特許第5860982号(P5860982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5860982
(24)【登録日】2015年12月25日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】バックル装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/26 20060101AFI20160202BHJP
   B60R 22/22 20060101ALI20160202BHJP
   A44B 11/25 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B60R22/26
   B60R22/22
   A44B11/25
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-12447(P2015-12447)
(22)【出願日】2015年1月26日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】原田 周侍
(72)【発明者】
【氏名】服部 泰徳
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−035465(JP,A)
【文献】 実開昭57−203944(JP,U)
【文献】 実開昭63−046267(JP,U)
【文献】 特開昭56−136571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/26
B60R 22/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングが挿通されるタングを保持するバックル本体と、
車両用シート又は車体に固定される固定部と、
帯状に形成されていると共に前記バックル本体と前記固定部とを連結する連結部材と、
前記連結部材を覆うと共に、前記バックル本体が前記連結部材の厚み方向一方側へ移動された際の屈曲起点となる第1屈曲起点部と、前記バックル本体が前記連結部材の厚み方向他方側へ移動された際の屈曲起点となる第2屈曲起点部と、を有し、前記第1屈曲起点部と前記第2屈曲起点部とが前記連結部材の長手方向の異なる位置に配置されたブーツと、
を備えたバックル装置。
【請求項2】
前記第1屈曲起点部及び前記第2屈曲起点部は、ブーツに形成された窪み部、孔部、及び厚みがブーツの他の部位に比して薄く設定された薄肉部のいずれかとされている請求項1記載のバックル装置。
【請求項3】
前記第1屈曲起点部は、前記ブーツにおける前記車両用シートとは反対側に設けられた前記薄肉部とされており、
前記第2屈曲起点部は、前記ブーツにおける前記車両用シート側に設けられた前記窪み部とされている請求項2記載のバックル装置。
【請求項4】
前記第2屈曲起点部が、前記ブーツにおける前記固定部側に配置されている請求項3記載のバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗員に装着されるウェビングが挿通されたタングを保持するバックル本体(バックル装置)を備えたバックル装置(自動車用バックル支持装置)が開示されている。この文献に記載されたバックル装置は、バックル本体と、車両用シートに固定されるアンカプレートと、バックル本体とアンカプレートとを繋ぐ連結部材(インナウェビング)と、連結部材を覆う筒状に形成されたブーツ(インナブーツ)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−35465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、連結部材を覆うブーツは、ウェビングの着脱の際などに屈曲されることが考えられる。そのため、ブーツには、当該屈曲に対する耐久性が要求される。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ブーツの屈曲に対する耐久性が低下することを抑制することができるバックル装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングが挿通されるタングを保持するバックル本体と、車両用シート又は車体に固定される固定部と、帯状に形成されていると共に前記バックル本体と前記固定部とを連結する連結部材と、前記連結部材を覆うと共に、前記バックル本体が前記連結部材の厚み方向一方側へ移動された際の屈曲起点となる第1屈曲起点部と、前記バックル本体が前記連結部材の厚み方向他方側へ移動された際の屈曲起点となる第2屈曲起点部と、を有し、前記第1屈曲起点部と前記第2屈曲起点部とが前記連結部材の長手方向の異なる位置に配置されたブーツと、を備えている。
【0007】
請求項2記載のバックル装置は、請求項1記載のバックル装置において、前記第1屈曲起点部及び前記第2屈曲起点部は、ブーツに形成された窪み部、孔部、及び厚みがブーツの他の部位に比して薄く設定された薄肉部のいずれかとされている。
【0008】
請求項3記載のバックル装置は、請求項2記載のバックル装置において、前記第1屈曲起点部は、前記ブーツにおける前記車両用シートとは反対側に設けられた前記薄肉部とされており、前記第2屈曲起点部は、前記ブーツにおける前記車両用シート側に設けられた前記窪み部とされている。
【0009】
請求項4記載のバックル装置は、請求項3記載のバックル装置において、前記第2屈曲起点部が、前記ブーツにおける前記固定部側に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のバックル装置によれば、固定部が車両用シート又は車体に固定されることによって、バックル装置が車両用シート又は車体に固定される。そして、ウェビングが挿通されたタングがバックル本体に保持されることで、ウェビングが乗員に装着される。また、本発明では、バックル本体が連結部材の厚み方向一方側へ移動されると、ブーツが第1屈曲起点部を起点として屈曲し、バックル本体が連結部材の厚み方向他方側へ移動されると、ブーツが第2屈曲起点部を起点として屈曲する。ここで、本発明では、ブーツの第1屈曲起点部と第2屈曲起点部とが連結部材の長手方向の異なる位置に配置されている。すなわち、バックル本体が連結部材の厚み方向一方側へ移動された際のブーツの屈曲起点部とバックル本体が連結部材の厚み方向他方側へ移動された際のブーツの屈曲起点部とが、連結部材の長手方向に一致しない。これにより、ブーツの屈曲に対する耐久性が低下することを抑制することができる。
【0011】
請求項2記載のバックル装置によれば、ブーツの一部に窪み部、孔部、及び薄肉部を設けることにより、当該部分を起点としてブーツを屈曲させることができる。
【0012】
請求項3記載のバックル装置によれば、ブーツにおける乗員から視認され易い部分の第1屈曲起点部を薄肉部とすることにより、当該部分に窪みなどの段差部が形成されることを抑制することができる。また、ブーツにおける乗員から視認され難い部分に第2屈曲起点部としての窪み部を設けた構成とすることにより、当該窪み部が乗員から視認されることを抑制することができる。すなわち、本発明では、バックル装置の外観意匠が低下することを抑制することができる。
【0013】
請求項4記載のバックル装置によれば、第2屈曲起点部としての窪み部を乗員からより視認され難い固定部側に設けることにより、バックル装置の外観意匠が低下することをより一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のバックル装置をバックル本体側から見た斜視図である。
図2】バックル装置を示す平面図である。
図3】バックル装置を示す側面図である。
図4図2に示された4−4線に沿って切断したバックル装置の断面を示す断面図である。
図5】ワイヤハーネスが接続されたバックル本体と固定プレートとが連結ウェビングによって接続された状態を示す平面図である。
図6】固定プレートを示す斜視図である。
図7】ブーツを示す平面図である。
図8】ブーツを長手方向一方側から見た正面図である。
図9】ブーツを長手方向他方側から見た背面図である。
図10A図4に示された10A−10A線に沿って切断したバックル装置の断面を示す断面図である。
図10B図4に示された10B−10B線に沿って切断したバックル装置の断面を示す断面図である。
図10C図4に示された10C−10C線に沿って切断したバックル装置の断面を示す断面図である。
図10D図4に示された10D−10D線に沿って切断したバックル装置の断面を示す断面図である。
図10E図4に示された10E−10E線に沿って切断したバックル装置の断面を示す断面図である。
図10F図4に示された10F−10F線に沿って切断したバックル装置の断面を示す断面図である。
図11】バックル本体が車両用シートの幅方向外側に移動されることによってブーツが屈曲された状態を模式的に示す側面図である。
図12】バックル本体が車両用シートの幅方向内側に移動されることによってブーツが屈曲された状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図10Fを用いて、本発明の実施形態に係るバックル装置について説明する。
【0016】
図1図3に示されるように、本実施形態のバックル装置10は、図示しない車両用シートの側方側に配置されると共に当該車両用シートの一部を構成するシートクッションフレームに固定される。このバックル装置10は、車両用シートに着座した乗員に装着されるウェビングが挿通されたタングを保持するバックル本体12と、バックル本体12に接続されたワイヤハーネス14と、シートクッションフレームに固定される固定部としての固定プレート16と、を備えている。また、図4及び図5に示されるように、バックル装置10は、帯状に形成されていると共にバックル本体12と固定プレート16とを連結する連結部材としての連結ウェビング18と、ワイヤハーネス14の一部が内部に配置された状態で連結ウェビング18を覆うブーツ20と、を備えている。
【0017】
バックル本体12は、矩形ブロック状に形成されており、このバックル本体12の内部には図示しないタングを保持する保持機構及び保持機構によるタングの保持を解除する解除機構が設けられている。また、図4に示されるように、バックル本体12における固定プレート16側の端部には、後に詳述する連結ウェビング18の一端部が係止される係止部22が設けられている。
【0018】
図5に示されるように、ワイヤハーネス14は、バックル本体12がタングを保持しているか否か等を検出するために用いられるスイッチに接続される複数の配線コード24が可撓性の配線チューブ26内に収容されることによって構成されている。また、本実施形態では、ワイヤハーネス14は、平面視で連結ウェビング18の短手方向一方側の端に沿って延在している。
【0019】
図6に示されるように、固定プレート16は、鋼板材にプレス加工等が施されること等によって形成されており、この固定プレート16は、中心部に円形の開口部28を有すると共に円板状に形成され、シートクッションフレームに図示しない締結部材を介して固定される円板部30と、連結ウェビング18(図5参照)の長手方向他方側の端部が係止される連結ウェビング係止部32と、円板部30と連結ウェビング係止部32とを繋ぐ傾斜接続部34と、を備えている。
【0020】
円板部30には、当該円板部30の径方向外側に向けて突出する2つの突出部36が設けられている。この突出部36がシートクッションフレームに設けられた被当接部に当接することによって、円板部30が締結部材回りに回動することが規制されるようになっている。これにより、バックル装置10(図1等参照)がシートクッションフレームに所定の姿勢で固定されるようになっている。
【0021】
また、傾斜接続部34は、円板部30から連結ウェビング係止部32側に向かうにつれて傾斜されている。これにより、円板部30と連結ウェビング係止部32とがそれぞれの厚み方向にオフセットして配置されるようになっている。また、傾斜接続部34には、後述するクリップ38(図4参照)が係止されるクリップ係止孔40が形成されている。
【0022】
連結ウェビング係止部32には、長孔状に形成された被係合部及び連結部材挿通孔としての連結ウェビング挿通孔42が形成されており、この連結ウェビング挿通孔42の短手方向の内径Dは、連結ウェビング18(図5参照)の厚みに比して数倍大きな内径に設定されている。これにより、図4に示されるように、連結ウェビング挿通孔42に挿通された連結ウェビング18と連結ウェビング挿通孔42の内縁部との間に、後述するブーツ20に設けられた係合突起部72が係合することが可能となっている。なお、連結ウェビング挿通孔42の周縁部には、連結ウェビング係止部32の厚み方向一方側へ向けて突出するフランジ部44が形成されている。
【0023】
図4及び図5に示されるように、連結ウェビング18は、車両用シートに着座した乗員に装着されるウェビングと同様の材料を用いて形成されている。図4に示されるように、この連結ウェビング18の長手方向一方側は、バックル本体12の係止部22に係止された状態でU字状に折曲げられており、また連結ウェビング18の長手方向他方側は、固定プレート16の連結ウェビング挿通孔42に挿通された状態でU字状に折曲げられている。そして、連結ウェビング18の長手方向一方側の端部18Aと、長手方向他方側の端部18Bと、長手方向の中間部18Cとが重合わされた状態で縫製により接合されている。
【0024】
ブーツ20は、ワイヤハーネス14(図5参照)の一部が内部に配置された状態で連結ウェビング18を覆っており、このブーツ20は、金型の内部に樹脂材料やゴム材料等を流込んで冷却された後に当該金型から離型されることによって形成されている。具体的には、図7図9に示されるように、ブーツ20は、連結ウェビング18を覆う筒状に形成された筒状部46と、当該筒状部46の端から延出する延出部48と、を含んで構成されている。
【0025】
筒状部46は、図示しない車両用シート(シートクッション)側に配置される内壁50(図8参照)と、内壁50に対して車両用シートとは離間する側に配置されていると共に内壁50と対向して配置された外壁52と、内壁50の短手方向の両端と外壁52の短手方向の両端とを繋ぐ一対の側壁54と、を有することにより、その長手方向から見て矩形筒状に形成されている。
【0026】
図4に示されるように、内壁50は、バックル本体12及び連結ウェビング18に沿って延びる矩形板状に形成されている。また、内壁50における固定プレート16側の端部には、バックル本体12が車両用シート側に移動された際の(バックル本体12が連結ウェビング18の厚み方向他方側へ移動された際の)屈曲起点となる第2屈曲起点部としての窪み部56が形成されている。また、内壁50においてバックル本体12と対向する部位の厚みは、当該内壁50において連結ウェビング18と対向する部位(窪み部56が形成された部位を除く)の厚みに比して薄く設定されている。なお、図7に示されるように、本実施形態では、一対の側壁54において窪み部56が形成された部位と対応する部位にも当該窪み部56と同様の構成の窪み部58が形成されている。
【0027】
図4に示されるように、外壁52は、バックル本体12と対向して配置される第1延在部60及び連結ウェビング18と対向して配置されている第2延在部62を備えている。また、第1延在部60の固定プレート16とは離間する側の端部には、シート状に形成されたフェルト64が接合されている。図4及び図7に示されるように、第2延在部62における連結ウェビング18の幅方向(短手方向)の中間部には、連結ウェビング18側に向けて凸状とされた規制部としての凸状部66が形成されている。この凸状部66は、連結ウェビング18の長手方向を長手方向とする長尺状に形成されている。当該凸状部66が第2延在部62に形成されていることにより、図9に示されるように、第2延在部62の短手方向の両端部には、それぞれワイヤハーネス14が配置されるワイヤハーネス配置溝68が形成されている。図10A図10Fに示されるように、本実施形態では、ワイヤハーネス14は、ブーツ20を固定プレート16(図1等参照)側から見て左側のワイヤハーネス配置溝68内に配置されている。そして、ワイヤハーネス14の配線チューブ26が凸状部66に当接することで、ワイヤハーネス14の連結ウェビング18の幅方向への移動が規制されるようになっている。なお、本実施形態では、ワイヤハーネス14を左側のワイヤハーネス配置溝68内に配置したが、バックル装置10が設けられる位置によってはワイヤハーネス14を右側のワイヤハーネス配置溝68内に配置してもよい。また、2本のワイヤハーネス14を有する構成では、当該2本のワイヤハーネス14を左側のワイヤハーネス配置溝68及び右側のワイヤハーネス配置溝68内にそれぞれ配置することもできる。
【0028】
また、図4に示されるように、本実施形態では、バックル本体12が、筒状部46の一方側の端部に挿入された状態で固定されるようになっている。そして、バックル本体12が筒状部46の一方側の端部に挿入されて、バックル本体12が凸状部66の長手方向一方側の端部66Aに当接することで、バックル本体12の筒状部46への挿入量が規制されるようになっている。
【0029】
図4及び図7に示されるように、第2延在部62における第1延在部60側の端部は、当該第1延在部60側に向かうにつれて(バックル本体12側に向かうにつれて)次第に厚みが薄くなる第1屈曲起点部及び薄肉部としての肉厚徐変部70とされている。また、肉厚徐変部70の厚みは、第2延在部62における肉厚徐変部70よりも固定プレート16側の部位の厚みに比して薄く設定されている。これにより、バックル本体12が車両用シートとは離間する側に移動された際に(バックル本体12が連結ウェビング18の厚み方向一方側へ移動された際に)、ブーツ20が肉厚徐変部70を屈曲起点として屈曲するようになっている。また、本実施形態では、肉厚徐変部70が、ブーツ20の側断面視で内壁50に形成された窪み部56に対してバックル本体12側に配置されている。すなわち、肉厚徐変部70と窪み部56とが、連結ウェビング18の長手方向の異なる位置に配置されている。なお、本実施形態では、第1延在部60の厚みは、肉厚徐変部70における最小厚み部分と同じ厚みに設定されている。
【0030】
図4及び図9に示されるように、延出部48は、筒状部46の内壁50の固定プレート16側の端から当該固定プレート16側に向けて延出しており、この延出部48は、固定プレート16側から見て筒状部46の外壁52側が開放されたU字状断面に形成されている。また、延出部48と筒状部46の内壁50との境界部には、筒状部46の外壁52側に向けて突出する係合部としての係合突起部72が設けられている。すなわち、この係合突起部72が、延出部48と筒状部46の内壁50との境界を跨ぐように設けられている。この係合突起部72が、連結ウェビング挿通孔42に挿通された連結ウェビング18と連結ウェビング挿通孔42の内縁部との間に所定の締め代を有して嵌入されることによって、ブーツ20の固定プレート16に対するがたつきが抑制されるようになっている。また、延出部48には、クリップ38が挿通されるクリップ挿通孔74が形成されている。そして、クリップ挿通孔74に挿通されたクリップ38が、固定プレート16に形成されたクリップ係止孔40に係止されることによって、ブーツ20の延出部48が固定プレート16に固定されると共に、連結ウェビング18と連結ウェビング挿通孔42の内縁部との間に嵌入された係合突起部72が連結ウェビング挿通孔42から抜出すことが抑制されている。
【0031】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態のバックル装置10によれば、固定プレート16の円板部30が車両用シートのシートクッションフレームに固定されることによって、バックル装置10が車両用シートに固定される。そして、ウェビングが挿通されたタングがバックル本体12に保持されることで、ウェビングが乗員に装着される。
【0033】
ここで、図4に示されるように、本実施形態では、連結ウェビング18がブーツ20に覆われており、図10A図10Fに示されるように、このブーツ20には、ワイヤハーネス14の連結ウェビング18の幅方向への移動を規制する凸状部66が設けられている。これにより、ワイヤハーネス14のブーツ20内における移動を規制することができる。また、当該構成では、ワイヤハーネス14のブーツ20内における移動を規制するために、テープ等を巻付けること等の工程を経なくてもよい。すなわち、本実施形態のバックル装置10によれば、組立工数を増加させることなくバックル本体12に接続されたワイヤハーネス14の動きを規制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、ワイヤハーネス14が、ブーツ20内における連結ウェビング18の幅方向一方側の端部及び他方側の端部にそれぞれ配置可能となっている。これにより、ブーツ20の共用化を図りつつワイヤハーネス14のブーツ20内における配索の自由度を向上させることができる。なお、本実施形態では、バックル装置10を車両用シートの幅方向一方側に固定する場合に、ワイヤハーネス14をブーツ20内における連結ウェビング18の幅方向一方側に配置し、バックル装置10を車両用シートの幅方向他方側に固定する場合に、ワイヤハーネス14をブーツ20内における連結ウェビング18の幅方向他方側に配置するようになっている。
【0035】
さらに、図4に示されるように、本実施形態では、バックル本体12をブーツ20の筒状部46へ挿入した際に、バックル本体12が凸状部66の端部66Aに当接することで、バックル本体12のブーツ20への挿入量が規制される。すなわち、バックル本体12のブーツ20への挿入が完了する。当該構成とすることにより、バックル装置10の組立て時の作業性を良好にすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、ブーツ20に設けられた係合突起部72を固定プレート16に形成された連結ウェビング挿通孔42に係合させることで、ブーツ20の固定プレート16に対するがたつきを抑制することができる。また、当該構成では、ブーツ20の固定プレート16に対するがたつきを抑制するために、テープ等を巻付けること等の工程を経なくてもよい。すなわち、本実施形態のバックル装置10によれば、組立工数を増加させることなくブーツ20の固定プレート16に対するがたつきを抑制することができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、ブーツ20に設けられた係合突起部72が、連結ウェビング18が挿通される連結ウェビング挿通孔42に係合する。これにより、連結ウェビング挿通孔42及びブーツ20の係合突起部72のみが係合する被係合部を固定プレート16にそれぞれ独立して設けた場合に比して、固定プレート16の構成の単純化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記係合突起部72が、延出部48と筒状部46の内壁50との境界を跨ぐように設けられている。すなわち、係合突起部72の一部が、筒状部46の外側に延出する延出部48に設けられている。これにより、金型の内部に樹脂材料やゴム材料等を流込んでブーツ20を形成した後のブーツ20の金型からの離型性を良好にすることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、図11に示されるように、バックル本体12が車両用シートとは離間する側に移動されると、ブーツ20が肉厚徐変部70を屈曲起点として屈曲し、図12に示されるように、バックル本体12が車両用シート側に移動されると、ブーツ20が窪み部56を屈曲起点として屈曲する。ここで、本実施形態では、ブーツ20の肉厚徐変部70と窪み部56とが連結ウェビング18の長手方向の異なる位置に配置されている。すなわち、バックル本体12が車両用シートとは離間する側に移動された際のブーツ20の屈曲起点部とバックル本体12が車両用シート側に移動された際のブーツ20の屈曲起点部とが、連結ウェビング18の長手方向に一致しない。これにより、ブーツ20の屈曲に対する耐久性が低下することを抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、ブーツ20の筒状部46における乗員から視認され易い外壁52の屈曲起点部を肉厚徐変部70とすることにより、当該部分に窪みなどの段差部が形成されることを抑制することができる。また、ブーツ20における乗員から視認され難い内壁50に窪み部56を設けた構成とすることにより、当該窪み部56が乗員から視認されることを抑制することができる。すなわち、本実施形態では、バックル装置10の外観意匠が低下することを抑制することができる。さらに、窪み部56を内壁50における固定プレート16側の端部に設けることにより、窪み部56が乗員から視認されることをより一層抑制することができる。これにより、バックル装置10の外観意匠が低下することをより一層抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、ブーツ20の外壁52に肉厚徐変部70を形成すると共に内壁50に窪み部56を設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ブーツ20において肉厚徐変部70及び窪み部56と対応する部分に、窪み部、孔部、及び薄肉部の少なくとも1つを設けることにより、当該部分を屈曲起点部とすることもできる。
【0042】
また、本実施形態では、係合突起部72の一部を、筒状部46の外側に延出する延出部48に設けた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、係合突起部72の全部を、筒状部46の外側に延出する延出部48に設けることもできる。また、固定プレート16に設けられた被係合部に係合する係合部を筒状部46の外周部に設けた構成とすることもできる。
【0043】
さらに、本実施形態では、ブーツ20に設けられた係合突起部72を、連結ウェビング18が挿通される連結ウェビング挿通孔42に係合させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、連結ウェビング挿通孔42及びブーツ20の係合突起部72のみが係合する被係合部を固定プレート16にそれぞれ独立して設けることもできる。
【0044】
また、本実施形態では、バックル本体12をブーツ20の筒状部46へ挿入した際に、バックル本体12が凸状部66の端部66Aに当接するように構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バックル本体12をブーツ20の筒状部46へ挿入した際に当該バックル本体12が当接すると共にワイヤハーネス14の動きを規制する機能を有しない被当接部を筒状部46内に設けることにより、バックル本体12のブーツ20への挿入量を規制してもよい。また、バックル本体12のブーツ20への挿入量を規制する部分を設けない構成とすることもできる。
【0045】
さらに、本実施形態では、ワイヤハーネス14をブーツ20内における連結ウェビング18の幅方向一方側の端部及び他方側の端部にそれぞれ配置可能とした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ワイヤハーネス14をブーツ20内における連結ウェビング18の幅方向一方側の端部及び他方側の端部にそれぞれ配置可能に構成するか否かについては、ブーツ20の形状等を考慮して適宜設定すればよい。
【0046】
また、本実施形態では、バックル装置10の固定プレート16をシートクッションフレームに固定した例について説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、バックル装置10の固定プレート16を車体に固定することもできる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 バックル装置
12 バックル本体
16 固定プレート(固定部)
18 連結ウェビング(連結部材)
20 ブーツ
56 窪み部(第2屈曲起点部)
70 肉厚徐変部(第1屈曲起点部,薄肉部)
【要約】
【課題】ブーツの屈曲に対する耐久性が低下することを抑制する。
【解決手段】バックル装置10は、乗員に装着されるウェビングが挿通されるタングを保持するバックル本体12と、車両用シートに固定される固定プレート16と、帯状に形成されていると共にバックル本体12と固定プレート16とを連結する連結ウェビング18と、を備えている。また、バックル装置10は、連結ウェビング18を覆うと共に、バックル本体12が連結ウェビング18の厚み方向一方側へ移動された際の屈曲起点となる肉厚徐変部70と、バックル本体12が連結ウェビング18の厚み方向他方側へ移動された際の屈曲起点となる窪み部56と、を有するブーツ20を備えている。さらに、肉厚徐変部70と窪み部56とは、連結ウェビング18の長手方向の異なる位置に配置されている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11
図12