【実施例】
【0021】
本発明の一実施例にかかる空間映像表示装置1を
図2乃至
図6を参照して説明する。空間映像表示装置1は、
図2に示すように、反射型面対象結像素子2と、被投影部としての実体部3と、を備えている。
【0022】
反射型面対象結像素子2は、
図3および
図4に示したように透明基板としての基板21に、第1層22と第2層23の2層が順次積層されている。また、反射型面対称結像素子2は、
図2に示したように基板21を観察者側に向け、第2層23を実態部3側に向くように設置される。この際に、基板21の対向角A,Bが上端、下端となるように設置される。即ち、
図3の状態から45度時計回りに回転させて設置される。
【0023】
基板21は、平面度の高い例えばガラスなどの透明な材質から平板状に形成されており、本実施例では平面視で正方形状に形成されている。
【0024】
第1層22は、基板21上に形成され、複数の単位ミラーシート24が並べて配置されている。
図4の場合、5個の単位ミラーシート24が並べられている行と、6個の単位ミラーシート24が並べられている行が交互に、合計9行設けられている。つまり、5列または6列の行が9行形成されている。ここで、各行は後述するようにずれて配置されているため、列方向が直線状に配置されないが便宜上列と称する。なお、本実施例では、単位ミラーシート24の長辺方向を行、短辺方向を列と定義しているが、行、列の定義は逆であっても問題ない。
【0025】
単位ミラーシート24は、
図5に示すように短冊状(直方体状)のミラー部材24aが複数積層(接合)されている。ミラー部材24aは、透明プラスチック又はガラスなどで形成されている。また、ミラー部材24aは、他のミラー部材24aとの接合面となる面の一方にアルミや銀などによる光反射膜が形成されている。各ミラー部材24aは接着剤等により互いに接合されて固定されている。
【0026】
また、単位ミラーシート24は、短辺と長辺の比が4m+1:4n+1(m<nかつm、nは1以上の自然数)である長方形状に構成されている。本実施例では、ミラー部材24aの長手方向が単位ミラーシート24の長辺となっている。このようにすることで、短辺と長辺の比が5:9(m=1、n=2)や9:17(m=2、n=4)などの互いに共通の約数を持たない整数比となる。なお、本実施例では、短辺と長辺の比を5:9とする。
【0027】
また、本実施例の第1層22の先頭行と最終行の1行当たりの単位ミラーシート24の数は5であり、第1層22は9行の単位ミラーシート24で構成されている。これは、先頭行と最終行の1行当たりの単位ミラーシート24の数を4m+1とし、行数を4n+1の関係としたことに相当する。即ち、1行の単位ミラーシート24の数は、単位ミラーシート24の短辺方向の比の数値で、1層当りの行数は、単位ミラーシート24の長辺方向の比の数値としている。
【0028】
また、第1層22の5個の単位ミラーシート24が並べられている行と6個の単位ミラーシート24が並べられている行のズレ量Lは、単位ミラーシート24の長辺の長さの1/2となっている。即ち、行を構成する単位ミラーシート24間の境界が隣接する行同士で互いにずれるように単位ミラーシート24が配置されている。
【0029】
第2層23は、第1層22上に形成され、構成は第1層22と同様であるが、第2層23を構成する単位ミラーシート24のミラー部材24aの長手方向が、第1層22のミラー部材24aの長手方向と直交するように配置されている。つまり、長方形状の単位ミラーシート24の長辺方向が第1層22と第2層23とで直交している。
【0030】
このように第1層22と第2層23を形成することで、第1層22の単位ミラーシート24間の境界b1と第2層23の単位ミラーシート24の境界b2がずれるようになる。
【0031】
また、第1層22の先頭行の最初と最後の単位ミラーシート24の、第1層22を構成する他の単位ミラーシート24と接しない頂点(角)v1、v2と、第1層22の最終行の最初と最後の単位ミラーシート24の、第1層22を構成する他の単位ミラーシート24と接しない頂点v3、v4は、第2層23の頂点v1、v2、v3、v4と重なるように配置されている。
【0032】
つまり、
図3や
図4の場合は、第1層22の頂点v1と第2層23の頂点v2が重なり、第1層22の頂点v2と第2層23の頂点v4が重なり、第1層22の頂点v3と第2層23の頂点v1が重なり、第1層22の頂点v4と第2層23の頂点v3が重なるように配置されている。このようにすることで、頂点v1、v2、v3、v4を四隅とする矩形部分を反射型面対称結像素子2として切り出すこともできる。
【0033】
上述したように構成された反射型面対称結像素子2を備えた空間映像表示装置1は、
図2に示したように、基板21を観察者側に向け、さらに、反射型面対称結像素子2の下方で実態部3が水平にされ、実態部3から反射型面対称結像素子2に至る垂直線と上記観察方向の直線とが90度の角度で反射型面対称結像素子2で交差するように配置されている。
【0034】
このように構成することで、実態部3に表示された映像を、反射型面対称結像素子2で観察者の目E(観察位置)に向けて反射し、観察者に対して空間に空間映像である実像4を視覚的に与える。なお、実態部3は、
図2に示したように立体物などの実像を配置するに限らず、ディスプレイ装置で構成してディスプレイ装置に表示される映像を実像4として空間に表示するようにしてもよい。
【0035】
実態部3及び反射型面対称結像素子2の配置は、実態部3は反射型面対称結像素子2の下方で若干、観察位置側(前方側)にあって反射型面対称結像素子2に斜めに向けられ、実態部3に垂直で反射型面対称結像素子2に至る直線と上記観察方向の直線とが反射型面対称結像素子2のほぼ中央で交わり、その2つの直線がなす角度を2等分する角度位置に配置しても良い。また、実態部3は反射型面対称結像素子2の下方で若干、反射型面対称結像素子2より後方側にあって反射型面対称結像素子2に斜めに向けられた配置でも良い。
【0036】
次に、上述した構成の反射型面対称結像素子2の製造方法を
図6のフローチャートを参照して説明する。なお、
図6のフローチャートを実行する前に、単位ミラーシート24は、例えば特許文献2に記載の平行ミラーブロックから切り出すなどの方法で予め形成されているものとする。
【0037】
まず、ステップS1において、基板21上に透明UV(紫外線)硬化樹脂などによる接着剤を塗布しステップS2に進む。なお、接着剤としては、硬化後に透明となり、基板21と単位ミラーシート24を接着可能なものであれば、例えば熱硬化性樹脂などでもよい。
【0038】
次に、ステップS2において、基板21上に第1層22を形成してステップS3に進む。本ステップでは、ステップS1で接着剤が塗布された基板21上に長方形状の単位ミラーシート24を
図4のように複数並べて配置し第1層22を形成する。
【0039】
次に、ステップS3において、ステップS1で塗布した接着剤が硬化したか否かを判断し、硬化した、つまり、第1層22が基板21上に固定された場合は、ステップS4に進み、そうでない場合は本ステップで待機する。
【0040】
次に、ステップS4において、第1層22上に接着剤を塗布しステップS5に進む。本ステップで塗布する接着剤はステップS1で使用したものと同じでよい。
【0041】
次に、ステップS5において、第1層22上に第2層を形成する。つまり、
図3および
図4に示したように、長方形状の単位ミラーシート24の長辺方向が第1層22と第2層23とで直交し、頂点v1、v2、v3、v4が重なるように単位ミラーシート24を並べていく。本ステップでは、第1層22と第2層の構成が上述したように短辺と長辺が共通の約数を持たない長方形状の単位ミラーシートを2層間で直交するように形成するので、頂点v1、v2、v3、v4が重なるように並べることで、第2層23の単位ミラーシート24が第1層22の3以上の単位ミラーシート24に跨ることとなり、結果、第1層22の単位ミラーシート24間の境界b1と第2層23の単位ミラーシート24の境界b2がずれるようになる。
【0042】
なお、ステップS5の後に、頂点v1、v2、v3、v4からなる矩形部分よりも外側をカットする工程を行って反射型面対称結像素子2としてもよいし、該矩形部分より外側に光を通さない覆い部などを形成する工程を行うようにしてもよい。
【0043】
また、
図6に示したフローチャートでは、第1層22の接着剤が硬化後に第2層を形成したが、各層の形成時に、全てのミラーシート全面を覆うような大きさで平面度と剛性の高いガラスなどの板で挟み込みミラーシート全面を均等に押さえてもよい。このようにすると、より高い平行度が得られる。ここで、押さえ込みに用いる平面度と剛性の高いガラスなどの板には透明UV硬化樹脂などと接着しないように表面に剥離処理を行うか、間に剥離シートを挟み込んでおくとよい。
【0044】
本実施例によれば、長方形状の単位ミラーシート24が並べて配置された第1層22と第2層23を有し、第2層23を構成する単位ミラーシート24が、第1層22を構成する複数の単位ミラーシート24に跨るように積層されることで、第1層22の単位ミラーシート24間の境界b1と、第2層23の単位ミラーシート間の境界b2が互いにずれているので、1層目22の単位ミラーシート24の目地部と2層目23の単位ミラーシート24の目地部とが一致しないために、単位ミラーシート24の光学的な誤差が目立ちにくくなる。
【0045】
また、第1層22および第2層23は、互いに隣接する行を構成する単位ミラーシート24の境界がずれるように、長辺の長さの1/2分ずらして配置されていているので、各層内においても、目地部が揃う部分が減少するために、より目地部が分散して単位ミラーシートの光学的な誤差が目立ちにくくなる。また、このようにすることで、仮に第1層22の特定の単位ミラーシート24の平行度が悪化して、第1層22の全面にわたる平面度が悪化した場合でも、第2層23の特定の単位ミラーシート24にだけその平行度の誤差が伝達されることがないようにでき、第2層23の全面にわたる平面度を良好な状態に保つことができる。
【0046】
このように、目地部をずらすことで、たとえ各単位ミラーシート241つ1つに微小な光学誤差が発生しても、その誤差による実像4への影響は第1層22と第2層23で同時に出現することはなくなるので、より小さな影響で留めることが可能となる。つまり、
図1に示した段差が目立ちにくくなる。
【0047】
また、単位ミラーシート24の長方形の長辺と短辺の比が、4m+1:4n+1(m<nかつm、nは1以上の自然数)であり、第1層22および第2層23を構成する複数行×複数列の配列は、行が単位ミラーシート24の長辺方向である場合は、少なくとも先頭行と最終行の1行当たりの単位ミラーシート24の数を4m+1とし、行数を4n+1として、行が単位ミラーシート24の短辺方向である場合は、少なくとも先頭行と最終行の1行当たりの単位ミラーシートの数を4n+1とし、行数を4m+1としているので、1層目22と2層目23をミラー部材24aの長手方向が直交するように配置する際に、1層目22の角と2層目23の角とを合わせやすくすることができる。また、第1層22と第2層23が積層されてなく反射型面対称結像素子2として機能しない部分を最小限とすることするができる。
【0048】
また、反射型面対称結像素子2を空間映像表示装置1に有しているので、反射型面対称結像素子2の単位ミラーシート24の光学的な誤差が目立ちにくくなり、空間映像表示装置1に表示した映像に位置ズレが少なくなる。
【0049】
また、空間映像表示装置1として構成した際に、反射型面対称結像素子2の基板21を観察者側に向けているので、各層の目地部を通過する散乱光が観察者に届く量を低減することができる。
【0050】
また、ステップS2で第1層22を形成してからステップS5で第2層23を形成することで、基準面である基板21に対する第1層22を構成するすべての単位ミラーシート24の平行度を、微小な光学誤差が発生しても連続的なものにすることができる。
【0051】
なお、上述した実施例では、矩形(正方形)の基板21の辺と平行に単位ミラーシート24を配置したが、
図7や
図8に示したように基板21の対角線と平行に単位ミラーシート24を配置するようにしてもよい。上述した実施例のように反射型面対象結像素子2を形成すると、対向角A,Bがそれぞれ上端、下端となるように設置するため、テレビなどの既存の表示装置に使用される液晶ディスプレイなどと異なり、空間映像表示装置1として構成した際に、矩形の辺が設置面に対して水平な状態から45度回転した状態で設置することとなって、観察者に違和感を与えたり、テレビなどの既存の製品との部品等の共通化によるコストダウンが困難となる。そこで、
図7、
図8に示したようにすることで、45度傾けた際に矩形の辺が上端、下端となるので、違和感がなく、また部品の共通化によるコストダウンも可能となる。
【0052】
また、上述した実施例では、長辺方向を行、短辺方向を列としていたが、短辺方向を行、長辺方向を列とした場合は、各層の少なくとも先頭行と最終行の1行当たりの単位ミラーシート24の数を4n+1とし、1層当たりの行数を4m+1としてもよい。つまり、実施例に当てはめると、単位ミラーシート24の短辺と長辺の比が5:9であるので、先頭行と最終行の単位ミラーシート24は9個となり、1層当たり5行形成される。
【0053】
また、第2層23を構成する単位ミラーシート24が、第1層22を構成する単位ミラーシート24を跨ぐ数は3以上に限らず2以上であればよい。この場合でも少なくとも一部は境界がずれる部分が発生する。
【0054】
また、上述した実施例では、単位ミラーシート24を短辺と長辺の比が、4m+1:4n+1(m<nかつm、nは1以上の自然数)としたが、それに限らず、短辺と長辺が前記した比の関係にない長方形状でもよいし、正方形状でも、第1層22と第2層23をずらして配置することができれば構わない。
【0055】
また、互いに隣接する行を構成する単位ミラーシート24の境界をずらす長さは長辺の長さの1/2に限らず、1/3など他の値でもよい。また、上述した実施例ではずれる行が1行おきに設けられていたが、例えば、2行目を1行目から長辺の長さの1/3分ずらし、3行目を1行目の長辺の長さの2/3分ずらし、4行目を1行目と同じ位置にするといったように3行周期でずらすようにしてもよい。勿論、層内で行位置をずらさなくても、少なくとも層間ではずれるように配置することで、単位ミラーシート24の光学的な誤差が目立ちにくくなるという効果は得られるのはいうまでもない。
【0056】
前述した実施例によれば、以下の反射型面対象結像素子2、反射型面対象結像素子2の製造方法が得られる。
【0057】
(付記1)直方体状のミラー部材24aが複数接合されて構成された単位ミラーシート24が2層積層され、該2層のうちの第1層22のミラー部材24aの長手方向と第2層23のミラー部材24aの長手方向とが直交するように積層されている反射型面対称結像素子2において、
第1層22および第2層23は、複数の単位ミラーシート24が複数行×複数列の配列になるように並べて配置されており、
第1層22の単位ミラーシート24間の境界と、第2層23の単位ミラーシート24間の境界が互いにずれていることを特徴とする反射型面対称結像素子2。
【0058】
(付記2)直方体状のミラー部材24aが複数接合されて構成された単位ミラーシート24が2層積層されているとともに、該2層のうちの第1層22のミラー部材24aの長手方向と第2層23のミラー部材24aの長手方向とが直交するように積層されている反射型面対称結像素子2の製造方法において、
基板21上に、硬化後に透明となる接着剤を塗布するステップS1と、
接着剤が塗布された基板21上に、第1層22を構成する単位ミラーシート24を複数並べて配置するステップS2と、
第1層22を構成する単位ミラーシート24上に接着剤を塗布するステップS4と、
ステップS4で接着剤が塗布された第1層22上に第2層23を構成する単位ミラーシート24を第1層22を構成する単位ミラーシート24の境界とずれるように配置するステップS5と、
を含むことを特徴とする反射型面対称結像素子2の製造方法。
【0059】
この反射型面対称結像素子2および反射型面対称結像素子2の製造方法によれば、第1層22の単位ミラーシート24の境界(目地部)と第2層23の単位ミラーシート24の目地部とが一致しないために、単位ミラーシート24の光学的な誤差が目立ちにくくなる。
【0060】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。