(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその趣旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0012】
本実施形態の第1の態様としては、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂と、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂とを含む、エポキシ樹脂組成物が挙げられる。
【化10】
【化11】
(式中、m、n、m’、及びn’は、それぞれ独立して、1〜30の整数であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、炭素数1〜12の2価の脂肪族基、又は炭素数6〜40の2価の芳香族基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一つは、炭素数6〜30の2価の芳香族基を表し、G
1は、グリシジル基を表し、G
2は、水素原子又はグリシジル基を表す。)
【0013】
式(1)中、R
1は、直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。さらには、R
1は、不飽和結合基を含んでいてもよい。R
1の炭素数は、可撓性と耐熱性のバランスの観点から1〜6であることが好ましく、製造容易性の観点から1〜3であることがより好ましい。R
1の具体例としては、例えば、n−ブチレン基、sec−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、1−メチルブチレン基、2−メチルブチレン基、3−メチルブチレン基、1−エチルプロピレン基、1,1−ジメチルプロピレン基、1,2−ジメチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基等が挙げられる。これらの中でも、好ましい具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。式(1)のR
1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
式(1)中、R
1が脂肪族基である場合は、R
2は芳香族基であることが好ましく、R
1が芳香族基である場合は、R
2は脂肪族基であることが好ましい。R
2は、粘度の観点から炭素数6〜20の2価の芳香族基であることが好ましく、製造容易性の観点から炭素数6〜15の2価の芳香族基であることがより好ましい。
【0015】
式(1)のR
2の具体例としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基;フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA、ビフェニル、テトラメチルビフェニル、テトラブロモビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、フェニルベンゾエート、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ジフェニルジスルフィド、ナフタレン、アントラセン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ジブチルヒドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、及びカテコールからなる群より選ばれるいずれかに由来する2価の芳香族からなる群より選ばれるいずれか等が挙げられる。
【0016】
式(1)のR
2は、耐熱性の観点から、フェニレン基、ナフチレン基、及び下記式(3a)で表される構造を有する2価の芳香族基からなる群より選ばれるいずれかであることが好ましい。
【化12】
(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、カルボキシル基、及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれるいずれかを表し、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基、−O−、−CO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO
2−、及び−S−S−からなる群より選ばれるいずれかを表す。)
【0017】
R
3及びR
4は、入手容易性の観点から、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基であることが好ましい。
【0018】
式(3a)で表される構造を有する2価の芳香族基の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ、オキシビフェニル、ジヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ安息香酸−4−ヒドロキシベンゼンエステル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−スルフィニルビスフェノール、及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィドからなる群より選ばれるいずれかに由来する2価の芳香族基等が挙げられる。
【0019】
式(2)のR
1としては、例えば、式(1)のR
1の具体例として上述したものが挙げられる。式(2)のR
1は、式(1)のR
1と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
式(2)のR
1の好ましい具体例としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられる。式(2)のR
1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
式(2)のR
2としては、例えば、式(1)のR
2の具体例として上述したものが挙げられる。式(2)のR
2は、式(1)のR
2と同一であってもよいし、異なっていてもよい。式(2)のR
2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
式(2)中、R
1が脂肪族基である場合は、R
2は芳香族基であることが好ましく、R
1が芳香族基である場合は、R
2は脂肪族基であることが好ましい。式(2)のR
2は、粘度の観点から炭素数6〜20の2価の芳香族基であることが好ましく、製造容易性の観点から炭素数6〜15の2価の芳香族基であることがより好ましい。
【0023】
式(2)のR
2の少なくとも1つは、耐熱性の観点から、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、及び下記式(3b)で表される構造を有する2価の芳香族基からなる群より選ばれるいずれかであることが好ましい。
【化13】
(式中、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、カルボキシル基、及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれるいずれかを表し、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基、−O−、−CO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO
2−、及び−S−S−からなる群より選ばれるいずれかを表す。)
【0024】
R
3及びR
4は、入手容易性の観点から、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基であることが好ましい。
【0025】
式(1)は、耐衝撃性の観点から、下記式(4)であることが好ましい。式(2)は、同じく耐衝撃性の観点から、下記式(5)であることが好ましい。さらに、式(1)は下記式(4)であり、かつ、式(2)は下記式(5)であることがより好ましい。式(1)と式(2)がこのような構造の組み合わせであることで、耐熱性と耐衝撃性とを一層高いレベルで両立させることもでき、ひいては耐リフロー性等を一層向上させることもできる。
【化14】
(式(4)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、G
3は、水素原子又はグリシジル基を表す。m及びnは、それぞれ独立して、1以上の整数であり、3≦(m+n)≦12で表される関係を満たす。)
【化15】
(式(5)中、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、G
4は、水素原子又はグリシジル基を表す。m、n、m’、及びn’は、それぞれ独立して、1以上の整数であり、6≦(m+n+m’+n’)≦20で表される関係を満たす。)
【0026】
式(5)中のG
4は、吸水性や反応速度の観点から、グリシジル基であることが更に好ましい。
【0027】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部と、式(2)で表されるエポキシ樹脂0.1〜10質量部とを含むことが好ましい。式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部に対する式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量が、0.1質量部以上であると、エポキシ樹脂組成物の硬化物は、長期間の接着信頼性が十分に得られる傾向にある。式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部に対する式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量が、10質量部以下であると、エポキシ樹脂組成物を低粘度とすることができ、接着剤等とした際のハンドリング性等が一層向上するとともに、エポキシ当量が大きくなるために硬化性が一層向上する。式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部に対する式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量は、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜9質量部であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の第2の態様としては、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂であって、式(1)中のm及びnが、それぞれ独立して、1〜11の整数であり、かつ、3≦(m+n)≦12で表される関係を満たし、エポキシ樹脂中における、m及びnが、6≦(m+n)≦12で表される関係を満たす成分の割合が、30モル%以上70モル%以下である、エポキシ樹脂が挙げられる。
【化16】
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜30の整数であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜12の脂肪族基、又は2価の芳香族基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一つは、炭素数6〜30の2価の芳香族基を表し、G
1は、グリシジル基を表し、G
2は、水素原子又はグリシジル基を表す。)
【0029】
かかるエポキシ樹脂を用いることでも、低粘度でありながら、可撓性、接着性、及び低吸水性に優れた硬化物を得ることができる。
【0030】
式(1)のm及びnは、それぞれ独立して、1〜11の整数であり、かつ、3≦(m+n)≦12の関係を満たすことが好ましい。(m+n)が3以上であると、可撓性が一層向上する。(m+n)が12以下であると、粘度を一層低くすることができるため、ハンドリング性が一層向上する。
【0031】
本実施形態のエポキシ樹脂中において、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(以下、「a成分」という場合がある。)の割合は、30モル%以上70モル%以下である。本実施形態のエポキシ樹脂中におけるa成分の割合が30モル%以上であると、十分な可撓性が得られ、かつ低吸水性である。また、a成分の割合が70モル%以下であると、低吸水性かつ低粘度となり、ハンドリング性に優れる。a成分の割合は、可撓性と粘度のバランスの観点から、40モル%以上60モル%以下であることが好ましい。ここで記載のm、n、及び(m+n)等は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0032】
本実施形態のエポキシ樹脂において、式(1)のG
2がグリシジル基である成分(以下、「b成分」という場合がある。)の割合は、10モル%以上100モル%以下であることが好ましい。b成分の割合が10モル%以上であると、硬化性が一層向上する。
【0033】
式(1)のR
1は、直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。さらには、R
1は、不飽和結合を含んでいてもよい。R
1の炭素数は、可撓性と耐熱性のバランスの観点から1〜6であることが好ましく、製造容易性の観点から1〜4であることがより好ましい。R
1の好ましい具体例としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。式(1)のR
1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
式(1)中、R
1が脂肪族基である場合は、R
2は芳香族基であることが好ましく、R
1が芳香族基である場合は、R
2は脂肪族基であることが好ましい。R
2は、粘度の観点から炭素数6〜20の2価の芳香族基であることが好ましく、製造容易性の観点から炭素数6〜15の2価の芳香族基であることがより好ましい。
【0035】
式(1)のR
2の具体例としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA、ビフェニル、テトラメチルビフェニル、テトラブロモビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、フェニルベンゾエート、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ジフェニルジスルフィド、ナフタレン、アントラセン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ジブチルヒドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、及びカテコールからなる群より選ばれるいずれかに由来する2価の芳香族基等が挙げられる。
【0036】
式(1)のR
2は、耐熱性の観点から、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、及び下記式(3a)で表される構造を有する2価の芳香族基からなる群より選ばれるいずれかであることが好ましい。
【化17】
(R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、カルボキシル基、又は炭素数1〜12のアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基、−O−、−CO−、−COO−、−S−、−SO−、−SO
2−、及び−S−S−からなる群より選ばれるいずれかを表す。)
【0037】
R
3及びR
4は、入手容易性の観点から、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、及びtert−ブチル基からなる群より選ばれるいずれかであることが好ましい。R
3とR
4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。R
3とR
4のいずれもが、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、及びtert−ブチル基のいずれかであることが好ましい。
【0038】
式(3a)で表される構造を有する2価の芳香族基の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、フェニルベンゾエート、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、及びジフェニルジスルフィドからなる群より選ばれるいずれかに由来する2価の芳香族基等が挙げられる。
【0039】
式(2)のR
2の具体例としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA、ビフェニル、テトラメチルビフェニル、テトラブロモビフェニル、ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、フェニルベンゾエート、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ジフェニルジスルフィド、ナフタレン、アントラセン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ジブチルヒドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、及びカテコールからなる群より選ばれるいずれかに由来する2価の芳香族基等が挙げられる。
【0040】
本実施形態のエポキシ樹脂の全塩素量は、特に限定されないが、全塩素量が少ないほど、反応性、接着性、機械的強度、耐腐食性、及び電気信頼性等が向上する傾向にある。このような観点から、本実施形態のエポキシ樹脂の全塩素量は、1000質量ppm以下であることが好ましく、500質量ppm以下であることがより好ましく、250質量ppm以下であることが更に好ましい。なお、本実施形態において、全塩素量の下限値は特に限定する必要はないが、得られる効果と経済性のバランス等から、1質量ppm以上であってもよい。全塩素量は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0041】
本実施形態のエポキシ樹脂は、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂を更に含むエポキシ樹脂組成物とすることもできる。
【化18】
(式中、m、n、m’、及びn’は、それぞれ独立して、1〜30の整数であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜12の2価の脂肪族基、又は2価の芳香族基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一つは、炭素数6〜30の2価の芳香族基を表し、G
1は、グリシジル基を表し、G
2は、水素原子又はグリシジル基を表す。)
【0042】
式(2)で表されるエポキシ樹脂としては、第1の実施形態にて説明したものと同様のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0043】
本実施形態のエポキシ樹脂と、式(2)で表されるエポキシ樹脂との配合比率は、特に限定されないが、本実施形態のエポキシ樹脂100質量部と式(2)で表されるエポキシ樹脂0.1〜10質量部と、を含むことが好ましい。本実施形態のエポキシ樹脂100質量部に対する式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量が、0.1質量部以上であると、エポキシ樹脂組成物の硬化物は、長期間の接着信頼性が十分に得られる傾向にある。本実施形態のエポキシ樹脂100質量部に対する式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量が10質量部以下であると、エポキシ樹脂組成物を低粘度とすることができ、接着剤等とした際のハンドリング性等が一層向上するとともに、エポキシ当量が大きくなるため硬化性が一層向上する。式(1)で表されるエポキシ樹脂100質量部に対する式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量は、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.3〜9質量部であることがより好ましい。
【0044】
(エポキシ樹脂の製造方法等)
上述した第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂組成物や、第2の実施形態のエポキシ樹脂は、少なくとも式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂である。以下、式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂の製造方法の一例を説明する。
【0045】
このエポキシ樹脂は、式(1)で表されるエポキシ樹脂が得られる反応によって得ることができる。このようなエポキシ樹脂の製造方法としては、例えば、フェノール性水酸基を2つ有する芳香族化合物にフェノール性水酸基2モルに対し3〜12倍モルの割合でアルキレンオキサイドを付加させた化合物(以下、単に「オキシアルキレン付加物」ともいう。)と、エピハロヒドリンとを、アルカリ性化合物の存在下で反応させる方法等が挙げられる。
【0046】
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。エピハロヒドリンの添加量は、オキシアルキレン付加物のアルコール性水酸基1当量に対し、通常、1〜10当量であり、好ましくは2〜8当量である。
【0047】
アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。アルカリ性化合物の状態は、特に限定されず、例えば、固体状、液状、水溶液であってもよい。アルカリ性化合物の添加量は、フェノール性水酸基もしくはアルコール性水酸基1当量に対し、通常、1〜10当量であり、好ましくは1.5〜7.5当量であり、より好ましくは2〜5当量である。
【0048】
本実施形態では、反応を促進させる観点から、相間移動触媒を用いることが好ましい。特に、上記したアルカリ性化合物と相間移動触媒を併用することがより好ましい。
【0049】
相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム水酸化物類;15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジアザ−18−クラウン−6等のクラウンエーテル類;[2.1.1]−クリプタンド、[2.2.1]−クリプタンド、[2.2.2]クリプタンド、[2.2.2]−デシルクリプタンド、[2.2.2]−ベンゾクリプタンド等のクリプタンド類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。相間移動触媒の状態は、特に限定されず、例えば、固体状、液状、水溶液、アルコール溶液等であってもよい。
【0050】
相間移動触媒の添加量は、フェノール性水酸基又はアルコール性水酸基1モルに対し、通常、0.25〜10モルであり、好ましくは0.5〜5モルである。
【0051】
反応温度は、通常、20〜100℃であり、好ましくは30〜80℃である。反応温度を20℃以上とすることで反応の進行が早くなるため、オキシアルキレン付加物にエピハロヒドリンのグリシジル基を効率よく導入できる傾向にある。反応温度を100℃以下とすることで、エピハロヒドリン同士の高分子化反応を効率よく抑制できるため、エピハロヒドリンのグリシジル基を効率よく導入できる傾向にある。
【0052】
反応時間は、通常、1〜12時間であり、好ましくは1.5〜8時間であり、より好ましくは2〜6時間である。
【0053】
反応終了後、水洗等によって、生成塩、残留するアルカリ性化合物や相間移動触媒等を反応液から除去する。次いで、常圧或いは減圧下で加熱することによって、残留するエピハロヒドリンを除去し、エポキシ樹脂を回収する。
【0054】
エポキシ樹脂の全塩素量を一層低減したい場合には、例えば、上記で回収したエポキシ樹脂を、トルエンやメチルイソブチルケトン等の溶媒に溶解させた後、アルカリ性化合物(固体状でも、液状でも、溶液等でもよい)を新たに加える。これにより、エピハロヒドリンの閉環反応が進行し、加水分解性塩素量を一層低減させることもできる。この場合、アルカリ性化合物の添加量は、加水分解性塩素1当量に対し、通常、0.5〜5当量であり、好ましくは1〜3当量である。通常、閉環反応の反応温度は60〜120℃であることが好ましく、反応時間は0.5〜3時間であることが好ましい。
【0055】
エポキシ樹脂は、相溶性に優れるため、その他の成分を添加したエポキシ樹脂組成物としても、好適に用いることができる。
【0056】
次に、式(2)で表される構造を少なくとも有するエポキシ樹脂の製造方法の一例を説明する。式(2)で表される構造であるエポキシ樹脂は、例えば、式(1)の製造方法として例示した方法において、その製造条件を適宜制御することでも得ることができる。さらには、製造の際にアルコール性水酸基に対するエピハロヒドリンの量を多くすることで、式(2)で表される構造であるエポキシ樹脂の収率を向上させることもできる。特に、反応中にエピハロヒドリンをさらに追加することによって、式(2)で表されるエポキシ樹脂の収率を一層向上させることができる傾向にある。
【0057】
第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物及び/又は第2の実施形態のエポキシ樹脂と;硬化剤と;を含有するエポキシ樹脂組成物を実現できる。このエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、他のエポキシ樹脂、硬化促進剤等を更に含有してもよい。
【0058】
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、潜在性硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
アミン系硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。脂肪族アミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルへキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、 1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられる。
【0060】
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミドやその誘導体であるグアニジン化合物、又はアミン系硬化剤に酸無水物を付加させたものが挙げられる。
【0061】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0062】
フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、アリルアクリルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0063】
潜在性硬化剤としては、イミダゾール類、ジシアンジアミド及びその誘導体、イミダゾール系潜在性硬化剤やアミンアダクトをカプセル化したもの等が挙げられる。これらは市販品を用いることもでき、例えば、「PN23」、「PN40」、「PN−H」といったアミキュアシリーズ(味の素ファインテクノ社製)や「HX−3088」、「HX−3941」、「HX−3742」といったノバキュアシリーズ(旭化成イーマテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0064】
触媒型硬化剤としては、カチオン系熱硬化触媒、BF
3−アミン錯体等が挙げられる。これらの硬化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記硬化剤の中でも、可撓性や接着性を重視する場合は、アミン系硬化剤が好ましい。また、耐熱性や低吸水性を重視する場合は、フェノール系硬化剤が好ましい。
【0066】
エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、2〜90質量部であることがより好ましい。特に、エポキシ樹脂組成物における硬化剤の含有量は、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤に関しては、エポキシ樹脂のグリシジル基1当量に対して、0.7〜1.5当量であることが好ましい。潜在性硬化剤であれば、エポキシ樹脂100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましい。触媒系硬化剤であれば、エポキシ樹脂100質量部に対して0.5〜6.0質量部であることが好ましい。この範囲内であれば、硬化反応が効率よく進み、一層良好な硬化物性が発現する傾向にある。
【0067】
硬化剤以外のその他の成分として、本実施形態の樹脂組成物では、上記したエポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂を併用してもよい。他の樹脂として併用できる樹脂の構造の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、フェニルベンゾエート型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホキシド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、ジフェニルジスルフィド型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、メチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂類;N,N−ジグリシジルアミノベンゼン型エポキシ樹脂、o−(N,N−ジグリシジルアミノ)トルエン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノベンゼン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂類;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ブロモ化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂類;及び脂環式エポキシ樹脂類等が挙げられる。さらに、これらをイソシアネート等で変性したエポキシ樹脂等も併用することができる。
【0068】
他のエポキシ樹脂の含有量は、本実施形態のエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂成分中の95質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含有してもよい。硬化促進剤の具体例としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4―メチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤;、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の3級アミン系硬化促進剤、トリフェニルホスフィン等のリン系硬化促進剤、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらは上記した硬化剤と併用することで硬化反応を一層促進させることができる。上記した硬化剤の種類に応じて、適切な硬化促進剤の種類を選択することができる。
【0070】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲であれば特に限定されない。通常、エポキシ樹脂の総量100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましい。硬化促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、硬化反応が十分に促進するとともに、一層良好な硬化物性が得られる傾向にある。
【0071】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤を更に含有してもよい。無機充填剤の具体例としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク、窒化ケイ素、窒化アルミ等が挙げられる。
【0072】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物における無機充填剤の含有量は、本実施形態の効果が得られる範囲であれば特に限定されない。通常、本実施形態のエポキシ樹脂組成物の90質量%以下であることが好ましい。無機充填剤の含有量を上記範囲とすることにより、エポキシ樹脂組成物の粘度が十分低く、取扱性に優れる傾向にある。
【0073】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、液状応力剤、シランカップリング剤、希釈剤、レベリング剤、離型剤、顔料等の他の配合剤を更に含有してもよい。これらは、本実施形態の効果が得られる範囲であれば、適宜好適なものを選択することができる。
【0074】
難燃剤としては、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。臭素系難燃剤としては、テトラブロモフェノールが挙げられる。リン系難燃剤としては、9、10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファナントレン−10−オキサイド及びそのエポキシ誘導体、トリフェニルホスフィンやその誘導体、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、グアニジン系難燃剤、トリアジン構造含有フェノール、ポリリン酸メラミン、イソシアヌル酸等が挙げられる。無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が挙げられ、耐熱性の観点から、水酸化マグネシウムが好ましい。
【0075】
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂の総量に対して、5〜200質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましい。
【0076】
液状低応力剤としては、ポリアルキレングリコール類やそのアミン変性体、ポリブタジエン、アクリロニトリル等の有機ゴム、ジメチルシロキサン等のシリコーンゴム、シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。液状低応力剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂に対して、5〜40質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
【0077】
シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、接着強度の観点から、重合性官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0078】
希釈剤としては、アクリル基を含有した多官能アクリレート化合物や一官能のグリシジル基を含有したグリシジル型反応性希釈剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。希釈剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂に対して、1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0079】
レベリング剤としては、例えば、シリコン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等が挙げられる。
【0080】
本実施形態の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を、従来公知の方法等により熱硬化させることで得られる。すなわち、本実施形態の硬化物としては、上記したエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が挙げられる。例えば、本実施形態のエポキシ樹脂やエポキシ樹脂組成物に、硬化剤、更に必要に応じて硬化促進剤、無機充填剤、及び配合剤等を、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物とすることもできる。その後、エポキシ樹脂組成物を注型あるいはトランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形し、80〜200℃程度で2〜10時間程度の条件で更に加熱することにより、硬化物を得ることができる。
【0081】
また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物を、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙等の基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得る。得られたプリプレグを熱プレス成形すること等により、硬化物を得ることもできる。
【0082】
下記式(1)で表されるエポキシ樹脂から得られる硬化物であって、
【化19】
(式(1)中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜30の整数であり、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜12の脂肪族基又は2価の芳香族基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一つは、炭素数6〜30の2価の芳香族基を表し、G
1は、グリシジル基を表し、G
2は、水素原子又はグリシジル基を表す。)
E’/(273+T
1/3)<8.5 ・・・(a)
(数式(a)中、T
1は、得られた損失正接のピークトップの温度であり、E’(MPa)は、30℃で測定した貯蔵弾性率である。)
E’(T
1−20)>10×E’(T
1+20) ・・・(b)
(数式(b)中、E’(T
1−20)は、(T
1−20)℃で測定した貯蔵弾性率であり、E’(T
1+20)は、(T
1+20)℃で測定した貯蔵弾性率である。)
このような硬化物は、落下衝撃等の物性に優れるだけでなく、温度変化による接着強度の低下が少なく、実装したあとの信頼性に大きく寄与する。このような硬化物は、例えば、上述した第1の実施形態のエポキシ樹脂組成物や、第2の実施形態のエポキシ樹脂を用いることでも得られうる。
【0083】
硬化物は、上記数式(c)で表される関係又は上記数式(d)で表される関係を更に満たすことが好ましい。さらに、硬化物は、上記数式(c)で表される関係と、上記数式(d)で表される関係の両方を更に満たすことがより好ましい。これらの条件を満たす硬化物は、温度変化による接着力の低下を一層抑制することができる。
【0084】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂、及びそれから得られうる硬化物は、従来、エポキシ樹脂が材料として用いられている種々の用途に使用できる。例えば、電子部材(例えば、封止材、接着剤、プリント基板材、塗料、複合材料等)の用途として特に有用である。それらの中でも、アンダーフィルやモールディング等の半導体封止材、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム(例えば、層間絶縁材等)、導電材料、異方性導電性フィルム(ACF)等の導電性接着剤、絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイフィルム等の感光性材料、プリント配線基板等に好適に用いられる。他に、コーティング材、プリプレグ、熱伝導性材料、燃料電池用シール材等としても好適に用いられる。
【0085】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂等から得られる接着剤、接合用ペースト、及び接合用フィルムは、例えば、液状接着剤やフィルム状接着剤、ダイボンディング材等に有用である。フィルム状接着剤の製造方法としては、例えば、特開昭62−141083号公報や、特開平05−295329号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0086】
例えば、固形エポキシ樹脂や液状エポキシ樹脂等を、トルエン等の溶媒に溶解させた溶液を作製する。この場合、固形エポキシ樹脂や液状エポキシ樹脂の含有量が、50質量%程度となるように制御することが好ましい。さらには、これらのエポキシ樹脂だけでなく、固形のウレタン樹脂等を配合してもよい。ウレタン樹脂等を配合した場合も、樹脂の総含有量が、50質量%程度となるように制御することが好ましい。
【0087】
そして、この溶液に、エポキシ樹脂用硬化剤を更に添加してワニスを得る。エポキシ樹脂用硬化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。この場合、ワニス中のエポキシ樹脂用硬化剤の総含有量は、30質量%程度であることが好ましい。このワニスを、例えば、厚さが50μmである剥離用ポリエチレンテレフタレート基材に塗布し、溶媒(トルエン等)を乾燥させて塗膜を形成させる。この場合、塗膜の厚さが30μm程度となるように制御することが好ましい。ワニス中の溶媒(トルエン等)を乾燥させることにより、常温では不活性であり、加熱することにより接着性を発揮する、接合用フィルムを得ることができる。
【0088】
導電材料としては、導電性フィルム、導電性ペースト等が挙げられる。異方導電材料としては、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト等が挙げられる。これらの製造方法としては、例えば、特開平01−113480号公報に記載された方法を採用することができる。例えば、上述の接合用フィルムの製造において説明したワニスの調製時に、導電材料や異方導電材料も配合して、塗布液とする。この塗布液を、基材に塗布した後、乾燥することにより、導電性フィルムや異方導電性フィルムを製造することができる。導電粒子としては、例えば、ハンダ粒子;ニッケル粒子;ナノサイズの金属結晶;金属の表面を他の金属で被覆した複合粒子;銅と銀の傾斜粒子;樹脂粒子(例えば、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノ−ル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の樹脂粒子)の表面を導電性薄膜(例えば、金、ニッケル、銀、銅、半田等)で被覆した粒子等が挙げられる。通常、導電粒子は平均粒子径が1〜20μm程度の略球形の微粒子である。フィルムにする場合に用いることができる基材としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等の基材が挙げられる。
【0089】
絶縁材料としては、絶縁接着フィルム、絶縁接着ペーストが挙げられる。前述の接合用フィルムを用いることで、絶縁材料である絶縁接着フィルムを得ることができる。また、封止材料を用いる他、前述の充填剤のうち、絶縁性の充填剤を一液性エポキシ樹脂組成物に配合することで、絶縁接着ペーストを得ることができる。
【0090】
封止材としては、固形状封止材、液状封止材、フィルム状封止材等が挙げられる。液状封止材は、アンダーフィル材、ポッティング材、ダム材等として有用である。封止材の製造方法としては、例えば、特開平05−043661号公報、特開2002−226675号公報等に記載の方法を採用することもできる。より具体的には、本実施形態のエポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂に、無水メチルヘキサヒドロフタル酸等の硬化剤を加えて均一に混合することにより封止材を得ることができる。さらに、硬化剤だけでなく、球状溶融シリカ粉末等も加えることもできる。
【0091】
感光性材料の製造方法としては、例えば、特開2008−250305号公報等に記載されている方法等を採用することもできる。例えば、本実施形態のエポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂に、カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子や、エチレン性不飽和付加重合性モノマーや、光重合開始剤等を均一に混合することで、感光性材料を得ることができる。
【0092】
コーティング用材料としては、例えば電子材料のコーティング材、プリント配線板のカバ−用のオーバーコート材、プリント基板の層間絶縁用樹脂組成物等が挙げられる。コ−ティング材の製造方法としては、例えば、特公平04−006116号公報や、特開平07−304931号公報、特開平08−064960号公報、特開2003−246838等に記載の方法を採用することもできる。より具体的には、本実施形態のエポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂と、シリカ等のフィラーと、エポキシ樹脂用硬化剤とを、溶媒(メチルエチルケトン(MEK)等)に溶解させて、樹脂とフィラーを含めた固形分の濃度が50%の溶液を調製する。この溶液には、上記したエポキシ樹脂以外の他の樹脂(例えば、その他のエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等)を配合してもよい。この溶液を、ポリイミドフィルム上に50μmの厚さで塗布し、さらに銅箔を重ねて、60〜150℃でラミネートする。このラミネートされたものを180〜200℃で加熱硬化させることで、層間をエポキシ樹脂組成物によりコーティングされた積層板を得ることができる。
【0093】
塗料組成物の製造方法としては、例えば、特開平11−323247号公報、特開2005−113103号公報等に記載された方法を採用することができる。より具体的には、本実施形態のエポキシ樹脂と、二酸化チタンやタルク等とを、混合溶剤(例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレン=1/1、体積比)を溶解させて主剤とする。この主剤にエポキシ樹脂用硬化剤を添加し、均一に分散させることにより、塗料組成物を得ることができる。
【0094】
プリプレグの製造方法としては、例えば、特開平09−071633号公報、国際公開第98/44017号パンフレット等に記載された方法を採用することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物を補強基材に含浸し、加熱して得る方法が挙げられる。含浸させるワニスの溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、エチルセルソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの溶剤はプリプレグ中に残存しないことが好ましい。なお、補強基材の種類は特に限定されないが、例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド布、液晶ポリマ−等が挙げられる。樹脂組成物分と補強基材の割合は、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分の含有量が20〜80質量%であることが好ましい。得られたプリプレグを数枚重ねて、加熱成形することで、複合材を得ることができる。
【0095】
熱伝導性材料の製造方法としては、例えば、特開平06−136244号公報、特開平10−237410号公報、特開2000−003987号公報等に記載された方法を採用することができる。より具体的には、本実施形態のエポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂と、硬化剤(例えば、フェノールノボラック硬化剤等)と、熱伝導フィラー(例えば、グラファイト粉末等)を均一に混練することで、熱伝導性樹脂ペーストを得ることができる。
【0096】
燃料電池用シール材の製造方法としては、特開2002−332328号、特開2004−075954号等に記載された方法を採用することができる。より具体的には、本実施形態のエポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂と、導電性材料(例えば、人造黒鉛材料等)とを、ミキサー等で混合し、混合物を得る。得られた混合物に、エポキシ樹脂用硬化剤を均一に混合することで組成物を得る。この組成物を、金型温度170〜190℃、成形圧力150〜300kg/cm
2の条件で圧縮成形することで、燃料電池用シール材を得ることができる。この燃料電池用シール材は、実用上十分な導電性を有し、かつ、バスバリア性や成形加工性に優れている。
【0097】
フレキシブル配線基板用オーバーコート材の製造方法としては、国際公法第00/64960号パンフレット、特開2006−137838号公報等に記載された方法を採用することができる。より具体的には、まず、本実施形態のエポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂と、これらと反応するカルボキシル変性されたポリブタジエンと、ゴム粒子と、エポキシ樹脂用硬化剤と、硬化促進剤とを均一に分散させて組成物を得る。この組成物をメチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、フレキシブル配線基板用オーバーコート材の溶液を調製する。さらに、ジカルボン酸(例えば、コハク酸等)の水溶液を、フレキシブル配線基板用オーバーコート材の溶液に添加する。ポリイミドフィルムに対して、オーバーコート材の溶液を塗布し、乾燥させることで、フレキシブル配線基板用オーバーコート材を得ることができる。この際、乾燥後の膜厚が25μm程度となるように制御することが好ましい。
【実施例】
【0098】
次に、本発明を、実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」、「%」及び「ppm」等は、特に断りがない限り質量基準である。試薬については、特に断りがない限り市販品を精製することなく使用した。
【0099】
本実施例で用いた成分等は以下のとおりであった。
「エポライト40E」:エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製;エポキシ当量135g/eq.、粘度40mPa・s、グリシジル化率96モル%、全塩素量18220質量ppm)
「YED216D」:1,6−ヘキサメチレンジグリシジルエーテル(三菱化学社製;エポキシ当量120g/eq.)
「AER260」:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ社製;エポキシ当量188g/eq.)
「AER6011」:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ社製;エポキシ当量425g/eq.)
「YL983U」:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学社製;エポキシ当量170g/eq.)
「ジアミノジフェニルメタン」(和光純薬工業社製;アミン当量49.6g/eq.)
「エタキュア100」:芳香族アミン(三井化学ファイン社製;アミン当量44.5g/eq.)
「MEH8000H」:液状フェノール樹脂(明和化成社製;フェノール当量142g/eq.)
「リカシッドMHT」:4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製;酸無水物当量168g/eq.)
「HX3941」:マイクロカプセル型硬化剤(旭化成イーマテリアルズ社製;アミンアダクト系マイクロカプセル型硬化剤)
「AC−5V」:シリカ(龍森社製;平均粒子径5μm)
「KBM−403」:シリカ表面処理剤(信越化学工業社製;エポキシ系シランカップリング剤)
【0100】
各物性の測定法は以下のとおりであった。
【0101】
(エポキシ当量)
JIS K7236に準拠して、エポキシ当量を測定した。
【0102】
(全塩素量)
JIS K7243−3に準拠して、全塩素量を測定した。
【0103】
(加水分解性塩素量)
JIS K7243−2に準拠して、加水分解性塩素量を測定した。
【0104】
(エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂の構造確認等)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析装置(MS)を用いて、エポキシ樹脂組成物やエポキシ樹脂の構造確認等を行った。例えば、式(1)のm及びnに関する(m+n)に関する比率や、式(1)の構造等も確認した。また、式(2)のm、n、m、及びn’に関する比率や、式(2)の構造等も同様にして確認した。
HPLCの測定条件は、以下のとおりであった。
・東ソー社製「LC8020model II」システム、
・カラム:ウォーターズ社製「NOVA PACK C18」、
・移動相;蒸留水/アセトニトリル(混合割合は、0分〜20分の間において、蒸留水/アセトニトリル=50/50〜0/100(体積比)となるよう、等速的に変化させた。)
・流量:1.5mL/分
・分検出器:280nm
MSの測定条件は、以下のとおりであった。
・ThermoElectron社製「LCQ」装置
・イオン化法:大気圧光化学イオン化法(APCI)
・スキャンレンジ:m/z=150〜2000
なお、上記式(1)のm、n及び(m+n)の値等は、得られたHPLC及びGCチャート中のそれぞれのピーク面積比より求めた。
【0105】
(粘度)
JIS K7117−2(E型粘度計)に準拠して、粘度を測定した。
【0106】
(式(1)で表される成分、式(2)で表される成分等の同定及び含有率の算出)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び質量分析装置(MS)を用いて、式(1)中の(m+n)の数値、式(2)中の(m+n+m’+n’)の数値等を求めた。
HPLCの測定条件は、以下のとおりとした。
・測定装置:東ソー社製「LC8020model II」システム、
・カラム:ウォーターズ社製「NOVA PACK C18」、
・移動相:蒸留水/メタノール/アセトニトリル系(混合割合は、0分〜20分の間において、蒸留水/アセトニトリル=50/50〜0/100(体積比)となるよう、等速的に変化させた。)、
・流量:1.5mL/分
・分検出器:280nm
MSの測定条件は、以下のとおりであった。
・測定装置:ThermoElectron社製「LCQ」装置、
・イオン化:APCI+
・スキャンレンジ:m/z=150〜2000
得られたHPLC及びMSチャート中のそれぞれのピーク面積比より、前記各数値及び含有率を求めた。
【0107】
(相溶性評価)
エポキシ樹脂「AER4152」(旭化成エポキシ社製、オキサゾリドン環を有するイソシアネート変性エポキシ樹脂;エポキシ当量340g/eq.)と、後述する合成樹脂と、を50/50の質量比で混合し、140℃加熱した。そして室温まで冷却した際の相溶性を評価した。相溶性は、以下の基準に基づき評価した。
○:全体が透明であり、均一相であった。
△:一部はマーブル状であったが、全体としては透明であり、実用上問題がないレベルであった。
×:全体が白濁し、不均一相であった。
【0108】
(粘弾性)
表2に従って調製したエポキシ樹脂組成物を180℃で2時間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、ダイヤモンドカッターを用いて切断し、10mm×40mm×0.5mmの試験片を得た。この試験片を、固体粘弾性測定装置(DMA;TAインストルメントル社製「RSA−G2」)にセットし、温度範囲−50〜300℃(昇温速度:2℃/分)の測定条件で測定した。tanδが最大値になったときの温度をガラス転移点(Tg)=T
1とした。得られた測定結果から、30℃の貯蔵弾性率E’、(Tg−20)℃のときの貯蔵弾性率E’(Tg−20)、(Tg+20)℃のときの貯蔵弾性率E’(Tg+20)をそれぞれ求めた。
【0109】
(曲げ強度)
JIS K7116に準拠して、硬化物の曲げ強度を測定した。
【0110】
(破壊靭性(KIc)試験) JIS K6911に準拠して、硬化物の破壊靱性を測定した。
【0111】
(銅板せん断接着強度)
JIS K6850に準拠して、硬化物の銅板せん断接着強度を測定した。標準試験片C1100P(日本テストパネル社製)の表面に、厚さ100μmのフッ素樹脂製耐熱テープを張り付けて、標準試験片の表面に25mm×5mmの隙間が形成されるようマスキングした。その隙間(25mm×5mm)にエポキシ樹脂組成物を塗布し、もう1枚の標準試験片C1100Pとで挟み込んだ。それを、180℃で2時間の条件で加熱することで、エポキシ樹脂組成物を熱硬化させてサンプルを得た。
得られたサンプルについて、23℃、50%RHの恒温恒湿室において、引張試験器AGS−H 5kNを用いて、ヒートサイクル試験前の銅板せん断接着強度(a)を測定した。
得られたサンプルについて、−40℃(15分保持)〜+125℃(15分保持)のヒートサイクル試験を1000サイクル実施した。そして、ヒートサイクル試験後の銅板せん断接着強度(b)を測定した。
ヒートサイクル試験前の銅板せん断接着強度(a)に対するヒートサイクル試験後の銅板せん断接着強度(b)の割合を求めることによって、接着強度保持率(b/a)を算出した。
【0112】
(ゲルタイム)
JACT試験法 RS−5及びJIS K−6910−1995に準拠して、ゲルタイムを測定した。具体的には、表3に従って調製したエポキシ樹脂組成物をサンプルとし、ゲル化試験機を用いてゲルタイムを測定した。サンプルを170℃のホットプレート上で撹拌しながら加熱し、サンプルと撹拌棒の間で糸を引かなくなるまでの時間をゲルタイムとした。
【0113】
(吸水率試験)
JIS K7209に準拠して、吸水率を測定した。
【0114】
(グリシジル化率)
下記式に基づき、グリシジル化率を算出した。
グリシジル化率(%)=Et/Ea×100(%)
Et=理論エポキシ当量 (g/eq.)
Ea=実測エポキシ当量 (g/eq.)
理論エポキシ当量(Et)は、100%グリシジル化された構造式から求められる分子量から求めた。
実測エポキシ当量(Ea)は、上述したように、 JIS K7236に準拠して求めた。
【0115】
(衝撃試験)
表2に従って調製したエポキシ樹脂組成物を、100mm×100mm×2mmのフッ素樹脂板の型に流し込み、180℃で2時間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、デュポン衝撃試験機H50を使用して、衝撃試験を行った。硬化物上に突端の半径3.1mmの撃芯を置き、その上から重りを落として、硬化物が割れるかどうかで判定を行い、以下の基準に基づき評価した。
×:割れたときの重さ(kg)×高さ(cm)の積が3未満であった。
△:割れたときの重さ(g)×高さ(cm)の積が3以上7未満であった。
○:割れたときの重さ(g)×高さ(cm)の積が7以上20未満であった。
◎:割れたときの重さ(g)×高さ(cm)の積が20以上であった。
【0116】
(銀メッキへの接着性)
銀メッキ加工された標準試験片C1100P(日本テストパネル社製)を用いて、「銅板せん断接着強度」の項と同様にしてサンプル10枚を作製した(JIS K6850の準拠)。そのうちの5枚のサンプルについては、「吸湿試験前の銀メッキへの接着強度a」を測定した。接着強度aは、5枚のサンプルの測定値の算術平均であった。
別の5枚のサンプルについては、85℃、85RH%の恒温恒湿室に300時間静置して、吸湿させた。そして、吸湿させた後のサンプルを、「吸湿試験前の銀メッキへの接着強度a」の測定方法と同様にして、「吸湿試験後の銀メッキへの接着強度b」を測定した。接着強度bは、5枚の吸湿後のサンプルの測定値の算術平均であった。
接着強度aに対する接着強度bの比率を、接着強度保持率(b/a)とした。
【0117】
(浸透試験)
ガラス板上に厚さ20μmのフッ素樹脂製シール2枚を30mm間隔で置き、もう1枚のガラス板で挟んだ。これを、150℃のホットプレート上に水平に置き、上側のガラス板の温度が145℃に達したところで、エポキシ樹脂組成物を2枚のガラス板の隙間に垂らして、15分間保持した。エポキシ樹脂組成物が浸透した距離を測定した。評価は以下の基準で行った。
◎:浸透した距離が30〜100mmであり、エポキシ樹脂組成物が均一に硬化した。
○:浸透した距離が15〜30mmであり、エポキシ樹脂組成物が均一に硬化した。
△:浸透した距離が30〜100mmであり、硬化物の濁りやムラが発生した。
×:浸透した距離が15mm以下であったか、あるいは、硬化せずに100mm以上浸透した。
【0118】
(硬化物落下試験)
後述する方法にて製造した半導体装置を、コンクリートから100cmの高さより水平に10回落下させた。落下させた後の半導体装置内のエポキシ樹脂組成物の剥離の有無を、確認した。剥離の有無は、超音波探傷装置(日立建機社製、型式mi−scope hyper)を用いて確認した。硬化物落下試験の評価は以下の基準で行った。
◎:10回落下させても剥離しなかった。
○:6〜9回目の落下で剥離した。
△:2〜5回目の落下で剥離した。
×:1回目の落下で剥離した。
【0119】
(耐リフロー性)
後述する方法にて製造した半導体装置を、JEDEC耐湿レベル3の吸湿処理(30℃、相対湿度60%で168時間処理)を行った後、IRリフロー処理(ピーク温度260℃、処理時間:60秒)を3回施した。そして、半導体装置内部でのエポキシ樹脂組成物の剥離の有無を確認した。剥離の有無は、超音波探傷装置(日立建機社製、型式mi−scope hyper)を用いて確認した。耐リフロー性の評価は以下の基準で行った。
○:剥離が観察されなかった。
×:剥離が観察された。
【0120】
(冷熱サイクル性)
後述する方法にて製造した半導体装置に、−55℃で30分間保持し、続いて20分間で125℃まで昇温し、さらに125℃で30分間保持することを1サイクルとした冷熱サイクル処理を、1000サイクル行った。その際、250サイクル毎に半導体装置内部の半導体チップとエポキシ樹脂組成物との界面の剥離の有無を確認した。界面剥離の有無は、超音波探傷装置(日立建機社製、型式mi−scope hyper)を用いて、を用いて確認した。冷熱サイクル性の評価は以下の基準で行った。
◎:1000サイクル行っても剥離が観察されなかった。
○:750サイクル迄行った時点で剥離が観測された。
△:500サイクル迄行った時点で剥離が観測された。
×:250サイクル迄行った時点で剥離が観察された。
【0121】
[実施例1]
(グリシジル化反応)
温度計、滴下ロート、冷却管、及び撹拌機を備えたフラスコに、1モルのビスフェノールAに対してプロピレンオキサイド5モルを付加反応させて得られたジアルコール270g(水酸基1当量)、エピクロロヒドリン463g(5.00モル)、及び50質量%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液(10g)を混合し、減圧下に加熱して60〜65℃で還流を行った。そして、50質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを2時間かけて滴下した。滴下の際、水をエピクロロヒドリンとの共沸混合物として連続的に除去するとともに、凝縮したエピクロロヒドリン層のみを連続的に反応器に戻した。滴下後、さらに2時間反応させた後、混合物を冷却し、水洗を繰り返して副生した塩化ナトリウムを除去した。過剰のエピクロロヒドリンを減圧下で蒸留して除去し、粗樹脂組成物を得た。
(低塩素化反応)
得られた粗樹脂組成物100gをメチルイソブチルケトン200gに溶解し、0.22gの50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間反応させた。反応終了後、水洗によりメチルイソブチルケトンを除去してエポキシ樹脂組成物Aを得た。
一例として、
図1に、実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物AのNMRチャートを示し、
図2に、実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物AのMALDI−MSチャートを示す。エポキシ樹脂組成物Aを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂a1が100質量部に対して、式(2)で表される構造であるエポキシ樹脂a2が1.3質量部含まれていた。
エポキシ樹脂a1については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の74モル%がグリシジル基であり、G
2の26モル%が水素であることが確認された。式(1)のm及びnの範囲は6≦(m+n)≦12であった。そして、エポキシ樹脂a1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、48モル%であった
エポキシ樹脂a2については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、6≦(m+n+m’+n’)≦15であることが確認された。
また、エポキシ樹脂Aのエポキシ当量は371g/eq.であり、25℃での粘度は952mPa・sであり、全塩素量は512ppmであり、加水分解性塩素量は56ppmであった。
【0122】
[実施例2]
製造例1において用いたジアルコールについて、「1モルのビスフェノールAに対してプロピレンオキサイド5モルを付加反応させて得られたジアルコール」から、「1モルのビフェノールに対してエポキシペンタン2モルを付加反応させて得られたジアルコール」に変更した。その他の条件は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂組成物Bを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Bを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂b1が100質量部に対して、式(2)で表されるエポキシ樹脂b2が2.5質量部含まれていた。
エポキシ樹脂b1については、R
1がペンチル基(−CHCH(C
3H
7)−)であり、R
2がビフェニル基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の99.5モル%がグリシジル基であり、G
2の0.5モル%が水素であることが確認された。エポキシ樹脂b1の式(1)のm及びnの範囲は、1≦(m+n)≦9であった。そして、エポキシ樹脂b1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、18モル%であった。
エポキシ樹脂b2については、R
1がペンチル基であり、R
2がビフェニル基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、2≦(m+n+m’+n’)≦13であることが確認された。
エポキシ樹脂組成物Bのエポキシ当量は262g/eq.であり、25℃での粘度は1782mPa・sであり、全塩素量は423ppmであり、加水分解性塩素量は50ppmであった。
【0123】
[実施例3]
実施例1で製造したエポキシ樹脂組成物Aを270g仕込み、触媒として、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.8gを仕込んだ後、60℃に加熱し、フェニルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、「EX141」、エポキシ当量150g/eq.)36gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で1.5時間反応させた後に、6.0gの50質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、三フッ化ホウ素ジエチルエーテルを失活させたのち、300gの精製水にて触媒残渣を除去することにより、粗樹脂組成物を291g得た。
得られた粗樹脂組成物270gを、実施例1における、「1モルのビスフェノールAに対してプロピレンオキサイド5モル付加反応させて得られたジアルコール」の代わりに用いた点以外は、実施例1と同様に操作を行い、エポキシ樹脂組成物Cを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Cを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂c1が100質量部に対して、式(2)で表される構造であるエポキシ樹脂c2が1.2質量部含まれていた。
エポキシ樹脂c1については、R
1はイソプロピレン基又はフェノキシイソプロピレン基(−CH
2CH(CH
2OC
6H
6)−)であり、R
2はビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1はグリシジル基であり、G
2の71.8モル%がグリシジル基であり、G
2の28.2%が水素原子であることが確認された。エポキシ樹脂c1の式(1)のm及びnの範囲は、3≦(m+n)≦12であった。そして、エポキシ樹脂c1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、48モル%であった。
エポキシ樹脂c2については、R
1の86モル%がイソプレン基であり、R
1の14モル%がフェノキシイソプレン基であり、R
2がフェノキシイソプロピレン基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、6≦(m+n+m’+n’)≦15であることが確認された。
エポキシ樹脂組成物Cのエポキシ当量は385g/eq.であり、25℃での粘度は1245mPa・sであり、全塩素量は621ppmであり、加水分解性塩素量は57ppmであった。
【0124】
[
参考例4]
温度計、及び撹拌機を備えたフラスコにレゾルシノール120gとトリエチレングリコールジビニルエーテル172gを仕込み、1時間かけて120℃まで昇温させた。その後、120℃で6時間反応させて、透明半固形の変性多価フェノール類290gを得た。得られた変性多価フェノール類290g、エピクロロヒドリン735g、n−ブタノール185gを仕込み、溶解させた。そして、減圧下に加熱して60〜65℃で還流を行った。50質量%水酸化ナトリウム水溶液130.3gを2時間かけて滴下した。滴下の際、水をエピクロロヒドリンとの共沸混合物として連続的に除去するとともに、凝縮したエピクロロヒドリン層のみを連続的に反応器に戻した。その後、さらに2時間反応させた後、混合物を冷却し、水洗を繰り返して副生した塩化ナトリウムを除去した。そして、過剰のエピクロロヒドリンを減圧下で蒸留して除去し、粗樹脂を得た。
得られた粗樹脂100gをメチルイソブチルケトン200gに溶解させ、0.22gの50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間反応させ、水洗によりメチルイソブチルケトンを留去して、エポキシ樹脂Dを得た。
得られたエポキシ樹脂Dを分析したところ、式(1)で表される構造であって、R
1がフェニレン基であり、R
2がトリエチレン基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であるエポキシ樹脂であることが確認された。エポキシ樹脂Dの式(1)のmは1であり、nは1であった。そして、エポキシ樹脂Dにおける、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、0モル%であった。
エポキシ樹脂Dのエポキシ当量は286g/eq.であり、25℃での粘度は12000mPa・sであり、全塩素量は877ppmであり、加水分解塩素量は72ppmであった。
【0125】
[実施例5]
グリシジル化反応において、50質量%水酸化ナトリウム水溶液の滴下後の反応時間を8時間に変更した点以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂組成物Eを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Eを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂e1が100質量部に対して、式(2)で表される構造であるエポキシ樹脂e2が2.4質量部含まれていた。
エポキシ樹脂a1については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の80モル%がグリシジル基であり、20モル%が水素であることが確認された。エポキシ樹脂e1の式(1)のm及びnの範囲は、3≦(m+n)≦12であった。そして、エポキシ樹脂e1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、67モル%であった。
エポキシ樹脂e2については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、6≦(m+n+m’+n’)≦15であることが確認された。
エポキシ樹脂組成物Eのエポキシ当量は420g/eq.であり、25℃での粘度は1481mPa・sであり、全塩素量は1273ppmであり、加水分解性塩素量は366ppmであった。
【0126】
[実施例6]
グリシジル化反応において、50質量%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液を加えなかった点以外は、実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂組成物Fを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Fを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂f1が100質量部に対して、式(2)で表されるエポキシ樹脂f2が0.5質量部含まれていた。
エポキシ樹脂f1については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の62モル%がグリシジル基であり、G
2の38モル%が水素であることが確認された。エポキシ樹脂f1の式(1)のm及びnの範囲は、3≦(m+n)≦12であった。そして、エポキシ樹脂f1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、35モル%であった。
エポキシ樹脂f2については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、6≦(m+n+m’+n’)≦14であることが確認された。
エポキシ樹脂組成物Fのエポキシ当量は332g/eq.であり、25℃での粘度は1213mPa・sであり、全塩素量は530ppmであり、加水分解性塩素量は242ppmであった。
【0127】
[実施例7]
グリシジル化反応において、50質量%水酸化ナトリウム水溶液400gの代わりに、50質量%水酸化カリウム水溶液640gを用いた点以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂組成物Gを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Gを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂g1が100質量部に対して、式(2)で表されるエポキシ樹脂g2が5.4質量部含まれていた。
エポキシ樹脂g1については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の81モル%がグリシジル基であり、G
2の19モル%が水素であることが確認された。エポキシ樹脂g1の式(1)のm及びnの範囲は、3≦(m+n)≦12であった。そして、エポキシ樹脂g1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、76モル%であった。
エポキシ樹脂g2については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、6≦(m+n+m’+n’)≦18であることが確認された。
エポキシ樹脂組成物Gのエポキシ当量は495g/eq.であり、25℃での粘度は2093mPa・sであり、全塩素量は2883ppmであり、加水分解性塩素量は657ppmであった。
【0128】
[実施例8]
グリシジル化反応において、ジアルコールを、「1モルのビスフェノールAに対してプロピレンオキサイド5モルを付加反応させて得られたジアルコール」から、「1モルのビスフェノールAに対してプロピレンオキサイド3モルを付加反応させて得られたジアルコール」に変更した点以外は実施例1と同様に行い、エポキシ樹脂組成物Hを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Hを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂h1が100質量部に対して、式(2)で表されるエポキシ樹脂h2が1.4質量部含まれていた。
エポキシ樹脂h1については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の90モル%がグリシジル基であり、G
2の10モル%が水素であることが確認された。エポキシ樹脂h1の式(1)のm及びnの範囲は、1≦(m+n)≦10であった。そして、エポキシ樹脂h1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、22モル%であった。
エポキシ樹脂h2については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、2≦(m+n+m’+n’)≦12であることが確認された。
エポキシ樹脂組成物Hのエポキシ当量309g/eq.であり、25℃での粘度は1565mPa・sであり、全塩素量は499ppmであり、加水分解性塩素量は50ppmであった。
【0129】
[実施例9]
(グリシジル化反応)
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、1モルのビスフェノールAに対してプロピレンオキサイド5モルを付加反応させて得られたジアルコール270g(水酸基1当量)、エピクロロヒドリン185g(2.00モル)、及び50質量%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液(10g)を混合し、減圧下に加熱して60〜65℃で還流を行った。そして、50質量%水酸化ナトリウム水溶液80gを2時間かけて滴下した。滴下の際、水をエピクロロヒドリンとの共沸混合物として連続的に除去するとともに、凝縮したエピクロロヒドリン層のみを連続的に反応器に戻した。滴下後、エピクロロヒドリン370gを一気に投入し、その後50質量%水酸化ナトリウム水溶液320gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間反応させた後、混合物を冷却し、水洗を繰り返して副生した塩化ナトリウムを除去した。過剰のエピクロロヒドリンを減圧下で蒸留して除去し、粗樹脂組成物を得た。
【0130】
(低塩素化反応)
得られた粗樹脂組成物100gをメチルイソブチルケトン200gに溶解し、0.22gの50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間反応させた。反応終了後、水洗によりメチルイソブチルケトンを除去してエポキシ樹脂組成物Iを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Iを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂i1が100質量部に対して、式(2)で表されるエポキシ樹脂i2が12.1質量部含まれていた。
エポキシ樹脂i1については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の87モル%がグリシジル基であり、G
2の13モル%が水素であることが確認された。エポキシ樹脂i1の式(1)のm及びnの範囲は、3≦(m+n)≦12であった。そして、エポキシ樹脂i1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、56モル%であった。
エポキシ樹脂i2については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、6≦(m+n+m’+n’)≦20であることが確認された。
エポキシ樹脂組成物Iのエポキシ当量は335g/eq.であり、25℃での粘度は8052mPa・sであり、全塩素量は612ppmであり、加水分解性塩素量は56ppmであった。
【0131】
[実施例10]
グリシジル化反応時に、凝縮したエピクロロヒドリンを回収することなく、全て反応器に戻した点以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物Jを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物Jを分析したところ、式(1)で表される構造であるエポキシ樹脂j1が100質量部に対して、式(2)で表される構造であるエポキシ樹脂j2が0.05質量部含まれていた。
エポキシ樹脂j1については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2の82モル%がグリシジル基であり、G
2の18モル%が水素であることが確認された。エポキシ樹脂j1の式(1)のm及びnの範囲は、3≦(m+n)≦12であった。そして、エポキシ樹脂j1における、式(1)のm及びnが6≦(m+n)≦12の関係を満たす成分(a成分)の割合は、59モル%であった。
エポキシ樹脂j2については、R
1がイソプロピレン基であり、R
2がビスフェノールAに由来する2価の基であり、G
1がグリシジル基であり、G
2がグリシジル基であることが確認された。式(2)のm、n、m’及びn’については、6≦(m+n+m’+n’)≦15であることが確認された。
エポキシ当量は385g/eq.であり、25℃での粘度は1020mPa・sであり、全塩素量は486ppmであり、加水分解性塩素量は47ppmであった。
【0132】
[比較例1]
(グリシジル化反応)
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を備えたフラスコに、固形ビスフェノールA型エポキシ(旭化成イーマテリアルズ社製「AER6061」;エポキシ当量425g/eq.)425g、エピクロロヒドリン463g(5.00モル)を混合し、室温で溶解させた。その後、50質量%テトラメチルアンモニウムクロリド水溶液(10g)を混合し、加熱していき、減圧下に加熱して60〜65℃で還流を行った。そして、50質量%水酸化ナトリウム水溶液80gを2時間かけて滴下した。滴下の際、水をエピクロロヒドリンとの共沸混合物として連続的に除去するとともに、凝縮したエピクロロヒドリン層のみを連続的に反応器に戻した。滴下後、さらに2時間反応させた後、混合物を冷却し、水洗を繰り返して副生した塩化ナトリウムを除去した。過剰のエピクロロヒドリンを減圧下で蒸留して除去し、エポキシ樹脂Kを得た。
得られたエポキシ樹脂Kを分析したところ、少なくとも式(1)及び式(2)で表される構造に該当しないことが確認された。
エポキシ樹脂Kのエポキシ当量は392g/eq.であり、25℃での粘度は1400000mPa・sであり、全塩素量は1512ppmであり、加水分解性塩素量は253ppmであった。
【0133】
実施例1
〜3、参考例4、実施例5〜10及び比較例1、2の物性測定結果を、表1、2に示す。
【0134】
[実施例11
〜14、参考例15、実施例16〜21、比較例3〜8]
実施例1〜3、5〜10及び比較例1、2のエポキシ樹脂組成物、あるいは、
参考例4のエポキシ樹脂に対して、表3、4に記載の条件で各材料を混合して、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、実施例11では、エポキシ樹脂組成物Aを単独で用いた。
得られたエポキシ樹脂組成物に、エポキシ基1当量に対して活性水素(>NH)が1当量となる割合で、ジアミノジフェニルメタン(表3、4参照)を添加し、180℃、2時間の条件で硬化させてエポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物について、表3〜4に示す評価を行った。
【0135】
[実施例22
〜24、参考例25、実施例26〜31、比較例9〜13]
表5、6に記載の条件で各材料を混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を封止用エポキシ樹脂組成物として用いて、半導体装置を製造した。
【0136】
(半導体装置の製造)
実施例22
〜24、参考例25、実施例26〜31、比較例9〜13の封止用エポキシ樹脂組成物をそれぞれ用いて、
図3に示す半導体装置1を作製した。
図3は、実施例で作製した、半導体チップ3が搭載された半導体装置1の断面概略図を示す。予め基板2(住友ベークライト社製、「ELC4782」)と半導体チップ3(パナソニック社製、「BGA377」)が半田バンプ4(三菱マテリアル社製、「MULαS」;半田バンプ4の組成はSn/Ag/Cu)によってフリップチップ接続されている半導体チップ搭載基板とした。半導体チップ3のサイズは10mm×10mm×0.2mmであり、基板2のサイズは20mm×20mm×0.4mmであった。基板2と半導体チップ3は、176個の半田バンプ4によりペリフェラル(外周部のみにバンプがある形状)に接合されており、半田バンプ4の高さは0.08mmであり、ピッチ間距離は0.04mmであった。半導体チップ3の回路保護膜5には窒化珪素(SiN)が用いられ、基板2上のソルダーレジスト6には太陽インキ社製の「AUS308」を用いた。
半導体チップ3が搭載された基板2に封止用エポキシ樹脂組成物7を充填する前に、プラズマ処理を行った。プラズマ装置としては、March Plasma Systems社製、「AP−1000」を用いた。処理条件は、以下のとおりであった。
ガス種:Ar
ガス流量:50mL/m
処理強さ:350W
処理時間:420秒
ダイレクトプラズマモード
【0137】
プラズマ処理後、上述の半導体チップ3が搭載された基板2を110℃の熱板上で加熱し、半導体チップ3の一辺に封止用エポキシ樹脂組成物7を12mgディスペンスし、基板2と半導体チップ3の間のギャップ内を充填させた後、150℃のオーブンで120分間維持して、封止用エポキシ樹脂組成物7を熱硬化させて半導体装置1を得た。得られた封止用エポキシ樹脂組成物7、その硬化物及び半導体装置1の評価を行った。それぞれの結果を下記表5、6に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
本出願は、2012年07月31日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2012−170493)及び2012年08月23日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2012−184476)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。