【実施例】
【0011】
本発明の一実施形態であるワーク把持装置1は、創薬用試料を封入した多数のチューブCを収容するラックRを着脱可能に把持した状態で収容するものである。
【0012】
ワーク把持装置1は、
図1〜
図6に示すように、各構成部材を支持するベーステーブル10と、ラックRを収容するための空間であるワーク収容部90と、ワーク収容部90にセットされたラックRを横方向Xに挟み込んで把持する横方向把持機構と、ワーク収容部90にセットされたラックRを縦方向Yに挟み込んで把持する縦方向把持機構と、縦方向把持機構および横方向把持機構を駆動する共通のアクチュエータ80とを備えている。なお、
図2や
図6においては、アクチュエータ80の図示を省略している。
【0013】
横方向把持機構は、
図1や
図7に示すように、横方向Xに移動可能に設けられた横方向移動部材20と、ワーク収容部90の横方向Xの一側縁側に固定状態で配置された横方向位置決め部30と、ワーク収容部90の横方向Xの他側縁側に固定状態で配置された横方向ガイド部31とを有している。
【0014】
横方向移動部材20は、
図1や
図7に示すように、全体形状が略コの字状に設けられ、ワーク収容部90の横方向Xの他側縁側に配置される横方向把持プッシャ部21と、ワーク収容部90の一側縁側に配置される押出プッシャ部22と、アクチュエータ80に接続された第1のピニオンギア81に噛み合うギア部23とを有している。横方向把持プッシャ部21は、ラックRを横方向Xに把持した状態で、ラックRのフランジ部Fの上側に係合し、ラックRの浮き上がりを阻止するように構成されている。横方向移動部材20は、
図4から分かるように、横方向Xに沿って延びる2つの横方向リニアガイド24によって、横方向Xに移動可能に支持されている。
【0015】
横方向位置決め部30は、
図1や
図7に示すように、ラックRのセット時にラックRを横方向Xに位置決めするものであり、ラックRを横方向Xに把持した状態で、ラックRのフランジ部Fの上側に係合し、ラックRの浮き上がりを阻止するように構成されている。横方向ガイド部31は、ラックRのセット時にラックRをワーク収容部90にガイドするものである。
【0016】
縦方向把持機構は、
図1や
図7に示すように、アクチュエータ80によって駆動されて縦方向Yに移動する第1の縦方向移動部材40と、縦方向Yに移動可能に設けられた第2の縦方向移動部材50と、第1の縦方向移動部材40および第2の縦方向移動部材50の間に介在して配置された弾性部材60と、ワーク収容部90の縦方向Yの一側縁側に固定状態で配置された縦方向位置決め部70と、ワーク収容部90の縦方向Yの他側縁側に固定状態で配置された縦方向ガイド部71とを有している。
【0017】
第1の縦方向移動部材40は、
図1に示すように、第1の縦方向移動部材40と第1のピニオンギア81との間に配置された第2のピニオンギア82に噛み合うギア部41を有している。第1の縦方向移動部材40は、
図3から分かるように、縦方向Yに沿って延びる第1の縦方向リニアガイド42によって、縦方向Yに移動可能に支持されている。
【0018】
第2の縦方向移動部材50は、
図1や
図7に示すように、ワーク収容部90の縦方向Yの他側縁側に配置され縦方向YにラックRを押すための縦方向把持プッシャ部51を有している。縦方向把持プッシャ部51は、ラックRを縦方向Yに把持した状態で、ラックRのフランジ部Fの上側に係合し、ラックRの浮き上がりを阻止するように構成されている。第2の縦方向移動部材50は、
図3から分かるように、縦方向Yに沿って延びる第2の縦方向リニアガイド52によって、縦方向Yに移動可能に支持されている。
【0019】
弾性部材60は、金属製等のスプリングとして構成され、第1の縦方向移動部材40および第2の縦方向移動部材50の間に挟まれた状態で配置されている。弾性部材60の一端は、第1の縦方向移動部材40に固定され、弾性部材60の他端は、第2の縦方向移動部材50に固定されている。なお、弾性部材60の具体的態様は、スプリングに限定されず、例えば、ゴムや合成樹脂等であってもよい。
【0020】
縦方向位置決め部70は、
図1や
図7に示すように、ラックRのセット時にラックRを縦方向Yに位置決めするものである。縦方向ガイド部71は、ラックRのセット時にラックRをワーク収容部90にガイドするものである。
【0021】
ラックRは、合成樹脂等の可撓性を有する材料から成り、
図8に示すように、多数のチューブCを上下方向に着脱可能に保持するものである。ラックRに対するチューブCの着脱は、ワーク把持装置1によってラックRを保持した状態で、ピッキング装置(図示しない)を用いて行われる。本実施形態では、ラックRは、矩形状に形成され、その縦方向Yの寸法が、その横方向Xの寸法よりも長く設定されている。
【0022】
つぎに、ワーク把持装置1に対するラックRのセット方法について、
図7に基づいて説明する。
【0023】
まず、ハンドリング機構(図示しない)によってラックRをワーク収容部90に配置する。
【0024】
次に、アクチュエータ80を駆動することで、第1の縦方向移動部材40と弾性部材60と第2の縦方向移動部材50とを、ワーク収容部90の縦方向Yの一側縁側(
図7の紙面下側)に向けて移動させるとともに、横方向移動部材20を、ワーク収容部90の横方向Xの一側縁側(
図7の紙面右側)に向けて移動させる。
【0025】
次に、本実施形態では、先に、第2の縦方向移動部材50の縦方向把持プッシャ部51によって、ラックRを縦方向Yに押し、縦方向把持プッシャ部51と縦方向位置決め部70とによってラックRを把持する。
【0026】
次に、横方向移動部材20の横方向把持プッシャ部21によって、ラックRを横方向Xに押し、横方向把持プッシャ部21と横方向位置決め部30とによってラックRを把持する。
【0027】
なお、この横方向XにおけるラックRの把持を行っている最中、アクチュエータ80によって駆動された第1の縦方向移動部材40は、ワーク収容部90の縦方向Yの一側縁側(
図7の紙面下側)に向けて移動し続けるが、弾性部材60が圧縮するように弾性変形して第1の縦方向移動部材40の移動を吸収するため、第2の縦方向移動部材50の縦方向把持プッシャ部51によってラックRが過度に押されることを抑制できる。
【0028】
つぎに、ワーク把持装置1からのラックRのリリース方法について、
図7に基づいて説明する。
【0029】
まず、アクチュエータ80を駆動することで、第1の縦方向移動部材40を、ワーク収容部90の縦方向Yの他側縁側(
図7の紙面上側)に向けて移動させるとともに、横方向移動部材20を、ワーク収容部90の横方向Xの他側縁側(
図7の紙面左側)に向けて移動させる。
【0030】
次に、本実施形態では、先に、横方向移動部材20の横方向把持プッシャ部21による横方向XへのラックRの押し付けが解除されるとともに、横方向移動部材20の押出プッシャ部22によって、ラックRをワーク収容部90の内側に向けて押し、ラックRのフランジ部Fと横方向位置決め部30との係合を解除する。
【0031】
なお、この横方向XにおけるラックRの把持の解除を行っている最中、アクチュエータ80によって駆動された第1の縦方向移動部材40は、ワーク収容部90の縦方向Yの他側縁側(
図7の紙面上側)に向けて移動し続けるが、弾性部材60が伸張するように弾性変形(弾性復帰)するため、第2の縦方向移動部材50は動かない。
【0032】
次に、第2の縦方向移動部材50がワーク収容部90の縦方向Yの他側縁側(
図7の紙面上側)に向けて移動して、第2の縦方向移動部材50の縦方向把持プッシャ部51による縦方向YへのラックRの押し付けが解除される。
【0033】
なお、上述した実施形態では、ワーク把持装置のワークが、創薬用試料を封入した多数のチューブを収容するラックであるものとして説明したが、ワークの具体的態様はこれに限定されず、如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、ワーク把持装置が横方向および縦方向にワークを把持するように構成されるものとして説明したが、ワーク態様によっては、横方向のみにワークを把持するようにワーク把持装置を構成してもよい。
また、上述した実施形態では、横方向把持プッシャ部や縦方向把持プッシャ部や横方向位置決め部にワークを浮き上がり防止機能を設けたが、ワーク態様に応じて、浮き上がり防止機能を設ける把持プッシャ部や位置決め部を任意に決定すればよい。
また、上述した実施形態では、ワークのセット時において、横方向におけるワークの把持の後に、縦方向におけるワークの把持が行われるものとして説明したが、動作の順番やタイミング等は任意に設定すればよい。ワークのリリース時における動作の順番やタイミング等についても、任意に設定すればよい。
また、上述した実施形態では、ワークの浮き上がりを阻止するように横方向移動部材がワークに係合するものとして説明したが、横方向移動部材とワークとの係合態様は、ワークのリリース時に、押出プッシャ部によってワークをワーク収容部の内側に向けて押すことで、係合が解除されるものであれば如何なるものでもよい。
また、本明細書内では、用語「横方向」を水平面内における一方向の意味で用い、また、用語「縦方向」を水平面内における他方向の意味で用いており、これら用語は、長手・短手等の上記以外の技術的意味を含むものではない。