(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5860180
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】引戸式自動ドア
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20160202BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20160202BHJP
E05C 17/56 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
E05B49/00 S
E05F15/73
E05C17/56
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-60850(P2015-60850)
(22)【出願日】2015年3月24日
【審査請求日】2015年3月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315003893
【氏名又は名称】梅田 礼男
(72)【発明者】
【氏名】梅田 礼男
【審査官】
川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−140519(JP,A)
【文献】
特開昭61−126495(JP,A)
【文献】
特開昭49−25757(JP,A)
【文献】
特開平11−93553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
E05C 17/56
E05F 15/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を開閉する引戸式のドア本体と、前記ドア本体を開閉動するモーターと、前記出入口を通過する車椅子の位置を検知する位置検知センサーと、前記モーターの駆動制御および前記位置検知センサーの信号検出を行う制御装置と、前記ドア本体を施錠するオートロック機構と、前記オートロック機構を解除する指紋認証手段とを備え、
前記ドア本体の端に金属製のプレートを設けるとともに前記プレートと吸着する電磁石を備え、
前記制御装置は、
前記ドア本体が開いたときに前記電磁石をオンにして前記金属製のプレートを吸着し、前記位置検知センサーの検出信号に基づいて前記車椅子が前記出入口から所定の距離だけ離れたときは、前記モータを駆動すると共に前記電磁石をオフにして前記金属製のプレートの吸着状態を解除するように制御することを特徴とする引戸式自動ドア。
【請求項2】
前記金属製プレートの前記電磁石に触れる部分に緩衝板を設けた請求項1に記載の引戸式自動ドア。
【請求項3】
前記ドア本体の下端に備えられたローラーを金属製で形成するとともに前記ローラーが走行するレールをプラスチック製で形成し、又は前記ローラーをプラスチック製で形成すると共に前記レールを金属製で形成し、又は前記ローラー及び前記レールのいずれもプラスチック製で形成した請求項1または2に記載の引戸式自動ドア。
【請求項4】
前記指紋認証手段は、指紋認証センサーを有し、前記指紋認証センサーの位置は前記出入口の下端から40cmから150cmの高さである請求項1から3のいずれかに記載の引戸式自動ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子利用者がマンションの玄関ドアなどを安全に出入りするための自動ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマンションの各部屋の玄関ドアは、一般に手前に引くようにして開けるものである。そして、ドアを開ける際にはドアに備えられた鍵穴に鍵を入れて解除し、レバーを下に下げつつ手前に引くことで玄関ドアを開き、手でドアを押さえつつ玄関を出入りする。
【0003】
また、以下の特許文献1に示すように、電気や油空圧などの動力を使用せずに、車椅子利用者など左右方向に力を伝えることが困難である人が、小さな力で開閉できるようにした自動開閉ドアが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3125216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような従来のマンションの玄関ドアには、次のような解決すべき課題があった。
1.車椅子に乗りながらドアを引くことが困難であること。
2.ドアを開けたあと、車椅子で玄関を出入りする際、ドアを手で押さえておくことが困難であること。
3.出入りが終わる前にドアが閉まってしまうことがあり、玄関の出入りが安全に行えない。
4.特許文献1の構造では、玄関などの重いドアには使用できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の点を解決するために、第1の発明は、出入口を開閉する引戸式のドア本体と、前記ドア本体を開閉動するモーターと、前記出入口を通過する車椅子の位置を検知する位置検知センサーと、前記モーターの駆動制御および前記位置検知センサーの信号検出を行う制御装置と、前記ドア本体を施錠するオートロック機構と、前記オートロック機構を解除する指紋認証手段とを備えてなる引戸式自動ドアである。このような構成によれば、前記指紋認証手段により前記オートロック機構を解除し、前記モーターにより自動でドアが開くため、車椅子利用者が安全に出入りすることが出来る。
【0007】
第2の発明は、前記ドア本体の端に金属製のプレートを設けるとともに前記ドアが開いたときに前記プレートと吸着する電磁石を備えた引戸式自動ドアである。このような構成によれば、前記金属製プレートと電磁石によりドア本体が開放状態を維持することが可能となり、車椅子利用者が出入りする際にドア本体が勝手に閉まるということがなくなり、安全に出入りが可能となる。
【0008】
第3の発明は、前記金属製プレートの前記電磁石に触れる部分に緩衝板を設けた引戸式自動ドアである。このように前記緩衝板を設けることで、前記ドアの開閉を繰り返すことにより起こりうる前記金属製プレートの破損を未然に防ぐことが出来る。
【0009】
第4の発明は、前記ドア本体の下端に備えられたローラーを金属製で形成するとともに前記ローラーが走行するレールをプラスチック製で形成し、又は前記ローラーをプラスチック製で形成すると共に前記レールを金属製で形成し、又は前記ローラー及び前記レールのいずれもプラスチック製で形成した引戸式自動ドアである。このようにローラーとレールの素材をそれぞれプラスチック製、金属製のように異なるものにすることで、金属製同士が擦れ合ったときの特有な不快音の発生を防ぐことができる。
【0010】
第5の発明は、前記指紋認証手段は、指紋認証センサーを有し、前記指紋認証センサーの位置は前記出入口の下端から40cmから150cmの高さである引戸式自動ドアである。このように指紋認証センサーの位置を40cmから150cmとすることで車椅子に乗ったままボタンを押しやすくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の引戸式開閉ドアには次のような効果がある。
1.引戸式の自動ドアであるため、車椅子の利用者でも容易に玄関ドアを開くことができる。
2.電磁石により玄関ドアが開放状態を維持することが可能であるため、ドアが勝手に閉まってしまうことがなくなり、車椅子の利用者が安全に玄関を出入りすることが出来る。
3.自動ドアであるため、重い玄関ドアでも問題なく開くことが出来る。
4.ドア下のレール部分の段差を少なくすることで、車椅子でも出入りしやすくなる。
5.ローラーとレールの素材をそれぞれプラスチック製、金属製のように異なるものにすることで、金属製同士が擦れ合ったときの特有な不快音の発生を防ぐことができる。
6.指紋認証手段によりオートロック機構を解除し、モーターにより自動でドアが開くため、車椅子利用者が安全に出入りすることが出来る。
7.緩衝板を設けることで、前記ドアの開閉を繰り返すことにより起こりうる前記金属製プレートの破損を未然に防ぐことが出来る。
8.ローラーとレールの素材をそれぞれプラスチック製、金属製のように異なるものにすることで、金属製同士が擦れ合ったときの特有な不快音の発生を防ぐことができる。
9.指紋認証センサーの位置を40cmから150cmとすることで車椅子に乗ったままボタンを押しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】制御の流れを示すフローチャート(前段)である。
【
図6】制御の流れを示すフローチャート(前段)である。
【
図8】引戸式自動ドア1の金属製プレート9、緩衝板12、電磁石8の配置例を示す図である。
【
図9】引戸式自動ドア1の金属製プレート9、緩衝板12、電磁石8の他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る引戸式開閉ドアの実施の形態を添付図面を用いて詳細に説明する。 本発明の自動ドアの基本構造として、移動可能な扉と開閉移動させるためのモーター、モーターの動きを制御する制御装置、人の位置を検出するセンサーを用いており、接近した人をセンサーにて検出し、制御装置によりモーターを動かしドアを開く。また、人がドアを通過し終えるのをセンサーで検知したとき、制御装置によりモーターを逆回転させ、ドアを閉めるというものである。
【0014】
図1〜
図4に、本発明の引戸式自動ドア1の具体例を示す。この引戸式自動ドア1は、車椅子6の利用者が安全にマンションの玄関ドアを開けてから閉めるまで通過出来るように考えたものである。
【0015】
図1〜
図3に示すように、引戸式自動ドア1は,ドア本体5に指紋認証ボタン(指紋認証センサー)2を設置し、この指紋認証ボタン2に触れることによって鍵(オートロック機構)13が解除され、その信号が
図3の制御装置3に送られ、制御装置3がモーター4に信号を送り、モーター4が動くことによって自動でドア本体5が開く(スライド移動する)ものである。
【0016】
指紋認証ボタン2の位置を車椅子6の高さがおおよそ45cmぐらいであることから、普通の玄関ドアのドアハンドルより位置を下げた50cmを目安に設置することで、車椅子6に乗ったままでも、無理な体制になることなく、指紋認証ボタン2を押すこと(触れること)が出来る。ここでは指紋認証ボタン2の位置を50cmしているが、本発明の引戸式自動ドア1は40cmから150cmの間であれば車椅子6に乗ったまま無理な体制になることなく、指紋認証ボタン2を押すことが可能である。指紋認証式にすることで、玄関ドアの鍵を取り出し、使用後に戻すという行動をする必要がなくなり、また、鍵を持ったまま車椅子6を動かすということもなくなる。
【0017】
次に、制御装置3を主体とした詳しい制御の流れを主に
図5および
図6のフローチャートに沿って説明する。また、制御装置3を中心とした各機構のブロック図を
図7に示す。
図5に示すように、最初のステップS1にて玄関の出入口Eの天井に設けられた位置検出センサー7(
図1〜
図3)が車椅子6をドア本体5から10cmの位置で検知したか?を判断する。NOであるならステップS1に戻り、YESであるならステップS2に進む。
【0018】
ステップS2では指紋認証ボタン(指紋認証センサー)2が押されたか?を判断する。NOであるならステップS2に戻り、YESであるならステップS3に進む。ステップS3では、制御装置3がデータベース3aにアクセスして登録された指紋と照合し、指紋が登録されたものと一致するか?を判断する。NOであるならステップS5のオートロック機構13による施錠(ロック)を維持するに進み、ここで終了となり、YESであるなら、ステップS4のオートロック機構13による解除(ロック解除)に進む。ステップS4では,同時にモーター4に駆動信号を送る。
【0019】
ステップS6ではモーター4の駆動によりドア本体5が開き、ステップS7にてドア本体5が完全に開放(全開)されたか?を判断する。この判断は、例えば
図4に示すようにドア本体5又はその近傍に設けられたドア開閉検知センサー7a,7bの検出信号に基づく。NOであるならステップS7に戻り、YESであるならステップS8に進む。ステップS8では電磁石8をONにするに進み、その後、
図6に示すようにステップS9の金属製プレート9と電磁石8が吸着してドア本体5が全開状態となる。
【0020】
ステップS10ではセンサー7がドア本体5から車椅子6が10cm以上離れるのを検知したか?を判断する。NOであるならステップS10に戻り、YESであるならステップS11に進む。ステップS11ではモーター4に逆回転の駆動信号を送る。
【0021】
ステップS12では電磁石8をOFFにし、ステップS13ではモーター4の逆回転の駆動によりドア本体5が閉まる。ステップS14ではドア本体5が閉じたか?を判断する。NOであるならステップS14に戻り、YESであるならステップS15に進み終了となる。電磁石8をOFFにすることにより吸着状態が解除されて簡単にドア本体5を移動することができる。
【0022】
ここでドア本体5の開閉をスムーズに行うために出入口の下端にレール10を取り付け、そのレール10上を滑ることでドア本体5が開閉される。下のレール10は、車椅子6で玄関を通過するときに引っかかったりすることの無いように出来る限り凹凸の少ないもので、かつ、幅を出来る限り細くする。
【0023】
レール10上を滑ることにより開閉するドア本体5の開閉時に生じる音を極力抑えられるように、レール10とドア本体5の下端のローラー11は金属同士にならないように、
図10に示すようにドア本体5の下に取り付けるローラー11の素材をプラスチック製にし、レール10を金属製にする。そうすることで、金属同士による、特有の不快な音を無くすことができ、かつ、近所の方の迷惑になるということを未然に防ぐことが出来ると言える。
【0024】
ここではレール10を金属製、ローラー11をプラスチック製と示したが、これに限定されるものではなく、レール10をプラスチック製、ローラー11を金属製、又はレール10、ローラー11ともにプラスチック製のように変更することも可能である。ドア本体5の端面に金属製プレート9を設置する。また、
図8に示すようにドア本体5が全開状態になったときにドア本体5の縁5aと当接する端板8aには電磁石8を設置する。ドア本体5が全開となってその縁5aが端板8aに接触したとき、制御装置3により電磁石8が励磁し、ドア本体5の縁5aに設けられた金属製プレート9が電磁石8に吸着して固定されるようにする。そうすることにより、ドア本体5を開けたときに開放状態を維持させることが可能となる。
【0025】
このときドア本体5の縁5aの金属製プレート9が剥き出しであると、何度もドア本体5を開放している間に、金属製プレート9が破損したり大きな衝突音が発生してしまう恐れがあるため、金属製プレート9の上に、厚さ2cmから3cm程の緩衝板12を貼り付ける。そのようにすることで、電磁石8によるドア本体5の開放状態を維持させることに影響を与えることなく、この問題を解決することができると考える。また、
図9のように金属製プレート9をドア本体5内の壁側に設けると共に、電磁石8をその壁側に設けるようにしても良い。緩衝板12としては特に限定されるものでなく、例えばシリコンプレートやゴム板などを用いることができる。
【0026】
出入口Eの天井部にはこれを通過する車椅子6の位置を検出する位置検出センサー7を取り付ける。この位置検出センサー7を使って、車椅子6の利用者が出入口Eを通過する際に、ドア本体5の開放状態の維持、または解除を行う。その原理として、指紋認証ボタン2を押してドア本体5が開放されたときに、位置検出センサー7で車椅子6の位置を把握し、それから玄関を通過し終わるまで位置検出センサー7で把握する。通過し終わった後は、位置検出センサー7で認知されたあとに、電磁石8をオフ(OFF)にする。そのようにすることで、通過し終わったあと、手を使わずに、ドア本体5を閉めることが出来る為、車椅子6に乗ったままでも、ドア本体5を閉めることが容易に可能となる。
【0027】
通過後の位置検出センサー7が認知する位置として、
図4に示すように車椅子6の座奥行がおおよそ45cmから50cmであることから、ハンドルがあることも考えて、ドア5から例えば10cm離れた位置とし、それからドア本体5が閉まり始めるようにする。そうすることで、ドア本体5が閉まり始めたとしても、車椅子6にぶつかることがなく、安全にドア本体5を閉めることが出来る。
【0028】
オートロック機構13によってドア本体5にオートロック機能を備え付けることによって、自動でドア本体5が開き、開放状態を維持し、通過後には、自動でドア本体5が閉まり、ドア本体5が自動で施錠される(オートロック)。そのため、車椅子6に乗ったまま、方向転換してドア本体5の鍵を閉めたりするための無駄なスペースを玄関に設けることを無くすことが出来るとともに、万が一、車椅子6に乗ったままドアの鍵を閉めようと後ろに振り向き、無理な体勢をとることによって起こりうる、転倒という事故を未然に防ぐということにもつながる。
【0029】
ドア本体5の開放状態での出入り口の幅を、車椅子6の幅がおおよそ55cmから60cm程であることから、70cmから1m程設けることによって、車椅子6に乗った状態での、玄関の出入口Eの通過の際に車椅子6を動かすときに両腕を使ってタイヤを回すときにドア本体5で手をぶつけるという事故を未然に防ぎ、かつ、出入り口の通過の際に圧迫感を感じられないものとなる。これらのように、車椅子6の利用者の立場になって考えることにより、車椅子6の利用者が安全かつ、快適にマンションで生活ができるようになる。
【0030】
本実施の形態では、マンションの玄関の例で示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のドアにも適用できる。例えば、病院に設置されている開閉ドアや特別支援学校のドア、又は、介護施設のドアなどにも適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 引戸式自動ドア
2 指紋認証ボタン(指紋認証手段、指紋認証センサー)
3 制御装置
3a データベース
4 モーター
5 ドア本体
6 車椅子
7 センサー
8 電磁石
9 金属製プレート
10 レール
11 ローラー
12 緩衝板
13 オートロック機構
E 出入口
【要約】
【課題】車椅子利用者が安全にかつ容易に玄関の出入りを行えるようにする。
【解決手段】出入口Eを開閉する引戸式のドア本体5と、前記ドア本体を開閉動するモーター4と、前記出入口Eを通過する車椅子6の位置を検知する位置検知センサー7と、前記モーター4の駆動制御および前記位置検知センサー7の信号検出を行う制御装置3と、前記ドア本体5を施錠するオートロック機構13と、前記オートロック機構13を解除する指紋認証手段2とを備えてなる引戸式自動ドアである。このような構成によれば、前記指紋認証手段2により前記オートロック機構13を解除し、前記モーター4により自動でドアが開くため、車椅子利用者が安全に出入りすることが出来る。
【選択図】
図1