特許第5860154号(P5860154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フラタウ,アリソンの特許一覧

特許5860154睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法
<>
  • 特許5860154-睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法 図000002
  • 特許5860154-睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法 図000003
  • 特許5860154-睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法 図000004
  • 特許5860154-睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法 図000005
  • 特許5860154-睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法 図000006
  • 特許5860154-睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860154
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】睡眠位置に関する眼球負荷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/02 20060101AFI20160202BHJP
   A47G 9/10 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   A61F9/02 370
   A61F9/02 310
   A47G9/10 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-533288(P2014-533288)
(86)(22)【出願日】2011年10月3日
(65)【公表番号】特表2014-528274(P2014-528274A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2011054595
(87)【国際公開番号】WO2013052031
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514081759
【氏名又は名称】フラタウ,アリソン
【氏名又は名称原語表記】FLATAU,Alison
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】110000132
【氏名又は名称】大菅内外国特許事務所特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フラタウ,アリソン
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06155261(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0143766(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3092724(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00 − A61F 9/04
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者が睡眠位置にあるとき、別の負荷経路が反力を前記装着者の眼球領域から離れる方へ吸収及び分散することを可能にするように構成された前面部分を有するデバイスを含み、
前記前面部分は、第一の前面パッド、第一および第二の側面パッド、額パッド、並びに鼻柱パッドを含み、前記第一の前面パッド、前記第一および第二の側面パッド、前記額パッド、並びに前記鼻柱パッドは、負荷を支持するのに特に適した解剖学的構造に反力を吸収及び分散するように構成されている、ことを特徴とする非侵襲的システム。
【請求項2】
前記前面部分は、前記装着者の顔面周囲にぴったり合うように構成された負荷移動支持構造をさらに含み、前記システムは、前記装着者の顔面上の前記前面部分を固定するために構成され、かつ、前記装着者の眼球領域と前記前面部分との間に余裕を生成するようにさらに構成された安定化コンポーネントをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の非侵襲的システム。
【請求項3】
記反力は、前記前面部分および前記第一の前面パッドに対して及ぼされる直接および間接力を含み、前記第一および第二の側面パッド、前記額パッド、前記鼻柱パッドは、前記直接および間接力を吸収するようにさらに構成される、ことを特徴とする請求項に記載の非侵襲的システム。
【請求項4】
前記睡眠位置はうつぶせ位置である、ことを特徴とする請求項1に記載の非侵襲的システム。
【請求項5】
前記余裕は、前記眼球領域をバイパスするために、位置、力の程度、回転および前記第一の前面パッド、前記第一および第二の側面パッド、前記額パッドおよび前記鼻柱パッドのへこみを含む群から選択された可変的余裕である、ことを特徴とする請求項2に記載の非侵襲的システム。
【請求項6】
前記負荷移動支持構造は、さらに半透明部分を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の非侵襲的システム。
【請求項7】
前記半透明部分は、薄く色付けられるか、または適用された処方を有する、ことを特徴とする請求項に記載の非侵襲的システム。
【請求項8】
前記負荷移動支持構造は、通気を提供するように構成された前記装着者に接触しない非パッド部を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の非侵襲的システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示された実施形態は、表面によって、顔面に及ぼされる垂直力を吸収するか分散するために、周辺組織を含む眼球、眼窩をバイパスする負荷経路を提供することによって、特にうつぶせ寝もしくは休憩中の眼球に対する変形、応力、歪みもしくは損傷を軽減するか防止するためのシステムおよび方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
うつぶせ位置で睡眠をとるか休憩するとき、垂直力がマットレスもしくは腕などの表面と接触する顔面および頭部の領域で分散される。多くのうつぶせ位置に対して、この経路は、少なくとも一つの眼球を通る。結果として生じる負荷は、眼球、眼窩もしくはその周辺組織に対する変形、応力、歪みもしくは損傷を引き起こすことがある。眼球領域を通る負荷経路のさらに別の問題のある効果は、角膜を再形成するために処方された処方角膜矯正(オルソK)レンズの位置のシフトである。即ち、少なくとも一つの眼球を通る負荷経路を有する表面に接触する顔面および頭部の領域で力が分散されるとき、当該力は、眼球の変形およびレンズの変位もしくはシフトを引き起こす。当該レンズシフトは、角膜矯正の効果に対して悪影響を及ぼし、しばしば長期間、視界のぼやけを引き起こす。この問題は、レンズが夜通し装着されるときに重要性が増大することがある。
【0003】
レンズ位置のシフトに悩まされるオルソKレンズ装着者は、例えば、仰向けに寝るもしくは顔面を上方に向けるなど、睡眠を仰向け位置に限定する(もしくはうつぶせ位置での睡眠を避ける)という挑戦的かつ実現不可能な指導を受ける。うつぶせ位置における睡眠を避けるという指導の機能的問題点は、多くの人はうつぶせ寝もしくは横向き寝であり、仰向け寝のみでは快適ではないか、もしくは眠ることができないという点である。さらには、眼球および周辺の軟組織をバイパスする別の経路を提供する負荷支持構造なしでの保護を有する眼球領域を遮蔽し、被覆し、もしくは単に包囲することは、うつぶせ位置における睡眠もしくは休憩によって導入される負荷を十分に分散することがない。したがって、不適切もしくは表面的保護は、眼球に対する変形、応力、歪みもしくは損傷を防止することができない可能性がある。さらには、眼球および周辺組織に対する変形、応力および歪みは、強膜上静脈圧、眼窩静脈圧、繊維柱帯流出抵抗、脈絡膜拡大の持続性上昇を引き起こすことによって、眼内圧力を調整するための眼球の能力を抑制することがある。眼内圧力を自己調整するための眼球の能力の欠陥は、今度は、緑内障の兆候、他の眼球の疾患もしくは眼球の損傷を悪化させる。
【0004】
眼球内の圧力もしくは眼内圧力(IOP)は、強膜上静脈圧の大きさと同様に、睫毛分泌プロセスからの眼房水の流入と繊維柱帯などの組織を通る眼房水の流出とのバランスから生じる。これらの3つは、眼球が膨らんだままであるように、眼球内の十分な圧力を提供するようにバランスがとられる(典型的には、大気圧上でIOPは10−21mmHg)。このバランスは、1950年代にGoldmanによって、IOP=F/C+EVPとして定量的に定義され、ここでFは眼房水の流入、Cは流出容易性、EVPは強膜上静脈圧、IOPは眼内圧力である。水平位置にあるときの強膜上静脈圧の上昇は、夜間の眼内圧力の上昇に関連する。睡眠位置による眼球、眼窩および周辺組織上の負荷に関連する強膜上静脈圧のさらなる上昇もしくは眼房水の流出の減少は、眼内圧力におけるさらなる上昇を引き起こす。睡眠位置によって引き起こされる負荷による眼窩静脈圧の上昇は、流出抵抗の増加をも引き起こし、通常の健康なレベルへと眼内圧力を戻すために必要な眼内圧力自己調整プロセスを崩壊させる。睡眠位置に関連する眼球の変形、応力もしくは歪みによる脈絡膜円周もしくは厚の拡大も、流出抵抗の増加を引き起こし、眼内圧力を自己調整する眼球の能力をさらに崩壊させ、眼内圧力を上昇させる。要約すると、眼球上の負荷が強膜上静脈圧上昇もしくは眼房水流出減少および自己調整IOP能力の崩壊を引き起こし、IOP増加を引き起こす種々のメカニズムが存在する。
【0005】
IOPレベルを低下させる既に確立された方法は、Honan眼内圧力減圧器を利用し、これは、眼球を圧縮して、IOPを低下させるために特に利用され、それによって、切開による硝子体の破裂損失のリスクを低減する外科手術前のデバイスである。Honan眼内圧力減圧器は、眼球に対して、20−30mmHgの間の圧縮圧を適用することによって機能する。この外圧は、強膜上静脈圧に影響を及ぼすことなく、流体流入速度に対して繊維柱帯を通る流体流出速度の増加を引き起こし、それによって、内部の眼球圧力を低下させ、即ちIOPを低下させる。なお、Peter J.McDonnell,The Honan Intraocular Pressure Reducer,103 Archives of Opthalmology 422,422−425(1985);James El Morgan et al.,Intraocular Pressure After Peribulbar Anaesthesia:Is the Honan Balloon Necessary?,79 British Journal of Opthalmology 46,46−49(1995)参照。
【0006】
この通常の手術前の手技によって生成される眼球に対する圧力の直接的適用には特異性が存在し、それは、横向き寝およびうつ伏せ寝位置に関連する眼球上の負荷によって誘発される眼球およびまぶたに対する直接的圧力ならびに眼球、眼窩およびその周辺組織の変形、応力および歪みを適用する。睡眠位置に関連する力は、強膜上および眼窩静脈圧を上昇させ、脈絡膜拡大に沿って繊維柱帯流出抵抗を増加させ、そのすべてが通常の健康なレベルへと自己調整する眼球の能力の欠陥による持続性IOP上昇を引き起こす可能性がある。水平位置にあることに関連するIOPの既知の増加以上の当該持続性IOP上昇は、緑内障眼球損傷および変形を含むが、そのいずれにも限定はされない深刻な眼球損傷を引き起こす可能性がある。
【0007】
通常のIOPレベルは、10−21mmHgの範囲にある。通常のIOPレベルは、一日の内でも時間に従って変化し、通常、朝の方がそれ以降よりも高くなる。少なくとも〜10mmHgのIOPレベルは、眼球がその形状を保持するために必要とされる。眼圧測定が既知の力に対して角膜表面の歪みの観察から間接的にIOPを測定するために使用される。現在、IOPは人が寝ている間は測定することができないが、このために使用できるセンサが開発中である(例えば、SensimedのTriggerfish(登録商標)センサ)。緑内障の兆候と相関すると概して考えられているか既に知られている要因は、他の多数の生理学的考察および生化学的考察と同様に、低血圧、高血圧、薄い角膜壁、視神経に対する低い血液供給を含む。概して、緑内障患者に対する治療の第一クールは、IOPを通常レベルへと低下させるための目薬(例えば、ベータブロッカーと併用されるプロスタグランジン)を含む。
【0008】
緑内障は、視神経が損傷し、網膜神経節細胞が死滅する眼球疾患である。緑内障は永久的に視力に影響し、治療されないままだと失明まで進行する、世界的な失明の主因の一つである。緑内障の原因は分かっていない。緑内障による視神経の損傷は、しばしば21mmHgよりも高い圧力への眼内圧力(IOP)の上昇に関連付けられる。しかしながら、視神経損傷を伴う緑内障患者の中にはIOPレベル上昇を示さない人もいる。このタイプの緑内障は、ときには、正常眼圧もしくは低眼圧緑内障と呼ばれる。幾つかの最近の研究は、視神経頭部組織のIOPの関連する応力、歪み、歪み速度などが緑内障細胞損傷を引き起こすことを示唆している。なお、Claude F.Burgoyne et al.,The Optic nerve head as a Biomechanical Structure:A New Paradigm for Understanding the Role of IOP−Related Stress and Strain in the Pathophysiology of Glaucomatous Optic nerve Head Damage,24 Progress in Retinal and eye Research 39,39−73(2005);Ian A.Sigal et al.,Predicted Extension, Compression and Shearing of Optic Nerve Head Tissues,85 Experimental Eye Research 313,31−322(2007);Ian A.Sigal et al.,Biomechanics of the Optic Nerve Head,88 Experimental Eye Research 799,799−807(2009);Michael D.Roberts et al.,Correlation between Local Stress and Strain and Lamina Cribosa Connective Tissue Volume Fraction in Normal Monkey Eyes,51 Investigative Opthalmology & Visual Science 295,295−307(2010);Barry Quill et al.,The Effect of Graded Cyclic Stretching on Extracellular Matrix−Related Gene Expression Profiles in culutured Primary Human Lamina Cribrosa Cells,52 Investigative Ophthalmology & Visual Science 1908,1908−15(2011);Richard E.Norman et al.,Finite Element Modeling of the Human Sclera:Influence on Optic Nerve Head Biomechanics and Connections with Glaucoma,93 Experimental Eye Research 4,4−12(2011)参照。
【0009】
非退行性および退行性眼球損傷は、(複数の)眼球上の圧力を支持する負荷によって反映される可能性がある。例えば、従来のマットレスに横たわる人は、マットレスと接触する顔面の側面に均一に分散された頭部の重量によって眼球上に圧力を経験する。頭部の重量は、マットレス上に支持される顔面部分によって支持され、この顔面部分は、結果として生じる反力を支持する。顔面上の反力は、頭部の重量と等しい反対方向の力であり、N=mgである。ここでmは頭部の重量でgは重力定数であり、〜9.81ニュートン/kgである。この例における反力Nは、表面を通して頭部が沈むことを防ぐ、頭部に相対するマットレスによって適用される力を表す。多くのうつぶせ位置においては、表面上に支持される顔面領域は、少なくとも一つの眼球を含む。この力Nもしくは眼球領域を通る負荷の移動は、結果として組織上の力を引き起こす。
【0010】
これらの通常の位置において眼球に及ぼす力を示すために、以下の重量および表面領域の値が使用される。これらの値は、眼球上に及ぼされる圧力の力平衡モデルを確立するために利用される近似値であって、個人によって変化する可能性がある。人の頭部の重量のほぼ平均値が10.0パウンド(lbs)であると仮定すると、横向きで休憩するかもしくは睡眠をとっている間、表面と接触する表面領域は、長方形の形状で、ほぼ6.5インチ×8.0インチの寸法であり、52.00平方インチの表面面積であることが概算される。この筋書きにおいては、顔面側面上で支持される頭部の重量は、52平方インチ当たり10パウンドの顔面側面の表面上の平均圧力(面積当たりの力)を生成する。これは、平方インチ当たり〜0.19パウンド(psi)もしくは〜9.9mmHgの平均圧力に等しい。ニュートンの第三法則は、全ての力に対して反力が存在し、それは、大きさが等しく反対方向に及ぶと明言している。この法則は、睡眠中に表面に対して眼球を押し付ける頭部の重量による眼内圧力の上昇を概算するために適用される。人の眼球は、約0.47インチ(12.0mm)のおおよその半径を有する球形として2.8inの表面領域を有する。睡眠もしくは休憩時に眼球の表面領域のうちの約1/3が、0.19psiの圧力に晒される表面と接触すると仮定すると、圧力は0.93inの表面で眼球上に及び、眼球表面領域の2.8in上に分散された0.18lbの力を生成する。この例の目的に対して、これは、うつ伏せ、横向き寝もしくは休憩に対し、眼内の0.065psiもしくは3.3mmHgの上昇を引き起こすことが推定される。Honan圧力減圧器が20−30mmHgの圧力を眼球に対して5−30分間、眼球に対する損傷を引き起こすことなく適用するために動作すると仮定すると、頭部の重量から〜10mmHgの圧力によって生成されるこの3mmHgのIOPにおける増加は、自己調整房水流出の増加によって容易に適応されるべきである。
【0011】
種々のデバイス、ゴーグル、眼鏡および保護眼球ギアが、本技術分野において知られている。例えば、U.S. Patent No.6,155,261のDayは、睡眠中のIOP上昇軽減を補助することを意図するデバイスを開示している。U.S.Patent No.5,213,241のDewarらは、身体活動中の眼球を保護するために利用されるデバイスを開示している。U.S.Patent No.5,343,561のAdamoなどの睡眠用マスク、およびU.S.Patent No.5,183,059のLeonardiなどの他の眼球シールドデバイスは、装着者の眼球の骨の軌道の縁のカバーを配置すると思われるが、眼球および周辺組織をバイパスする負荷経路を通る表面によって及ぼされる垂直力を吸収もしくは分散するとは考えにくい。しかしながら、これらの中で、変形、応力、歪みもしくは損傷を軽減するか防止するために必要とされる力分散、力軽減および変形回避特性を提供するものはない。
【発明の概要】
【0012】
本明細書で開示された実施形態は、変形、応力、歪みもしくは損傷を軽減するか防止するために眼球、眼窩もしくはその周辺組織をバイパスする別の負荷経路を提供することによって、うつぶせ位置における睡眠もしくは休憩中に少なくとも一つの眼球を通る負荷経路に伴う力に関連する生理学的および機械的問題点の双方を克服する。
【0013】
本明細書の目的は、うつぶせ寝もしくは休憩中に眼球、眼窩もしくはその周辺組織に対する変形、応力、歪みおよび損傷を軽減するか防止するために、眼球をバイパスする負荷経路を生成する非侵襲的システムおよび方法を提供することである。
【0014】
さらに別の目的は、眼球に対する変形、応力、歪みもしくは損傷を防止するか軽減するために、うつぶせ位置における睡眠もしくは休憩中に、眼球、眼窩およびその周辺組織をバイパスする負荷経路を生成する負荷移動支持構造を含む非侵襲的デバイスを提供することである。
【0015】
さらに別の目的は、眼球をバイパスする負荷経路を生成することによって、うつぶせ位置における睡眠もしくは休憩中に装着された角膜矯正コンタクトレンズの位置のシフトを防止するデバイスを提供することである。
【0016】
さらに別の目的は、眼内圧力の自己調整の崩壊、緑内障および他の退行性および非退行性眼球疾患の治療および予防で利用されうるシステムおよび方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】装着者が睡眠をとっているか休憩しているときの表面平面に対する支持・表面界面を示す。
図2】負荷移動支持構造を示すシステムの部分的に回転された図を示す。
図3】負荷移動支持構造を示すシステムの概略を示す。
図4】表面上で支持されているときの眼球平面におけるシステムの断面を示す。
図5】表面上で支持されているときのシステムの概略を示す。
図6】支持システムを示す。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本明細書で開示された実施形態は、垂直力が眼球をバイパスすることを可能にする構造的負荷移動用の非侵襲的システムおよび方法に関連する。システムは、頭部の重量などの負荷が眼球をバイパスする負荷経路を通って移されるように、睡眠中に装着されうるデバイスを含む。したがって、本システムは、睡眠時に生じる負荷が、変形、応力、歪みおよび/もしくは(繊維柱帯流出抵抗の増加、強膜上静脈圧の上昇、眼窩静脈圧の上昇および/もしくは、脈絡膜の拡大などの結果とて生じる)眼内圧力(IOP)を調整するための眼球の能力の退化による眼球の変形および/もしくは眼球に対する損傷を引き起こすことを防止する。実施形態は、8時間以上の期間用の睡眠中など、長期間使用のために利用されてもよい。
【0019】
本明細書で開示される実施形態は、睡眠中の眼球の変形による処方角膜矯正(オルソK)コンタクトレンズの位置シフトを経験する人のために特に有用性を有する、変形および眼球の損傷を軽減するための非侵襲的システムおよび方法にも関連する。
【0020】
本明細書で開示された実施形態は、永久的な視神経の損傷を結果として引き起こすような状態によって特徴づけられる緑内障および/もしくは非退行性眼球疾患と診断された(緑内障患者の家族健康歴が、薄い網膜壁、視神経カッピングなどの寄与条件の兆候を示す)人を補助するための非侵襲的システムおよび方法をも提供する。睡眠中に眼球の変形から外部力を回避することによって、負荷移動経路は、負荷によって誘発される眼球の変形を軽減し、今度は、繊維柱帯の流出抵抗の増加の可能性を軽減すると共に、眼球壁の負荷支持位置を形成する細胞の応力および歪みを軽減する。
【0021】
当業者によって理解されるように、本システムおよび方法は、種々の退行性および非退行性眼球疾患を治療するための従来療法とともに利用されてもよい。
【0022】
図1は、本明細書で開示されるシステムの装着者を示す。示されたシステムは、前面部分1および背面安定化部分2を有するデバイスDを含む。図1に示されるように、表面平面Sに対して支持・表面界面S’は、デバイスDの装着者が睡眠をとるか休憩している表面である。表面S’は、マットレスもしくは枕などの任意の休憩もしくは睡眠表面のことを称してもよい。頭部の重量は、マットレス上で支持されている顔面の部分によって支持され、この顔面の部分は、結果として生じる反力Nを支持する。本開示の目的のために、顔面上の反力Nは、頭部の重量と等しいが逆方向である。表面S’は、表面に対して装着者の力に比例する装着者の顔面に対する方向と逆方向の等しい力を及ぼす。デバイスDは、睡眠もしくは休憩中に装着者の眼球を含む経路によって、装着者の顔面に対して及ぼされる反力Nを吸収するか分散するための別の負荷経路を提供する。使用においては、システムのデバイスDは、角膜に対して十分な通気を保証し、眼球の応力、歪み、もしくは変形を軽減するか防止する。
【0023】
図2に示されるように、デバイスDの前面部分1は、パッド1b、側面パッド1cおよび1c’、額パッド1dおよび鼻柱パッド1eによって提供されるような装着者の顔面の前面周囲にぴったり合うように構成された負荷移動支持構造1aを含む。負荷移動支持構造1a(本明細書では“支持構造1a”とも称される)は、変形することなく、睡眠もしくは休憩中に及ぼされうる最大負荷を支持するために選択された、例えば、プラスチック、アクリル、金属、合成物で作成された輪郭に合致した、半透明のバリアとして構成されてもよい。負荷移動支持構造1aは、鼻棘の横距から、額の突起もしくは前頭骨までの連続的被覆を提供する輪郭に合致した半透明バリアであってもよい。或いは、支持構造1aは、装着者の解剖学的特徴に対して部分的被覆を提供する、輪郭に合致した半透明バリアであってもよい。負荷支持構造として機能することによって、支持構造1aは、眼球領域の通気を可能にし、かつ、眼球と表面との間の接触を防止しつつ、反力N及び負荷を、鼻骨、頬骨、額などの顔面の骨構造に対応するパッド領域1bから1eに分散することによって、外部負荷が眼球をバイパスすることを可能にする。支持構造1aは、鼻骨および鼻の構造を収めるために十分な外側への突出を提供し、さらなるパッドが圧力点を回避するために適用されてもよい。
【0024】
支持構造1aは、ワイヤ、プラスチック、ファイバマトリクスなどから作成されたメッシュワーク構造で構成され、当該構造は、前述された負荷を支持するために十分に強固である。支持構造1aは、鼻棘の横距から額の突起もしくは前頭骨へと連続的被覆を提供するように構成されてもよい。あるいは、支持構造1aは、解剖学的特徴の部分的被覆を提供し、負荷支持構造として機能するように構成されてもよく、それによって、眼球領域の最適な通気を提供しつつ、外部負荷が眼球をバイパスして、鼻骨、頬骨、額上に分散することを可能とする。さらには、負荷移動支持構造1aは、視界用の半透明部分を含んでもよい。支持構造1aの半透明部分は、薄く色付けられてもよいし、従来の眼鏡レンズの方法で適用される処方を有してもよい。デバイスDは、筋肉が弛緩する典型的には8時間以上の長期間装着されることを意図される。デバイスDは最大の力負荷が及ぼされうるとき、このような状況下にある。
【0025】
デバイスDは、図2および図3に示されるように、背面安定化コンポーネント部分2を含む。安定化コンポーネント2は、前面部分1を固定するために使用され、装着者は、顔面上にデバイスDを確実に保持しうる。支持構造1aは、開口2aおよび2a’などの一つ以上の開口を含んでもよく、一つ以上の安定化コンポーネント2がそこを通って固定されてもよい。コンポーネント2は、個々の快適性のために調節2b)されるように構成されてもよい。コンポーネント2は、例えば、弾性布、レーヨン、ナイロン、ゴムもしくは他の締め付けもしくは調節可能材料で構成されてもよい。別の実施形態においては、安定化コンポーネントは、支持構造1aに取り付けられたヘルメットもしくは帽子を含んでもよい。パッド1bから1eに加えて安定化コンポーネント2によって固定されるような、装着者の顔面上デバイスDをぴったりと合わせることのできる能力は、開示された実施形態の特徴である。なぜなら、装着者は、支持・表面界面平面S’上もしくはそこに相対して支持される腕もしくは枕などの対象物上で回転するか、寝返りを打つか、ひっくり返るか、横向きに位置するか、うつ伏せになることがあるからである。
【0026】
前面部分1は、前面部分1の上部表面および装着者の顔面に適応する上部パッド部分1bを含む。前面部分1は、装着者の顔面の各側面上に配置されるように構成された側面パッド部分1cおよび1c’をも含む。前面部分1は、図2に示されるように、パッド部分1dを有する内部部分を含み、システムの中心に伝えられる負荷を吸収し、前頭骨の眉間領域の硬固な下部解剖学的構造にほぼ対応する。前面部分1は、鼻柱領域における装着者の顔面にぴったりと合うように構成された内側パッド部分1eも含む。使用においては、デバイスDは、装着者の顔面上に配置され、それによって、うつぶせ位置における睡眠もしくは休憩中に、眼球、眼窩およびその周辺組織をバイパスする負荷経路を提供する。前面部分1は、装着者にぴったりと合い、支持・表面界面S’によって及ぼされる負荷を吸収し、分散するように構成された、パッド1bから1eを挿入された表面S’に対して、完全もしくは部分的な負荷移動支持構造1aを提供することによって、頭部の重量などの負荷を支持するために十分に強固な材料で構成される。表面S’は、マットレス表面、枕などを含んでもよいが、そのいずれにも限定はされない。デバイスDは、それらの負荷が眼球をバイパスするように表面S’によって及ぼされる反力を吸収して分散する。前面部分1は、例えば、額、頬骨、こめかみ、鼻柱上の当該負荷を分散してもよい。
【0027】
さらに、前面部分1は、負荷支持構造1aおよびパッド部分1bから1e上の負荷を分散してもよい。パッド部分1bから1eは、支持構造1aと装着者との間に挿入されるように構成され、変形可能もしくは準変形可能な材料で作成され、当該材料は、低密度から高密度の発泡体、半固体、布、合成繊維、ゲルおよびゴムを含むがそのいずれにも限定されることはない。パッド部分1bから1eは、支持1の表面領域にわたる力を吸収して分散するように構成され、負荷経路は、眼球をバイパスする。さらには、パッド部分1bから1eは、支持1aと装着者の顔面構造との間に、負荷を分散して吸収するために、例えば、額にわたってもしくは鼻柱および頬骨に跨るように挿入され、それらが眼球領域をバイパスして、例えば、軟組織および顔面筋よりも骨構造で、負荷を支持するのにより適した解剖学的構造に伝えられ、さもないと眼球の変形もしくはIOPを調整するための眼球の能力の退化につながる可能性がある。IOPを調整する眼球の能力の欠陥は、繊維柱帯流出抵抗増加、強膜上状静脈圧増加、眼窩静脈圧増加、脈絡膜拡大の結果として、独立にもしくは組み合わせて生じる可能性がある。
【0028】
額の突起もしくは眉間領域に対する位置に対応するパッド1dなどのパッドの適用は、表面Sに向かって、支持・表面界面平面S’を突出させ、不快な圧力点を生じることなく負荷を支持するために特に適切な解剖学的構造に対して外部力を向ける。これらの解剖学的構造は、額、こめかみ、頬骨および頬を含むがそのいずれにも限定はされない。望ましい実施形態においては、パッド1cは、例えば、頭頂骨および側頭骨において、支持構造1aと装着者の頭部との間に挿入され、例えば、頬骨などの装着者の顎に向かって下方に伸長し、直接的もしくは間接的負荷を分散して吸収し、それらが眼球をバイパスし、装着者の顔面に対する合致を提供することによって移動もしくは回転中の最適な安定性を提供する。
【0029】
図2から図5にさらに示されるように、前面部分1は、(複数の)眼球および表面S’の間に余裕Cを生成する。図2において、Hは、顔面と鼻柱Bの垂直平面を含む頭部の前平面である。Eは、システムの装着によって生成される眼球と表面S’の間の余裕の量を示すための、システムに対して示されるような、眼球領域を水平に通る耳から耳へと延びる眼球軸平面である。頭部Hと眼球E平面の交点において、余裕はゼロ(C)である。なぜなら、これは、眼球の表面を表すからである。前面部分1は、Cmax(即ち、最大余裕)と同じ大きさの眼球と支持・表面界面S’の間の余裕Cを生み出す表面S’に対するバリアとして機能する負荷移動支持構造1aを含む。余裕Cは、位置、力の程度、回転、パッドのへこみ、および他の要因に依存して変化する可能性がある。
【0030】
図4および図5に示されるように、デバイスDにわたる力分散Fは、支持構造1aと装着者との間に挿入されたパッド1bから1eで直接的および間接的に力を吸収するために負荷移動支持構造1aを提供することによって、前面部分1に沿った負荷経路に従う。力は、それによって、負荷を支持するのに特に適した構造へと向けられる。例えば、パッド部1bおよび1dによって額、パッド1eによって鼻柱、パッド部1cおよび1c’によって顎もしくは頬骨に向けられる。表面S’によって及ぼされる反力Nは、余裕Cによって眼球領域をバイパスする。デバイスDにわたる力分散Fは、表面平面Sに沿った回転角度によって導入される(複数の)モーメントによる間接力Findに加えて、表面S’によって前面部分1に及ぼされる垂直力を含む直接力Fdirによってさらに特徴づけられる。力は、余裕Cによって眼球をバイパスする負荷経路を提供するために、パッド1bから1eを挿入される支持構造1aのスキームに従ってバランスをとられ、軟組織もしくは顔面筋に対する応力、歪み、変形および圧力を軽減もしくは防止するためのFに沿った別の力分散を生成するのと同様に直接接触を回避する。
【0031】
さらには、支持構造1aおよびパッド部分1bから1eは、装着者の顔面の印象を獲得することによってカスタマイズされるか、または個人に合わせられてもよい。記憶発泡体、硬化発泡体鋳造などがカスタマイズ特性を提供するために使用されてもよい。当業者に理解されるように、負荷移動支持構造1aおよびパッド部分1bから1eは、硬化性、屈曲性、弾性、柔軟性、密度、重量の間のバランスを提供するための寸法および構成から成り、開示された実施形態の範囲および目的に見合う最適な負荷支持構造を提供する。
【0032】
さらには、前面部分1は、図2から図5に示されるように、眼球上の圧力に関連する負荷を吸収して分散するように構成される。一方法においては、前面部分1は、反力Nを遮断するように、負荷を支持するために特に適切な負荷支持解剖学的構造を突出させるためにパッド部分1bから1eが機能する間、余裕Cによって眼球領域を被覆し、それらが眼球をバイパスし、それによってデバイスDによって分散されるか吸収される。
【0033】
別の方法においては、前面部分1は、反力Nを分散して吸収することによって、緑内障などの退行性および非退行性眼球疾患を引き起こす、眼球、眼窩およびその周辺組織における持続性生理学的変形、応力、歪みに関連する直接的Fdirおよび間接的Find力ベクトルの双方を吸収して分散するようにも構成される。これらの疾患は、強膜上状静脈圧、眼窩静脈圧、繊維柱帯流出抵抗、脈絡膜拡大の持続的上昇に関連付けられるものとして、IOPを調整するための眼球能力の欠陥を含むがそのいずれにも限定はされない。望ましい一実施形態においては、デバイスDは、直接接触を回避するための余裕Cを生成するのに加えて、パッド1bから1eによって吸収されるべき支持構造1aに沿った直接力Fdirおよび間接力Findを分散することによって負荷を支持するのに特に適した解剖学的構造に対して力を伝えることによって、眼球上の持続性生理学的変形、応力および歪みを軽減するように構成される。余裕Cおよび力分散Fを有する別の負荷経路は、応力が眼球周囲の軟組織上に及ぼされないことを保証する。なぜなら、力は、パッドによって、負荷を支持するのに特に適切な解剖学的構造に向けられるからである。例えば、パッド1bおよび1dによって額、パッド1eによって鼻柱、パッド1cおよび1c’によって顎および頬骨に向けられる。
【0034】
本明細書で開示されたシステムは、図6に示されるような力分散支持3をも提供する。力分散支持3は、上述された実施形態の範囲に見合う力分散を提供するために、単独もしくはデバイスDと組み合わせて利用されてもよい。図6に示されるように、分散支持3の上方顔面外形は、額を支持するための隆起部3a、眼球平面Eに沿った余裕Cを生み出す凹部3b、頬および顎を支持するための第二の隆起部3c、首に合致して支持するための第二の凹部3dを提供するような輪郭を描く。支持3の下方顔面外形は、表面平面S上に直角、かつ確実に支持されるために平坦であって、反力Nをさらに分散して吸収することが可能な支持・表面界面S’を生み出す。部分3aから3dは、連続的かつ徐々に傾き、それによって力分散支持3が、眼球から離れた装着者の顔面および首の選択された領域における均一な負荷分散を提供することを可能にする。
【0035】
図6に示されるように、力分散支持3は、其々、3aから3dにおいて額、頬、顎および首を支持する。3bのへこみは、Cmax’(即ち、最大余裕)と同じ大きさの、眼球と支持・表面界面S’の間の余裕Cを生み出す。余裕Cは、位置、力の程度、回転、パッドのへこみおよび他の要因に依存して変化する可能性がある。凹部3bは、さらに、装着者の眼球が、最大レベルの余裕Cmax’で、横向き寝もしくは下向き寝などのうつ伏せ睡眠もしくは休憩位置において、接触を受けないように構成される。この方法においては、力分散支持3は、本明細書で記述された目的に見合う眼球をバイパスする最適な負荷支持点支持を提供するために、デバイスDと組み合わせて利用されてもよい。当業者によって理解されるように、支持3は、硬化性、屈曲性、弾性、柔軟性、密度、重量のバランスを提供するように構成され、最適な負荷分散を提供し、本明細書で開示された実施形態の範囲に見合う緩衝作用と負荷分散の間のバランスを提供する材料で構成することができる。当該材料は、発泡体、綿、ポリエステル、低アレルギー性材料を含むがそのいずれにも限定はされない。
【0036】
望ましい一実施形態においては、支持3は、3bにおける眼球平面Eに沿って最大余裕Cmax’を提供しつつ、3aにおいて額、3cにおいて頬骨および顎、3dにおいて首を快適に支持するために十分に強固な、連続的低アレルギー性発泡体枕で構成される。隆起部3aおよび3bは、例えば、3aに対応する額の隆起部および眉間領域において、かつ、3bに対応する頬および顎の頬骨架橋部分において、負荷を支持するのに特に適した解剖学的骨構造との対応において突出するように構成される。
【0037】
支持3の上方顔面外形を通って及ぼされる反力Nは、3bのへこみにおいて眼球平面Eを通らず、3aおよび3cの隆起部を通って選択的に伝えられる一意的な力分散プロファイルを生じる。図6に示されるように、垂直力は、それがなければ眼球、眼窩および周辺組織が表面S’と接触する、最大余裕Cmax’を生じて、眼球平面Eをバイパスする。その代わりに、力は、隆起部3aおよび3cへと伝えられ、ユーザの額に対して3aによって及ぼされる反力はFdirAであり、ユーザの頬および顎に対して3cによって及ぼされる反力はFdirBである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6