特許第5860499号(P5860499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5860499血管治療用ツイストプライマリワインドコイル、セカンダリワインドコイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860499
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】血管治療用ツイストプライマリワインドコイル、セカンダリワインドコイル
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   A61B17/12
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-88060(P2014-88060)
(22)【出願日】2014年4月22日
(62)【分割の表示】特願2010-521971(P2010-521971)の分割
【原出願日】2008年8月18日
(65)【公開番号】特開2014-208025(P2014-208025A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2014年4月25日
(31)【優先権主張番号】60/956,509
(32)【優先日】2007年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500427567
【氏名又は名称】ミクラス エンドバスキュラー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ラブダグ、ファティマエザーラ
(72)【発明者】
【氏名】バデシャ、ジャスバー
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06544275(US,B1)
【文献】 特表2006−528512(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0021074(US,A1)
【文献】 特開平09−099094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のある金属ワイヤで形成された、縦軸に沿って細長いプライマリワインドコイルであって、
前記縦軸に対してある角度を持つとともに縦軸に沿って歳差運動する二つの横軸に沿って引き延ばされた非円形のコイル断面形状を有するように、前記縦軸の周りにらせん状に前記金属ワイヤが巻かれ、前記縦軸に沿って繰り返されるねじれたコイルパターンが形成されており、
前記縦軸に沿って前記プライマリワインドコイルの最小曲げ力の方向が変化す
ことを特徴とするプライマリワインドコイル。
【請求項2】
前記二つの横軸のうち一方に沿った曲げ抵抗が、他方に沿った曲げ抵抗よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のプライマリワインドコイル。
【請求項3】
前記プライマリワインドコイルは、円筒形、円錐形、球形、回転楕円体形状およびそれらの組合せからなるグループから選択されるセカンダリ形状を有するように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のプライマリワインドコイル。
【請求項4】
前記プライマリワインドコイルは、該プライマリワインドコイルの縦軸に沿った内部空間を有し、該プライマリワインドコイルの縦軸に沿った内部空間を通って延びる軸方向のストランド材料をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプライマリワインドコイル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のプライマリワインドコイルから形成されるセカンダリワインドコイルであって、
円筒形、円錐形、球形、回転楕円体およびそれらの組合せからなるグループから選択されるセカンダリ形状を有するように形成されている
ことを特徴とするセカンダリワインドコイル。
【請求項6】
前記プライマリワインドコイルは、該プライマリワインドコイルの縦軸に沿った内部空間を有し、該プライマリワインドコイルの縦軸に沿った内部空間を通って延びる軸方向のストランド材料をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のセカンダリワインドコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に血管インターベンショナル(介入)療法または血管手術用の埋め込み型デバイスに関し、より詳細には、柔軟性が改善されおよび/またはコイル全長に沿ったセカンダリ(二次)コイル形状性能を発揮するねじれパターンを持つコイルに関する。このコイルは、様々な血管介入療法で用いられるより複雑な形状のプライマリ(一次)コイルとして特に有用である。
【背景技術】
【0002】
血管閉塞デバイスは様々な形態をとることができ、配置前に配送カテーテル内部にあるときよりも展開された形態の方が大きくなる一つ以上の構成要素で一般に形成される。広く用いられている血管閉塞デバイスの一つは、二次的な展開形状を有するらせん形のワイヤコイルであり、展開形状は、対象とする血管系の特定部分の全てまたは一部を塞ぐような寸法にされる。動脈瘤などの解剖学的空洞(anatomical cavity)の形状に変形し、白金合金などの柔軟な材料で予め成形されたプライマリコイルで作られている、解剖学的形状の血管閉塞デバイスが知られている。
【0003】
血管閉塞部材は、動脈瘤または瘻孔(fistula)の治療のためなどに、展開形態時に血管腔または小嚢(vesicle)の内部に適合するような大きさおよび形状とすることができる。血管閉塞部材は、最初は概して直線的にらせん状に巻き付けられ、続いて、所望のセカンダリ形状と一致するような形状をしたマンドレルまたはフォームの周囲に巻き付けられ、加熱形態からの除去後にマンドレルの基本形状を保持するように加熱処理される。
【0004】
様々な大きさおよび形状の動脈瘤を塞ぐためには、コイルの特定の所定断面に沿ってよりたやすく変形するような剛性の変化するコイルが有用である。コイルの異なる領域で直径を変化させるかまたはコイルの組成を変化させることで、コイル剛性の変化を実現できる可変断面の円錐形血管閉塞コイルが知られている。
【0005】
プライマリワインドコイル(primary wind coil)を形成する既知の方法は、典型的には直径約0.010インチの円筒形のワイヤマンドレルに、例えば白金線などの金属ワイヤの連続コイルを巻き付けることである。得られるプライマリワインドコイルは、典型的に全ての方向で同一の曲げ剛性を有する。これは、直径が一定の円筒形マンドレルの周りにコイルがらせん状に形成される結果、コイルの縦軸に沿ったあらゆる平面上でコイルが縦軸周りに一定の曲げモーメントを有するためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
展開前に柔軟性を有し所与の空間をより完全に埋めて塞ぐことができる一方、より小型のコイルの柔らかさを維持してコイルの搬送を一層簡単にすることができ、例えば密に充填された治療用血管閉塞コイルまたは血栓除去具を形成する構造部材として使用される、柔軟性のある金属ワイヤコイルを提供することが望ましい。また、現在利用可能なプライマリワインドコイルよりも治療対象の領域をより完全に塞ぐことができるように、特定の緩和形状(relaxed shape)を持たないプライマリワインドコイルを提供することが望ましい。本発明は、これらのおよび他の要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡潔にかつ一般的に述べると、本発明は、従来のプライマリコイルよりも動脈瘤などの中での充填密度が高く、ねじれたコイルパターンを有する柔軟性のある金属ワイヤコイル、そのコイルの形成方法、コイルを形成するためのマンドレル、およびそのマンドレルを形成する方法を提供する。
【0008】
第1の好ましい実施態様では、本発明は、非円形の断面形状を持つ密に充填されたプライマリワインドコイルを提供する。非円形の断面形状は、コイルの縦軸を横切る少なくとも一つの軸に沿った細長い形状であり、少なくとも一つの横軸は縦軸に沿って回転し、縦軸に沿って歳差運動(precess)する少なくとも一つの曲げモーメントをプライマリワインドコイルに付与する。プライマリワインドコイルの断面形状は、例えば、楕円形、長円形、三角形、または一部の他の幾何学的形状であってもよい。別の好適な態様では、プライマリワインドコイルは、金属または金属合金などの材料からなる柔軟性のある細長いストランドから形成される。好適な実施形態では、金属はプラチナ合金である。柔軟性がある細長いストランド材料は、例えば約0.0015〜0.002インチの直径であってもよい。プライマリワインドコイルは、例えば球形、回転楕円体、円錐形、または円筒形のセカンダリ形状、あるいはそのような形状の組合せであるセカンダリ形状を有するようにさらに形成されることができる。別の好適な態様では、プライマリワインドコイルの少なくとも一つの歳差運動する横軸は、プライマリワインドコイルに少なくとも一つの歳差運動する曲げモーメントを与える。その結果、プライマリワインドコイルの最小曲げ力の平面はプライマリワインドコイルの全長に沿って変化する。したがって、コイルの展開形状を非常に密に充填された形態にすることができ、治療用の血管閉塞コイル、血栓除去具、または他の治療用デバイスとしてコイルを使用するときに、対称的な断面を有するコイルと比較して充填の割合を高めてパッキングの密度を高められる。別の態様では、プライマリワインドコイル内部空間を画成し、プライマリワインドコイルの内部空間に軸方向部材を配置して、プライマリワインドコイルの縦軸に沿って延びる追加部材の伸縮耐久性を向上させることができる。その結果、プライマリワインドコイルを引き込み可能な血栓除去具として使用することができる。軸方向部材は、例えば、伸縮耐久性のあるプラスチック糸またはニチノールなどの金属で形成することができ、また緩和した状態でセカンダリ形状を有するように構成することができる。
【0009】
本発明による血管閉塞コイルの作成時に使用されるマンドレルを形成する方法では、マンドレルは、縦軸を横切る少なくとも一つの軸に沿った細長い非円形の断面形状を有するように形成される。少なくとも一つの横軸は、縦軸に沿って歳差運動、すなわち縦軸に沿って前進しながら縦軸の周りを回転する。マンドレルの一つの好適な構成では、二つ以上の平行なワイヤのストランドが縦軸の周りでらせん状にねじられて、多重らせん形状の外部表面を有する多重らせんマンドレルを構成する。好適な態様では、二つ以上の平行なストランド材料をねじるステップは、縦軸の周りで平行なストランド材料をねじり、二重らせん形状のマンドレルを形成することを含む。同様に、三つ以上のストランドを縦軸の周りでねじって、三角形、四角形、または他の断面を有するマンドレルを作成することができる。別の態様では、マンドレルを形成するためにねじられる複数のストランド材料は、例えばスプリングワイヤ、典型的にはステンレス鋼ワイヤなどの金属ワイヤで形成されるが、他の同様の金属材料またはポリマー材料が適している場合もある。複数のストランド材料は、約0.0035インチから約0.055インチの直径を有していてもよく、したがってマンドレルは約0.0070インチから約0.11インチの直径を有していてもよい。本発明の別の態様では、マンドレルは所望の非円形断面を持つ単一のワイヤで構成されてもよく、このときワイヤマンドレルはその縦軸の周りにねじられて最終的に所望のマンドレル形状を形成する。同様に、マンドレルを長手方向のピッチが変化するように構成し、コイルの一部の曲げモーメントが他の部分と比較して変化するプライマリコイルを形成することができる。
【0010】
本発明による血管閉塞コイルを形成する好適な方法の一つでは、マンドレルの全長の周りに柔軟性のある金属ワイヤを巻き付けて、マンドレルの外部表面の多重らせん形状に対応するねじれた形状を有するプライマリワインドコイルを形成する。別の態様では、プライマリワインドコイルの縦軸に沿ってプライマリワインドコイルの内部空間の中に軸方向部材を挿入して、伸縮耐久性を与えるか、またはプライマリワインドコイルを血栓除去具として用いるのを容易にすることができる。
【0011】
本発明は、体腔を閉塞するのに望ましい幅広い特性を提供するように調整可能であるコイルの構造、製造方法、およびコイル作成用のマンドレルの製造方法を提供する。これには、空洞をより大きく塞ぎセカンダリ形状の形成時の挙動を改善することを含み、セカンダリ形状の形成時に「不揃いに割れ(random break)」て一様でない動脈瘤などによりたやすく対応することを含む。本発明のこれらの利点および他の利点は、図面とともに、以下に述べる本発明の原理を例示する詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明にしたがい、ねじれた形状を有するプライマリワインドコイルを形成するためのねじれたマンドレルの一形態を作成する準備として、スピンドルにおける一組の平行コアストランドの配置およびねじりを示した模式図である。
図1B】本発明にしたがい、二重らせん形状を有するねじれたマンドレルの全長の周りに柔軟な金属コイルワイヤを巻き付けて、縦軸に沿って歳差運動(precessing)する横軸を持つねじれ形状を有するプライマリワインドコイルを形成する様子を示した模式図である。
図2図1Bの二重らせん形状を有するねじれたマンドレルの長さ方向の拡大図である。
図3A】本発明にしたがった、コイルの縦軸に沿って歳差運動する一つの横軸にねじれパターンを付与するために、図1Bの二重らせん形状を有するねじれたマンドレルの周りに巻き付けられるプライマリワインドコイルの長さ方向の側面図の模式図であり、説明のために間隔を広く示してある図である。
図3B】本発明にしたがった、ねじれたマンドレルの周りに巻き付けられたプライマリワインドコイルであって、マンドレルによってコイルに付与される縦軸に沿って歳差運動する一つの横軸に沿った細長いねじれパターンを有するきつく巻き付けられたプライマリワインドコイルの長さ方向を、マンドレルを取り除いた状態で示す側面図である。
図4】円筒状のセカンダリ形状に形成されたねじれ形状を有するように形成される、プライマリワインドコイルの側面図である。
図5図3Bの5−5線に沿った断面図であり、縦軸に沿ったプライマリワインドコイルの横軸の歳差運動を示す図である。
図6図3Bの6−6線に沿った断面図であり、縦軸に沿ったプライマリワインドコイルの横軸の歳差運動を示す図である。
図7図3Bの7−7線に沿った断面図であり、縦軸に沿ったプライマリワインドコイルの横軸の歳差運動を示す図である。
図8図3Bの8−8線に沿った断面図であり、縦軸に沿ったプライマリワインドコイルの横軸の歳差運動を示す図である。
図9】プライマリワインドコイルの内腔の中に挿入される細長いストランド状のマンドレルを示す、図5と同様の断面図である。
図10】動脈瘤の一般的ならせん状セカンダリ形状モデルを塞ぐために挿入された従来のプライマリワインドコイルの側面図である。
図11】動脈瘤の一般的ならせん状セカンダリ形状モデルを塞ぐために挿入された、ねじれた長手方向形状を有するように形成されたプライマリワインドコイルの側面図であり、本発明のコイルを用いて動脈瘤をより大きく塞いでいる様子を示す図である。
図12】本発明にしたがった、縦軸に沿って歳差運動する二つの横軸に沿った細長いねじれ形状を有するきつく巻かれたプライマリワインドコイルの長さ方向の側面図である。
図13】本発明にしたがった、縦軸に沿って歳差運動する二つの横軸に沿った細長いねじれ形状を有する図12のプライマリワインドコイルの斜視図である。
図14】本発明にしたがった、縦軸に沿って歳差運動する二つの横軸を示すねじれた形状を有する図12のプライマリワインドコイルの端面図である。
図15図12と同様に縦軸に沿って歳差運動する二つの横軸に沿った細長いねじれ形状を有するきつく巻かれたプライマリワインドコイルの長さ方向の側面図であり、プライマリワインドコイルの一つの巻きピッチとサイクルピッチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
限定のためでなく例示のために提供される図面に示されているように、本発明は、図1B図3A図12−15に示すような、ねじれたコイルパターンを有するプライマリ・ワインド・フレキシブル金属ワイヤコイル10を提供する。図1Aおよび図1Bを参照して、本発明の方法によると、例えば金属または金属合金で形成された柔軟性のあるワイヤ12などの柔軟な材料で作られた細長いストランドを、中心縦軸を有する細長い多重らせん構造すなわちねじれたマンドレル14の周りに巻き付けることによって、プライマリワインドコイルに対してねじれたコイルパターンを付与することができる。図1Aに示す一つの好適な形態では、細長い多重らせんすなわちねじれたマンドレルは、例えば、一組の平行なコアストランド材料18、20などの複数の平行なコアストランドから形成することができる。これらは、マンドレルの縦軸に周りに巻き付けられる、すなわちらせん状にねじられる。これによって、図1Bよび図2に示すように、マンドレルの縦軸に沿ってその周りにねじられた二つの平行なコアストランドからなるねじれたらせんすなわちスパイラルとしてマンドレルが形成されるとき、二重らせんなどの多重らせん形状がマンドレルに与えられる。図1Aおよび図1Bに示すように、平行なコアストランド18および20の両端は回転軸の対向するチャック19に固定されてねじられ、マンドレルに対して所望のねじれサイクルピッチが付与される。
【0014】
共にねじられるマンドレルのコアストランドの材料は、典型的にはステンレス鋼スプリングワイヤなどの円形の金属ワイヤであるが、マンドレルのコアストランドは、例えばポリエチレンなどのポリマー材料で作成されてもよい。多重らせん形状のねじれたマンドレルは、平行な円形コアストランドのねじられたペアで予め形成されていてもよい。例えば、コアストランドのそれぞれは直径が約0.0035〜0.005インチの大きさであり、したがってマンドレルの直径は約0.007〜0.010インチになる。またはコアストランドは直径が0.055インチの大きさであり、したがってマンドレルは約0.11インチになる。
【0015】
コイルのプライマリワインドは、白金線、またはプラチナ−タングステン等のプラチナ合金などの柔軟性がある材料でなる細長いストランドを巻き付けることで、ねじれたマンドレル上に形成することができる。マンドレルに沿って長手方向に1インチ当たり柔軟な金属ワイヤが典型的に約500回、ねじれたマンドレルの全長に沿って巻き付けられた、例えば約0.0015〜0.002インチの外径を有するプラチナ−タングステン合金(PT−W)ワイヤ、または約0.0015〜0.002インチの外径を有するプラチナワイヤによって、プライマリワインドコイルが形成されてもよい。このような多重らせんのねじれたマンドレルの周りに細長い柔軟なストランドを巻き付けることによって、図3Bに示すように、全体的にねじれた形状を有するプライマリワインドコイル、すなわちねじれたマンドレルの多重らせん形状のパターンに対応するパターンを有するプライマリワインドコイルが得られる。図5図8に示すように、得られるプライマリワインドコイルは、縦軸を横切る横軸21に沿った細長い非円形の断面形状を有する。横軸は縦軸に沿って歳差運動し、同じく縦軸の周りに歳差運動する関連する曲げモーメントをプライマリワインドコイルに与える。この方法で形成されるプライマリワインドコイルの断面形状は、例えば楕円形または長円形であってもよい。したがって、有利なことに、プライマリワインドコイルのねじれた形状またはパターンにより、プライマリワインドコイルに対して、本明細書で最小曲げ力(minimum bending force)の平面として定義される変化する曲げモーメントが与えられる。最小曲げ力は、プライマリワインドコイルに沿って異なる方向または異なる平面で変化する
【0016】
図示しないが、マンドレルは、円形断面のワイヤによって全体が形成されたマンドレルについて本明細書で説明した特性を付与するべく縦軸に沿ってねじられた、楕円形、三角形、または他の断面形状のワイヤで形成されてもよいことは、当業者には理解されよう。
【0017】
図4に示すように、例えば円筒形のセカンダリ形状などのセカンダリ形状22を有するコイルは、例えば適切な円筒形マンドレル(図示せず)の周りにプライマリワインドコイルを巻き付けて、熱を用いて円筒形マンドレルの円筒形状をコイルにセットすることによって形成されてもよい。代替的に、図10および図11に示すように、セカンダリ形状は球形または回転楕円体のセカンダリ形状であってもよい。これらは、適切な球形または回転楕円体のマンドレル(図示せず)の周りにプライマリワインドコイルを巻き付け、熱を用いて球形または回転楕円体マンドレルのセカンダリ球体形状をコイルにセットすることによって形成されてもよい。加えて、図9に示すように、例えばニチノールなどの成形されたまたは非成形のワイヤなどの素材でなる細長いストランド23、または、例えばポリグリコール酸あるいはポリプロピレンなどのポリマー材料で形成された伸縮耐久性のある部材を、全体的に管状の形をしたプライマリワインドコイルの内腔の中に挿入してプライマリワインドコイルを強化し、より大きな伸縮耐久性をコイルに付与してもよいし、または例えば引込み可能な(retractable)血栓除去具(clot remover)としてプライマリワインドコイルを使用できるようにしてもよい。
【0018】
セカンダリ円筒形状を持つコイルの例示的な寸法を以下の表に示す。
【表1】
【0019】
次に図10を参照すると、図10は、セカンダリ形状を持たない対称的なプライマリコイルを用いて動脈瘤を塞ぐときに、ガラス上に形成される例示的な動脈瘤の充填の様子を示す。図から分かるように、プライマリコイルが長軸の周りに対称的であるために、動脈瘤の内部でコイルが層を形成し、その結果動脈瘤の充填に空洞ができてしまっている。図11は、本発明のコイルを用いるとき、同一タイプの動脈瘤モデルについて充填率が改善される様子を示す。本発明のコイルは、コイルの縦軸に沿って曲げモーメントが歳差運動するために「不揃いに割れる(random break)」という特性を有しており、その結果動脈瘤の「充填率」が高くなる。また、この特性により、不規則な形状を持つ動脈瘤または他の体腔の治療における柔軟性を高められる一方で、単一タイプのコイルを用いて治療を実現することが可能になる。
【0020】
図12図15を参照して、柔軟な材料34の細長いストランドで形成された丸い角を有する略三角形である一連の複数のリング33を結合することによって、または、中心縦軸16を有する細長い多重らせんのすなわちねじれたマンドレルの周りに、柔軟性のある材料34の細長いストランドを巻き付けることによって、ねじれたコイルパターンをプライマリワインドコイル32に与えることができる。柔軟な材料34は、例えばプラチナ線やプラチナ−タングステンなどのプラチナ合金等の金属または金属合金で形成された柔軟性のあるワイヤなどである。そして、縦軸に沿って歳差運動し略三角形の断面形状と丸い角とを有するねじれ形状と、所望のねじれサイクルピッチとが、プライマリワインドコイルに与えられる。マンドレルの長手方向にインチ当たり典型的に約20回だけ柔軟性のある金属ワイヤがねじれたマンドレルの全長の周りに巻き付けられた、例えば約0.0015〜0.002インチの外径を有するプラチナ−タングステン合金(PT−W)ワイヤによって、または約0.015〜0.002インチの外径を有するプラチナワイヤによって、プライマリワインドコイルを形成してもよい。例えば、プライマリワインドコイルは、約13〜14度の回転角で約0.0016インチのピッチで巻き付けられた約0.0015インチの直径を有するワイヤについて、サイクル当たり約8〜9巻きのねじれサイクルピッチを有していてもよい。
【0021】
図13図14に示すように、この好適な実施形態によるプライマリワインドコイルは、プライマリワインドコイルの縦軸に対してある角度を持つ横軸(例えば、36、38)に沿って引き伸ばされた非円形の断面形状を有している。横軸は縦軸に沿って歳差運動をし、同じく縦軸の周りに歳差運動する二つの関連する曲げモーメント(縦軸の非対称性のために、一方は他方よりも曲げに対する抵抗がある)をプライマリワインドコイルに対して与えている。この方法で形成されたプライマリワインドコイルの断面形状は、例えば、通常は角の丸い略三角形である。したがって、有利なことには、プライマリワインドコイルのねじれた形状すなわちパターンは、プライマリワインドコイルに沿った異なる方向または異なる平面で相違する二つの曲げモーメントをプライマリワインドコイルに付与している。
【0022】
上述のように、例えば、円筒形、円錐形、球形または回転楕円体のセカンダリ形状、またはこれらの組合せなどのセカンダリ形状を有するコイルへと、プライマリワインドコイルを形成してもよい。また、例えばニチノールワイヤなどの成形されたまたは非成形のワイヤなどの素材である細長いストランド、あるいは例えばポリグリコール酸やポリプロピレンなどのポリマー材料で形成された伸縮耐久性のある部材を、概して管形状のプライマリワインドコイルの内腔の中に挿入してプライマリワインドコイルを補強し、コイルの伸縮耐久性を補助し、または例えば引き出し可能なステントや血栓除去具としてプライマリワインドコイルを用いることを可能にしてもよい。
【0023】
本発明の特定の形態を例示し説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく様々な修正をなしうることは上記記載から明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲によるものを除き、本発明を限定することは意図していない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15