特許第5860430号(P5860430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5860430-データ処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860430
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】データ処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/06 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   G06F3/06 301S
   G06F3/06 303G
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-79352(P2013-79352)
(22)【出願日】2013年4月5日
(62)【分割の表示】特願2008-3303(P2008-3303)の分割
【原出願日】2008年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-152751(P2013-152751A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2013年4月5日
【審判番号】不服2014-20683(P2014-20683/J1)
【審判請求日】2014年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真男
(72)【発明者】
【氏名】久世 定
【合議体】
【審判長】 和田 志郎
【審判官】 小曳 満昭
【審判官】 千葉 輝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−339263(JP,A)
【文献】 特開平09−231660(JP,A)
【文献】 特開2003−173613(JP,A)
【文献】 特表2002−518899(JP,A)
【文献】 特開2002−367334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/06-3/08
G11B20/10-20/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアタイプのドライブでデータの記録と読み出しが行われる磁気テープに記録された映像コンテンツデータを取り扱うことができる電子機器のデータ処理方法であって、
前記磁気テープに記録された前記映像コンテンツデータを1.35MB/秒よりも高速で160MB/秒までの転送速度で読み出す処理と、
読み出された前記映像コンテンツデータを、前記映像コンテンツデータの容量よりも大きな記録容量を備えた記憶手段に順次格納する処理と、
所定時間または所定容量の前記映像コンテンツデータの読み出しが完了したか否かを監視し、前記所定時間または前記所定容量の前記映像コンテンツデータの読み出しと前記記憶手段への格納が完了した後に、前記記憶手段に格納された前記所定時間または前記所定容量の前記映像コンテンツデータを、復調処理によって映像コンテンツのデータとして使用できる映像データに変換する処理とを行うことを特徴とする、データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープに記録されたコンテンツデータを読み出して取り扱うことができる電子機器のデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピューターテープなど様々な用途があるが、特にデータバックアップ用テープの分野ではバックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数TBの記憶容量のものが商品化されており、今後ハードディスクのさらなる大容量化に対応するためバックアップテープの高容量化は不可欠である。
【0003】
特許文献1〜3には、ハードディスクドライブ(HDD)、半導体メモリ等からのアーカイブ、バックアップ用途として磁気テープドライブ装置が使用する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−306090号公報
【特許文献2】特開2002−366310号公報
【特許文献3】特開平8−30397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、映像コンテンツやゲームコンテンツなどのデータを記録する媒体としては、DVD(Digital Versataile Disk)やBD(Blu-ray Disk)が普及しているが、ディスク1枚当たりの記録可能容量はDVD(両面ディスク)が最大9.4GBで、BD(片面2層)が最大50GBである。しかしながら、これらのディスクでは50GB以上の大容量のコンテンツを記録することができないという問題がある。例えば、ハイビジョン規格(HDTV)に準拠した映像コンテンツは1時間当たり約25GBの容量を有しており、BDには約2時間記録することができるが、DVDには20分程度しか記録することができない。また、映像コンテンツの一種である映画には2時間を超える作品もあり、このような場合1枚のBDにも記録することが困難である。1枚のBDへ2時間を超える映像コンテンツを記録することができる可変ビットレート技術があるが、これは映像コンテンツの全体または一部のデータレートを下げる技術であるため、折角の高画質なハイビジョン映像の画質を低下させてしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、大容量のコンテンツを取り扱うことができる電子機器のデータ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデータ処理方法は、リニアタイプのドライブでデータの記録と読み出しが行われる磁気テープに記録された映像コンテンツデータを取り扱うことができる電子機器のデータ処理方法であって、前記磁気テープに記録された前記映像コンテンツデータを1.35MB/秒よりも高速で160MB/秒までの転送速度で読み出す処理と、読み出された前記映像コンテンツデータを、前記映像コンテンツデータの容量よりも大きな記録容量を備えた記憶手段に順次格納する処理と、所定時間または所定容量の前記映像コンテンツデータの読み出しが完了したか否かを監視し、前記所定時間または前記所定容量の前記映像コンテンツデータの読み出しと前記記憶手段への格納が完了した後に、前記記憶手段に格納された前記所定時間または前記所定容量の前記映像コンテンツデータを、復調処理によって映像コンテンツのデータとして使用できる映像データに変換する処理とを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大容量のコンテンツを取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態における電子機器の構成を示すブロック図
図2】実施の形態における電子機器の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のデータ処理方法は、磁気テープに記録されたコンテンツデータを取り扱うことができる電子機器のデータ処理方法であって、前記磁気テープに記録された前記コンテンツデータを読み出す処理と、読み出された前記コンテンツデータを記憶手段に格納する処理と、前記コンテンツデータの所定時間または所定容量の読み出しが完了したか否かを監視し、前記所定時間または前記所定容量の前記コンテンツデータの読み出しが完了した後に、前記記憶手段に格納された前記コンテンツデータを復調処理によってデータ変換する処理とを行い、前記磁気テープに記録された前記コンテンツデータを読み出しながら前記記憶手段に格納し、前記復調処理によって前記データ変換する処理が行われるものである。
【0011】
このような構成とすることにより、磁気テープに記録されている全てのコンテンツデータを読み出さずにコンテンツデータの処理が実行されるため、処理開始命令から実際に処理が実行されるまでの時間を短縮することができる。
【0012】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における電子機器の構成を示す。本実施の形態では、電子機器の一例としてパーソナルコンピューター(以下、パソコンと称する)を挙げて説明しているが、少なくとも磁気テープに記録されたデータを読み出し可能な装置であればパソコンに限らない。
【0013】
図1に示すように、パソコン1は、中央演算処理装置(CPU)2、ハードディスクドライブ(HDD)3、ランダムアクセスメモリ(RAM)4、操作部5、表示制御部6、表示部7、およびテープドライブ8を備えている。これらの構成は、システムバス9を介してデータや命令を送受信を行うことができる。CPU2は、操作部5においてユーザーによって入力された命令に基づき、各部を制御する。HDD3は、各種データを格納することができる。RAM4は、CPU2においてデータ処理を行う際に一時的にデータを格納する。操作部5は、ユーザーにより各種命令を入力可能なものであり、例えばキーボードやマウスなどで構成されている。表示制御部6は、CPU2からの表示命令が出力されると、映像を表示部7に表示するよう制御する。表示部7は、表示制御部6からの制御により映像を表示することができるものであり、例えば内蔵型または外部接続型の液晶モニタで構成されている。テープドライブ8は、磁気テープ10を装填可能なものであり、磁気ヘッドやテープローディング機構などを備えている。本実施の形態では、LTO規格(LTO:Linear Tape Open)に準拠した磁気テープを再生可能な、リニアタイプのドライブで構成されている。また、テープドライブ8は、CPU2からの命令に基づき、磁気テープ10を搬送させて磁気テープ10に記録されているデータを読み出したり、磁気テープ10にデータを記録することができる。
【0014】
なお、図示は省略しているが、音声を出力可能な音声信号処理回路やスピーカーも備えている。また、HDD3は必ずしも備えている必要はなく、少なくともデータを一時的に格納することができる手段を備えていればよい。また、テープドライブ8は、読み出し手段の一例である。また、HDD3は、記憶手段の一例である。また、CPU2、RAM4は、データ処理手段の一例である。
【0015】
磁気テープ10は、映像コンテンツ、音楽コンテンツ、アプリケーションソフトウェアなどの各種コンテンツデータが記録されている媒体である。また、磁気テープ10は、カートリッジに収納され、カートリッジ内のリールに巻き回されている。また、磁気テープ10は、例えばLTO規格に準拠しており、記録可能容量は例えば1.6TBとしたが、リールへの巻数を多くしたり磁気テープ10を薄型化することでさらに記録可能容量を拡大することができる。1.6TBの容量を有する磁気テープの場合、MPEG2規格のデジタル映像を約667時間記録することができ、ハイビジョン映像を約64時間記録することができる。また、本実施の形態では、磁気テープ10に記録されているコンテンツデータは、オーサリングメーカーが記録したコンテンツデータを想定しているが、一般ユーザーがハイビジョン放送などの放送波を受信して記録したコンテンツデータであってもよい。
【0016】
以下、動作について説明する。
【0017】
図2は、本実施の形態のパソコン1を用いて、磁気テープ10に記録されている映像コンテンツを再生する際の動作の流れを示す。まず、ユーザーによりテープドライブ8に磁気テープ10が装填され、操作部5において再生命令が入力されると(S1)、CPU2はテープドライブ8に対して磁気テープ10を再生する命令を出力する。テープドライブ8は、CPU2からの再生命令が送られると、磁気テープ10を所定速度で走行させ、磁気ヘッドで磁気テープ10に記録されている映像コンテンツデータを読み出す(S2)。
【0018】
磁気テープ10から読み出された映像コンテンツデータは、HDD3に格納される(S3)。なお、テープドライブ8からHDD3へのデータ転送速度は約160MB/秒であり、例えばDVDのデータ転送速度(約1.35MB/秒)よりも高速である。ここで、磁気テープ10から所定時間または所定容量の映像コンテンツデータの読み出しが行われたか否かを監視し(S4)、所定時間または所定容量の映像コンテンツデータの読み出しが完了すれば、復調処理に移行する。
【0019】
HDD3に格納された映像コンテンツデータは、CPU2からの命令に基づき復調処理が行われ、映像データに変換される。映像データは、表示制御部6においてアナログの映像信号に変換され、表示部7に出力される。表示部7は、表示制御部6からの制御により、映像信号に基づく映像を表示する(S5)。図示は省略しているが、磁気テープ10から読み出した映像コンテンツデータには音声データも付随しており、この音声データはパソコン1内のHDD3に一旦格納された後、音声信号処理回路において復調処理が行われる。復調処理された音声信号は、スピーカーなどの音声出力手段から出力される。
【0020】
表示部7に映像を表示し続けている間、磁気テープ10から順次映像コンテンツデータの読み出しが行われているので、表示部7に表示される映像は途切れることがない。すなわち、本実施の形態のテープドライブ8は、ヘリカルタイプのテープドライブ(特許文献3)に比べて高転送レートを実現することができるリニアタイプのテープドライブで構成されているため、大容量のコンテンツデータを磁気テープ10から読み出しながらHDD3に格納し、データ処理まで実行可能である。したがって、磁気テープ10からの映像コンテンツデータの読み出しと、表示部7への映像の表示とを同時に行っても、表示部7に表示される映像が途切れることがないのである。
【0021】
また、操作部5において映像の早送り再生命令や巻き戻し再生命令が入力されたとしても、磁気テープ10から読み出した映像コンテンツデータはHDD3に格納されているため、容易にアクセスすることができ、早送り再生や巻き戻し再生を実現することができる。
【0022】
また、1本の磁気テープ10に複数の映像コンテンツデータが記録されている場合は、1つの映像コンテンツデータの終端まで再生が行われると、次の映像コンテンツデータを読み出すように制御する。
【0023】
上記実施の形態では、映像コンテンツデータの再生動作について説明したが、ゲームなどのアプリケーションソフトウェアをパソコン1にインストールする動作も同様である。すなわち、ユーザーが操作部5を操作して磁気テープ10に記録されているアプリケーションソフトウェアのインストール命令を入力すると、CPU2はテープドライブ8を制御して、磁気テープ10に記録されているアプリケーションソフトウェアのインストールファイルを読み出して、HDD3に書き込む。以降、周知のインストール処理を行うことで、アプリケーションソフトウェアをパソコン1にインストールすることができる。なお、全てのインストールファイルを磁気テープ10から読み出し、HDD3に書き込んでからインストール処理を開始する構成としてもよいが、インストールファイルをバックグラウンドで磁気テープ10から読み出しながら、インストール処理を実行する構成としてもよい。このように構成することで、インストール処理に要する時間を短縮することができる。
【0024】
以上のように本実施の形態によれば、磁気テープ10から大容量のコンテンツを読み出し、HDD3に格納しながら再生処理を行っているので、大容量のコンテンツデータを取り扱うことができる。例えば、映像コンテンツデータの場合は、2時間以上のハイビジョン映像を連続的に再生することができるので、高画質の映像を再生することができる。また、アプリケーションソフトウェアの場合は、データの大容量化に伴い、多機能化、グラフィックの高精細化などを実現することができる。
【0025】
また、DVDやBDなどのディスク状媒体は、データの記録可能容量を大きくするためにディスクの両面に記録層を備えるものもあるが、両面の記録層にアクセスするためにはユーザーがディスクを反転させないといけないため使い勝手が悪い。これに対して磁気テープは、リールに対する巻径を大きくしたり薄型化することで、ユーザーにおける反転操作を必要とせずに大容量化が可能となるため使い勝手が良い。
【0026】
また、磁気テープ10から読み出したデータをHDD3に格納し、HDD3上で再生処理などの各種処理を実行するため、ランダムアクセス性を損なうことはない。
【0027】
また、テープドライブ8とHDD3との間の転送速度は、DVDなどに比べて高速であるため、磁気テープ10から大容量のコンテンツデータを読み出す際に要する時間を削減することができる。
【0028】
また、磁気テープ10から読み出したコンテンツデータを再生している時に、バックグラウンドで磁気テープ10からコンテンツデータを読み出すよう制御することにより、磁気テープ10に記録されている全てのコンテンツデータを読み出してから再生を開始する制御に比べて、再生命令を入力してから実際に再生が開始されるまでの時間を短縮することができる。
【0029】
また、磁気テープは、一般に磁気ディスク、光学ディスク、HDD、半導体メモリよりもエラーレートが良く、データ信頼性が高いため、磁気テープ10に各種コンテンツを記録することで信頼性が高いコンテンツ記録済み磁気テープを実現することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、磁気テープ1巻当たりの記録可能容量が大容量(例えば1.6TB)であるため、ディスク状媒体に比べて収納管理や携帯性が優れる。例えば、BDは1枚の記録容量が50GBであるのに対し、DAT160は1巻の記録容量が160GB(圧縮)であり、BD3枚分以上の容量を有する。
【0031】
なお、本実施の形態では、磁気テープ10から読み出したコンテンツデータをHDD3に格納する構成としたが、少なくともランダムアクセスが可能な媒体であればHDD以外であってもよい。例えば、バッファメモリ、半導体メモリなどがある。
【0032】
また、本実施の形態では、電子機器の一例としてパソコン1を挙げて説明したが、HDDレコーダー、業務用アミューズメント機器などであってもよい。
【0033】
また、本実施の形態では、磁気テープ10に記録されたコンテンツデータを読み出す(再生)する構成について説明したが、電子機器にテレビジョン放送を受信可能なチューナーを内蔵し、チューナーで受信したテレビジョン放送のコンテンツを磁気テープ10に記録可能な構成としてもよい。
【0034】
また、本実施の形態では、テープドライブ8はパソコン1に内蔵する構成としたが、パソコン1に外部接続する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、磁気テープに記録されたコンテンツを読み出し、取り扱うことができる電子機器のデータ処理方法として有用である。特に、大容量の映像コンテンツの再生やアプリケーションソフトウェアのインストールが可能な機器のデータ処理方法として有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 パソコン(電子機器)
2 CPU(データ処理手段)
3 HDD(記憶手段)
4 RAM(データ処理手段)
5 操作部
6 表示制御部
7 表示部
8 テープドライブ(読み出し手段)
10 磁気テープ
図1
図2