(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、
前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmであり、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成されるとともに、前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面における径方向に積層された二以上の電極体からなり、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設され、
前記一対の電極部のそれぞれの電極部を構成する各前記二以上の電極体のうち、最も前記外周壁側寄りに配設されたそれぞれの前記電極体を第一の電極体としたときに、前記ハニカム構造部の前記側面における、それぞれの前記第一の電極体の面積が、それぞれの前記二以上の電極体のうちの他の電極体の面積よりも大きく、且つ、前記セルの延びる方向に直交する少なくとも一の断面において、それぞれの前記第一の電極体の中心角が、それぞれの前記二以上の電極体のうちの前記他の電極体の中心角よりも大きいハニカム構造体。
前記セルの延びる方向に直交する少なくとも一の断面において、それぞれの前記他の電極体の中心角が、それぞれの前記第一の電極体の中心角の5〜95%に相当する角度である請求項1に記載のハニカム構造体。
前記一対の電極部の前記セルの延びる方向における長さの50〜100%の範囲において、それぞれの前記第一の電極体の中心角が、それぞれの前記他の電極体の中心角よりも大きい請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
前記一対の電極部の前記セルの延びる方向の全ての前記断面において、それぞれの前記第一の電極体の中心角が、それぞれの前記他の電極体の中心角よりも大きい請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
それぞれの前記他の電極体の電気抵抗率が、それぞれの前記第一の電極体の電気抵抗率の5〜100%に相当する値である請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0024】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図4に示すように、筒状のハニカム構造部4と、ハニカム構造部4の側面5に配設された一対の電極部21,21とを備えたハニカム構造体100である。このハニカム構造部4は、多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有する。上記隔壁1は、流体の流路となる、一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成するものである。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである。また、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれの電極部21が、以下のように構成されている。以下、下記構成を、「電極構成A」ということがある。一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成される。更に、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面における径方向に積層された二以上の電極体31(
図1〜
図4においては、二つの電極体31a,31b)からなる。そして、上記セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。
【0026】
更に、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれの電極部21が、以下のように構成されている。以下、下記構成を、「電極構成B」ということがある。まず、一対の電極部21,21のそれぞれの電極部21を構成する各二以上の電極体31a,31bのうち、最も外周壁3側寄りに配設されたそれぞれの電極体31aを、「第一の電極体31a」とする。その際、ハニカム構造部4の側面5における、それぞれの第一の電極体31aの面積が、それぞれの二以上の電極体31a,31bのうちの他の電極体31bの面積よりも大きい。且つ、セル2の延びる方向に直交する少なくとも一の断面において、それぞれの第一の電極体31aの中心角α1が、それぞれの二以上の電極体31a,31bのうちの他の電極体31bの中心角α2よりも大きい(即ち、α1>α2)。「第一の電極体31aの面積」とは、「第一の電極体31aのハニカム構造部4の側面5と接触する面の面積」のことである。また、「二以上の電極体31a,31bのうちの他の電極体31bの面積」とは、「他の電極体31bの第一の電極体31a側の表面の面積」のことである。「他の電極体31b」とは、「最も外周壁3側寄りに配設された第一の電極体31a以外の電極体」のことである。
【0027】
ここで、
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す正面図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
図4は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図4においては、隔壁が省略されている。また、
図1〜
図4においては、一対の電極部のそれぞれが、二つの電極体が積層された積層体からなる場合の例を示しているが、各電極部は、三つ以上の電極体が積層された積層体からなるものであってもよい。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の電気抵抗率が1〜200Ωcmであるため、電圧の高い電源を用いて電流を流しても、過剰に電流が流れず、ヒーターとして好適に用いることができる。また、本実施形態のハニカム構造体100は、上記電極構成Aを採用しているため、一対の電極部21,21間に電圧を印加したときの、ハニカム構造部4の温度分布の偏りを抑制することができる。
【0029】
更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面における径方向に積層された二以上の電極体31によって構成されている。本実施形態のハニカム構造体100においては、一対の電極部21,21のそれぞれを、二層以上の電極体31の積層体とすることによって、ハニカム構造部4をより均一に加熱することができる。例えば、一対の電極部21,21のそれぞれが、一層の導電性の膜状のものの場合には、ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に垂直な断面において、一対の電極部21,21の両側縁部近傍からハニカム構造部4に対して集中的に電流が流れることがある。このように電流が集中的に流れると、その部位の発熱量が多くなる。ハニカム構造体100に供給される電力量が一定の場合には、上述したように部分的に特定の部位が加熱されてしまうと、ハニカム構造体100全体の発熱が十分に行われないことがある。即ち、電極部が一層の膜状のものであると、一方の電極部21と他方の電極部21とが、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されていたとしても、部分的に温度分布の偏りが生じることがある。特に、上記したように集中的に電流が流れる箇所の温度が過剰に上昇するということは、他の部位の温度が十分に上昇していなことが予想され、ハニカム構造体100の排ガスの浄化性能(エミッション性能)が低下することもある。
【0030】
本実施形態のハニカム構造体100においては、上述したように、一対の電極部21,21のそれぞれを、二以上の電極体31の積層体とする。更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、上記電極構成Bを採用している。各二以上の電極体31a,31bの「他の電極体」は、「第一の電極体」が配置された領域内に配置されていることが好ましい。また、電極体が三層以上の場合には、「下層側に配置された電極体」が配設された領域内に、より上層側に配置された電極体が納まるように(即ち、上層側の電極体が、下層側の電極体からはみ出さずに)、各電極体が配置されていることが好ましい。以下、第一の電極体31aの表面に配設された他の電極体のことを「第二の電極体31b」ということがある。
【0031】
このように構成することによって、各電極部における集中的な電流の流れを分散させることができる。即ち、上記のような面積及び中心角の二以上の電極体の積層体から電極部を形成することにより、第一の電極体の側縁部とその他の電極体の側縁部とが合致せずに、各電極体の側縁部がずれた状態となる。このため、集中的に電流が流れる基点(即ち、各電極体の側縁部)が増え、電流が集中する箇所を分散させることができる。
【0032】
例えば、
図1〜
図4においては、電極部21が、第一の電極体31aと、第二の電極体31bとの二層構造の電極体31から形成されている。このように構成することによって、第一の電極体31aの両側縁部近傍と、第二の電極体31bの両側縁部近傍との合計4箇所に、電流が集中する箇所を分散させることができる。これにより、ハニカム構造部4に対して、電流がより均等に流れることとなり、例えば、一定の電力量で、ハニカム構造体100を良好に(別言すれば、効率的に)発熱させることができるとともに、局所的な温度上昇を抑制することもできる。これにより、ハニカム構造体の発熱時の最高温度を低減させることができる。また、ハニカム構造体100の排ガスの浄化性能(エミッション性能)も向上させることができる。
【0033】
ここで、「セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設される」とは、以下の構成を意味する。まず、セルの延びる方向に直交する断面における、一方の電極部21の中央点とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分を、「線分P」とする。また、セルの延びる方向に直交する断面における、他方の電極部21の中央点とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分を、「線分Q」とする。一方の電極部21及び他方の電極部21の中央点は、ハニカム構造部4の周方向における中央の点のことである。そして、「ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側」とは、線分Pと線分Qとにより形成される角度βが、170°〜190°の範囲となるような位置関係のことを意味する。従って、上記した構成においては、一対の電極部21,21が、上記角度βの範囲を満たすような位置関係に配設される。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものであることが好ましく、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材であることが更に好ましい。「隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものである」というときは、隔壁1及び外周壁3が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。このような材質を用いることにより、ハニカム構造部の電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものである。この珪素−炭化珪素複合材においては、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、炭化珪素材は、炭化珪素粒子同士が焼結したものである。ハニカム構造部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0035】
図1〜
図4に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の側面5(外周壁3の表面)に一対の電極部21,21が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21間に電圧を印加することにより、発熱する。印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましい。
【0036】
本実施形態のハニカム構造体100においては、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面における径方向に積層された二以上の電極体31(
図1〜
図4においては、二層の電極体31a,31b)からなる。そして、ハニカム構造部4の側面5における、それぞれの第一の電極体31aの面積が、それぞれの二以上の電極体31a,31bのうちの他の電極体31bの面積よりも大きい。更に、セル2の延びる方向に直交する少なくとも一の断面において、それぞれの第一の電極体31aの中心角α1が、それぞれの二以上の電極体31a,31bのうちの他の電極体31bの中心角α2よりも大きい。
【0037】
本実施形態のハニカム構造体100においては、セル2の延びる方向に直交する少なくとも一の断面において、他の電極体31bの中心角が、この他の電極体31bが積層されている第一の電極体31aの中心角の5〜95%に相当する角度であることが好ましい。このように構成することによって、第一の電極体の側縁の位置と、その他の電極体の側縁の位置とに十分な差異が生じ、電流が集中的に流れる箇所が分散し、ハニカム構造体をより均一に発熱させることができる。また、局所的な発熱を抑制することで、排ガスの浄化性能もより向上させることができる。なお、他の電極体31bの中心角が、第一の電極体の中心角の25〜95%に相当する角度であることがより好ましく、50〜90%に相当する角度であることが特に好ましい。また、電極部が3層以上の場合において、電極部をn+1層構造(nは2以上の整数)としたときに、n+1層目の中心角は、n層目の中心角の5〜95%に相当する角度であることが好ましい。
【0038】
図1〜
図4に示す本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、第一の電極体31aと第二の電極体31bの二つの電極体の積層体によって形成されたものである。この際、セル2の延びる方向に直交する断面において、第一の電極体31aの中心角α1は、40〜140°であることが好ましく、60〜120°であることが更に好ましく、80〜100°であることが特に好ましい。このように構成することによって、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを、より効果的に抑制することができる。換言すれば、ハニカム構造部4内を流れる電流を、より均一に流すことができる。これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。「電極体31の中心角(例えば、第一の電極体31aの中心角α1)」は、
図4に示されるように、セル2の延びる方向に直交する断面において、電極体31aの両側縁とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角度である。即ち、セル2の延びる方向に直交する断面において、「電極体31」と、「電極体31の一方の側縁と中心Oとを結ぶ線分」と、「電極体31の他方の側縁と中心Oとを結ぶ線分」とにより形成される形状(例えば、扇形)における、中心Oの部分の内角である。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体100において、第一の電極体31aの中心角α1が、他の電極体31bの中心角α2よりも大きくなる箇所については、セル2の延びる方向の少なくとも一箇所(即ち、セル2の延びる方向に直交する少なくとも一の断面)であればよい。但し、一対の電極部21,21のセル2の延びる方向における長さの30〜100%の範囲において、それぞれの第一の電極体31aの中心角α1が、それぞれの他の電極体31bの中心角α2よりも大きいことが好ましい。第一の電極体31aの中心角α1が大きくなる範囲は、セル2の延びる方向における長さの60〜100%であることがより好ましく、80〜100%であることが更に好ましい。更に、一対の電極部21,21のセル2の延びる方向に直交する全ての断面において、それぞれの第一の電極体31aの中心角α1が、それぞれの他の電極体31bの中心角α2よりも大きいことが特に好ましい。即ち、セルの延びる方向に直交する全ての断面において、それぞれの第一の電極体31aの中心角α1が、それぞれの他の電極体31bの中心角α2よりも大きいことが特に好ましい。各電極体31a,31bの幅は、セル2の延びる方向において一定であってもよいし、異なっていてもよい。「電極体の幅」とは、電極体の一方の側縁から他方の側縁までの長さ、即ち、ハニカム構造部の周方向における長さのことをいう。
【0040】
また、一方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」は、他方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」に対して、0.8〜1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(即ち、同じ大きさ)であることが更に好ましい。これにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを、より効果的に抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを、より効果的に抑制することができる。なお、「一方の電極部又は他方の電極の中心角」というときは、電極部のうち最も中心角が大きくなる電極体に基づいて求められた中心角のことをいう。
【0041】
図1〜
図4に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100のそれぞれの電極部21,21は、2つ以上の電極体31a,31bが、ハニカム構造部4の円筒形状の外周に沿って湾曲させた状態で積層して形成されたものである。ここで、湾曲した各電極体31を、湾曲していない平面状の部材になるように変形したときの形状を、各電極体31の「平面形状」と称することにする。各電極体31とは、例えば、第一の電極体31a、第二の電極体31bのことである。
図1〜
図4に示される第一の電極体31a及び第二の電極体31bの「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極体の外周形状」というときは、「各電極体の平面形状における外周形状」を意味する。また、電極部の「平面形状」及び「外周形状」という場合は、特に断りのない限り、積層状態の電極体の「平面形状」及び「外周形状」のこととする。例えば、第一の電極体上に、その他の電極体が、第一の電極体からはみ出すことなく配設(積層)されている場合には、電極部の「平面形状」及び「外周形状」は、第一の電極体の「平面形状」及び「外周形状」と同じ形状となる。
【0042】
図1〜
図4に示す本実施形態のハニカム構造体100においては、各電極体31a,31bの外周形状が長方形の場合の例を示している。本実施形態のハニカム構造体においては、電極部の外周形状が、セルの延びる方向に延びる帯状に形成されるような形状のものであれば、各電極体の外周形状は、上述した長方形以外のその他の形状であってもよい。
【0043】
即ち、第一の電極体31aの外周形状としては、
図5Aに示すような「長方形」に限定されることはない。例えば、
図5Bに示すような、「長方形の角部が曲線状に形成された形状」であってもよい。また、第一の電極体31aの外周形状が、「長方形の角部が直線状に面取りされた形状」であってもよい。更に、第一の電極体31aの外周形状が、「曲線状」と「直線状」の複合適用であってもよい。「曲線状」と「直線状」の複合適用とは、長方形において、角部の少なくとも一つが「曲線状に形成された形状」となっており、且つ、角部の少なくとも一つが「直線状に面取りされた形状」となっている形状のことである。また、本明細書における「帯状」は、シート状または膜状ということもできる。つまり、本明細書における「電極部」は、本明細書における「電極端子突起部」のように外側に向かって突出したものを含まない。
図5Aは、第一の電極体の一例を模式的に示す平面図である。
図5Bは、第一の電極体の他の例を模式的に示す平面図である。また、
図5A及び
図5Bにおける符号Iは、セルの延びる方向を示す。
【0044】
このように、第一の電極体31aの外周形状が、「長方形の角部が曲線状に形成された形状」、又は「長方形の角部が直線状に面取りされた形状」であることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を更に向上させることができる。例えば、第一の電極体31aの角部が直角であると、ハニカム構造部における「当該第一の電極体の角部」付近の応力が、他の部分と比較して相対的に高くなる傾向にある。これに対し、第一の電極体の角部を曲線状にしたり直線状に面取りしたりすると、ハニカム構造部における「当該第一の電極体の角部」付近の応力を低下させることが可能となる。
【0045】
また、第一の電極体31aの外周形状が、
図5C及び
図5Dに示すような「六角形」であってもよい。
図5Cにおいては、外周形状が六角形の第一の電極体31aとして、それぞれの内角が180°未満の六角形の場合を示す。
図5Dにおいては、外周形状が六角形の第一の電極体31aとして、対向する2つの角の内角が180°超の六角形の場合を示す。
図5C及び
図5Dは、第一の電極体の更に他の例を模式的に示す平面図である。
【0046】
また、第一の電極体31aとしては、例えば、
図5Eに示すような、「網状(メッシュ状)」の電極体であってもよい。
図5Eに示す第一の電極体31aは、その外周形状が「長方形の角部が曲線状に形成された形状」であり、セルの延びる方向Iに対して斜め方向に、格子の升目(網目)が整列するように構成された電極体である。また、第一の電極体31aとしては、例えば、
図5Fに示すような、「電極体にドット状の空隙(孔)が形成された形状」の電極体であってもよい。
【0047】
また、第一の電極体31aとしては、例えば、「第一の電極体の外周形状を構成する辺のうち、セルの延びる方向Iに平行な辺の一部が内側に括れた形状」のものであってもよい。例えば、
図5Gに示す第一の電極体31aは、外周形状が「長方形の角部が曲線状に形成された形状」の電極体において、当該電極体のセルの延びる方向に平行な辺(側縁)のそれぞれ3箇所が、円弧状に切り欠かれた形状の場合の例を示す。別言すれば、
図5Gに示す第一の電極体31aは、電極体のセルの延びる方向に平行な辺(側縁)のそれぞれ3箇所が、内側に括れた形状となっている。ここで、
図5E〜
図5Gは、第一の電極体の更に他の例を模式的に示す平面図である。
【0048】
また、第一の電極体よりも上層に配置される他の電極体の外周形状についても特に制限はない。但し、この他の電極体は、第一の電極体の面積よりもその面積が小さいものであり、且つ、第一の電極体上に配置された場合に、少なくともセルの延びる方向に直交する一の断面において、他の電極体の中心角が、第一の電極体の中心角よりも小さくなるものである。
【0049】
ここで、他の電極体として第二の電極体を例にとり、他の電極体(別言すれば、第二の電極体)の外周形状等について説明する。第二の電極体31bの外周形状としては、
図6Aに示すような「長方形」、
図6Bに示すような、「長方形の角部が曲線状に形成された形状」を挙げることができる。また、第二の電極体31bの外周形状が、「長方形の角部が直線状に面取りされた形状」であってもよい。第二の電極体31bの外周形状が、「曲線状」と「直線状」の複合適用であってもよい。
図6Aは、第二の電極体の一例を模式的に示す平面図である。
図6Bは、第二の電極体の他の例を模式的に示す平面図である。また、
図5A及び
図5Bにおける符号Iは、セルの延びる方向を示す。
【0050】
また、第二の電極体31bとしては、例えば、
図6Cに示すような、「網状(メッシュ状)」の電極体であってもよい。また、
図6Dに示すような、「電極体にドット状の空隙(孔)が形成された形状」の電極体であってもよい。第一の電極体31aと第二の電極体31bとが、共に「網状(メッシュ状)」や「ドット状の空隙(孔)が形成された形状」の電極体の場合には、第一の電極体31a及び第二の電極体31bのメッシュやドットのパターンについては特に制限はない。即ち、第一の電極体31aと第二の電極体31bとで、メッシュやドットのパターンが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第一の電極体31aと第二の電極体31bとのメッシュやドットのパターンが異なる場合には、第一の電極体31aの空隙部分を残すように、第二の電極体31bが配置されていてもよい。「第一の電極体31aの空隙部分」とは、メッシュやドットによって形成される空隙のことである。また、第二の電極体31bの空隙部分が狭く(例えば、メッシュが細かく)、第二の電極体31bによって第一の電極体31aの空隙部分が少なくなるように構成されていてもよい。なお、2層目以上の電極体(例えば、第二の電極体31b)は、第一の電極体31aに比して、空隙部分が小さい(換言すれば、開口率が低い)方が、通電性能に優れたものとなる。
【0051】
更に、第二の電極体31bとしては、例えば、第二の電極体の外周形状を構成する辺のうち、セルの延びる方向Iに平行な辺の一部が内側に括れた形状のものであってもよい。例えば、
図6Eに示す第二の電極体31bは、外周形状が「長方形の角部が曲線状に形成された形状」の電極体において、当該電極体のセルの延びる方向に平行な辺(側縁)のそれぞれ3箇所が、円弧状に切り欠かれた形状の場合の例を示す。ここで、
図6C〜
図6Eは、第二の電極体の他の例を模式的に示す平面図である。
【0052】
ここで、
図5A〜
図5Gに示すような各外周形状の第一の電極体31aを、それぞれ「第一の電極体A〜G」とし、
図6A〜
図6Eに示すような各外周形状の第二の電極体31bを、それぞれ「第二の電極体A〜E」とする。例えば、
図5Aに示す第一の電極体31aが、「第一の電極体A」となり、例えば、
図6Aに示す第二の電極体31bが、「第二の電極体A」となる。このような場合において、それぞれの電極体(即ち、第一の電極体と第二の電極体と)の組合せについては特に制限はない。好ましい電極体の組合せとしては、以下のような組合せを挙げることができる。
【0053】
第一の電極体Aについては、第二の電極体A〜Eの全てを好適に組み合わせることができる。第一の電極体Bについては、第二の電極体B、Eのいずれかとの組合せが好ましい。第一の電極体Cについては、第二の電極体B、Eのいずれかとの組合せが好ましい。第一の電極体Dについては、第二の電極体B、Eのいずれかとの組合せが好ましい。第一の電極体Eについては、第二の電極体B、Cのいずれかとの組合せが好ましい。第一の電極体Fについては、第二の電極体B、Dのいずれかとの組合せが好ましい。第一の電極体Gについては、第二の電極体B、Eのいずれかとの組合せが好ましい。
【0054】
ここで、
図7Aは、第一の電極体B(第一の電極体31a)と、第二の電極体B(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Bは、第一の電極体C(第一の電極体31a)と、第二の電極体B(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Cは、第一の電極体D(第一の電極体31a)と、第二の電極体B(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Dは、第一の電極体G(第一の電極体31a)と、第二の電極体B(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Eは、第一の電極体E(第一の電極体31a)と、第二の電極体B(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Fは、第一の電極体F(第一の電極体31a)と、第二の電極体B(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Gは、第一の電極体E(第一の電極体31a)と、第二の電極体C(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Hは、第一の電極体B(第一の電極体31a)と、第二の電極体C(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Iは、第一の電極体F(第一の電極体31a)と、第二の電極体D(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7Jは、第一の電極体B(第一の電極体31a)と、第二の電極体E(第二の電極体31b)とを組み合わせた電極部21を示す。
図7G及び
図7Iにおいては、第一の電極体31aと第二の電極体31bとの境界部分を破線によって示している。
【0055】
第一の電極体上に、第二の電極体が積層される場合には、第二の電極体の外周形状が、「第一の電極体の平面形状の重心を通過し、セルの延びる方向に第一の電極体の面積を二等分する中心線」に対して、対称となる形状であってもよい。また、上述した第二の電極体の外周形状が、「第一の電極体の平面形状の重心を通過し、セルの延びる方向に第一の電極体の面積を二等分する中心線」に対して、非対称となる形状であってもよい。なお、対称の形状が好ましい。このような形状であると、左右に均一に電流が分散する。
【0056】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、一対の電極部を構成するそれぞれの二以上の電極体のうちの他の電極体の電気抵抗率が、それぞれの第一の電極体の電気抵抗率の5〜100%に相当する値であることが好ましい。また、他の電極体の電気抵抗率が、それぞれの第一の電極体の電気抵抗率の10〜90%に相当する値であることが更に好ましく、50〜90%に相当する値であることが特に好ましい。このように構成することによって、電極部直下又は電極部の両端部で発生する発熱集中を、複数箇所に良好に分散させることができ、ハニカム構造体の局所的な温度上昇を良好に抑制することができる。即ち、ハニカム構造体の発熱時の最高温度を低減させることができる。また、ハニカム構造体100の排ガスの浄化性能(エミッション性能)も向上させることができる。例えば、他の電極体の電気抵抗率が、第一の電極体の電気抵抗率の5%未満、又は100%超であると、電極部からハニカム構造部への電流の流れが分散し難くなる。
【0057】
本実施形態のハニカム構造体においては、第一の電極体の電気抵抗率が、0.01〜100Ωcmであることが好ましい。更に、第一の電極体の電気抵抗率が、0.1〜10Ωcmであることが更に好ましく、0.6〜5Ωcmであることが特に好ましい。第一の電極体の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。第一の電極体の電気抵抗率が0.01Ωcmより小さいと、セルの延びる方向に直交する断面において、第一の電極体の両側縁付近のハニカム構造部の温度が上昇し易くなることがある。第一の電極体の電気抵抗率が100Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。第一の電極体の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0058】
電極部21の電気抵抗率が部分的に異なる場合、
図13、
図14に示すハニカム構造体400のように、電極部21が、中央部21Xと拡張部21Y,21Yとから構成されることが好ましい。そして、電極部21の中央部21Xの電気抵抗率は、電極部21の拡張部21Y,21Yの電気抵抗率より小さいものであることが好ましい。中央部21Xは、セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21の周方向における中央部分のことである。拡張部21Y,21Yは、セル2の延びる方向に直交する断面において、中央部21Xの周方向における両側に位置する部分のことである。このように、電極部21の中央部21Xの電気抵抗率が、電極部21の拡張部21Yの電気抵抗率より小さいと、電極部21の中央部21Xに電圧を印加したときに、電気抵抗率が低い中央部21Xに電流が容易に流れる。そのため、ハニカム構造体のセルの延びる方向における電流の流れの偏りが小さくなる。これにより、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向における温度分布の偏りを効果的に抑制することができる。
図13は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図14は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。なお、
図13及び
図14においては、第一の電極体及び第二の電極体の積層構造については捨象して電極部を示している。
【0059】
中央部21Xの電気抵抗率は、拡張部21Y,21Yの電気抵抗率の0.0001〜70%が好ましく、0.001〜50%が更に好ましく、0.001〜10%が特に好ましい。0.0001%より小さいと、ハニカム構造部の中心軸に直交する断面における外周方向への電流の流れが小さくなり、温度分布の偏りが大きくなることがある。70%より大きいと、ハニカム構造体400の温度分布の偏りを抑制する効果が低下することがある。
【0060】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21のヤング率は、2〜50GPaであることが好ましく、3〜45GPaであることが更に好ましく、3〜35GPaであることが特に好ましい。電極部21のヤング率をこのような範囲にすることにより、電極部21のアイソスタティック強度を確保できるとともに、ハニカム構造部にクラックが発生し難くなる。電極部21のヤング率が2GPaより小さいと、電極部21のアイソスタティック強度を確保できなくなることがある。電極部21のヤング率が50GPaより大きいと、剛性が高くなるためハニカム構造部にクラックが発生し易くなることがある。
【0061】
電極部のヤング率は、JIS R1602に準拠して、曲げ共振法によって測定した値である。測定に用いる試験片としては、電極部を形成する電極部形成原料からなる複数のシートを積み重ねて積層体を得た後、この積層体を乾燥させ、3mm×4mm×40mmの大きさに切り出したものを用いる。
【0062】
本発明のハニカム構造体は、一対の電極部の熱容量の合計を、外周壁全体の熱容量の2〜150%にすることが好ましい。このような範囲とすることにより、電極部に蓄積する熱量が少なくなり、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が更に向上する。そのため、ハニカム構造体を内燃機関の排気システムに搭載して使用した際に、急激な温度変化があっても、ハニカム構造部に大きな応力が生じることを抑制することができる。一対の電極部の熱容量の合計は、外周壁全体の熱容量以下にすること(即ち、2〜100%であること)が更に好ましく、外周壁全体の熱容量より小さくすることが特に好ましい。これにより、電極部に蓄積する熱量が更に少なくなり、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が更に向上する。そのため、ハニカム構造体を内燃機関の排気システムに搭載して使用した際に、急激な温度変化があっても、ハニカム構造部に大きな応力が生じることを更に抑制することができる。一対の電極部の熱容量の合計は、電極部の体積をもとに、気孔率、材料の比重、及び比熱を考慮した熱容量計算の方法で導き出した値である。上記「電極部の体積」は、光学顕微鏡で測定された電極部の平均厚みと電極角度(
図3における、中心角α)とを用いて計算された電極部の体積のことである。外周壁全体の熱容量は、外周壁の体積をもとに、気孔率、材料の比重、及び比熱を考慮した熱容量計算の方法で導き出した値である。上記「外周壁の体積」は、光学顕微鏡で測定された外周壁の平均厚みを用いて計算された外周壁の体積のことである。本明細書において、ハニカム構造部の側面の、電極部が配設されている部分の面積を「電極部の配設面積」とする。また、ハニカム構造部と同軸であり電極部を分割する円筒を仮定し、その円筒に分割された電極部の分割面を仮想分割面とする。更に、この仮想分割面の面積を「仮想分割面積」とする。本明細書における「電極部の熱容量」の算出に際しては、上記「仮想分割面積」が、上記「電極部の配設面積」の90%以上となる部分を「電極部」とする。即ち、本明細書における「電極部の熱容量」の算出に際しては、上記「仮想分割面積」が、上記「電極部の配設面積」の90%未満となる部分は電極部ではないものとする。
【0063】
本実施形態のハニカム構造体においては、「一対の電極部の熱容量の合計が、外周壁全体の熱容量より小さい」場合、具体的には、一対の電極部の熱容量の合計が、外周壁全体の熱容量の2〜80%であることが好ましい。下限値は、9%であることが更に好ましく、15%であることが特に好ましい。また、上限値は、75%であることが更に好ましく、50%であることが特に好ましい。2%より小さいと、電圧を印加したときに、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流が流れるという効果が十分に得られないおそれがある。80%より大きいと、耐熱衝撃性を低下させる効果が小さくなることがある。
【0064】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、それぞれの二以上の電極体のうちの他の電極体の厚さが、それぞれの第一の電極体の厚さの50〜150%に相当する厚さであることが好ましい。また、他の電極体の厚さが、50〜100%に相当する厚さであることが更に好ましく、70〜100%に相当する厚さであることが特に好ましい。
【0065】
電極体の厚さは、光学顕微鏡で測定された値であり、「セルの延びる方向におけるハニカム構造体の中央部」における、電極体の周方向3点の平均厚みの値である。「電極体の周方向3点の平均厚みの値」とは、電極体を「ハニカム構造部の周方向」に3等分して3つの分割部分を形成し、各分割部分において「ハニカム構造部の周方向」における中央部の厚さを測定し、得られた3点の厚さの測定結果を平均した値である。電極体をハニカム構造部の周方向に3等分するとは、セルの延びる方向に平行な直線で、電極体を3等分することを意味する。
【0066】
本実施形態のハニカム構造体においては、第一の電極体の厚さが、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることが更に好ましく、0.1〜0.5mmであることが特に好ましい。第一の電極体の厚さを薄くすることにより、電極部の熱容量を低くすることができ、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。その一方で、本実施形態のハニカム構造体においては、第一の電極体の表面に、更に電極体を積層した構造となっているため、電極部の通電性能を向上させることができる。
【0067】
本実施形態のハニカム構造体においては、一対の電極部の気孔率が、30〜80%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましく、30〜60%であることが特に好ましい。電極部の気孔率がこのような範囲であることにより、電極部の熱容量を低くすることができ、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。電極部の気孔率が30%より小さいと、電極部の熱容量を低くし難くなることがある。電極部の気孔率が80%より大きいと、ハニカム構造部に均一に電流を流すことが難しくなることがある。電極部の気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0068】
電極部21を構成する各電極体31a,31bは、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることが好ましく、通常含有される不純物以外は、炭化珪素粒子及び珪素を原料として形成されていることが更に好ましい。ここで、「炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」とは、炭化珪素粒子と珪素との合計質量が、各電極体31a,31b全体の質量の90質量%以上であることを意味する。特に、第一の電極体31aが炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、第一の電極体31aの成分とハニカム構造部4の成分とが同じ成分又は近い成分(ハニカム構造部の材質が炭化珪素である場合)となる。そのため、第一の電極体31aとハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ値又は近い値になる。また、第一の電極体31aの材質とハニカム構造部4の材質とが、同じもの又は近いものになるため、第一の電極体31aとハニカム構造部4との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、第一の電極体31a(換言すれば、電極部21)がハニカム構造部4から剥れたり、第一の電極体31a(換言すれば、電極部21)とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。
【0069】
電極部21を構成する各電極体31a,31bは、平均細孔径が5〜45μmであることが好ましく、7〜40μmであることが更に好ましい。電極部21を構成する各電極体31a,31bの平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21を構成する各電極体31a,31bの平均細孔径が、5μmより小さいと、電気抵抗率が高くなり過ぎることがある。電極部21を構成する各電極体31a,31bの平均細孔径が、45μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0070】
電極部21を構成する各電極体31a,31bの主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、各電極体31a,31bに含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜70μmであることが好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。各電極体31a,31bに含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、各電極体31a,31bの電気抵抗率を良好な値に制御することができる。各電極体31a,31bに含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が、10μmより小さいと、電極部21の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。各電極体31a,31bに含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が、70μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。各電極体31a,31bに含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0071】
各電極体31a,31bに含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、各電極体31a,31bに含有される珪素の質量の比率が、20〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることが更に好ましい。各電極体31a,31bに含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、各電極体31a,31bの電気抵抗率を0.01〜100Ωcmの範囲で制御することができる。各電極体31a,31bに含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがあり、50質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0072】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁厚さが50〜260μmであり、70〜180μmであることが好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁厚さが260μmより厚いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0073】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル密度が40〜150セル/cm
2であることが好ましく、70〜100セル/cm
2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm
2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cm
2より高いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0074】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることが更に好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造部4の400℃における電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が小さくなることがある。更に、炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0075】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4の電気抵抗率は、1〜200Ωcmであり、40〜100Ωcmであることが好ましい。電気抵抗率が1Ωcmより小さいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに、電流が過剰に流れることがある。電気抵抗率が200Ωcmより大きいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがある。ハニカム構造部の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。ハニカム構造部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0076】
本実施形態のハニカム構造体100においては、第一の電極体31aの電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率より低いものであることが好ましい。更に、第一の電極体31aの電気抵抗率が、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下であることが更に好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。第一の電極体31aの電気抵抗率を、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0077】
本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、下記「珪素の質量比率」が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましい。「珪素の質量比率」が、10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。「珪素の質量比率」とは、ハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率のことである。
【0078】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率が、35〜60%であることが好ましく、45〜55%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0079】
ハニカム構造部4の隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0080】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム構造部の外周壁の気孔率が、35〜60%であることが好ましく、35〜55%であることが更に好ましく、35〜50%であることが特に好ましい。ハニカム構造部の外周壁の気孔率がこのような範囲であることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。ハニカム構造部の外周壁の気孔率が35%より小さいと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる効果が低下することがある。ハニカム構造部の外周壁の気孔率が60%より大きいと、ハニカム構造体の機械的強度が低下することがある。
【0081】
ハニカム構造部の外周壁の厚さについては特に制限はない。外周壁の厚さは、0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.8mmであることが更に好ましく、0.2〜0.5mmであることが特に好ましい。ハニカム構造部の外周壁の厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。また、これにより、ハニカム構造体を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。ハニカム構造部の外周壁の厚さが0.1mmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。ハニカム構造部の外周壁の厚さが1.0mmより厚いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が低下することがある。また、ハニカム構造部の外周壁の厚さが1.0mmより厚いと、ハニカム構造体を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0082】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組合せ、であることが好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0083】
本実施形態のハニカム構造体100の形状は特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mm
2であることが好ましく、4000〜10000mm
2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向(セルの延びる方向)の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0084】
本実施形態のハニカム構造体100のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましいが、ハニカム構造体100の材質、構造等を考慮すると、6MPa程度が上限となる。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0085】
図1、
図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びると共に「両端部間(両端面11,12間)に亘る」帯状に形成されている。このように、一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように配設されていることにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制することができる。これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを効果的に抑制することができる。ここで、「電極部21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成(配設)されている」というときは、以下の構成のことを意味する。即ち、電極部21の一方の端部がハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面)に接し、電極部21の他方の端部がハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面)に接していることを意味する。
【0086】
尚、一対の電極部21,21は、
図1、
図2に示されるように、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成されたものであってもよいが、例えば、以下のように構成されていてもよい。即ち、
図8、
図9に示されるように、電極部21の「ハニカム構造部4のセル2の延びる方向」における両端部21a,21bが、ハニカム構造部4の両端部(両端面11,12)に接していない(到達していない)状態であってもよい。また、電極部21の一方の端部21aが、ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)に接し(到達し)、他方の端部21bが、ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)に接していない(到達していない)状態であってもよい。
【0087】
ここで、
図9に示すように、一対の電極部21,21の中の片方の電極部21における一方の端部21aから、「ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)」までの距離を、「距離L1」とする。また、一対の電極部21,21の中の残りの片方の電極部21における一方の端部21aから、「ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)」までの距離を、「距離L2」とする。「距離L1」は、「距離L2」と、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。また、
図9に示すように、一対の電極部21,21の中の片方の電極部21における他方の端部21bから、「ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)」までの距離を、「距離L3」とする。また、一対の電極部21,21の中の残りの片方の電極部21における他方の端部21bから、「ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)」までの距離を、「距離L4」とする。「距離L3」は、「距離L4」と、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。尚、電極部21の一方の端部21aは、ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)側を向く端部であり、電極部21の他方の端部21bは、ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)側を向く端部である。
図8は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態(ハニカム構造体200)を模式的に示す斜視図である。
図9は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態(ハニカム構造体200)の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。本実施形態のハニカム構造体200の各条件は、電極部21の少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いないこと以外は、
図1〜
図3に示すハニカム構造体100における各条件と同じであることが好ましい。
【0088】
上述した「距離L1」、「距離L2」、「距離L3」、及び「距離L4」のそれぞれは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向における長さの50%より短いことが好ましく、25%以下であることが更に好ましい。50%以上であると、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制し難くなることがある。
【0089】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図10〜
図12に示されるように、本実施形態のハニカム構造体300は、上記本発明のハニカム構造体100(
図1〜
図4参照)において、以下のような構成の電極端子突起部22が配設されたものである。電極端子突起部22は、それぞれの電極部21,21の、セルの延びる方向に直交する断面における中央部であり、且つセルの延びる方向における中央部に配設されている。この電極端子突起部22は、電気配線を繋ぐための物である。即ち、電極端子突起部22は、電極部21,21間に電圧を印加するために、電源からの配線を接続する部分である。ハニカム構造体300に電極端子突起部22が配設されることにより、電極部21,21に電圧を印加したときに、ハニカム構造部4の温度分布の偏りを、より小さくすることができる。
図10は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図11は、
図10における、A−A’断面を示す模式図である。
図12は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0090】
本実施形態のハニカム構造体300の各条件は、上述した構成の電極端子突起部22が配設されていること以外は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100(
図1〜
図4参照))における各条件と同じであることが好ましい。
【0091】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合、電極端子突起部22の主成分も、炭化珪素粒子及び珪素であることが好ましい。このように、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分と電極端子突起部22の成分とが同じ(又は近い)成分となる。そのため、電極部21と電極端子突起部22の熱膨張係数が同じ(又は近い)値になる。また、電極部21の材質と電極端子突起部22の材質とが、同じ(又は近く)になるため、電極部21と電極端子突起部22との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極端子突起部22が電極部21から剥れたり、電極端子突起部22と電極部21との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。ここで、「電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」というときは、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。特に、電極部21を構成する二以上の電極体のうち、最も上層に配置された電極体(
図10〜
図12においては、第二の電極体31b)の成分と、電極端子突起部22の成分とが、同じ(又は近い)成分であることがより好ましい。
【0092】
電極端子突起部22の形状は、特に限定されず、電極部21に接合でき、電気配線を接合できる形状であればよい。例えば、
図10〜
図12に示すように、電極端子突起部22は、四角形の板状の基板22aに、円柱状の突起部22bが配設された形状であることが好ましい。このような形状にすることにより、電極端子突起部22は、基板22aにより電極部21に強固に接合されることができ、突起部22bにより電気配線を確実に接合させることができる。
【0093】
電極端子突起部22において、基板22aの厚さは、1〜5mmが好ましい。このような厚さとすることにより、電極端子突起部22を確実に電極部21に接合することができる。1mmより薄いと、基板22aが弱くなり、突起部22bが基板22aから、外れ易くなることがある。5mmより厚いと、ハニカム構造体を配置するスペースが必要以上に大きくなることがある。
【0094】
ここで、電極端子突起部22を構成する基板22aの、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向」における長さを、「基板22aの幅」とする。上記基板22aの幅は、電極部21の、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向(外周に沿った方向)」における長さの、10〜50%であることが好ましく、20〜40%であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、電極端子突起部22が、電極部21から外れ難くなる。10%より短いと、電極端子突起部22が、電極部21から外れ易くなることがある。50%より長いと、質量が大きくなることがある。また、電極端子突起部22において、基板22aの、「セル2の延びる方向」における長さは、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの、5〜30%が好ましい。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さをこのような範囲とすることにより、十分な接合強度が得られる。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さを、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの5%より短くすると、電極部21から外れ易くなることがある。そして、30%より長くすると、質量が大きくなることがある。
【0095】
電極端子突起部22において、突起部22bの太さは3〜15mmが好ましい。このような太さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。突起部22bの太さが3mmより細いと突起部22bが折れ易くなることがある。突起部22bの太さが15mmより太いと、電気配線を接続し難くなることがある。また、突起部22bの長さは、3〜20mmが好ましい。このような長さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。3mmより短いと電気配線を接合し難くなることがある。20mmより長いと、突起部22bが折れ易くなることがある。
【0096】
電極端子突起部22の電気抵抗率は、0.1〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.1〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、高温の排ガスが流れる配管内において、電極端子突起部22から、電流を電極部21に効率的に供給することができる。電極端子突起部22の電気抵抗率が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電流を電極部21に供給し難くなることがある。
【0097】
電極端子突起部22は、気孔率が30〜45%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。電極端子突起部22の気孔率がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の気孔率が、45%より高いと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0098】
電極端子突起部22は、平均細孔径が5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の平均細孔径がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の平均細孔径が、20μmより大きいと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0099】
電極端子突起部22の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極端子突起部22の電気抵抗率を、0.1〜2.0Ωcmにすることができる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が、10μmより小さいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が、60μmより大きいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0100】
電極端子突起部22に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極端子突起部22に含有される珪素の質量の比率が、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、0.1〜2.0Ωcmの電気抵抗率を得やすくなる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。そして、40質量%より大きいと、製造時に変形してしまうことがある。
【0101】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。上記本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態である、ハニカム構造体300(
図10〜
図12参照)を製造する方法を示す。
【0102】
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、3〜40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。なお、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0103】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0104】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0105】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0106】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0107】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0108】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0109】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0110】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0111】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0112】
次に、電極部(具体的には、電極部を構成する電極体)を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。電極部は、2つ以上の電極体の積層体によって形成するため、積層する電極体毎に、その成分が異なるものとしてもよいし、同じ成分のものとしてもよい。また、中央部及び拡張部からなる電極部を形成する場合には、中央部形成原料及び拡張部形成原料をそれぞれ調合する。中央部形成原料は、中央部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。拡張部形成原料は、拡張部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0113】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末及び金属珪素の合計質量を100質量部としたときに、金属珪素の質量が20〜40質量部となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0114】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
【0115】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15〜60質量部であることが好ましい。
【0116】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0117】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0118】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0119】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の形状及び配置になるように、ハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、まず、上記電極部形成原料を、ハニカム成形体の側面に塗布し、第一の電極体の前駆体を形成する。その後、同じ成分又は異なる成分の電極部形成原料を、第一の電極体の前駆体の表面に塗布し、その他の電極体の前駆体(例えば、第二の電極体の前駆体)を形成する。電極体が3層以上の積層体とする場合には、更に、電極部形成原料を塗布して、電極体の前駆体を形成することが好ましい。なお、電極部形成原料を塗布して各電極体の前駆体を形成する毎に、塗布した電極部形成原料(各電極体の前駆体)を乾燥することが好ましい。例えば、第一の電極体の前駆体を形成した後、50〜100℃で、30分程度乾燥し、次の電極体の前駆体の形成を行うことが好ましい。「電極体の前駆体」とは、焼成により電極体となる未焼成の電極体のことである。
【0120】
電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する際には、第一の電極体の面積(焼成後の第一の電極体の面積)が、他の電極体の面積(焼成後の他の電極体の面積)よりも大きくなるようにする。更に、ハニカム成形体のセルの延びる方向に直交する少なくとも一の断面において、第一の電極体の中心角(焼成後の第一の電極体の中心角)が、他の電極体の中心角(焼成後の他の電極体の中心角)よりも大きくなるようにする。電極体の外周形状については、
図5A〜
図5G、
図6A〜
図6Eに示すような外周形状を好適例として挙げることができる。
【0121】
第一の電極体及びその他の電極体の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0122】
また、中央部及び拡張部からなる電極部を形成する場合には、中央部形成原料及び拡張部形成原料のそれぞれを、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。このとき、
図13、
図14に示されるような電極部21の中央部21X及び拡張部21Yの形状になるように各原料をハニカム成形体の側面に塗布する。中央部形成原料及び拡張部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、電極部形成原料を塗布する場合と同様に、例えば印刷方法を用いることができる。
【0123】
次に、ハニカム成形体の側面に塗布した電極部形成原料(即ち、電極体の前駆体の積層体からなる電極部の前駆体)を乾燥させることが好ましい。これにより、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体を得ることができる。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。この時点では、ハニカム成形体には、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられていない。
【0124】
次に、電極端子突起部形成用部材を作製することが好ましい。電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体に貼り付けられて、電極端子突起部となるものである。電極端子突起部形成用部材の形状は、特に限定されないが、例えば、
図10〜
図12に示すような形状に形成することが好ましい。そして、得られた電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体の、電極部形成原料が塗布された部分(即ち、電極体の前駆体)に貼り付けることが好ましい。尚、ハニカム成形体の作製、電極部形成原料の調合、及び電極端子突起部形成用部材の作製の、順序はどのような順序でもよい。
【0125】
電極端子突起部形成用部材は、電極端子突起部形成原料を成形、乾燥して得ることが好ましい。電極端子突起部形成原料とは、電極端子突起部形成用部材を形成するための原料のことである。電極端子突起部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極端子突起部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0126】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極端子突起部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が20〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子(金属珪素)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0127】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0128】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜40質量部であることが好ましい。
【0129】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0130】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0131】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、電極端子突起部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、混練機を用いることができる。
【0132】
得られた電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にする方法は特に限定されず、押し出し成形後に加工する方法を挙げることができる。
【0133】
電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にした後に、乾燥させて、電極端子突起部形成用部材を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0134】
次に、電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付ける方法は、特に限定されないが、上記電極部形成原料を用いて電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材を貼り付ける際には、ハニカム成形体の電極部形成原料が塗布された部分に、電極端子突起部形成用部材を貼り付ける。例えば、電極端子突起部形成用部材の「ハニカム成形体に接触する面」に電極部形成原料を塗布し、「当該電極部形成原料を塗布した面」がハニカム成形体に接触するようにして、電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。
【0135】
そして、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体」を乾燥し、焼成して、本発明のハニカム構造体とすることが好ましい。尚、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100(
図1〜
図4参照))を作製する際には、上記、乾燥後の「電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体(電極端子突起部形成用部材が貼り付いていないもの)」を、以下の方法で焼成等の処理を行えばよい。焼成等の処理とは、仮焼成、焼成、及び酸化処理等のことである。
【0136】
このときの乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0137】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0138】
なお、電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体を焼成する前に貼り付けてもよいし、焼成した後に貼り付けてもよい。電極端子突起部形成用部材を、ハニカム成形体を焼成した後に貼り付けた場合は、その後に、上記条件によって再度焼成することが好ましい。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0140】
(実施例1)
まず、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料を得た。次に、この成形原料を、真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部である。造孔材の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部であった。水の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0141】
得られた円柱状の坏土を、押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。
【0142】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤を添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極部形成原料とした。バインダの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.5質量部であった。グリセリンの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに10質量部であった。界面活性剤の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.3質量部であった。水の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。
【0143】
次に、電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に、厚さが0.25mm、外周形状の幅が80mmとなるように帯状に塗布した。上述した電極部形成原料を塗布した「厚さ」は、電極部形成原料を乾燥、焼成した後の「厚さ」である。また、上記「外周形状の幅」は、電極部形成原料を乾燥、焼成した後の、ハニカム構造部の周方向における「長さ」のことである。電極部形成原料は、乾燥させたハニカム成形体の側面に、2箇所塗布した。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所の電極部形成原料を塗布した部分のなかの一方が、他方に対して、ハニカム成形体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。このようにして、ハニカム成形体の側面に第一の電極体の前駆体を形成した。ハニカム成形体の側面に塗布された第一の電極体の前駆体の外周形状は、長方形とした。
【0144】
次に、乾燥した各第一の電極体の前駆体の表面に、電極部形成原料を、厚さが0.25mm、外周形状の幅が12mmとなるように帯状に塗布した。電極部形成原料を塗布した「厚さ」は、電極部形成原料を乾燥、焼成した後の「厚さ」である。また、上記「外周形状の幅」は、電極部形成原料を乾燥、焼成した後の、ハニカム構造部の周方向における「長さ」のことである。このようにして、ハニカム成形体に第二の電極体の前駆体を形成した。第二の電極体の前駆体の外周形状は、長方形とした。本実施例においては、この第一の電極体の前駆体と第二の電極体の前駆体とが積層した積層体から、一対の電極部を形成した。
【0145】
次に、ハニカム成形体に塗布した電極部形成原料(電極体の前駆体の積層体)を更に乾燥させた。乾燥条件は、120℃とした。
【0146】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極端子突起部形成原料とした。電極端子突起部形成原料を、真空土練機を用いて坏土とした。バインダの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに4質量部であった。水の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに22質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0147】
得られた坏土を、
図10〜
図12に示される電極端子突起部22のような形状(基板と突起部とからなる形状)に加工し、乾燥して、電極端子突起部形成用部材を得た。また、乾燥条件は、70℃とした。板状の基板22aに相当する部分は、「3mm×12mm×15mm」の大きさとした。また、突起部22bに相当する部分は、底面の直径が7mmで、中心軸方向の長さが10mmの円柱状とした。電極端子突起部形成用部材は2つ作製した。
【0148】
次に、2つの電極端子突起部形成用部材のそれぞれを、ハニカム成形体の2箇所の電極部形成原料を塗布した部分のそれぞれに貼り付けた。電極端子突起部形成用部材は、電極部形成原料を用いて、ハニカム成形体の電極部形成原料を塗布した部分に貼り付けた。その後、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体」を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0149】
得られたハニカム構造体の隔壁の平均細孔径は8.6μmであり、気孔率は45%であった。平均細孔径及び気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。水銀ポロシメータとしては、Micromeritics社製の商品名「オートポアIV9505」を用いた。また、ハニカム構造体の、隔壁の厚さは101.6μmであり、セル密度は93セル/cm
2であった。また、ハニカム構造体の底面は直径93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。また、第二の電極体の中心角の、第一の電極体の中心角に対する比率(以下、「中心角比率」ともいう)は、15%であった。第一の電極体の電気抵抗率は、5Ωcmであり、第二の電極体の電気抵抗率は、1.3Ωcmであった。第二の電極体の電気抵抗率の、第一の電極体の電気抵抗率に対する比率(以下、「電気抵抗率比率」ともいう)は、26%であった。ハニカム構造部の電気抵抗率は、40Ωcmであり、電極端子突起部の電気抵抗率は、0.8Ωcmであった。
【0150】
また、ハニカム構造部、電極部を構成する第一の電極体、第二の電極体、及び電極端子突起部の電気抵抗率は、以下の方法で測定した。まず、測定対象と同じ材質で10mm×10mm×50mmの試験片を作成した。つまり、ハニカム構造部の電気抵抗率を測定する場合には、ハニカム構造部と同じ材質で試験片を作製した。各電極体の電気抵抗率を測定する場合には、各電極体と同じ材質で試験片を作製した。そして、電極端子突起部の電気抵抗率を測定する場合には、電極端子突起部と同じ材質で試験片を作製した。試験片の両端部(長手方向における両端部)全面に銀ペーストを塗布し、配線して通電できるようにした。試験片に電圧印加電流測定装置をつなぎ、その試験片に電圧を印加した。試験片中央部に熱電対を設置し、電圧印加時の試験片の温度の経時変化をレコーダーにて確認した。試験片に100〜200Vの電圧を印加し、試験片の温度が400℃の状態における電流値及び電圧値を測定し、得られた電流値及び電圧値、並びに試験片寸法から電気抵抗率を算出した。
【0151】
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「最高温度」を測定した。結果を表1に示す。
【0152】
(最高温度)
得られたハニカム構造体に200Vの電圧を印加したときの、ハニカム構造部の「セルの延びる方向に直交する断面における、電極部の端部(周方向の端部)が接する位置と、電極部の周方向の中央点が接する位置」の温度を測定する。測定された温度のうち、最も高い温度を最高温度とした。ハニカム構造部における、電極部の端部(周方向の端部)が接する位置か、電極部の周方向の中央点が接する位置のいずれかが、最も電流が流れる位置であり、ハニカム構造体において最も高い温度となる部分である。ガス流れ方向の位置(測温位置)は、中央とした。
【0153】
【表1】
【0154】
(実施例2〜16、比較例1及び2)
ハニカム構造体の第一の電極体及び第二の電極体の幅、厚さ、及び電気抵抗率を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、ハニカム構造体の「最高温度」を測定した。比較例1においては、第二の電極体を形成せずに、第一の電極体のみを電極部とした。
【0155】
表1より、実施例1〜16のハニカム構造体は、「最高温度」が低いのに対し、比較例のハニカム構造体は、「最高温度」が非常に高いことがわかる。