(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860364
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】電線配索構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20160202BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20160202BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20160202BHJP
【FI】
H02G3/04 037
F16L57/00 A
!B60R16/02 623U
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-186384(P2012-186384)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-45570(P2014-45570A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】飯島 彬友
(72)【発明者】
【氏名】尾河 涼太
(72)【発明者】
【氏名】丸井 崇義
(72)【発明者】
【氏名】加藤 桂介
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−154384(JP,A)
【文献】
特開2006−60934(JP,A)
【文献】
特開2011−254614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 57/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側から他方側に延びて配索される電線と、該電線を覆って保護する保護手段と、を備えた電線配索構造であって、
前記保護手段は、
前記電線の途中位置よりも一方側に設けられる硬質の一方側保護部材と、
前記電線の途中位置よりも他方側に設けられる硬質の他方側保護部材と、
前記一方側保護部材と前記他方側保護部材とに亘って前記電線の外側を覆う可撓性を有した第一可撓部材と、
前記一方側保護部材と前記他方側保護部材とに亘って前記第一可撓部材の外側を覆う可撓性を有した第二可撓部材と、
を備え、
前記第一可撓部材は、その一端部が前記一方側保護部材に固定されるとともに、他端部が前記他方側保護部材に固定され、
前記第二可撓部材は、その一端部が前記一方側保護部材に固定されるとともに、他端部が前記他方側保護部材に対して長手方向にスライド自在に支持されていることを特徴とする電線配索構造。
【請求項2】
前記第二可撓部材の他端部が前記他方側保護部材に粘着テープを介して取り付けられ、該粘着テープの弾性変形によって該他端部がスライド自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の電線配索構造。
【請求項3】
前記他方側保護部材は、
筒状に形成された内周面によって前記第一可撓部材の他端部を係止して固定する他方側係止部と、
前記他方側係止部よりも一方側にて筒状又は半筒状に形成された内周面によって前記第二可撓部材の他端部を摺接させる摺接支持部と、
を有して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電線配索構造。
【請求項4】
前記一方側保護部材は、
筒状に形成された内周面によって前記第一可撓部材の一端部を係止する一方側第一係止部と、
前記一方側第一係止部よりも他方側にて筒状に形成された内周面によって前記第二可撓部材の一端部を係止する一方側第二係止部と、
を有して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電線配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線配索構造に関し、詳しくは、電線を覆って保護する保護部材を備えた電線配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車(特に、電気自動車やハイブリッド自動車)において、電気機器同士を接続する電線(ワイヤハーネス)と、電線を覆って保護する保護部材(外装部材であり、例えばコルゲートチューブ)と、を備えた電線の配索構造が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された電線の配索構造は、
図6に示すように、車両前方側のエンジンルームにエンジン、インバータ及びモータが設置されるとともに、車両後方側のフロア床上やトランクルーム等にバッテリが設置されたハイブリッド自動車100に設けられ、インバータとバッテリとを接続する電線Wと、この電線Wを覆う二重構造コルゲートチューブ101と、を備えて構成されている。二重構造コルゲートチューブ101は、外側コルゲートチューブ102と、内側コルゲートチューブ103と、を有し、フロア床下104に沿って車両前後方向に延びて設けられ、固定部材105を介してフロア床下104に固定されている。外側コルゲートチューブ102と内側コルゲートチューブ103とは、外側コルゲートチューブ102の両端部においてテープ巻きによって互いに固定されている。
【0004】
特許文献2に記載された電線の配索構造は、
図7に示すように、電線Wの外側を覆う内側コルゲートチューブ111と、この内側コルゲートチューブ111の外側を覆う外側コルゲートチューブ112と、を備え、外側コルゲートチューブ112よりも内側コルゲートチューブ111の長さが長く形成されている。また、内側コルゲートチューブ111は、その両端部においてテープ113によって電線Wに固定され、外側コルゲートチューブ112は、その両端部においてテープ114によって内側コルゲートチューブ111に固定されている。電線Wは、内側コルゲートチューブ111のスリット115から内部に挿入され、内側コルゲートチューブ111は、外側コルゲートチューブ112のスリット116から内部に挿入され、互いのスリット115,116の位置が一致しないように180°ずらされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−254614号公報
【特許文献2】特開2000−197237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のような二重構造コルゲートチューブを保護部材として用いた電線の配索構造では、コルゲートチューブ自体が可撓性を有しているため、固定部材等を介して車両に固定した場合に、固定部材間において未固定のコルゲートチューブが振動してしまうことから、固定部材を細かいピッチで設けなければならなくなり、部品点数が増加するとともに組付け作業手間も増大するという問題がある。また、コルゲートチューブに電線を挿通させた状態のワイヤハーネスを車両の組立工場に搬送する際には、搬送効率を高めるために、可撓性を有したコルゲートチューブを屈曲させて荷姿をコンパクトにすることが通常行われている。しかしながら、従来の二重構造コルゲートチューブのように、内側コルゲートチューブの両端部が電線に固定され、外側コルゲートチューブの両端部が内側コルゲートチューブに固定されていると、屈曲によって内外のコルゲートチューブ間に生じる形状差が吸収できず、屈曲の曲率が小さくなって搬送効率を十分に高められないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑み、車両等への取付剛性を高めて振動を抑制させるとともに、搬送効率及び組付け作業性を向上させることができる電線配索構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された本発明の電線配索構造は、一方側から他方側に延びて配索される電線と、該電線を覆って保護する保護手段と、を備えた電線配索構造であって、前記保護手段は、前記電線の途中位置よりも一方側に設けられる硬質の一方側保護部材と、前記電線の途中位置よりも他方側に設けられる硬質の他方側保護部材と、前記一方側保護部材と前記他方側保護部材とに亘って前記電線の外側を覆う可撓性を有した第一可撓部材と、前記一方側保護部材と前記他方側保護部材とに亘って前記第一可撓部材の外側を覆う可撓性を有した第二可撓部材と、を備え、前記第一可撓部材は、その一端部が前記一方側保護部材に固定されるとともに、他端部が前記他方側保護部材に固定され、前記第二可撓部材は、その一端部が前記一方側保護部材に固定されるとともに、他端部が前記他方側保護部材に対して長手方向にスライド自在に支持されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された電線配索構造は、請求項1記載の電線配索構造において、前記第二可撓部材の他端部が前記他方側保護部材に粘着テープを介して取り付けられ、該粘着テープの弾性変形によって該他端部がスライド自在に支持されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された電線配索構造は、請求項1又は2に記載の電線配索構造において、前記他方側保護部材は、筒状に形成された内周面によって前記第一可撓部材の他端部を係止して固定する他方側係止部と、前記他方側係止部よりも一方側にて筒状又は半筒状に形成された内周面によって前記第二可撓部材の他端部を摺接させる摺接支持部と、を有して形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された電線配索構造は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電線配索構造において、前記一方側保護部材は、筒状に形成された内周面によって前記第一可撓部材の一端部を係止する一方側第一係止部と、前記一方側第一係止部よりも他方側にて筒状に形成された内周面によって前記第二可撓部材の一端部を係止する一方側第二係止部と、
を有して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、硬質の一方側保護部材及び他方側保護部材と、これらに亘って設けられる可撓性を有した第一可撓部材及び第二可撓部材と、を備えて保護部材が構成されているので、硬質の一方側保護部材及び他方側保護部材によって保護手段の取付剛性を高めることができ、車両等に取り付けた場合の振動を抑制させることができる。また、硬質の一方側保護部材及び他方側保護部材を車両等に固定することで、取付個所数を削減するとともに、これら硬質の保護部材に車両取付用のブラケットを形成しておくことで、部品点数を削減させるとともに組付け作業手間を軽減させることもできる。さらに、第一可撓部材の両端部が一方側保護部材及び他方側保護部材に固定され、第二可撓部材の一端部が一方側保護部材に固定される一方、第二可撓部材の他端部が他方側保護部材に対して長手方向にスライド自在に支持されるので、内外二重に設けられた第一可撓部材及び第二可撓部材を屈曲させた場合に、内外に生じる形状差を第二可撓部材の他端部のスライドによって吸収することができる。従って、第一可撓部材及び第二可撓部材を屈曲させ、一方側保護部材と他方側保護部材とを重ねるようにして全体を折り曲げることで、荷姿をコンパクトにして搬送効率を向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、第二可撓部材の他端部を取り付ける粘着テープの弾性変形によって、他方側保護部材に対して他端部をスライド自在に支持することで、第二可撓部材の他端部のばたつきや異物の混入を防止しつつ、第一可撓部材及び第二可撓部材を屈曲させた際の内外形状差を吸収することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、他方側保護部材に他方側係止部と摺接支持部とが形成され、筒状の他方側係止部の内周面に第一可撓部材の他端部を係止し、筒状又は半筒状の摺接支持部の内周面によって第二可撓部材の他端部を摺接支持することで、他方側係止部及び摺接支持部によってそれぞれ第一可撓部材及び第二可撓部材を覆って支持することができる。さらに、他方側係止部よりも一方側に摺接支持部が形成されている、即ち、他方側係止部で係止する第一可撓部材の他端部が他方側保護部材の奥側(他方側)に延びて設けられるので、電線が外部に露出することを確実に防止することができる。従って、他方側保護部材に覆われた第一可撓部材及び第二可撓部材の各他端部が外部に露出することがなく、電線の露出を確実に防止して保護することができるとともに、第一可撓部材及び第二可撓部材の内部への異物の混入を防止することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、一方側保護部材に一方側第一係止部と一方側第二係止部とが形成され、各々筒状に形成された一方側第一係止部及び一方側第二係止部の内周面に第一可撓部材及び第二可撓部材の各他端部を係止することで、一方側保護部材によって第一可撓部材及び第二可撓部材を覆って支持することができる。さらに、一方側第一係止部よりも他方側に一方側第二係止部が形成されている、即ち、一方側第一係止部で係止する第一可撓部材の一端部が一方側保護部材の奥側(一方側)に延びて設けられるので、電線が外部に露出することを確実に防止することができる。従って、一方側保護部材に覆われた第一可撓部材及び第二可撓部材の各一端部が外部に露出することがなく、電線の露出を確実に防止して保護することができるとともに、一方側の端部においても第一可撓部材及び第二可撓部材の内部への異物の混入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電線配索構造を示す平面図である。
【
図2】前記電線配索構造を構成する一方側及び他方側の保護部材を示す平面図である。
【
図3】前記電線配索構造の要部を拡大して示す平面図である。
【
図4】前記電線配索構造を構成する第一及び第二の可撓部材示す断面図である。
【
図5】前記電線配索構造の要部をさらに拡大して示す平面図である。
【
図6】従来技術に係る電線配索構造を示す図である。
【
図7】従来技術に係る他の電線配索構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる電線配索構造を、
図1〜
図5を参照して説明する。本実施形態の電線配索構造は、自動車、特に、電動モータの駆動力によって走行する電気自動車や、エンジンと電動モータとの双方の駆動力で走行するハイブリッド車において、バッテリとインバータとの間やインバータとモータとの間等を接続する構造として用いられる。この電線配索構造は、電気機器間を接続する電線Wと、この電線Wを覆って保護する保護手段としての外装部材1と、を備えて構成され、外装部材1で覆われた電線Wは、例えば、自動車のフロア床下に沿って車両の前後方向に延びて配索されている。そして、車両後方側のトランクルーム等に設置されたバッテリと、車両前方側のエンジンルームに設置されたインバータと、が電線Wによって接続され、バッテリからの直流電力がインバータを介して交流電力としてモータに供給されるようになっている。
【0018】
保護手段としての外装部材1は、
図1に示すように、電線Wの途中位置よりも一方側(図の右側)に設けられる硬質の一方側保護部材としての第一プロテクタ2と、電線Wの途中位置よりも他方側(図の左側)に設けられる硬質の他方側保護部材としての第二プロテクタ3と、第一プロテクタ2と第二プロテクタ3とに亘って電線Wの外側を覆う可撓性を有した第一可撓部材としての内側コルゲートチューブ4(
図3〜5参照)と、第一プロテクタ2と第二プロテクタ3とに亘って内側コルゲートチューブ4の外側を覆う可撓性を有した第二可撓部材としての外側コルゲートチューブ5と、を備えて構成されている。
【0019】
第一プロテクタ2は、
図2(A)にも示すように、長尺状かつ半円筒状の第一プロテクタ本体21と、この第一プロテクタ本体21の一方側端部、中間部及び他方側端部にそれぞれ取り付けられるカバー部材22,23,24と、を備える。第一プロテクタ本体21及びカバー部材22,23,24は、それぞれ合成樹脂から一体成形された硬質の部材である。第一プロテクタ本体21には、その長手方向に沿った複数箇所に設けられてカバー部材22,23,24を係合して固定する係合部25と、車両のフロア床に固定されるブラケット26と、フロア床の取付部に挿入して固定される係合ボス27と、が一体に形成されている。カバー部材22,23,24は、それぞれ半円筒状に形成され、係合部25によって第一プロテクタ本体21に取り付けられることで、円筒状の断面が形成されるようになっている。
【0020】
第二プロテクタ3は、
図2(B)にも示すように、長尺状かつ半円筒状の第二プロテクタ本体31と、この第二プロテクタ本体31の一方側、中間部及び他方側に分割されて設けられるカバー部32,33,34と、を備えた硬質の部材である。第二プロテクタ本体31と、カバー部32,33,34とは、ヒンジ部32A,33A,34Aを介して連結されるとともに、合成樹脂から一体成形されている。第二プロテクタ本体31には、その長手方向に沿った複数箇所に設けられてカバー部32,33,34を係合して固定する係合部35と、車両のフロア床に固定される2箇所のブラケット36と、が一体に形成されている。カバー部32,33,34は、それぞれ半円筒状に形成され、ヒンジ部32A,33A,34Aを中心に回動されて、係合部35によって第二プロテクタ本体31に固定されることで、円筒状の断面が形成されるようになっている。
【0021】
内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5は、それぞれ
図3、4にも示すように、合成樹脂で薄肉円筒状に形成され、周方向の凹溝と凸条とを交互にチューブ長手方向に等ピッチで並列に有し、屈曲性(可撓性)に富んで内部に挿通させた電線Wを保護するものである。内側コルゲートチューブ4は、外側コルゲートチューブ5よりも長く形成され、内側コルゲートチューブ4の一端部41及び他端部42が外側コルゲートチューブ5から突出し、それぞれ第一プロテクタ2及び第二プロテクタ3の内部に延びて設けられている。外側コルゲートチューブ5は、内側コルゲートチューブ4よりも大きな内径を有して形成され、内部に挿通させた内側コルゲートチューブ4に対して長手方向に沿って摺動可能に構成されている。また、外側コルゲートチューブ5の一端部51及び他端部52は、それぞれ第一プロテクタ2及び第二プロテクタ3の内部に延びて設けられている。
【0022】
次に、
図5も参照して、第一プロテクタ2及び第二プロテクタ3と、内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5と、の連結構造について説明する。第一プロテクタ2の端部(第二プロテクタ3側の端部)において、第一プロテクタ本体21及びカバー部材24には、内側コルゲートチューブ4の一端部41を挿通させる内径を有した第一挿通部61と、この第一挿通部61よりもさらに第二プロテクタ3側にて外側コルゲートチューブ5の一端部51を挿通させる内径を有した第二挿通部62と、が形成されている。一方、第二プロテクタ3の端部(第一プロテクタ2側の端部)において、第二プロテクタ本体31及びカバー部32には、内側コルゲートチューブ4の他端部42を挿通させる内径を有した第一挿通部71が形成され、第二プロテクタ本体31には、外側コルゲートチューブ5の他端部52を挿通させる内径を有した第二挿通部72が形成されている。
【0023】
図2(A)及び
図5(A)に示すように、第一プロテクタ本体21及びカバー部材24の第一挿通部61の内周面には、周方向に沿った三条のリブ63が形成されている。これらのリブ63は、内側コルゲートチューブ4における一端部41の凹溝に係合することで、内側コルゲートチューブ4を長手方向に移動不能に固定する一方側第一係止部を構成するものである。また、第二挿通部62における開口側の内周面にも、周方向に沿った三条のリブ64が形成されている。これらのリブ64は、外側コルゲートチューブ5における一端部51の凹溝に係合することで、外側コルゲートチューブ5を長手方向に移動不能に固定する一方側第二係止部を構成するものである。
【0024】
図2(B)及び
図5(B)に示すように、第二プロテクタ本体31及びカバー部32の第一挿通部71の内周面には、周方向に沿った三条のリブ73が形成されている。これらのリブ73は、内側コルゲートチューブ4における他端部42の凹溝に係合することで、内側コルゲートチューブ4を長手方向に移動不能に固定する他方側係止部を構成するものである。また、第二挿通部72の内周面には、リブ等が形成されず、平滑に形成された内周面によって、外側コルゲートチューブ5の他端部52を摺接させる摺接支持部74が構成されている。従って、外側コルゲートチューブ5は、その一端部51が第一プロテクタ2の第二挿通部62に固定されるとともに、他端部52が第二プロテクタ3に対して長手方向にスライド自在に支持されている。
【0025】
以上の電線配索構造の組立手順及び車両への組付け手順としては、先ず、電線Wを内側コルゲートチューブ4に通し、この電線W及び内側コルゲートチューブ4を外側コルゲートチューブ5に挿通させておく。次に、第一プロテクタ本体21に沿って電線Wを配置するとともに、内側コルゲートチューブ4の一端部41を第一挿通部61のリブ63に係止させて配置し、外側コルゲートチューブ5の一端部51を第二挿通部62のリブ64に係止させて配置してから、第一プロテクタ本体21にカバー部材22,23,24を係合して、内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5の一端部41,51を第一プロテクタ2に固定する。
【0026】
次に、第二プロテクタ本体31に沿って電線Wを配置するとともに、内側コルゲートチューブ4の他端部42を第一挿通部71のリブ73に係止させて配置し、外側コルゲートチューブ5の他端部52を第二挿通部72の摺接支持部74に沿って配置してから、第二プロテクタ本体31にカバー部32,33,34を係合して、内側コルゲートチューブ4の他端部42を第二プロテクタ3に固定し、外側コルゲートチューブ5の他端部52を第二プロテクタ3に対してスライド自在に支持させる。次に、外側コルゲートチューブ5の他端部52と第二挿通部72とに粘着テープを巻き付け、外側コルゲートチューブ5の他端部52を第二プロテクタ3に取り付けるとともに、第二挿通部72の上方の開口を粘着テープによって塞ぐ。この粘着テープとしては、適宜な弾性を有したものであって、その弾性変形によって外側コルゲートチューブ5の他端部52と第二プロテクタ3とのスライドを阻害するものではない。
【0027】
以上のように電線Wと外装部材1とを組み立てたら、内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5を屈曲させ、第一プロテクタ2と第二プロテクタ3とを重ねるようにして全体を二つ折りし、適宜なテープや紐、フィルム等の梱包材で第一プロテクタ2と第二プロテクタ3とを仮固定し、この二つ折り状態で電線W及び外装部材1を車両の組立工場に搬送する。この際、内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5を屈曲させても、それらの内外形状差が外側コルゲートチューブ5の他端部52のスライドによって吸収されるので、屈曲部分に余計なストレスが発生しないようになっている。
【0028】
次に、車両の組立工場に搬送した電線W及び外装部材1を荷解きしてから、内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5を伸張させて配索形状とするとともに、第一プロテクタ本体21及び第二プロテクタ本体31が下側になるようにして、車両のフロア床下等にブラケット26,36及び係合ボス27を介して外装部材1を固定する。その後、第一プロテクタ2及び第二プロテクタ3から導出された電線Wの端部を、それぞれバッテリやインバータに接続することによって、電線配索構造(電線W及び外装部材1)の車両への組付けが完了する。
【0029】
以上のような本実施形態によれば、硬質樹脂から成形された第一プロテクタ2及び第二プロテクタ3を車両に固定することで、電線W及び外装部材1の振動を抑制させることができるとともに、ブラケット26,36や係合ボス27による取付個所数を削減し、組付け作業手間を軽減させることができる。さらに、外側コルゲートチューブ5の他端部52が第二プロテクタ3に対してスライド自在に支持されているので、内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5を屈曲させた際の内外形状差が吸収され、第一プロテクタ2と第二プロテクタ3とを重ねた二つ折り状態で電線W及び外装部材1を搬送することができ、その荷姿をコンパクトにして搬送効率を向上させることができる。
【0030】
なお、前記実施形態では、電線配索構造として、第一プロテクタ2及び第二プロテクタ3(一方側及び他方側の保護部材)と、これらに亘る内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5(第一及び第二の可撓部材)と、を備えた外装部材(保護手段)1を例示したが、硬質の保護部材は、一対(2個)に限らず、3個以上で構成されていてもよく、各々の保護部材間に第一及び第二の可撓部材が設けられていればよい。さらに、本発明の電線配索構造は、車両のフロア床下に取り付けられるものに限らず、フロア床上やエンジンルーム内、トランクルーム内に取り付けられるものであってもよい。さらに、第一及び第二の可撓部材としては、前記実施形態のように内側コルゲートチューブ4及び外側コルゲートチューブ5で構成されたものに限らず、周方向の凹凸を有さないチューブで構成されたものでもよい。この場合には、可撓部材の端部を固定する構造としては、前記実施形態のリブ63,64,73に代えて、タイバンド等の固定部材や、ボスと係合孔とによる係合手段など、適宜な固定構造を利用すればよい。また、本発明は、ハイブリッド車等に限らず、ガソリン車(特に、アイドリングストップ機能を備えた車両)のワイヤハーネスにも適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 外装部材(保護手段)
2 第一プロテクタ(一方側保護部材)
3 第二プロテクタ(他方側保護部材)
4 内側コルゲートチューブ(第一可撓部材)
5 外側コルゲートチューブ(第二可撓部材)
41,51 一端部
42,52 他端部
63 リブ(一方側第一係止部)
64 リブ(一方側第二係止部)
73 リブ(他方側係止部)
74 摺接支持部
W 電線