特許第5860963号(P5860963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5860963
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】可動家具部分の制動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20160202BHJP
   E05D 7/086 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   E05F5/02 A
   E05D7/086
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-527429(P2014-527429)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-527584(P2014-527584A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】AT2012000187
(87)【国際公開番号】WO2013029068
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2014年7月9日
(31)【優先権主張番号】A1243/2011
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルンマイヤー,ハラルド
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/108203(WO,A1)
【文献】 特開昭60−18631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/02
E05D 7/086
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動家具部分(3)の制動装置(7)であって、当該制動装置は、
制動装置収容体(10)と、
前記制動装置収容体(10)内に配置され、かつ、ピストン(19)が可動に支持されている流体チャンバ(20)と、を備え
前記ピストン(19)に接続されたラム(18)と、前記制動装置収容体(10)と前記ラム(18)との間に配置され、前記流体チャンバ(20)を封止するための少なくとも一つの封止部(33)と、をさらに備え、前記ラム(18)が前記封止部(33)を通過するよう構成されており、
前記流体チャンバ(20)と流体連通し、前記流体チャンバ(20)に対して横方向に平行に延び、前記流体チャンバ(20)に侵入する前記ラム(18)による体積の変化を補償するための少なくとも一つの変形可能な補償本体(26)が内部に配置されている補償チャンバ(25)をさらに備え、
前記変形可能な補償本体(26)と前記少なくとも一つの封止部(33)とは、一体型形態であることを特徴とする制動装置。
【請求項2】
前記補償本体(26)は、中空体の形態であることを特徴とする請求項1記載の制動装置。
【請求項3】
前記補償本体(26)は、少なくとも部分的に略バッグ形態であることを特徴とする請求項1または2記載の制動装置。
【請求項4】
休止位置では、前記補償本体(26)は前記補償チャンバ(25)を実質的に完全に満たし、制動ストローク運動で圧縮可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項5】
前記制動装置収容体(10)は、前記補償本体(26)内の空気を流出させ、前記ピストン(19)の戻り運動で空気を前記補償本体(26)へ流入させることができる開口部(27)を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項6】
前記流体チャンバ(20)は第1の長手軸を有しており、前記補償チャンバ(25)は第2の長手軸を有しており、前記流体チャンバ(20)の前記第1の長手軸と前記補償チャンバ(25)の第2の長手軸とは、互いに実質的に平行関係に延びていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項7】
前記封止体(34)は前記補償チャンバ(25)を封止するように、前記補償チャンバ(25)内に配置されており、前記補償本体(26)、前記封止部(33)および前記封止体(34)は一体型に結合して提供されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項8】
制動ストローク運動の後、前記ピストン(19)を次の制動ストローク運動のために待機位置へと再び戻すことができる戻しバネ(21)が前記流体チャンバ(20)内に配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項9】
前記ピストン(19)と前記流体チャンバ(20)の前記内壁(23)との間に隙間が存在し、前記制動流体は、前記制動ストローク運動中に、前記隙間を通って前記ピストン(19)を横方向に通流することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項10】
前記ラム(18)に作用する圧力の閾値を超えると、前記流体チャンバ(20)と前記補償チャンバ(25)との間の少なくとも一つの超過荷重開口部(29)が開口可能となる超過荷重防止手段(28)が提供されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項11】
前記流体チャンバ(20)と前記補償チャンバ(25)とは、少なくとも一本の流路(24)で接続されており、前記流路(24)は、前記流体チャンバ(20)の端部(22)から離れた前記流体チャンバ(20)の端部領域から開始して、前記補償チャンバ(25)へと至ること特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項12】
前記流路(24)は、前記補償チャンバ(25)の前記端部(36)から離れた前記補償チャンバ(25)の端部領域に向かって開いていることを特徴とする請求項11記載の制動装置。
【請求項13】
家具ヒンジ(4)の運動を制動する請求項1から12のいずれか1項に記載の制動装置(7)を備えた家具ヒンジ(4)。
【請求項14】
前記家具ヒンジ(4)は、ヒンジカップ(5)と、各家具部分(2、3)に固定するため、前記ヒンジカップにヒンジ式に接続された枠体側装着部(6)とを有しており、前記制動装置(7)は前記ヒンジカップ(5)上または前記ヒンジカップ(5)内に取り付けられていることを特徴とする請求項13記載の家具ヒンジ。
【請求項15】
ヒンジ運動の間、前記制動装置(7)の前記ラム(18)は、前記装着部(6)または前記ヒンジ運動に正確に連動した作動要素(12)によって作動され、それによって前記ピストン(19)が前記流体チャンバ(20)内に押し込まれることを特徴とする請求項14記載の家具ヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動家具部分の制動装置に関する。本装置は、
制動装置収容体と、
制動装置収容体内に配置されており、その中でピストンが可動に支持されている流体チャンバと、
ピストンに接続されたラムと、を含んでおり、制動装置収容体とラムとの間には、流体チャンバを封止するための少なくとも一つの封止部が配置されており、ラムは封止部を通過し、本装置は
流体チャンバと流体連通しており、流体チャンバに対して横方向に平行に延び、内部に流体チャンバに侵入するラムによる体積の変化を補償するための少なくとも一つの変形可能な補償本体が配置されている補償チャンバをさらに含んでいる。
【背景技術】
【0002】
流体制御装置の制動作用は、流体チャンバ内に存在する制動流体の流れ抵抗に実質的に基づく。ピストンに圧力がかかると、それは流体チャンバに対して移動し、この場合には、流体は1つのシリンダチャンバから別のシリンダチャンバへと、ピストンの通流開口部を介して、またはピストンと流体チャンバとの間を流れる。制動装置からの液体制動媒体の漏出を防止するために、ラム(シリンダ)またはピストンロッドは封止体によって流体チャンバに対して封止されており、ラムまたはピストンロッドはその封止部に対してスライド移動可能である。補償チャンバは、内側に移動するピストンの増加した圧力荷重による制動装置の作動不良を防止するよう、流体チャンバに出入りする際、ピストンロッドまたはラムの体積(の増減)を補償するために提供されている。
【0003】
本出願人のWO2010/108203A1は、通路によって接続された2つの流体チャンバを有する制動装置を有する家具ヒンジを開示している。1つの流体チャンバ内には、ピストンロッドの体積を補償するために提供された移動可能なピストンまたは移動可能な材料部材を有する装置が配置されている。
【0004】
DE19901517A1は、液圧式ピストンシリンダユニットを有するドアクローザについて解説しており、圧力補償空間を形成する補償本体は液圧空間の一つに配置されている。補償本体はピストン部材に接続されており、バッグ形態(袋状)であり、内側に移動するピストンロッドの体積は、液圧空間に存在する補償本体によって補償できる。
【0005】
EP1241374A1およびJP60−018631は、流体チャンバ内でガイドされるピストンと、流体チャンバに対して平行に延びる補償チャンバと、を有する制動装置についてそれぞれ解説しており、制動装置収容体とラムとの間に配置された封止部と、補償チャンバ内に配置された圧縮可能な材料とは互いに別々に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2010/108203A1
【特許文献2】DE19901517A1
【特許文献3】EP1241374A1
【特許文献4】特開昭60−018631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、制動装置には比較的多数の独立した部材が必要であり、これらの部材は、家具制動装置に望まれるコンパクトな構造のため、さらに非常に小型で繊細であり、この点で制動装置の組み立てもまた比較的に複雑で手間がかかる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、本明細書の当初部分で述べたような、前述の欠点を回避する一般的な制動装置の提供である。
【0009】
本発明によれば、これは請求項1の特徴によって達成される。さらなる有利な形態は従属請求項に記載されている。
【0010】
したがって、本発明によれば、変形可能な補償本体と少なくとも一つの封止部とが一体型形態で提供される。
【0011】
このように、制動装置に必要な部材の数を減らすことができ、封止部を備えた補償本体の一体型設計は、さらに頑強な構造を提供し、トラブルを減少させる。
【0012】
封止部をその上に備えた補償本体の材料は、例えば熱可塑性材料またはエラストマーまたはこれらの材料の混合物などのプラスチック製でよく、好適には一体型部材はゴム製である。
【0013】
補償本体は好適には空気で満たされた、流体密封状態の中空体でよい。これは、泡(フォーム)内の空気が制動媒体(例:シリコンオイル)内に溶解できず、それゆえ多数回の制動ストローク運動の後でも直線的な体積補償を保証するので、従来の泡状(フォーム状)の補償本体よりも有利である。補償本体の可能な例としては、補償本体は、休止位置では補償チャンバを実質的に完全に満たし、制動ストローク運動中には圧縮可能である、実質的にバッグ形態(袋状)であってもよい。
【0014】
可能な1実施例では、封止体は補償チャンバを封止するように、補償チャンバ内に配置されており、補償本体、封止部および封止体は一体型に結合して提供されている。このように、制動装置に必要な部材の数をさらに減少させることができる。
【0015】
本発明による家具ヒンジは、このような、少なくとも一つの制動装置によって特徴付けられる。
【0016】
本発明のさらなる詳細および利点は、図面に示す実施例によって示される実施例を利用して解説される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、旋回式に取り付けられた扉を備えたキャビネット形態の家具の斜視図である
図2図2は、制動装置を備えた家具ヒンジの斜視図である。
図3a図3aは、制動装置の断面図であり、ピストンは待機位置にある。
図3b図3bは、制動装置の断面図であり、ピストンは待機位置にある。
図4a図4aは、制動装置の断面図であり、ピストンは押し込み位置にある。
図4b図4bは、制動装置の断面図であり、ピストンは押し込み位置にある。
図5a図5aは、流体チャンバの封止部と補償チャンバの封止部との一体型の補償本体の多様な図である。
図5b図5bは、流体チャンバの封止部と補償チャンバの封止部との一体型の補償本体の多様な図である。
図5c図5cは、流体チャンバの封止部と補償チャンバの封止部との一体型の補償本体の多様な図である。
図6図6は、家具ヒンジの制動装置と部材の分解図である。
図7a図7aは、別な実施例の制動装置の断面図である。
図7b図7bは、別な実施例の制動装置の断面図である。
図8a図8aは、別な実施例の制動装置の断面図である。
図8b図8bは、別な実施例の制動装置の断面図である。
【0018】
図1は、家具1の斜視図であり、扉3は家具ヒンジ4を介して家具枠体2に対して旋回可能に取り付けられている。知られた形態で、家具ヒンジ4は、ヒンジアーム6の形態の枠体側装着部分にヒンジ式に接続されたヒンジカップ5を有する。家具ヒンジ4はヒンジ運動を制動するための制動装置7(ここでは図示せず)をそれぞれ有しており、好適には制動装置7はヒンジカップ5の内部または上に取り付けられている。特に、ヒンジカップ5の外側に少なくとも一つの制動装置7が取り付けられており、ヒンジカップ5は、ヒンジカップ5上に配置された少なくとも一つの制動装置7と共に、扉3内の家具の標準穴内に一体化するよう装着でき、穴の概念的な径内に配置されている。
【0019】
図2は、家具ヒンジ4の斜視図であり、ヒンジカップ5は少なくとも一つのヒンジレバー8を介してヒンジアーム6に旋回可能に取り付けられている。ヒンジカップ5には固定用フランジ9が提供されており、少なくとも一つの制動装置7は固定用フランジ9の下側でヒンジカップ5の外側に制動装置収容体10と共に取り付けられている。制動装置7は、スイッチ11を有しており、スイッチ11は人手で調節され、望むなら、スイッチ11によって制動装置7の制動作用を完全に停止できる。ヒンジカップ5内には、ヒンジ4の閉鎖運動の終端に向かって、ヒンジレバー8によって作動でき、かつ、ヒンジカップの底部の方向に押し込まれることができる、旋回可能に取り付けられた作動要素12が提供されている。閉鎖運動の最終部分は提供された制動装置7によって制動され得る。作動要素12は好適には、回転軸13に平行な軸周囲で旋回可能に取り付けられている。
【0020】
図3aと図3bは、制動装置7の2つの異なる断面図である。ヒンジカップ5に対して旋回軸14周囲に回転可能に取り付けられ、かつ、閉鎖運動の最終部分に向かってヒンジカップ5(図2)に係合するヒンジレバー8によって作動できる、作動要素12を見ることができる。回転軸15周囲で旋回可能に取り付けられたレバー16は、作動要素12に可動式に連結されており、それゆえ、レバー16は作動要素12の運動と共に常に連動する。レバー16は、ラム18(またはそれぞれピストンロッド)に当接するレバーアーム17を有する。ラム18は制動装置収容体10の流体チャンバ20内に移動可能に取り付けられたピストン19に接続されている。制動ストローク運動の後、ラム18(およびピストン19)は、流体チャンバ20内に配置された戻しバネ21によって、次の制動ストローク運動のために待機位置へと再び戻され得る。図3aと図3bでは、ピストン19はそのような待機位置にある。流体チャンバ20は液圧制動流体で満たされており、液圧制動流体は、流体チャンバ20の端部22の方向へのピストン19の移動で、ピストン19と流体チャンバ20の内壁23(図3b)との間でピストン19を横方向に流れることができ、変形可能な補償本体26が配置された補償チャンバ25へと流路24(図3b)を通って流れることができる。補償本体26は、ラム18が流体チャンバ20へと移動する際にラム18の体積を補償するように作用する。図3aで明示するように、休止位置における補償本体26は実質的にバッグ形態(袋状)であり、補償チャンバ25を実質的に完全に満たす。補償本体26は空気で満たされており、補償本体26は、制動ストローク運動中に−すなわちラム18が流体チャンバ20の端部22側の方向に移動するとき−補償チャンバ26へ流れる流体の体積によって弾性的に変形でき、空気は制動装置収容体10の開口部27を通って排出される。戻しバネ21の力によって、ラム18が再び待機位置に戻されると、補償チャンバ25内の制動流体が、それによって生じる減圧によって再び流体チャンバ20へと逆流し、補償本体20は、開口部27を通って流入する空気によって、図3aに示すバッグ形態を再びとることができる。超過荷重防止手段28を提供することもでき、それによって、流体チャンバ20と補償チャンバ25との間の少なくとも一つの超過荷重開口部29が、ラム18に作用する圧力閾値を超えると開くことができる。超過荷重防止手段28は、超過荷重状況で、制動流体が流体チャンバ20から補償チャンバ25へと流れるよう、バネ30によって予め圧縮されており、所定の流体圧を超えると超過荷重開口部29を開くボール31を含んでいる。流体圧が所定の圧力より下がると、超過荷重開口部29はバネ搭載ボール31によって再び閉じられる。
【0021】
封止部33は制動装置収容体10に対してラム18を封止し、補償本体26と一体型に結合して提供されていることが必須である。図示の実施例では、制動装置収容体10に対して補償チャンバ25を封止する封止体34は、封止部33と補償本体26との一体型に結合して形成されている。
【0022】
図3bは、図3aの制動装置7の別な断面図であり、ピストン19と流体チャンバ20の内壁23との間に残る隙間が図示されており、そこを通って制動流体はピストンの一方から他方へ流れることができる。制動作用に影響を及ぼすため、流体チャンバ20の内壁23は端部22の方向に向かって狭くなる流れ断面である溝を有することができ、それによって適応した制動が実行される。制動機能を停止させる(非アクティブ化する)スイッチ11と、(好適には解放可能に)制動装置7をヒンジカップ5に固定する少なくとも一つの弾性ラッチ要素32とが図示されている。特にコンパクトな制動装置7を提供するため、流体チャンバ20は第1の長手軸を有しており、補償チャンバ25は第2の長手軸を有しており、流体チャンバ20の第1の長手軸と補償チャンバ25の第2の長手軸は、互いに離間した関係でほぼ平行に延びている。
【0023】
図4aと図4bは制動装置7の2つの異なる断面図であり、ピストン19は後方端部位置付近に配置されている。作動要素12の旋回運動はレバー16も回転させ、そのレバー端部17はラム18(およびピストン19)を流体チャンバ20内部へ押し込む。その後、図4bに示す矢印の方向に、移動した制動流体が高圧側(H)から開始して、ピストン19を横方向に通過して低圧側(L)に流れ、通路24を通って補償チャンバ25に流れることで、補償本体26が変形し、このようにして内側に移動するラム18の体積が補償される。補償本体26内で移動した空気は、開口部27から流出できる(図4a)。制動ストローク運動の後、戻しバネ21がピストン19を再び戻し、この場合には、それによって生じた減圧によって、制動流体が補償チャンバ25から流体チャンバ20へと再び戻ることができ、補償本体26は、開口部27を通って流れ込む空気により、元の形態(図3a)を再びとることができる。流路24は、流体チャンバ20の端部22から離れた流体チャンバ20の端部領域から補償チャンバ25へと通じている。さらに流路24は、補償チャンバ25の端部36から離れた補償チャンバ25の端部領域へと開く。低圧側(L)から延びる流路24の利点は、補償チャンバ25へと至る部分の短さであり、それによって漏出のリスクが実質的に取り除かれる。さらに、補償本体26は低圧側(L)から作用されることで定まった形態で変形可能であり、よって改良された形態でそれぞれ支配的な流体圧に適応できる。
【0024】
図5aから図5cは、補償本体26の多様な図である。図5aは休止位置の補償本体26を示しており、この操作状況ではバッグ形態である。(制動装置収容体10に対してラム18を封止する)封止部33と(制動装置収容体10に対して補償チャンバ25を封止する)封止体34とを備えた補償本体26は、一体型形態の共通の構造ユニットである。図5bは、圧縮された状態の補償本体26を示しており、図5cは、空洞形態の補償本体26、封止体34および封止部33の断面が示されている。
【0025】
図6は、制動装置7の分解図であり、流体チャンバ20と、それに対して横方向に平行に延びる補償チャンバ25は、制動装置収容体10内に提供されている。取り付け位置においてレバー16に非回転式に接続された作用要素12が図示されている。ラム18はピストン19に接続されており、ラム18は、補償チャンバ25の封止体34と一体型に形成されている封止部33と、弾性的に圧縮可能な補償本体26とによって、制動装置収容体10に対して封止されている。ピストンから離れたピストンロッドまたはラム18の端部は、組み立て状態では流体チャンバ20から導き出され、閉鎖部分35へと突出している。
【0026】
図7aと図7bは、制動装置7の別な実施例の断面図である。図7aは待機位置にあるラム18を備えた制動装置7を示しており、一方、図7bは流体チャンバ20内へ押し込まれている位置のラム18またはピストン19を示している。流体チャンバ20と、それと横方向に平行関係に延びる補償チャンバ25とは、制動装置収容体10内に提供されている。流体チャンバ20を封止するために提供され、かつ、ラム18が通過する封止部33は、変形可能な補償本体26と一体型に形成されている。図示の実施例では、バッグ形態の補償本体26は、−流体チャンバ20の端部22に対して−、それと反対方向に面し、制動装置収容体10から突出するように配置されている。ラム18が流体チャンバ20内に押し込まれると、移動した制動流体が補償本体26の内部を通過し(図7bに示す)、補償本体26をピストン19の制動ストローク運動に対して横断方向に膨らませる。制動ストローク運動の後、ピストン19は戻しバネ21の力によって図7aの待機位置に再び戻る。
【0027】
図8aと図8bは、さらに別な実施例の制動装置7の断面図である。制動装置収容体10内には、移動可能に取り付けられたピストン19を備えた流体チャンバ20が提供され、ピストン19はラム18に接続されている。(好適には環状形態で)流体チャンバ20を包囲する補償チャンバ25は流体チャンバ20に対して同心円状に配置されている。ラム18が通過する、流体チャンバ20を封止する封止部33が、変形可能な補償本体26と一体型に提供されている。図8aは、待機位置にあるラム18を備えた制動装置7を示している。ラム18が流体チャンバ20内に押し込まれると、移動した制動流体は補償チャンバ25内へと通流し、スリーブ形態の補償本体26を放射方向(半径方向)に膨出させる。補償本体26の最大膨張方向は、この場合には、ピストン19の制動ストローク運動に対して実質的に直角方向である。
【0028】
本発明は解説した実施例に限定されず、添付の「請求の範囲」内の変形例や技術的均等物にも及ぶ。上、下、横などの解説で採用した位置的関係は、直接解説したものや図示したものにも関連し、位置の変化に応じて新しい位置に適宜変更される。補償チャンバ25は、好適には流体チャンバ20から分離されているが、一体となっていてもよい。ピストン19には少なくとも一つの開口部を提供することもでき、そこを通って制動流体が、高圧側(H)と低圧側(L)との間でピストン19を通過できる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図8a
図8b