特許第5860485号(P5860485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5860485タイヤの転がり抵抗試験方法、及び試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860485
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】タイヤの転がり抵抗試験方法、及び試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20160202BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   G01M17/02 B
   B60C19/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-11612(P2014-11612)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-138004(P2015-138004A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 賢
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/191055(WO,A1)
【文献】 特開昭56−051641(JP,A)
【文献】 特開2005−326314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するドラムの外周面にタイヤを押し付けて回転させ、そのときタイヤ軸に発生する接線方向の軸力Fxに基づいてタイヤの転がり抵抗を求める転がり抵抗試験方法であって、
内圧充填したタイヤをタイヤ軸に取り付けた後、分力計の0点合わせを行う0点調整工程と、
タイヤをドラムに押し付けた負荷状態にて回転させ、そのときタイヤ軸に発生する接線方向の軸力Fxを前記分力計を用いて測定する転がり抵抗測定工程と、
前記転がり抵抗測定工程の後、タイヤをドラムから離間させた無負荷の停止状態にて軸力FxAを測定し、該軸力FxAを予め設定した閾値KAと比較するとともに、前記閾値KAを越えた場合に試験を異常と判定する判定工程を具えることを特徴とするタイヤの転がり抵抗試験方法。
【請求項2】
前記転がり抵抗測定工程は、タイヤをドラムに押し付けた負荷状態にて一方方向に回転させて軸力Fxを測定することを特徴とする請求項1記載のタイヤの転がり抵抗試験方法。
【請求項3】
前記転がり抵抗測定工程は、タイヤをドラムに押し付けた負荷状態にて一方方向に回転させて軸力Fx1を測定する一方回転測定段階と、他方方向に回転させて軸力Fx2を測定する他方回転測定段階とを具えることを特徴とする請求項1記載のタイヤの転がり抵抗試験方法。
【請求項4】
前記転がり抵抗測定工程は、前記一方回転測定段階と、他方回転測定段階との間に、
前記一方回転測定段階の後、タイヤをドラムから離間させた無負荷の停止状態にて軸力FxBを測定し、該軸力FxBが予め定めた閾値KBと比較するとともに、前記閾値KBを越えた場合に異常と判定して試験を中止させる中間判定段階を具えることを特徴とする請求項3記載のタイヤの転がり抵抗試験方法。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のタイヤの転がり抵抗試験方法を実施する転がり抵抗試験装置であって、
前記転がり抵抗測定工程の後、タイヤをドラムから離間させた無負荷の停止状態にて測定された軸力FxAを、予め設定した閾値KAと比較し、前記軸力FxAが閾値KAを越えた場合に試験を異常と判定する判定手段を具えることを特徴とするタイヤの転がり抵抗試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり抵抗の測定精度、及びその信頼性を高めうるタイヤの転がり抵抗試験方法、及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの転がり抵抗試験方法の1つとして、JIS D4234に記載のフォース法が知られている。この方法は、図6に示すように、所定の速度V(例えば乗用車用タイヤの場合、80km/h)にて回転するドラムaの外周面に、タイヤTを所定の接地荷重(例えば乗用車用タイヤの場合、最大負荷能力の80%)で押し付けて回転させ、そのときタイヤ軸bに発生する接線方向の軸力Fxを、タイヤ軸bに取り付く分力計にて測定するとともに、その軸力Fxに基づいて転がり抵抗Frを算出している。
【0003】
なお前記軸力Fxには、タイヤ軸等のベアリングによる抵抗、並びにタイヤT及びドラムaの空気抵抗である寄生損失が含まれている。従って軸力Fxには、寄生損失を除去する補正が行われる。なお寄生損失は、前記軸力Fxの測定に引き続いて行う所定のスキムテスト(JIS D4234参照。)により測定される。
【0004】
他方、分力計では、センサから得られる信号が微弱なため、アンプによって増幅している。しかしこのとき、アンプの動作点がずれて偽の出力を生ずる所謂ドリフトが発生し、表示値と実際の値との間に乖離を招くという問題がある。ドリフトは、二つの入力端子に入力信号を加えない状態において、アンプの出力が緩やかに変動して0点ずれを起こす現象であり、その原因として、トランジスタの温度特性のばらつきなどが知られている。
【0005】
従来においては、アンプの時間に対するドリフト量を、予め実測により求めて記憶させ、その情報に基づき、測定した軸力Fxの値に対してドリフト量を相殺して補正を行う技術がある。しかし、測定時のタイヤの回転方向や、タイヤによってもドリフト量が一定ではないため、軸力Fxに対してドリフト量を正確に補正することが困難であり、十分満足しうる精度を得るには至っていない。
【0006】
なお、ドリフト量の補正に係わるものとして下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−51641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで発明は、軸力Fxの測定終了時にドリフト量を測定し、このドリフト量を予め設定した閾値KAと比較判定することを基本として、ドリフトに起因する転がり抵抗値の測定異常を識別して除外することができ、転がり抵抗の測定精度、及びその信頼性を高めうるタイヤの転がり抵抗試験方法、及び試験装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1の発明は、回転するドラムの外周面にタイヤを押し付けて回転させ、そのときタイヤ軸に発生する接線方向の軸力Fxに基づいてタイヤの転がり抵抗を求める転がり抵抗試験方法であって、
内圧充填したタイヤをタイヤ軸に取り付けた後、分力計の0点合わせを行う0点調整工程と、
タイヤをドラムに押し付けた負荷状態にて回転させ、そのときタイヤ軸に発生する接線方向の軸力Fxを前記分力計を用いて測定する転がり抵抗測定工程と、
前記転がり抵抗測定工程の後、タイヤをドラムから離間させた無負荷の停止状態にて軸力FxAを測定し、該軸力FxAを予め設定した閾値KAと比較するとともに、前記閾値KAを越えた場合に試験を異常と判定する判定工程を具えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗試験方法では、前記転がり抵抗測定工程は、タイヤをドラムに押し付けた負荷状態にて一方方向に回転させて軸力Fxを測定することができる。
【0011】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗試験方法では、前記転がり抵抗測定工程は、タイヤをドラムに押し付けた負荷状態にて一方方向に回転させて軸力Fx1を測定する一方回転測定段階と、他方方向に回転させて軸力Fx2を測定する他方回転測定段階とを具えることができる。
【0012】
本発明に係る前記タイヤの転がり抵抗試験方法では、前記転がり抵抗測定工程は、前記一方回転測定段階と、他方回転測定段階との間に、
前記一方回転測定段階の後、タイヤをドラムから離間させた無負荷の停止状態にて軸力FxBを測定し、該軸力FxBが予め定めた閾値KBと比較するとともに、前記閾値KBを越えた場合に異常と判定して試験を中止させる中間判定段階を具えることができる。
【0013】
本願第2の発明は、第1の発明のタイヤの転がり抵抗試験方法を実施する転がり抵抗試験装置であって、
前記転がり抵抗測定工程の後、タイヤをドラムから離間させた無負荷の停止状態にて測定された軸力FxAを、予め設定した閾値KAと比較し、前記軸力FxAが閾値KAを越えた場合に試験を異常と判定する判定手段を具えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、叙上の如き判定工程を具える。この判定工程では、転がり抵抗測定工程の後、タイヤをドラムから離間させた無負荷の停止状態における軸力FxA、即ちドリフト量を測定するとともに、このドリフト量(軸力FxA)を予め設定した閾値KAと比較し、閾値KAを越えた場合に試験を異常と判定している。
【0015】
即ち、分力計のドリフトに起因する転がり抵抗値の測定異常を、識別して除外することができる。そのため、転がり抵抗の測定異常が混入することによる精度の低下、及び信頼性の低下を抑制でき、結果として、転がり抵抗の測定精度、及びその信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のタイヤの転がり抵抗試験方法を実施するための試験装置の一実施例を示す斜視図である。
図2】転がり抵抗試験方法を示す概念図である。
図3】転がり抵抗試験方法を示すフローチャートである。
図4】フローチャートに基づいて測定された接線方向の軸力と、試験の経過時間との関係を示すグラフである。
図5】転がり抵抗の算出方法の一例を説明するグラフである。
図6】フォース法による従来の転がり抵抗試験方法を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態のタイヤの転がり抵抗試験装置1(単に「転がり抵抗試験装置1」という場合がある。)は、装置本体1Aと、判定手段1Bとを具える。
【0018】
前記装置本体1Aは、回転するドラム2の外周面2Sに、タイヤTを押し付けて回転させ、そのときタイヤ軸3に発生する接線方向の軸力Fxに基づいてタイヤの転がり抵抗Frを求める。具体的には、装置本体1Aは、外周面2Sを走路面としたドラム2と、該ドラム2を回転駆動するドラム駆動機4と、前記ドラム2の外周面2SにタイヤTを押し付けることにより該タイヤTを回転させるタイヤ保持機5と、タイヤ軸3に発生する接線方向の軸方向Fxを測定する分力計6とを具える。なお前記装置本体1Aは、試験中のタイヤTの内圧を調整するタイヤの空気圧調整機構を具えることもできる。
【0019】
前記ドラム駆動機4は、ドラム2の中心軸2Aを回転自在に支持するドラムホルダ7と、前記中心軸2Aに出力軸が連結され前記ドラム2を回転駆動するモータ(図示しない。)とを具える。そしてモータの回転速度を制御することにより、ドラム2の外周面2Sの速度V、即ちタイヤTの走行速度を自在に調整することが可能となる。
【0020】
前記タイヤ保持機5は、基台10にドラム半径方向内外に移動可能に取り付く移動台11と、この移動台11に一端部が支持される前記タイヤ軸3とを具える。タイヤ軸3は、ドラム2の中心軸2Aと平行に支持され、またタイヤ軸3の他端部にはタイヤTが回転自在に枢着される。本例では、移動台11が上下に移動可能な昇降台であり、かつタイヤTの軸芯が、ドラム2の軸芯を通る垂直な基準面内に位置するようにタイヤTが支持される。従って、タイヤ保持機5は、前記移動台11の下降により、タイヤ軸3に取り付くタイヤTを、ドラム2の外周面2Sに直角に押し付けでき、自在な荷重にて接地させることができる。
【0021】
前記分力計6は、タイヤ軸3の例えば軸受け部に取り付き、タイヤ軸3に作用する接線方向の軸力Fxを測定する。本例では、接線方向の軸力Fxに加えて、ドラム半径方向の軸力Fzである接地荷重も同時に測定する。このような分力計6として、2分力計等の周知の多分力計が好適に採用しうる。
【0022】
又前記判定手段1Bは、例えばコンピュータ等の演算処理装置又はその一部などからなり、以下に説明する転がり抵抗試験方法の判定工程S3における比較判定を行う。
【0023】
次に、転がり抵抗試験方法は、図2に概念的に示すように、回転するドラム2の外周面2SにタイヤTを直角に押し付けて回転させ、そのときタイヤ軸3に発生する接線方向の軸力Fxに基づいてタイヤの転がり抵抗Frを求める。
【0024】
具体的には、図3のフローチャートに示すように、転がり抵抗試験方法は、0点調整工程S1と、転がり抵抗測定工程S2と、判定工程S3とを具える。前記0点調整工程S1では、内圧充填したタイヤTをタイヤ軸3に取り付けた後、分力計6の0点合わせを行う。
【0025】
次に、転がり抵抗測定工程S2では、タイヤTをドラム2に押し付けた負荷状態にて回転させ、そのときタイヤ軸3に発生する接線方向の軸力Fxを分力計6を用いて測定する。本例では、前記転がり抵抗測定工程S2が、負荷状態にて一方方向に回転させて軸力Fx1を測定する一方回転測定段階S2aと、他方方向に回転させて軸力Fx2を測定する他方回転測定段階S2cと、その間の中間判定段階S2bとを具える場合が示される。
【0026】
具体的には、本例の一方回転測定段階S2aでは、前記0点調整工程S1の後、下記の(a)〜(d)のステップが順次行われる。
(a)タイヤTをドラム2の外周面2Sに押し付け、タイヤTに所定の接地荷重Fg(例えば最大負荷能力の80%)を負荷するステップa:
(b)前記接地荷重Fgの負荷状態にてドラム2を所定の速度V(例えば80km/h)にて一方方向に回転させ、所定の時間Ts(例えば30分間)の慣らし走行を行った後、接線方向の軸力Fx1を測定するステップb:
(c)荷重を前記接地荷重Fgからスキム荷重Fs(例えば0.1kN)まで減少させた後、前記速度Vを維持したままスキム荷重Fsで走行(スキム走行)を行うとともに、このスキム走行状態における接線方向の軸力Fx1sである寄生損失を測定するステップc:
(d)ドラム回転を停止するステップd:
【0027】
なお前記接地荷重Fg、スキム荷重Fs、速度V、慣らし走行の時間Tsなどは、JIS規格(JIS D4234)、国際規格(ISO 28580)等における転がり抵抗試験の規格に準拠して設定される。
【0028】
又、本例の中間判定段階S2bでは、前記一方回転測定段階S2aの後、下記の(e)、(f)のステップが順次行われる。
(e)タイヤTをドラム2から離間させ、タイヤTの無負荷の停止状態における接線方向の軸力FxBであるドリフト量FxBを測定するステップe:
(f)前記軸力(ドリフト量)FxBを、予め設定した閾値KBと比較し、閾値KBを越えた場合(FxB>KB)には、異常と判定して試験を中止させ、越えない場合(FxB≦KB)には、正常として試験を続行させる比較判定のステップf:
【0029】
又、本例の他方回転測定段階S2cでは、前記中間判定段階S2bの後、下記の(g)〜(j)のステップが順次行われる。
(g)タイヤTをドラム外周面2Sに押し付け、タイヤTに前記接地荷重Fgを負荷するステップg:
(h)前記接地荷重Fgの負荷状態にてドラム2を前記速度Vにて他方方向に回転させ、前記時間Tsの慣らし走行を行った後、接線方向の軸力Fx2を測定するステップh:
(i)荷重を接地荷重Fgから前記スキム荷重Fsまで減少させた後、前記速度Vを維持したままスキム荷重Fsで走行(スキム走行)を行うとともに、このスキム走行状態における接線方向の軸力Fx2sである寄生損失を測定するステップi:
(j)ドラム回転を停止するステップj:
【0030】
又、前記判定工程S3では、転がり抵抗測定工程S2(本例では前記他方回転測定段階S2c)の後、下記の(k)、(l)のステップが順次行われる。
(k)タイヤTをドラム2から離間させ、タイヤTの無負荷の停止状態における接線方向の軸力FxAであるドリフト量FxAを測定するステップk:
(l)前記軸力(ドリフト量)FxAを予め設定した閾値KAと比較し、閾値KAを越えた場合(FxA>KA)、異常と判定する比較判定のステップl:
【0031】
図4には、前記フローチャートに基づいて測定された接線方向の軸力Fxと、試験の経過時間との関係が示される。図4に示すように、ステップaでは、ドラム2が回転していないため、接線方向の軸力Fxは発生していない。ステップbでは、速度の上昇とともに軸力Fxが増加し、所定の速度V(例えば80km/h)に到達した後の慣らし走行において軸力Fxが安定化する。又軸力Fx1は、慣らし走行後の約1分間の走行中に測定される。ステップcでは、接地荷重Fgからスキム荷重Fsまでの荷重の減少とともに軸力Fxが低下する。そして軸力(寄生損失)Fx1sは、約1分間のスキム走行中に測定される。
【0032】
ステップdにおけるドラム回転停止の後、ステップeが引き続いて行われる。このステップeにおける無負荷の停止状態では、実際には接線方向の軸力Fxは発生しない。従って、このステップeで測定される軸力FxBは、分力計6のドリフト(0点変動)によって生じる偽りの出力であって、誤差となる。従って、この軸力(ドリフト量)FxBが大きい場合、補正したとしても、測定値の精度や信頼性の低下を招く。そのため本例では、ステップfにて、軸力(ドリフト量)FxBと閾値KBとの比較を行い、FxB>KBの場合、異常と判定して試験を中止させる。これにより、ドリフトによる測定異常を速やかに発見することができ、測定時間の無駄を削減できる。
【0033】
又ステップgにおいて接地荷重Fgを負荷した後、タイヤT及びドラム2が他方方向に回転する。ステップhでは速度の上昇とともに軸力Fxが増加し、所定の速度V(例えば80km/h)に到達した後の慣らし走行において軸力Fxが安定化する。なお軸力Fxが一定でないのは、分力計6のドリフトの影響である。軸力Fx2は、慣らし走行後の約1分間の走行中に測定される。ステップiでは、接地荷重Fgからスキム荷重Fsまでの荷重の減少とともに軸力Fxが低下する。又、軸力(寄生損失)Fx2sは、約1分間のスキム走行中に測定される。
【0034】
ステップjにおけるドラム回転停止の後、ステップkが引き続いて行われる。このステップkで測定される軸力FxAは、ステップeで測定される軸力FxBと同様、分力計6のドリフト(0点変動)によって生じる偽りの出力である。従って、この軸力(ドリフト量)FxAが大き過ぎる場合、補正したとしても、測定値の精度や信頼性の低下を招く。そのため、ステップlにて、軸力(ドリフト量)FxAと閾値KAとの比較を行い、FxA>KAの場合、試験の異常と判断する。これにより、得られる転がり抵抗Frを、評価対象から除外することができる。
【0035】
前記閾値KA、KBは、特に規制されないが、多数の事前テストによって実測された軸力FxA、FxBを考慮して設定するのが好ましい。又前記ステップf、lにおける比較判定は、前記判定手段1Bによって行われる。
【0036】
又、FxA≦KAの場合には、試験は正常と判断され、測定された前記軸力Fx1、軸力(寄生損失)Fx1s、軸力(ドリフト量)FxB、軸力Fx2、軸力(寄生損失)Fx2s、軸力(ドリフト量)FxAに基づいて、転がり抵抗Frが算出される。
【0037】
この転がり抵抗Frの算出方法の一例としては、例えば、図4、5に示すように、軸力(寄生損失)Fx1sの測定時期と軸力(ドリフト量)FxBの測定時期とが近似でき、かつ軸力(寄生損失)Fx2sの測定時期と軸力(ドリフト量)FxAの測定時期とが近似できる場合、
・軸力Fx1の測定時の経過時間t1、
・軸力(寄生損失)Fx1sの測定時の経過時間t2、
・軸力Fx2の測定時の経過時間t3、
・軸力(寄生損失)Fx2sの測定時の経過時間t4、
を用いて、転がり抵抗Frを次式で求めることができる。
Fr={(F1+F2)/2}×{(R+r)/R}
F1={Fx1−FxB・(t1/t2)}−{Fx1s−FxB}
F2={Fx2+FxA・(t3/t4)}−{Fx2s+FxA}
式中:
・F1は、一方回転測定段階S2aにおいて、寄生損失とドリフト量とで補正した軸力;
・F2は、他方回転測定段階S2cにおいて、寄生損失とドリフト量とで補正した軸力;
・Rは、ドラム2の半径(図2に示す);
・rは、走行中のタイヤ軸3の軸芯と、ドラム2の表面2Sとの間の距離(図2に示す);
である。
【0038】
前記転がり抵抗測定工程S2の他の例として、前記中間判定段階S2bを排除し、一方回転測定段階S2aと他方回転測定段階S2bとで転がり抵抗測定工程S2を構成することができる。この場合、転がり抵抗Frを次式で求めることができる。
Fr={(F1+F2)/2}×{(R+r)/R}
F1={Fx1−FxA・(t1/t4)}−{Fx1s−FxA・(t2/t4)}
F2={Fx2+FxA・(t3/t4)}−{Fx2s+FxA}
【0039】
又転がり抵抗測定工程S2のさらに他の例として、中間判定段階S2bと他方回転測定段階S2bとを排除し、一方回転測定段階S2aのみにより転がり抵抗測定工程S2を構成することができる。この場合、転がり抵抗Frを次式で求めることができる。
Fr={F1×{(R+r)/R}
F1={Fx1−FxB・(t1/t2)}−{Fx1s−FxB}
FxB=FxA
【0040】
上記の何れの例においても、判定工程S3により、試験の異常を識別しうるため、異常があった場合、得られる転がり抵抗Frを評価対象から除外することができ、転がり抵の測定精度、及びその信頼性を高めることができる。
【0041】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0042】
1 転がり抵抗試験装置
1B 判定手段
2 ドラム
2S 外周面
3 タイヤ軸
6 分力計
S1 0点調整工程
S2 転がり抵抗測定工程
S2a 一方回転測定段階
S2b 中間判定段階
S2c 他方回転測定段階
S3 判定工程
T タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6