吸湿性と防水性を有する便座受けシート78を約下半分を3方の周縁部で貼着し、上半分の3方の周縁部に接着剤を塗布し、剥離紙で保護しておく。このとき、腰回り包み部68と便座受けシート78の間に差し込み孔79が形成される。この便座受けシート78の幅は、後述する差込み便器9の尻受け部13が差し込み孔79からスムーズに挿入され、差し込み孔79の深さは、尻受け部13が差し込み孔79の奥部まで差し込まれたとき、差込み便器用おむつ66の切り欠き89が差込み便器9の排便受け部14に一致する位置とする。また、便座受けシート78の上半分の長さは、少なくとも差込み便器9の排便受け部14と排尿受け部15の一部を被覆できるように延長する。
また、便座固着紙61の上部には、縦向きの隙間保持テープ81が上端を接着して設けられ、下端部内側に接着剤が塗布されて剥離紙で保護されている。この隙間保持テープ81のやや下側には、隙間保持テープ81と交差するように横向きの隙間保持テープ82が一端を接着して設けられ、略中央部と他端部の内側に接着剤が塗布されて剥離紙で保護されている。
【0027】
つぎに、股間回り包み部70における略中心部分における組み立て工程の様子を
図6に基づいて補足して説明する。先ず、
図6(a)に示すように、前記股間回り包み部70の上にクッション材76が貼着される。その後、
図6(b)に示すように、釣鐘形状の排泄孔74が、クッション材76と股間回り包み部70を貫通して穿設される。また、股間回り包み部70における略中心位置に、内側防水紙62が前記男性器保持部80を保持しつつ貼着される。内側防水紙62の貼着面側は、接着剤92を塗布して剥離紙90で保護した状態としておき、剥離紙90を剥がして貼着する。この内側防水紙62に内側ギャザーテープ77aを貼着してから股間回り包み部70に貼着してもよいし、内側防水紙62を貼着した後で内側ギャザーテープ77aを貼着するようにしてもよい。内側防水紙62の内面側表面には加工により防水層91が形成されている。内側ギャザーテープ77aの中心側の表面にも防水層93が形成されている。
【0028】
次に、
図6(c)に示すように、外面から外側防水紙63を貼着し、この外側防水紙63の上に、瓢箪型の便座固着紙61を貼着する。外側防水紙63の貼着面側は、接着剤96を塗布して剥離紙94で保護した状態としておき、剥離紙94を剥がして貼着する。外側防水紙63の外面側表面には加工により防水層95が形成されている。排泄孔74部分においては、内側防水紙62の接着面(接着剤92)と外側防水紙63の接着面(接着剤96)とが貼着されることで強固に接着される。便座固着紙61の貼着面側は、接着剤98を塗布して剥離紙97で保護した状態としておき、剥離紙97を剥がして貼着する。内側防水紙62、外側防水紙63及び便座固着紙61を貼着した状態の股間回り包み部70部分の様子を
図6(d)に示す。この
図6(d)に示すように、排泄孔74部分において、内側防水紙62、外側防水紙63及び便座固着紙61が重なっている状態で、切り欠き89及び切り込み線60を形成する。
【0029】
図6(e)に示すのは、切り欠き89及び切り込み線60を形成した後の股間回り包み部70部分を表した拡大断面図である。この
図6(e)に示すように、内側防水紙62の内面側表面に防水層91が形成され、外側防水紙63の外面側表面には防水層95が形成されることで股間回り包み部70やクッション材76を浸水から保護し、かつ、切り欠き89及び切り込み線60を形成した切断面部分は、内側防水紙62の接着面(接着剤92)と外側防水紙63の接着面(接着剤96)とが密着して断面からの浸水を防いでいるため、股間回り包み部70やクッション材76への浸水を強固に防ぐことが可能となる。
【0030】
つぎに、本発明の差込み便器用おむつ66とともに使用される差込み便器9の一例を説明する。
図8において、差込み便器9は、大まかに分けて便座本体部10と、後カバー部11と、前蓋部12と、尻受け部13とからなる。
前記便座本体部10は、直径が略9〜10cm程度の皿状の窪みを有する排便受け部14と、この排便受け部14から直角か直角よりわずかに後方に傾き、幅が略5cm、高さが略17cm、深さが略2cmの縦型溝状の排尿受け部15とからなる。
【0031】
前記排便受け部14は、前端から後端にやや傾斜しており、後端に連通して排便吸引孔19となる筒部が一体に突出しており、この排便受け部14の前端部には、洗浄水ノズル17が設けられている。また、前記排便受け部14の左右の縁部から前記排尿受け部15の縁部に連続する部分にかけて2〜3cm程度の幅の広い太股受け部16が両側にわずかに傾斜して設けられている。前記排便受け部14の背面には、図示しない配線板が設けられ、この配線板に搭載した1個の大便センサ23が排便受け部14の上面の略中央に露出し、4個の小便センサ24が大便センサ23の周りに露出して設けられている。
【0032】
前記洗浄水ノズル17の上端部には、肛門と陰部を洗浄する上向き噴射ノズルが水平に対し40〜50度の角度で設けられ、また、側面部には、排便受け部14の上面全体に噴射するように略180度の広角の水平噴射ノズルが設けられている。この洗浄水ノズル17の下端部には、後述する送水管54と連結する導水管が連結されている。
前記排尿受け部15の略中間位置には、肛門と陰部を洗浄する洗浄水ノズル18が設けられている。前記排便受け部14の表面は、テフロン(登録商標)などの低摩擦材が塗布され、糞尿の付着を防止するとともに、流れをよくしている。
【0033】
前記後カバー部11は、前記便座本体部10との底面側と背面側と側壁側とにやや隙間をもって固着され、前記便座本体部10の排便受け部14と排尿受け部15の背面から取り付けられる。この後カバー部11の背面側には、下から順に、排泄物吸引ホース52、空気供給管53、送水管54、電気コード55が設けられている。
【0034】
前記排泄物吸引ホース52は、つぶれないが屈曲可能な材質からなり、要介護者が差込み便器9を装着したままで、腰をかがめて起き上がるのを容易にしている。
前記空気供給管53には、便座本体部10と、後カバー部11の内部を通る2本の空気送り管が取り付けられ、排便受け部14の送風路46に連結している。前記外部からの温水の送水管54には、洗浄水ノズル17及び18と連通している。前記洗浄水ノズル18は、排尿受け部15の略中央に露出して設けられ、排尿後の男性器や女性器を洗浄する。前記電気コード55は、大便センサ23、小便センサ24に接続され、電気信号の入出力、電源の供給等が行われる。
【0035】
次いで、
図9に示すように、褥瘡防止用の第1褥瘡防止材57と第2褥瘡防止材58と第3褥瘡防止材59を装着時に皮膚が圧迫される部分に嵌め込む。前記第1褥瘡防止材57は、排尿受け部15の両側の縁部に上から被せ、前記第2褥瘡防止材58は、太股受け部16の上に上から被せる。第1褥瘡防止材57と第2褥瘡防止材58は、一体のものでもよい。
これらの第1褥瘡防止材57と第2褥瘡防止材58と第3褥瘡防止材59は、差込み便器用おむつ66を介在して装着したとき、体圧が50mmHg以下、さらに好ましくは、32mmHg以下となるものが望ましい。
【0036】
以上のように構成された差込み便器9と差込み便器用おむつ66をセットして装着する順序を説明する。
(1)
図9に示す差込み便器9の尻受け部13を、
図10に示す差込み便器用おむつ66の差込み孔79に先端が奥部に突き当たるまで差し込む。すると、差込み便器用おむつ66の排泄孔74が排便受け部14と正確に一致し、また、洗浄水ノズル17が排泄孔74の切り欠き89から露出する。この状態で、排泄孔74の円形孔周縁の貼着代75の剥離紙をはがして前蓋部12の導風板部39に貼り付け、また、排泄孔74の直線部の貼着代75の剥離紙をはがして排便受け部14の内壁部88と排尿受け部15の内壁部に貼り付ける。この貼着代75は隙間なく密着させて貼り付ける必要があるが、このとき、
図7(a)に示すように、剥離紙100を複数に分割しておくことで、貼り付けたい箇所のみ剥離紙100をはがして作業することができるため、他の部分の粘着面が作業の邪魔をすることがなくなり、貼り付けの作業性が向上する。
【0037】
(2)差込み便器用おむつ66と差込み便器9をセットして要介護者の股間にあてがう。このとき、臀部が尻受け部13の第3褥瘡防止材59の上に載るようにすると、肛門85が排便受け部14の大便センサ23のほぼ真上に位置し、太股の根元部分が差込み便器9の太股受け部16に被せた第2褥瘡防止材58に差込み便器用おむつ66を介在して密着する。また、排泄孔74の両側には、それぞれ2本ずつの内側ギャザーテープ77aと外側ギャザーテープ77bが立ち上がって、太股の根元部分に密着して尿や洗浄水の漏れと臭いの漏れを可能な限り防止している。
【0038】
(3)密着したら、腹回り包み部69を患者等の腹の上まで折り返す。このとき、患者等が男性の場合、男性器保持部80の間に男性器を位置させて尿道が排尿受け部15に正しく向くように位置させる。患者等が女性の場合、女性器は排尿受け部15の洗浄水ノズル18に略対峙する。
【0039】
(4)患者等の腹の上から腹回り包み部69を巻き込み、この腹回り包み部69の両側から腰部ギャザー73aを伸ばしながら腰回り包み部68を被せて固着片71の面ファスナー72を腹回り包み部69の面ファスナー72に係止する。
【0040】
(5)差込み便器9の排便受け部14と排尿受け部15と患者等の泌尿器との間に適正な空間を形成して、糞尿が排泄孔74の周りの差込み便器用おむつ66に付着しないようにするため、隙間保持テープ81を引き込んで、差込み便器用おむつ66の外面を差込み便器9の第1褥瘡防止材57に密着させつつ、この隙間保持テープ81の剥離紙を取り除いて便座本体部10の背面部に貼り付け、更に、隙間保持テープ81が剥がれないように、隙間保持テープ81に交差して隙間保持テープ82を便座本体部10の外側面に接着する。このとき、
図9に示すように、排尿受け部15の上端部が後方にやや傾いているが、第1褥瘡防止材57の前面が略垂直になっているので、排尿受け部15と患者等の泌尿器との間に適正な空間が形成される。
差込み便器用おむつ66には、排泄孔74の両側に2本ずつの内側ギャザーテープ77aと外側ギャザーテープ77bが形成され、更に股間回り包み部70の両側に股間部ギャザー73bが形成されているので、糞尿や洗浄水が差込み便器用おむつ66から漏れることはほとんどない。
【0041】
(6)しかし、差込み便器用おむつ66と差込み便器9のセットの仕方が不十分なため、排便受け部14と排尿受け部15の両側から漏れる恐れがあることをさらに防止するため、差込み便器用おむつ66の外面の便座受けシート78を延長させて排便受け部14の外側を包み込み、便座受けシート78の剥離紙を除いて便座本体部10と後カバー部11に隙間なく貼り付ける。便座受けシート78は、防水と吸水の機能を持たせることにより、差込み便器9の外部に漏れることから確実に防止する。
【0042】
以上のようにした差込み便器用おむつ66と差込み便器9をセットして装着し、排便、排尿を大便センサ23や小便センサ24で感知すると、図示しない排泄物処理装置が駆動して差込み便器9内の排便と排尿を排便吸引孔19から吸引処理し、温水で洗浄し、温風で乾燥する。