(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記球状粒子のそれぞれは、有機剤、元素周期分類の第VIII族金属、および、リン、フッ素、ケイ素およびホウ素、並びにそれらの混合によって構成されるドーピング元素のリストに属するドーピング種から選択される1種以上の追加要素を含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
前記方法は、重質炭化水素供給原料であって、前記供給原料中に存在する炭化水素化合物の少なくとも50重量%が370℃以上の沸点を有する、ものの水素化処理方法である、請求項12に記載の転換方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の開示)
本発明は、少なくとも2つの基本球状粒子によって構成される無機材料であって、前記球状粒子のそれぞれは、式(X
xM
mO
yH
h)
q−を有するポリオキソメタラートの形態で金属粒子を含み、ここで、Hは水素原子であり、Oは酸素原子であり、Xは、リン、ケイ素、ホウ素、ニッケルおよびコバルトから選択される元素であり、Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、鉄、銅、亜鉛、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素であり、xは、0、1、2または4に等しく、mは、5、6、7、8、9、10、11、12または18に等しく、yは17〜72の範囲であり、hは0〜12の範囲であり、qは1〜20の範囲であり(y、hおよびqは整数である)、前記金属粒子は、メソ構造化マトリクス内に存在し、該メソ構造化マトリクスは、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される少なくとも1種の元素Yの酸化物をベースとし、前記マトリクスは、1.5〜50nmの範囲の径を有する細孔と、厚さが1〜30nmの範囲の無定形壁とを有し、前記基本球状粒子の最大径は200ミクロンである、無機材料に関する。一般式(X
xM
mO
yH
h)
q−は、本明細書の以降において、式(I)と示される。本発明の関連の中で、この式の定義は、元素H、X、MおよびOは、ポリオキソメタラートの構造中に存在することを意味する。
【0019】
本発明によると、本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に酸化物の形態で存在する元素Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択され、好ましくは、酸化物形態で存在する前記元素Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される。より一層好ましくは、酸化物形態で存在する前記元素Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される。本発明によると、前記メソ構造化マトリクスは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、または酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物によって構成される。前記メソ構造化マトリクスが、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物(アルミノケイ酸塩)である好ましい場合、前記マトリクスのSi/Alモル比は、少なくとも0.02に等しく、好ましくは0.1〜1000の範囲、非常に好ましくは1〜100の範囲である。
【0020】
少なくとも前記元素Yの酸化物をベースとする前記マトリクスは、メソ構造化されている:それは、多孔度を有し、この多孔度は、本発明の材料の基本粒子のそれぞれについてメソ細孔スケールで組織化し、すなわち、1.5〜50nmの範囲、好ましくは1.5〜30nmの範囲、より一層好ましくは4〜20nmの範囲で均一な径を有する細孔スケールで組織化し、前記粒子のそれぞれにおいて均一かつ規則的に分布する(マトリクスのメソ構造化)。メソ構造化マトリクスのメソ細孔間に位置する材料は、無定形であり、壁または仕切りを形成し、その厚さは、1〜30nmの範囲、好ましくは1〜10nmの範囲である。壁の厚さは、第1のメソ細孔を第2のメソ細孔から隔てる距離に相当し、第2のメソ細孔は前記第1のメソ細孔に最も近い細孔である。上記のメソ多孔度の組織化により、前記マトリクスの構造化がもたらされ、この構造化は、六方晶系、バーミキュラまたは立方晶系であってよいが、好ましくはバーミキュラである。メソ構造化マトリクスは、有利には、ミクロ細孔の範囲に多孔度を有さない。本発明の材料はまた、粒子間の組織的マクロ多孔度を有する。
【0021】
本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクスは、式(X
xM
mO
yH
h)
q−を有するポリオキソメタラートの形態で金属粒子を含有し、ここで、Xは、リン、ケイ素、ホウ素、ニッケルおよびコバルトから選択される元素であり、Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素であり、xは0、1、2、または4に等しく;好ましくは、xは0、1または2に等しく、mは、5、6、7、8、9、10、11、12または18に等しく、yは、17〜72の範囲、好ましくは23〜42の範囲であり、hは0〜12の範囲であり、qは、1〜20の範囲、好ましくは3〜12の範囲である(y、hおよびqは、整数である)。より正確には、前記金属粒子は、メソ構造化マトリクス中に捕捉されている。それらは、0.6〜3nmの範囲、好ましくは0.6〜2nmの範囲の平均寸法を有する;より一層好ましくは、それは、0.6nm以上であり、かつ、厳密に1nm未満である。前記金属粒子の径は、有利には、透過電子顕微鏡法(transmission electron microscopy:TEM)によって測定される。TEMにおいて金属粒子の検出がないことは、前記金属粒子の寸法が1nm未満であることを意味する。本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化酸化物マトリクス中に捕捉された前記金属粒子は、有利には、+IV、+Vおよび/または+VIに等しい酸化数を有する原子Mを有する。金属粒子は、均一かつ一様にマトリクス中に捕捉されている。前記金属粒子は、ラマン分光法において750〜1050cm
−1の範囲の波数を有する少なくとも1つのバンドの存在によって特徴付けられる。ラマン分光法は、当業者に周知の技術である。
【0022】
本発明によると、ポリオキソメタラートの形態の前記金属粒子は、イソポリアニオンおよびヘテロポリアニオン(HPA)から選択される。本発明の材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に捕捉されたイソポリアニオンおよびヘテロポリアニオンは、著作物Heteropoly and Isopoly Oxometallates, Pope, Eds. Springer-Verlag, 1983に詳細に記載されている。好ましくは、前記金属粒子はヘテロポリアニオンである。前記金属粒子(好ましくはヘテロポリアニオンの形態である)は、同一または異なる性質の正の電荷を帯びた対イオンによって補われた負の電荷qを帯びた塩である。対イオンは、有利には、金属カチオン、特に第VIII族金属のカチオン、例えば、Co
2+、Ni
2+、プロトンH
+および/またはアンモニウムカチオンNH
4+によって提供される。対イオンの全てがプロトンH
+である場合、一般的に、前記金属粒子が存在する形態を指定するために用語「ヘテロポリ酸」が用いられる。そのようなヘテロポリ酸の例は、リンモリブデン酸(3H
+,PMo
12O
403−)またはリンタングステン酸(3H
+,PW
12O
403−)である。
【0023】
イソポリアニオンの形態の金属粒子を、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉することからなる第1の実施形態によると、上記一般式(I)において生じる元素Xは存在せず、x=0である。元素Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素である。より好ましくは、元素Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される1種以上の元素である。前記一般式(I)中の元素Mとしてのコバルトおよび/またはニッケルは、有利には、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される1種以上の元素Mとの混合として存在する(1種以上の元素M=V、Nb、Ta、MoまたはWの、Niおよび/またはCoによる部分置換)。好ましくは、一般式(I)中に存在する元素Mのm個の原子は、全てもっぱら、Mo原子、またはW原子、またはMoおよびWの原子の混合、またはWおよびNb原子の混合、またはMoおよびV原子の混合、またはWおよびV原子の混合、またはMoおよびCo原子の混合、またはMoおよびNi原子の混合、またはWおよびNi原子の混合のいずれかである。前記第1の実施形態によると、mは、5、6、7、8、9、10、11、12または18に等しい。より一層好ましくは、mは、6、7または12に等しい。元素Mがモリブデン(Mo)である特定の場合において、mの値は、好ましくは7である。元素Mがタングステン(W)である別の特定の場合において、mの値は、好ましくは12である。一般式(I)において、Oは、元素酸素を示し、17≦y≦48である。qは、イソポリアニオンの電荷を示し、3≦q≦12であり、Hは、元素水素を示し、h=0〜12である。前記第1の実施形態による好ましいイソポリアニオンは、式H
2W
12O
406−(h=2、m=12、y=40、q=6)または再び式Mo
7O
246−(h=0、m=7、y=24、q=6)を有する。
【0024】
金属粒子をヘテロポリアニオン(HPAと示される)の形態で前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉することからなる第2の実施形態によると、元素Xは、ヘテロポリアニオン構造において中心原子であり、P、Si、B、NiおよびCoから選択され、x=1または2である。元素Mは、金属原子であり、有利には、ヘテロポリアニオンの構造において、系統的な正八面体配位にある。元素Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素である。より好ましくは、元素Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される1種以上の元素である。前記一般式(I)における元素Mとしてのコバルトおよび/またはニッケルは、有利には、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選択される1種以上の元素Mとの混合として存在する(1種以上の元素M=V、Nb、Ta、MoおよびWの、Niおよび/またはCoによる部分置換)。好ましくは、一般式(I)中に存在するm個のM原子は、全てもっぱら、Mo原子、またはW原子、またはMoおよびW原子の混合、またはWおよびNb原子の混合、またはMoおよびV原子の混合、またはWおよびV原子の混合、またはMoおよびCo原子の混合、またはMoおよびNi原子の混合、またはWおよびNi原子の混合のいずれかである。前記第2の実施形態によると、mは、5、6、7、8、9、10、11、12または18に等しく、好ましくは5、6、9、10、11、12または18に等しい。一般式(I)において、Oは、元素酸素を示し、yは、17〜72の範囲、好ましくは23〜42の範囲であり、qは、ヘテロポリアニオンの電荷を示し、1≦q≦20、好ましくは3≦q≦12であり、Hは、元素水素であり、h=0〜12である。
【0025】
ヘテロポリアニオン(第2の実施形態)であって、有利には、本発明による材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に捕捉されたものの第1の好ましいカテゴリーは、前記ヘテロポリアニオンが、式XM
6O
24H
hq−(式中、x=1、m=6、y=24、q=3〜12およびh=0〜12)および/または式X
2M
10O
38H
hq−(式中、x=2、m=10、y=38、q=3〜12およびh=0〜12)を有するようにされ、式中のH、X、M、O、h、x、m、yおよびqは、上記一般式(I)に与えられたものと同一の定義を有する。このようなヘテロポリアニオンは、アンダーソン型ヘテロポリアニオンと称される(Nature, 1937, 150, 850)。それらは、同一平面に位置しかつ縁部を介して一緒に結合された7個の八面体を含む:6個の八面体がヘテロ元素Xを含有する中心の八面体を取り囲んでいる。ヘテロポリアニオンCoMo
6O
24H
63−およびNiMo
6O
24H
64−は、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉されたアンダーソン型ヘテロポリアニオンの良い例であり、CoおよびNiは、それぞれ、HPA構造のヘテロ元素Xである。それらが、コバルトまたはニッケルの塩の形態である場合(すなわち、コバルトまたはニッケルがカチオンとして存在し、これにより、HPAの負の電荷が補われる場合)、式CoMo
6O
24H
63−およびNiMo
6O
24H
64−を有するそのようなアンダーソン型ヘテロポリアニオンの利点は、0.4〜0.6の範囲の原子比[(プロモータ=Coおよび/またはNi)/Mo]、すなわち、当業者に知られる最適な比に近いか若しくは等しいを達成することであり、0.4〜0.6の範囲において、水素化処理触媒の性能が最大にされ、この原子比の計算のために考慮されるCoおよび/またはNiは、対イオンおよび構造HPAのヘテロ原子として存在するCoおよび/またはNiである。例として、モノマー性の6−モリブドコバルタートイオンのコバルトまたはニッケルの塩(式CoMo
6O
24H
63−,3/2Co
2+またはCoMo
6O
24H
63−,3/2Ni
2+を有する)、並びに、ダイマー性のデカモリブドコバルタートイオンのコバルトまたはニッケルの塩(式Co
2Mo
10O
38H
46−,3Co
2+またはCo
2Mo
10O
38H
46−,3
Ni
2+を有する)は、それぞれ、0.41および0.5の原子比[(プロモータ=Coおよび/またはNi)/Mo]によって特徴付けられる。再び、例として、モノマー性の6−モリブドニッケラートイオンのコバルトまたはニッケルの塩(式NiMo
6O
24H
64−,2Co
2+およびNiMo
6O
24H
64−,2Ni
2+を有する)、並びに、ダイマー性のデカモリブドニッケラートイオンのコバルトまたはニッケルの塩(式Ni
2Mo
10O
38H
48−,4Co
2+およびNi
2Mo
10O
38H
48−,4Ni
2+を有する)は、それぞれ、0.5および0.6の原子比[(プロモータ=Coおよび/またはNi)/Mo]によって特徴付けられ、この原子比の計算のために考慮されるCoおよび/またはNiは、対イオンおよびHPA構造のヘテロ元素Xの両方として存在するCoおよび/またはNiである。HPAがコバルト(X=Co)およびモリブデン(M=Mo)をその構造中に含有する場合、それは好ましくはダイマー性である。前記HPAのモノマー性およびダイマー性の2つの形態の混合物もまた用いられてよい。HPAがニッケル(X=Ni)およびモリブデン(M=Mo)をその構造中に含有する場合、それは、好ましくはモノマー性である。前記HPAのモノマー性およびダイマー性の2つの形態の混合物もまた用いられてよい。非常に好ましくは、本発明による材料を得るために用いられるアンダーソン型HPAは、コバルトおよびモリブデンをその構造中に含むダイマー性のHPAであり、HPAの塩の対イオンは、コバルトCo
II3[Co
III2Mo
10O
38H
4]またはニッケルNi
II3[Co
III2Mo
10O
38H
4]であってよい。
【0026】
ヘテロポリアニオンであって、有利には、本発明による材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に捕捉されたものの第2の好ましいカテゴリー(第2の実施形態)は、前記ヘテロポリアニオンが式XM
12O
40H
hq−(x=1、m=12、y=40、h=0〜12、q=3〜12)および/または式XM
11O
39H
hq−(x=1、m=11、y=39、h=0〜12、q=3〜12)を有するようにされ、式中、H、X、M、O、h、x、m、yおよびqは、上記一般式(I)において与えられたものと同一の定義を有する。式XM
12O
40H
hq−を有するヘテロポリアニオンは、ケギン型構造(Keggin structure)を有するヘテロポリアニオンであり、式XM
11O
39H
hq−を有するヘテロポリアニオンは、間隙ケギン型構造(lacunary Keggin structure)を有するヘテロポリアニオンである。ケギン型構造を有するヘテロポリアニオンは、種々のpH範囲で、A. Griboval, P. Blanchard, E. Payen, M. Fournier, J. L. Duboisによる刊行物Chem. Lett., 1997, 12, 1259において記載された製造経路を用いて得られる。ケギン型構造を有するヘテロポリアニオンはまた、式XM
12O
40H
hq−中に存在する金属Mを第VIII族金属元素、好ましくはコバルトまたはニッケルに置換する、置換された形態で知られている:そのような置換されたケギン型種の例は、ヘテロポリアニオンPNiMo
11O
40H
6−またはPCoMo
11O
40H
6−である(1個のMo原子がそれぞれ1個のNi原子または1個のCo原子と置換される)。種PCoMo
11O
40H
6−は、例えば、L. G. A. van de Waterらによる刊行物J. Phys. Chem. B, 2005, 109, 14513に記載された手順に従って調製される。他の置換されたケギン型種(有利には、本発明による材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に捕捉される)は、種PVMo
11O
404−、PV
2Mo
10O
405−、PV
3Mo
9O
406−またはPV
4Mo
8O
407−である(元素Mとして作用する1個以上のMo原子をVの1個以上の原子に置換する):これらの種およびそれらの調製様式は、D. Soogundらによる刊行物Appl. Catal. B, 2010, 98, 1, 39に記載されている。他の置換されたケギン型ヘテロポリアニオン種は、種PMo
3W
9O
403−、PMo
6W
6O
403−、PMo
9W
3O
403−である。さらにより置換されたケギン型ヘテロポリアニオン種およびそれらの調製様式は、特許出願FR 2.764.211に記載されている:前記種は、式Z
wXM
11O
40Z’C
(z−2w)を有する。Zはコバルトおよび/またはニッケルであり、Xはリン、ケイ素またはホウ素であり、Mはモリブデンおよび/またはタングステンであり、Z’は、元素Mの原子を置換する原子であり、かつ、コバルト、鉄、ニッケル、銅および亜鉛から選択され、CはH
+イオンまたはアルキルアンモニウムカチオンであり、Cは、Zと同様、対イオンとして作用し、wは0〜4.5の値をとり、zは7〜9の値をとる。本発明の材料を配備するのに特に適切でかつこの式を有するヘテロポリ化合物(ヘテロポリアニオン+対イオン)の例は、PCoMo
11O
40H(NH
4)
6、PNiMo
11O
40H(NH
4)
6、SiCoMo
11O
40H
2(NH
4)
6、Co
3PCoMo
11O
40HおよびCo
3PNiMo
11O
40Hの種であり、これらの調製は、出願FR 2.764.211に詳細に記載されている。特許出願FR 2.764.211に記載されたヘテロポリアニオンが有利であるのは、それらが、0.5以下であってもよい、第VIII族からの元素と第VI族からの元素の間の原子比を有するからである。
【0027】
式XM
12O
40q−(式中、Xは、リン、ケイ素およびホウ素から選択され、Mは、モリブデンおよび/またはタングステンから選択され、対イオンとしてコバルトおよび/またはニッケルを有する)を有するケギン型ヘテロポリアニオンは、特許US 2.547.380および特許出願FR 2.749.778に記載されている。特に、特許US 2.547.380には、水素化処理方法における、第VIII族の金属のヘテロポリ酸の塩、例えば、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸またはケイタングステン酸のコバルトまたはニッケルの塩の水素化処理適用のための有益な使用が開示されている。例として、式3/2Ni
2+・PW
12O
403−を有し、Ni/W比が0.125であるリンタングステン酸ニッケル、および式3/2Co
2+・PMo
12O
403−を有するリンモリブデン酸コバルトが用いられてよい。特定の調製方法が、特許出願FR 2.749.778において、ヘテロポリ化合物Co
7/2PMo
12O
40、Co
4SiMo
12O
40、Co
7/2SiMo
12O
40およびCo
6PMo
12O
40の特定の調製のために記載されており、これらは、本発明による材料の球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクスに捕捉された金属粒子としての使用に特に適している。特許出願FR 2.749.778に開示されたヘテロポリ化合物が、特に特許US 2.547.380に開示されたものと比較して興味深いのは、それらがより高い原子比(第VIII族元素/第VI族元素)を有し、それ故に、より良好な性能の触媒が得られるに至るからである。この比の増加は、HPAを低減させることによって得られる。したがって、存在するモリブデンまたはタングステンのうち少なくとも一部は、その通常の値6よりも小さい原子価を有し、これは、例えば、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸またはケイタングステン酸の組成に由来する。
【0028】
間隙ケギン型構造を有しかつ本発明の材料を配備するのに特に適したヘテロポリアニオンは、特許出願FR 2.935.139に記載されている。それらは、式Ni
a+y/2XW
11−yO
39−5/2y,bH
2Oを有し、式中、Niはニッケルであり、Xは、リン、ケイ素およびホウ素から選択され、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、y=0または2であり、Xがリンであるならばa=3.5であり、Xがケイ素であるならばa=4であり、Xがホウ素であるならばa=4.5であり、bは0〜36の範囲の数である。前記ヘテロポリアニオンは、タングステン原子を置換するニッケル原子をそれらの構造中に有さず、前記ニッケル原子は、前記ヘテロポリアニオンの構造において対イオンの位置に置かれている。これらのヘテロポリアニオン塩は、それらの高い溶解性のために、有利である。特許出願FR 2.935.139の教示によると、本発明による材料を用いるために有利なヘテロポリアニオンは、式Ni
4SiW
11O
39およびNi
7/2PW
11O
39を有する。
【0029】
ヘテロポリアニオンであって、有利には、本発明による材料の前記球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に捕捉されるものの第3の好ましいカテゴリー(第2の実施形態)は、前記ヘテロポリアニオンが式H
hP
2Mo
5O
23(6−h)−(式中、h=0、1または2である)を有するようにされる。そのようなヘテロポリアニオンは、ストランドバーグ型ヘテロポリアニオン(Strandber
g heteropolyanion)と称される。ストランドバーグ型HPAの調製は、W-C. Chengらによる論文J. Catal., 1988, 109, 163に記載されている。以来、ヘテロポリアニオンH
2P
2Mo
5O
234−は水素化処理適用における使用に特に有利であることが、J. A. BergwerffらのJournal of the American Chemical Society 2004, 126, 44, 14548によって示されてきた。
【0030】
有利には、本発明による前記無機材料を構成する基本球状粒子は、金属粒子を、上記の、第1の、第2のおよび/または第3のカテゴリーから選択されるヘテロポリアニオンの形態で含む。特に、前記金属粒子は、同一のカテゴリーに属する異なる式を有するHPAの混合物から、または異なるカテゴリーに属するHPAの混合物から形成されてよい。例として、PW
12O
403−タイプのHPAを単独で、あるいは当業者に周知であるケギン型タイプのHPAであるPMo
12O
403−、PCoMo
11O
40H
6−およびH
2P
2Mo
5O
234−との混合物として用いることが有利である。
【0031】
本発明による無機材料は、酸化物形態の最終材料の質量に対する酸化物の重量%として表される1〜40%の範囲、好ましくは4〜35重量%の範囲、好ましくは4〜30%の範囲、より一層好ましくは4〜20%の範囲の重量含有率の元素(単数または複数):バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンを含む。本発明による無機材料は、酸化物形態の最終材料の質量に対する酸化物の重量%として表される0〜15%の範囲、好ましくは0.5〜10重量%の範囲、より一層好ましくは1〜8重量%の範囲で全量の第VIII族からの金属(単数または複数)、特にはニッケルおよび/またはコバルトを含む。
【0032】
ポリオキソメタラートの形態、好ましくはヘテロポリアニオンの形態の金属粒子の量は、前記粒子が、有利には本発明の材料の2〜50重量%、好ましくは4〜40重量%、非常に好ましくは6〜30重量%を表すようにされる。
【0033】
本発明による材料の第1の特定の実施形態によると、前記材料を構成する球状粒子のそれぞれは、ゼオライトナノ結晶を更に含む。前記ゼオライトナノ結晶は、ポリオキソメタラートの形態の金属粒子と共に、基本球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクス中に捕捉されている。ゼオライトナノ結晶をメソ構造化マトリクス中に捕捉することからなる、本発明のこの実施形態によると、本発明の材料は、同時に、基本球状粒子のそれぞれの中に、マトリクス自体におけるメソ多孔度(1.5〜50nmの範囲、好ましくは1.5〜30nmの範囲、より好ましくは4〜20nmの範囲の一様な径を有するメソ細孔)と、メソ構造化マトリクス中に捕捉されたゼオライトナノ結晶によって生じたゼオライトタイプのミクロ多孔度とを有する。前記ゼオライトナノ結晶は、0.2〜2nmの範囲、好ましくは0.2〜1nmの範囲、より好ましくは0.2〜0.8nmの範囲の細孔サイズを有する。前記ゼオライトナノ結晶は、有利には、本発明の材料の0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、非常に好ましくは0.1〜10重量%を表す。ゼオライトナノ結晶は、300nmの最大寸法、一般的には最大径を有し、好ましくは、10〜100nmの範囲の寸法、一般的には径を有する。あらゆるゼオライト、特に、しかし制限な方法ではなく、"Atlas of zeolite framework types", 6th revised Edition, 2007, Ch. Baerlocher, L. B. L.McCusker, D. H. Olsonに列挙されたものが、本発明による材料を構成する基本球状粒子のそれぞれの中に存在するゼオライトナノ結晶中で用いられてよい。ゼオライトナノ結晶は、好ましくは、ゼオライトIZM−2、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、フォージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−10、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、IM−16、フェリエライトおよびEU−1から選択される少なくとも1種のゼオライトを含む。非常に好ましくは、ゼオライトナノ結晶は、MFI、BEA、FAUおよびLTAの構造型を有
するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトを含む。種々のゼオライト、特に異なる構造型を有するゼオライトのナノ結晶は、本発明による材料を構成する球状粒子のそれぞれの中に存在してよい。特に、本発明による材料を構成する球状粒子のそれぞれは、有利には、少なくとも第1のゼオライトナノ結晶と、少なくとも第2のゼオライトナノ結晶とを含んでよく、第1のゼオライトナノ結晶は、ゼオライトIZM−2、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、フォージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−10、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、IM−16、フェリエライトおよびEU−1から、好ましくは、MFI、BEA、FAUおよびLTAの構造型を有するゼオライトから選択され、第2のゼオライトナノ結晶は、第1のゼオライトナノ結晶のものとは異なり、IZM−2、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−48、ZSM−22、ZSM−23、ZBM−30、EU−2、EU−11、シリカライト、ベータ、ゼオライトA、フォージャサイト、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、NU−10、NU−87、NU−88、NU−86、NU−85、IM−5、IM−12、IM−16、フェリエライトおよびEU−1のゼオライトから、好ましくはMFI、BEA、FAU、およびLTAの構造型を有するゼオライトから選択される。ゼオライトナノ結晶は、有利には、全体的にシリカのものであるかまたはケイ素に加えて、アルミニウム、鉄、ホウ素、インジウム、ガリウムおよびゲルマニウムから選択され、好ましくはアルミニウムである少なくとも1種の元素Tを含有するかのいずれかである少なくとも1種のゼオライトを含む。
【0034】
上記の前記第1の実施形態から独立してもしなくてもよい、本発明による材料の第2の特定の実施形態によると、前記材料を構成する球状粒子のそれぞれは、さらに、有機剤と、元素周期分類の第VIII族金属と、リン、フッ素、ケイ素およびホウ素、並びに、それらの混合物によって構成されるドーピング元素のリストに属するドーピング種とから選択される1種以上の追加要素を含む。ドーピング種の全量は、0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.5〜8重量%の範囲、より一層好ましくは0.5〜6重量%の範囲であり、これは、本発明によるメソ構造化無機材料の重量に対する、酸化物の重量%として表される。
【0035】
本発明によると、本発明による材料を構成する前記基本球状粒子の最大径は、200μmに等しく、好ましくは100μm未満であり、有利には50nm〜50μmの範囲であり、非常に有利には50nm〜30μmの範囲であり、一層より有利には50nm〜10μmの範囲である。より正確には、それらは、本発明による材料中に、粉体、ビーズ、ペレット、細粒、押出物(中空であってもなくてもよい円柱形、多葉状円柱形、例えば、2、3、4または5葉のもの、または捻じれた円柱形)またはリングの形態で存在する。本発明による材料は、有利には50〜1100m
2/gの範囲、非常に有利には50〜600m
2/gの範囲、より一層好ましくは50〜400m
2/gの範囲の比表面積を有する。
【0036】
本発明はまた、本発明による材料の調製方法に関する。
【0037】
本発明による前記調製方法は、少なくとも以下の連続する工程:
a)溶液中:
− 少なくとも1種の界面活性剤と;
− ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、これらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される少なくとも1種の元素Yの少なくとも1種の前駆体と;
− 式(X
xM
mO
yH
h)
q−(式中、Hは水素原子であり、Oは酸素原子であり、Xは、リン、ケイ素、ホウ素、ニッケルおよびコバルトから選択される元素であり、Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、鉄、銅、亜鉛、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素であり、xは、0、1、2または4に等しく、mは、5、6、7、8、9、10、11、12または18に等しく、yは17〜72の範囲であり、hは0〜12の範囲であり、qは1〜20の範囲である)を有するポリオキソメタラートの形態の金属粒子、あるいは、前記金属粒子の少なくとも1種の金属前駆体と;
− 場合による、最大ナノメートル寸法が300nmに等しいゼオライト結晶が分散している、少なくとも1種のコロイド溶液と;
を混合する工程と:
b)工程a)で得られた前記溶液のエアロゾル噴霧により、球状液体小滴が形成されるに至る工程と;
c)前記小滴を乾燥させる工程と;
d)少なくとも前記界面活性剤を除去して、ポリオキソメタラートの形態で金属ナノ粒子が捕捉された前記メソ構造化無機材料を得る工程と;
を含む。
【0038】
本発明による前記調製方法は、有利には、前記工程d)に続いて、ポリオキソメタラート種を再生するための少なくとも1回の工程e)、次いで、前記工程e)で得られた固体を乾燥させるための少なくとも1回の工程f)を含む。前記工程e)およびf)は、ポリオキソメタラート種が、本発明の調製方法の工程d)の間に部分的または完全に分解される時に行われる。前記工程e)およびf)が行われた場合、本発明による無機材料であって、金属粒子、好ましくはHPAが、本発明の材料を構成する基本球状粒子のそれぞれの中に存在するメソ構造化マトリクスのそれぞれ内に捕捉された、ものが得られる。
【0039】
本発明の材料の調製方法の工程a)によると、前記金属粒子は、イソポリアニオンまたはヘテロポリアニオンのいずれかであり、好ましくはヘテロポリアニオンである。それらは、当業者に公知である方法を用いて調製されるか、あるいは、商業的に利用可能である。
【0040】
一般的に、当業者に公知の方法で、イソポリアニオンは、MO
4n−タイプのオキソアニオン(nの値はMの性質に依存する:nは、M=MoまたはWの場合好ましくは2に等しく、M=V、Nb、Taの場合、好ましくは3に等しい)を一緒に反応させることによって形成され、ここで、Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素である。例として、モリブデン化合物がこのタイプの反応のために周知である。pHに応じて、溶液中のモリブデン化合物が、MoO
42−の形態、または反応:7MoO
42−+8H
+→Mo
7O
246−+4H
2Oによって得られるイソポリアニオンMo
7O
246−の形態で存在し得るからである。タングステンをベースとする化合物に関して、反応媒体の可能性のある酸性化により、12倍縮合したα−メタタングステンが生じる結果となってもよい:12WO
42−+18H
+→H
2W
12O
40
6−+8H
2O。これらのイソポリアニオン種、特に種Mo
7O
246−およびH
2W
12O
406−は、有利には、本発明の材料の調製のための金属粒子として用いられる。イソポリアニオンの調製は、著作物Heteropoly and Isopoly Oxometallates, Pope, Eds. Springer-Verlag, 1983 (chapter II, pages 15 and 16)に詳細に記載されている。
【0041】
一般的に、当業者に公知の方法において、ヘテロポリアニオンは、MO
4n−タイプ(nの値は、Mの性質に依存する:nは、M=MoまたはWである場合好ましくは2に等しく、M=V、Nb、Taである場合好ましくは3に等しい)のオキソアニオン、タイプXO
4q−(qの値は、Mの性質に依存し、電荷qは、オクテット則およびXの性質によって指定される)の約1(またはそれ以上)のオキソアニオンの重縮合によって得られ、Mは、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素であり、Xは、P、Si、B、NiおよびCoから選択される元素である。次いで、水分子が除去され、XとMの原子間にオキソブリッジが生じる。これらの縮合反応は、種々の実験要因、例えば、pH、溶液中の種の濃度、溶媒の性質および原子比M/Xによって支配される。ヘテロポリアニオンの調製は、著作物Heteropoly and Isopoly Oxometallates, Pope, Eds. Springer-Verlag, 1983(chapter II, pages 15 and 16)に完全に記載されている。
【0042】
特定のヘテロポリアニオン調製方法であって、有利には、本発明の調製方法の前記工程a)において用いられる金属粒子を合成するために行われ得る、方法は、特許出願FR 2.935.139、FR 2.764.211、FR .749.778およびFR 2.843.050に記載されている。本発明の材料の調製のための金属粒子として用いられるヘテロポリアニオンを調製するための他の特定の様式は、上記記載の種々の刊行物におけるHPAの種々のカテゴリーの説明中に記載されている。
【0043】
例として、本発明の方法の前記工程a)を実施する場合、式(I)を有するポリオキソメタラート、好ましくはヘテロポリアニオンの形態の金属粒子は、それらを得るのに必要な多金属前駆体から容易に調製される;それらは、前記工程a)を行う前に溶媒中に溶解させられ、その後に工程a)の前記混合物中に導入されるか、あるいは工程a)の前記混合物中に直接導入されるかのいずれかである。前記工程a)の前に前記多金属前駆体が溶解させられる場合、前駆体(単数または複数)を溶解させるために用いられる溶媒は、水性であり、金属前駆体(単数または複数)を溶解させた後に得られる、前記前駆体を含有する、工程a)の前の溶液は、透明でありかつ中性または酸性の、好ましくは酸性のpHを有する。前記金属粒子(好ましくはヘテロポリアニオン)は、固体および単離された形態で用いられてよく、本発明の調製方法の前記工程a)の混合物中に直接導入されても、あるいは、水性溶媒に溶液で導入された後に、工程a)の混合物に導入されてもよい。
【0044】
本発明によるメソ構造化無機材料の調製方法の工程a)によると、少なくとも1種の元素Yの前駆体(単数または複数)であって、少なくとも1種の元素Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、鉛、バナジウム、鉄、マンガン、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム、セリウム、ガドリニウム、ユーロピウムおよびネオジム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択され、好ましくは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される、ものは、当業者に周知の無機酸化物前駆体(単数または複数)である。少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)は、元素Yを含み、かつ、当該元素を、溶液、例えば、水−有機溶液、好ましくは水−有機の酸溶液中に活性な形態で遊離させることが可能なあらゆる化合物であってよい。Yが、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される好ましい場合、少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)は、有利には、式YZ
n(n=3または4)を有する前記元素Yの無機塩であり、Zはハロゲン、NO
3基またはパークロラートである;好ましくは、Zは塩素である。考慮中の少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)は、式Y(OR)
n(式中、R=エチル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、等である)を有するアルコキシド前駆体(単数または複数)、またはキレート前駆体、例えばY(C
5H
8O
2)
n(n=3または4)であってもよい。考慮中の少なくとも前記元素Yの前駆体(単数または複数)はまた、前記元素Yの酸化物(単数または複数)または水酸化物(単数または複数)であってよい。元素Yの性質に応じて、考慮中の元素Yの前駆体は、式YOZ
2の形態であってもよく、Zは、一価アニオン、例えばハロゲンまたはNO
3基である。好ましくは、前記元素(単数または複数)Yは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウムおよびセリウム、並びに、それらの元素の少なくとも2種の混合によって構成される群から選択される。非常に好ましくは、メソ構造化酸化物マトリクスは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素(Y=SiまたはAl)を含むか、好ましくはこれらによって構成され、または、酸化ケイ素および酸化アルミニウムの混合物(Y=Si+Al)を含むか、好ましくはこれらによって構成される。Yが、ケイ素またはアルミニウム、あるいは、ケイ素とアルミニウムの混合物である特定の場合、本発明による材料の調製方法の工程a)で用いられるシリカおよび/またはアルミナ前駆体は、当業者に周知の無機酸化物前駆体である。シリカ前駆体は、任意のシリカ源から、有利には、式Na
2SiO
3を有するケイ酸ナトリウム前駆体、式SiCl
4を有する塩素化前駆体、式Si(OR)
4(式中、R=H、メチルまたはエチルである)を有するアルコキシド前駆体、あるいは、式Si(OR)
4−aCl
a(式中、R=H、メチルまたはエチルであり、aは0〜4である)を有するクロロアルコキシド前駆体から得られる。シリカ前駆体はまた、有利には、式Si(OR)
4−aR’
a(式中、R=H、メチルまたはエチルであり、R’は、アルキル鎖または官能基化されたアルキル鎖、例えば、チオール、アミノ、β−ジケトンまたはスルホン酸基によって官能基化されたものであり、aは、0〜4である)を有するアルコキシド前駆体であってよい。アルミナ前駆体は、有利には、式AlZ
3(Zは、ハロゲンまたはNO
3基である)を有するアルミニウムの無機塩である。好ましくは、Zは塩素である。アルミナ前駆体はまた、式Al(OR’’)
3(式中、R’’=エチル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチルまたはt−ブチル)を有するアルコキシド前駆体、またはキレート前駆体、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート(Al(CH
7O
2)
3)であってよい。アルミナ前駆体はまた、アルミニウムの酸化物または水酸化物であってよい。
【0045】
本発明による材料の調製方法の工程a)による混合物の調製のために用いられる界面活性剤は、イオン性または非イオン性の界面活性剤またはこれら2種の混合物である。好ましくは、イオン性界面活性剤は、ホスホニウムおよびアンモニウムイオンから、非常に好ましくは第四級アンモニウム塩、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimethylammonium bromide:CTAB)から選択される。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、両親媒性高分子特性をそれらに与える異なる極性を有する少なくとも2つの部分を有する任意の共重合体であってよい。これらの共重合体は、重合体ファミリーの以下の包括的でないリストの部分を形成する少なくとも1つのブロックを含んでよい:フッ化重合体(−[CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−O−CO−R1]−(式中、R1=C
4F
9、C
8F
17等))、ポリアミノ酸(ポリリシン、アルギナート等)等の生物学的重合体、デンドリマー、ポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成されるポリマー。一般的に、当業者に公知の両親媒性の性質を有する任意の共重合体が用いられてよい(S. Forster, M. Antionnetti, Adv.Mater, 1998, 10, 195-217; S. Forster, T. Plantenberg, Angew. Chem. Int. Ed, 2002, 41, 688-714; H. Colfen, Macromol. Rapid Commum, 2001, 22, 219-252)。好ましくは、本発明の関連の中で、ポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成されるブロック共重合体が用いられる。前記ブロック共重合体は、好ましくは、2つ、3つまたは4つのブロックを含有するブロック共重合体であり、各ブロックは、ポリ(アルキレンオキシド)の1つの鎖から構成される。2−ブロック共重合体では、ブロックの一方が親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成され、他方のブロックが疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。3−ブロック共重合体では、ブロックの少なくとも1つが親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される一方で、他のブロックのうち少なくとも1つが疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖によって構成される。好ましくは、3−ブロックの共重合体の場合、親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)鎖は、(PEO)
wおよび(PEO)
zで示されるポリ(エチレンオキシド)の鎖であり、疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖は、(PPO)
yで示されるポリ(プロピレンオキシド)の鎖、ポリ(ブチレンオキシド)の鎖、または各鎖が複数種のアルキレンオキシドモノマーの混合である混合鎖である。非常に好ましくは、3−ブロック共重合体の場合、式(PEO)
w−(PPO)
y−(PEO)
zを有する化合物が用いられ、ここで、wは5〜300の範囲であり、yは33〜300の範囲であり、zは5〜300の範囲である。好ましくは、wおよびzの値は同一である。非常に有利には、w=20、y=70およびz=20である化合物(P123)が用いられ、w=106、y=70およびz=106である化合物(F127)が用いられる。Pluronic(登録商標)(BASF)、Tetronic(登録商標)(BASF)、Triton(登録商標)(Sigma)、Tergitol(登録商標)(Union Carbide)、Brij(登録商標)(Aldrich)の名称を有する市販の非イオン性界面活性剤が、非イオン性界面活性剤として用いられてよい。4−ブロック共重合体では、ブロックの2つが親水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成され、他の2つのブロックが疎水性の性質を有するポリ(アルキレンオキシド)の鎖によって構成される。好ましくは、本発明の材料の調製方法の工程a)による混合物を調製するために、CTAB等のイオン性界面活性剤と、P123またはF127等の非イオン性界面活性剤との混合物が用いられる。
【0046】
本発明による調製方法の工程a)において、コロイド溶液であって、最大ナノメートル寸法が300nmに等しいゼオライト結晶が分散し、前記工程a)において想定される混合物に場合により添加される、ものは、テンプレートの存在下での最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライトナノ結晶の事前合成か、あるいは、最大ナノメートル寸法が300nmに等しいナノ結晶の形態で、溶液中、例えば酸性の水−有機溶液に分散させる能力を有するゼオライト結晶を用いることかのいずれかによって得られる。ゼオライトナノ結晶の事前合成からなる第1のバリエーションでは、これらは、当業者に公知の操作手順を用いて合成される。特に、ベータゼオライトナノ結晶の合成は、T. Beinらによって、Micropor. Mesopor. Mater., 2003, 64, 165に記載されている。Yゼオライトのナノ結晶の合成は、T. J. Pinnavaiaらによって、J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 8791に記載されている。フォージャサイトゼオライトのナノ結晶の合成は、Kloetstraらによって、Microporous Mater., 1996, 6, 287に記載されている。ZSM−5ゼオライトのナノ結晶の合成は、R. Mokayaらによって、J. Mater. Chem., 2004, 14, 863に記載されている。シリカライト(または、構造型MFI)のナノ結晶の合成は、数多くの刊行物:R. de Ruiter et al., Synthesis of Microporous Materials, Vol. I; M. L. Occelli, H. E. Robson (eds.), Van Nostrand Reinhold, New York, 1992, 167; A. E. Persson, B. J. Schoeman, J. Sterte, J. -E. Otterstedt, Zeolites, 1995, 15, 611-619に記載されている。一般に、ゼオライトナノ結晶は、少なくとも1種のシリカ源、場合による、アルミニウム、鉄、ホウ素、インジウム、ガリウムおよびゲルマニウムから選択される少なくとも1種の元素Tの少なくとも1種の源、好ましくは少なくとも1種のアルミナ源、並びに、少なくとも1種のテンプレートを含む反応混合物を調製することによって合成される。ゼオライトナノ結晶の合成のための反応混合物は、水性であるか、あるいは、水−有機、例えば水−アルコール混合物であるかのいずれかである。反応混合物は、有利には、水熱条件下、自己生成圧力下、場合によりガス、例えば窒素を添加することによって、50〜200℃の範囲の温度、好ましくは60〜170℃の範囲の温度、より好ましくは120℃を超えない温度で、ゼオライトナノ結晶が形成されるまで用いられる。前記水熱処理の終わりに、ナノ結晶が分散した状態にあるコロイド溶液が得られる。テンプレートは、合成されるべきゼオライトに応じて、イオン性または中性であってよい。以下の非包括的リストからのテンプレートを用いることが通常である:窒素含有有機カチオン、アルカリ族からの元素(Cs、K、Na、等)、クラウンエーテル、ジアミン、並びに、当業者に周知の任意の他のテンプレート。ゼオライト結晶を直接的に用いることからなる第2のバリエーションでは、これらは、当業者に公知の方法によって合成される。前記ゼオライト結晶は、すでにナノ結晶の形態であってよい。加えて、300nm超、例えば300nm〜200μmの範囲の寸法を有するゼオライト結晶が、有利には用いられてよい;それらは溶液中、例えば、水−有機溶液中、好ましくは、酸性の水−有機溶液中に、最大ナノメートル寸法が300nmであるナノ結晶の形態で分散する。最大ナノメートル寸法が300nmであるナノ結晶の形態で分散するゼオライト結晶を得ることは、ナノ結晶の表面を官能基化することによっても可能である。用いられるゼオライト結晶は、それらの合成されたままの形態、すなわち、依然としてテンプレートを含有しているか、あるいは、それらの焼成された状態、すなわち、前記テンプレートを含まないかのいずれかである。用いられるゼオライト結晶がそれらの合成されたままの形態である場合、前記テンプレートは、本発明の調製方法の工程d)の間に除去される。
【0047】
溶液であって、少なくとも1種の界面活性剤と、ポリオキソメタラートの形態の少なくとも前記金属粒子と、少なくとも1種の元素Yの少なくとも1種の前駆体と、場合による、最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライト結晶が分散した少なくとも1種の安定なコロイド溶液とが、本発明の材料の調製方法の工程a)に従って、混合されたものは、酸性または中性であってよい。好ましくは、前記溶液は酸性であり、5の最大pHを有し、好ましくは0〜4の範囲である。酸性溶液を得るために用いられてもよい酸の非包括的な例は、塩酸、硫酸および硝酸である。前記工程a)による前記溶液は水性であってよく、あるいは、それは水−有機溶媒混合物であってよく、有機溶媒は好ましくは水と混和性である極性溶媒、特にアルコール、好ましくはエタノールである。本発明の調製方法の前記工程a)による前記溶液は、実際的に有機性であってよく、好ましくは実際的にアルコール性であり、水の量は、無機前駆体の加水分解が確実なものとされるようにされる(化学量論量)。非常に好ましくは、本発明の調製方法の前記工程a)における前記溶液であって、少なくとも1種の界面活性剤と、ポリオキソメタラートの形態の少なくとも前記金属粒子と、少なくとも前記元素Yの少なくとも1種の前駆体と、場合による、最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライト結晶が分散した、少なくとも1種の安定なコロイド溶液とが混合された、ものは、酸性の水−有機混合物であり、非常に好ましくは水−アルコール酸性混合物である。
【0048】
コロイド溶液中に分散したゼオライトナノ結晶であって、該ゼオライトナノ結晶は、テンプレートの存在下での、最大ナノメートル寸法が300nmであるゼオライトナノ結晶の事前合成によるこのバリエーションに従って、あるいは、最大ナノメートル寸法が300nmであるナノ結晶の形態で、溶液中、例えば、酸性の水−有機溶液中に分散する特性を有するゼオライト結晶を用いるバリエーションにおいて得られ、場合によっては、本発明の調製方法の工程a)の間に導入される、ものの量は、ゼオライトナノ結晶が、有利には、本発明の材料の0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、非常に好ましくは0.1〜10重量%を表すようにされる。
【0049】
ポリオキソメタラートの形態の金属粒子の量は、前記粒子が、有利には、本発明の材料の4〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは6〜30重量%を表すようにされる。
【0050】
本発明の調製方法の前記工程a)により混合物中に導入される界面活性剤の初期濃度は、c
0によって定義され、c
0は、当業者に周知の臨界ミセル濃度(c
mc)に関して定義される。c
mcは、これを超えると界面活性剤の分子の自己集合が溶液中で起こる限界濃度である。濃度c
0は、c
mcより小さくてもよく、c
mcと等しくてもよく、あるいはc
mcより大きくてもよい;好ましくは、それはc
mcより小さい。本発明の材料の調製方法の好ましい実施において、濃度c
0は、c
mcより小さく、本発明の前記調製方法の工程a)において想定される前記溶液は、酸性の水−アルコール混合物である。本発明の前記調製方法の工程a)において想定される溶液が、本発明の調製方法の前記工程a)の間に水−有機溶媒混合物(好ましくは酸性)である場合、マトリクスのメソ構造化の始点における界面活性剤の濃度は、好ましくは、臨界ミセル濃度より低くあるべきであり、その結果、エアロゾル技術による本発明の調製方法の工程b)の間の前記水−有機溶液(好ましくは酸性)の蒸発により、ミセル化または自己集合の現象が引き起こされ、これにより、ポリオキソメタラートの形態の前記金属粒子および場合によるゼオライトナノ結晶の周囲で本発明の材料のマトリクスのメソ構造化がもたらされ、それら自体は、本発明の調製方法の工程b)およびc)の間にそれらの形状および寸法において未変化のままである。c
0<c
mcの場合、上記方法を用いて調製される本発明の材料のマトリクスのメソ構造化は、水−有機溶液(好ましくは酸性)の蒸発に由来して、c>c
mcの界面活性剤の濃度まで、徐々に濃縮する結果である。
【0051】
一般に、前記加水分解された元素Yの少なくとも1種の前駆体と界面活性剤の濃度が共に増加すると、自己組織化された界面活性剤の周りで前記元素Yの少なくとも前記加水分解された前駆体の沈殿が引き起こされ、その結果、本発明の材料のマトリクスが構造化するに至る。無機/無機、有機/有機および有機/無機の相の相互作用により、協同自己集合機構を経て、自己組織化された界面活性剤の周りに前記加水分解された元素Yの少なくとも前記前駆体が縮合するに至る。この自己集合現象の間に、ポリオキソメタラートの形態の前記金属粒子および場合によるゼオライトナノ結晶は、本発明の材料を構成する基本球状粒子のそれぞれの中に含まれる少なくとも前記元素Yの酸化物をベースとする前記メソ構造化マトリクス中に捕捉されるようになる。
【0052】
エアロゾル技術は、本発明の調製方法の前記工程b)を行うのに特に有利であり、これにより、強制的に、初期溶液中に存在する試薬が一緒に相互作用するようにさせられる;溶媒、すなわち、場合によっては極性溶媒が補給される、溶液、好ましくは、水溶液(好ましくは酸性)は別として、材料の損失は可能ではなく、従って、初期に存在する、前記元素(単数または複数)Y、ポリオキソメタラートの形態の前記金属粒子および場合によるゼオライトナノ結晶の全体性は、本発明の調製方法を通して完全に一定に保たれ、当業者に公知の従来の合成方法において遭遇するろ過および洗浄工程の間に除去される可能性がない。
【0053】
本発明の調製方法の前記工程b)の溶液の噴霧工程により、球状小滴が生じる。これらの小滴のサイズ分布は、対数正規タイプのものである。本発明の関連の中で用いられるエアロゾル発生器は、TSIによって提供され6ジェット噴霧器を有する市販モデル9306Aの装置である。溶液の噴霧は、ベクターガス、好ましくはO
2/N
2混合物(乾燥空気)が、1.5バールに等しい圧力P下に供給される室内で行われる。小滴の径は、用いられるエアロゾル装置に応じて変動する。一般に、小滴の径は、150nm〜600μmの範囲である。
【0054】
本発明の調製方法の工程c)によると、前記小滴は、次いで乾燥させられる。乾燥は、ベクターガス、好ましくはO
2/N
2混合物を介して、PVC管内に前記小滴を運ぶことによって行われ、これにより、前記工程a)の間に得られた溶液、例えば、酸性の水−有機溶液が徐々に蒸発し、その結果、基本球状粒子が生じる。前記乾燥は、前記粒子を、オーブン中に通過させることによって完了し、オーブンの温度は、調整され得、通常の温度範囲は50〜600℃、好ましくは80〜400℃であり、これらの粒子のオーブン中の残留時間は1秒程度である。粒子は、次いでフィルタ上に集められる。回路の端部に置かれたポンプは、種が実験エアロゾル装置内へと導かれるのを促す。本発明の調製方法の工程c)における小滴の乾燥の後、有利には、50〜150℃の範囲の温度でのオーブン内の通過が行われる。本発明のメソ構造化材料を得るための、本発明の調製方法の前記工程a)で導入された界面活性剤と、場合による、本発明の調製方法の工程d)により前記ゼオライトナノ結晶を合成するために用いられたテンプレートの除去は、有利には、熱処理によって、好ましくは、空気(場合によりO
2が豊富に含まれる)中、300〜1000℃の範囲、より正確には500〜600℃の範囲の温度での、1〜24時間の期間にわたる、好ましくは3〜15時間の期間にわたる焼成によって行われる。
【0055】
前記工程d)を行った後、本発明の調製方法は、有利には、工程d)の間
に分解した場合もあるポリオキソメタラートの形態の前記金属粒子を再生することからなる工程e)を含む。前記再生工程e)は、好ましくは、ソックスレー型抽出器(Soxhlet extractor)を用いて、前記工程d)から得られた固体を極性溶媒により洗浄することによって行われる。このタイプの抽出器の機能は、当業者に周知である。好ましくは、抽出溶媒は、アルコール、アセトニトリル、または水、好ましくはアルコール、非常に好ましくはメタノールである。前記工程e)は、1〜24時間、好ましくは1〜8時間の期間にわたり行われる。前記再生工程e)が行われるのは、ポリオキソメタラートの形態の前記金属粒子が前記工程d)の間に分解される場合である。前記金属粒子の分解は、ラマン分光法によって実証される。ラマン分光法は、ラマンスペクトルにおいて現れるバンドに応じて、ポリオキソメタラートの形態、好ましくはヘテロポリアニオンの形態の前記金属粒子の存在または非存在を検出するために用いられ得る。前記工程d)を行った後の前記金属粒子の分解は、部分的であっても完全であってもよい。前記工程e)は、前記金属粒子の部分的または完全な再生のための工程である。
【0056】
前記工程e)の後に、乾燥工程f)が行われ、これは、有利には、40〜100℃の範囲、非常に有利には40〜85℃の範囲の温度で行われる。前記工程f)は、12〜48時間の範囲の期間にわたり行われる。前記工程f)は、好ましくは、本発明の調製方法が前記工程e)を行うことを含む場合にのみ行われる。
【0057】
本発明の材料の調製方法の第1の特定の実施によると、少なくとも1種の硫黄含有化合物が、前記工程a)の混合物中に、または前記工程d)の過程の間、または前記工程e)の過程の間に導入され、これにより、本発明のメソ構造化無機材料が得られ、これは、少なくとも部分的であるが、完全ではなく、硫化物の形態である。前記硫黄含有化合物は、少なくとも1個の硫黄原子を含有し、低温(80〜90℃)で分解してH
2Sの形成をもたらすであろう、化合物から選択される。例として、前記硫黄含有化合物は、チオ尿素またはチオアセ
タミドである。前記第1の特定の実施によると、本発明の前記材料の硫化は、部分的であり、その結果、前記メソ構造化無機材料中の硫黄の存在は、全体的には、ポリオキソメタラートの形態の前記金属粒子の存在に影響を及ぼさない。硫化後、ポリオキソメタラートの形態、好ましくはヘテロポリアニオンの形態の粒子は、本発明の材料の2〜50重量%、好ましくは4〜40重量%、非常に好ましくは6〜30重量%を表す。
【0058】
本発明のメソ構造化無機材料であって、ポリオキソメタラートの形態の金属粒子を、少なくとも1種の元素Yの酸化物をベースとするメソ構造化マトリクス中に捕捉されて含む基本球状粒子によって構成されるものは、粉体、ビーズ、ペレット、細粒、押出物(中空であってもなくてもよい円柱形、多葉状円柱形、例えば、2、3、4または5葉を有するもの、捻じれた円柱形)、またはリング等の形態に成形されてよく、これらの成形操作は、当業者に公知の従来技術を用いて行われる。好ましくは、本発明の材料は、紛体の形態で得られ、このものは、最大径が200μmである基本球状粒子によって構成される。
【0059】
本発明のメソ構造化無機材料の成形のための操作は、前記メソ構造化材料を、バインダとして作用する少なくとも1種の多孔性酸化物材料と混合することからなる。前記多孔性酸化物材料は、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化セリウム、リン酸アルミニウム、リン酸ホウ素、および上記酸化物の少なくとも2種の混合物によって形成される群から選択される多孔性酸化物材料である。前記多孔性酸化物材料は、アルミナ−酸化ホウ素、アルミナ−酸化チタン、アルミナ−ジルコニア、および酸化チタン−ジルコニアの混合物から選択されてもよい。アルミン酸塩、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅または亜鉛のアルミン酸塩、並びに、混合されたアルミン酸塩、例えば、上記金属の少なくとも二種類を含有するものが、有利には、多孔性酸化物材料として用いられる。チタン酸塩、例えば、チタン酸亜鉛、チタン酸ニッケル、またはチタン酸コバルトを用いることも可能である。有利には、アルミナとシリカの混合物、並びに、アルミナと他の化合物、例えば、第VIB族元素、リン、フッ素またはホウ素との混合物を用いることも可能である。複八面体2:1フィロケイ酸塩または三八面体3:1フィロケイ酸塩のタイプの単純な合成または天然の粘土、例えば、カオリナイト、アンチゴライト、クリソタイル、モンモリロナイト、バイデライト、バーミキュライト、タルク、ヘクトライト、サポナイトまたはラポナイトを用いることも可能である。これらの粘土は、場合により離層されてもよい。有利には、アルミナと粘土の混合物、およびシリカ−アルミナと粘土の混合物を用いることも可能である。同様に、モレキュラーシーブ系統の結晶質アルミノケイ酸塩タイプの合成および天然のゼオライト、例えば、Yゼオライト、フッ化Yゼオライト、希土類を含有するYゼオライト、Xゼオライト、Lゼオライト、ベータゼオライト、小細孔モルデナイト、大細孔モルデナイト、オメガゼオライト、NU−10、ZSM−22、NU−86、NU−87、NU−88、およびZSM−5ゼオライトによって形成される群から選択される少なくとも1種の化合物をバインダとして用いることが想定されてよい。ゼオライトのうち、約3/1超の骨格ケイ素/アルミニウム(Si/Al)原子比を有するゼオライトを用いることが通常好ましい。有利には、フォージャサイト構造を有するゼオライトが用いられ、特には、安定化Yゼオライトおよび超安定化Y(ultrastabilized Y:USY)ゼオライトであって、少なくとも部分的に金属カチオン、例えば、アルカリ土類金属カチオンおよび/または57〜71(両端を含む)の原子番号を有する希土類金属のカチオンで交換型にあるか、または、水素型のいずれかにあるものである(Atlas of zeolite framework types, 6th revised Edition, 2007, Ch. Baerlocher, L. B. McCusker, D. H. Olson)。最後に、非結晶質のアルミノケイ酸塩タイプのモレキュラーシーブの系統、例えば、遷移金属(コバルトを含む)のメソ細孔シリカ、シリカライト、ケイアルミノリン酸塩、アルミノリン酸塩、フェロケイ酸塩、ケイアルミン酸チタン、ホウケイ酸塩、クロモケイ酸塩およびアルミノリン酸塩によって形成される群から選択される少なくとも1種の化合物を、多孔性酸化物材料として用いることが可能である。上記化合物の少なくとも2種を用いる種々の混合物もまた、バインダとしての使用に適している。
【0060】
前記第1の実施と独立してもしていなくてもよい、本発明の材料の調製方法の第2の特定の実施において、1種以上の追加要素が、本発明の調製方法の前記工程a)の混合物に導入されてよく、これは、前記工程d)から得られた材料に少なくとも前記追加要素を含有する溶液を含浸させることによって、および/または、前記工程f)から得られた材料に少なくとも前記追加要素を含有する溶液を含浸させることによって、および/または、本発明のメソ構造化材料(既に成形されていてもよい)に少なくとも前記追加要素を含有する溶液を含浸させることによって行われる。前記追加要素は、元素周期分類の第VIII族金属、有機剤、およびリン、フッ素、ケイ素およびホウ素によって構成されるドーピング元素のリストに属するドーピング種から選択される。前記第2の特定の実施によると、上記に定義された1種以上の追加要素は、本発明の材料の調製方法の過程の間に、1以上の工程で導入される。前記追加要素が含浸によって導入される場合、乾式含浸方法が好ましい。各含浸工程の後に、有利には、乾燥工程が行われ、これは、例えば、90〜200℃の範囲の温度で行われ、前記乾燥工程後に、好ましくは、空気(場合によっては酸素に富む)中で焼成する工程が行われ、これは、例えば、200〜600℃の範囲、好ましくは300〜500℃の範囲の温度で、1〜12時間の範囲、好ましくは2〜6時間の範囲の期間にわたり行われる。固体材料に液体溶液を含浸させるための技術、特に、乾式含浸の技術は、当業者に周知である。リン、フッ素、ケイ素およびホウ素から選択されるドーピング種は、それ自体触媒の性質を何ら有しないが、前記金属粒子中に存在する金属(単数または複数)の触媒活性を増大させるために用いられ得、これは、特に、材料が硫化された形態である場合である。
【0061】
少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする前記追加要素のための前駆体として用いられる第VIII族金属の源は、当業者に周知である。第VIII族金属のうち、コバルトおよびニッケルが好ましい。例として、硝酸塩、例えば硝酸コバルトまたは硝酸ニッケル、硫酸塩、水酸化物、例えば水酸化コバルトまたは水酸化ニッケル、リン酸塩、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物またはフッ化物)、あるいはカルボン酸塩(例えば酢酸塩および炭酸塩)が用いられることとなる。
【0062】
ホウ素をベースとする前記ドーピング種のための前駆体として用いられるホウ素の源は、好ましくは、ホウ素を含有する酸、例えば、オルトホウ酸H
3BO
3、二ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素およびホウ酸エステルから選択される。ホウ素は、ヘテロポリアニオン(式X
xM
mO
yH
hq−においてX=ホウ素)、特にケギン型、間隙ケギン型、または置換ケギン型のヘテロポリアニオンの形態で、上記に列挙されたリストから選択される1種以上の元素M(M=バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、鉄、銅、亜鉛、コバルトおよび/またはニッケル)と同時に導入されてもよい。以下のヘテロポリアニオンが特に列挙されてよい:ホウモリブデン酸およびその塩、並びにホウタングステン酸およびその塩。ヘテロポリアニオンの形態のホウ素の源は、次いで本発明の調製方法の工程a)の間に導入される。ホウ素の源が含浸によって導入される場合、ホウ素源を含浸させるための前記工程は、例えば、水/アルコール混合物中、あるいは水/エタノールアミン混合物中のホウ酸の溶液を用いて行われる。ホウ素の源は、ホウ酸、過酸化水素および窒素を含有する塩基性有機化合物(例えば、アンモニア、第一級アミンおよび第二級アミン、環状アミン、ピリジン族およびキノリン族の化合物、またはピロール族の化合物)によって形成される混合物を用いて含浸させられてもよい。
【0063】
リンをベースとする前記ドーピング種のための前駆体として用いられるリンの源は、好ましくは、オルトリン酸H
3PO
4およびその塩およびエステル、例えばリン酸アンモニウムから選択される。リンは、ヘテロポリアニオン(式X
xM
mO
yH
hq−においてX=P)の形態、ヘテロポリアニオンの形態、特に、ケギン型、間隙ケギン型または置換ケギン型のヘテロポリアニオン、あるいは、ストランドバーグ型のヘテロポリアニオンの形態で、上記に示されたリストから選択される1種以上の元素M(M=バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、鉄、銅、亜鉛、コバルトおよび/またはニッケル)と同時に導入されてもよい。以下のヘテロポリアニオンが、特に列挙されてよい:リンモリブデン酸およびその塩、リンタングステン酸およびその塩。ヘテロポリアニオンの形態のリンの源は、本発明の調製方法の工程a)の間に導入される。リン源が含浸によって導入される場合、リン源を含浸させるための前記工程は、例えば、リン酸と、窒素を含有する塩基性有機化合物(例えば、アンモニア、第一級アミンおよび第二級アミン、環状アミン、ピリジン族およびキノリン族の化合物、またはピロール族の化合物)とによって形成される混合物を用いて行われる。
【0064】
多くのケイ素源が、ケイ素をベースとする前記ドーピング種の前駆体として用いられてよい。したがって、オルトケイ酸エチルSi(OEt)
4、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン、シリコーンエマルジョン、またはハロケイ酸塩、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NH
4)
2SiF
6またはフルオロケイ酸ナトリウムNa
2SiF
6を用いることが可能である。ケイ素は、ヘテロポリアニオン(式X
xM
mO
yH
hq−においてX=Si)の形態、ヘテロポリアニオンの形態、特にケギン型、間隙ケギン型または置換ケギン型のヘテロポリアニオンの形態で、上記に示されたリストから選択される1種以上の元素M(M=バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、鉄、銅、亜鉛、コバルトおよび/またはニッケル)と同時に導入されてもよい。以下のヘテロポリアニオンが、特に列挙されてよい:ケイモリブデン酸およびその塩、ケイタングステン酸およびその塩。ヘテロポリアニオンの形態のケイ素の源は、次いで本発明の調製方法の工程a)の間に導入される。ケイ素の源が含浸によって導入される場合、ケイ素の源により行われる前記含浸工程は、例えば、水/アルコール混合物中のケイ酸エチルの溶液を用いて行われる。ケイ素の源はまた、水中懸濁液中の、シリコーンタイプのケイ素の化合物またはケイ酸を用いて含浸させられてもよい。
【0065】
フッ素をベースとする前記ドーピング種のための前駆体として用いられるフッ素の源は、当業者に周知である。例として、フッ化物アニオンが、フッ化水素酸またはその塩の形態で導入されてよい。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。それらは、例えば、本発明の材料の調製方法の工程a)の間に導入される。フッ素の源が含浸によって導入される場合、フッ素の源を含浸させるための前記工程は、例えば、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウムまたは二フッ化アンモニウムの水溶液を用いて行われる。
【0066】
ホウ素、フッ素、ケイ素およびリンから選択される前記ドーピング種の分布および局在化は、有利には、キャスタン・マイクロプローブ(Castaing microprobe)(種々の元素の分布プロファイル)、X線分析と連結された透過電子顕微鏡法(すなわち、Si(Li)ダイオードを用いる、電子ビームによって衝撃を与えられたサンプルの領域によって放出されたX線光子の測定からのサンプルの質的および/または量的な元素組成を確定するために用いられ得るEXD分析)等の技術を用いるか、または、電子マイクロプローブによって前記材料中に存在する元素の分布マップを確定することによって決定される。これらの技術は、これらのドーピング種の存在を実証するために用いられ得る。第VIII族金属の分析および追加要素としての有機種の分析は、一般的に蛍光X線元素分析によって行われる。
【0067】
リン、フッ素、ケイ素、ホウ素、およびこれらの元素の混合によって構成されるドーピング元素のリストに属する前記ドーピング種は、本発明のメソ構造化無機材料の重量に対する、酸化物の重量%として表される、ドーピング種の全量が、0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.5〜8重量%の範囲、より好ましくは0.5〜6重量%の範囲であるような量で導入される。これは、全含有率であり、すなわち、それは、ポリオキソメタラートの粒子中の元素Xおよびドーピング種の両方としてドーピング種を構成する元素の存在を考慮に入れる。これは、特に元素P、SiおよびBの場合である。ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから好ましくは選択される金属(単数または複数)Mとの間の原子比は、好ましくは0.05〜0.9の範囲、より一層好ましくは0.08〜0.8の範囲であり、この比の計算のために考慮に入れられる、ドーピング種と、V、Nb、Ta、MoおよびWから好ましくは選択される金属(単数または複数)Mとは、導入の様式とは無関係に、本発明の材料中の、ドーピング種および好ましくはV、Nb、MoおよびWから選択される金属(単数または複数)Mの全量に相当する。
【0068】
少なくとも1種の有機剤をベースとする前記追加要素の前駆体として用いられる有機剤は、キレート特性または還元特性を有しても有しなくてもよい有機剤から選択される。前記有機剤の例は、エーテル化されてもよい、モノアルコール、ジアルコールまたはポリアルコール、カルボン酸、糖、非環状の、単糖類、二糖類または多糖類(例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトースまたはスクロース)、エステル、エーテル、クラウンエーテル、硫黄または窒素を含有する化合物(例えば、ニトリロ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、またはジエチレントリアミン)である。
【0069】
本発明によるメソ構造化無機材料であって、ポリオキソメタラートの形態の金属粒子を含む基本球状粒子によって構成され、当該金属粒子は、メソ構造化酸化物マトリクス中に捕捉されており、当該メソ構造化酸化物マトリクスは、メソ細孔領域において組織化しかつ一様な多孔度を有する、ものは、数多くの分析技術によって、特に、小角X線回折(小角XRD)、広角X線回折(XRD)、窒素容積測定分析(BET)、透過電子顕微鏡法(TEM)、走査型電子顕微鏡法(scanning electron microscopy:SEM)、および蛍光X線(X-ray fluorescence:XRF)によって特徴付けられる。ポリオキソメタラート、特にヘテロポリアニオンの存在は、種々の技術によって、特に、ラマン、UV可視または赤外線の分光法、並びに微量分析によって実証される。核磁気共鳴法(nuclear magnetic resonance:NMR)または電子常磁性共鳴法(paramagnetic electron resonance:PER)(特に、原子の一部が初期の酸化の程度と比較して低減した酸化の程度を有する還元されたHPAについて)等の技術も、用いられるHPAに応じて、用いられ得るだろう。
【0070】
小角X線回折技術(角2θの値は、0.5〜5°の範囲である)は、本発明の材料のメソ構造化マトリクスの組織化したメソ多孔度によって生じたナノメートルスケールの周期性を特徴付けるために用いられ得る。以下の考察において、X線分析は、粉末について、反射様式で操作しかつ銅の放射線(波長 1.5406Å)を用いる後方モノクロメータを備えた回折計により行われる。角度2θの所与の値に相当するディフラクトグラム上で通常観察されるピークは、格子面間隔d
(hkl)と関連付けられ、これは、ブラッグの法則:2d
(hkl)*sin(θ)=n*λによる、材料の構造対称性の特徴である((hkl)は、逆格子のミラー指数である)。この指数化により、直接格子の格子パラメータ(abc)の測定が可能となり、これらのパラメータの値は、得られた六方晶系、立方晶系またはバーミキュラ状の構造に応じる。例として、本発明のメソ構造化材料であって、ケイ素およびアルミニウムをベースとするメソ構造化酸化物マトリクスを含む基本球状粒子によって構成され、臭化セチルトリメチルアンモニウムCH
3(CH
2)
15N(CH
3)
3Br(CTAB)である第四級アンモニウム塩の使用を介して、本発明の調製方法を用いて得られる、ものの小角X線回折ディフラクトグラムは、完全に分解された相関ピークを有し、これは、バーミキュラ構造の特徴であり、かつ、ブラッグの法則:2d
(hkl)*sin(θ)=n*λによって定義される細孔間の相関距離dに相当する。
【0071】
広角X線回折技術(角度2θの値は、6〜100°の範囲である)は、分子スケールでの単位セルまたは基本格子の繰り返しによって定義される結晶質固体を特徴付けるために用いられ得る。それは、小角X線回折技術を支配するものと同一の物理的原理に従っている。したがって、広角XRD技術が本発明の材料を分析するために用いられるのは、本発明に従って定義された材料を構成する基本球状粒子のそれぞれの中に存在してよいゼオライトナノ結晶の構造の特徴付けにそれが特に適しているからである。特に、それは、これらのゼオライトナノ結晶中の細孔のサイズを測定するために用いられ得る。例として、ZSM−5タイプ(MFI)のジルコンナノ結晶のあらゆる閉塞の間に、関連する広角ディフラクトグラムは、ZSM−5ゼオライトの空間群Pnma(N°62)に起因するピークを有する。X線ディフラクトグラム上で得られた角度の値によって、ブラッグの法則:2d
(hkl)*sin(θ)=n*λを用いて、相関距離dへのアクセスが提供される。
【0072】
窒素容積測定分析は、一定の温度での圧力の漸進的上昇を介した、材料の細孔中の窒素分子の物理的吸着に相当し、これにより、本発明の材料に特有の組織的特徴(細孔径、細孔容積、比表面積)についての情報が提供される。特に、それは、材料の比表面積およびメソ細孔分布へのアクセスを提供する。用語「比表面積」は、定期刊行物“The Journal of American Chemical Society”, 1938, 60, 309に記載されたBRUNAUER-EMMETT-TELLER方法に由来するASTM 標準 D3663-78による窒素吸着によって決定されるBET比表面積(S
BET(m
2/g))を意味する。2〜50nmの範囲を中心とするメソ細孔の個体群を表す細孔分布(IUPAC分類)は、Barrett-Joyner-Halendaモデル(BJH)から求められる。得られたBJHモデルによる窒素吸着−脱着等温線は、E. P. Barrett、L. G. JoynerおよびP. P. Halendaによって書かれた定期刊行物"The Journal of the American Society", 1951, 73, 373に記載されている。以下の考察において、メソ構造化マトリクスのメソ細孔の径φは、より小さい径を有する細孔の全てが、窒素等温線の吸着分岐上で測定される細孔容積(Vp)の50%を構成するような径であるとして定義される平均窒素吸着径に相当する。加えて、窒素吸着等温線およびヒステリシスループの形状は、メソ多孔度の性質に関する情報およびゼオライトナノ結晶がメソ構造化酸化物マトリクス中に存在する場合のゼオライトナノ結晶に本質的に関連するミクロ多孔度の可能性のある存在に関する情報を提供することができる。例として、本発明のメソ構造化材料に関する窒素吸着等温線であって、本発明の調製方法を用いて得られる、第四級アンモニウム塩である臭化セチルトリメチルアンモニウムCH
3(CH
2)
15N(CH
3)
3Br(CTAB)を用いて調製されたアルミニウムおよびケイ素をベースとするメソ構造化酸化物マトリクスを含む基本球状粒子によって構成されるものは、クラスIVcの吸着等温線(IUPAC分類)によって特徴付けられ、0.2〜0.3の範囲におけるP/P0(ここでP0は温度Tにおける飽和蒸気圧である)の値についての吸着工程の存在は、関連細孔分布曲線によって確認されるように、2〜3nm程度の細孔の存在と関連する。
【0073】
メソ構造化マトリクスに関して、細孔径の値φと、上記記載の小角XRDによって規定された格子パラメータとの間の差は、量eを提供するために用いられ得、ここで、e=a−φであり、量eは、本発明の材料の球状粒子のそれぞれの中に含まれるメソ構造化マトリクスの無定形壁の厚さの特徴である。前記格子パラメータaは、相の幾何学的形状の特徴である幾何学的形状要因による細孔間の相関距離dと関連する。例として、バーミキュラ状の構造の場合、e=d−φである。
【0074】
透過電子顕微鏡法(TEM)もまた、これらの材料の構造を特徴付けるために幅広く用いられる技術である。それは、対象の固体の画像を形成するために用いられ得、観察されるコントラストは、観察される粒子の構造組織、表面組織(texture)または形態(morphology)の特徴である;当該技術の最大分解能は1nmである。以下の考察において、TEM写真は、サンプルのミクロトーム切片から作成されることとなり、これにより、本発明の材料の基本球状粒子の断面を見ることが可能となる。例として、本発明の材料について得られたTEM画像であって、当該材料は、金属粒子を含む基本球状粒子によって構成され、当該金属粒子は、ケイ素およびアルミニウムの酸化物ベースとするメソ構造化材料中に捕捉され、当該材料は、臭化セチルトリメチルアンモニウムCH
3(CH
2)
15N(CH
3)
3Br(CTAB)である第四級アンモニウム塩を用いて調製されたものである、TEM画像は、単一の球状粒子内にバーミキュラ構造を有し(材料は、暗帯域によって規定される)、その球状粒子内に、メソ構造化マトリクス中に捕捉されたゼオライトナノ結晶を示す不透明な物体も見られ得る。画像分析は、パラメータd、φおよびeへのアクセスを提供するためにも用いられ得、これらは、上記定義のメソ構造化マトリクスの特徴である。
【0075】
基本粒子の形態およびサイズ分布は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって得られる写真の分析によって確立された。
【0076】
本発明による材料のメソ構造は、テンプレートとして選択された界面活性剤の性質に応じて、バーミキュラ状、立方晶系または六方晶系であってよい。
【0077】
ポリオキソメタラートの形態、より好ましくはヘテロポリアニオン(HPA)の形態の金属粒子は、特に、ラマン分光法によって特徴付けられる。ラマンスペクトルは、励起波長が532nmであるレーザを備えた分散タイプのラマン分光計を用いて得られた。レーザ光線は、倍率50の長距離作業用対物レンズを備えた顕微鏡を用いてサンプル上に集束させられた。サンプルにおけるレーザの電力は、1mW程度のものであった。サンプルによって発せられたラマンシグナルは、同一の対物レンズによって集められ、1800ライン/mmのグレーティングを用いて分散させられ、次いで、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)検出器によって集められた。得られたスペクトル分解能は、2cm
−1程度のものであった。記録されたスペクトル帯域は、300〜1500cm
−1であった。獲得期間は、記録された各ラマンスペクトルに対して120秒で固定された。
【0078】
核磁気共鳴(NMR)も、有利には、ポリオキソメタラート、特にHPAを特徴付けるために用いられた。300または400MHzの分光計に記録された
31Pおよび
29SiのNMR分析が特に列挙され得る。
【0079】
本発明はまた、炭化水素供給原料の転換方法であって、1)本発明によるメソ構造化無機材料を、少なくとも1種の硫黄含有化合物を含む供給原料と接触させること、次いで2)前記工程1)から得られた前記材料を、前記炭化水素供給原料と接触させることを含む、方法に関する。
【0080】
本発明の転換方法の前記工程1)の終わりに、前記メソ構造化無機材料は二機能性であり、すなわち、それは、ポリオキソメタラート、好ましくはヘテロポリアニオンから得られた金属硫化物相の存在によって提供される水素化脱水素機能と、酸機能との両方を有する。酸機能は、少なくとも前記元素Yの酸化物をベースとしかつゼオライトナノ結晶が有利には捕捉されている前記メソ構造化マトリクスの固有の酸特性によって提供される。メソ構造化マトリクスの酸度が生じるのは、本発明の材料が、例えば、酸性のメソ構造化酸化物マトリクスであって、場合によっては、捕捉されたナノ結晶のゼオライトを有し、そのゼオライト自体は酸性またはその他であるもの、または、非酸性のメソ構造化酸化物マトリクスであって、捕捉されたナノ結晶のゼオライトを有し、そのゼオライト自体が酸性であるものを含む。酸性メソ構造化酸化物マトリクスは、有利には、アルミニウム、チタン、ゲルマニウムおよび/またはスズを元素Yとして含む。
【0081】
本発明の転換方法の前記工程1)によると、ポリオキソメタラートの形態、好ましくはヘテロポリアニオンの形態の金属粒子であって、本発明の無機材料を構成する球状粒子のそれぞれのメソ構造化マトリクス中に捕捉されたものは、硫化される。ポリオキソメタラートの形態、好ましくはHPAの形態の金属粒子の、それらの関連する硫化活性相への転換は、本発明の前記無機材料の熱処理後に、当業者に周知である方法を用いて、200〜600℃の範囲、より好ましくは300〜500℃の範囲の温度で硫化水素と接触させて行われる。より正確には、本発明の転換方法の前記硫化工程1)は、水素およびそのままで導入されるか有機硫黄含有化合物の分解から得られる硫化水素(H
2S)の存在下、硫黄含有供給原料を用いて前記転換方法の反応装置内で直接行われる(現場内硫化)か、あるいは本発明の前記材料を前記転換方法のための反応装置内に装填する前(現場外硫化)のいずれかで行われる。現場外硫化の場合、気体混合物、例えばH
2/H
2SまたはN
2/H
2Sが、有利には、前記工程1)を行うために用いられる。本発明の前記材料は、液相中の分子から前記工程1)に従って現場外で硫化されてもよく、硫化剤は、以下の化合物から選択される:ジメチルジスルフィド(dimethyldisulphide:DMDS)、ジメチルスルフィド、n−ブチルチオール、tert−ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物(例えば、ATOFINAによって供給されるTPS−37またはTPS−54)。これらは、芳香族またはアルキル分子からなる有機マトリクスに希釈される。前記硫化工程1)の前に、好ましくは、当業者に周知の方法を用いて、好ましくは、空気中、300〜1000℃の範囲、より正確には500〜600℃の範囲の温度で、1〜24時間の期間、好ましくは6〜15時間の期間にわたって焼成することによって、本発明の前記無機材料の熱処理のための工程が行われる。
【0082】
本発明によると、本質的に本発明からなる転換方法を経る前記炭化水素供給原料は、少なくとも水素および炭素原子を含有する分子を、前記原子が前記供給原料の少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%を表すようにされる量で含む。前記分子は、有利には、水素原子および炭素原子に加えて、ヘテロ元素、特に窒素、酸素および/または硫黄を含む。
【0083】
本発明の転換方法の第1の特定の実施において、本発明の炭化水素供給原料の転換方法は、本発明によるメソ構造化マトリクスが前駆体である触媒の存在下に行われるガソリン留分の水素化脱硫方法であり、前記材料は前記硫化工程i)を経、その結果、それは、触媒としてのその役割を果たすことができる。
【0084】
本発明の転換方法の前記第1の特定の実施の主題である、前記水素化脱硫方法は、本質的に、現行の環境規制(2009年以来許容硫黄含有量は10ppm以下である)に準拠するように、前記ガソリン留分中に存在する硫黄含有化合物を除去することからなる。前記ガソリン留分の硫黄含有率は、200〜5000重量ppm、好ましくは500〜2000重量ppmの範囲である。前記ガソリン留分、特に接触分解からのガソリンは、無視できない割合の分枝オレフィンを含有し、それ故に、良質のガソリンのための良好なベースを構成する(高いリサーチオクタン価(research octane number:RON))。しかし、それらはまたジオレフィン化合物を含有し、それらは、ゴム状物の形成に起因して、水素化脱硫方法において用いられる触媒の失活の源である。したがって、この水素化脱硫方法に関連する課題の一つは、ガソリン留分の水素化脱硫の第1の工程および第2の工程においてジオレフィンを選択的に水素化しながら、オレフィンの割合を高く維持することからなる。最適な反応選択性が求められ、選択性は、水素化脱硫における触媒活性と水素化における触媒活性との間の比として定義される。
【0085】
硫化後に本発明の水素化脱硫方法における触媒として用いられる本発明の前記メソ構造化材料により、非常に満足のいく触媒性能が、特に選択性に関してもたらされる。それにより、ガソリン留分、特に、接触分解装置から得られるガソリン留分の強力な水素化脱硫が高い選択性と低減した水素消費量で可能になる。
【0086】
好ましくは、硫化後に前記水素化脱硫方法を行うための触媒として用いられる本発明の材料は、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉された前記金属粒子が、ヘテロポリアニオン、特にアンダーソン型ヘテロポリアニオン、ケギン型ヘテロポリアニオンまたはストランドバーグ型ヘテロポリアニオンの形態であるようにされる組成を有する。前記ヘテロポリアニオンは、好ましくは、元素Xが好ましくはリンであり、元素Mが好ましくは、モリブデン、タングステン、コバルトおよびニッケルから選択される1種以上の元素である、配合を有する。メソ構造化マトリクスであって、前記ヘテロポリアニオンが捕捉されたものは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混合物、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムをベースとする。好ましいヘテロポリアニオンは、式H
6CoMo
6O
243−およびH
4Co
2Mo
10O
386−を有するアンダーソン型ヘテロポリアニオン、式PMo
12O
403−を有するケギン型ヘテロポリアニオンおよび式PCoMo
11O
407−を有する置換ケギン型ヘテロポリアニオンまたは式H
hP
2Mo
5O
23(6−h)−(式中、h=0、1または2)を有するストランドバーグ型ヘテロポリアニオンである。式H
6CoMo
6O
243−およびH
4Co
2Mo
10O
386−を有するアンダーソン型ヘテロポリアニオンは、単独でまたは混合物として存在してよい。
【0087】
(供給原料(転換方法の第1の特定の実施)
本発明の前記水素化脱硫方法を用いて処理される前記ガソリン留分は、硫黄およびオレフィン炭化水素を含有するガソリン留分である。それは、分子当たり少なくとも2個の炭素原子、好ましくは分子当たり少なくとも5個の炭素原子を含有しかつ、250℃以下の終点を有する炭化水素を含有する。前記ガソリン留分は、好ましくは、コーキング装置、ビスブレーキング装置、水蒸気分解装置から、または流動接触分解装置(fluid catalytic cracking:FCC)から得られる。有利には、前記留分は、場合により、他の製造方法、例えば常圧蒸留(直留ガソリン)に、あるいは転化方法(コーキングまたは水蒸気分解)に由来するガソリンのかなりの割合からなってよい。非常に好ましくは、前記ガソリン留分は、5個の原子を含有する炭化水素の沸点から250℃に及ぶ沸点範囲を有する、接触分解装置から得られるガソリン留分である。
【0088】
(操作条件(転換方法の第1の特定の実施))
本発明のガソリン留分、特に接触分解ガソリン留分の水素化脱硫方法は、温度:約200〜400℃の範囲、好ましくは250〜350℃の範囲、全圧:1〜3MPaの範囲、好ましくは1〜2.5MPaの範囲の操作条件下に行われ、水素の体積対ガソリン留分の体積の比は100〜600リットル/リットルの範囲、より好ましくは200〜400リットル/リットルの範囲である。最後に、毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、時間で表される接触時間の逆数である。それは、液体ガソリン留分の体積流量対反応器に充填された触媒の体積の比として定義される。それは、一般的に、1〜10h
−1の範囲、好ましくは2〜8h
−1の範囲である。
【0089】
(実施(転換方法の第1の特定の実施))
本発明の水素化脱硫方法の技術的実施は、例えば、ガソリン留分および水素を、少なくとも1つの固定床、移動床または沸騰床の反応器、好ましくは固定床反応器に注入することにより行われる。
【0090】
本発明の転換方法の特定の第2の実施によると、本発明の炭化水素供給原料の転換方法は、本発明のメソ構造化材料が前駆体である触媒の存在下に行われるガスオイル留分の水素化脱硫方法であり、前記材料は、触媒としてのその機能を行うために前記硫化工程i)を経る。
【0091】
本発明の前記水素化脱硫(hydrodesulphurization:HDS)方法は、現行の環境基準(すなわち2009年からの許容硫黄含有率は10ppm以下である)に準拠するように、前記ガスオイル留分中に存在する硫黄含有化合物を除去することを目的とする。
【0092】
硫化後に得られる本発明の材料の触媒は、ガスオイル留分の水素化脱硫方法において従来用いられている触媒より活性な触媒であり、活性の向上は、ポリオキソメタラート、好ましくはHPAから得られる金属硫化物活性相のより良好な分散に関連している。
【0093】
好ましくは、硫化後にガスオイル留分の水素化脱硫のための前記方法を行うための触媒として用いられる本発明の材料は、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉された前記金属粒子が、ヘテロポリアニオンの形態であるような組成を有し、ここで、元素Xは好ましくはリンおよびケイ素から選択され、元素Mは好ましくはモリブデン、タングステン、およびこれら2つの元素の混合物から選択され、あるいは元素Mは好ましくは、モリブデンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合、タングステンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合から選択される。メソ構造化マトリクスであって、前記ヘテロポリアニオンが捕捉されたものは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、または酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混合物をベースとする(Y=Si、Al、またはこれらの混合物)。好ましいヘテロポリアニオンは、ヘテロポリアニオンHPCoMo
11O
406−、PMo
12O
403−およびPW
12O
403−または式H
hP
2Mo
5O
23(6−h)−(式中、h=0、1または2)を有するストランドバーグ型ヘテロポリアニオンである。
【0094】
(供給原料(転換方法の第2の特定の実施))
本発明の方法を用いて水素化脱硫されるべきガスオイル留分は、0.04〜5重量%の硫黄を含有する。それは、有利には、直留ガスオイル、コーキング装置、ビスブレーキング装置、水蒸気分解装置および/または流動接触分解装置(FCC)から得られる。前記ガスオイル留分は、好ましくは250〜400℃の範囲である沸点を有する。
【0095】
(操作条件(転換方法第2の特定の実施))
本発明の水素化脱硫方法は、以下の操作条件下で行われる:温度:約200〜400℃の範囲、好ましくは330〜380℃の範囲、全圧:2〜10MPaの範囲、より好ましくは3〜7MPaの範囲。炭化水素供給原料の体積当たりの水素の体積の比は、100〜600リットル/リットルの範囲、より好ましくは200〜400リットル/リットルの範囲であり、毎時空間速度(HSV)は、1〜10h
−1の範囲、好ましくは2〜8h
−1の範囲である。HSVは、時間で表される接触時間の逆数であり、本発明のガスオイル留分の水素化処理方法を行う反応装置に充填される触媒の体積に対する液体炭化水素供給原料の体積流量の比として定義される。
【0096】
(実施(転換方法の第2の特定の実施))
本発明のガスオイルの水素化脱硫方法を行う反応装置は、好ましくは、固定床、移動床または沸騰床の様式で、好ましくは固定床様式で操作される。
【0097】
本発明の転換方法の第3の特定の実施において、本発明の炭化水素供給原料の転換方法は、炭化水素供給原料であって、その化合物の少なくとも50重量%が、340℃超の初留点と540℃未満の終点を有するものの水素化分解方法であり、前記方法は、本発明のメソ構造化材料が前駆体である触媒の存在下に行われ、前記材料は、触媒としてのその役割を果たすために、前記硫化工程i)を経る。
【0098】
前記水素化分解方法は、本質的に、低品質の重質供給原料から、より軽質で、非常に高品質のフラクション、例えばガソリンまたは中間留分、特にジェット燃料および軽質ガスオイルを生じさせることからなる。それはまた、優れたオイルベースとして用いられ得る高度に精製された残渣を得るために用いられ得る。一般に、水素化分解方法において用いられる水素化分解触媒は全て、本来二機能性であり、酸機能を水素化脱水素機能と関連付ける。本発明の水素化分解方法において、酸機能は、酸性のアルミノケイ酸塩タイプのマトリクスを本発明の材料中のメソ構造化マトリクスとして用いること、あるいは、メソ構造化酸化物マトリクス、好ましくは酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素をベースとするものの中にゼオライトのナノ結晶を導入/捕捉すること、あるいは、本発明の材料におけるメソ構造化マトリクスとして、アルミノケイ酸塩タイプの酸性マトリクスであって、ゼオライトナノ結晶が捕捉されたものを用いることのいずれかによって提供される。2つの酸機能、酸と水素化脱水素の機能との間のバランスは、触媒の活性および選択性を支配するキーパラメータの一つである。本発明の前記水素化分解方法によると、水素化脱水素機能は、ポリオキソメタラートの形態、好ましくはヘテロポリアニオンの形態の金属粒子中に存在する元素(単数または複数)Mによって提供され、前記元素(単数または複数)Mは、本明細書の上記において定義された通りである。
【0099】
水素化分解方法においてそれが用いられる場合、そのような方法において従来通りに用いられる触媒と比較して、本発明の材料の硫化の後に得られた触媒により最適の触媒性能がもたらされる。特に、それは、大幅に低減した量の活性相、特に、水素化脱水素機能を提供する金属(単数または複数)、例えば、モリブデンおよび/またはタングステンを必然的に伴いながら既存の触媒により得られる触媒性能に少なくとも等価である触媒性能を得るために用いられ得る。
【0100】
本発明の材料の硫化後に得られる触媒は、水素化脱水素相の分散および硫化物粒子のサイズの制御を向上させる際に有利である。
【0101】
好ましくは、硫化後に炭化水素供給原料の水素化分解のための前記方法を行うための触媒として用いられる本発明の材料は、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉された前記金属粒子がヘテロポリアニオンの形態であるような組成を有し、ここで、元素Xは好ましくはリンおよびケイ素から選択され、元素Mは好ましくはモリブデン、タングステン、およびこれら2種の元素の混合から選択され、あるいは元素Mは好ましくは、モリブデンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合、並びに、タングステンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合から選択される。メソ構造化マトリクスであって、前記ヘテロポリアニオンが捕捉されたものは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、または酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の混合物をベースとする(Y=Si、Al、またはこれらの混合物)。好ましいヘテロポリアニオンは、ケギン型ヘテロポリアニオン、特に式PW
12O
403−を有するヘテロポリアニオンである。
【0102】
(供給原料(転換方法の第3の特定の実施))
本発明の水素化分解方法において用いられる前記炭化水素供給原料は、炭化水素供給原料であって、その化合物の少なくとも50重量%が340℃超の初留点および540℃未満の終点を有し、好ましくは、その化合物の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%が340℃超の初留点および540℃未満の終点を有するものである。
【0103】
前記炭化水素供給原料は、有利には、真空蒸留物(vacuum distillate:VD)、FCC(流動接触分解)から得られる流出物、接触分解装置から得られる軽質ガスオイル(LCO(light cycle oil):軽質サイクルオイル)、重質油(HCO(heavy cycle oil):重質サイクルオイル)、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)合成から得られるパラフィン流出物、真空蒸留から得られる流出物、例えば、VGO(vacuum gas oil:真空ガスオイル)タイプのガスオイルフラクション、石炭液化方法から得られる流出物、バイオマスから得られる供給原料またはバイオマスから得られる供給原料の転化に由来する流出物、および芳香族抽出装置に由来する芳香族抽出物および供給原料から、単独であるいは混合物として、選択される。
【0104】
好ましくは、前記炭化水素供給原料は、真空蒸留物留分である。真空蒸留物は、一般的に、原油の真空蒸留から得られる。前記真空蒸留物留分は、芳香族化合物、オレフィン化合物、ナフテン化合物および/またはパラフィン化合物を含む。
【0105】
前記真空蒸留物留分は、有利には、窒素、硫黄、およびこれら2種の元素の混合から選択されるヘテロ原子を含む。処理されるべき前記供給原料中に窒素が存在する場合、窒素含有率は、500重量ppm以上である;好ましくは、前記含有率は、500〜10000重量ppmの範囲、より好ましくは700〜4000重量ppmの範囲、より一層好ましくは1000〜4000重量ppmの範囲である。処理されるべき前記供給原料中に硫黄が存在する場合、硫黄含有率は0.01〜5重量%の範囲、好ましくは0.2〜4重量%の範囲、より一層好ましくは0.5〜3重量%の範囲である。前記真空蒸留物は、場合によりかつ有利には、金属、特にニッケルおよびバナジウムを含有してよい。前記真空蒸留物留分中のニッケルおよびバナジウムの累積量は、好ましくは1重量ppm未満である。前記炭化水素供給原料のアスファルテン含有率は、一般的に3000ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、より一層好ましくは200ppm未満である。
【0106】
好ましい実施において、前記真空蒸留物(VD)タイプの炭化水素供給原料は、そのままですなわち単独で、あるいは他の炭化水素留分との混合物として用いられてよく、他の炭化水素留分は、好ましくは、FCC装置(流動接触分解)から得られる流出物、接触分解装置から得られる軽質ガスオイル(LCO:軽質サイクルオイル)、重質オイルカット(HCO:重質サイクルオイル)、原油の常圧および真空蒸留から得られる常圧残渣および真空残渣、フィッシャー・トロプシュ合成から得られるパラフィン流出物、真空蒸留から得られる流出物、例えば、VGO(真空ガスオイル)タイプのガスオイルフラクション、脱アスファルト油(deasphalted oil:DAO)、石炭液化方法から得られる流出物、バイオマスから得られる供給原料またはバイオマスから得られる供給原料の転化に由来する流出物、および芳香族抽出装置に由来する芳香族抽出物および供給原料から単独であるいは混合物として選択される。前記真空蒸留物(VD)タイプの炭化水素供給原料が他の炭化水素留分との混合物として用いられる、好ましい場合、単独でまたは混合物として添加される前記炭化水素留分は、前記混合物の最大50重量%、前記混合物の好ましくは最大40重量%、より好ましくは最大30重量%、より一層好ましくは最大20重量%の量で存在する。
【0107】
(操作条件(転換方法の第3の特定の実施))
本発明による水素化分解方法は、供給原料の性質、所望の生成物の質および精製者に利用可能な装置に応じて大幅に変わり得る操作条件(温度、圧力、水素再循環比、毎時空間速度)下で行われる。本発明の水素化分解方法によると、前記水素化分解触媒は、有利には、水素の存在下、前記炭化水素供給原料と、200℃超、通常250〜480℃の範囲、有利には320〜450℃の範囲、好ましくは330〜435℃の範囲の温度、1MPa超、通常は2〜25MPaの範囲、好ましくは3〜20MPaの範囲の全圧で接触させられ、毎時空間速度(触媒の体積で除算した供給原料の体積流量)は、0.1〜20h
−1の範囲、好ましくは0.1〜6h
−1の範囲、好ましくは0.2〜3h
−1の範囲であり、導入される水素の量は、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が80〜5000L/Lの範囲、通常100〜2000L/Lの範囲であるようにされる。
【0108】
本発明の水素化分解方法において用いられるこれらの操作条件は、一般的に、最大370℃、有利には最大340℃の沸点を有する生成物への通過当たりの転化率15%超、より好ましくは20〜95%を得るように用いられ得る。
【0109】
(実施(転換方法の第3の特定の実施))
水素化分解方法は、穏やかな水素化分解(mild hydrocracking)から高圧の水素化分解までの圧力および転化率の範囲をカバーする。用語「穏やかな水素化分解」は、中程度の転化、一般的には40%未満をもたらし、低圧、一般的には2〜10MPaで操作する水素化分解を意味する。本発明の前記水素化分解方法において用いられる触媒は、単独で、1以上の反応器内における1つ以上の触媒床において、固定床または沸騰床の様式で当業者に公知のワンススルー(once-through)工程または二工程方法として知られる水素化分解手順において、未転化フラクションの液体の再循環を伴ってあるいは伴わずに、場合によっては、本発明の水素化分解方法において用いられる触媒の上流に位置する水素化精製触媒と関連して用いられてよい。
【0110】
本発明の転換方法の第4の特定の実施において、本発明の炭化水素供給原料の転換方法は、重質炭化水素供給原料であって、その化合物の少なくとも55重量%が540℃以上の沸点を有するものの水素化転化方法であり、前記方法は、本発明のメソ構造化材料が前駆体である触媒の存在下に行われ、前記材料は、触媒としてのその役割を果たすために前記硫化工程i)を経る。
【0111】
本発明の前記水素化転化方法は、金属不純物を含有する「重質」フラクションと称されるオイルフラクションを、より軽質なフラクションへと水素化処理・転換することからなり、これは、転化方法、例えば流動接触分解(FCC)または水素化分解において用いられ得る供給原料の製造、あるいは、現行の規格に準拠した燃料(燃料オイルを含む)を製造することを目的とする。したがって、前記水素化転化方法は、硫黄含有率を低減させるために用いられ得る:処理されるべき供給原料中に3〜6重量%の範囲の含有率で存在する場合、硫黄含有率は、一般的に、本発明の水素化転化方法から得られる流出物中に1重量%未満である。同様に、窒素含有率は、有利には、少なくとも70重量%低減させられ、数十〜数百ppmの量で処理されるべき供給原料中に初めに存在する金属、特にニッケルおよびバナジウムの除去は、有利には強力であり、これにより80〜90%程度の転化率が得られる(すなわち、通常、金属、特にニッケルおよびバナジウムの量は、流出物中、100重量ppm未満、好ましくは50重量ppm未満である)。
【0112】
本発明の材料の硫化後に得られる触媒は、試薬および反応生成物に、触媒の活性な表面への良好なアクセスを確保しながら、活性相の焼結の現象を制限するために用いられ得る。特に、高温で操作する場合あるいは再生処理中の焼結に対する安定性は、ポリオキソメタラート種、特にヘテロポリアニオンから得られるものではない、公知の触媒活性相の安定性より良好である。
【0113】
好ましくは、硫化後に重質炭化水素供給原料の水素化転化のための前記方法を行うための触媒として用いられる本発明の材料は、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉された前記金属粒子が、ヘテロポリアニオンであって、元素Xが、好ましくは、リン、ケイ素およびホウ素から選択され、元素Mが、好ましくは、モリブデン、タングステン、およびこれら2種の元素の混合から選択され、あるいは、元素Mが、好ましくは、モリブデンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合、タングステンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合から選択される、ヘテロポリアニオンの形態であるような組成を有する。メソ構造化マトリクスであって、前記ヘテロポリアニオンが捕捉されたものは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、または酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混合物をベースとする(Y=Si、Al、またはこれらの混合物)。好ましいヘテロポリアニオンは、ストランドバーグ型ヘテロポリアニオン、例えば式H
2P
2Mo
5O
234−を有するヘテロポリアニオンである。
【0114】
これらの工程は、一般的に、高い水素圧および高温で、固定床または沸騰床タイプの反応器内で、供給原料中の金属汚染物質の量に応じて行われる。
【0115】
(供給原料(転換方法の第4の特定の実施))
本発明による水素化転化方法において用いられる炭化水素供給原料は、炭化水素供給原料であって、その化合物の少なくとも55重量%が540℃超の初留点を有し、好ましくは、その化合物の少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%が540℃超の初留点を有するものである。
【0116】
前記炭化水素供給原料であって、その化合物の少なくとも55重量%が540℃超の初留点を有するものは、有利には、脱アスファルト油、常圧残渣および真空残渣から単独でまたは混合物として選択される;好ましくは、前記供給原料は、脱アスファルト油またはDAOである。前記脱アスファルト油は、本明細書の以降において脱アスファルト残渣油とも称される。
【0117】
前記脱アスファルト残渣油またはDAOタイプの供給原料は、大量のコークスおよび金属を含有するアスファルテンフラクションを含有しないという利点を有する。前記脱アスファルト残渣油またはDAOタイプの供給原料は、原油の真空蒸留から得られる真空蒸留残渣油(vacuum distillation residues:VDR)留分から、あるいは、パラフィン系溶媒、好ましくはプロパン、ペンタン、およびヘプタンから選択されるものを用いる抽出操作によってアスファルテンを除去するために用いられ得る脱アスファルト処理の後の、転化方法、例えばコーキングからの残渣油から得られる。この脱アスファルト工程から得られる前記脱アスファルト残渣油タイプの供給原料中のアスファルテンの残留含有率は、好ましくは1重量%未満であり、前記脱アスファルト残渣油タイプの供給原料について行われる次の転化方法のために、著しくより長いサイクルタイムを得るために用いられ得る。
【0118】
好ましい実施において、前記脱アスファルト残渣油またはDAOタイプの供給原料は、そのままで、すなわち単独で、あるいは他の炭化水素供給原料との混合物として用いられてよく、他の炭化水素供給原料は、好ましくは、340〜540℃の範囲の沸点を有する真空蒸留物、FCC接触分解装置からの流出物、接触分解装置から得られる軽質ガスオイル(またはLCO)、重質オイルカット(HCO)、固定床または沸騰床において行われる常圧残渣および/または真空残渣の脱硫または水素化転化方法に由来する蒸留物、フィッシャー・トロプシュ合成から得られるパラフィン流出物、真空蒸留から得られる流出物、例えば、VGO(真空ガスオイル)タイプのガスオイルフラクション、石炭液化方法から得られる流出物、バイオマスから得られる供給原料またはバイオマスから得られる供給原料の転化に由来する流出物、並びに、芳香族抽出装置に由来する芳香族抽出物および供給原料から選択され、単独あるいは混合物として用いられる。脱アスファルト残渣油またはDAOタイプの前記供給原料が他の炭化水素留分との混合物として用いられる好ましい場合、単独でまたは混合物として添加された前記炭化水素留分は、前記混合物の最大45重量%、好ましくは前記混合物の最大35重量%、より好ましくは最大25重量%、より一層好ましくは最大15重量%の量で存在する。
【0119】
(操作条件および実施(転換方法の第4の特定の実施))
本発明のメソ構造化材料が前駆体である水素化転化触媒は、固定床反応器内で、一般的に320〜450℃の範囲、好ましくは350〜410℃の範囲の温度、約3〜30MPaの範囲、好ましくは10〜20MPaの範囲の水素の分圧、毎時の触媒体積当たり0.05〜5の供給原料体積の範囲、好ましくは0.2〜0.5の範囲の毎時空間速度で用いられてよい。標準立方メートルで表される、気体水素対液体供給原料の比は、200〜5000Nm
3の範囲、好ましくは500〜1500Nm
3の範囲である。
【0120】
本発明のメソ構造化材料が前駆体である水素化転化触媒は、沸騰床反応器内で、320〜470℃の範囲、好ましくは400〜450℃の範囲の温度、約3〜30MPaの範囲、好ましくは10〜20MPaの範囲の水素の分圧、毎時の触媒体積当たり0.1〜10の供給原料体積の範囲、好ましくは0.2〜2の範囲の毎時空間速度で用いられてよく、入口における気体水素対液体供給原料の体積の比は、100〜3000Nm
3の範囲、好ましくは200〜1200Nm
3の範囲である。
【0121】
好ましくは、前記水素化転化触媒は、沸騰床反応器内で用いられる。
【0122】
本発明による転換方法の第5の特定の実施によると、本発明による炭化水素供給原料の転換方法は、重質炭化水素供給原料であって、前記装入材料中に存在する炭化水素化合物の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%が370℃以上の沸点を有するものの水素化処理方法であり、前記方法は、前記装入材料の水素化脱金属のための少なくとも1回の第1の工程を含み、その後、本発明によるメソ構造化材料が前駆体である触媒の存在下に行われる水素化処理のための第2の工程が行われ、前記材料は、触媒としてのその役割を果たすために前記硫化工程i)を経る。
【0123】
前記第5の特定の様式による前記二工程水素化処理方法は、例えば、現行の規格を満たす向上した純度を有する重質燃料オイル、あるいは、転化方法、例えば接触分解または水素化分解において品質向上させられ得る供給原料を製造するために用いられ得、その後、燃料の製造のためのベースとして用いられ得る。
【0124】
前記二工程水素化処理方法は、重質炭化水素供給原料であって、前記装入材料中に存在する炭化水素化合物の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%が370℃以上の沸点を有するものを処理することを目的とし、これにより、向上した、すなわちより高い、水素対炭素(H/C)比を有する炭化水素フラクションが得られ、不純物の量が相当低減させられる。前記供給原料中に存在する不純物は、特に、硫黄、窒素、コンラドソン炭素(Conradson carbon)、アスファルテン、並びに金属、特にバナジウムおよびニッケルである。前記水素化処理方法は、金属(水素化脱金属)、アスファルテン、窒素およびコンラドソン炭素の量を低減させるために、前記炭化水素供給原料を事前処理することからなる第1の工程を含む。第1の工程の後に行われる第2の工程は、硫黄含有率(水素化脱硫)、窒素含有率(水素化脱窒)および芳香族化合物含有率を低減させることからなる。より具体的には、前記第2の工程は、本質的に、前記第1の工程において事前処理した供給原料中の硫黄の量を低減させることを目的とし、有利には、水素化脱硫工程に同化させられる。前記第2の工程において用いられる触媒(前記触媒は、本発明の材料の硫化後に得られたものである)によって処理される供給原料は、金属およびアスファルテンが著しく激減させられている。硫化後に前記第2の工程を行うための触媒として用いられる本発明の材料は、材料の前記触媒への移動を最適化し、重質供給原料の水素化処理において従来用いられる活性相より、より良好に分散しそれ故により活性である前記触媒中の活性相を発現させるために用いられ得る。硫化後に触媒として用いられる本発明の材料はまた、当業者に周知の活性相の焼結のリスクを制限するために用いられ得る。
【0125】
(供給原料(前記転換方法の第5の特定の実施))
重質炭化水素供給原料であって、炭化水素化合物の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%が370℃以上の沸点を有し、かつ、第5の実施の主題を形成する方法に従って水素化処理されるべきものは、例えば、真空蒸留物、常圧残渣、直留真空残渣、脱アスファルト油、転化方法から得られる残渣油、例えば、コーキング装置あるいは、固定床、沸騰床または移動床の水素化転化装置に由来するもの、およびこれらの留分のそれぞれの混合物である。水素化処理されるべき前記炭化水素供給原料は、有利には、1種以上の留分か、または炭化水素フラクションで希釈された1種以上の前記留分のいずれかによって構成され、あるいは、炭化水素フラクションの混合物は、軽質サイクルオイル(LCO)、重質オイルカット(HCO)、デカントされたオイル(decanted oil:DO)、スラリー、FCC方法から得られるか蒸留から直接得られる生成物、ガスオイルフラクション、特に、VGO(真空ガスオイル)として知られる真空蒸留によって得られるものから選択されてよい。水素化処理されるべき前記重質炭化水素供給原料は、有利には、場合によっては、石炭液化方法から得られる1種以上の留分並びに芳香族抽出物を含んでよい。
【0126】
前記第5の実施の主題を形成する方法に従って水素化処理されるべき前記重質供給原料は、有利には、粉末の形態の石炭と混合されてよい;この混合物は、一般的にスラリーと称される。前記供給原料は、次いで有利には、石炭の転化から得られかつ新鮮な石炭と再混合される副生成物を含む。水素化処理されるべき前記重質供給原料中の石炭の量は、供給原料/石炭の体積比が0.1〜1の範囲、好ましくは0.15〜0.3の範囲であるようにされる。石炭は、亜炭を含有してよく、亜歴青炭であってよく、あるいはそれは歴青であってよい。あらゆるタイプの石炭が前記水素化処理方法を行うのに適している。
【0127】
前記二工程水素化処理方法に従って水素化処理されるべき前記重質炭化水素供給原料は、有利には、0.5〜6重量%の硫黄を含有する。それらは、一般的に、1重量%超の、500℃超の沸点を有する分子を含有する。それらは、1重量ppm超、好ましくは20重量ppm超の金属、特にニッケルおよびバナジウムの含有率を有し、かつ、ヘプタン中に沈殿する供給原料の割合として定義される、アスファルテン含有率は、0.05重量%超、好ましくは1重量%超である。
【0128】
(操作条件(前記転換方法の第5の特定の実施))
本発明の水素化処理方法において行われる前記水素化脱金属工程(第1の工程)および前記水素化処理工程、より好ましくは、前記水素化脱硫工程(第2の工程)は、固定床または沸騰床の反応器内で行われてよい。有利には、前記水素化脱金属工程は、沸騰床様式で操作する反応器内で行われ、前記水素化処理工程、より好ましくは、前記水素化脱硫工程は、固定床様式で操作する反応器内で行われる。
【0129】
前記第1および第2の工程の一方および/または他方が、固定床様式で操作する反応器内で行われる場合、操作条件は以下の通りである:温度;320〜450℃の範囲、好ましくは350〜410℃の範囲、水素の分圧;約3〜30MPaの範囲、好ましくは10〜20MPaの範囲、毎時空間速度;毎時の触媒体積当たり0.05〜5の供給原料体積の範囲、好ましくは0.2〜0.5の範囲。標準立方メートルで表される、入口での気体水素対液体供給原料の比は、200〜5000Nm
3の範囲、好ましくは500〜1500Nm
3の範囲である。
【0130】
前記第1および第2の工程の一方および/または他方が、沸騰床様式で操作する反応器内で行われる場合、操作条件は以下の通りである:温度;320〜470℃の範囲、好ましくは400〜450℃の範囲、水素の分圧;3〜30MPaの範囲、好ましくは10〜20MPaの範囲、毎時空間速度;時間当たりかつ触媒の体積当たりの供給原料の体積で、毎時の触媒の体積当たり約0.1〜10の供給原料の体積、好ましくは0.2〜2の範囲、入口における気体水素対液体供給原料の比;100〜3000Nm
3の範囲、好ましくは200〜1200Nm
3の範囲。
【0131】
(実施(前記転換方法の第5の特定の実施))
本発明によるメソ構造化材料が前駆体である水素化処理触媒は、重質炭化水素供給原料、例えば常圧残渣または真空残渣の水素化処理のための当業者に公知の任意の方法において用いられてよい。それは、固定床または移動床または沸騰床の様式において操作される任意のタイプの反応器内で行われてよい。
【0132】
前記二工程水素化処理方法の水素化脱金属または事前処理工程と称される前記第1の工程を行うために用いられる触媒は、有利には、二峰性の多孔度(US 7.119.045)または多峰性の多孔度(EP 0.098.764およびEP 1.579.909)を有し、その上に、第VIB族金属(モリブデンまたはタングステン)および第VIII族金属(ニッケル、コバルトまたは鉄)あるいは第VB族金属(バナジウム)が沈着させられる。水素化脱金属触媒は、全質量に対して1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%の少なくとも1種の第VIB族元素の三酸化物を含む。水素化脱金属触媒はまた、全質量に対して0〜2.2重量%、好ましくは0.5〜2重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%の少なくとも1種の第VIII族元素の酸化物を含む。更に、水素化脱金属触媒は、全質量に対して0〜15重量%、好ましくは0〜10重量%の範囲、より好ましくは0.2〜5重量%の範囲の少なくとも1種の第VB族元素を含有する。それは、リン、ホウ素、チタン、ケイ素およびフッ素から選択されるドーピング元素を含有してよい。ホウ素または五酸化リンの量は、有利には、0〜10重量%の範囲、好ましくは0.2〜7%の範囲、より一層好ましくは0.5〜5%の範囲である。水素化処理方法の第1の工程において用いられる触媒は、50m
2/g超、好ましくは80m
2/g超のBET表面積を有する。50nm超の径を有する細孔によって占められる細孔容積は、0.1mL/g以上、好ましくは0.15mL/g以上である。水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積は、有利には、0.5〜1.5mL/gの範囲、好ましくは0.7〜1.2mL/gの範囲、より一層好ましくは0.8〜1.2mL/gの範囲であり、メソ細孔の細孔分布(50nm未満の径)は、4〜17nmの範囲、好ましくは7〜16nmの範囲、より一層好ましくは10〜15nmの範囲の平均径を中心とする。
【0133】
硫化後に水素化処理方法の前記第2の工程を行うための触媒として用いられる本発明による材料は、硫黄含有率(水素化脱硫)、窒素含有率(水素化脱窒)および芳香族化合物の含有率を低減させるために、かつ、前記第1の工程において始められた金属の量の低減を継続するために有利な組成と構造を有する。好ましくは、硫化後に前記第2の工程を行うために触媒として用いられる本発明の材料は、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉された前記金属粒子が、ヘテロポリアニオンであって、元素Xが好ましくはリンおよびケイ素から選択され、元素Mが好ましくはモリブデン、タングステン、およびこれら2種の元素の混合から選択され、あるいは元素Mが、好ましくは、モリブデンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合、モリブデンと、バナジウム、ニオブおよびタンタルから選択される第VB族金属
との混合から選択される、ヘテロポリアニオンの形態であるような組成を有する。メソ構造化マトリクスであって、前記ヘテロポリアニオンが捕捉されたものは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、または酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の混合物をベースとする(Y=Si、Al、またはこれらの混合物)。好ましいヘテロポリアニオンは、ヘテロポリアニオンPMo
12O
403−、HPNiMo
11O
406−、およびPVMo
11O
404−である。
【0134】
重量によるモリブデンおよび/またはタングステンの全量は、有利には、1〜30%(材料の最終質量に対する酸化物の重量%として表される)の範囲、好ましくは2〜20%の範囲、より好ましくは4〜15%の範囲である。コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属、およびバナジウム、ニオブおよびタンタルから選択される第VB族金属の重量による全量は、有利には、0〜15%(最終材料質量に対する酸化物の重量%として表される)、好ましくは0.5〜10%の範囲、より好ましくは1〜8%の範囲である。リン、ケイ素、ホウ素およびフッ素から選択されるドーピング元素が、有利には、添加される。好ましいドーピング元素はリンである。ドーピング元素の量は、0.5〜10重量%の範囲、好ましくは1〜8重量%の範囲、より好ましくは2〜6重量%の範囲である。ドーピング元素と、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族元素との間の原子比は、好ましくは0〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8であるように選択される。
【0135】
本発明の転換方法の第6の特定の実施によると、本発明による炭化水素供給原料の転換方法は、トリグリセリドを含む炭化水素供給原料の水素化処理のための方法であり、前記方法は、本発明のメソ構造化材料が前駆体である触媒の存在下に行われ、前記材料は、触媒としてのその役割を果たすために硫化工程1)を経る。
【0136】
より具体的には、前記水素化処理方法は、再生可能資源から得られる炭化水素供給原料から、中間留分タイプ(ガスオイル、ケロセン)の炭化水素ベースを製造することからなる。
【0137】
(本方法の目的)
2005〜2010年の国際的状況は、まず、欧州共同体における、燃料、特にガスオイルベースについての需要の急速な成長によって特徴付けられ、次いで、地球温暖化および温室効果ガスの排出に関連する主要な問題によって特徴付けられる。このことにより、エネルギーのための化石出発材料への依存度を低減させること、およびCO
2排出量を低減させることが望まれるようになった。このことに関連して、伝統的な精製および燃料製造の手順に容易に統合され得る再生可能資源から得られる新規な炭化水素供給原料の模索は、ますます重要性を増す課題を構成している。このことに関連して、植物起源の新規な製品の、リグノセルロースバイオマスの転化から得られるかあるいは植物油または動物脂肪の製造から得られる精製方法への統合は、化石材料のコストの上昇に起因して、過去数年で、関心を急上昇させてきた。同様に、伝統的なバイオ燃料(主に、エタノールまたは植物油のメチルエステル)は、燃料プール中のオイルベースを補うものとして正当な地位を得てきている。
【0138】
再生可能資源に必須の化合物であるトリグリセリドの非常に高い分子質量(600g/モル超)と、考慮中の供給原料の高い粘度は、それらを直接またはガスオイル中に混合して用いることにより、ターボチャージャー搭載の直接注入ディーゼルエンジンである、近代的なHDIタイプのエンジンに問題をもたらす(非常に高い圧力の圧力注入ポンプとの不適合、注入器の汚染問題、制御されない燃焼、低収率、未燃焼物質の有毒な排出)ことを意味する。しかし、トリグリセリド中に存在する炭化水素鎖は、実質上線状であり、それらの長さ(炭素原子の数)は、ガスオイル中に存在する炭化水素と適合可能である。したがって、現行の規格を満たす良好な品質のガスオイルベースおよび/またはケロセン留分を得るために、当業者に公知であるような添加剤を混合または添加した後に、これらの供給原料を転換することが必要である。ディーゼルについて、最終燃料は標準EN590を満たさなければならず、ケロセンについて、それは、IATA(International Air Transport Association:国際航空運送協会)のGuidance Material for Aviation Turbine Fuel Specifications, 6
th edition, May 2008、例えばASTM標準D1655に記載された規格を満たさなければならない。
【0139】
トリグリセリド、特に植物油を含む炭化水素供給原料の水素化処理は、水素化触媒系に有利に働く複雑な反応を用いる。これらの反応は特に:
− 不飽和結合、すなわち、水素化処理されるべき供給原料中に存在するトリグリセリドおよび脂肪の全ての炭化水素鎖上に存在する炭素−炭素二重結合の水素化;
−
2つの反応経路を用いる脱酸素:
− 水素化脱酸素:水素の消費による酸素の除去であり、その結果、水が形成される;
− 脱炭酸/脱カルボニル:一酸化炭素COおよび二酸化炭素CO
2の形成を伴う酸素の除去;
− 水素化脱窒:NH
3の形成による窒素の除去
を含む。
【0140】
不飽和結合の存在により、前記供給原料は熱的に不安定になる。更に、これらの不飽和結合の水素化は、高い発熱性である。トリグリセリドを含む炭化水素供給原料の水素化処理方法は、特に柔軟性を有し、不飽和結合に関して大きく異なる供給原料、例えば大豆油またはヤシ油、あるいは、動物起源のまたは藻から得られる油を処理するために用いられ得、かつ、可及的に低い温度で不飽和結合の水素化を誘発するために用いられ得、前記供給原料中にホットスポットをもたらすことになるかもしれない壁との接触におけるあらゆる昇温、ガム状物の形成の誘発、並びに、触媒床(単数または複数)にわたる汚染および圧力降下の増大の誘発が回避される。
【0141】
本発明の材料の硫化後に得られる触媒は、トリグリセリドを含む炭化水素供給原料の水素化処理方法においてそれが用いられる場合に最適な触媒性能をもたらす。特に、それは、再生可能な炭化水素源から得られる供給原料からのパラフィンの製造のために用いられ得、これにより、燃料の規格が満たされ、特に、ディーゼルおよびケロセン燃料についての現行の基準が満たされる。それは、硫化に対して抵抗性である相の形成を制限するため、および、より適度な温度で水素化処理方法を操作するために用いられ得る。
【0142】
好ましくは、硫化後に炭化水素供給原料の水素化処理のための前記方法を行うための触媒として用いられる本発明の材料は、前記メソ構造化マトリクスのそれぞれの中に捕捉された前記金属粒子が、ヘテロポリアニオンであって、元素Xが好ましくはリン、ホウ素およびケイ素から選択され、元素Mが好ましくはモリブデン、タングステンおよびこれら2種の元素の混合から選択され、あるいは、元素Mが好ましくはモリブデンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族金属との混合、タングステンと、コバルトおよびニッケルから選択される第VIII族元素との混合から選択される、ヘテロポリアニオンの形態であるような組成を有する。メソ構造化マトリクスであって、前記ヘテロポリアニオンが捕捉されたものは、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、あるいは、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の混合物をベースとする(Y=Si、Al、またはこれらの混合)。好ましいヘテロポリアニオンは、ストランドバーグ型ヘテロポリアニオン、特に式H
2P
2Mo
5O
234−を有するヘテロポリアニオンである。
【0143】
(供給原料(転換方法の第6の特定の実施))
本発明の水素化処理方法において用いられてよい再生可能資源から得られる供給原料の挙げられてよい例は、植物油(食品品質あるいはそうでないもの)または藻から得られる油、動物脂肪または使用済フライ油、あるいは未精製のフライ油または処理を経た油、並びに、そのような供給原料の混合物である。これらの供給原料は、本質的に、トリグリセリドタイプの化学構造を含有し、それを当業者は脂肪酸トリエステルとも称する。脂肪酸トリエステルまたはトリグリセリドは、3つの脂肪酸炭化水素鎖からなる。これらのトリグリセリドタイプの分子を構成する炭化水素鎖は、本質的に線状であり、一般的に鎖当たり0〜3個の不飽和結合を有するが、これは、藻から得られた油ではより高くてもよい。
【0144】
植物油および再生可能な起源の他の供給原料はまた、種々の不純物、特に、窒素等のヘテロ原子およびNa、Ca、P、Mg等の元素を含有する化合物を含む。本発明の水素化処理方法において用いられる再生可能資源から得られる供給原料は、有利には、トリグリセリドを含有する、植物または動物起源の油脂、並びに前記供給原料の混合物から選択される。それらはまた、有利には、遊離脂肪酸および/または遊離脂肪酸エステルを含有する。植物油は、有利には、精製されていなくても完全にあるいは部分的に精製されていてもよく、以下の植物:ナタネ、ヒマワリ、大豆、ヤシ、パーム核、オリーブ、ココナッツ、ジャトロファから得られ;このリストは制限するためのものではない。藻または魚からの油も適切である。動物脂肪は、有利には、食品業界からの残渣物からなるかあるいは外食産業から得られるラードまたは脂肪から選択される。これらの供給原料は、本質的に、3つの脂肪酸鎖からなるトリグリセリドタイプの化学構造を含有する。それらはまた、遊離脂肪酸の形態の脂肪酸鎖を含有してもよい。供給原料中に存在する全ての脂肪酸鎖は、それぞれ、鎖毎にいくつかの不飽和結合を有し、それは、鎖毎の炭素−炭素二重結合の数としても知られ、一般的には0〜3の範囲であるが、これはより高くてもよく、特に、藻から得られる油であり、このものは、鎖当たり5または6の多数の不飽和結合を有し得る。本発明において用いられる再生可能資源から得られる供給原料中に存在する分子は、したがって、トリグリセリドの分子当たりで表される、多数の不飽和結合を有し、これは、有利には、0〜18の範囲である。これらの供給原料において、脂肪族炭化水素鎖当たりの不飽和結合の数として表される不飽和度は、有利には0〜6である。再生可能資源から得られる供給原料はまた、一般的に、種々の不純物、特にヘテロ原子、例えば窒素も含む。植物油中の窒素の量は、それらの性質に応じて、一般的に約1〜100重量ppmの範囲である。それらは、特定の供給原料について1重量%以下であってよい。これらの供給原料は、純粋に、あるいはオイル流出物、例えば直流ガスオイルまたは真空蒸留物との混合物として用いられてよい。
【0145】
(操作条件(転換方法の第6の特定の実施))
本発明による水素化処理方法は、以下の操作条件下で行われる:温度;250〜400℃の範
囲、圧力;1〜10MPaの範囲、好ましくは3〜10MPaの範囲、より一層好ましくは3〜6MPaの範囲、毎時空間速度;0.1〜10h
−1の範囲、好ましくは0.2〜5h
−1の範囲。水素化処理されるべき液体供給原料と混合される水素の全量は、触媒帯域(単数または複数)中の水素/炭化水素比が、水素200〜2000Nm
3/m
3(供給原料)の範囲、好ましくは水素200〜1800Nm
3/m
3(供給原料)の範囲、非常に好ましくは水素500〜1600Nm
3/m
3(供給原料)の範囲であるようにされる。水素リッチなガスの流れは、有利には、水素の補給および/または以下に記載の分離工程から得られる気体流出物の再循環に由来してよく、気体流出物は、再循環させられおよび混合される前に1回以上の中間精製処理を経た水素リッチなガスを含有する。
【0146】
(実施(転換方法の第6の特定の実施))
水素化処理触媒であって、本発明によるメソ構造化材料が前駆体である、ものが、ガスオイルおよび/またはケロセンを製造するために用いられ得る、当業者に公知のあらゆる方法において用いられてよい。それは、固定床様式で操作されるあらゆるタイプの反応器において、単独でまたは別の触媒と組み合わせて行われてよい。水素化処理工程の後、生じた流出物は、分離工程を経、これにより、気体流出物および水素化処理された液体流出物が得られ、液体流出物の少なくとも一部は、水素化処理反応帯域の上流に再循環させられる。気体流出物は、主に、水素、一酸化炭素および二酸化炭素、1〜5個の原子を含有する軽質炭化水素および水蒸気を含有する。この分離工程の目的は、したがって、液体から気体を分離すること、および、特に、水素リッチなガス、並びに、少なくとも1種の水素化処理された液体流出物、好ましくは、1重量ppm未満の窒素含有率を有するものを回収することである。
【0147】
水素化処理された液体流出物は、本質的に、n−パラフィンによって構成され、このn−パラフィンは、有利には、ガスオイルプールおよび/またはケロセンプールに組み入れられる。この水素化処理された液体流出物の冷温特性(cold property)を向上させるために、任意の水素異性化工程が、好ましくは、n−パラフィンを、より良好な冷温特性を有する分枝パラフィンに転換するために行われる。水素異性化工程は、有利には、分離型反応器内で行われるが、水素異性化触媒が、水素化処理工程の触媒と同一であり、それ故に、本発明の触媒と同一である場合、全方法は、単一の工程において、1つ以上の触媒帯域を含有する同一の反応器内で行われ得る。任意の水素異性化工程は、150〜500℃の範囲、好ましくは150〜450℃の範囲、非常に好ましくは200〜450℃の範囲の温度、1〜10MPaの範囲、好ましくは2〜10MPaの範囲、非常に好ましくは1〜9MPaの範囲の圧力で操作され、毎時空間速度は、有利には0.1〜10h
−1の範囲、好ましくは0.2〜7h
−1の範囲、非常に好ましくは0.5〜5h
−1の範囲とされ、水素流量は、水素/炭化水素の体積比が、有利には、水素70〜1000Nm
3/m
3(供給原料)の範囲、供給原料の体積(m
3)当たり水素100〜1000標準m
3、好ましくは、供給原料の体積(m
3)当たり水素150〜1000標準m
3であるようにされる。好ましくは、任意の水素異性化工程は、並流様式で行われる。
【0148】
水素化処理された流出物または水素化処理および水素異性化された流出物の少なくとも一部、好ましくは、全ては、次いで有利には、1回以上の分離工程を経る。この工程の目的は、液体からガスを分離すること、特に、水素リッチなガスを回収することであり、この水素リッチなガスは、軽質化合物、例えば、C
1−C
4留分および種々の液体流出物、特に、少なくとも1種のガスオイル留分(250℃+留分)、良好な品質の少なくとも1種のケロセン留分(150−250℃留分)および少なくとも1種のナフサ留分を含有していてもよく、少なくとも1種のナフサ留分は、有利には、水蒸気分解または接触改質装置に送られ得る。
【0149】
本発明の水素化処理方法を用いて、特に水素異性化の後に得られる生成物であるガスオイルおよびケロセンには、優れた特徴が与えられる。再生可能供給原料、例えば、コークスまたはリグノセルロースバイオマスから得られた原油ベースのガスオイルおよび/または添加剤と混合した後、得られるガスオイルベースは優れた品質のものである:その硫黄含有率は10重量ppm未満であり、その全芳香族化合物含有率は5重量%未満であり、ポリ芳香族化合物含有率は2重量%未満であり、そのセタン指数は優れており、すなわち55超であり、その密度は、840kg/m
3未満、通常820kg/m
3超であり、40℃でのその動的粘度は2〜8mm
2/sであり、その冷温特性は既存の基準と適合可能であり、限界ろ過温度(limiting filterability temperature)は−15℃であり、曇り点は−5℃未満である。
【0150】
再生可能供給原料、例えば、コークスまたはリグノセルロースバイオマスから得られたオイルベースのケロセンおよび/または添加剤と混合した後に得られたケロセン留分は、以下の特徴を有する:密度;775〜840kg/m
3、−20℃での密度:8mm
2/s未満、結晶消失点(crystal disappearance point):−47℃未満、引火点:38℃超、および煙点:25mm超。
【0151】
本発明は、以下の実施例によって例証されることとなる。
【0152】
(実施例)
以下の実施例において、用いられたエアロゾル技術は、本発明の開示において上述されたものであった。記載された合成手順に基づき、触媒中の材料の量を、想定される用途に応じて適合させた。用いられた分散型ラマン分光計は、Horiba Jobin-Yvonによって供給される市販のLabRAM Aramis装置であった。用いられたレーザは、532nmの励起波長を有していた。以下の実施例の実施におけるこのスペクトログラフの操作は、上述された。
【0153】
(実施例1:本発明による材料Aであって、式H
6CoMo
6O
243−・3/2Co
2+(CoMo
6(Co)と示される)およびH
4Co
2Mo
10O
386−・3Co
2+(Co
2Mo
10(Co)と示される)を有するアンダーソン型のHPAを有し、ケイ素をベースとするメソ構造化酸化物マトリクスにおいて最終材料に対して21.3重量%のMoO
3および5.5重量%のCoOに等しい全含有率を有するものの調製)
2.10モル/LのMoO
3(Axens)および12.6モル/LのH
2O
2を含有する水溶液を、撹拌しながら周囲温度で調製した。次いで、Co(CO
3)
2(Alfa Aesar)の溶液を、あらゆる発熱性を回避するために注意深く導入し、これにより、1.05モル/LのCo(CO
3)
2の最終濃度を得た。最終材料について行われたラマン分析により、主な種としてアンダーソン型HPAであるH
6CoMo
6O
243−・3/2Co
2+およびH
4Co
2Mo
10O
386−・3Co
2+の存在が明らかになった。この0.21モル/LのHPAの溶液2.94mLを取り出して、18.9gの水および6.90mgのHCl中で16時間にわたり加水分解されていた10.6gのTEOSを含有する溶液に添加した。18.7gの水および8.31gのエタノール中に、3.79gのF127(BASF Corporation)および12.8mgのHClを含有する溶液を調製して、周囲温度で16時間にわたり撹拌した。HPAの塩および加水分解されたTEOSを含有する溶液を、10分間にわたり均一にして、次いで、滴下によりF127を含有する溶液と混合した。それを、30分間にわたり一緒に撹拌し、次いで、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。小滴を、上記本発明の開示において記載された手順を用いて乾燥させた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。回収された粉末を、空気中5時間にわたりT=550℃で焼成した。次いで、Soxhletを用いて、固体をメタノールにより2時間にわたり洗浄することによって、HPAの塩を再生させた。最後に、固体を80℃で24時間にわたり乾燥させた。固体を、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。窒素容積測定分析の結果は、最終材料の比表面積がS
BET=328m
2/gであり、メソ細孔径が7.4nmであった。小角XRD分析により、角度2θ=0.78における相関ピークが強調表示された。ブラッグの法則:2d*sin(0.39)=1.5406を用いて、メソ構造化マトリクスの
細孔間の相関距離dを計算し、すなわち、d=14.6nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、したがってe=7.2nmであった。得られた基本球状粒子のSEM画像により、これらの粒子が50〜700nmの径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布が約300nmを中心とすることが示された。最終手段のラマンスペクトルにより、2種のアンダーソン型HPAの塩の特徴的なバンドが示された:Co
2Mo
10(Co);957、917、602、565、355、222cm
−1およびCoMo
6(Co);952、903、575、355、222cm
−1。
【0154】
(実施例2:本発明による材料Bであって、式HPCoMo
11O
406−・3Co
2+およびPMo
12O
403−・3/2Co
2+を有するケギン型のHPAを有し、ケイ素をベースとするメソ構造化酸化物マトリクスにおいて最終材料に対して20重量%のMoO
3および3.8重量%のCoOおよび0.8重量%のP
2O
5に等しい全含有率を有するものの調製)
0.30モル/LのH
3PMo
12O
40・13H
2Oを含有する溶液を、周囲温度で調製した。最終溶液に対して0.97モル/LのBa(OH)
2・8H
2Oと、最終溶液に対して1.31モル/LのCoSO
4・7H
2Oとを、この溶液に添加した。2時間の撹拌の後、BaSO
4の沈殿物が形成された。これを、連続する2回のろ過によって溶液から分離した。乾燥するまでろ液を蒸発させることによって、HPAの塩を得た。最終材料について行ったラマン分析により、HPCoMo
11O
406−およびPMo
12O
403−のケギン型HPAの存在が明らかになった。10.8gのTEOS、並びに、18.9gの水および6.90mgのHClを含有する溶液を、16時間にわたり加水分解した。8.30gのEtOH並びに35.1gの水および12.8mgのHCl中の3.78gのF127を、16時間にわたり溶解させることによって、別の溶液を調製した。加水分解の終わりに、1.03gのHPAの塩を、TEOSを含有する溶液に添加した。10分間にわたる撹拌の後、この溶液を、F127の水−エタノール溶液に滴下した。それを、30分間にわたり撹拌し、次いでエアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細小滴の形態で、圧力(P=1.5バール)下に導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。本発明の上記開示において記載された手順を用いて、小滴を乾燥させた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、回収された粉末を、空気中5時間にわたりT=550℃で焼成した。次いで、Soxhletを用いて、メタノールにより2時間にわたり固体を洗浄することによって、HPAの塩を再生させた。最後に、固体を80℃で24時間にわたり乾燥させた。固体を、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。窒素容積測定分析の結果は、最終材料の比表面積が、S
BET=335m
2/gであり、メソ細孔径が7.4nmであった。小角XRD分析により、角度2θ=0.78における相関ピークが強調表示された。ブラッグの法則:2d*sin(0.39)=1.5406を用いて、メソ構造化マトリクスの細孔間の相関距離dを計算し、すなわちd=14.6nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、したがってe=7.2nmであった。得られた基本球状粒子のSEM画像により、これらの粒子は、50〜700nmの径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は、約300nmを中心とすることが示された。得られた材料は、ケギン型のヘテロポリアニオンHPCoMo
11O
406−およびPMo
12O
403−の塩の特徴的なバンドを示すラマンスペクトルを有する。HPCoMo
11O
406−の主なバンドは、232、366、943および974cm
−1に位置する。このタイプの間
隙ケギン型の最も強い特徴的なバンドは、974cm
−1に位置する。PMo
12O
403−の主なバンドは、251、603、902、970および990cm
−1に位置する。このケギン型HPAの最も強い特徴的なバンドは、990cm
−1に位置する。
【0155】
(実施例3:本発明による材料Cであって、式PW
12O
403−・3H
+を有するケギン型のHPA(市販のHPA)を有し、最終材料に対して23.5重量%のWO
3および0.6重量%のP
2O
5に等しい全含有率を有するものの調製。メソ構造化酸化物マトリクスは、アルミニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Alモル比は、0.37に等しい。最終材料に対して2.6重量%のNiOに等しい全含有率でのNiの含浸)
10.0gの三塩化アルミニウム六水和物を、21.1gの水および7.70mgのHCl中に溶解させた。10分間にわたる溶解の後、3.21gのTEOSを添加した。この溶液の加水分解を16時間にわたり行った。36.9gの水および14.3mgのHCl並びに9.24gのエタノール中に、4.21gのF127を溶解させることによって溶液を調製し、この溶液を、周囲温度で16時間にわたり撹拌した。0.37モル/LのHPAを有するH
3PW
12O
40の水溶液2.88mLを、加水分解されたTEOSおよびAlCl
3を含有する溶液に添加した。10分後、この溶液を、界面活性剤の水−エタノール溶液に滴下した。それを、30分間にわたり一緒に撹拌した後、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。上記の本発明の開示において記載された手順に従って、小滴を乾燥させた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、回収された粉末を、空気中5時間にわたりT=550℃で焼成した。次いで、Soxhletを用いて、2時間にわたりメタノールにより固体を洗浄することよって、HPAを再生させた。最後に、固体を、80℃で24時間にわたり乾燥させた。乾式含浸によってニッケルプロモータを、得られた固体上に沈着させた。1.02モル/Lの硝酸ニッケルの水溶液を用いて、固体の細孔容積を充填した。乾式含浸様式に従って、溶液を固体に滴下した。固体を、12時間にわたり成熟させ、次いで、120℃の温度で12時間にわたりオーブン乾燥させた。固体を、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。窒素容積測定分析によると、最終材料の比表面積は、S
BET=180m
2/gであり、メソ細孔径は7.2nmであった。小角XRD分析により、角度2θ=0.64に相関ピークが強調表示された。ブラッグの法則:2d*sin(0.32)=1.5406を用いて、メソ構造化マトリクスの細孔間の相関距離dを計算し、すなわち、d=14.2nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、従ってe=7.0nmであった。得られた基本球状粒子のSEM画像により、これらの粒子は50〜700nmの径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は約300nmを中心とすることが示された。得られた材料は、ケギン型のヘテロポリアニオンPW
12O
403−の塩の特徴的なバンドを示すラマンスペクトルを有していた。PW
12O
403−の主なバンドは、216、518、990および1004cm
−1に位置している。
【0156】
(実施例4:本発明による材料Dであって、式H
2P
2Mo
5O
234−を有するストランドバーグ型のHPAを有し、Si/Alモル比=0.5を有するアルミニウムおよびケイ素をベースとするメソ構造化酸化物マトリクスにおいて最終材料に対して14重量%のMoO
3および2.9重量%のNiOおよび2.8重量%のP
2O
5に等しい全含有率を有するものの調製)
3.61モル/LのMoO
3、1.44モル/LのH
3PO
4、1.44モル/LのNi(OH)
2を含有する水溶液を、撹拌しながら周囲温度で調製した。最終材料について行われたラマン分析より、大部分の種としてのストランドバーグ型HPAであるH
2P
2Mo
5O
234−の存在が明らかになった。8.60gの三塩化アルミニウム六水和物を、20.0gの水および7.30mgのHCl中に溶解させた。10分間にわたる溶解の後、3.71gのTEOSを添加した。この溶液の加水分解を16時間にわたり行った。35.7gの水および13.6mgのHCl並びに8.80gのエタノール中に、4.01gのF127および2.18gのPPO(polypropylene oxide:ポリプロピレンオキシド)を溶解させることによって、溶液を調製した;溶液を、周囲温度で16時間にわたり撹拌した。H
2P
2Mo
5O
234−の水溶液1.58mL(HPA 0.72モル/L)を、加水分解されたTEOSおよびAlCl
3を含有する溶液に添加した。10分後、この溶液を、界面活性剤の水−エタノール溶液に滴下した。それを、30分間にわたり一緒に撹拌した後、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。上記の本発明の開示において記載された手順に従って、小滴を乾燥させた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、回収された粉末を、空気中5時間にわたりT=550℃で焼成した。次いで、Soxhletを用いて、2時間にわたりメタノールにより固体を洗浄することよって、HPAを再生させた。最後に、固体を、80℃で24時間にわたり乾燥させた。固体を、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。窒素容積測定分析により、最終材料の比表面積が、S
BET=180m
2/gであり、メソ細孔径が8.5nmであることが提供された。小角XRD分析により、角度2θ=0.63における相関ピークの観察が可能となった。ブラッグの法則:2d*sin(0.31)=1.5406を用いて、メソ構造化マトリクスの細孔間の相関距離dを計算し、すなわち、d=14nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故に、e=5.5nmであった。得られた基本球状粒子のSEM画像により、これらの粒子が、50〜700nmの径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布が約300nmを中心とすることが示された。得られた材料は、ストランドバーグ型ヘテロポリアニオンH
2P
2Mo
5O
234−の特徴的なバンドを示すラマンスペクトルを有していた。H
2P
2Mo
5O
234−の主なバンドは、370、395、893および942cm
−1に位置している。このタイプのストランドバーグ型HPAの最も強い特徴的なバンドは、942cm
−1に位置している。
【0157】
(実施例5:本発明による材料Eであって、ケギン型PVMo
11O
404−・2Ni
2+、PV
2Mo
10O
405−・5/2Ni
2+、PV
3Mo
9O
406−・3Ni
2+、およびPV
4Mo
8O
407−・7/2Ni
2+のHPAを有し、アルミニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Alモル比=0.1を有するメソ構造化酸化物マトリクスにおいて最終材料に対して12重量%のMoO
3、1.1重量%のNiOおよび0.69重量%のV
2O
5を有するものの調製)
MoO
3の形態のモリブデンおよびH
3PO
4の形態のリンを、それぞれ1.88モル/Lおよび0.17モル/Lの濃度で水に溶解させることによってHPAを得、次いで、完全な溶解の後、0.085モル/Lの濃度でバナジウムV
2O
5を加えた。最終材料について行われたラマンおよびリンNMR分析により、主要な種として、置換ケギン型HPAであるPVMo
11O
404−、PV
2Mo
10O
405−、PV
3Mo
9O
406−およびPV
4Mo
8O
407−の存在が明らかになった。12.0gの三塩化アルミニウム六水和物を、19.7gの水および7.20mgのHCl中に溶解させた。10分間にわたって溶解させた後、1.04gのTEOSを添加した。この溶液の加水分解を16時間にわたり行った。3.93gのF127および2.19gのPPO(ポリプロピレンオキシド)を、35.8gの水および13.3mgのHCl並びに8.63gのエタノール中に溶解させることによって、溶液を調製し、この溶液を、16時間にわたり周囲温度で撹拌した。PVMo
11O
404−・4H
+の水溶液1.45mL(HPA 0.17モル/L)を、加水分解されたTEOSおよびAlCl
3を含有する溶液に添加した。10分後、この溶液を、界面活性剤の水−エタノール溶液に滴下した。それを、30分間にわたり一緒に撹拌した後、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。上記本発明の開示において記載された手順に従って、小滴を乾燥させた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、回収された粉末を、空気中5時間にわたりT=550℃で焼成した。次いで、Soxhletを用いて、2時間にわたりメタノールにより固体を洗浄することよって、HPAを再生させた。最後に、固体を、80℃で24時間にわたり乾燥させた。固体を、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、SEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。窒素容積測定分析により、最終材料についての比表面積は、S
BET=180m
2/gであり、メソ細孔径は8.5nmであることが提供された。小角XRD分析により、角度2θ=0.63における相関ピークの観察が可能となった。ブラッグの法則:2d*sin(0.31)=1.5406を用いて、メソ構造化マトリクスの細孔間の相関距離dを計算し、すなわち、d=14nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故に、e=5.5nmであった。得られた基本球状粒子のSEM画像により、これらの粒子が、50〜700nmの径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布が約300nmを中心とすることが示された。
【0158】
次いで、これにより得られた粒子に、硝酸ニッケルの溶液を含浸させた。この溶液は、粒子の細孔容積に等しい容積を有し、Ni/Mo比は、0.35に等しかった。得られた固体を、12時間にわたり120℃で乾燥させた。得られた材料のラマンスペクトルによって、式PVMo
11O
404−、PV
2Mo
10O
405−、PV
3Mo
9O
406−およびPV
4Mo
8O
407−を有する4つのケギン型ヘテロポリアニオンの混合物の存在が明らかになったが、これは、967cm
−1における肩部を伴う、981cm
−1における強いバンドおよび888cm
−1、615cm
−1、478cm
−1および256cm
−1における二次的バンドの存在によって実証された。
【0159】
(実施例6:本発明による材料Fであって、ストランドバーグ型のHPAであるH
2P
2Mo
5O
234−・2Ni
2+を有し、アルミニウムおよびケイ素をベースとし、Si/Alモル比=0.1を有するメソ構造化酸化物マトリクスにおいて最終材料に対して21重量%のMoO
3、4.3重量%のNiOおよび4.1重量%のP
2O
5に等しい全含有率を有するものの調製)
3.61モル/LのMoO
3、1.44モル/LのH
3PO
4、および1.44モル/LのNi(OH)
2を含有する水溶液を、撹拌しながら周囲温度で調製した。最終材料について行われたラマン分析により、大部分の種として、ストランドバーグ型HPAであるH
2P
2Mo
5O
234−の存在が明らかになった。10.3gの三塩化アルミニウム六水和物を、20.2gの水および7.40mgのHCl中に溶解させた。10分間にわたる溶解の後、0.89gのTEOSを添加した。この溶液の加水分解を、16時間にわたり行った。34.9gの水および13.7mgのHCl並びに8.86gのエタノール中に4.04gのF127を溶解させることによって溶液を調製した;溶液を、周囲温度で16時間にわたり撹拌した。H
2P
2Mo
5O
234−の水溶液2.65mL(HPA 0.72モル/L)を、加水分解されたTEOSおよびAlCl
3を含有する溶液に添加した。10分後、この溶液を、界面活性剤の水−エタノール溶液に滴下した。それを、30分間にわたり一緒に撹拌した後、エアロゾル発生器の噴霧室に送り、溶液を、微細な小滴の形態で、圧力下(P=1.5バール)で導入されたベクターガス(乾燥空気)の作用の下に噴霧した。上記本発明の開示において記載された手順に従って、小滴を乾燥させた。乾燥オーブンの温度を350℃に固定した。次いで、回収された粉末を、空気中5時間にわたりT=550℃で焼成した。次いで、Soxhletを用いて、2時間にわたりメタノールにより固体を洗浄することよって、HPAを再生させた。最後に、80℃で24時間にわたり固体を乾燥させた。固体を、小角XRD、窒素容積測定分析、TEM、XRFおよびラマン分光法によって特徴付けた。TEM分析により、最終材料は、バーミキュラ構造によって特徴付けられる組織化したメソ多孔度を有することが示された。窒素容積測定分析により、最終材料についての比表面積はS
BET=180m
2/gであり、メソ細孔径は5.6nmであった。小角XRD分析により、角度2θ=0.64に相関ピークの観察が可能となった。ブラッグの法則:2d*sin(0.32)=1.5406を用いて、メソ構造化マトリクスの細孔間の相関距離dを計算し、すなわちd=13.1nmであった。メソ構造化材料のマトリクスの壁の厚さは、e=d−φによって定義され、それ故にe=7.5nmであった。得られた基本球状粒子のSEM画像により、これらの粒子は、50〜700nmの径によって特徴付けられる寸法を有し、これらの粒子のサイズ分布は約300nmを中心とすることが示された。得られた材料は、ストランドバーグ型のヘテロポリアニオンH
2P
2Mo
5O
234−の特徴的なバンドを示すラマンスペクトルを有していた。H
2P
2Mo
5O
234−の主なバンドは、371、394、892および941cm
−1に位置する。このタイプのストランドバーグ型HPAの最も強い特徴的なバンドは、941cm
−1に位置する。
【0160】
(実施例7:接触分解ガソリンを表すモデル分子からのガソリン留分の水素化脱硫のための触媒A
Sの前駆体としての材料Aの使用)
材料Aの硫化後に得られた触媒を、10重量%の2,3−ジメチルブタ−2−エンおよび0.33重量%の3−メチルチオフェン(すなわち、供給原料に対して硫黄1000ppm)を含有する接触分解ガソリン(FCC)を表すモデル供給原料により評価した。用いられた溶媒はヘプタンであった。材料Aの硫化後に得られた触媒を、A
Sと示した。
【0161】
A1と示される従来のCoMo触媒であって、2.9重量%のCoOおよび10.3重量%のMoO
3を、遷移アルミナ上に担持されて含有し、かつ、135m
2/gに等しい比表面積と、1.12cm
3/gに等しい細孔容積とを有する、ものを基準として用いた。この触媒A1中に存在するコバルトおよびモリブデンは、HPAの形態ではなかった。
【0162】
材料Aおよび触媒A1を、現場外で気相中、500℃で2時間にわたり、H
2中のH
2S流れ中(H
2中H
2S15体積%)で硫化した。したがって、触媒A
S(本発明に合致する)およびA1
S(本発明に合致しない)をそれぞれ得た。材料Aは、硫化工程の前に成形工程を経、前記成形工程は、ペレット化、粉砕およびふるい分けからなり、これにより、1〜2mmの範囲のグラニュロメトリ(granulometry)を有するサンプルのみを回収した。材料Aに類似する方法で、触媒A1を成形した。
【0163】
水素化脱硫反応を、閉鎖型のGrignardタイプの反応器中、3.5MPaに等しい水素圧力下、250℃で行った。触媒A
SおよびA1
Sのそれぞれを、前記反応器中に連続して置いた。サンプルを、異なる時間間隔で取り出し、気相クロマトグラフィーによって分析し、これによって、試薬の消失を観察した。
【0164】
触媒の活性を、硫黄含有化合物に対して一次反応と想定して、硫化物の形態の触媒の体積に規格化した、水素化脱硫反応(HDS)の速度定数kHDSとして表した。触媒の選択性を、規格化した速度定数kHDS/kHDOについて表し、kHDOは、オレフィンの水素化反応(HDO)についての速度定数、すなわち、本件の場合において2,3−ジメチルブタ−2−エンの水素化反応についての速度定数であり、硫化物形態の触媒の体積に対して規格化され、オレフィンに対して一次であると想定される。比kHDS/kHDOは、触媒がより選択的になるにしたがってより増大することになる。オレフィンの水素化が制限されるために生じたガソリンのオクタン価の損失が大幅に最小化されたならば、比kHDS/kHDOの増加は、それ故に、水素化脱硫反応の終わりに得られるガソリンの質に有利である。
【0165】
触媒性能の結果を表1に表す。従来のCoMo/アルミナ触媒を基準として、kHDS/kHDO=100およびkHDS=100とすることによって値を規格化した。
【0167】
表1に示される結果により、非硫化形態(すなわち、酸化物形態)が、ヘテロポリアニオンの形態の金属粒子をメソ構造化マトリクス中に捕捉されて含有する触媒は、従来の触媒A1
Sに対してHDS活性の悪化を伴うことなく、選択性を大幅に増加させるために用いられ得ることが実証された。本発明による触媒A
Sは、従来の触媒より選択的であった:それは、2,3−ジメチルブタ−2−エンの、2,3−ジメチルブタ−2−アンへの水素化を制限し、従来の触媒A1
sにより得られたものより良好な質のガソリン(より良好なオクタン価)を得ることが可能であった。このことは、ガソリン中の低残留硫黄含有率のために、オクタン価は、本発明による触媒A
Sを用いると、著しく少ない程度にまで低減させられることとなることを意味する。
【0168】
(実施例8:直留ガスオイル供給原料の水素化処理のための触媒B
Sの前駆体としての材料Bの使用)
この実施例において、以下のものを基準触媒(B1と示される)として用いた:CoMoP/アルミナ触媒であって以下の組成を有するもの:最終固体に対して、21重量%のMoO
3、4.3重量%のCoOおよび4重量%のP
2O
5。それは、Axensによって供給された。現場内硫化の前に、材料Bおよび触媒B1は、ペレット化、粉砕およびスクリーニングからなる成形工程を経、1〜2mmの範囲のグラニュロメトリを有するサンプルのみを回収した。
【0169】
材料Bおよび触媒B1(30cm
3の材料Bまたは触媒B1を、0.8mmのグラニュロメトリを有するSiC 10cm
3とそれぞれ混合した)の現場内硫化を、50バール、HSV=2h
−1、入口におけるH
2/HC(炭化水素)比(体積流量)=400標準L/Lで行った。硫化供給原料(2%のジメチルジスルフィドで補充されたガスオイル(ArkemaからのEvolution))を、H
2下、反応器に、これが150℃に達した時に導入した。150℃で1時間の後、温度を、25℃/hの昇温勾配を用いて220℃にまで上昇させ、次いで、12℃/hの昇温勾配により、350℃の一定温度段階に達するまで上昇させ、12時間にわたり維持した。触媒B
S(本発明に合致する)およびB1
S(本発明に合致しない)を、このようにして得た。
【0170】
硫化後、温度を、330℃に低下させ、試験ガスオイル供給原料を注入した。触媒試験を行い、その際の全圧は50バールであり、水素は喪失され(再循環なし)、HSV=2h
−1であり、入口におけるH
2/HC体積比は400標準L/Lであり(流量H
2=24標準L・h
−1、供給原料の流量=60cm
3・h
−1)、340℃であった。
【0171】
HDSにおける触媒B
SおよびB1
Sの性能を評価し、かつ、流出物のH
2Sの存在を補うことができるように、流出物を含有する容器を、10L・h
−1の量の窒素でストリッピングした。
【0172】
ここで用いられたガスオイルは、重質アラブ原油から得られた。それは、0.89重量%の硫黄、100重量ppmの窒素、23重量%の芳香族化合物を含有していた。その加重平均温度(weighted mean temperature:WMT)は、324℃に等しく、その密度は0.848g/cm
3に等しかった。WMTは、比[(T
5+2T
50+4T
95)/7]であるとして規定され、ここで、T
xは、「x」重量%が蒸留される温度に相当する。WMTは、したがって、供給原料の5重量%が蒸発させられる温度、供給原料の50重量%が蒸発させられる温度および供給原料の95重量%が蒸発させられる温度を考慮する。
【0173】
触媒B
SおよびB1
Sの性能を表2に示す。それらは、触媒B1
sの活性を100に等しいとして設定し、かつ、それらが硫黄に対して明らかな1.5次のものであると仮定して、相対活性として表される。活性と水素化脱硫転化率(%HDS)とを関連付ける関係は、以下の式によって与えられる:
【0175】
式中、%HDSは、水素化脱硫転化率(HDS)に相当し、以下の式によって定義される:
【0178】
この試験の間の水素化脱硫について得られた結果を表2に記録した。この表において、本発明による触媒B
Sを、工業触媒B1
Sと比較した。
【0180】
表2に示される結果は、本発明による触媒B
Sによって得られたHDS活性が、市販の触媒B1
Sと比較して、著しく増加していることを実証している。
【0181】
(実施例9.1:アニリンの存在下でのトルエンの水素化のための触媒C
Sの前駆体としての材料Cの使用)
アニリンの存在下でのトルエン水素化試験(Hydrogenation of Toluene in the presence of Aniline test:「HTA」試験)は、H
2Sの存在下かつ水素圧力下で担持型硫化触媒の水素化活性(HYD)を評価することを目的とする。水素化転化触媒の酸機能を特徴付ける異性化および分解は、(アニリンの分解の後の)NH
3の存在によって阻害され、その結果、HTA試験が、試験触媒のそれぞれの水素化力を具体的に評価するために用いられ得る。アニリンおよび/またはNH
3は、したがって、担体の酸性部位との酸−塩基反応を介して反応することになる。並列したいくつかのミクロ反応器を含む装置により各HTA試験を行った。各HTA試験について、触媒の硫化および適切な触媒試験期のために、同一の供給原料を用いた。4cm
3のカーボランダム(SiC、60μm)と混合した4cm
3の触媒を反応器に充填した。
【0182】
この試験のために用いられた供給原料は、以下の通りであった:
− トルエン 20重量%,
− シクロヘキサン 73.62重量%,
− DMDS(ジメチルジスルフィド) 5.88重量%(3.8重量%S)、
− アニリン 0.5重量%(750ppmN)。
【0183】
材料Cを、その酸化物(不活性)形態で、反応器中に充填した。同一の供給原料を用いて装置内で、活性化(硫化)を行った。DMDSの分解後に形成されたH
2Sは、酸化相を硫化するものであった。供給原料に存在するアニリンの量を、分解後に約750ppmのNH
3を得るように選択した。硫化後、C
Sで示される触媒を得た。充填前に、材料Cは、ペレット化、粉砕およびスクリーニングからなる成形工程を経、これにより、1〜2mmの範囲のグラニュロメトリを有するサンプルのみを回収した。
【0184】
トルエンの水素化試験の操作条件は、以下の通りであった:
− P=6MPa、
− HSV=2h
−1(供給原料の流量=8cm
3/h)、
− H
2/HC=450NL/L(H
2流束=3.6NL/L)、
− T=350℃。
【0185】
転化したトルエンの百分率を評価して、反応について一次を仮定することによって、そこから、以下の関係式を用いて、水素化活性を推論した:
【0187】
(%HYD
トルエン=転化したトルエンの百分率)。
【0188】
C1で示される市販の触媒であって、配合NiW(27重量%のWO
3)を有し、シリカアルミナタイプの担体上に調製され、30重量%のシリカを担体中に含む、ものを、触媒C
Sを得るためにそれぞれ行われたものと同一の手順を用いて、成形および硫化した。触媒C1
Sを、このようにして得、このものは、これを基準として100の活性を有していた。触媒C
S(本発明に合致する)は、市販の触媒C1
Sに対して105に等しい相対活性を有しており、このことにより、本発明の触媒は、本発明の触媒より14%多いW原子を有する市販の触媒より著しく高いWの原子当たりの水素化活性を有することが実証された。したがって、触媒C
Sは、本発明の触媒C
Sと比較して14%多いW原子を充填された市販の触媒と同一の水素化活性を生じさせるために用いられ得る。
【0189】
(実施例9.2:VDの穏やかな水素化分解における触媒C’
S(本発明)およびC1’
S(本発明に合致しない)の評価)
用いられた供給原料は、真空蒸留物(VD)タイプの供給原料であり、以下の表に要約される主な特徴を有していた。
【0191】
2重量%の硫黄および900ppmのNを有するように、この供給原料を、DMDSおよびアニリンで補足した。
【0192】
4cm
3の酸化物形態の材料C、次いで、4cm
3の触媒C1を、反応器中に充填した。反応装置内で活性化(硫化)を行った後に、上記の供給原料を用いる試験を開始した。DMDSの分解後、H
2Sが、材料Cを実際に硫化するものであった。触媒C’
SおよびC1’
Sをそれぞれ得た。
【0193】
試験の間に適用された操作条件は以下の通りであった:
− P=6MPa、
− HSV=0.6h
−1、
− H
2/HC
出口=480NL/L、
− T=380℃。
【0194】
触媒結果を表3に要約する。総転化率は、初めのVD供給原料中に存在する370℃超の沸点を有する炭化水素フラクションの、流出物中に存在する370℃未満の沸点を有する炭化水素への転化率に相当する。総転化率を、流出物中に存在する370℃未満の沸点を有する炭化水素によって構成される重量による割合に等しいとして求めた。
【0195】
触媒結果を以下の表3に要約する。本発明による触媒C’
Sは、それがタングステン原子を14%少なく含有していたとしても、市販の触媒C1’
Sと同様の高いレベルに総転化率を維持するために用いられ得る。触媒C’
Sは、したがって、市販の触媒C1’
Sと同様に活性であり、市販の触媒C1’
Sのものと同様に高い水素化脱硫活性を有する。
【0197】
(実施例10:重質炭化水素留分の水素化転化のための触媒D
sの前駆体としての材料Dの使用。供給原料DAO C7についての、沸騰床様式における触媒性能の評価)
試験された炭化水素供給原料は、表4に示される特徴を有する脱アスファルト油(DAO)であった。
【0199】
沸騰床反応器を備えたパイロット装置内で試験を行った。試験を通して、触媒を常に沸騰させた。硫化工程を行う前に、材料Dは、ペレット化、粉砕およびスクリーニングからなる成形工程を経、これにより、1〜2mmの範囲のグラニュロメトリを有するサンプルのみを回収した。
【0200】
初めに、材料Dの硫化工程を行った:1リットルの材料Dを反応器中に充填して、次いで、ジメチルジスルフィドで補足した蒸留からのガスオイルを、温度を徐々に343℃にまで上げながら、反応器に供給した。このようにして触媒D
sを得た。次いで、供給原料(脱アスファルト油)を注入し、温度を、全圧110バールで430℃に調節した。毎時空間速度を、1.2L
供給原料/L
触媒/hに固定した。水素流量は、800L/L(装入材料)の比に相当していた。
【0201】
操作条件は、等温タイプのものであり、このことは、触媒D
sの失活が経時的にモニタリングされ得るだろうことを意味していた。この場合の時間は、供給原料の液量(バレル)/触媒の重量(ポンド)(bbl/lb)で表され、それは、触媒の質量に対して触媒上を通過する供給原料の累積量を表す。
【0202】
触媒性能は:
− 残渣(重量%)HD540°
+の転化度=100×[(540°
+の重量%)
供給原料−(540°
+の重量%)
流出物]/(540°
+の重量%)
供給原料
− コンラドソン炭素の転化度HDCCR=100×(CCR
供給原料−CCR
流出物)/CCR
供給原料
− 脱硫度HDS(重量%)=[(重量%S)
供給原料−(重量%S)
流出物]/[(重量%S)
供給原料]*100
− 脱窒度HDN(重量%)=[(重量%N)
供給原料−(重量%N)
流出物]/[(重量%N)
供給原料]*100、
として表される。
【0203】
表5に示される結果は、定常状態で得られたものである。
【0205】
したがって、本発明による材料Dの硫化後に得られた触媒D
Sの存在下に行われた本発明の水素化転化方法により、満足のいく触媒性能がもたらされたようである。
【0206】
(実施例11:重質炭化水素留分の二工程水素化処理のための触媒E
sの前駆体としての材料Eの使用。常圧残渣供給原料についての、固定床様式での触媒性能の評価)
この実施例において行われた試験により、水素化脱金属工程(HDM)およびその後の水素化脱硫工程(HDS)を含む水素化処理方法が例証され、前記工程のそれぞれを、互いに直列に配置された固定床管型反応器内で行った。材料Eの硫化の後に得られた触媒E
Sの触媒評価を、この構成において行った:それを、NiMoP/アルミナ組成(9重量%のMoO
3、1.85重量%のNiO、1.78重量%のP
2O
5、多峰性デルタアルミナ)を有する従来のHDM触媒の下流に置いた。
【0207】
供給原料は、中東起源(Arabian Light)の常圧残渣(atmospheric residue:AR)によって構成されていた。この残渣は、高い粘度(45mm
2/s)、高いコンラドソン炭素含有率(10.2重量%)および高いC7アスファルテン含有率(3.2重量%)、並びに、高いニッケル含有率(10.6重量ppm)、高いバナジウム含有率(41重量ppm)、および高い硫黄含有率(3.38重量%)によって特徴付けられる。供給原料の完全な特徴を表6に報告する。
【0209】
第1の反応器に、3mLの従来のHDM触媒を充填し、第2の反応器に、3mLの本発明の材料E(硫化後にHDS触媒として作用する)を充填した。各反応器内で、固体(すなわち、第1の反応器におけるHDM触媒および第2の反応器における材料E)を、200ミクロンの炭化ケイ素で希釈した。
【0210】
材料Eを、約300nmを中心とする50〜700nmの径を有する基本球状粒子の形態で調製したので、反応器への充填前に事前成形工程を行った。この成形工程は、ペレット化、粉砕およびスクリーニングからなり、1〜2mmの範囲のグラニュロメトリを有するサンプルのみを回収した。次いで、圧縮充填密度(settled packing density:SPD、沈降後の所与の体積に対する触媒の質量)を測定し、第2の反応器に、3mLの成形された材料Eを充填した。
【0211】
流体(残渣油+再循環水素)の流れは、反応器のそれぞれにおいて下向きであった。このタイプの装置は、固定床残渣水素化処理のためのHYVAHL(登録商標)装置の反応器の操作を表すものである。HDM触媒は、本発明による触媒E
Sの上流でアスファルテン含有率を大幅に低減させるために用いられ得る。
【0212】
反応器のそれぞれにおいて350℃の最終温度で、DMDSで補足したガスオイル留分を流通させることによる硫化工程の後に、表7の操作条件下に、上述の常圧残渣により装置を操作した。
【0214】
常圧残渣を、第1の反応器に注入し、次いで、試験温度まで加熱した。300時間の安定化期間の後、水素化脱硫(HDS度)、水素化脱金属(HDM度)、コンラドソン炭化の除去(HDCCR度)、C7アスファルテンの除去(HDAsC7度)および水素化脱窒(HDN度)の性能を、表8に記録しかつ表した。
【0215】
HDS度は、以下のように定義される:
HDS(重量%)=((重量%S)
供給原料−(重量%S)
流出物)/(重量%S)
供給原料×100
HDMのレベルは以下の通りに定義される:
HDM(重量%)=((重量ppmNi+V)
供給原料−(重量ppmNi+V)
流出物)/(重量ppmNi+V)
供給原料×100
同じ原理を用いて、HDCCR度(HDCCR(重量%)=((重量%CCR)
供給原料−(重量%CCR)
流出物)/(重量%CCR)
供給原料×100)が、コンラドソン炭素の除去について定義され得、HDAsC7度(HDAsC7(重量%)=((重量%AsC7)
供給原料−(重量%AsC7)
流出物)/(H重量%AsC7)
供給原料×100)が、C7アスファルテンの除去について定義され得、最後に、HDN度(HDN(重量%)=((重量%N)
供給原料−(重量%N)
流出物)/(重量%N)
供給原料×100)が、窒素の除去について定義され得る。
【0217】
したがって、本発明による材料Eの硫化後に得られる触媒E
sの存在下に水素化脱金属事前処理のための工程および水素化脱硫工程を組み合わせる本発明の水素化処理方法により、良好なHDS活性および良好なHDM活性の両方がもたらされるようである。触媒E
sはまた、非常に満足のいくレベルの窒素、CCRおよびアスファルテンの除去を達成するために用いられ得る。これらの良好な性能は、触媒内の試薬の最適な輸送、および、金属、特にバナジウムおよびモリブデンの最適化された分散に起因し得る。
【0218】
(実施例12:再生可能資源から得られた供給原料の水素化処理のための触媒F
sのための前駆体としての材料Fの使用。ナタネ油を用いる、触媒性能の評価)
50mL/hの事前精製したナタネ油であって、920kg/m
3の密度を有しかつ、10ppm未満の硫黄含有率と、35に等しいセタン指数とを有する、ものを、100mLの材料Fを充填した等温固定床反応器に導入した。水素700Nm
3/m
3(供給原料)を、300℃の温度および5MPaの圧力で維持された反応器に導入した。
【0219】
ここに例証される水素化処理方法において用いられたナタネ油供給原料の主な特徴を、表9に記録する。
【0220】
ナタネ油によって構成された供給原料は、トリグリセリドを含有し、その炭化水素鎖は、14〜24個の炭素原子を含有し、かつ、偶数個の炭素原子のみを含有していた。トリグリセリドの命名は、a:bの形態であり、aは、トリグリセリドの炭化水素鎖のそれぞれの炭素原子の数に相当し、bは、前記炭化水素鎖のそれぞれにおいて存在する炭素−炭素二重結合の数に相当する。
【0222】
本発明による材料Fを、2重量%のジメチルジスルフィド(DMDS)で補足された直留ガスオイル供給原料を用いて、350℃の温度で現場内硫化した。圧力下での反応装置内の現場内硫化によって触媒F
sを生じさせた後、表9に記載されたナタネ油を、反応装置に送った。
【0223】
触媒F
sを硫化状態に維持するために、DMDSの形態の硫黄50重量ppmをナタネ油に添加した。反応条件下、DMDSを完全に分解し、メタンおよびH
2Sを形成した。水素化処理方法を行うための操作条件および得られた触媒結果を、表10に示す。
【0225】
生じた150℃+留分(すなわち、150℃以上の沸点を有する留分)は、線状パラフィン(nC
14〜nC
24)によって主に構成されていた。これらのパラフィンは、優れたセタン指数を有しており(>70)、化石起源のディーゼル燃料に完全に適合可能である。したがって、本発明によるF
sは、原油ベースのディーゼル中に混合物として組み入れられ得る非常に高い品質のガスオイルベース(250℃超の沸点)の製造、並びに、原油ベースのケロセン中に混合物として組み入れられ得るケロセンベース(150〜250℃の範囲の沸点)の製造のために用いられ得る。水素化処理された生成物(ケロセンおよびガスオイル)は、形成された生成物の85.4重量%を表す。形成された生成物の収率は、ガスクロマトグラフィー分析から計算された。