【氏名又は名称原語表記】UNITED STATES GOVERNMENT AS REPRESENTED BY THE SECRETARY OF THE ARMY
【文献】
笠井芳夫,坂井悦郎,新 セメント・コンクリート用混和材料,日本,技術書院,2007年 1月15日,第1版,第72頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0009】
水硬性セメント、無機鉱物充填材およびポゾランならびに化学添加剤、例えば可塑剤および水分散剤を含む繊維強化セメント質組成物が、住宅および/または商業構造の内部壁および外部壁を形成するために建設業界において使用されてきた。しかしながら、このような従来のパネルがもつ欠点は、それらが弾道および爆風荷重に対する高度の耐性を提供するのに充分な圧縮強度を有していない、という点にある。
【0010】
超高強度のセメント質組成物を生産するための現行の実践方法は、超高材料強度を達成するための極めて低い水分量と効果的な粒子充填に依存するものである。高密度の粒子充填を達成するために利用される原料およびこれらの組成物における極めて低い水使用量の結果として、セメント質混合物は、混合されたばかりの状態においてパン生地様の稠度を伴って、極めて剛性の高いレオロジー挙動を有する。剛い稠度によりこれらの混合物は、加工が極めて困難であり、従来の製造プロセスにおいてセメントベースの厚みの薄い製品および複合材料を作るための加工が極めて困難である。
【0011】
Belousofskyに付与された米国特許第4158082A号明細書は、耐衝撃性がありポートランド系のセメントを使用しうる繊維ガラス外皮を伴う積層セメントベースの構造を開示している。
【0012】
Millerに付与された米国特許第4793892号明細書は、ポートランドセメントを用いたセメント芯材および繊維ガラス表面仕上げを伴うコンクリートパネルの製造用装置について開示している。
【0013】
Arfaeiに付与された米国特許第4948429A号明細書は、ポートランドセメント、砂、ヒュームドシリカおよびポリエーテルを含むセメント質組成物について開示している。
【0014】
Mandishに付与された米国特許第5724783号明細書は、多重層を伴うパネル枠組に付着されたポートランドセメントパネル層で構成された建築用パネルおよびアセンブリシステムについて開示している。
【0015】
Clearに付与された米国特許第6119422B1号明細書は、セメント質複合材料が、繊維ガラスメッシュの内部面および外部面を伴う骨材芯材を有している、繊維ガラス強化メッシュの外部表面仕上げを伴う耐衝撃性の高い構造セメント質建築用パネルについて開示している。
【0016】
Murphyに付与された米国特許第6176920号明細書は、平滑化ヘッド(smoothing head)、せん断機およびスクリード作業プロセスを用いて多重層のセメント質パネルを構築するための方法について開示している。
【0017】
Guerinetらに付与された米国特許第6309457B1号明細書は、ポートランドセメント、最大サイズ10mmまたは0〜5mmのシリカ砂または0〜0.4mmおよび0〜5mmのサイズの配合物
、200ミクロン未満好ましくは100ミクロン未満の寸法を有するフライアッシュまたはシリカ粉などの鉱物細骨材
、少なくとも1つのアミノジ(アルケンホスホン酸)基を含む水溶性または水分散性有機化合物である第1の可塑剤
、およびポリカルボン酸タイプのものでありかつポリエーテル鎖を含む第2の水溶性または水分散性可塑剤を含むセルフレベリングセメント組成物について開示している。実施例1は、32MPa(約4600psi)という28日圧縮強度を示している。
【0018】
Isomuraらに付与された米国特許第6437027号明細書は、ポートランドセメント、5mm未満のサイズのシリカ砂:および0.01〜2.5重量%のポリカルボキシレートポリエーテルを含むセメント質組成物について開示している。
【0019】
その全体が本明細書に参照により援用されているTonyanらに付与された米国特許第6,620,487号明細書は、合板または配向性ストランドボードパネルが提供するせん断荷重以上の枠組への固定時のせん断荷重に耐えることのできる軽量で寸法的に安定した強化構造セメントパネル(SCPまたはSCPパネル)について開示している。これらのパネルは、硫酸カルシウムアルファ半水化物、水硬性セメント、活性ポゾランおよび石灰の水性混合物の硬化の結果として得られる連続相の芯材を使用しており、この連続相は、耐アルカリ性ガラス繊維で強化されセラミック微小球またはセラミック微小球とポリマー微小球の配合物を含むか、または0.6/1〜0.7/1の水対反応性粉末の重量比を有する水性混合物またはそれらの組合せから形成されている。パネルの少なくとも1つの外部表面は、ガラス繊維で強化され、釘打ち性を改善するのに充分なポリマー球を含有するかまたはポリマー球と類似の効果を提供するような水対反応性粉末比を伴って作られているか、またはその組合せである硬化した連続相を含んでいてよい。
【0020】
Kerkarらに付与された米国特許第6849118B2号明細書は、ポートランドセメント、0〜6mmのサイズのシリカ砂
、およびポリカルボキシレート(ADVA(登録商標)可塑剤)を含むセメント質組成物について開示している。
【0021】
Andersonらに付与された米国特許第6858074B2号明細書は、ポートランドセメント、シリカ砂、ヒュームドシリカ、促進剤、遅延剤およびポリカルボキシレート高範囲減水分散剤を含むセメント質組成物を開示している。
【0022】
Shendyらに付与された米国特許第6875801B2号明細書は、ポートランドセメント、砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを0〜2重量%含むセメント質組成物について開示している。
【0023】
Daczkoらに付与された米国特許第6942727号明細書は、ポートランドセメント
、シリカ砂などの細骨材(細骨材は、ほぼ全体が4番篩を通過する材料である)、砂などの粗骨材(粗骨材は大部分が4番篩に留まる材料である)
、シリカヒュームポゾラン
、セメントの乾燥重量を基準にして0.025〜0.7%の、ポリエーテル系でありうるポリカルボキシレート分散剤
、および構造的合成繊維、を含む初期強度の高いセメント質部材について開示している。セメント質部材は、壁パネルを作るのに使用することができる。セメント質部材は、10,000psi超の24時間圧縮強度を示すことができるが、これらの組成物はポゾランを含まない。
【0024】
Hirataらに対する米国特許出願公開第2002/0004559号明細書は、ポートランドセメント、砂、ヒュームドシリカおよびポリエステルを0.5重量%、例えば2重量%超含むセメント質組成物を開示している。
【0025】
Farringtonらに対する米国特許出願公開第2004/0149174号明細書は、ポートランドセメント、砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを0.01〜0.2重量%含むセメント質組成物を開示している。
【0026】
Buryらに対する米国特許出願公開第2004/0198873号明細書は、ポートランドセメント、シリカ砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを0.02〜2重量%含むセメント質組成物を開示している。
【0027】
Sproutらに対する米国特許出願公開第2004/0211342号明細書は、ポートランドセメント、シリカ砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを0.1〜2重量%含むセメント質組成物を開示している。
【0028】
Dulzerらに対する米国特許出願公開第2004/0231567号明細書は、ポートランドセメント、砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを合計乾燥セメント質結合剤の0.1〜10重量%含むセメント質組成物を開示している。
【0029】
Aldeaに対する米国特許出願公開第2005/0139308号明細書は、ポートランドセメント、フライアッシュ、シリカヒューム、樹脂、砂、ガラス繊維、樹脂、水、促進剤、充填材、凝固遅延剤、分散剤を含んでよく
、多重層および層間を平滑化するためのこて塗りが関与し
、構造を地震や爆発に対して補強するために使用されてよい、FRP強化セメント質材料または複合材料を用いたシステムおよび方法を開示している。Aldeaにおいては、層は、こて塗りにより現場で適用され、フレームに取付け可能な自立型のパネルを形成するようには適用されない。Aldeaにおいて作られる構造は、繊維ガラスマットにボンディングされた2つのコンクリート層を有する。
【0030】
Lettkemanらに対する米国特許出願公開第2005/0239924号明細書は、ポートランドセメント、細砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを0.05〜2.5重量%含むセメント質組成物について開示している。
【0031】
Browerらに対する米国特許出願公開第2005/0274294号明細書は、ポートランドセメント、細砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを1〜4重量%含むセメント質組成物について開示している。
【0032】
本明細書に参照により援用されているTonyanらに対する米国特許出願公開第2006/0174572号明細書は、せん断壁用の不燃性強化セメント質軽量パネルおよび金属フレームシステムについて開示している。
【0033】
Kernsらに対する米国特許出願公開第2006/0281836号明細書は、ポートランドセメント、細砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを含むセメント質組成物について開示している。
【0034】
Pintoに対する米国特許出願公開第2007/0125273号明細書は、ポートランドセメント、細砂、ヒュームドシリカおよびポリカルボキシレートを1〜2重量%含むセメント質組成物を開示している。
【0035】
全体が本明細書に参照により援用されているTonyanらに対する米国特許出願公開第2007/0175126号明細書は、構造的セメント質パネルについて開示している。
【0036】
本明細書に参照により援用されているDurstらに対する米国特許出願公開第2007/0228612A号明細書は、飛来物の貫入を抑えるのにも適した耐爆性コンクリートについて開示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
A.パネル
本発明は、繊維で強化され寸法的に安定したセメント質ボードパネルに関する。
図1は本発明のパネル1の斜視図を示す。
【0044】
図1Aは、セメント質パネル1の相対する外部表面上に強化用材料シート2がさらに備わった
図1のパネル1の側面図を示す。したがって、
図1のパネル1は、繊維強化セメント質芯材を形成し、強化用材料のシート2は、芯材の相対する面上でクラッディングを形成する。典型的な強化シート材料は、2008年3月3日に出願され全体が本明細書に参照により援用されている「CEMENT BASED LAMINATED ARMOR PANELS」という題の米国仮特許出願第61/033,264号明細書に記載される通りの繊維強化ポリマー(FRP)またはその他の材料を含んでいる。
【0045】
典型的には、FRP外皮層はセメント質芯材の両方の表面に対して接着剤により付着されている。例えば、繊維強化外皮をエポキシ接着剤で芯材の表面に対し積層してよい。
【0046】
図1Bは、2つの芯材の2つの相対する内部表面の間の強化材料シートおよびそれぞれ2つの芯材の2つの相対する外部表面上の強化材料シートを備えた2つの芯材として作用する
図1の2枚のセメント質パネル1を含む多層パネルの側面図を示す。
【0047】
本発明のパネルを作るために用いられる主要な出発材料は、無機セメント質結合剤、例えばポートランドセメントなどの水硬性セメント
、好ましいシリカ砂などの無機鉱物充填材、ヒュームドシリカなどのポゾラン微細充填材、ポリカルボキシレート系化合物、詳細にはポリエーテルから選択されるセルフレベリング剤ならびに水および強化用繊維、例えばガラス繊維そしてスラリーがマット状に成形される前にセメント質スラリーに添加される任意のあらゆる添加剤である。
【0048】
パネルは、セメント質組成物および強化用繊維、例えば繊維ガラス繊維の水性混合物が硬化した結果として得られる連続相を含み、25〜45重量%の無機セメント結合剤、35〜65重量%の150〜450ミクロンの無機鉱物充填材、5〜15重量%のポゾラン充填材および0.75〜2.5重量%のポリカルボキシレート系のセルフレベリング剤および6〜12%の水を含む。
【0049】
任意には、水性混合物は、約0.005〜0.500重量%のトリエタノールアミンのセメント結合剤、そして任意には約0.10〜1.80重量%の酒石酸のセメント構成成分を含む。
【0050】
本発明のパネルは、典型的には、強化用繊維が実質的に等分布しているセメント質材料の連続相を含む。
図1のパネルにおいて連続相は、セメント質材料と強化用繊維との水性混合物の硬化の結果として得られる。
【0051】
B.調合
本発明のパネルを作るのに使用される構成成分を以下で詳述する。
【0052】
本発明のセルフレベリング超高圧縮強度セメント質組成物の一実施形態の成分の典型的重量割合を表1に示す。無機セメント質結合剤(水硬性セメント)およびポゾラン微細充填材は一緒に組み合わされて、乾燥反応性粉末として公知である。
【0054】
以下乾燥反応性粉末とも呼ぶ無機セメント質結合剤およびポゾラン微細充填材および無機鉱物充填材を含む乾燥組成物成分の割合を表1Aに示す。
【0056】
ポゾラン微細充填材
ポゾラン材料は、ASTM C618−97において、「それ自体ではほとんどまたは全くセメント質としての価値を有していないものの微粉化された形態でかつ水分の存在下で通常の温度で水酸化カルシウムと化学反応し、セメント質特性を有する化合物を形成する「シリカを含むかまたはシリカとアルミニウムを含む材料」と定義づけされている。使用されることの多い1つのポゾラン材料はシリカヒューム、すなわちシリコン金属および鉄−シリコン合金の製造の産物である微粉化された非晶質シリカである。それは高いシリカ含有量と低いアルミナ含有量を有することを特徴とする。
【0057】
ポゾラン材料は、典型的には、表2に列挙した中央粒径を有する。
【0059】
本発明の一実施形態においては、シリコン金属および鉄−シリコン合金製造の反応産物である微粉化された非晶質シリカであるシリカヒュームが、好ましいポゾラン微細充填材である。シリカヒューム粒子の平均粒径は極めて小さく、すなわち約0.1ミクロン、つまりポートランドセメント結晶粒の平均粒径のほぼ100分の1である。最も広い実施形態においては、ポゾラン材料の平均粒径は約50ミクロン未満であるべきであり、典型的粒径は10ミクロン以下であり、より典型的には平均粒径は1.0ミクロン以下である。好ましい実施形態において、ポゾラン材料の平均粒径は0.1ミクロン以下であり、これは最適な粒子充填、ポゾラン反応および圧縮強度成長を提供することがわかっているものである。組成物への無機ポゾラン微細充填材の添加は組成物において2つの重大な機能を果たす。
【0060】
ポゾラン微細充填材の細かい粒径は、混合物中に存在する比較的大きい粒子の間にある可変サイズの空所を満たす上で重大な役割を果たす。これらの充填材粒子が無い場合、これらの空所は、未充填状態で空隙を形成するかまたは、水で満たされた状態となる。空隙は最終的には最終的材料の密度および圧縮強度の両方の低下を導く。これらの空間を満たす微細充填材は、著しく高密度の微細構造を導き、材料の圧縮強度性能を増強させる。
【0061】
シリカヒュームポゾラン充填材は同じく、ポートランドセメントの水和の結果として生成される水酸化カルシウムとも反応する。この反応の結果、カルシウムシリケート水和物が形成され、これは耐久性のある極めて強いボンディング材料で、硬化済みのセメントベースの組成物の強度と耐久性を増強させる。
【0062】
軽石、真珠岩、珪藻土、凝灰岩、トラス、メタカオリン、マイクロシリカ、高炉スラグ微粉末およびフライアッシュを含めたさまざまな天然および人工の材料が、ポゾラン特性を有するものとして言及されてきた。シリカヒュームが本発明のパネルにおいて使用するために特に便利なポゾランであるものの、その他のポゾラン材料を使用してもよい。シリカヒュームとは対照的に、メタカオリン、高炉スラグ微粉末および微粉砕フライアッシュははるかに低いシリカ含有量および大量のアルミナを有するが、有効なポゾラン材料であり得る。シリカヒュームが使用される場合、それは、反応性粉末の約5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%を構成することになる(反応性粉末の例
は、水硬性セメントのみ
、水硬性セメントとポゾランの配合物
、または水硬性セメント、硫酸カルシウムアルファ半水化物、ポゾランおよび石灰の配合物)。その他のポゾランが代用される場合、使用量は、シリカヒュームに類似する化学的性能を提供するように選択される。
【0063】
シリカヒュームは、純粋シリカ砂を非常に細かい粉末に粉砕することにより作られる二酸化シリコーンとしてCAS番号87347−84−0において定義されるシリカ粉などのその他の細粒子無機鉱物充填材とは全く異なるものである。シリカ粉は、コンクリート組成物およびプラスチックにおいて安価な充填材として一般的に使用されている。
【0064】
CAS番号67256−35−3により定義されているシリカヒュームは、余剰の酸素を有する酸水素炎中で四塩化ケイ素を反応させることによって非常に異なる要領で作られる。結果として得られた固体は、非常に軽く綿毛のような流し込み可能なポゾラン材料であり、圧縮強度、結合強度および耐摩耗性を改善させるためにセメント組成物中に使用されてきた。
【0065】
ポゾラン微細充填材対無機セメント質結合剤の比率は0.05〜0.30、例えば5〜30重量部のポゾラン充填材対95〜70重量部のセメント結合剤という範囲内で広く有用であることがわかった。より好ましい比率は、0.10〜0.25であることがわかっており、0.15〜0.20という最も好ましい比率が、最適なセルフレベリング性能、充填効率、ポゾラン反応および最終的に硬化した組成物中で制御された圧縮強度成長を提供することがわかっている。表2Cに、ポゾラン充填材/無機水硬セメント比の範囲を列挙する。
【0067】
無機セメント質結合剤(無機水硬性セメント)
好ましい無機セメント質結合
剤は、さまざまなクラスのポートランドセメントから選択され、より粗い粒径をもつ市販のものがこの組成物においては最も好ましい。本発明のセメント質組成物中で使用されるポートランドセメントのブレーン粉末度は、典型的に2000〜6000cm
2/グラムの間の範囲にある。
【0068】
より粗い粒径を有するポートランドセメントに必要な水量が比較的少ないことの結果として、より高い材料密度および増強された材料圧縮強度性能を有する混合物をもたらすことがわかった。
【0069】
無機鉱物充填材
好ましい無機鉱物充填材は、以下でさらに記述されている通りの特定の粒径分布を有するシリカ砂である。これらの充填材は、本発明の組成物においていくつかの極めて重要な機能を有する。
【0070】
本発明のセメント質組成物で作られた最終的製品の寸法安定性は、無機鉱物充填材を使用することで著しく増強される。純粋ポートランドセメント組成物は、変動する熱水条件下で寸法的に非常に不安定となる傾向をもつ。シリカ砂などの鉱物充填材は、材料の機械的性能を犠牲にすることなく材料の寸法的安定性を改善するのを助ける。
【0071】
純粋ポートランドセメント組成物は、硬化中に材料が受ける塑性収縮が制約されていることに起因して、きわめて収縮しやすくかつそれに付随して亀裂が発生しやすい。制約された塑性収縮の効果は、特にシリカヒュームのようなポゾラン材料の存在下で含水量が非常に低い組成物にとってさらに一層深刻なものとなる。シリカ砂は、制約された塑性収縮に起因する亀裂の発生を制御し、そして場合によってはなくす上で重要な役割を果たすことがわかった。
【0072】
無機鉱物充填材の粒径範囲を適切に選択することは、本発明のセメント質混合物に対してより高密度の粒子充填を提供する上で有益であることがわかった。より高密度の充填は、最終的材料における内在的欠陥を少なくし、このことが最終的に複合材料の機械的性能および圧縮強度を増強させる。
【0073】
無機鉱物充填材の粒径およびセメント質混合物中で使用される充填材の合計量は、混合物のセルフレベリング特性に有意な形で寄与することがわかった。無機鉱物充填材が非常に細かい平均粒径を有する場合、材料は流動特性が低くセルフレベリング挙動を全く示さないということがわかった。さらに、無機鉱物充填材の量が過度に多い、すなわち或る限界値に達した場合、鉱物は同様に低い流動特性を有し、セルフレベリング挙動を全く示さないということもわかった。
【0074】
セルフレベリング特性および超高圧縮強度性能をもたらすことがわかった無機充填材の粒径分布が表2Bに示されている。
【0076】
最終的組成物に対してセルフレベリング挙動を提供することがわかっている組成物の無機鉱物充填材含有量は、乾燥ベースで0.80〜1.50:1.0の範囲内の無機充填材料対セメント質材料の重量比によって表される。
【0077】
本発明の組成物中の無機鉱物充填材の中央粒径は、150〜450ミクロンの範囲内、より典型的には、200〜400ミクロンの範囲内そして好ましくは250〜350ミクロンの範囲内にあるべきである。約250〜約350ミクロンの範囲内の中央粒径が使用される場合、組成物は、最適なセルフレベリング挙動、塑性収縮亀裂発生の制御、効果的な粒子充填そして最適な圧縮強度成長を示すことがわかった。典型的な無機鉱物充填材は、表2C中に列挙される中央粒径を有する。
【0079】
最適な結果を提供することがわかっている別のパラメータは、無機鉱物充填材、例えばシリカ砂対乾燥反応性粉末(無機セメント結合剤とポゾラン微細充填材反応性粉末の合計重量)の比率である。優れた結果は、約0.75から1.50対1.0の比率で得られ、より好ましい結果は、0.80〜1.20:1.0の比率にあり、最適なセルフレベリング、効果的な充填および圧縮強度成長は、0.90〜1.10:1.0、例えば90〜110重量部の無機鉱物充填材、例えばシリカ砂対100部のセメント質結合剤とポゾラン充填材の合計比率で達成される。表2Dは、無機鉱物充填材/乾燥反応性粉末の比率についての範囲を列挙している。
【0081】
水
典型的には、水対無機セメント質結合
剤およびポゾラン充填材乾燥反応性粉末の重量比は、0.35以下に維持され、典型的比率は約0.25〜0.30:1.0未満であり、最適な粒子充填および圧縮強度は、0.20:1.0以下の水対反応性粉末比で達成される。表2Eは、水/乾燥反応性粉末比についての範囲を列挙している。
【0083】
セルフレベリング剤−超可塑剤
ポリカルボキシレート化学に基づく有機混和物が、本発明の組成物における排他的に有効なセルフレベリング剤であることが発見されており、硬化済みセメント質装甲パネルの長期圧縮強度の成長のための所要の流動性および流動特性を提供する。
【0084】
ポリカルボキシレート系組成物は、乾燥ベースでセメント質材料の約0.25〜5.00重量%、そしてより典型的には0.50〜3.0重量%の量で使用された場合に有効であることがわかった。約0.25%未満のレベルの量は、セメント質材料の流動性および流動特性の有意な改善を全く提供しない。ポリカルボキシレート系超可塑剤を約5.0重量%超のレベルで使用すると、圧縮強度の長期成長に対する有意な悪影響が引き起こされる。表2Fは、超可塑剤についての範囲を列挙する。
【0086】
ポリカルボキシレート超可塑剤を本発明のセメント質組成物のその他の構成成分との混和物の形で規定用量で使用した場合、セルフレベリング性のセメント質組成物が得られる。
【0087】
典型的には、本発明で規定された量の範囲内でアルカノールアミン、例えばTEAおよび酸性添加剤、例えば酒石酸を使用した場合、ポリカルボキシレート超可塑剤を乾燥反応性粉末の約0.75〜1.50重量%まで、さらには乾燥反応性粉末の約1.0〜1.25重量%まで削減して、それでもなお所望の期間の流動性および長期圧縮強度成長を得ることができる。
【0088】
本明細書全体を通して使用されるポリカルボキシレート系のセルフレベリング剤という用語は、側鎖の少なくとも一部分がカルボキシル基またはエーテル基を通して主鎖に結合されている、ペンダント側鎖を伴う炭素主鎖を有するポリマーを意味する。これらのポリカルボキシレート組成物の例は本明細書に参照により援用されている米国特許第6,942,727B2号明細書の第4欄16〜32行目に見出すことができる。ポリカルボキシレート分散剤は、高い分散効果を有し、水硬性セメント中の含水量を低減する上で非常に効果的である。これらの分散剤または超可塑剤は、分散させるべき粒子をとり囲むことによって作用し、このとき各ポリマー鎖の間の反発力が粒子を、隔離したさらに流動的な状態に保つ。
【0089】
セメント質組成物中で使用されるポリカルボキシレート剤は、GLENIUM3030NS、GLENIUM3200HES、GLENIUM3000NS(Master Builders Inc., Cleveland, Ohio)、ADVA(W.R.Grace Inc., Columbia, Md)、VISCOCRETE(Sika, Stockholm, Sweden)、およびSUPERFLUX(Axim Concrete Technologies Inc., Middlebranch, Ohio)という商標で販売されている分散剤または減水剤を含んでいてよいが、これらに限定されない。本発明において優れた結果をもたらした市販のポリカルボキシレート化ポリエーテル組成物の2つの例として、W.R.Grace, Colombia, MDより市販されているAdva(登録商標)CastおよびAdva(登録商標)Cast500がある。
【0090】
アルカノールアミンおよび酸/酸性塩
上述の通り、セメント質組成物の流動性を制御するためにアルカノールアミン、例えばトリエタノールアミン(TEA)および酸または酸性塩、例えば酒石酸を添加してよい。セメント質材料の約0.005重量%〜約0.500重量%のTEA、より典型的には乾燥反応性粉末の0.010重量%〜約0.250重量%、より好ましくは、0.020重量%〜0.100重量%そして最も好ましくは約0.025〜0.075重量%のTEAの添加により、レベリング剤超可塑剤の使用をさらに減少させることが可能になる。例えば、アルカノールアミンおよび酸/酸性塩の添加により、本来用いられる量のわずか約3分の1の量を使用する一方で、パネルの所望の圧縮強度成長速度を得ることができる。
【0091】
その上、アルカノールアミンおよび酸/酸性塩の添加は、硬化期間を遅延させてセメント質装甲パネルの取扱いおよび仕上げを可能にする。これにより、セメント質組成物は、パネルが取扱いに充分なほど硬化した時点と、セメント質組成物がその完全に硬化した最終的パネル形態に達する前に最終仕上げのためにサンディングされる時点の間に、より長いパネル取扱期間を有することもできるようになる。約0.005%未満の量では、硬化時間は過度に急速であり、パネルの長時間圧縮強度の成長の改善は全く存在しない。
【0092】
0.500%超のTEAが使用される場合、硬化が速すぎて取扱期間を改善させることができず、圧縮強度は、効果的な耐爆性および防弾性のための約10,000psi超、例えば15,000psiまたは20,000psiから25,000〜30,000psiまでの圧縮強度を提供するのに充分な時限にわたり成長しない。
【0093】
表2Gは、アルカノールアミンの範囲を列挙している。本発明の実施形態で使用するための適切なアルカノールアミンの例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンのうちの1つ以上が含まれる。
【0095】
上述のアルカノールアミンと組み合わせた形での例えば酒石酸などの酸または酸性塩(アルカリ金属塩)の使用は、流動性および流動特性のために必要とされる超可塑剤の量を低減する上で効果的であることがわかっている。それにより同様にセメント質材料の約0.10〜約1.80重量%のレベルで経時的な圧縮強度増加の成長も改善され、典型的には、約0.20〜1.20重量%の範囲内で使用され、好ましい範囲は約0.30重量%〜0.80重量%であり、より好ましい量は約0.40重量%〜約0.60重量%である。酒石酸が約0.10%未満で使用された場合、圧縮強度成長の改善、あるいはセメント質材料の所要の流動性および流動特性を提供する超可塑剤所要量の低減は全く存在しない。約1.8重量%超のレベルで、圧縮強度の長期成長は、効果的なセメント質装甲パネルとしての使用に必要とされる圧縮強度より低いレベルまで劣化する。
【0096】
流動性を改善するのに適した酸/酸性塩添加剤のその他の例としては、クエン酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム−カリウムおよびクエン酸ナトリウムが含まれるが、それらに限定されない。
【0097】
表2Hは、本発明の実施形態において利用してよい酸および酸性塩の範囲を列挙する。
【0099】
強化用繊維
本発明のセメント質装甲パネルは、典型的に強化用繊維、例えばガラス繊維または鋼繊維を含む。しかしながら、強化用繊維無しの製品も本発明の範囲内に入る。
【0100】
セメント質装甲パネルは、以下で詳述する通り成形ライン上で被着されたセメント質スラリーでパネルが製造される間に、典型的にはセメント質層内に埋込まれるばらばらに細断されたガラス繊維の1つ以上の層で強化される。ガラス繊維は、約0.5in(1.3cm)〜約1.5in(3.8cm)の長さに細断される。ガラス繊維は、直径が約5〜25ミクロン(マイクロメートル)、典型的には約10〜15ミクロン(マイクロメートル)のモノフィラメントである。
【0101】
セメント質装甲パネルは、最終的セメント質装甲パネルに硬化される前に、複合材料組成物全体の約0.5〜約6体積%、より典型的には約3体積%〜約3.5体積%の量のガラス繊維で均一に強化される。合計セメント質組成物というのは合計無機結合剤、無機鉱物充填材、ポゾラン充填材、セルフレベリング剤ならびに遅延剤および促進剤などの添加剤を意味する。したがって100立方フィートの合計組成物に対して、0.5〜6立方フィートの繊維が存在する。セメント質装甲パネルは同様に、複合製品を製造するのに使用される全湿潤組成物ならびに複合製品自体の0.5〜6体積%でもある。
【0102】
耐アルカリ性が重要である場合には、日本電気ガラス(NEG)350Yなどの耐アルカリ性ガラス繊維(ARガラス繊維)を使用できる。このような繊維は、マトリクスに対するより優れたボンディング強度を提供し、したがって、本発明のパネルのためには好適である。ガラス繊維は、約5〜25ミクロン(マイクロメートル)そして典型的には約10〜15ミクロン(マイクロメートル)の直径を有するモノフィラメントである。フィラメントは一般に100本のフィラメントストランドの形に組合わされ、これを、約50本のストランドを含むロービングの形に束ねてもよい。ストランドまたはロービングは一般に、例えば長さが約0.25〜3インチ(6.3〜76mm)、好ましくは0.5〜1.5インチ(13〜38mm)、より好ましくは1〜1.5インチ(25〜38mm)の適切なフィラメントおよびフィラメント束の形に細断される。
【0103】
好ましいガラス繊維の一部または全てに代ってその他の繊維を本発明のセメント質装甲パネル内に含み入れることも可能である。このようなその他の繊維は、セルロース系繊維
(例えば紙繊維
)、ポリマー繊維
(例えばポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミドおよび/またはアラミド繊維
)からなる群の1つ以上のメンバーであってよい。セメント質装甲パネルを強化するためには、炭素繊維および鋼繊維などの金属繊維も使用できるが、ガラス繊維が、優れた耐爆性と弾道衝撃特性をもつセメント質装甲パネルを提供した。
【0104】
付加的な任意の添加剤
空気連行剤、界面活性剤、促進剤、遅延剤および付加的な可塑剤などに使用するための他の公知の添加剤も使用することができる。特に、減水剤、例えばスルホン酸ポリナフタレン、リグノスルホネートおよびメラミンスルホネートを連続相に添加してよく、これはポリカルボキシレート系超可塑剤と組み合わせた状態で二次可塑剤として機能する。
【0105】
高性能外皮強化材
装甲パネルの繊維強化されたセメント質芯材は、セメント質芯材の一方または両方の表面にボンディングした高性能外皮強化材を用いて補強される。外皮強化材は、繊維強化ポリマー積層品(FRP)、薄い金属積層品、FRP金属複合積層品、目の荒い(open−weave)メッシュ、目の詰まった(closed−weave)メッシュなどのさまざまな高性能強化材料で作られていてよい。外皮強化材は、ボンディング剤を用いてセメント質芯材に付着される。例えば芯材に外皮をボンディングするために接着剤を使用してよい。典型的な適切な接着剤は、ウレタン(ホットメルトおよび室温)、エポキシおよびその他のポリマー接着剤である。外皮は、パネルの1つ以上の面に適用されるかまたはパネルを完全に覆ってよく、例えば、矩形パネルは、両面および4つの縁部全てを被覆することができると思われる。
【0106】
あるいは、外皮強化材をセメント質芯材内に埋込んで、ボンディング剤の必要性を回避してもよい。
【0107】
パネルを被覆するための弾性材料は、本明細書に参照により援用されている米国特許出願公開第2009−0004430A1号明細書、2007年6月27日出願の米国特許出願第11/819,340号明細書「Reinforced Elastomeric Configuration Tailored to Meet a User’s Requirements for Protecting a Structure and a Structure Comprised Thereof」の中で記述されているものであってよい。パネルに対してエラストマ材料を適用するための方法も同様に、米国特許出願公開第2009−0004430A1号明細書、米国特許出願第11/819,340号明細書において提供されている。その他のFRPも同様に、本発明の構造と共に使用するために適している。
【0108】
繊維ガラス強化ポリエステル樹脂、繊維ガラス強化ポリエチレンおよび繊維ガラス強化ポリプロピレン樹脂などの繊維強化ポリマー積層品が典型的に使用され、Crane Composition Inc.から入手可能なKemlite Armor Tuf(登録商標)繊維ガラス強化ポリエステル樹脂の織り積層品が好適である。FRP積層品は、連続形態、不連続形態またはその両方の組合せでポリマー樹脂内に埋込まれた強化用繊維を含んでいてよい。
【0109】
FRP積層品中の強化材として、ガラス繊維、アラミド繊維、Kevlar(登録商標)繊維および金属繊維、例えば鋼繊維などの好適な繊維を含めてさまざまな繊維を使用してよい。
【0110】
以下で記述するように、高性能外皮強化材がセメント質芯材の少なくとも1つの表面に付着された状態での繊維強化セメント質パネルの形での最終凝固の後、パネルは、セメント質複合材料の所望の耐爆性および寸法的安定性を示す。
【0111】
C.本発明のパネル製造についての簡単な説明
成形
セメント質パネルは、成形ライン上で、最初に多孔質コンベヤベルト上のキャリヤの上にAR−ガラス繊維などの細断された繊維の層を被着させ、それに続いて細断された繊維の層の上にセメント質スラリーの層を被着させ、次に細断された繊維の第2層を被着させ、その後埋込み装置に層を通してガラス繊維を無作為にセメント質スラリー層内に埋込むことによって成形される。その後これらのステップを再度反復して、第2の層を蓄積させ、厚みがおよそ0.50inのセメント質パネルを生産する。セメントスラリーのみの第3層をパネルの上面に被着させ、スクリードプレートにより直ちに水平化させて、製品パネルの比較的平滑な上面を提供する。
【0112】
硬化
結果として得たパネルを次に、平坦な表面上に保管し、湿式成形(注型)後8〜72時間の初期期間中周囲の温度および湿度条件で硬化する。次にパネルを加湿し、水分損失を防ぐためプラスチックで包む。包んだパネルを7日間140°F(60℃)で硬化する。
【0113】
仕上げ(表面仕上げ)
表面仕上げ用機械類を用いてパネルを約0.50in(1.3cm)例えば53inの厚みまで整え、パネルの上面および下面に平滑な表面を提供する。
【0114】
切断
パネルは、乾式鋸引きまたはウォータジェット切断などの従来の切断方法を用いて、所望のサイズに切断する。
【0115】
D.本発明のセメント質パネル芯材組成物を製造するための生産ラインプロセスの詳細な説明
ここで
図2を参照すると、セメント質装甲パネル生産ラインが概略的に示されており、全体として10という番号で示されている。生産ライン10は、複数の脚部13またはその他の支持体を有する支持フレームまたは成形用テーブル12を含む。支持フレーム12上に含まれているのは、移動キャリヤ14、例えば平滑で不透水性の表面を有するエンドレスのゴム様コンベヤベルトであるが、多孔質表面も企図されている。当該技術分野で周知の通り、支持フレーム12は、示された脚部13またはその他の支持構造を含んでいてよい少なくとも1つのテーブル様のセグメントで作られていてよい。支持フレーム12は同様に、フレームの遠位端部18に主駆動ロール16を、そしてフレームの近位端部22に遊びロール20を含む。同様に、ロール16、20上のキャリヤ14の所望の張力および位置付けを維持するため少なくとも1つのベルトトラッキングおよび/またはテンショニング装置24が典型的に備えられている。この実施形態において、パネルは、近位端部22から遠位端部18まで方向「T」に移動キャリヤが進むにつれて連続的に生産される。
【0116】
この実施形態においては、凝固前のスラリーを担持するためのクラフト紙、剥離紙製のウェブ26またはプラスチック製のキャリヤを備え、キャリヤ14上に置いてそれを保護しかつ/またはそれを清潔に保ってよい。
【0117】
しかしながら、連続ウェブ26ではなくむしろ比較的剛性の材料の個別シート(図示せず)、例えばポリマープラスチックシートをキャリヤ14上に置いてよいということも企図されている。
【0118】
このライン10により生産されるセメント質装甲パネルがキャリヤ14上で直接成形されることも企図される。その場合、少なくとも1つのベルト洗浄装置28が設置される。キャリヤ14は、当該技術分野において公知であるように、主駆動ロール16を駆動するモーター、滑車、ベルトまたはチェーンの組合せによって支持フレーム12に沿って移動させられる。キャリヤ14の速度は、製造中の製品に適するように変動させてよいということが企図されている。
【0119】
細断機
本発明のこの実施形態においては、ウェブ26上のプラスチックキャリヤの上に、長さが約0.5in〜約1.5in(1.3〜3.8cm)、直径が約5〜約25マイクロメートルそして典型的には直径10〜15マイクロメートルのばらばらになった細断ガラス繊維30の層を被着させることにより、セメント質装甲パネルの生産が開始される。このライン10では、さまざまな繊維被着および細断装置が企図されている。例えば、典型的なシステムでは、繊維ガラスコードのスプール32を数本保持するラック31が用いられ、その各々から一定長または一続きの繊維34が細断機36と呼ばれる細断ステーションまたは装置に補給される。典型的には、細断機ステーションの各々において、一定数の繊維ガラスストランドが補給される。
【0120】
細断機36は、回転刃付きロール38を含み、このロールからキャリヤ14の幅を横断して延在する半径方向に延びた刃40が突出しており、またこのロールは、アンビルロール42と近接し接触し回転する関係で配置されている。好ましい実施形態においては、刃付きロール38およびアンビルロール42は刃付きロール38の回転がアンビルロール42をも回転させるような比較的密な関係で配置されるが、逆も同様に企図されている。同様にアンビルロール42は弾力性ある支持材料で被覆されており、好ましくは刃40がこの材料に当ってコード34をセグメント状に細断する。ロール38上の刃40の間隔取りが、細断された繊維の長さを決定する。
図2を見ればわかるように、細断機36は、生産ライン10の長さを最大限生産的に使用するため近接端部22近くでキャリヤ14の上に配置される。繊維ストランド34が細断されるにつれて、繊維は、キャリヤウェブ
26の上にばらばらに落下する。
【0121】
スラリーミキサー
この生産ライン10は、全体として44と示されているスラリー補給ステーションまたはスラリーフィーダーまたはスラリーヘッドボックスおよびこの実施形態においては湿式ミキサー47であるスラリー供給源を含む。スラリーフィーダー44は、キャリヤウェブ26上の細断された繊維の上にスラリー46を被着させるために湿式ミキサー47からスラリー46の供給を受ける。
【0122】
スラリー補給装置
ここで
図2を参照すると、以上で言及した通り、スラリー補給ステーション、スラリーフィーダーまたはスラリーヘッドボックスとも呼ばれる全体として44で示されているこのスラリー補給装置は、湿式ミキサー47からスラリー46の供給を受ける。
【0123】
好ましいスラリーフィーダー44は、キャリヤ14の走行方向「T」に対し横断方向に配置された主計量ロール48を含む。計量ロール48と近接、平行、回転関係で、コンパニオンロールまたはバックアップロール50が配置されている。スラリー46は、2本のロール48、50の間のニップ52の中に配置されている。
【0124】
スラリーフィーダー44は同様に、間にニップを形成するように計量ロール48の表面に隣接して取付けられるべきスラリー補給装置44の複数の側壁54に取付けられたゲート132も有している。このゲート132は、ニップがゲート132とロール48の上部部分の間にくるように計量ロール48よりも上にある。ロール48、50およびゲート132は、充分近い関係で配置されており、こうしてロール48とゲート132の間のニップがスラリー46の供給を保持し、同時にロール48、50が相対的に回転するようになっている。ゲート132には、振動器(図示せず)が備わっている。計量ロール48は、ニップ52から、ロール48とゲート132の間のニップまで回転する。
【0125】
ゲート132は、計量ロール48上で心出しされているかまたは計量ロール48上の心よりわずかに上流側にあってよい。
【0126】
その他のサイズが企図されているものの、典型的には、計量ロール48はコンパニオンロール50よりも大きい直径を有する。
【0127】
同様に、典型的にはロール48、50のうち一方が平滑なステンレス鋼の外側を有し、他方のもの、すなわち好ましくはコンパニオンロール50は、その外側が弾力性を有する非粘着性の材料で被覆されている。
【0128】
振動ゲート132は、ゲート132上にスラリー46が大量に集積するのを防止するのに役立ち、計量ロール48上に被着するスラリー46の厚みを制御する。振動ゲート132は、清掃およびメンテナンスのために壁取付け具から容易に取外し可能である。振動ゲートのより詳細な記述は、その全体が本明細書に参照により援用されている2006年11月1日出願の同時係属出願第11/555,655号明細書中に見出すことができる。
【0129】
典型的には、スラリーフィーダー44は、好ましくは、TEFLON(登録商標)材料などの非粘着性材料で作られるかコーティングされた一対の比較的剛性の側壁54(図示されたもの)を有する。側壁54は、ニップ52の中に注ぎ込まれたスラリー46がスラリーフィーダー44の側面から流出するのを妨げる。好ましくは支持フレーム12(
図2)にしっかりと固定された側壁54は、スラリー46を保持するためにロール48、50の端部に近接した関係で配置される。ただし、側壁54がロールの端部に接近し過ぎて、ロールの回転を妨げることはない。
【0130】
本発明の主要な特徴は、スラリーフィーダー44が移動するキャリヤウェブ26上に相対的に制御された厚みのスラリー46の均等な層を被着させるという点にある。適切な層厚みは、約0.16インチまたは0.25インチからの範囲にある。しかしながら、生産ライン10によりセメント質装甲パネルで2つの層が生産されるのが好適であり、適切なパネルはおよそ0.5インチであるものとして、特に好適なスラリー層厚みは0.25インチの範囲内にある。しかしながら、標的パネルの成形厚みは約0.53インチであることから、標準層厚みは、典型的には2つの成形ステーションの各々において約0.265インチにより近いものである。
【0131】
したがって、振動ゲート132と主計量ロール48の間の相対的距離を、被着されるスラリー46の厚みを変動させるように調整してよい。
【0132】
ウェブ26全体を横断してスラリー46を均一に被着させるために、スラリー46は、スラリーミキサーまたはタンク47の出口と流体連通する第1の端部を有するホース56または類似の導管を通してスラリーフィーダー44まで送出される。ホース56の第2の端部は、当該技術分野において周知のタイプの横方向に往復運動するケーブル駆動された流体を動力源とするディスペンサに接続されている。こうして、ホース56から流れるスラリーはロール48、50とスラリーフィーダー44の側壁54により画定されたタンクを満たすように横方向往復運動でフィーダー44内に注入される。
【0133】
計量ロール48の回転により、ロール48、50とスラリーフィーダー44の側壁54によって画定されたタンクからスラリー層46が引き出される。
【0134】
このフィーダー装置44の別の特徴は、主計量ロール48とコンパニオンロール50が両方共、同じ方向に駆動され、こうしてそれぞれの移動する外部表面上でスラリーが早期凝固する機会が最小限におさえられるという点にある。流体動力、電動またはその他の適切なモーターを含む駆動システム(図示せず)が、
図2で見た場合に時計回りである同じ方向に1本または複数のロールを駆動するために、主計量ロール48またはコンパニオンロール50に連結されている。当該技術分野において周知であるように、ロール48、50のいずれか一方を駆動させてよく、もう一方のロールを滑車、ベルト、チェーンおよびスプロケット、歯車またはその他の公知の動力伝達技術を介して連結して、確動的で共通の回転関係を維持してよい。
【0135】
ロール48の外部表面上のスラリー46が移動するキャリヤウェブ26に向かって移動するにつれて、スラリー全てがウェブ上に被着され、ニップ52に向かって上向きに逆走しないということが重要である。このような上向き走行はロール48、50上のスラリー46の早期凝固を促進すると思われ、タンク57からキャリヤウェブ26までのスラリーの平滑な運動を妨げうる。
【0136】
この上向き走行を妨げるのを補助するため、スラリーフィーダー44は、主計量ロール48とキャリヤウェブ26の間にあるドクターブレード134を有する。ドクターブレード134により、スラリー46はキャリヤウェブ26の上の繊維ガラス繊維層を均一に被覆し、ニップ52およびフィーダータンク57に向かって上方へ逆走することはなくなる。ドクターブレード134は同様に、早期に凝固するスラリー46が主計量ロール50上に無い状態を保つのを助ける。
【0137】
ドクターブレード134は、Dubeyらに付与された米国特許第6,986,812号明細書のプロセスにおいて使用されるワイヤのように計量ロール48の表面からスラリーを除去する。ドクターブレード134は同様に、均一層またはカーテン状にスラリー46を収集するためにも役立ち、ウェブ上の繊維ガラス層全体にわたり約1.0〜1.5インチ(2.54〜3.81cm)の点までウェブの運動方向にスラリー46を下向きに導いて、繊維ガラス層をスラリー46で均一に被覆する。これは、繊維ガラス層を被覆するのに比較的薄いスラリーが使用される場合、比較的薄いスラリーはワイヤ上に滴下する傾向を有するため、特に重要である。
【0138】
スラリー補給装置の下流側での処理
再び
図2を参照して、セメント質装甲パネル生産ラインのその他の運転構成要素について簡単に記述するが、これらについては、以下の文献中でさらに詳細に記述されている。
【0139】
全体が本明細書に参照により援用されている「SLURRY FEED APPARATUS FOR FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENTITIOUS PANELS PRODUCTION」という題の、Dubeyらに付与された米国特許第6,986,812号明細書
、および
その全体が本明細書に参照により全て援用されている同一出願人による以下の同時係属米国特許出願
。
「MULTI−LAYER PROCESS AND APPARATUS FOR PRODUCING HIGH STRENGTH FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENTITIOUS PANELS」という題の、米国特許出願番号第10/666,294号のDubeyらに対する米国特許出願公開第2005/0064164A1号明細書
。
「EMBEDMENT DEVICE FOR FIBER−ENHANCED SLURRY」という題の、米国特許出願番号第10/665,541号の、Porterに対する米国特許出願公開第2005/0064055A1号明細書
。
2006年11月1日出願の、「METHOD FOR WET MIXING CEMENTITIOUS SLURRY FOR FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENT PANELS」という題の米国特許出願第11/555,655号明細書
。
2006年11月1日出願の、「APPARATUS AND METHOD FOR WET MIXING CEMENTITIOUS SLURRY FOR FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENT PANELS」という題の米国特許出願第11/555,658号明細書
。
2006年11月1日出願の、「PANEL SMOOTHING PROCESS AND APPARATUS FOR FORMING A SMOOTH CONTINUOUS SURFACE ON FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENT PANELS」という題の米国特許出願第11/555,661号明細書
。
2006年11月1日出願の、「WET SLURRY THICKNESS GAUGE AND METHOD FOR USE OF SAME」という題の米国特許出願第11/555,665号明細書
。
2006年11月1日出願の「MULTI−LAYER PROCESS AND APPARATUS FOR PRODUCING HIGH STRENGTH FIBER−REINFORCED STRUCTURAL CEMENTITIOUS PANELS WITH ENHANCED FIBER CONTENT」という題の米国特許出願番号第11/591,793号のDubeyに対する米国特許出願公開第2007/0110970A1号明細書
。
2006年11月1日出願の「EMBEDMENT ROLL DEVICE」という題の米国特許出願番号第11/591,957号のPorterらに対する米国特許出願公開第2007/0110838A1号明細書。
【0140】
埋込み装置
シープフートローラーなどを含めた(ただしこれに限定されない)さまざまな埋込み装置が企図されている。しかしながら、この実施形態においては、埋込み装置70は、フレーム12上のキャリヤウェブ14の走行方向とは横方向に取付けられた少なくとも一対のほぼ平行なシャフト76を含む。各シャフト76には、小径ディスク(図示せず)によってシャフト上で互いから約0.1〜約0.25インチ(0.25〜0.63cm)の距離だけ軸方向に離隔されている複数の比較的大きい径のディスク74が備わり、ここでより長いおよびより小さいディスクは同じ軸上にある。
【0141】
セメント質装甲パネルの生産中、シャフト76およびディスク74は、シャフト76の長手方向軸を中心にして共に回転する。当該技術分野において周知の通り、シャフト76のいずれか一方または両方に動力が供給されてよい。一方のシャフト76のみに動力が供給されている場合、もう一方をベルト、チェーン、歯車駆動機構またはその他の公知の動力伝達技術によって駆動して被動シャフトを対応する方向および速度に維持してよい。隣接する、好ましくは平行なシャフト76のそれぞれのディスク74は重複し、スラリー中に「混練」または「マッサージ」作用を作り出すように互いに噛み合わされており、これが先に被着された繊維68を埋込む。さらに、ディスク74の近接、噛み合いおよび回転関係により、ディスク上にスラリー46が集積するのが妨げられ、実際には、スラリー塊が早期凝固することにより引き起こされる生産ラインの休止時間を著しく削減する「自浄」作用が作り出される。
【0142】
シャフト76上のディスク74の噛み合わせ関係には、小径スペーサーディスク(図示せず)および比較的大きい径の主ディスク74の相対する周囲の近接する配置が含まれ、これもまた自浄作用を促進する。ディスク74は相互に近接して(ただし好ましくは同じ方向に)回転することから、スラリー粒子が装置内に捕捉されて早期凝固した状態とはなり難い。互いに対して横方向にオフセットされている2組のディスク74を提供することにより、スラリー46は多数の破砕運動に付され、混練作用が作り出され、これによりスラリー46内に繊維68がさらに埋込まれる。
【0143】
生産ライン10中で使用するのに適した埋込み装置70の一実施形態は、その全体が本明細書に参照により援用されている、「EMBEDMENT DEVICE FOR FIBER−ENHANCED SLURRY」という題の、米国特許出願公開第2005/0064055号明細書として公開された2003年9月18日出願の同時係属米国特許出願第10/665,541号明細書の中で、さらに詳細に開示されている。
【0144】
付加的層の適用
繊維68が埋込まれたならば、パネル92の第1層77は完成したものとなる。好ましい実施形態においては、第1層77の高さまたは厚みは0.25〜0.27インチの近似範囲内にある。この範囲は、セメント質装甲パネル内の類似の層と組み合わせた場合に所望の強度および剛性を提供することがわかっている。
【0145】
所望の厚みの構造セメント質パネルを構築するためには、典型的には付加的層が追加される。この目的で、フィーダー44と実質的に同一である第2のスラリーフィーダー78が、移動キャリヤ14と動作関係で備えられ、既存の層77の上にスラリー46の付加的層80を被着させるように配置される。
【0146】
次に、実質的に細断機36および66と同一である付加的細断機82が、ラック31と類似の形で構築されフレーム12に対して配置されたラック(図示せず)から提供された第3の繊維層68を被着させるため、フレーム12に対し動作関係で備えられる。繊維68はスラリー層80の上に被着され、第2の埋込み装置86を用いて埋込まれる。埋込み装置70と構造的にも配置的にも類似する第2の埋込み装置86は、第1層77を混乱させないような形で移動キャリヤウェブ14に対してわずかに高く取付けられる。この要領で、スラリーおよび埋込み繊維の第2の層80が作り出される。
【0147】
ここで
図2を参照すると、凝固性スラリーおよび繊維の連続する各層と共に、付加的なスラリーフィーダステーション78とそれに続く繊維細断機82および埋込み装置86が生産ライン10上に備えられている。好ましい実施形態においては、最終スラリー層が最上部にある合計2層が、セメント質装甲パネルを形成するために提供されている。
【0148】
最終スラリー層が第3のスラリーフィーダステーション78内で層80上に被着されて最終付加的層88を生成し、これはスラリーの上面を平滑化するためにスクリードバー146に通されて、約0.5インチの公称厚みを有する均一の層を生成し、その後でスラリーはカッターブレード98を用いて所定の長さ(典型的には8フィート長)に切断される。
【0149】
本発明の重要な特徴は、パネルが、凝固時点で一体形の繊維強化塊を形成する多数の層を有するという点にある。本明細書中に開示され記載されているように各層内の繊維の存在および配列が或る所望のパラメータによって制御されその範囲内に維持されることを条件として、本発明の方法により生産されたパネル92を層間剥離することは事実上不可能である。
【0150】
成形および平滑化そして切断
上述のように繊維埋込みされた凝固可能なスラリーの2層を被着した時点で、以上で言及したスクリードバーなどの成形用装置がフレーム12に備えられて、パネル92の上面96を成形する。
【0151】
しかしながら、セメント装甲パネル材料の余剰の厚みを削り取る成形装置は望ましくない。利用されない成形用装置の例としては、所望の寸法的特徴に合わせるようにパネルを適合させるべく設計されたバネ式または振動式プレートまたは振動式水平化用スクリードなどが含まれ、これらはセメント質装甲パネル材料の余剰な厚みを削り取ることからセメント質装甲パネル材料では使用されない。このような装置は、パネル表面を効果的に削り取ったりまたは平坦化したりしないと思われる。これらは、繊維が巻き上がり始める原因となり、パネルの表面を平坦化および平滑化する代りにそれを傷つけると思われる。
【0152】
特に、生産ライン10は、パネル92の上面96を穏やかに平滑化するためにフレーム12にスクリードバー146とも呼ばれる平滑化装置を含んでいてよい。スラリー46に振動を加えることにより、平滑化用スクリードバー146は、パネル92全体を通した繊維30、68の分布を促し、より均一な上面96を提供する。
【0153】
この時点で、スラリー層は凝固を始めており、それぞれのパネル92は、典型的な実施形態においてウォータージェットカッターである切断装置98により相互に分離される。このパネル組成物中で適切に鋭いエッジを作り出すことができることを条件として、移動刃を含めたその他の切断装置がこの作業に適するとみなされる。切断装置98は、典型的には8フィート長である所望の長さを有するパネルを生産するように、ライン10およびフレーム12に対して配置される。キャリヤウェブ14の速度は比較的低いことから、切断装置98を、8フィート長でウェブ14の走行方向に対し垂直に切断するように取付けてよい。次に、パネルを、スラリーの湿式注型後すなわちそれがスクリードバーを離れた後8〜72時間乾燥させる。
【0154】
生産ライン10には、少なくとも2層を生産するのに充分な繊維細断装置36、66、スラリーフィーダステーション44、78および埋込み装置70、86が含まれる。生産ライン10に関連して以上で記述した通り、ステーションを反復することによって付加的層を作り上げてもよい。
【0155】
両面または側面が平滑なセメント質装甲パネルを得るために、4ft×8ftの上面および下面の両方をサンディングし、その後任意には後続する加工および梱包のため典型的には約2×2フィートから4×8フィート例えば2.5×4フィートのパネルになるまで所望のサイズに鋸引きする。
【0156】
制御された圧縮強度成長
典型的には、制御された圧縮強度成長速度を達成するようにセメント質組成物を硬化する。達成が所望されているのは、好ましくは4000psi未満、より好ましくは3000psi未満および最も好ましくは2000psi未満の5日圧縮強度、および28日以上の材齢の圧縮強度が20,000psiを超える超高強度のセメント質複合材料である。
【0157】
例として制御された圧縮強度成長のいくつかの所望される速度を表2Iに列挙する。
【0159】
外皮の適用
充分な硬化の後、切断されたパネルに典型的にはニッププローラー内で接着剤をコーティングし、その後強化用外皮をパネルの上面上に置き、次に別のニップローラー対の中を通してセメント質芯材に外皮強化層を積層する。その後パネルを裏返し、そのもう一方の面について積層手順を反復する。
【0160】
一実施形態においては、セメント質パネルをサンディングし、その後、なおも湿ったセメント質芯材に対し接着剤および繊維強化ポリマー外皮層を塗布し、次にFRP外皮を伴うセメント質パネルをスクリードバーまたはローラーの下に通すことが考えられる。
【0161】
本発明の典型的用途
本発明の精選された実施形態は、車両ならびに固定構造物のために使用してよい薄いコンクリート装甲パネルなどの安価な構造パネルを製造するのに適している。本発明の実施形態では靭性および強度が改善されていることから、これまで非実用的であった厚みまで構造装甲パネルを成形し押出し加工してよい。例えば、持ち運び可能なサイズおよび厚みでパネルを生産してよい。これらの持ち運び可能なパネルは、小型武器での射撃の貫通に耐え爆風および破片の影響を緩和するべく構造的枠組に付着するように構成されてよい。
【0162】
軍隊は、覆土から高性能かつ高価な軽量の弾道セラミクスに至る範囲のさまざまな保護用材料を使用する。本発明の一実施形態は、適切に構成された場合、持ち運び可能な製品に加え軍隊保護のための安価な解決方法を提供する。本発明の実施形態のための利用分野としては、軍および政府用途
として安価な弾道装甲中に取込まれる非常に高性能のコンクリート
、軽量構造造形品
(例えば板、溝路、パイプ、チューブ、IおよびWF形材
)、コネクタ
、保護構造
、耐爆性パネル
、破片弾からの防護
、車両装甲の補強
、不法進入抵抗用構造要素などが含まれているが、これらに限定されない。
【0163】
商業的利用者用
として建築用製品
(例えば屋根瓦、壁パネル、床タイルなど
)、軽量構造造形品
(例えば板、溝路、パイプ、チューブ、IおよびWF形材
)、ハリケーンおよびトルネード耐性構造要素、不法進入抵抗用構造要素など。
【実施例】
【0164】
本発明のセメント質組成物の流動特性およびセルフレベリング挙動を、スランプ試験を用いて特徴づけした。以下の実験で使用されるスランプ試験は、平滑なプラスチック表面上に垂直に保たれた直径5.08cm(2インチ)、長さ10.16cm(4in)の中空シリンダを利用する。シリンダの頂部までセメント質混合物を満たし、それに続いて頂面を切り落として余剰のスラリー混合物を除去した。その後シリンダを静かに垂直方向に持ち上げて、スラリーが底面から出てプラスチック表面上に展延して円盤が形成されるようにする。次に、円盤の直径を測定し、材料のスランプとして記録する。優れた流動挙動をもつ組成物は、より大きなスランプ値を生み出す。
【0165】
セメントベースの製品を生産するために従来の高効率方法を使用するには、セメント質スラリーが12.7cm(5in)未満のスランプ値を有することが望ましいが、これは、12.7cm(5.0in)超のスランプ値を有するスラリーを従来の製造方法を用いて取扱いかつ加工するのは極めて困難であるからである。
【0166】
流動特性およびセルフレベリング挙動に対するさまざまな原料変数の影響は、以下で記述する実施例においてスランプ試験を用いて判定される。
【0167】
実施例1
高さ4インチである(両端部が開放し、平坦で平滑な表面上に端部を設置した)直径2インチのシリンダの中にスラリーを注ぎ込み、スラリーの頂部をならして、スランプを測定した。こうして、全ての試験についてスラリーの凝固体積が得られる。その後、シリンダを直ちに持ち上げ、スラリーをシリンダの開放底面端部から流出させた。この行為によりスラリーの「円盤」が形成された。この円盤の直径をインチ単位で測定し記録した。スラリーの流動性が大きくなると、典型的により大きい直径の円盤がもたらされる結果となる。
【0168】
表3は、セメント質混合物のスランプに対する無機鉱物充填材としてシリカ砂含有量の影響を示している。さまざまな混合物におけるその他の原料は一定に保った。結果が示す通り、セメント質混合物のスランプは混合物中のシリカ砂の増加に伴って減少する。
【0169】
表3〜7における混合物のための典型的な調合は、先に論述した表1で示されている。
【0170】
【表3】
【0171】
実施例2
表4は、セメント質混合物のスランプに対するシリカ砂の粒径の影響を示している。2つのタイプのシリカ砂を使用し、第1のものは約200ミクロンの中央粒径を有し、第2のタイプは約10ミクロンの中央粒径を有していた。その他の原料は一定に維持した。表中に示されている通り、セメント質混合物のスランプは組成物中により細かいシリカ砂を使用した場合に著しく減少した。
【0172】
【表4】
【0173】
実施例3
表5は、その他全ての原料を一定に維持した場合の、セメント質混合物のスランプに対するシリカヒュームポゾラン微細充填材の含有量の影響を示している。セメント質混合物のスランプが混合物中のシリカヒュームの含有量の増加と共に減少するということがわかる。
【0174】
【表5】
【0175】
実施例4
表6は、セメント質混合物のスランプに対するセルフレベリング剤の影響を示す。その他の材料を一定に維持して、ポリカルボキシレートおよびポリナフタレン−スルホネート化学系の化合物という2つのタイプの化学混和物を使用した。ポリカルボキシレート化学系の混和物を含む混合物のスランプは、ポリナフタレン−スルホネート系の添加剤を含む混合物よりも著しく高いものであった。
【0176】
【表6】
【0177】
例えば、ミックス9については、ポートランドセメントおよびシリカヒュームの合計100重量部毎に、3.0重量部のセルフレベリング剤が存在する。
【0178】
実施例5
表7は、その他の点では同じである混合物についてのスランプ値に対するポリカルボキシレートセルフレベリング剤の含有量の影響を示している。混合物中で使用される作用物質の量の増加に伴ってスランプが増加することがわかる。
【0179】
【表7】
【0180】
実施例6
表8は、本発明のセルフレベリング性セメント質組成物の圧縮強度を示す。これらの混合物が、典型的には20,000psiを超える超高圧縮強度を生み出すことがわかる。
【0181】
高さ4in×直径2inの真ちゅうのシリンダに混合物を充填し、シリンダの頂縁部をならして余剰の材料を除去し、5秒以内でシリンダを垂直方向に持ち上げてスラリーが展延できるようにし、かつ形成されたスラリー円盤の直径を測定することによって、スランプを測定した。ASTM C109中の試験方法にしたがって2inの立方体上で圧縮強度を判定した。それぞれ最高7時間および最高7日間にわたりスランプ低下および圧縮強度増加を測定した。同様にこれらの混合物の圧縮強度を、材齢7日の試料を140°F(60℃)で水中に沈め続いて175°F(79.4℃)で換気オーブン内において4日間乾燥させ、その後冷却して試験を行い、加速硬化条件下で評価した。
【0182】
【表8】
【0183】
実施例7
スプレーアップ法を用いて耐アルカリ性ガラス繊維を伴う本発明のセルフレベリングセメント質組成物を使用し、繊維強化セメントベースパネルを製造した。
【0184】
スプレーアップ法においては、均一な混合物を得ることを目的として、スラリーを複数の方法でガラス繊維と組み合わせてよい。ガラス繊維は、典型的には、短く細断されたロービングの形をしている。好ましい実施形態においては、スラリーおよび細断ガラス繊維は、パネル金型内に同時に吹付けされる。好ましくは、吹付けは、好ましくは最高0.25インチの厚みの薄層を生産するように多数回行なわれ、これらの薄層は特定のパターンが全くない1/4〜1インチの厚みを有する均一なパネルへと積上げられる。例えば、1つの利用分野においては、長さおよび幅方向に6回の吹付けパスで、3×5ftのパネルが作られた。各層が被着される度に、ローラーを用いてスラリーおよびガラス繊維を密に接触させてよい。圧延ステップの後でスクリードバーまたはその他の適切な手段を用いて層を水平化してよい。
【0185】
典型的には、圧縮空気を用いて、スラリーを霧化する。それがスプレーノズルから出現する毎に、スラリーは、スプレーガン上に取付けられた細断機構によりロービングから切断されたガラス繊維と混合する。スラリーとガラス繊維の均一な混合物を、上述の通りパネル全型内に被着させる。
【0186】
製造されたパネルの公称厚みは1/2インチであり、パネル内のガラス繊維の体積分率は3%であった。表9は、繊維強化したセルフレベリング超高強度セメント質組成物の曲げ性能を示す。表9の調合は、表8のミックス17である。パネルの弾性係数は、完全密度普通強度コンクリート材料の弾性係数のほぼ2倍である5000ksiを超えていた。繊維強化パネルの曲げ強度は3000psiを上回っていた。弾性係数についてはASTM C1325試験方法を使用し、曲げ強度についてはASTM C947試験方法を使用した。
【0187】
【表9】
【0188】
トリエタノールアミン(TEA)および酒石酸を用いた実施例
以下の実施例は、適切な用量で好ましいアルカノールアミン、トリエタノールアミンおよび好ましい酸、酒石酸の混和物を用いることのメリットを示すために提供される。全ての混合物は、接合用構成成分としてポートランドセメントおよびシリカヒュームを0.85対0.15の相対重量比で、そして充填材としてのシリカ砂を接合用構成成分に対し1.05対1.00の重量比で含んでいる。水を、接合用構成成分に対して0.22対1.00の重量比で使用した。混合物の流動性、凝固時間および強度増加を制御するために以下の実施例で列挙されている量で、カルボキシル化ポリエーテル超可塑剤、トリエタノールアミン(TEA99 Low Free Grade(LFG)85%のTEAと15%の水)および酒石酸の規定の化学混和物を添加した。
【0189】
均一な分散を達成するためのホバートミキサー内での高速混合に先立ち、密封プラスチック袋内で少なくとも24時間、75〜80°Fで全ての成分を予め条件付けした。混合物中の温度上昇を、各混合物350gの試料内に埋込まれデータ収集システムに接続された熱電対を使用することにより測定した。ASTM C266中の方法にしたがって、ギルモア針を用いて初期および最終凝固時間を決定した。
【0190】
先の実施例6で記述した試験方法にしたがって、スランプおよび圧縮強度を決定した。
【0191】
実施例8
ミックスの流動性を制御するための接合用構成成分の3重量%の超可塑剤ならびに接合用構成成分の0%(対照)、0.15重量%および0.30重量%のレベルの酒石酸を用いて、上述の手順にしたがって3種類のミックスを調製した。試料混合物にはTEAを全く添加しなかった。ミックスのスランプは、対照については7.5in(19.1cm)、0.15%の酒石酸を含むミックスについては10.3in(26.2cm)、そして0.30%の酒石酸を含むミックスについては10.8in(27.4cm)であるものと判定した。
【0192】
図3は、注型後最初の30時間の間のミックスの温度上昇挙動を示す。
図3は、酒石酸を添加したミックスが、約10時間で凝固した対照混合物と比べて最初の24時間の間に凝固を示さなかったことを示している。
【0193】
図4は、7日間までの圧縮強度増加を示している。
図4は、酒石酸を含むミックスが対照に比べて混合後最初の数日間ではより低い圧縮強度増加速度を有していたものの、7日目には0.15%および0.30%の酒石酸ミックスが対照(19065psi)に比べて高い強度(それぞれ19346psiおよび23759psi)を達成することを示している。
【0194】
実施例9
この実施例では、酒石酸およびTEAの両方の添加の複合効果を評価した。全てのミックスは、実施例8の割合で接合用構成成分、水および超可塑剤を含み、全てのミックスに対してポートランドセメントの0.045重量%の割合でTEAを添加した。酒石酸は、接合用構成成分の0重量%、0.30重量%および0.40重量%の割合であった。ミックスのスランプを、対照および0.30%および0.40%酒石酸試料についてそれぞれ5.9in(15.0cm)、9.9in(25.1cm)、および9.3in(23.6cm)と測定した。これらのミックスについてのスランプ低下を測定し、これを
図5に示す。
図5は、TEAに対して酒石酸を添加した結果として、ミックスの流動性がさらに2〜3時間に延長され、その後0.30%酒石酸ミックスについては2時間前後、0.40%酒石酸ミックスについては3〜3.5時間で流動性が急激に降下し、その後凝固したことを示している。
【0195】
対照に比べてワーカビリティーが延長されたことによりパネルを成形ライン内で成形し切断するのに充分な時間が残される一方、3〜4時間のスランプ低下直後の凝固により、パネルを成形後にたるみなく輸送および取扱いすることが可能となる。酒石酸を含まないミックスは、混合の後最初の半時間以内に急速なスランプ低下を示し、10〜11時間前後で凝固するまで濃厚な塑性状態にとどまった。
【0196】
図6は、注型後最初の30時間における3つのミックスの温度上昇挙動を示す。これは、酒石酸を含むミックスの相対的に急速な凝固を示している。
【0197】
図7は、混合後最初の2〜3時間にわたる試験対象のミックスの圧縮強度増加を示す。酒石酸ミックスはより緩慢な強度増加を示し、こうしてパネルの仕上げのためにより長い時間が許容される。7日目には、両方の酒石酸ミックスが対照ミックスよりも約10%高い強度に達した。0%、0.30%および0.40%の酒石酸ミックスについての加速された強度はそれぞれ22549、22847および20418psiであった。
【0198】
実施例10
実施例8および9のものと類似の割合で、セメント構成成分および水を用いてミックスを調製した。酒石酸を接合用構成成分の0.40重量%の割合で添加し、TEAをポートランドセメントの0.045重量%の割合で添加した。超可塑剤(SP)の量を、接合用構成成分の1重量%、2重量%および3重量%の割合で変動させた。ミックスの結果として得られたスランプは、1%、2%および3%のSPミックスについてそれぞれ8.8in(22.4cm)、9インチ(22.9cm)そして10.3インチ(26.2cm)であった。スラリーが適切なワーカビリティーを有するためには、スランプは5〜7インチ(12.7〜17.8cm)の範囲内にあることが好ましい。したがって、酒石酸が試験用の量でミックスに添加された場合、その他の組成物実施形態におけるその当初の量のわずか3分の1まで、すなわち1%までSPのレベルを低減することができる。
【0199】
図8は、ミックスについてのスランプ低下を示す。1%のSPを伴うミックスはその流動性を約20分間維持し、その後スランプは急速に降下し、最終的に2.5時間前後で凝固した。より多くのSPを含むミックスはより長時間流動性を維持したが、そのスランプも同様に急速に降下し、続いてミックスが凝固した。
【0200】
図9は、注型後最初の30時間のこれらのミックスの温度挙動を示し、温度の遅延はSPレベルの上昇と共に増加している。
【0201】
図10は、これらのミックスの圧縮強度増加を示しており、ミックス間で測定可能な差異は全く指摘されない。加速された強度は、1%、2%および3%のSPミックスについてそれぞれ26145psi、25714psiおよび19096psiであった。
【0202】
好ましくは4000psi未満、より好ましくは3000psi未満そして最も好ましくは2000psi未満の1日圧縮強度および20,000psi〜30,000psiを超える28日以降の材齢の圧縮強度を有する超高強度セメント質複合材料が、制御された圧縮強度増加の速度についての要件を満たし、最も好ましい制御された圧縮強度増加の速度は、セメント質複合材料が、4000psi未満の5日までの圧縮強度および最も好ましくは5日以降2000psi未満の圧縮強度そして、28日以降の材齢については、少なくとも10,000psi、好ましくは15,000psi超、より好ましくは20,000psi超、そしてさらに好ましくは25,000〜30,000psiを超える圧縮強度を有する場合である。
【0203】
実施例11
実施例8〜10で記述されたものと類似の割合で接合用構成成分と水を含むミックスを、接合用構成成分の重量を基準にして1.5重量%のSPおよびポートランドセメントの0.045重量%レベルのTEAを用いて作製した。酒石酸含有量は、接合用構成成分の0.40重量%、0.80重量%および2.0重量%で変動させた。ミックスのスランプを、それぞれ0.40%、0.80%および2.0%の酒石酸ミックスについて8.8インチ(22.4cm)、8.9インチ(22.6cm)および7.8インチ(19.8cm)として測定した。
【0204】
図11は、これらのミックスのスランプ低下挙動を示す。
図12は、温度上昇を示す。
図11および
図12に示されているように、0.80%超の酒石酸含有量を有するミックスは塑性状態にとどまり、最初の24時間以内で凝固しなかった。
【0205】
図13は、これらのミックスの圧縮強度増加を示しており、ここで0.80%および2.0%の酒石酸を伴うミックスははるかに低い強度増加速度を有していた。これは、取扱いおよび仕上げの視点から見て、特に成形後最初の数時間においてかろうじて適切なものである。加速された強度は、それぞれ0.40%、0.80%および2.0%の酒石酸を伴うミックスについて26478psi、24543psiおよび1057psiであった。2.0%を伴うミックスは、許容できる強度増加を有していない。
【0206】
実施例12
本発明の装甲パネルの好ましい実施形態が、離散的な耐アルカリ性ガラス繊維で強化された高密度、超高強度セメント質芯材および、樹脂の中に埋込まれポリウレタン接着剤などの接着剤を用いてセメント質芯材の両方の表面に接着剤ボンディングされた連続ガラス繊維で構成された薄い積層品を伴って、
図1に示されている。
【0207】
連続プロセスを用いて上述の実施例にしたがって、耐アルカリ性ガラス繊維で強化された厚み0.5インチの超高強度セメント質芯材パネルを製造した。パネル内の繊維の公称体積分率は、3.0%であった。製造したパネルを平滑にサンディングし、ポリウレタン接着剤を用いて両方のセメント質表面に対し、ガラス繊維強化ポリマー(FRP)積層品をボンディングした。パネルを24インチのスパンにわたる3点曲げ試験(Third point loading test)の下で、曲げについて試験した。異なる形態の条件付け法に付したパネルの曲げ性能について、パネルを試験した。結果は、表10に示されている。
【0208】
【表10】
【0209】
以下の表10で示した通り、パネルは、全ての場合において8000psiを超える、優れた曲げ強度性能を達成した。
【0210】
個々のパネルまたは積重ねられた一群のパネルを打撃する発射体の速度減衰について試験するため、表11にある調合を用いて本発明にしたがってセメント質装甲パネルを調製した。
【0211】
【表11】
【0212】
図14は、個々のセメント質装甲パネルまたは積重ねた一群のパネルを打撃する標準サイズの発射体の速度減衰と面密度の関係のグラフを示している。面密度は、試験対象パネルの面積単位あたりの質量である。
図14は、鋼繊維を伴う表面仕上げしていないパネルと比較した(ガラス強化材を用いる)本発明の表面仕上げしていないパネルについての速度減衰を表している。したがって、
図14は、鋼繊維を伴う標準密度のセメント質材料に対する、ガラス繊維を伴う本発明の非常に高密度のセメント質材料の比較を表わす。
図14のグラフに示されているように、本発明の表11のセメント質装甲芯材パネルは、その表面に強化用のFRP積層品強化外皮が無い場合でも、鋼繊維で強化されたセメント質装甲パネルよりも優れた速度減衰を提供した。
【0213】
図15は、(ガラス強化材を用いた)本発明の表面仕上げ無しのパネルに比べた、(ガラス強化材を用いた)本発明の表面仕上げされたパネルの速度減衰を表わす。したがって
図15は、本発明のパネルでの表面仕上げの有無の比較を表している。提示されたデータは、速度減衰に関するパネル上の表面仕上げの付加の影響を実証している。
図15のグラフは、繊維強化された表面仕上げ層を持たない同じセメント質芯材構造を有する同じ数の積重ねたセメント質芯材パネルに比べた、セメント質芯材パネルの両方の表面にKemlite Armor Tuf(登録商標)織りガラス繊維で強化されたポリエステル積層品の繊維強化外皮層を有する表11の調合の2、3および4枚のセメント質装甲パネルを打撃する発射体の速度減衰を示す。これは、特に多数のパネルが使用された場合の、表面仕上げ層無しのパネルに比べた、表面仕上げされたパネルで達成される速度減衰百分率の有意な改善を実証している。
【0214】
実施例13
この実施例は、調合物に流動性およびセルフレベリング挙動を付与する上でのSPおよび酒石酸の間の相対的重要性を明らかにしている。先の実施例のものと類似の割合での接合用構成成分および水を伴い、表12に示した含有量でSPおよび酒石酸を伴う5つのミックスを評価した。
【0215】
【表12】
【0216】
全てのミックス中で、ポートランドセメントの0.045重量%の割合でTEAを使用した。これらのミックスのスランプは、
図16に示されている。ここで、ミックスに対する酒石酸の添加により提供された流動性の増強にも関わらず、この添加剤だけではミックスに適正な流動性およびワーカビリティーを与えるには不充分であることがわかる。SPが無い場合、剛性で流動性のないミックスが生成された。
図17は、先の実施例において記述したミックスと類似の要領で挙動したミックス1についてのスランプ低下を示している。ギルモア針を用いて、これらのミックスについて凝固時間(初期および最終)も測定した。これらの結果は、
図18に示されており、この図では、0.80%の酒石酸含有量を超えると、ミックスの凝固が著しく遅くなった(先の実施例においても示されている通り)ということがわかる。
【0217】
実施例14
図19は、本発明のセメント質装甲パネル(積層無し)と本明細書に参照により援用されているTonyanらに対する米国特許出願公開第2006/0174572号明細書にしたがって作られ(同じく積層無し)、United Stages Gypsum Companyから入手可能な構造セメント質パネルとの比較を示す。
図19は、表面仕上げされていない構造セメント質パネル(ガラス強化材を使用)に比べた本発明の表面仕上げされていないパネル(ガラス強化材を使用)を表している。これは、2000〜3000psiの範囲内の圧縮強度および70〜80pcfの範囲内の密度を有するより密度の低い芯材と、非常に高強度で高密度の芯材組成物の比較である。
図19は、速度減衰に対する、標準速度の芯材(ガラス強化材を伴う)と比較した高密度高強度芯材(ガラス強化材を伴う)の影響を表している。
【0218】
本発明の特定の実施形態を示し記述してきたが、当業者であれば、本発明のより広い態様においてかつ以下の特許請求の範囲で記されている通りの本発明から逸脱することなく、変更および修正をこれに加えてよいということを認識するものである。