特許第5860281号(P5860281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5860281-スポット溶接装置 図000002
  • 特許5860281-スポット溶接装置 図000003
  • 特許5860281-スポット溶接装置 図000004
  • 特許5860281-スポット溶接装置 図000005
  • 特許5860281-スポット溶接装置 図000006
  • 特許5860281-スポット溶接装置 図000007
  • 特許5860281-スポット溶接装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860281
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】スポット溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20160202BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B23K11/24 336
   B23K11/11 520
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-284804(P2011-284804)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-132662(P2013-132662A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】坂井 健輔
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−011259(JP,A)
【文献】 特開2002−219579(JP,A)
【文献】 特開2004−042074(JP,A)
【文献】 特開平11−291060(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0029288(US,A1)
【文献】 特開2013−132663(JP,A)
【文献】 特開2013−132661(JP,A)
【文献】 特開2013−132660(JP,A)
【文献】 特開2013−086098(JP,A)
【文献】 特開2013−071160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1溶接電極と、
被溶接部材に当接して前記第1溶接電極と協働して前記被溶接部材を挟持する第2溶接電極を被溶接部材に当接して加圧力を付与する加圧位置と被溶接部材から離反する退避位置に移動せしめる加圧アクチュエータと、
副加圧部を前記被溶接部材に当接して副加圧力を付与する副加圧位置と被溶接部材から離反する退避位置に移動せしめる副加圧アクチュエータとを有し、
加圧アクチュエータによって前記第1溶接電極及び第2溶接電極により前記被溶接部材を挟持加圧すると共に副加圧アクチュエータによって副加圧力を付与して前記第1溶接電極及び第2溶接電極に通電して被溶接部材を溶接するスポット溶接装置であって、
副加圧部から被溶接部材に付与される実副加圧力を検出する副加圧検出手段を有し、
前記副加圧部が前記被溶接部材に当接して副加圧力を付与した作動状態において、前記副加圧検出手段により検知された実副加圧力と予め設定された設定副加圧力によって副加圧力が設定副加圧力になるように副加圧アクチュエータを制御する溶接制御手段を備えたことを特徴とするスポット溶接装置。
【請求項2】
副加圧検出手段は、前記副加圧部と副加圧アクチュエータとの間に介在するロードセルであることを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接装置。
【請求項3】
前記副加圧アクチュエータは、サーボモータを有し、該サーボモータは供給されるモータ電流に対応する副加圧力を副加圧部に付与すると共に、
溶接制御手段は、前記副加圧検出手段により検知された実副加圧力と予め設定された設定副加圧力によってサーボモータによる副加圧力が設定副加圧力になるようにモータ電流を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のスポット溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被溶接部材をスポット溶接するスポット溶接装置に関し、特に剛性の異なる板材を重ね合わせた板組の被溶接部材をスポット溶接するスポット溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、重ね合わされた鋼板等の板材の接合には、一対の溶接電極間で挟み加圧力を与えながら両電極間に大電流を一定時間通電するスポット溶接が広く行われている。
【0003】
スポット溶接にあたり、両溶接電極による加圧力及び通電時間が一定の場合には、ナゲット径は電流の増加に従って徐々に増加するが、電流値が過大になると発熱量が多くなり板材間に溶融金属が飛散する散りの発生原因となる。即ち、接合部における板厚の減少と共に強度低下の要因となる。反対に電流が過少の場合にはナゲットが小さくなり十分な接合強度が得られない。また、加圧力が小さいと板材間の接触面積が少なくなり、電流密度が高くなり過熱による散り発生原因となる。一方、加圧力が大き過ぎると接合部の接触面積が大きくなり電流密度が低下して発熱量が減少し、ナゲットが小さくなり溶接強度が低下する。
【0004】
ここで、図6に示すように、剛性の低い薄板101、この薄板101より剛性が高い第1厚板102及び第2厚板103の3枚を重ね合わせた被溶接部材100をスポット溶接する場合には、各板材101、102、103の間に隙間がなく密着した状態では、可動側電極111と固定側電極112により被溶接部材100を加圧して電源113により通電すると、可動側電極111と固定側電極112間の通電経路における電流密度がほぼ均一となり薄板101から第2厚板103に亘って良好なナゲットが形成されて溶接強度を得ることができる。
【0005】
しかし、実際には、可動側電極111と固定側電極112によって被溶接部材100を加圧したときに、剛性の低い薄板101と第1厚板102が上方に撓んで、薄板101と第1厚板102の間及び第1厚板102と第2厚板103との間に隙間が生じる。この場合、可動側電極111と薄板101間の接触面積は薄板101の撓みにより大きくなるのに対して、薄板101と第1厚板102間及び第1厚板102と第2厚板103間の接合部の接触面積はより小さくなる。
【0006】
このため、可動側電極111と固定側電極112間の電流密度が薄板101側に対して第2厚板103側が高くなり、薄板101と第1厚板102間よりも第1厚板102と第2厚板103間の方が局部的な発熱量が多くなる。その結果、図6(a)に示すように、先ず第1厚板102と第2厚板103との接合部にナゲットNが形成され、次第にナゲットNが大きくなりやがて図6(b)のように薄板101と第1厚板102間が溶着される。しかし、この薄板101と第1厚板102との間の溶け込み量は小さく溶接強度が不安定で、薄板101の剥離が懸念され、かつ溶接品質にバラツキがある。この不具合は、特に第1厚板102及び第2厚板103が厚いほど第1厚板102と薄板101との間にナゲットNが到達しにくく、顕著である。
【0007】
この対策として、例えば特許文献1に開示されたスポット溶接装置がある。このスポット溶接装置は、図7に示すように、溶接ロボット115の手首部116にスポット溶接装置120が搭載され、溶接ロボット115は、クランパ118によって支持された被溶接部材100の各打点位置にスポット溶接ガン120を移動し、被溶接部材100のスポット溶接を行う。
【0008】
スポット溶接装置120は、手首部116に取り付けられたガン支持ブラケット117に固定されたリニアガイド121によって上下動自在に支持されたベース部122を備え、ベース部122に下方に延びる固定アーム123が設けられ、固定アーム123の下端先端に固定側電極124が設けられる。また、ベース部122の上端に加圧アクチュエータ126が搭載され、加圧アクチュエータ126により上下動するロッド127の下端に可動側電極125が取り付けられる。ガン支持ブラケット117の上端にサーボモータ128が搭載され、サーボモータ128の作動によりボールねじ機構を介してベース部122が上下動する。
【0009】
ここで、図示しないコントローラに予め記憶されているティーチングデータに従って、薄板101側に位置する可動側電極125による加圧力FUを固定側電極124による加圧力FLよりも小さくする(FU<FL)。
【0010】
このように可動側電極125による加圧力FUを固定側電極124による加圧力FLより小さくするために、先ず、サーボモータ128によりベース部122を上昇させて固定側電極124を被溶接部材100の下面に当接させると共に、加圧アクチュエータ126により可動側電極125を下降させて被溶接部材100の上面に当接させて加圧する。次に、サーボモータ128によりベース部122を押し上げる。このベース部122の押し上げにより、固定側電極124の加圧力FLがベース部122の押し上げ分だけ増加し、可動側電極125による加圧力FUが固定側電極124による加圧力FLより小さくなる。
【0011】
その結果、可動側電極125と固定側電極124との間に通電したときに、薄板101と第1厚板102の接合部における電流密度が高くなり発熱量が第1厚板102と第2厚板103の接合部における発熱量に対して相対的に増加する。これにより、薄板101から第2厚板103に亘って偏りのない良好なナゲットが生成されて溶接強度を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−251469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1によると、固定側電極124の加圧力FLより可動側電極125側の加圧力FUを小さくすることで、相対的に薄板101と第1厚板102間の電流密度が高くなり、薄板101と第1厚板102の接合部における発熱量が確保でき、溶け込み量が増大して溶接強度が増加する。
【0014】
しかし、クランパ118によりクランプ保持された被溶接部材100を固定側電極124と可動側電極125によって挟持加圧した状態でベース部122を移動して固定側電極124の加圧力FLより可動側電極125による加圧力FUを小さくするには、被溶接部材100をクランプ保持するクランパ118に大きな負荷が要求される。一方、クランパ118による被溶接部材100のクランプ位置と溶接位置が離間した状態では、被溶接部材100が撓み変形して固定側電極124による加圧力FLと可動側電極125による加圧力FUにバラツキが生じて安定した薄板101と第1厚板102との間の接触抵抗及び第1厚板102と第2厚板103との間の接触抵抗の確保が困難であり、接合部における電流密度にバラツキが生じてスポット溶接の品質低下が懸念される。
【0015】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、剛性の異なる板材を重ね合わせた板組の被溶接部材をスポット溶接するにあたり、優れた溶接品質が得られるスポット溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する請求項1に記載のスポット溶接装置の発明は、第1溶接電極と、被溶接部材に当接して前記第1溶接電極と協働して前記被溶接部材を挟持する第2溶接電極を被溶接部材に当接して加圧力を付与する加圧位置と被溶接部材から離反する退避位置に移動せしめる加圧アクチュエータと、副加圧部を前記被溶接部材に当接して副加圧力を付与する副加圧位置と被溶接部材から離反する退避位置に移動せしめる副加圧アクチュエータとを有し、加圧アクチュエータによって前記第1溶接電極及び第2溶接電極により前記被溶接部材を挟持加圧すると共に副加圧アクチュエータによって副加圧力を付与して前記第1溶接電極及び第2溶接電極に通電して被溶接部材を溶接するスポット溶接装置であって、副加圧部から被溶接部材に付与される実副加圧力を検出する副加圧検出手段を有し、前記副加圧部が前記被溶接部材に当接して副加圧力を付与した作動状態において、前記副加圧検出手段により検知された実副加圧力と予め設定された設定副加圧力によって副加圧力が設定副加圧力になるように副加圧アクチュエータを制御する溶接制御手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
これによると、第1溶接電極及び第2溶接電極によって加圧力が付与された被溶接部材に副加圧アクチュエータにより副加圧部から副加圧力を付与して第1溶接電極と第2溶接電極による加圧力を制御して被溶接部材をスポット溶接するにあたり、副加圧検出手段により副加圧部から被溶接部材に付与する実際の副加圧力を検出し、副加圧検出手段により検知された実副加圧力と予め設定された設定副加圧力によって副加圧力を設定副加圧力になるように、即ち実副加圧力と設定副加圧力との差が減少するように副加圧アクチュエータを制御することで、副加圧アクチュエータ等の内部機械的損失等による影響が回避されて予め設定した高精度の副加圧力が付与され、剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスポット溶接装置において、副加圧力検出手段は、前記副加圧部と副加圧アクチュエータとの間に介在するロードセルであることを特徴とする。
【0019】
これによると、副加圧力部による副加圧力を検出する副加圧検出手段が、副加圧部と副加圧アクチュエータとの間に介在するロードセルによって構成できると共に副加圧アクチュエータに影響されることなく副加圧部の実副加圧力がロードセルによって検出できる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のスポット溶接装置において、前記副加圧アクチュエータは、サーボモータを有し、該サーボモータは供給されるモータ電流に対応する副加圧力を副加圧部に付与すると共に、溶接制御手段は、前記副加圧検出手段により検知された実副加圧力と予め設定された設定副加圧力によってサーボモータによる副加圧力が設定副加圧力になるようにモータ電流を制御することを特徴とする。
【0021】
これによると、サードモータに供給するモータ電流を、溶接制御手段によって副加圧検出手段により検知された実副加圧力と設定副加圧力に基づいてサーボモータによる副加圧力が設定副加圧力になるように制御することで、予め設定した高精度の副加圧力が被溶接部材に付与され被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、第1溶接電極及び第2溶接電極によって加圧力が付与された被溶接部材に副加圧アクチュエータにより副加圧部から副加圧力が付与して第1溶接電極と第2溶接電極による加圧力を制御して被溶接部材をスポット溶接するにあたり、副加圧検出手段により副加圧部から被溶接部材に付与する実際の副加圧力を検出し、副加圧検出手段により検知された実副加圧力と予め設定された設定副加圧力によって副加圧力が設定副加圧力になるように副加圧アクチュエータを制御することで、副加圧アクチュエータ等の内部機械的損失等による影響されることなく予め設定した高精度の副加圧力が付与され、剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施の形態におけるスポット溶接装置の構成図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3】ロードセルの配置構造説明図であり、(a)は図1のB部拡大図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
図4】作動概要説明図である。
図5】ロードセルの配置構造説明図であり、(a)は要部斜視図、(b)は(a)のD−D線断面図である。
図6】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である。
図7】従来のスポット溶接の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。図1はスポット溶接装置の構成図、図2図1のA部拡大斜視図、図3はロードセルの配置構造説明図であり、同図(a)は図1のB部拡大図、(b)は(a)のC−C線断面図、図4は模式的に示す作動概要説明図である。
【0025】
スポット溶接装置1の説明に先立って、被溶接部材100について説明する。被溶接部材100は、図2に示すように、重ね合わされた2枚の厚板の一方に薄板を重ね合わせた、下から順に剛性の低い薄板101、薄板101より板厚が大きく剛性が高い第1厚板102及び第2厚板103が重ね合わされた3枚重ねの板組によって構成される。
【0026】
スポット溶接装置1は、図示しない溶接ロボットの手首部にイコライザユニットを介して取り付けられる矩形のベース部3及びベース部3の両側から下方に折曲して対向する一対の側部4を有するコ字状の支持ブラケット2を有し、支持ブラケット2に固定アーム10、加圧アクチュエータ20、副加圧付与手段30及び溶接トランス50が取り付け支持される。
【0027】
固定アーム10は、支持ブラケット2の両側部4に基端が結合されて下方に延在する固定アーム本体11及び固定アーム本体11の先端にL字状に折曲する電極保持部12が形成され、電極保持部12に第1溶接電極である固定側電極15が、その頂端15aを上方にして装着される。
【0028】
加圧アクチュエータ20は、サーボモータ21及びボールネジ送り機構等によって構成された直動部22を有し、サーボモータ21の作動によって直動部22のロッドが昇降往復動する。直動部22のロッドの下端に電極アーム23が設けられ、電極アーム23の先端に固定アーム10に設けられた固定側電極15と同軸上、即ち中心軸線L上に固定側電極15と対向する第2溶接電極である可動側電極25が設けられる。これにより加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25が被溶接部材100を固定側電極15と協働して挟持すると共に加圧力を付与する加圧位置と、固定側電極15から上方に離反する退避位置との間で中心軸線Lに沿って移動する。
【0029】
この可動側電極25と固定側電極15による加圧力はサーボモータ21の回転トルクによって決定され、サーボモータ21の回転トルクを制御することで要望の加圧力が得られる。即ち、サーボモータ21による可動側電極25の下降動で被溶接部材100が可動側電極25と固定側電極15との間に挟まれると、サーボモータ21の負荷が増大してサーボモータ21に流れるモータ電流が上昇する。そして要望の設定加圧力に合わせて設定した設定電流値にモータ電流が上昇したところで、後述する溶接制御手段となる溶接コントローラ51によりモータ電流のそれ以上の上昇を規制することで被溶接部材100を設定加圧力で加圧することができる。
【0030】
副加圧付与手段30は、支持ブラケット2の両側部4に両端が結合されたコ字状の取付ブラケット5に設けられた基板6に取り付けられるサーボモータ32及びボールネジ送り機構等によって構成された直動部33を備えた副加圧付与アクチュエータ31を有し、サーボモータ32の作動によって直動部33のロッド34が昇降往復動し、ロッド34の先端に副加圧検出手段であるロードセル40を介在して可動軸35が設けられる。
【0031】
可動軸35は先端に対向配置された一対の副可動軸35a、35bを備え、この副可動軸35a、35bの先端に副加圧付与アーム36が設けられる。副加圧付与アーム36は、副可動軸35a、35bの先端に基端部が結合されて略水平方向に延在する基端アーム部37と、基端アーム部37の先端部に基端部が結合されて固定側電極15の軸心方向、即ち中心軸線L方向に沿って下方に延在するアーム部38によって構成され、アーム部38の先端部に副加圧部39が設けられる。
【0032】
副加圧部39は、基端部がアーム部38の下部取付フランジ部38Aにボルトによって結合されて中心軸線L方向に向かって延在する矩形板状であって、先端に中心軸線Lと同軸で固定側電極15の貫通を許容する断面半円弧状、即ち半割り筒状の当接部39aが設けられる。
【0033】
図3にロードセル40の配置構造を示す。図3(a)は図1のB部拡大図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【0034】
ロードセル40は上面40a及び下面40bを有する円柱状であって、上面40aの中央部に中心軸線Lと同軸上に突出するねじ軸状、即ちボルト状の上側軸41Aが設けられ、下面40bの中央部に中心軸線Lと同軸上に突出するねじ軸状の下側軸41Bが設けられる。
【0035】
一方、直動部33のロッド34の下端にロードセル40に設けられた上側軸41Aの挿入を許容する円筒状の軸収容部42が形成されると共にロッド34の先端に上側軸41Aが螺合するねじ孔43aが形成された固定用ナット43が設けられる。また可動軸35の上端にロードセル40の下側軸41Bが挿入する軸収容部44が形成されると共に可動軸35の先端に下側軸41Bが螺合するねじ孔45aが形成された固定用ナット45が設けられる。
【0036】
このロッド34に設けられた固定用ナット43及び可動軸35に設けられた固定用ナット45にそれぞれロードセル40に設けられた上側軸41Aと下側軸41Bが螺合締結してロッド34と可動軸35との間にロードセル40が配置される。
【0037】
このように構成された副加圧付与アーム36は、サーボモータ32の作動によって固定側電極15と可動側電極25とによって挟持された被溶接部材100に下方から副加圧部39の当接部39aが当接して副加圧力fを付与する副加圧位置と、副加圧部39の当接部39aが固定側電極15の頂端15aより下方となり被溶接部材100から離反する退避位置との間で中心軸線Lに沿って移動する。
【0038】
この副加圧部39による副加圧力はサーボモータ32の回転トルクを制御することで要望の副加圧力が得られる。即ち、サーボモータ32による副加圧部39の上昇動で被溶接部材100に副加圧部39が当接すると、サーボモータ32の負荷が増大してサーボモータ32に流れるモータ電流が上昇する。そして溶接コントローラ51によりロードセル40により検知された実際の加圧力、いわゆる実副加圧力と予め設定された要望の設定副加圧力との差が減少するようにモータ電流をフィードバック制御する。
【0039】
即ち、サーボモータ32の作動により副加圧部39を退避位置から当接部39aが被溶接部材100に当接する副加圧位置に移動させ、更にサーボモータ32を作動させて副加圧部39が被溶接部材100に圧接して副加圧力が生じると、実際に副加圧部39により被溶接部材100に付与する副加圧力の反力、いわゆる実副加圧力を可動軸35によってロードセル40に入力する。ここでロードセル40は加圧力の増加量に比例した電荷を発生するものであり、その出力電圧の変化を実副加圧力として測定し、その出力電圧変化を副加圧力検出信号として溶接コントローラ51によってサーボモータ32に供給するモータ電流を制御することで副加圧部39から被溶接部材100に付与する副加圧力が調整できる。具体的にはロードセル40によって検出された実副加圧力が予め設定された設定加圧力より小さいときには溶接コントローラ51によりサーボモータ32に流れるモータ電流を増加してサーボモータ32の回転トルクを増加して副加圧部39による副加圧力fを増加し、実副加圧力が設定副加圧力より大きいときにはサーボモータ32に流れるモータ電流を減少してサーボモータ32の回転トルクを減少して副加圧部39による副加圧力fを減少する。
【0040】
電源となる溶接トランス50の一方の出力端子がバスバ及び固定アーム10等を介して固定側電極15に通電可能に接続され、他方の出力端子がバスバ及び電極アーム23等を介して可動側電極25に通電可能に接続される。
【0041】
また、溶接コントローラ51を備え、溶接コントローラ51にはスポット溶接装置1の作動プログラム及び作動プログラムに設定された各作動行程に基づいて加圧アクチュエータ20を制御する加圧制御部52と副加圧アクチュエータ31を制御する副加圧制御部53が含まれる。また、溶接コントローラ51はロードセル40からの副加圧力検出信号と予め設定された副加圧力を比較してサーボモータ32を制御する。即ちロードセル40によって検出された副加圧力に従ってサーボモータ32に流れるモータ電流を制御することで副加圧力を予め設定された副加圧力となるように制御できる。
【0042】
また、図示しない溶接ロボットコントローラには、溶接ロボットのティーチングデータが格納され、ティーチングデータには、被溶接部材100の各溶接打点位置を順次スポット溶接するための作動プログラム及び各溶接打点、即ち溶接位置におけるスポット溶接装置1の位置及び姿勢が含まれる。図示しない溶接コントローラには溶接装置1の作動プログラム及び加圧アクチュエータ20、制御加圧付与手段30、溶接トランス50の作動制御が含まれる。
【0043】
次に、スポット溶接装置1の作動を図4の作動概要説明図を参照して説明する。
【0044】
被溶接部材100のスポット溶接にあたり、予め設定されたプログラムに従い、可動側電極25が固定側電極15から離反した退避位置でかつ副加圧付与手段30の副加圧部39が退避位置に保持された状態で、ロボットコントローラは溶接ロボットを作動して、図4(a)に示すように被溶接部材100の溶接位置となる打点位置に固定側電極15の頂端15aを当接してスポット溶接装置1を位置決めする。
【0045】
このスポット溶接1が溶接位置に位置決めされた状態では、図4(a)に示すように固定側電極15の頂端15aが被溶接部材100の薄板101に下方から当接する一方、可動側電極25の頂端25aが第2厚板103と隙間を有して対向し、副加圧部39の当接部39aが薄板101と隙間を有して対向する。
【0046】
次に、図4(b)に示すように、固定側電極15が被溶接部材100の薄板101に当接した状態で、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25を退避位置から固定側電極15に接近する加圧位置方向に移動させて第2厚板103に上方から当接させる。更にサーボモータ21を所定トルクに達するまで作動して可動側電極25を第2厚板103に圧接させる。即ち、サーボモータ21の負荷が増大してサーボモータ21に流れるモータ電流が設定加圧力に合わせて設定した設定電流値に上昇したところで、モータ電流のそれ以上の上昇を規制する。これにより加圧アクチュエータ20の加圧力が可動側電極25と固定アーム10を介して固定側電極15とに作用し、可動側電極25と固定側電極15とで被溶接部材100の溶接部を挟持すると共に加圧する。
【0047】
一方、副加圧付与手段30のサーボモータ32の作動による副加圧部39を退避位置から当接部39aが被溶接部材100の薄板101に固定側電極15に隣接して当接する副加圧位置に移動させる。更に、サーボモータ32を作動させて副加圧部39を薄板101に圧接する副加圧力fを増加付与する。ここで、副加圧部39が被溶接部材100に圧接して副加圧力fが生じると、その副加圧力fの反力により副加圧部39及び副加圧付与アーム36を介して可動軸35から実副加圧力に相当する加圧力がロードセル40に入力される。ロードセル40は加圧力の増加量に比例した電荷を発生するものであり、その出力電圧の変化を実副加圧力として測定し、その出力電圧変化を副加圧力検出信号としてサーボモータ32を制御することで副加圧部39から被溶接部材100に付与する副加圧力fを制御する。即ち、ロードセル40によって検知された実副加圧力が予め設定された設定副加圧力より小さいときには溶接コントローラ51によりサーボモータ32に流れるモータ電流を増加してサーボモータ32の回転トルクを増加して副加圧部39による副加圧力fを増加し、実副加圧力が設定副加圧力より大きいときにはサーボモータ32に流れるモータ電流を減少してサーボモータ32の回転トルクを減少して副加圧部39による副加圧力fを減少する。この副加圧力fは副加圧部39の反力をロードセル40により直接的に検知してサーボモータ32を制御して設定され、サーボモータ32や直動部のボールねじ機構等の機械的抵抗、即ち内部機械的損失等に影響されることなく予め設定した高精度の副加圧力が付与される。
【0048】
このように固定側電極15と可動側電極25によって被溶接部材100を挟持加圧し、副加圧部38により固定側電極15に隣接して薄板101に下方から副加圧力fを付与した状態では、図5(c)に示すように、可動側電極25による加圧力FUが被溶接部材100の第2厚板103に上方から付与され、固定側電極15による加圧力FLと副加圧部39による副加圧力fが隣接して薄板101に付与される。
【0049】
この場合、加圧アクチュエータ20による加圧力が電極アーム23等を介して可動側電極25に作用し、かつ可動側電極25に対向して固定アーム10を介して固定側電極15に作用する一方、副加圧付与手段30においてサーボモータ32による付勢力が副加圧付与アーム35等を介して副加圧部39に作用し、第2厚板103に上方から作用する可動側電極25による加圧力FUと薄板101に下方から作用する固定側電極15による加圧力FL及び副加圧部39による副加圧力fの総和が等しくなる(FU=FL+f)。
【0050】
これにより、被溶接部材100は、第2厚板103側に上方から作用する可動側電極25の加圧力FUと、薄板101側に下方から作用する固定側電極15の加圧力FL及び副加圧部39の副加圧力fとによって安定した状態で挟持保持される。
【0051】
一方、被溶接部材100の溶接部には、可動側電極25から第2厚板103に加圧力FUが付与され、薄板101に固定側電極15の加圧力FLが付与されると共に副加圧部39から副加圧力fが付与されることから、固定側電極15から薄板101に作用する加圧力FLは、可動側電極25の加圧力FUから副加圧部39の副加圧力fを減じた加圧力が付与される(FL=FU−f)。
【0052】
このように薄板101側に作用する固定側電極15からの加圧力FLを第2厚板103側に作用する可動側電極25の加圧力FUより小さく(FL<FU)することで、薄板101と第1厚板102の接合部における接触圧力が、第1厚板102と第2厚板103間の溶接部における接触圧力より小さくなり、相対的に薄板101と第1厚板102間の接触抵抗が大きくなると共に、第1厚板102と第2厚板103間の接触抵抗が小さくなる。
【0053】
次に、可動側電極25と固定側電極15及び副加圧部39とで被溶接部材100を挟持加圧して薄板101側に位置する固定側電極15の加圧力FLを第2厚板103側に位置する可動側電極25の加圧力FUより小さくした状態で、溶接トランス50から可動側電極25と固定側電極15とに所定時間通電して溶接する。
【0054】
この可動側電極25と固定側電極15に通電したときに、相対的に薄板101と第1厚板102間の接合部における接触抵抗が大きく電流密度が高くなると共に、第1厚板102と第2厚板103間の接触抵抗が小さく保持される。これにより、薄板101と第1厚板102の接合部における発熱量が第1厚板102と第2厚板103の接合部における発熱量に対して相対的に増加して、薄板101から第2厚板103に亘って電流密度の偏りのない良好なナゲットが形成され、薄板101の溶接強度が確保できる。
【0055】
しかる後、可動側電極25と固定側電極15への通電を終了し、加圧アクチュエータ20のサーボモータ21の作動により可動側電極25を加圧位置から退避位置に移動させて固定側電極15と可動側電極25とによる被溶接部材100の挟持を開放し、かつ副加圧アクチュエータ31のサーボモータ32の作動により副加圧部39を副加圧位置から退避位置に退避させる。次に、作動プログラムに従い溶接ロボットを作動して、スポット溶接装置1を被溶接部材100の打点位置から退避させ、次の被溶接部材100の打点位置に移動する。
【0056】
このように構成された本実施の形態によると、固定側電極15及び可動側電極25によって加圧力が付与された被溶接部材100に副加圧アクチュエータ31により副加圧部39から副加圧力fを付与して固定側電極15と固定側電極25による加圧力FL、FUを制御して被溶接部材100をスポット溶接するにあたり、副加圧アクチュエータ31と副加圧部39との間に配置されたロードセル40により副加圧部39から被溶接部材100に付与する実際の副加圧力を検出し、ロードセル40により検知された実副加圧力と予め設定された設定副加圧力を比較して副加圧アクチュエータ31による副加圧力を設定副加圧力になるように制御することで、副加圧アクチュエータ31等の内部機械的損失等による影響がなく、予め設定した高精度の副加圧力fが付与され、剛性の異なる板材を重ねた被溶接部材に対する優れた溶接品質が得られる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態における直動部33のロッド34と可動軸35との間に配置されるロードセル40の取付構造の他の例を図5を参照して説明する。
【0058】
図5(a)は概要を示す斜視図であり、(b)は(a)のD−D線断面図である。円柱状のロードセル40の上面40a及び下面40bに板状で複数の取付孔46Aaが穿孔された上側フランジ46A及び複数の取付孔46Baが穿孔された下側フランジ46Bが設けられる。
【0059】
一方、直動部33のロッド34の下端に板状で複数の取付孔47aが形成された上側取付フランジ47が設けられ、可動軸36の上端に板状で複数の取付孔48aが形成された下側取付フランジ48が設けられる。
【0060】
このロッド34に設けられた上側取付フランジ47にロードセル40に設けられた上側フランジ46Aを重合して互いの取付孔47a、46Aaに挿入するボルト49a及びナット49bにより締結する。同様に可動軸36に設けられた下側取付フランジ48にロードセル40に設けた下側フランジ46Bを重合して互いの取付孔48a、46Baに挿入するボルト49a及びナット49bにより締結する。このようにしてロッド34と可動軸36との間に配置されたロードセル40は、副加圧部39からの反力、即ち実副加圧力は可動軸36に設けられた下側取付フランジ48及び下側フランジ46Bを介してロードセル40に入力される。
【0061】
また、例えば上記実施の形態では直動部33のロッド34と可動軸35との間にロードセル40を配置したが、副加圧部39による実副加圧力を検知可能な他の位置、例えば副加圧部39と副加圧付与アーム36との間に配置することができる。また、ロードセル40に代えて他の荷重計等の副加圧検出手段を用いることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 スポット溶接装置
10 固定アーム
15 固定側電極(第1溶接電極)
20 加圧アクチュエータ
21 サーボモータ
22 直動部
23 電極アーム
25 可動側電極(第2溶接電極)
30 副加圧付与手段
31 副加圧付与アクチュエータ
32 サーボモータ
33 直動部
34 ロッド
35 可動軸
36 副加圧付与アーム
39 副加圧部
40 ロードセル(副加圧検出手段)
51 溶接コントローラ(溶接制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7