特許第5860700号(P5860700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5860700蒸気圧縮サイクルを提供するシステム、及び蒸気圧縮サイクルを制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860700
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】蒸気圧縮サイクルを提供するシステム、及び蒸気圧縮サイクルを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20160202BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20160202BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   F25B1/00 101E
   F25B1/00 396D
   F25B27/00 H
   F25B1/00 101Z
   F25B1/00 321C
   F25B13/00 351
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-539469(P2011-539469)
(86)(22)【出願日】2009年12月2日
(65)【公表番号】特表2012-510605(P2012-510605A)
(43)【公表日】2012年5月10日
(86)【国際出願番号】NO2009000414
(87)【国際公開番号】WO2010064923
(87)【国際公開日】20100610
【審査請求日】2012年11月13日
(31)【優先権主張番号】20085016
(32)【優先日】2008年12月2日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】511133369
【氏名又は名称】ヴァルメパンペン エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100072822
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100123180
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 克則
(74)【代理人】
【識別番号】100089897
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正
(74)【代理人】
【識別番号】100137475
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 建
(74)【代理人】
【識別番号】100160266
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140028
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 義光
(74)【代理人】
【識別番号】100166349
【弁理士】
【氏名又は名称】帯包 浩司
(72)【発明者】
【氏名】ホルム、ペル エリック
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−050050(JP,A)
【文献】 特開2004−257586(JP,A)
【文献】 特開平05−034033(JP,A)
【文献】 特開2002−106963(JP,A)
【文献】 特開2000−111196(JP,A)
【文献】 特開昭61−149759(JP,A)
【文献】 特開2007−327671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00,6/04
F25B 13/00
F25B 27/00
F25B 30/02
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒としてCO2を備え二つの個別の加熱作動モードを備えた蒸気圧縮サイクルを提供するシステムにおいて、
圧縮機(1)と、
圧縮機(1)の下流側の第一のガス冷却熱交換器(2h)と、
前記第一の熱交換器(2h)の下流側の第二のガス冷却熱交換器(2r)と、
前記第二の熱交換器(2r)の下流側の第三のガス冷却熱交換器(2p)と、
前記第三の熱交換器(2p)の下流側の第一の減圧装置(5)と、
前記第一の減圧装置(5)の下流側において熱貯め装置(7)を備えた第四の熱交換器(6)と、
前記第四の熱交換器(6)の下流側の第二の減圧装置(3)と、
低い温度と高い温度の間を循環する外部温度に晒され前記第二の減圧装置(3)の下流側にあり、前記圧縮機(1)に接続された、冷媒を蒸発する第五の熱交換器(4)と、
遮断弁(8)を備え、前記第五の熱交換器(4)を迂回し、第一の端部において前記第四の熱交換器(6)と前記第二の減圧装置(3)の間に接続され、第二の端部において前記第五の熱交換器(4)と前記圧縮機(1)の間に接続されたバイパス配管と、
少なくとも前記遮断弁(8)並びに前記第一の減圧装置(5)および前記第二の減圧装置(3)を制御する少なくとも1個の制御装置(14)と、を含み、
前記第一の熱交換器(2h)が高温の水タンク(9h)に接続され、
前記第二の熱交換器(2r)が室内暖房システムに接続され、
前記第三の熱交換器(2p)が低温の水タンク(9p)に接続されていることを特徴とする蒸気圧縮サイクルを提供するシステム。
【請求項2】
加熱モードと冷却モードの間で切り換えるために前記圧縮機(1)の入口および出口に亘って四方弁(12)を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
太陽熱源が前記熱貯め装置(7)と高温の水タンク(9h)または低温の水タンク(9p)に接続されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて蒸気圧縮サイクルを制御する方法であって、第一のモードの加熱作動と第二のモードの加熱作動との間の切り替えを可能とする方法において、前記第一のモードの作動では、
第一の熱交換器(2h)と、第二の熱交換器(2r)と第四の熱交換器(6)からの熱を放出することによって、前記第一、第二、および第四の熱交換器ガス冷却器として作動し、前記第四の熱交換器(6)が熱を熱貯め装置(7)に放出する段階と、
第五の熱交換器(4)を蒸発器として作動する段階と、を含むことを特徴とする蒸気圧縮サイクルを制御する方法。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて蒸気圧縮サイクルを制御する方法であって、第一のモードの加熱作動と第二のモードの加熱作動との間の切り替えを可能とする方法において、前記第二の作動モードでは、
第二の熱交換器(2r)および第三の熱交換器(2p)からの熱を放出することによって、前記第二と第三の熱交換器ガス冷却器として作動する段階と、
第四の熱交換器(6)が熱貯め装置(7)から熱を吸収する蒸発器として作動する段階と、を含むことを特徴とする蒸気圧縮サイクルを制御する方法。
【請求項6】
熱源の温度(T2)およびその日の時間に応じて二つのモードの作動を決定する段階を更に含むことを特徴とする請求項4または5に記載の蒸気圧縮サイクルを制御する方法。
【請求項7】
前記システムが前記圧縮機(1)の入口および出口に亘って四方弁(12)を含み、前記方法が前記四方弁(12)を起動させることによって加熱モードと冷却モードの作動の間で切り替える段階を更に含むことを特徴とする請求項4から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
太陽熱源が前記熱貯め装置(7)と高温の水タンク(9h)及び低温の水タンク(9p)とに接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空調ユニットあるいはヒートポンプのような蒸気圧縮サイクルを提供するシステムであって、蒸発器あるいはガス冷却器(凝縮器)のいずれかとして作用する二元機能(dual function)を有する熱エネルギリザーバすなわち貯め装置(storage)を備え、運転モードが、熱の発生を最適化し動力消費を最小化するように全て調節される、エネルギ源の循環温度(recurring temperature)の温度レベル、エネルギ貯め装置の温度、および熱必要量によって決まるようなシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却、空調あるいはヒートポンプ用の蒸気圧縮サイクルのシステムが基本的に図1に示されている。本システムは圧縮機1と、凝縮熱交換器2と、絞り弁、すなわち減圧装置3と、蒸発熱交換器4とから構成されている。これらの構成要素は、その中を冷媒が循環している閉鎖流れ回路11に接続されている。蒸気圧縮サイクル装置の作動原理は以下の通りである。冷媒の圧力と温度は、それがガス冷却器/凝縮器(cooler/condenser)2へ入る前に圧縮機1によって高められ、ガス冷却器/凝縮器において冷却および(または)凝縮され熱を放出する。次いで、高圧の液体は減圧装置3によって蒸発器の圧力まで減圧される。蒸発器4において、冷媒は沸騰し、その周辺から熱を吸収する。蒸発器における蒸気は圧縮機1中へ吸引され、サイクルを完了する。
【0003】
従来の蒸気圧縮サイクルのシステムは、全体的に亜臨界圧力(sub−critical pressure)で作動する、(例えばR134Aのような)冷媒を使用している。冷媒として多数の諸々の物質あるいは物質の混合物を使用しうる。流体の臨界温度は凝縮が発生する上限を設定するので、冷媒の選択は色々な要因の中でも特に凝縮温度によって影響される。妥当な効率を維持するためには、凝縮温度より20−30°C高いところに臨界温度を有する冷媒を使用することが通常望ましい。新規な或るシステムは超臨界温度の近傍で作動するが、従来のシステムの設計や作動では近臨界温度(near critical temperatures)は避けられている。このことは例えば英国特許出願第2414289A号公報(GB 2414289 A)および国際特許出願第2005/106346A1号公報(WO2005/106346 A1)に記載されているヒートポンプの場合である。これらの特許出願の双方とも冷媒としてR410Aの使用を述べている。欧州特許第0424474B2号公報(EP 0 424 474 B2)にはR744(CO2)を用いた遷移臨界ヒートポンピング(transcritical heat pumping)の調節方法が記載されている。
【0004】
本技術は文献に詳細に扱われており、多くの特許がこの分野の技術を網羅している。今日の冷媒の温室効果ガスの影響は、冷媒は終局的に大気中へ漏出するので、環境に対する脅威を呈している。大気中へ解放された1キログラムのHFC冷媒R410Aは地球温暖化への影響において1830キログラムのCO2に相当する。R744(CO2)は1の地球温暖化係数(global warming potential)を有しており、一方通常使用されているHFC冷媒は1700から5000キログラム以上までのCO2に相当する。従って、COP(成績係数)が対比しうるHFC冷媒と同等であると仮定すれば、もしもR744が使用できるならば環境にとって有利である。エネルギ源からのCO2放出は増えるので、R744を使用することによるより低いCOPが有利性を低減させる。或る国では冷凍過程に使用する現在のHFCsのような強力な温室効果ガスの使用の将来の禁止を予見した法制化を行なっている。ノルウエーやその他の数カ国においてはHFCの使用に環境税が既に課せられている。
【0005】
R744(CO2)を使用するヒートポンプのCOPはその臨界点が31.2℃と低いので典型的な家庭暖房モードには不向きである。このことは、「空間暖房および熱水加熱の組み合わせのための住宅向きCO2ヒートポンプシステム(Residential CO2 heatpump sytems for combined space heating and hot water heating)」(ISBN 82−471−6316−0)という表題のジョーン スターン(Jorn Stene)の博士論文に詳しく述べられている。R744冷媒のヒートポンプを作動させるエネルギ源からのCO2放出の増加はHFC冷媒の大気へ潜在的な解放による温室効果ガスの影響を下げることよりも重要であるかもしれない。スターン(Stene)による博士論文によれば、高圧高温のR744ガスは、良好なCOPを達成するためにはCO2の臨界温度(31.2℃)よりかなり下回る利用可能な熱は受け入れられない。このことは、室内の温度が20℃以上に保たれており、空間を暖房するために使用される媒体(水または空気)が少なくとも30℃の温度を有する必要のある場合には熱伝達のための合理的な温度差を有することが困難となる。このように、冷媒から熱分配媒体まで熱が流れるためには、冷媒の温度は30℃以上であるべきである。超臨界状態にある圧縮機の高圧側からの高温のガスをCO2の臨界点より十分低いレベルまで冷却するとヒートポンプの効率を増し、熱が利用可能である場合には特にそうなる。
【0006】
米国特許第4,012,920号公報(US 4,012,920)は、熱が室内空気、外気および熱貯め流体(storage fluid)の間のいずれかの組合せにおいて交換されうるように、蒸発器あるいは凝縮器のいずれかとして作動する3個のコイルを有し、それぞれ、凝縮器あるいは蒸発器として作動する残りの2個のコイルのいずれか一方と接続する可逆性のヒートポンプを開示している。しかしながら、3個のコイルの配備は冷却モードあるいは暖房モードにおいて二つずつ一緒に作動できるだけであって、次の局面の作動のために熱貯め装置が準備されたとき、本発明の原理に対して極めて重要である、ガス冷却器/凝縮器として前記コイルの中の2個が同時に機能するように作動することは全くない。
【0007】
米国特許第3,523,575号公報(US 3,523,575)は冷却モードおよび暖房モードにおいて双方に役立つよう作動しうる熱貯め容器を備えた可逆性ヒートポンプを開示している。しかしながら、このヒートポンプは2個のコイルを有するのみであり、貯められたエネルギはヒートポンプのための単独熱源として作用するのではなくて、蒸発/凝縮工程での助勢を単に目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許出願第2414289A号公報
【特許文献2】国際特許出願第2005/106346A1号公報
【特許文献3】欧州特許第EP 0424 474B2号公報
【特許文献4】米国特許第4,012,920号公報
【特許文献5】米国特許第3,523,575号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ISBN 82−471−6316−0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蒸気圧縮サイクルからの出力を最大化し、蒸気圧縮サイクルに対する一次エネルギ入力を最小化することに向けてたゆまない努力がなされている。当該システムの構成要素を更に改良すること、例えば凝縮および蒸発熱交換器における熱伝達効率の向上、圧縮機の損失の低減、絞り損失(throttling losses)の低減は効率の改良がなされる領域である。
【0011】
本発明の目的は、外部の熱源の温度が低い場合熱貯め装置を熱源として使用し、外部の熱源の温度が高い場合熱貯め装置を加熱(負荷)し、熱貯め装置が熱源として供される場合清浄水を予熱するように配備することによって冷媒のガス冷却/凝縮を増大することにより蒸気雲圧縮サイクル(vapor cloud compression cycle)の全体的な効率を向上させる、新規で簡単かつ効果的な方法を提供することである。
【0012】
本発明は特に、遷移臨界冷却における作動流体としてCO2(R744)を使用する蒸気圧縮サイクルのために構成されている。
【0013】
更に別の本発明の目的は、あるときには空気とファンのノイズを除去することによってヒートポンピング作動からのノイズを低減し、エネルギ源として空気を使用する蒸発器の除氷時間を短縮し、より安定した圧縮機の負荷によって圧縮機の寿命を延ばすことである。戸外のヒートポンプ装置のシャーシに置かれることがよくある電気抵抗式ヒータは余り使用されなくなる。何故なら熱貯め装置が蒸発熱を提供する作動モードにおいてそれはオフとされうるからである。更に、太陽の熱エネルギを利用する実行可能性を増すことも目的である。本発明は、太陽熱収集器(thermal solar collectors)の効率を、これらが当該システムに低い水温で利用可能な熱を送ることができるので、これらが熱貯めリザーバすなわち熱貯め装置を加熱しているときに向上させる。更に別の本発明の目的は消費される温水のより大きな部分を加熱することによってヒートポンプの作業を増大させることである。二槽タンク内の温度レベルが相違する二槽タンクシステム(two tank system)を本システムに組み込むことが好ましい。尤も、その他のタンク配置を利用することも可能である。二元温度タンクシステム(dual temperature tank system)は、全体の圧縮サイクルにとってそれが有利である時には一方のタンクにおいて清浄な熱水(sanitary hot water)の一部を予熱し、そして清浄な温水が消費されるときにこの水を他のタンクからの熱水と混合するという選択を提供する。
【0014】
本発明は熱貯め装置と冷媒の間のエネルギの流れ、清浄な熱水を加熱する時間、室内暖房を制御すなわち調節すること、およびいつ蒸発熱が環境から取り込まれるかを制御することにも関する。この調節は典型的には弁の位置を操作することによる弁調節、および温水の生成を調節することによって実行される。調節は環境の循環温度のパターン、熱貯め装置のエネルギレベル、および室内暖房および温水の必要性に基づいて行われる。本システムを制御すなわち調節するための制御装置は普通の制御回路およびセンサを含みうる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明は蒸気圧縮サイクルを提供するシステムに関するものである。本システムは、圧縮機、圧縮機の下流側における第一の熱交換器、第一の熱交換器の下流側における第二の熱交換器、第二の熱交換器の下流側における第三の熱交換器、および第三の熱交換機の下流側における第一の減圧装置、第一の減圧装置の下流側において熱貯め装置すなわち熱リザーバを備えた第四の熱交換器、第四の熱交換器の下流側における第二の減圧装置、第二の減圧装置の下流側における第五の熱交換器を備えた流れループ(flow loop)すなわち流れ回路を含み、該流れループは次いで圧縮機に接続され、ループを完成する。減圧装置はヒートポンプおよび冷却回路の領域内で屡使用される絞り作業のための通常の装置であり、固定あるいは調整可能である膨張弁を含みうる。膨張弁は、例えばダイアフラム式電磁弁、直立閉止弁(straight close valve)および直角閉止弁(right angle close valve)のような熱力学的エネルギ膨張弁を含みうる。
【0016】
遮断弁を備えたバイパス配管は第五の熱交換器を迂回し、第一の端部において第四の熱交換器と第二の減圧装置との間で、第二の端部において第五の熱交換器と圧縮機との間で接続されている。制御装置は少なくとも遮断弁と減圧装置を制御する。
【0017】
第一の熱交換器は高温水タンクと熱交換関係にあり、第二の熱交換器は空間(室内)暖房装置と熱交換関係にあり、第三の熱交換器は清浄水を予熱するために水タンクと熱交換関係にすればよい。
【0018】
加熱モードと冷却モードとを切り換えるために四方弁を圧縮機の入口および出口に亘って位置させることができる。太陽熱パネルを熱貯めタンク並びに、清浄な熱水タンクの一方あるいは双方に接続しうる。
【0019】
冷媒はCO2としうる。
更に、本発明は、前述したシステムによる蒸気圧縮サイクルを制御する方法であって、第一の減圧装置を開放し、遮断弁を閉鎖し、第二の減圧装置を調節することによって第一の加熱モードを提供し、第二の減圧装置あるいはバイパス弁を閉鎖して第一の減圧装置を調節することによって第二の加熱モードを提供する方法を含む。
【0020】
本システムが第一と第二の加熱モードの間の切り替えを可能とすることは重要な特徴である。前記二つのモードは一般的に戸外の温度およびその日の時間によって決められる。
【0021】
熱貯め装置に接続された熱交換器は、第五の熱交換器の周囲温度が低レベルにあるときは蒸発器として作用し、前記周囲温度が高レベルにあるときはガス冷却器として作用しうる。
低温水タンクにおける清浄水の予熱は蒸発器としての熱貯め装置の使用に対応すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の蒸気圧縮サイクルのための装置を示す。
図2】本発明のプロセスサイクルを示す。
図3】オスロの冬期の戸外温度の典型的なデータを示す。
図4】室内暖房、熱水の加熱、熱水の予熱および清浄な温水の取り出しのための本発明による実施例を示す。
図4b】室内暖房、熱水の加熱、熱水の予熱および清浄な温水の取り出しのための本発明による実施例を示す。
図5】プロセスサイクルを例示するためのCO2の対数pH線図を示す。
図6】プロセスサイクルを例示するためのCO2の対数pH線図を示す。
図7】二槽タンクの二元温度による方法における水の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2を参照して本発明を以下詳細に説明する。
【0024】
閉鎖された作動流体回路は5個の熱交換器が直列で接続されている冷媒流れループ11から構成されている。この5個の熱交換器には2h、2r、2p、4および6の番号が付してある。熱交換器6と4は、前記流れループの諸々の区画における圧力および温度を制御できるようにした、それぞれ5および3の番号を付した減圧装置を上流側に有している。この流れループは更に、遮断弁8を備えたバイパス配管と、圧縮機1を有している。第四の熱交換器6はT1の温度であるタンク/閉鎖区画室7にある熱貯め媒体と冷媒が熱交換できるようにする。
【0025】
調節装置14は図示した流れループを二つのモードの加熱作業に制御する。減圧装置5,3の調整およびバイパス配管における弁8の位置(閉鎖あるいは開放)によって作動モード1による加熱あるいは作動モード2による加熱を使用すべきかを決める。
【0026】
作動モード1による加熱。図2参照
本発明による作動モード1での加熱および作動モード2での加熱は当該装置の目的が環境/建物/水などを加熱することである場合に使用される。作動モード1での加熱は第五の熱交換器4の外部環境の温度T2がそのサイクルにおいて高レベルである場合に使用される。もしも戸外の大気が外部環境(熱源として空気が使用される)とすれば、戸外の空気温度T2は(常にというわけではないが)傾向的には夜間よりも昼間の方が高いので、日中は作動モード1での加熱が恐らく使用される。(図3はオスロの典型的な冬期の間に毎時測定された温度を示す)。第四の熱交換器の上流側にある減圧装置5は全開に設定することができ、その場合バイパス配管の遮断弁8自体は閉鎖される。第二の減圧装置3は第一の熱交換器2hと、第二の熱交換器2r、第三の熱交換器2pおよび第四の熱交換器6における圧力レベルを調節する。第五の熱交換器4では冷媒が沸騰する。圧縮機1は冷媒のガスの圧力と温度を増大させる。圧縮機1の下流側において、冷媒は第一の熱交換器2hの熱を高温タンクへ、第二の熱交換器2rの熱を熱分配媒体に放出する。この媒体は水あるいは空気としうる。次いで、冷媒は全開の第一の減圧装置5を通過し、第四の熱交換器6へ流入し、そこで冷媒の熱は熱貯め装置7における水(あるいは氷)でよい熱貯め媒体へ放出される。次いで、高圧の冷媒は第五の熱交換器4へ流入する前に第二の減圧装置3において絞られ、流れ回路が完了する。
【0027】
作動モード2での加熱。図4参照
第五の熱交換器4の外部環境の温度T2がそのサイクルにおいて低い点にあるとき作動モード2が使用される。もしも外気が第五の熱交換器4の熱源として使用されるとすれば、図3に示す夜間時間において作動モード2が多分使用される。第二の減圧装置はこのとき閉鎖され、バイパス配管の遮断弁8は開放している。(もしも外気温度T2が蒸発を助長するに十分高いとすれば、前記遮断弁8は閉鎖され、第二の減圧装置は全開としうる。)第一の減圧装置5はそれの上流側にある熱交換器の圧力レベルを調節している。これらの弁の位置によって冷媒を蒸発させるために熱貯め装置7にある媒体を熱源とする。第四の熱交換器6は熱貯め媒体が冷媒を沸騰させる熱源となるようにすることができる。圧縮機1はバイパス配管を介して第四の熱交換器6からの蒸気を吸引し、冷却サイクルにおいて冷媒をくみ出すにつれて冷媒ガスの圧力と温度を上昇させる。圧縮機1の下流側において、冷媒は第二の熱交換器2rおよび2pにおいて熱を放出する。冷媒の圧力および温度は、蒸発が行われる第四の熱交換器で凝縮するように第一の減圧装置5において絞られ、サイクルが完了する。
【0028】
二つのモードを使用することにおける利得
一昼夜を通しての24時間における前述の装置による利得は夜間の蒸発温度がT1からT2を引いた分増加していることである。もしも熱貯め装置における媒体が水であるとすれば、下限温度は約ゼロ℃となるように設計することができる。このことは熱貯め装置における水は、全ての水が凍って氷になるまではゼロ℃の温度であるからである。冬期における北半球では極めて通常でありうる5℃の温度差では、12.5パーセントのプロセスサイクルに対するCOPの改善が期待できる。(スターン(Stene)によれば、1℃の蒸発温度の上昇はCOPを2.5パーセント増大させる。)
【0029】
夜間に使用される第四の熱交換器6は、熱源として強制空気の流れを使用する第五の熱交換器4と比較して事実上無騒音である。人口密度の高い地域においては何れの装置を使用するにも夜を徹して静かであることが重要である。
【0030】
熱交換器のフィンが氷結することは、それが伝熱効率を下げ、かつ氷結が激しくなった場合に除氷が必要とされるため問題である。除氷はエネルギを消費し、水を生成し、配管における温度変化や弁の切り替え頻度の増加を意味するので当該設備の寿命にも影響を与えうる。本発明は、昼間までの除氷に関連する問題を低減する。
【0031】
好適実施例。図4
本発明の好適実施例が図4に示されている。本実施例は室内暖房装置(Rhd)に加えて2個の熱水タンク9h(27−65℃の熱水用)と9p(7−27℃の予熱用)と、三個の流量調節可能な循環ポンプPh(熱水用)、Pr(室内暖房用)、Pp(予熱用)を含む。2個の熱水タンクを使用する目的は、各作動モードに対して一つの温度レベルである二種類の温度レベルの熱水を個別に生成できるようにすることである。そうすれば、熱水の加熱は冷媒の流れ回路におけるその他の構成要素の物理的状態がこの目的に対して良好であるときに行うことができる。2個のタンクを使用することの別の利点は従来のタンクによる方法と比較してヒートポンプによってより多くの水が加熱されることである。図7は、暖められた清浄な水道水が低温の水タンクからの予熱した水によって調整した熱水タンクからの熱水から構成される、二元温度の2個のタンクによる方法と比較した従来のタンクによる方法によって加熱された水の量を示している。
【0032】
作動モード1による加熱。図4参照
作動モード1による加熱において、圧縮機1からの高温の冷媒ガスは第一の熱交換器2hを介して水タンク9hの底部から水タンク9hの頂部まで循環する水と熱交換関係にある。水は、冷媒の圧力および熱水の温度並びに循環速度に応じて約27℃から65℃−90℃まで加熱される。加熱容量は熱水の循環流量、圧縮機1の排出圧力および流量によって調節される。
【0033】
第一の熱交換機2hの下流側において、高温の冷媒ガスは第二の熱交換機2rにおける室内暖房用の調整流体(conditioning fluid)と熱交換関係にある。該調整流体の温度レベルは殆んどの場合、局部的な室内暖房系統に応じて27℃から45℃の間で変動する。加熱容量は調整流体の流量および冷媒の高温ガスの温度および流量によって調節される。
【0034】
高圧の冷媒ガスは次いで第三の熱交換器2pを貫流する。(このモードにおいては熱交換器2pには水の循環がないので)そこでは熱が放出されることはない。次いで、冷媒ガスは、第四の熱交換器6により熱貯め装置7にある媒体に高温の冷媒ガスが熱を放出する前に全開の減圧装置5を更に貫流する。バイパス配管の遮断弁8は閉鎖されたままである。第四の熱交換器6の下流側において、冷媒ガスは第二の減圧装置3を貫流し、そこで圧力が絞られ、その後液状の冷媒は第五の熱交換器4まで流れ、そこで冷媒ガスが圧縮機1中へ吸引される前に蒸発が行われて、サイクルを完了する。熱水および室内暖房の加熱用のエネルギは圧縮機の能力と適合するように調整される必要がある。一般的に、熱水タンク9h内の水の温度は作動モード1での加熱時間の間は設定点に保持すべきである。この作動モード1での加熱において、熱水が消費されるといつでもタンク9pからの予熱された水がタンク9hへ入る。熱水タンクが再度設定温度になるまで前記の予熱された水を加熱するために循環ポンプPhは熱交換器2hを通して循環を開始する。熱交換器2hからの冷媒の出口温度は第二の熱交換器2rの水/空気の入口温度より高くなるように循環流量が調節される必要がある。作動モード1での加熱の終了時点ではタンク9p内の水は可能な限り水道水の温度に近い温度になるように、すなわち全ての予熱された水は好ましくは消費済みであるように本システムは設計されるべきである。
【0035】
作動モード2での加熱。図4参照
作動モード2での加熱においては、遮断弁8は開放し、第二の減圧装置5は閉鎖し、減圧装置が作動する。このモードの作動においては、タンク7における熱貯め流体が熱源として供され冷媒を蒸発する。熱貯め流体の潜熱は第四の熱交換器6によって冷媒に移され、そこで液状の冷媒は沸騰して蒸気を形成する。その蒸気は圧縮機1中へ吸引される。圧縮機1は循環している冷媒ガスの圧力および温度を上げる。このモードの作動では循環ポンプPhはオフであるので、冷媒は熱を放出することなく第一の熱交換器2hを通過する。第一の熱交換器2hの下流側において、高温の冷媒ガスは第二の熱交換器2rにおける室内暖房用の調整流体と熱交換関係にある。前記調整用流体の温度レベルは殆んどの場合、局部的な室内暖房システムによって25℃から45℃の間で変動する。加熱容量は調整用流体の流量(ポンプPrの作動速度)と、冷媒の高温ガスの流量および温度によって調節される。次いで、冷媒ガスは第三の熱交換器2pを通過し、そこではタンク9pへの水がポンプPpによって循環されている。その水は熱交換器2pを経由してタンクの底部から循環し、そこで水が冷媒ガスと熱交換関係になりタンク9pの頂部へ戻る。このようにして水は約7℃の水道水の温度から約27℃まで予熱される。予熱速度はポンプPpの水流量によって調節される。タンク9pからの冷水の流れは冷媒の最大のガス冷却を達成するように調節される。そのことは清浄水を予熱するために作動モード2での加熱の全体作動時間を利用するように流量は調整されるべきであることを意味する。高圧の冷媒ガスは熱交換器2pを出た後、第一の減圧装置5において絞られ、その後液状の冷媒は第四の熱交換器6まで流れて、サイクルを完了する。
【0036】
夜間の終わりには、熱貯め媒体が水であったとすれば、熱貯め装置7における熱貯め媒体の温度は氷が形成されている可能性のあるレベルまで降下する。第四の熱交換器6において良好な熱伝達メカニズムがあれば、タンク全体が凍結しうる。
【0037】
本発明のこの実施例は、種々の作動モードにおいて循環装置Ph,PrおよびPpからの流れを制御することによって作動モード2での加熱時にガス冷却を提供しうることを示している。熱水タンク9hおよび9pを適当な寸法にすることによって通常の家族での住居に対して十分な日常の熱水を保証する。
【0038】
作動モード2での加熱において冷媒を沸騰させるために使用される媒体は水あるいはその他の相変化材料としうる。限定された容積に貯めうるエネルギの量を増大しまた安定した蒸発温度を得るために、エネルギ貯め装置7において液体から固体への相変化が促進されるべきである。水の融点は0℃であり、氷結エネルギは334kJ/kgである。300リットルのタンクは蒸発のために約28kWhのエネルギを含むが、それは通常のアパートには十分なはずである。しかしながら、その他のタンクを使用することも可能であり、その場合相変化は不要かもしれない。(室内/戸外の石油貯蔵タンクの通常のサイズ)である3000リットルのタンクは水が15℃からゼロ℃まで冷却される場合52.5kWhのエネルギを含む。
【0039】
熱貯め装置7における熱貯め媒体は作動モード1での加熱においてガス冷却を提供する。これは作動モード2においてT1>T2である限り利用可能な熱である。
【0040】
物理特性
図5は遷移臨界蒸気圧縮サイクルの圧力とエンタルピーの線図を示す。遷移臨界蒸気サイクルにおいて、圧縮機1(図1)から排出された高温ガスの圧力とエンタルピーは(図5の)aの状態にある。一定の圧力で、冷却剤、例えば熱交換器2における熱水に熱を放出した後、冷媒はbの状態まで冷却される。絞り弁3(図1)が、冷媒をcの状態(図5)として示されるように二相のガス/液体混合物までもってくる。絞り作業は一定のエンタルピーのプロセスである。冷媒は、第二の熱交換器4(図1)の出口において液相をdの状態(図5)まで蒸発させることにより、第二の熱交換器4(図1)において熱を吸収し、冷媒は圧縮機1(図1)に入って、サイクルを完了する。
【0041】
作動モード1での加熱。図5参照
作動モード1での加熱において、圧縮機1(図2)の出口における冷媒の状態はaのところにある。冷媒は第一の熱交換器2hの熱水に対して、および第二の熱交換機2r(図2)の室内暖房媒体に対して熱を放出し、第四の熱交換器6(図2)の入口において冷媒をbの状態にもってくる。冷媒は更に冷却され、熱貯め装置7(図2)における適当な媒体に熱を放出し、第四の熱交換器6(図2)の出口において冷媒をb′の状態にもってくる。絞り作業前の熱放出相(heat rejection phase)における冷媒の状態は次いでbからb′の状態まで移動する。エンタルピー差b−b′は熱貯め装置7(図2)に貯めうる冷媒の単位流量当たりのエネルギを表している。b′の状態から、冷媒はc′の点まで絞られる。c′の点は実際の温度(T2)における蒸発圧力および温度を表している。エンタルピーc′−cはb−b′と同等であり、貯められたエネルギが如何に環境から収穫されたかを示している。冷媒は第五の熱交換器4(図2)において熱を吸収し、圧縮機1へ入る前にc′の状態からdの状態まで移動し、サイクルが完了する。
【0042】
作動モード2での加熱。図6参照
図6は遷移臨界蒸気圧縮サイクルの対数の圧力エンタルピー線図を示す。作動モード2での加熱は点a、b″、c″、dで表示されている。温度T2(図2)が低点にあり、熱貯め媒体の温度T1が(熱貯め装置7における媒体がガスを冷却するために使用された後で)高い場合に、作動モード2での加熱が作動する。熱貯め媒体が水であり、温度T1が温度T2よりも高いはずであるとすれば温度T1は0°から20℃の間でありうる。圧縮機1(図2)の出口における冷媒の状態はaの状態である。第二の熱交換器2rにおいて熱を放出した後、冷媒の状態はbの点にあり、熱交換器2p(図2)を出ていく冷媒の状態はb″である。熱水を予熱することによって冷媒をbの状態からb″の状態までもってくる。第一の減圧装置5(図2)が一定のエンタルピーで冷媒の圧力をc″の点まで下げる。熱貯め装置7(図2)における媒体からの熱は第四の熱交換器6(図2)において冷媒を沸騰させるために使用され、冷媒をdの状態にもってくる。第五の熱交換器4(図2)は迂回されて、冷媒の状態はそれが圧縮機1(図2)に吸引される際はdの状態にあって、サイクルを完了する。次いで、熱交換器2pにおける熱水を予熱するためのエネルギはエンタルピーの差c−c″によって表される。
【0043】
c′の点は、T1>T2で熱交換器2pにおいて熱水の予熱が行われなかったとの想定で熱源がT2(図2)の温度にあるとした場合の蒸発圧力を示す。d′の点は圧縮機の入口における冷媒ガスの対応する状態である。
【0044】
この作動モードの利得は、蒸発温度がc′からcまで上げられ、従って(a−d′)−(a−d)により圧縮機の作業を低減しており、熱貯め装置から取り出されたエネルギはエンタルピー(d−c″)−(d−c′)だけ増大している。
【0045】
二槽タンクによる二元温度の熱水システムの利用。図4および図7参照
図7は、従来のタンク1個のシステムと比較して清浄な温水を供給するために二つの温度の2個のタンクを使用した時、40℃で使用するために100リットルの水を加熱する場合にヒートポンプによって加熱される水の量の差を示す。
【0046】
作動モード1での加熱において、第一の熱交換器2hにおける高温の冷媒ガスは90℃までの温度で熱を個別の熱水タンク9hへ放出する。循環ポンプPhの汲み上げ速度がエネルギの移転と第一の熱交換器2hにおける熱水の温度到達を決定する。作動モード1において、循環ポンプPpはオフとされ、熱交換器2pでは熱水の予熱は何ら行われない。第二の熱交換器2rにおける室内暖房媒体に熱を放出した後、高温の冷媒ガスは第四の熱交換器6まで行く前に熱交換器2pを素通りで貫流し、第四の熱交換器において残った熱は熱貯め装置7内の媒体を解氷/加熱するために放出される。
【0047】
作動モード2での加熱において、熱水循環ポンプPhはオフとされ、高温の冷媒ガスは、第二の熱交換器2rへ入って室内暖房媒体に熱を放出する前に、何ら熱を放出することなく第一の熱交換器2hを素通りで貫流する。室内暖房媒体に熱を放出した後、高温の冷媒ガスは熱交換器2pまで流れ、そこでタンク9pから循環している水に熱が放出される。エネルギの取り出しは循環ポンプPpによって調節されている。
【0048】
タンク9pからの調整された水は使用前にタンク9hからの熱水と混合するために使用されるべきである。そうすれば、従来のシステムの場合そうであった以上により低い温度でより多くの清浄な水をヒートポンプによって加熱することができる。このことは図7に示されている。
【0049】
太陽熱による加熱
太陽熱収集器からの流れループを熱貯めタンク7に接続することができる。そうすれば、熱貯め装置7の媒体と熱交換関係にある太陽熱収集器からの流体が熱貯め媒体の解氷あるいは加熱を促進する。従来の太陽熱システムでは環境温度と熱伝達流体との間の温度差が冬期では比較的高い。典型的な50℃−60℃の温度差が普通である。高い温度差は放射損失とか吸収器の対流損失のため熱吸収器の効率を下げる。解氷のためや、熱貯め装置においてゼロ℃以上に温度を上げるために必要な温度要件が低いことのために、太陽熱収集器の冬期の効率は従来のシステムと比較して50パーセントまで増大する。
【0050】
夏季での作動においては、太陽熱収集器は衛生的な使用のための熱水を直接水タンクに生成することができる。
【0051】
冷却。図4b参照
冷却モードでの作動のために、圧縮機1の下流側に四方弁12が導入される。冷媒の流れを別ルートにすることにより、大気温度および熱貯めタンク7における熱貯め媒体の実際の温度に応じて、第五の熱交換器4または第四の熱交換器6に冷媒の熱を投入しうる。
【0052】
遮断弁8が閉鎖されると、熱は先ず熱交換器4を介して大気に投入される。室内冷房の必要性およびタンク7における熱貯め媒体の温度に応じて、第二の減圧装置3あるいは第一の減圧装置5を使用して第二の熱交換器2rへの媒体を凝縮するように圧力を下げることができ、第二の熱交換器において室内冷房用媒体は冷媒と熱交換関係となる。この作動モードにおいては循環ポンプPbおよびPhは通常停止している。
図1
図2
図3
図4
図4b
図5
図6
図7