(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860904
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】たばこ臭口臭改善香料組成物
(51)【国際特許分類】
A24B 15/32 20060101AFI20160202BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
A24B15/32
C11B9/00 K
C11B9/00 T
C11B9/00 C
C11B9/00 S
C11B9/00 J
C11B9/00 P
C11B9/00 N
C11B9/00 B
C11B9/00 X
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-555043(P2013-555043)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2012051524
(87)【国際公開番号】WO2013111281
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2014年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】庭野 智子
(72)【発明者】
【氏名】宮郷 正平
(72)【発明者】
【氏名】永江 英樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 慎太郎
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0192562(US,A1)
【文献】
特開2000−351988(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/157240(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/142159(WO,A1)
【文献】
特表2010−523551(JP,A)
【文献】
特開2003−190264(JP,A)
【文献】
合成香料 化学と商品知識,今中 勲 化学工業日報社,1996,484-486
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 1/00−15/42
C11B 9/00− 9/02
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
A23D 7/00− 9/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A1)、(A2)、(A3)、(A4)、(A5)、(A6)、(A7)、(A8)、(A9)、(A10)または(A11)である香料成分Aと、
下記(B1)、(B2)または(B3)である香料成分Bと
を含有するたばこ臭口臭改善香料組成物を担持した喫煙物品:
(A1)酢酸メンチル;
(A2)メントンおよび3−ヘキセン−1−オール;
(A3)カリオフィレン、酢酸ゲラニル、テルピネオール、シトラール、酢酸メンチル、カルボン、ピペリトン、リナロール、メントン、フェランドレンおよびリモネン;
(A4)リナロール、4’−メチルアセトフェノンおよび酢酸ヘキシル;
(A5)カリオフィレン、酢酸ゲラニル、テルピネオール、酢酸シトロネリル、シトラール、酢酸メンチル、カルボン、ピペリトン、リナロール、メントンおよびリモネン;
(A6)カルボン、リナロールおよびメントン;
(A7)酢酸ヘキシル;
(A8)カリオフィレン、テルピネオール、酢酸メンチル、カルボン、ピペリトン、リナロール、メントン、フェランドレンおよびリモネン;
(A9)酢酸メンチルおよびメントン;
(A10)ゲラニオール、テルピネオール、シトロネロール、カルボン、リナロールおよびカプロン酸エチル;
(A11)カリオフィレン、酢酸ゲラニル、テルピネオール、酢酸シトロネリル、シトラール、酢酸メンチル、カルボン、リナロール、メントンおよびリモネン;
(B1)ユーカリプトール;
(B2)酢酸イソアミル;
(B3)ユーカリプトール、イソ吉草酸エチルおよびプロピオン酸エチル。
【請求項2】
香料組成物の添加量がたばこ材1gあたり0.5mg以上15mg以下であって、香料組成物が喫煙物品のタバコ材、材料品のいずれかの位置に添加された、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
香料組成物の添加量がたばこ材1gあたり0.5mg以上5mg以下である、請求項2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記香料成分Aの重量が前記香料成分Bの重量よりも多い、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記香料成分Aと前記香料成分Bとの重量比が5.5:4.5〜9.9:0.1である、請求項4に記載の喫煙物品。
【請求項6】
たばこロッドと、前記たばこ臭口臭改善香料組成物を封入したカプセルを充填したたばこフィルターとを有するシガレットである、請求項1〜5の何れか1項に記載の喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこ臭口臭改善香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たばこ臭気を脱臭するために、たばこフィルターや巻紙に特定の消臭成分を担持させる技術が知られている(特開平7−250665号公報および特開2009−179708号公報参照)。しかし、これらの技術はいずれも、たばこから直接発生する臭気を消臭するものであり、たばこ臭口臭を改善しようとするものではない。事実、上記の文献に開示されている消臭成分をそのまま使用するだけで、たばこ臭口臭の消臭が達成されるわけではない。たばこ臭口臭を改善するにあたっては、口腔内での香料成分の脱着を考慮する必要がある。
【0003】
一方、近年の口臭に対する意識の高まりにより、口臭改善香料や消臭剤に関する技術が開発されている(特開2005−289918号公報、特開2005−170906号公報、特開2003−175095号公報、および特開2009−190990号公報参照)。また、たばこ臭を含む口臭をマスキングするための香料に関する技術も開示されている(特開2004−18431号公報参照)。しかし、これらの口臭改善香料や消臭剤をたばこにそのまま添加して使用すると、強い芳香を放つ成分を多量に添加することが必要となり、たばこ本来の香喫味を損なうことになる。つまり、たばこに添加するたばこ臭口臭改善香料にあっては、ごく少量でたばこ臭口臭を改善する効果を示すことが求められる。なお、喫煙後にこれら口臭改善香料や消臭剤を口の中に含むという方法も考えられるが、この場合喫煙後に動作が必要となり好ましくない。このように、従来の技術ではたばこ香喫味を担保しつつ喫煙に伴うたばこ臭口臭を、喫煙という1つの動作の中で改善することは十分には達成されていない。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、比較的少量の添加でたばこ臭口臭を改善でき、しかもたばこ本来の香喫味を損なわないたばこ臭口臭改善香料組成物、およびこのような香料組成物を含む喫煙物品を提供することである。
【0005】
本発明は、以下の香料成分Aおよび香料成分Bを含有するたばこ臭口臭改善香料組成物を提供する。
【0006】
香料成分A:蒸気圧が2Pa以上210Pa未満で、水/オクタノール分配係数が1.5以上6.5以下の成分。
【0007】
香料成分B:蒸気圧が210Pa以上10000Pa以下で、水/オクタノール分配係数が−1以上3以下の成分。
本発明で使用される香料成分Aとして、ゲラニオール、カリオフィレン、酢酸ゲラニル、テルピネオール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、シトラール、酢酸メンチル、カルボン、ピペリトン、リナロール、4’−メチルアセトフェノン、メントン、3−ヘキセン−1−オール、酢酸ヘキシル、フェランドレン、リモネン、カプロン酸エチル、2−アセチルー5−メチルフラン、酢酸ボルニル、2−デセナール、meta−ジメトキシベンゼン、para−ジメトキシベンゼン、2,4−ジメチルアセトフェノン、安息香酸エチル、2−エチル−1−ヘキサノール、フェンコン、2−ヘキセン−1−オール、酢酸ヘキセニル、ヘキシルアルコール、酢酸イソボルニル、酢酸リナリル、1−メチル−3−メトキシ−4−イソプロピルベンゼン、メチルアニソール、ノナノン、2−オクタノン、1−オクテン−3−オール、テルピノレン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノンが例示される。この中でも、ゲラニオール、カリオフィレン、酢酸ゲラニル、テルピネオール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、シトラール、酢酸メンチル、カルボン、ピペリトン、リナロール、4’−メチルアセトフェノン、メントン、3−ヘキセン−1−オール、酢酸ヘキシル、フェランドレン、リモネン、カプロン酸エチルが好ましい。
【0008】
本発明で使用される香料成分Bとして、ユーカリプトール、酢酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、プロピオン酸エチル、アセトイン、アミルアルコール、ギ酸アミル、1−ブタノール、酢酸ブチル、酪酸エチル、乳酸エチル、2−ブテノン酸エチル、2−ヘプタノン、ヘキサナール、2−ヘキセナール、ギ酸−cis−3−ヘキセニル、ギ酸イソアミル、酢酸イソブチル、イソブチルアルコール、2−フロ酸メチル、イソ吉草酸メチル、5−メチル−3−ヘキセン−2−オン、4−メチル−3−ペンテン−2−オン、2−メチルテトラヒドロフラン−3−オン、2−ペンタノンが例示される。この中でも、ユーカリプトール、酢酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、プロピオン酸エチルが好ましい。
【0009】
上記香料成分に代えて、あるいは上記香料成分と共に、これら成分を含有する天然香料を使用することもできる。このような天然香料としては例えば、スペアーミント油、ペパーミント油、ガーデンミント油、ミント油、アラマンダ油、ヒメジソ油、スイートベージル油、モッコウ油、ボア・ド・ローズ油、ローズ油、シトロネラ油、ユズ、レモングラス油、レモンバーベナ油、レモン油、ゼラニウム油、カナンガ油、チャンパカ油、クラリー・セージ油、コリアンダー、ジャスミン油、ラバンジン油、ラベンダー油、マンダリン油、ネロリ油、オレンジ・ピール油、オレンジ油、オレンジフラワー、ペチグリン油、セージ油、タイム油、イラン・イラン油、ベルガモット油、カナンガ油、カラミント油、ディル油、ユーカリ油、ライム油、マジョラム油、キャラウェイ油、セロリ油、グレープフルーツ油、ペッパー、タンジェリン油、バーベナ油、アニス油、バルサム・ペルー油、バルサム・トルー油、カンファー油、シダーウッド、カモミル油、シンナモン油、クローブ、ダヴァナ、フェンネル油、フェニグリーク、ジンジャー油、インモルテル、ミモザ油、オリバナム油、ウィンターグリーン油、ローレルリーフ油、カルダモン油、ローズマリー油等が挙げられる。
【0010】
さらに、本発明のたばこ臭口臭改善香料組成物には、上記香料成分以外に他の成分を含むことができる。そのような他の成分としては、上記香料成分以外の脂肪族鎖状アルコール類、テルペン系アルコール類、テルペン系アルデヒド類、テルペン系エステル類、脂肪族エステル類、テルペン系ケトン類、芳香族ケトン類、テルペン系炭化水素類、テルペン系エーテル類、脂肪族エステル類の香料成分が挙げられる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、上記のたばこ臭口臭改善香料組成物を担持した喫煙物品が提供される。本発明のたばこ臭口臭改善香料組成物は、通常たばこに香料を添加するいずれの工程においてもたばこに添加することができる。また、本発明のたばこ臭口臭改善香料組成物は、いずれの濃度で最終喫煙物品(シガレット等)に添加されていてもよいが、好ましくは、たばこ材1gに対して0.5mg以上15mg以下の割合で、より好ましくは、たばこ材1gに対して0.5mg以上5mg以下の割合で添加される。たばこ材としては、葉たばこ(黄色種、バーレー種、オリエント種等)、シートたばこ等いずれのたばこ材も用いることができ、通常、これらたばこ材は、刻みの形態で喫煙物品に使用される。刻みは、膨化された形態にあってもよい。また、本発明のたばこ臭口臭改善香料組成物は、たばこ材、材料品(たばこフィルター等)のいずれの位置に添加されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、たばこ臭口臭を改善するためには、香料組成物が呼気に吐出されることが必要であると考えた。すなわち、香料によっては、口中に達する前に揮散するものや、口中に達した後に呼気に吐出されることなく口内に留まるものが存在する。香料が呼気へ吐出されなければ、たとえ高いマスキング効果を有していても、たばこ臭口臭改善香料組成物としては適さないと考えられる。
【0013】
本発明者らは、多数の既知の香料成分について化学分析を行い、喫煙3分後の呼気中への香料成分のリリース率Lを測定した。
【0014】
呼気中リリース率L(%)は、呼気中の香料成分濃度C
ex(area/mL)を主流煙中の香料成分濃度C
ms(area/mL)で割って100を乗じることにより算出される。areaはGC/MS分析によるピーク積分面積である。
【0015】
この呼気中リリース率Lの値が0.1%以上であれば、たばこ設計上許容される香料添加量の範囲内で、たばこ臭口臭を改善するのに十分な呼気中の香料吐出量を担保できることを見出した。
【0016】
また、上記の呼気中リリース率Lが0.1%以上である香料成分は、蒸気圧Vpと水/オクタノール分配係数Pが一定の範囲にある2つの群に分類できることがわかった。すなわち、2≦Vp<210かつ1.5≦logP≦6.5である香料成分Aと、210≦Vp≦10000かつ−1≦logP≦3である香料成分Bである。
【0017】
さらに、香料成分Aおよび香料成分Bの中からそれぞれ、官能評価により口臭改善効果が特に大きい成分を選定した(官能評価手法は後述する)。
【0018】
ここで本発明者らは、香料成分Aと香料成分Bはそれらの物性が異なることから、口内での挙動が異なり、たばこ臭口臭改善に対して異なる寄与をしていると予想した。具体的には、香料成分Bは蒸気圧が比較的高いため、たばこ臭口臭の喫煙直後の口臭改善効果(以下では「立ち上がり効果」と呼ぶ)に寄与していると予想した。また、香料成分Aは蒸気圧が比較的低いため、たばこ臭口臭の長期的な口臭改善効果(以下では「持続効果」と呼ぶ)に寄与していると予想した。表1に香料成分Aおよび香料成分Bの特性を示す。なお、香料成分Aおよび香料成分Bに含まれない成分、すなわち蒸気圧が比較的高く比較的疎水的である成分は喫煙途中で揮散してしまい多くが口内に到達できず、また蒸気圧が比較的低く比較的親水的である成分は口内に到達するものの口内の水分に溶けこんだまま呼気中へ吐出されないために、口臭改善効果に寄与しないと考えられる。
【表1】
【0019】
そこで、後述するように、香料成分Aのみまたは香料成分Bのみの組合せ香料(比較例)と、香料成分Aと香料成分Bとの組合せ香料(実施例)をそれぞれ調製し、たばこ臭口臭改善度を官能評価した。その結果、香料成分Aのみまたは香料成分Bのみの場合と比較して、香料成分Aと香料成分Bとを組み合わせた方が、少量で十分なたばこ臭口臭改善効果を発揮できることがわかった。
【0020】
したがって、本発明におけるたばこ臭口臭改善香料組成物の選定方法は、主流煙中量および呼気中リリース量を分析する工程と、呼気中の香料成分濃度C
ex(area/mL)を主流煙中の香料成分濃度C
ms(area/mL)で割って100を乗じることにより算出される呼気中リリース率Lが0.1%以上である香料成分を選択する工程とを有する。さらに好ましくは、前記選択された香料成分のうち、たばこ臭口臭の臭気強度の官能評価結果によりたばこ臭口臭改善効果のある香料成分を選択する工程も有する。
【0021】
さらに、香料成分Aの重量が香料成分Bの重量よりも多い場合(A>B)には、少ないか等しい場合(A≦B)と比較して、特に大きなたばこ臭口臭改善効果を示すことがわかった。
【0022】
これにより、たばこ本来の香喫味を損なうことなくたばこ臭口臭を改善することが可能になった。
【0023】
以下、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0024】
(1)呼気中リリース率の算出方法
(1.1)喫煙3分後の呼気中への香料成分のリリース率L(%)は、呼気中の香料成分濃度C
ex(area/mL)を主流煙中の香料成分濃度C
ms(area/mL)で割って100を乗じた値である。
【0025】
(1.2)サンプリング方法
(1.2.1)シガレットの準備
分析に用いたシガレットは全て市販シガレット「セブンスター・ライト・ボックス」である。香料を分析する直前にエタノールで希釈した香料を刻みに添加して試験に用いた。具体的には、20〜30の香料成分を各100μg/10μLの濃度で混合した溶液10μLを刻みに添加した。
【0026】
(1.2.2)呼気の捕集
実験者は、喫煙前に水で口をゆすぎ、洗口する。その後、シガレットを喫煙する。喫煙間隔は30秒、喫煙パフ回数は7回とする。喫煙後、捕集管(TENAX−TAを2連結したもの)を口にくわえ、ポンプにより100mL/minで口腔内のヘッドスペース(吐出される呼気)を捕集する。呼気捕集の時間は、喫煙終了時を起点として3分後からの1分間とする。捕集後、分析に支障をきたす水分を揮散させるため、100mL/minで窒素ガスを4分間通気させる。
【0027】
(1.2.3)主流煙捕集
マスフローコントローラとポンプで構成した喫煙器を用いて主流煙を捕集する。喫煙間隔は30秒、喫煙流量は55mL/2secとする。着火から3パフ目までは捕集しない。4パフ目の主流煙を捕集管(TENAX−TA)に通気させる。
【0028】
(1.3)ガスクロマトグラフ/質量分析(GC/MS)
加熱脱着システム(TDS)、冷却注入システム(CIS)、低温トラップシステム(CTS)を増設したGC/MSにて分析した。
【0029】
(2)香料成分A、Bの官能評価法
喫煙者が喫煙後の呼気をポリエステルフィルム製のバッグに捕集し、喫煙者自身が当該バッグを他臭として官能評価する。評価法の詳細については、「口臭診察マニュアル」第一歯科出版、および「臭気簡易評価技術の活用に関する報告書」におい・かおり環境協会測定評価部会、臭気簡易評価技術標準化研究会を参照のこと。
【0030】
(2.1)評価法
(2.1.1)評価シガレットの作製
シガレットには市販シガレット「セブンスター・ライト・ボックス」を用いた。評価対象の香料成分をエタノールで650μg/μLに希釈した後、刻みに10μL添加し、試験に用いた。
【0031】
(2.1.2)バッグへの呼気の捕集法
評価者は、喫煙前に水で口をゆすぎ、洗口する。その後、評価シガレットを喫煙する。喫煙間隔は30秒、喫煙パフ回数は7回とする。喫煙後、呼気を3L容量のポリエステルフィルム製のバッグに吐き出し、シリコン栓にて閉じる。呼気捕集の時間は、喫煙終了時を起点として30秒後および3分後とする。
【0032】
(2.1.3)バッグの官能評価
評価者(社内の専門評価者4名)は、評価前に洗口する。評価者自身が捕集したバッグの栓を外し、バッグ内の呼気のにおいを評価する。評価項目を以下に記す。
【0033】
たばこ臭のマスキング効果につき絶対評価する(評点法。0点;たばこのにおいを抑えていない。1点;たばこのにおいを抑えている。2点;たばこのにおいをよく抑えている。0.5点と1.5点は各ラベル間の中間)。各評価者の30秒後および3分後の評点を平均したものを各評価者の評点とし、4名の評価者の合計点が0.5点以上のものを「マスキング効果あり」とする。さらに、4名の評価者の合計点が4点以上のものを「強いマスキング効果あり」とする。表2に「マスキング効果あり」「強いマスキング効果あり」と評価された具体的な香料成分A,Bを示す。
【表2】
【0034】
(3)実施例の香料組成物の口内臭気官能評価法
喫煙者が喫煙後の呼気を3L容量のポリエステルフィルム製のバッグに捕集し、喫煙者自身が当該バッグを他臭として官能評価する。評価法の詳細については、「口臭診察マニュアル」第一歯科出版、および「臭気簡易評価技術の活用に関する報告書」におい・かおり環境協会測定評価部会、臭気簡易評価技術標準化研究会を参照のこと。
【0035】
(3.1)評価法
(3.1.1)評価シガレットの作製
シガレットには市販シガレット「セブンスター・ライト・ボックス」を用いた。評価対象の香料成分を直径約4mmのシームレスカプセル(ゼラチン膜)に封入し、1個のカプセルをフィルターに充填した。
【0036】
(3.1.2)バッグへの呼気の捕集法
評価者は、喫煙前に水で口をゆすぎ、洗口する。その後、評価者は、喫煙直前にフィルター内のカプセルを指で押し潰してから評価シガレットを喫煙する。喫煙間隔は30秒、喫煙パフ回数は7回とする。喫煙後、呼気を3L容量のポリエステルフィルム製のバッグに吐き出し、シリコン栓にて閉じる。呼気捕集の時間は、喫煙終了時を起点として30秒後および3分後とする。
【0037】
(3.1.3)バッグの官能評価
評価者(社内の専門評価者4名)は、評価前に洗口する。評価者自身が捕集したバッグの栓を外し、バッグ内の呼気のにおいを評価する。以下の項目につき絶対評価する(1点から4点までの評点法。数値が大きくなるほど効果が大きい)。
【0038】
・立ち上がり効果(喫煙30秒後)のたばこ臭マスキング効果
・持続効果(喫煙3分後)のたばこ臭マスキング効果
・全体のたばこ臭口臭改善効果
・喫味受容性
表3および表4に試験結果をまとめて示す。表3および表4において、◎は評価者4名の評点の平均点が3.5点以上4点以下であるもの、○は評価者4名の評点の平均点が2.5点以上3.5点未満であるもの、△は評価者4名の評点の平均点が1.5点以上2.5点未満であるもの、×は評価者4名の評点の平均点が1.5点未満であるものを表す。
【0039】
なお、実施例1において酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して550〜650‰(パーミル)、酢酸イソアミルの重量は溶液全体の重量に対して350〜450‰の間で適宜変更できる。実施例2において酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して350〜450‰、酢酸イソアミルの重量は溶液全体の重量に対して550〜650‰の間で適宜変更できる。実施例3においてメントンの重量は溶液全体の重量に対して300〜500‰、3−ヘキセン−1−オールの重量は溶液全体の重量に対して300〜500‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して130〜270‰の間で適宜変更できる。実施例4においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸ゲラニルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、シトラールの重量は溶液全体の重量に対して50〜100‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して180〜260‰、ピペリトンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して30〜50‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して200〜300‰、フェランドレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して200〜340‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して120〜180‰の間で適宜変更できる。実施例5においてリナロールの重量は溶液全体の重量に対して140〜200‰、4’−メチルアセトフェノンの重量は溶液全体の重量に対して140〜200‰、酢酸ヘキシルの重量は溶液全体の重量に対して400〜600‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して140〜200‰の間で適宜変更できる。実施例6においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸ゲラニルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、シトラールの重量は溶液全体の重量に対して30〜100‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して240〜360‰、ピペリトンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して20〜60‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して230〜330‰、フェランドレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して150〜210‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して120〜200‰の間で適宜変更できる。実施例7においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して25〜45‰、酢酸ゲラニルの重量は溶液全体の重量に対して90〜130‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して30〜70‰、酢酸シトロネリルの重量は溶液全体の重量に対して320〜460‰、シトラールの重量は溶液全体の重量に対して40〜80‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して10〜30‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して130〜190‰、ピペリトンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して80から120‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して40〜80‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して10〜40‰の間で適宜変更できる。実施例8においてカルボンの重量は溶液全体の重量に対して390〜570‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して3〜60‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して240〜360‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して30〜120‰の間で適宜変更できる。実施例9においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸ゲラニルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、シトラールの重量は溶液全t内の重量に対して30〜100‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して110〜170‰、ピペリトンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して40〜80‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して270〜360‰、フェランドレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して150〜210‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して200〜280‰の間で適宜変更できる。実施例10において酢酸ヘキシルの重量は溶液全体の重量に対して330〜550‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して240〜320‰、イソ吉草酸エチルの重量は溶液全体の重量に対して90〜140‰、プロピオン酸エチルの重量は溶液全体の重量に対して30〜100‰の間で適宜変更できる。実施例11においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して80〜140‰、ピペリトンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して80〜120‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して360〜520‰、フェランドレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して270〜390‰の間で適宜変更できる。実施例12において酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して110〜170‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して470〜670‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して235〜335‰の間で適宜変更できる。実施例13においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、テルピネールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して480〜740‰、ピペリトンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して10〜60‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して150〜220‰、フェランドレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して10〜60‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して80〜160‰の間で適宜変更できる。実施例14においてゲラニオールの重量は溶液全体の重量に対して70〜140‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して120〜180‰、シトロネロールの重量は溶液全体の重量に対して150〜210‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して180〜280‰、カプロン酸エチルの重量は溶液全体の重量に対して100〜160‰、酢酸イソアミルの重量は溶液全体の重量に対して140〜220‰の間で適宜変更できる。実施例15においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して480〜740‰、ピペリトンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して10〜60‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して230〜330‰、フェランドレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して10〜60‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して80〜160‰の間で適宜変更できる。実施例16においてカリオフィレンの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸ゲラニルの重量は溶液全体の重量に対して150〜250‰、テルピネオールの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、酢酸シトロネリルの重量は溶液全体の重量に対して130〜230‰、酢酸メンチルの重量は溶液全体の重量に対して1〜20‰、カルボンの重量は溶液全体の重量に対して40〜80‰、リナロールの重量は溶液全体の重量に対して10〜60‰、メントンの重量は溶液全体の重量に対して130〜200‰、リモネンの重量は溶液全体の重量に対して40〜80‰、ユーカリプトールの重量は溶液全体の重量に対して80〜130‰の間で適宜変更できる。
【表3】
【表4】
【0040】
表3および表4から、以下のことがわかる。
【0041】
香料成分Aのみまたは香料成分Bのみの場合(比較例1、2)は、「立ち上がり効果」および「持続効果」のいずれかのたばこ臭口臭改善効果が不十分であったため、全体のたばこ臭口臭改善効果としても不十分であった。一方、香料成分Aと香料成分Bとを組み合わせた場合(実施例1−16)は、「立ち上がり効果」および「持続効果」ともに高い口臭改善効果が見られ、全体のたばこ臭口臭改善効果も十分であった。
【0042】
また、香料成分Aの重量を香料成分Bの重量より多く(A>B)すると(実施例1、3−16)、A<Bの場合(実施例2)と比較して、より良好なたばこ臭口臭改善効果が得られる。香料成分Aと香料成分Bとの重量比は5.5:4.5〜9.9:0.1であることが好ましい。
【0043】
さらに、香料成分Aと香料成分Bとを組み合わせた場合(実施例1−16)、香料組成物の添加量がたばこ材1gあたり0.5mg以上15mg以下、さらにはたばこ材1gあたり0.5mg以上5mg以下でもたばこ臭口臭改善効果が得られる。このように、たばこ材1gあたり0.5mgという非常に少ない添加であっても、十分なたばこ臭口臭改善効果が得られる。たばこ材1gあたり0.5mgという添加量は、たばこ香喫味の観点からも好ましい。