(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5860178
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】飲料用補助具及びこれを用いた飲料具
(51)【国際特許分類】
A47G 19/00 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
A47G19/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-41875(P2015-41875)
(22)【出願日】2015年3月3日
【審査請求日】2015年4月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年度千葉県児童生徒・教職員科学作品展(優秀作品選集) 1
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314016834
【氏名又は名称】平賀 杏奈
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(74)【法定代理人】
【識別番号】301074908
【氏名又は名称】平賀 一範
(74)【法定代理人】
【識別番号】714011101
【氏名又は名称】平賀 一代
(72)【発明者】
【氏名】平賀 杏奈
【審査官】
平田 慎二
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3185020(JP,U)
【文献】
実開昭60−152376(JP,U)
【文献】
実開昭60−083384(JP,U)
【文献】
実開昭53−038582(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の周囲に固定するための周囲固定部材と、
それぞれに手を挿入して手の甲又は手首の外側を押し当てることが可能な空間が形成され、前記周囲固定部材を挟んで対称に接続される一対の保持部材と、を備え、
前記保持部材は、折り曲げ可能である一方折り曲げた状態の維持が可能な芯材と、前記芯材の周囲に配置される緩衝部材と、を備える飲料用補助具。
【請求項2】
前記周囲固定部材は、飲料容器の周囲において少なくとも2ヶ所配置され、それぞれにおいて一対の前記保持部材それぞれが固定されている請求項1記載の飲料用補助具。
【請求項3】
前記周囲固定部材は、飲料容器に対し着脱可能である請求項1記載の飲料用補助具。
【請求項4】
飲料を収容する飲料容器と、
飲料容器の周囲において固定される周囲固定部材と、
それぞれに手を挿入して手の甲又は手首の外側を押し当てることが可能な空間が形成され、前記周囲固定部材に前記飲料容器を挟んで対称に接続される一対の保持部材と、を備え、
前記保持部材は、折り曲げ可能である一方折り曲げた状態の維持が可能な芯材と、前記芯材の周囲に配置される緩衝部材と、を備える飲料具。
【請求項5】
飲料を収容する飲料容器と、
それぞれに手を挿入して手の甲又は手首の外側を押し当てることが可能な空間が形成され、前記飲料容器に、前記飲料容器を挟んで対称に接続される一対の保持部材と、を備え、
前記保持部材は、折り曲げ可能である一方折り曲げた状態の維持が可能な芯材と、前記芯材の周囲に配置される緩衝部材と、を備える飲料具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用補助具及びこれを用いた飲料具に関する。
【背景技術】
【0002】
神経や筋肉、脳機能の障害等によって手に麻痺等が生じ、握力が低下した患者(以下単に「患者」という。)は、物の保持が困難である場合が少なくなく、この結果、日常生活において不便を感じることが多い。例えば、飲み物を飲もうとする際において、飲み物容器を保持することが困難であると、患者は気軽にのどの渇きを潤すことができない。
【0003】
このような不便を解消する技術として、例えば下記特許文献1には、手指が麻痺して硬直した身体障害者でも持てる飲食器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−138861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、上記特許文献1に記載の技術は鍔をつけることで手指が硬直したとしてもこの鍔に手指を引っ掛けることで持ち上げることができるようになるといった点で便利である。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、患者は飲食器に対し押し当てる方向に両手で均等に力を加える必要がある。すなわち、押し当てる方向が飲食器に対しずれてしまうような場合や、力のバランスが崩れてしまうような場合、患者の手に対し飲食器が固定されているわけではないため、飲食器が手の間から転がり落ちてしまう虞が少なからずあり、患者には飲食器に慎重に力を加えなければならないといった負担がある。特に、患者は手の麻痺により押す力に加減を加えるのが難しいことが多いといった課題もある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、より容易かつ確実に飲物を飲むことを実現する飲料用補助具及びこれを用いた飲料具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対し本発明者は、押し当てる力ではなく、引く力を利用することで容器を保持することができないかと考えた。そして検討の結果、空間の開いた保持部材を一対に配置し、このそれぞれの空間にそれぞれの手を挿入し互いに離れる方向に力を加えることで、容器に対し力を安定的に加えることができ、上記課題を解決できることを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一観点に係る飲料用補助具は、飲料容器の周囲に固定するための周囲固定部材と、それぞれに空間が形成され、周囲固定部材を挟んで対称に接続される一対の保持部材と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の一観点に係る飲料具は、飲料を収容する飲料容器と、飲料容器の周囲において固定される周囲固定部材と、それぞれに空間が形成され、周囲固定部材に飲料容器を挟んで対称に接続される一対の保持部材と、を備える。
【0011】
また、本発明の他の一観点に係る飲料具は、飲料を収容する飲料容器と、それぞれに空間が形成され、飲料容器に、飲料容器を挟んで対称に接続される一対の保持部材と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
以上により、本発明は、より容易かつ確実に飲物を飲むことを実現する飲料用補助具及びこれを用いた飲料具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態にかかる飲料具の使用に関するイメージ図である。
【
図3】実施形態に係る飲料具の一部断面を示す図である。
【
図5】着脱可能な周囲固定部材の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に架かる飲料具の使用形態の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の例示に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る飲料具(以下「本飲料具」という。)1の概略を示す図である。本図で示すように、本飲料具1は、飲料を収容する飲料容器2と、飲料容器の周囲に固定される周囲固定部材3と、それぞれに空間41が形成されており、周囲固定部材3に飲料容器を挟んで対称に配置される一対の保持部材4と、を備える。
【0016】
本飲料具1は、上記の構成によって、手が麻痺した使用者であっても、より簡便、確実に飲物を飲むことを実現することができる。具体的に説明すると、まず本飲料具1は、飲料容器2に周囲固定部材3を配置するとともにこの周囲固定部材3に保持部材4を接続、固定しているため、飲料容器2及び周囲固定部材3及び保持部材4の位置関係をしっかりと固定することができる。そして、使用者が一対の保持部材のそれぞれの空間41にそれぞれの手を挿入し、手の甲側(又は手首の外側)を空間41の縁に押し当て、互いに離れる方向に引っ張ることで、飲料容器2に確実に力を加えることができる。そして、この状態で前腕部を肘を中心に動かすことで、飲料容器の飲み口の位置を自在に調整することが可能となり、より容易かつ確実、安全に飲み物を飲むことができるようになる。この使用時のイメージを
図2に示しておく。
【0017】
本実施形態において飲料容器2とは、液体である飲料を収容することのできる容器であり、この限りにおいて限定されるわけではないが、例えば外形において筒状部分を備え、その内部にも飲料を収容することのできる筒状の空間が形成されたものであることが好ましく、より具体的には水筒、ペットボトル、湯呑等を例示することができる。なお、水筒、ペットボトルは一般に、使用者の口を当てるために筒の軸に沿った一方の端に径の細い飲み口部分が形成されているため、より使用者にとって安全な飲み方が可能となる観点もあるため好ましい。
【0018】
本実施形態において周囲固定部材3は、上記のとおり飲料容器の周囲に固定される部材であり、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、飲料容器の周囲に沿って巻き回される線状又は帯状の部材であることが好ましい。本実施形態における周囲固定部材3を含む飲料容器3の断面のイメージ図を
図3に示しておく。周囲固定部材3は、接着剤等によって固定されていてもよいが、接着剤等を用いず線状又は帯状の部材を飲料容器2の周囲にきつく巻きつけたものであることが着脱を前提とする際には好ましい。
【0019】
また本実施形態において、周囲固定部材3は、1ヶ所であっても可能であるが、飲料容器の周囲において少なくとも2ヶ所、より具体的には、飲料容器が筒状部分を備えている場合は筒の軸方向に沿って所定の距離をもって少なくとも2箇所、設けられていることが好ましい。このようにすることで、一対の保持部材4それぞれを周囲固定部材3それぞれに対し接続固定することにより、複数個所によって保持部材を固定し、飲料容器に対し保持部材をより安定的に固定することができるようになる。
【0020】
また本実施形態において、周囲固定部材3の一方を飲料容器2の底を支持する皿状の固定部材としておくことも好ましい。このようにすると飲料容器2を底から支えることが可能となり、飲料容器2が周囲固定部材3から抜け落ちてしまうことを確実に防止できる。この場合の例を
図4に示しておく。
【0021】
なお本実施形態において周囲固定部材3の材質は、この機能を実現することができる限りにおいて限定されることなく様々な素材により作成することができ、例えば金属、樹脂、ゴム、ガラス、繊維を加工した布等を好適に用いることができるがこれに限定されない。
【0022】
なお本実施形態において、周囲固定部材3は、飲料容器2に対し容易に着脱可能となっていることが好ましい。このようにすることで、様々な飲料容器を用いることができる、より具体的には、専用の飲料容器2を用いずとも市販されている飲料容器を自由に用いることができるようになる。着脱自在にするための構成としては、例えば、少なくとも一部に伸縮可能ゴムを用いたものとすることも可能である。また、周囲固定部材の1ヶ所を分断し、その分断した位置にフック等の固定及び開放が可能な接続部材を設け、接続部材の近傍にゴムや布等の柔軟性のある部材を接続する若しくはヒンジ等の軸によって回転可能な部材を介して折り曲げることのできる構成しておくことも可能である。この場合の一例を
図5に示しておく。
【0023】
本実施形態において保持部材4は、上記のとおり、空間41が形成されており、周囲固定部材3及び飲料容器2を挟んで一対が対称に配置されているものである。本飲料具は、保持部材4を設けることで飲料容器2の向きを安定的に固定することができるようになる。
【0024】
保持部材4において空間41の形状は特に限定されるわけではなく、三角形や四角形等の多角形状、円形状、不定形状であってもよく、その形状は限定されない。ただし、空間41に手を入れて引っ張る際に使用者の手の甲又は手首の外側を当てるため、この付近(周囲固定部材3から離れた側)の形状は緩やかな曲線又は直線であることが好ましい。
【0025】
また本実施形態において保持部材4は、使用者が空間41に手を入れて、それぞれを引き離す方向に引っ張ってもある程度形状を維持することができる程度に硬い部材であることが好ましい。保持部材4を構成する材料としては、例えば金属、樹脂、木材、ガラス等を用いることができるがこれに限定されない。
【0026】
また本実施形態において保持部材4の構成は、空間41が形成され、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、
図6で示すように、芯材421と、芯材421の周囲に配置される緩衝部材422と、を備えた棒状の部材42を、平面的なリング状に構成し、その両端を飲料容器2の周囲に固定された一対の周囲固定部材3のそれぞれに接続された構成としておくことは好ましい一形態である。このようにすることで、簡便に空間41が形成される一方、所定の硬さを得ることができ、しかも空間41に周囲に緩衝部材422が存在するため使用者の手を空間41に入れて引っ張ったとしても使用者の手が痛くなることはない。この場合において、芯材としては、所定の硬さを達成するため、例えば金属、樹脂、木材、ガラス等を用いることができ、緩衝部材としては、例えばゴム、綿、布、発泡スチロール、ゲル等を用いることができるがこれに限定されない。
【0027】
なお本実施形態において、保持部材4は、使用者が力いっぱい引っ張っても形状がまったく変わらない程度に硬くてもよいが、ある程度の力で変形し、その状態を維持できる程度のやわらかさを有しているものであってもよい。このようにすると、例えば上記
図2で示すような使用形態のほか、例えば
図7で示すように、一対の保持部材4に対し、双方の空間41が一つの直線によって貫かれるよう同じ方向に折り曲げて変形させ、手前側の保持部材の空間41は手を貫通させ、奥側の保持部材を保持することで、片手で飲料容器を安定的に保持することができるようになる。これは、飲料容器全体を片手で握ることができるほどの握力がないが、細いものを握ることができる程度の握力が有る場合に非常に有効である。
【0028】
以上により、本発明は、より容易かつ確実に飲物を飲むことを実現する飲料用補助具及びこれを用いた飲料具を提供することができる。
【0029】
なお本実施形態では、説明及び作製のしやすさの観点から飲料容器、周囲固定部材、保持部材をそれぞれ別の部材として構成し、説明しているが、これらの少なくともいずれかを一体として形成することも当然に可能である。例えば周囲固定部材及び保持部材を一体に形成することも可能であり、また、飲料容器、周囲固定部材及び保持部材を一体に形成していてもよい。なお、飲料容器、周囲固定部材及び保持部材を一体に形成する場合、周囲固定部材を省略し、例えば
図8で示すように、飲料容器に直接保持部材を接続固定することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、飲料用補助具及びこれを用いた飲料具として産業上の利用可能性がある。
【要約】 (修正有)
【課題】手の麻痺により押す力に加減を加えるのが難しいことが多いという患者のために、より容易かつ確実に飲物を飲むことを実現する飲料用補助具及びこれを用いた飲料用具が必要である。
【解決手段】飲用具1は、飲料容器2の周囲に固定するための周囲固定部材3と、それぞれに空間41が形成され、周囲固定部材3を挟んで対称に接続される一対の保持部材4とし、より容易かつ確実に飲物を飲むことを実現する飲料用補助具及びこれを用いた飲料具1を提供する。
【選択図】
図1