(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
最初に本発明に使用するエポキシ樹脂に使用される臭素化エポキシ化合物について説明する。
前記臭素化エポキシ化合物は、下記一般式(21)により表されるものである。
【0033】
前記臭素化エポキシ化合物は、下記一般式(22)により表される臭素化ビスフェノール化合物をエピクロルヒドリンと反応させることにより得ることができる。
【0035】
なお前記一般式(22)により表される臭素化ビスフェノール化合物をグリシジルエーテル化する際に、前記臭素化ビスフェノール化合物に含まれる水酸基とグリシジル基が反応した自己縮合物、グリシジル基に水が付加した反応物等、製造過程の反応で生成する成分を含有する場合がある。以下のグリシジルエーテル基を含む化合物の場合も同様である。
【0036】
次に本発明に使用する前記ビスフェノール型エポキシ化合物について説明する。
前記ビスフェノール型エポキシ化合物は、下記一般式(1)により表されるものである。
【0038】
ここでR
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R
3〜R
6は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基のいずれかを示す。またZは1〜100の繰り返し単位を示す。
【0039】
本発明に使用する前記ビスフェノール型エポキシ化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(17)〜一般式(18)に示されるもの等が挙げられる。
【0041】
ここでXは1〜100の繰り返し単位を示す。
【0042】
前記一般式(17)は、前記一般式(1)のR
1〜R
6が水素原子である場合に対応する。
【0044】
Yは1〜100の繰り返し単位を示す。
【0045】
前記一般式(18)は、前記一般式(1)のR
1およびR
2がメチル基であり、R
3〜R
6が水素原子である場合に対応する。
【0046】
前記ビスフェノール型エポキシ化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0047】
また本発明に使用する脂肪族エポキシ化合物は、下記一般式(2)により表されるものである。
【0049】
ここでRは炭素数1〜500のアルキレン基であり、酸素原子を含むことができる。またnは2〜4の繰り返し単位を示し、mは0〜1の繰り返し単位を示し、n+mは2〜4の範囲である。
【0050】
本発明に使用する脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、二官能脂肪族エポキシ化合物、官能基が3つ以上の多官能脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
前記脂肪族エポキシ化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0051】
本発明に使用する脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(3)により示される二官能脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。
【0053】
ここでRaは炭素数1〜500の炭化水素基であり、酸素原子を含むことができる。
【0054】
前記一般式(3)の具体例としては、例えば、下記一般式(3−1)、(3−2)等が挙げられる。
【0056】
ここでRbは炭素数2〜4のアルキレン基である。前記アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基およびこれらの異性体が挙げられる。またrは1〜500の繰り返し単位を示し、2〜500の範囲であれば好ましい。
【0058】
R
cは炭素数2〜10のアルキレン基である。前記アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基およびこれらの異性体が挙げられる。
R
cは炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましい。
【0059】
本発明に使用する二官能脂肪族エポキシ化合物としては、例えば下記一般式(4)〜一般式(9)に示されるもの等も挙げることができる。
【0062】
ここでR
7は、炭素数1〜20のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。
【0064】
sは1〜500の繰り返し単位を示す。
【0066】
tは1〜500の繰り返し単位を示す。
【0068】
uは1〜500の繰り返し単位を示す。
【0070】
本発明に使用する脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(2a)により示される官能基が三個以上の多官能脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。
一般式(2a)
【0071】
ここでRは炭素数1〜500のアルキレン基であり、酸素原子を含むことができる。qは3〜4の繰り返し単位を示し、pは0〜1の繰り返し単位を示し、p+qは3〜4の範囲である。
【0072】
官能基が三個以上の多官能脂肪族エポキシ化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(10)〜一般式(12)等が挙げられる。
【0076】
次に前記臭素化エポキシエポキシ化合物と、ビスフェノール型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一つとの組み合わせについて説明する。
【0077】
[(Z)臭素化エポキシエポキシ化合物と、ビスフェノール型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一つとの組み合わせ]
(Z−1) 一般式(21)
【0078】
(Z−3) 一般式(17)
(Xは1〜500の繰り返し単位を示す。)
【0079】
(Z−4) 一般式(18)
(Yは1〜500の繰り返し単位を示す。)
【0081】
(Z−6) 一般式(5)
(R
7は、炭素数1〜20のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。)
【0082】
(Z−7) 一般式(6)
(sは1〜500の繰り返し単位を示す。)
【0083】
(Z−8) 一般式(7)
(tは1〜500の繰り返し単位を示す。)
【0084】
(Z−9) 一般式(8)
(uは1〜500の繰り返し単位を示す。)
【0089】
前記(Z−1)および(Z−2)の少なくとも一つを必須成分とし、前記(Z−3)〜(Z−13)からなる群より選ばれる少なくとも一つを組み合わせる例が挙げられる。
【0090】
上記臭素化エポキシエポキシ化合物と、ビスフェノール型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一つとの組み合わせを使用した熱膨張性樹脂組成物を成形して得られる成形物は、弾性率が低く、耐火性と加熱膨張後の破断点応力に優れる。
【0091】
本発明に使用する型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物としては、前記一般式(4)〜一般式(12)からなる群より選ばれる少なくとも一つが好ましく、一般式(8)、(10)および(11)からなる群より選ばれる少なくとも一つであることがより好ましい。
【0092】
次に前記臭素化エポキシエポキシ化合物と、前記ビスフェノール型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一つとの混合比について説明する。
前記臭素化エポキシエポキシ化合物と、前記ビスフェノール型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一つとの混合比は重量比で99:1〜1:99の範囲である。
【0093】
前記臭素化エポキシエポキシ化合物と前記ビスフェノール型エポキシ化合物とを併用する際には、加熱膨張後に得られる膨張残渣が良好な硬さが期待できるため、前記臭素化エポキシエポキシ化合物と、前記ビスフェノール型エポキシ化合物との混合比は、重量比で95:5〜5:95の範囲であることが好ましい。
また前記臭素化エポキシエポキシ化合物と、前記ビスフェノール型エポキシ化合物との相溶性が向上し、本発明に係る熱膨張性樹脂組成物が取扱い易くなるため、前記臭素化エポキシエポキシ化合物と、前記ビスフェノール型エポキシ化合物との混合比は、重量比で50:50〜5:95の範囲であることがより好ましく、30:70〜10:90の範囲であることがさらに好ましく、25:75〜15:85の範囲であることが最も好ましい。
【0094】
また前記臭素化エポキシエポキシ化合物と脂肪族エポキシ化合物とを併用する際には、本発明に係る熱膨張性樹脂組成物が取扱い易くなり、耐火性の低下が少ないため、前記臭素化エポキシエポキシ化合物と、前記脂肪族エポキシ化合物との混合比は、重量比で95:5〜5:95の範囲であることが好ましく、95:5〜10:90の範囲であることがより好ましく、95:5〜50:50の範囲であることがさらに好ましく、95:5〜80:20の範囲であることが最も好ましい。
【0095】
次に本発明に使用するエポキシ樹脂に含まれるエポキシ硬化剤について説明する。
本発明に使用するエポキシ硬化剤は、アミノ化合物を含むものである。
具体的には、例えば、下記の一般式(13)〜一般式(16)を含むアミノ化合物含有エポキシ硬化剤等が挙げられる。
【0096】
一般式(13)
(R
8は、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基を示す。またR
9は炭素数1〜20のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。)
【0097】
一般式(14)
(R
10およびR
11は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基を示す。)
【0098】
一般式(15)
(R
12、R
13およびR
14は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基を示す。)
【0099】
一般式(16)
(R
15は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基を示す。)
【0100】
本発明に使用するアミノ化合物含有エポキシ硬化剤は上記一般式(13)〜一般式(16)の一種もしくは二種以上を使用することが好ましい。
また前記アミノ化合物含有エポキシ硬化剤は、3−ラウリルオキシプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、オレイルアミン、キシリレンジアミン、およびこれらの誘導体等を使用することがより好ましい。
【0101】
次に無機充填材について説明する。
前記無機充填材の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸亜鉛、ホウ酸、三酸化二ホウ素、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0102】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0103】
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物にはリン化合物、熱膨張成分等を添加することができる。
【0104】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、
PX−200(大八化学工業社製)、CR−733S(大八化学工業社製)等のビスフェノールA由来の縮合リン酸エステル、
CR−741S(大八化学工業社製)等のキシレノール由来の縮合リン酸エステル等の縮合型リン酸エステル、
上記のリン酸エステルおよび縮合型リン酸エステルの構造中に塩素等のハロゲンを含有する含ハロゲンリン酸エステルおよび含ハロゲン縮合型リン酸エステル、
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、
ポリリン酸アンモニウム類、
下記一般式(19)で表される化合物等が挙げられる。
【0105】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0106】
これらのうち、防火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0107】
一般式(19)
上記一般式(19)中、R
16及びR
18は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0108】
R
17は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0109】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフ
ィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0110】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0111】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えばポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸アンモニウムアミド、および前記ポリリン酸アンモニウム類に発泡剤としてメラミンおよび/又はペンタエリスリトール等を加えた物が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好ましい。
【0112】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」および「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0113】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0114】
次に前記熱膨張性黒鉛について説明する。
前記熱膨張性黒鉛は加熱時に膨張するものであるが、その熱膨張開始温度が異なるものを市販品として入手することができる。
【0115】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0116】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0117】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0118】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0119】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0120】
粒度が20メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、充分な膨張残渣が得られにくく、また、粒度が200メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、前記エポキシ樹脂と混練する際に分散性が悪くなり、物性が低下し易い。
【0121】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0122】
また前記熱膨張性樹脂組成物層に使用する前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する膨張残渣強度の向上や熱容量の増大に寄与するものが好ましい。
【0123】
具体的には、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0124】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、1〜50μmの範囲のものがより好ましい。
【0125】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、粒径0.5μm以上では二次凝集を防止することができ、分散性が悪くなることを防ぐことができる。
【0126】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0127】
なお、粒径が200μm以下であれば、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することを防ぐことができる。
【0128】
金属炭酸塩、同様に骨材的や各割を果たす酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、骨剤的役割の他に加熱時の吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物を使用することが好ましく、その中でも骨材としての効果が高いため金属炭酸塩又は金属酸化物を使用することがより好ましく、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素を使用することが更に好ましく、炭酸カルシウムが最も好ましい。
【0129】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0130】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0131】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0132】
次にエポキシ樹脂、無機充填材としてリン化合物、熱膨張性黒鉛等を含む熱膨張性樹脂組成物等の配合について説明する。
【0133】
前記熱膨張性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂100重量部に対し、前記熱膨張性黒鉛を20〜350重量部及び前記無機充填材を50〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。また、前記熱膨張性黒鉛および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0134】
かかる熱膨張性樹脂組成物は加熱によって膨張し膨張残渣を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性樹脂組成物は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0135】
前記熱膨張性黒鉛の量が20重量部以上であると、膨張倍率が向上し、充分な耐火、防火性能が得られる。
一方、熱膨張性黒鉛の量が350重量部以下であると、擬集力が向上するため、成形品の強度が大きくなる。
また前記無機充填材の量が50重量部以上であると、燃焼後の残体積量を確保することができるため、十分な膨張残渣が得られる。さらに可燃物の比率が減少するため、難燃性が向上する。
【0136】
一方、無機充填材の量が400重量部以下であるとエポキシ樹脂の配合比率が増加するため、十分な凝集力が得られるため成形品としての強度を確保することができる。
【0137】
前記熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛および無機充填材の合計量は、200重量部以上では燃焼後の残渣量を確保することができ十分な防火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性の低下を防ぐことができ、長期の使用に耐えられる。
【0138】
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物および前記熱膨張性樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0139】
次に前記熱膨張性樹脂組成物の製造方法について説明する。
前記熱膨張性樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記熱膨張性樹脂組成物をそれぞれ有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法、
有機溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、前記熱膨張性樹脂組成物を加熱下に溶融させる等の方法により前記熱膨張性樹脂組成物を得ることができる。
中でも、有機溶剤を除去する工程が不要なため、有機溶剤を使用しないことが好ましい。
【0140】
前記熱膨張性樹脂組成物は、上記各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0141】
また、前記熱膨張性樹脂組成物を製造する際には、エポキシ樹脂の未反応成分とエポキシ硬化剤とに別々に充填材を混練しておき、成形直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
【0142】
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0143】
[(Z)臭素化エポキシエポキシ化合物と、ビスフェノール型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一つとの組み合わせ]
(Z−1) 一般式(21)
【0144】
(Z−3) 一般式(17)
(Xは1〜100の繰り返し単位を示す。)
【0145】
上記(Z−1)としてテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル(新日鐵化学社製、製品名:YDB−400、エポキシ当量:403.1g/当量。以下、「A−10」という。)を10.9重量部、
上記(Z−3)としてビスフェノールFジグリシジルエーテル(三菱化学社製、製品名:E807、エポキシ当量:168g/当量。以下、「A−1」という。)を45.4重量部、
エポキシ硬化剤として、3−ラウリルオキシプロピル−1−アミンおよびヘキサメチレンジアミン誘導体(三菱化学社製、製品名:FL052)が6:4の重量比で混合されたアミノ化合物(アミン当量:167.3g/当量、活性水素基準。以下、「B−1」という。)を43.7重量部、
無機充填材の一種として、ポリリン酸アンモニウム(クラリアント社製、製品名:AP−422。以下、「C−1」という。)を90重量部、
無機充填材の一種として、熱膨張性黒鉛(東ソー社製、製品名:GREP−EG。以下、「C−2」という。)を90重量部、
無機充填材の一種として、炭酸カルシウム(備北粉化社製、製品名:ホワイトンBF−300。以下、「C−3」という。)を90重量部、
合計370gになるように、1000mLの3つ口フラスコにはかりとり、メカニカルスターラーを用いて、25℃、10分間撹拌して、熱膨張性樹脂組成物を作製した。
得られた熱膨張性樹脂組成物を170gを25cm×25cm×2mmになるように離型処理されたポリエチレンテレフタレートシートではさみ、加熱電気プレスを使用して、40℃、30秒間加圧して熱膨張性樹脂組成物シートを作成した。
前記熱膨張性樹脂組成物シートを90℃オーブンで24時間加温することにより硬化させ、エポキシ樹脂シートを作製した。
また、上記の得られた熱膨張性樹脂組成物135gを25cm×25cm×1.5mmになるように離型処理された離型処理されたポリエチレンテレフタレートシートではさみ、加熱電気プレスを使用して、40℃、30秒加圧して熱膨張性樹脂樹脂組成物シートを作成した。前記の熱膨張性樹脂組成物シートを90℃オーブンで24時間加温することにより硬化させ、エポキシ樹脂シートを作成した。
上記で得られた1.5mm品のエポキシ樹脂シートを使用して、破断点応力の試験を行った。また、2mm品のエポキシ樹脂シートを使用して、弾性率測定を行った。
なお、(A)成分(「A−1」および「A−10」)と(B)成分(「B−1」)の比率は、エポキシモノマーのエポキシ当量と硬化剤の活性水素当量の比率が、105:100〜100:105になるように配合した。この関係は以下の場合も同様である。
得られたエポキシ樹脂シートを下記の基準により評価した。
【0146】
[破断点応力]
・製造例により得られた本発明品及び比較発明品を用いて、98mm×98mm×1.5mmの試験片を電気炉にて600℃で30分間加熱した。
破断点応力の測定は加熱膨張後の本発明品及び比較発明品の熱膨張性無機質材料の形状保持性の指標として、加熱後のサンプルを圧縮試験機(カトーテック株式会社製「フィンガーフィーリングテスター」)を用いて、0.25cm
2の圧子で0.1cm/sの圧縮速度にて破断点応力を測定した。
【0147】
[曲げ弾性率]
・本発明品及び比較発明品をオリエンテック社製、テンシロンを使用して、JIS K7171に準拠して温度:0℃、試験速度:5mm/s、試験片:幅25mm×長さ30mm×厚さ2mm、支点間距離24mmで曲げ弾性率を測定した。
【0148】
臭素化エポキシエポキシ化合物と、ビスフェノール型エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物の少なくとも一つとの組み合わせ(Z)の場合は、前記破断点応力は0.6kgf以上であり、弾性率は50N/mm
2以下であることが好ましい。
【0149】
結果を表1に示す。
表1から分かる通り、実施例1に係る熱膨張性樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂シートは、弾性率が比較的低く、耐火性と破断点応力に優れる。
実施例1に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例2】
【0150】
実施例1の場合で、「A−10」を11.2重量部使用し、「A−1」を39.3重量部使用した。
また「A−10」および「A−1」に加えて、下記(Z−6)を使用した。
【0151】
(Z−6) 一般式(5)
(R
7は、炭素数1〜20のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。)
【0152】
上記(Z−6)として、ダイマー変性エポキシ(エポキシ当量:422g/eq、以下、「A−3」)を4.7重量部使用した。
また「B−1」を43.9重量部使用した。
実施例2に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例3】
【0153】
実施例1の場合で、「A−10」を31.6重量部使用し、「A−1」に代えて下記(Z−5)を使用した。
【0154】
(Z−5) 一般式(4)
【0155】
上記(Z−5)として、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル(エポキシ当量:157g/当量、以下、「A−2」という。)を31.5重量部使用した。
また「B−1」を36.9重量部使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例3に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例4】
【0156】
実施例1の場合で、「A−10」を54.4重量部使用し、「A−1」を13.6重量部使用し、「B−1」を32.0重量部使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例4に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例5】
【0157】
実施例1の場合で、「A−10」を54.6重量部使用し、「A−1」を13.6重量部使用した。
また「B−1」に代えて、エポキシ硬化剤として、キシリレンジアミン誘導体:オレイルアミン=6:4の混合物 (活性水素当量:165.0g/eq。キシリレンジアミン誘導体はメタキシリレンジアミン1molに対して、ブチルグリシジルエーテル1molとドデシルグリシジルエーテル1molを反応させたもの。以下、「B−2」という。)を31.8重量部使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例5に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例6】
【0158】
実施例1の場合で、「A−10」を62.4重量部使用し、「A−1」を7.0重量部使用し、「B−1」を30.6重量部使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例6に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例7】
【0159】
実施例1の場合で、「A−10」を55.4重量部使用した。
また「A−1」に代えて、下記(Z−9)を使用した。
【0160】
(Z−9) 一般式(8)
(uは1〜500の繰り返し単位を示す。)
【0161】
上記(Z−9)として、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、重合度平均9、EX−830、エポキシ当量:268g/eq、以下、「A−6」という。)を13.8重量部使用した。
また「B−1」を30.8重量部使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例7に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例8】
【0162】
実施例1の場合で、「A−10」を55.4重量部使用し、「A−1」に代えて「A−6」を13.8重量部使用した。
また「B−1」に代えて「B−2」を30.8重量部使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例8に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例9】
【0163】
実施例1の場合で、「A−10」を52.7重量部使用した。
また「A−1」に代えて、下記(Z−4)を使用した。
【0164】
(Z−4) 一般式(18)
(Yは1〜100の繰り返し単位を示す。)
【0165】
上記(Z−4)として、ビスフェノールA型エポキシモノマー(三菱化学社製、製品名:E828、エポキシ当量:179g/eq。以下、「A−13」という。)を15.7重量部使用した。
また「B−1」に代えて「B−2」を31.6重量部使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例9に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例10】
【0166】
実施例1の場合で、「A−10」を54.6重量部使用し、「A−1」を13.6重量部使用した。
また「B−1」に代えて「B−2」を31.8重量部使用した。
また無機充填材「C−3」に代えて、無機充填材の一種として、酸化チタン(キシダ化学社製、製品コード:020-78675。以下、「C−5」という。)を90重量部を使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例10に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【実施例11】
【0167】
実施例1の場合で、「A−10」を54.6重量部使用し、「A−1」を13.6重量部使用した。
また「B−1」に代えて「B−2」を31.8重量部使用した。
また無機充填材「C−1」に代えて、無機充填材の一種として、ポリリン酸メラミン(日産化学工業社製、製品名:PHOSMEL−200。以下、「C−4」という。)を90重量部を使用した他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
実施例11に使用した配合と試験結果を表1に示す。
【0168】
[比較例1]
実施例1の場合で、「A−1」を41.3重量部使用し、「A−10」に代えて「A−3」を10.3重量部使用し、「B−1」を48.4重量部使用した。また「A−10」を使用しなかった他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
比較例1に使用した配合と試験結果を表2に示す。
【0169】
[比較例2]
実施例1の場合で、「A−1」を40.0重量部使用し、「A−2」を10.0重量部使用し、「B−1」に代えて「B−2」を50.0重量部使用した。また「A−10」を使用しなかった他は、実施例1の場合と全く同様に実験を行った。
比較例2に使用した配合と試験結果を表2に示す。
【0170】
[比較例3]
比較例1の場合で、「A−1」を50.0重量部使用し、「B−1」を50.0重量部使用した。また「A−3」を使用しなかった他は、比較例1の場合と全く同様に実験を行った。
比較例3に使用した配合と試験結果を表2に示す。
【0171】
[比較例4]
比較例1の場合で、「A−1」を47.1重量部使用し、「B−1」を47.8重量部使用した。また「A−3」に代えて「A−6」を5.1重量部使用した他は、比較例1の場合と全く同様に実験を行った。
比較例4に使用した配合と試験結果を表2に示す。
【0172】
[比較例5]
比較例1の場合で、「B−1」を47.9重量部使用した。また「A−1」および「A−3」に代えて「A−13」を52.1重量部使用した他は、比較例1の場合と全く同様に実験を行った。
比較例5に使用した配合と試験結果を表2に示す。
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】