(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
穀類、ホップ、酵母、及び水を含有する原料を発酵させた酵母含有発酵液にプリン体吸着剤を添加するプリン体吸着剤添加工程、前記プリン体吸着剤が添加された酵母含有発酵液を200kPa〜700kPaの水圧でろ過機へ液送する液送工程、並びに前記液送された液をろ過するろ過工程を含み、さらに、前記プリン体吸着剤添加工程の前に、酵母含有発酵液を容器の底部に200kPa以下の圧力がかかる条件下で容器内に貯留する貯留工程を含む、発酵飲料の製造方法。
貯留工程から後において、酵母含有発酵液に、さらに、香料、酸味料、甘味料、食物繊維、苦味料、色素、安定剤、炭酸ガス、水、醸造用アルコール、及びスピリッツからなる群より選ばれる一又は二以上を含有させて調合する調合工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発酵飲料の製造方法は、穀類、ホップ、酵母、及び水を含有する原料を発酵させた酵母含有発酵液にプリン体吸着剤を添加するプリン体吸着剤添加工程と、この工程後に特定の液送工程を含むことに特徴を有する。すなわち、本発明の発酵飲料の製造方法は一例として、酵母含有発酵液の貯留工程、プリン体吸着剤添加工程、液送工程、ろ過工程を含む。また、貯留工程から後において、香料、酸味料等をさらに含有させて調合する調合工程を含んでもよい。以下、製造方法に含まれる工程を順番に概説する。
【0014】
<貯留工程>
貯留工程では、穀類、ホップ、酵母、及び水を含有する原料を発酵させた酵母含有発酵液を貯留することができれば特に制限はないが、容器の底部に200kPa以下の圧力がかかる条件下で容器内に貯留することが好ましい。
【0015】
本発明でいう「酵母含有発酵液」とは、穀類を原料の一部に使用して発酵させたアルコール含有物のことである。穀類としては、麦、米、大豆、エンドウ豆、トウモロコシといった原料を用いることができる。
【0016】
「酵母含有発酵液」の原料として用いられる麦とは、通常のビールや発泡酒の原料として用いられる麦由来の加工品のことをいい、例えば、麦芽、大麦、精白大麦、大麦エキス、大麦フレーク、小麦、ハト麦、ライ麦、エン麦などをあげることができる。そのなかでも、麦芽を好適に用いることができ、酵母含有発酵液の麦芽比率は、例えば、50%未満、25%未満とすることができる。なお、本明細書における麦芽比率を示す「%」は、「重量%」を意味する。
【0017】
「酵母含有発酵液」の原料として用いられるホップとは、学名:Humulus lupulusである、アサ科のつる性多年草をいう。ホップを使用する際には、ビール等の製造に使用される通常のペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキスを、所望の香味に応じて適宜選択して使用することができる。また、イソ化ホップ、還元ホップなどのホップ加工品を用いてもよい。本発明におけるホップには、これらのものが包含される。
【0018】
「酵母含有発酵液」に含まれる酵母とは、ビール酵母であり、上面発酵酵母であっても、下面発酵酵母であってもよい。なお、酵母の発酵は、一般に知られている条件を用いればよい。
【0019】
「酵母含有発酵液」の原料水としては、水道水及び/又は水道水処理水を用いることができる。水道水処理水としては、水道水に対して、凝集沈殿、ろ過、膜、脱塩、ミネラル分調整、トリハロメタン除去などの処理を一又は二以上行ったものを用いることができる。水道水及び/又は水道水処理水は、豊富な水量を安定的に確保する観点から、麦芽発酵飲料の製造に好適である。
【0020】
貯留工程では、前記原料を含有する溶液を発酵させた酵母含有発酵液を容器(貯留槽など)で貯留すれば足りる。酵母含有発酵液が容器に貯留されると、水圧が作用し、容器の底部においては貯留してある酵母含有発酵液の水深に応じた圧力が生じる。具体的には、酵母含有発酵液の密度ρkg/m
3かつ、水深Tmにおける水深の圧力は、(ρ×9.8×T×10
−3)(kPa)で計算され、例えば酵母含有発酵液の密度1,008kg/m
3かつ、水深1mにおける水深の圧力は、9.88kPaである。この貯留工程では、200kPa以下の圧力であることが好ましく、より好ましくは180kPa以下、さらに好ましくは160kPa以下である。
【0021】
前述したように、発酵飲料中のプリン体は、原料である麦芽などの穀類やホップの核酸から放出されるものが大半であるが、オートリーゼ(自己消化)によって酵母の核酸から放出されるものが存在する可能性も一部で指摘されている。このため、後述する「プリン体吸着剤添加工程」以降の工程において、プリン体がこれらから放出されないようにすることが好ましい。従って、「貯留工程」においては、「プリン体吸着剤添加工程」以降において、プリン体が放出されないよう、穀類及び/又は酵母にかかるストレスを小さくするものである。
【0022】
なお、貯留工程は、その温度や時間は特に限定されない。また、用いる原料の使用量も、当業者の技術常識に従って、適宜設定することができる。例えば、容器の底部に200kPa以下の水圧がかかる範囲で、容器高さを大きくすることができるので、酵母含有発酵液の一回当たりの製造量も大きくすることができ、効率よく製造することが可能となる。なお、底部の水圧は、容器内の酵母含有貯留液の深さから算出した水圧が、所定の圧力内にあるかどうかで判断する。
【0023】
貯留工程における酵母含有発酵液中のプリン体含有量は、貯留条件や使用原料、装置によって変動するため特に設定されないが、例えば、1〜10mg/100mL程度である。
【0024】
<プリン体吸着剤添加工程>
プリン体吸着剤添加工程においては、酵母含有発酵液にプリン体吸着剤を添加する。
【0025】
「プリン体」とは、一般には、遊離プリン塩基、プリンヌクレオシド、プリンヌクレオチド、及び高分子核酸をいう。ここで、プリン塩基とは、プリン(9H−イミダゾ〔4,5−d〕ピリミジン)の誘導体の総称であり、アデニン、キサンチン、グアニン等を含む。プリンヌクレオシドとは、プリン塩基と糖の還元基とがN−グリコシド結合した配糖体化合物の総称であり、アデノシン、イノシン、グアノシン等を含む。プリンヌクレオチドとは、プリンヌクレオシドの糖部分がリン酸とエステルを作っている化合物の総称であり、アデニル酸、イノシン酸、グアニル酸等を含む。
【0026】
本発明においては、既存の種々のプリン体吸着剤を採用することができる。例えば、活性炭からなる吸着剤を用いてもよく、ゼオライトからなる吸着剤を用いてもよく、合成樹脂からなる吸着剤を用いてもよい。また、これらの吸着剤を一種単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。吸着剤の添加方法は、公知の条件に従って行うことができる。また、吸着剤の使用量も、公知技術に従って、適宜設定することができる。
【0027】
前記方法により、プリン体吸着剤が添加された酵母含有発酵液が得られる。該液は吸着剤が添加されたものであれば特に限定はなく、該液中のプリン体含有量は特に設定されないが、例えば、0.1〜1mg/100mL程度である。
【0028】
<液送工程>
本発明においては、プリン体吸着剤が添加された酵母含有発酵液を、次のようにしてろ過工程に液送する(液送工程を行う)。具体的には、プリン体吸着剤が添加された酵母含有発酵液を、配管を通じて特定の水圧でろ過機へ液送する。なお、配管は、その材質や全体長さ、太さ、形状は特に制限されず、公知技術に従って適宜設計することができる。
【0029】
液送工程における水圧としては、50kPa以上であればよく、好ましくは100kPa以上、より好ましくは150kPa以上、さらに好ましくは200kPa以上である。また、700kPa以下であればよく、好ましくは600kPa以下、より好ましくは500kPa以下である。前記範囲内であれば、いずれの組み合わせによる範囲内の水圧で液送してもよい。例えば、本発明における水圧は、好ましくは50kPa〜700kPaであり、より好ましくは100〜600kPaであり、さらに好ましくは150〜500kPaであり、よりさらに好ましくは200〜500kPaである。また、前記水圧とは、配管内の水圧のことを意味し、配管内に圧力計を敷設して測定することができる。圧力計は特に制限されず、公知のものを用いることができる。なお、配管には液送ポンプ、流量調整弁、流量計、差圧調整弁及びこれらの制御装置を選択して備えることができ、水圧は液送ポンプの出力と、配管内の流量などで適宜制御することができる。
【0030】
前記のように特定の水圧で液送することで、プリン体吸着剤が添加された酵母含有発酵液中において、新たに麦芽などの穀類や酵母からプリン体が生じる可能性は極めて低い。また、前段階においても、酵母にかかるストレスが小さい貯留工程を経ることで、この液送工程でプリン体が放出される可能性はさらに低まる。本発明においては、プリン体吸着剤が添加された液を、比較的高い圧力で液送できることから、効率的な製造が可能となる。かかる圧力下で液送をしても、プリン体の生成が抑制できるメカニズムは不明であるが、高速ゆえに酵母同士が接触する可能性が低まり、オートリーゼ(自己消化)が起こりにくく、かつ、貯留工程で酵母にあまりストレスをかけていないことで更にその効果が奏されると推測される。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、液送工程中の一部の箇所で上記水圧であれば本発明を使用したものとみなす。
また、貯留工程の容器底部圧力の最大値(P1)と、ろ過工程への液送用配管内の水圧の最大値(P2)とが、以下の関係にあることが好ましい。
好ましくは (P1)<(P2)
より好ましくは (P1)<(P2)−100kPa
さらに好ましくは (P1)<(P2)−140kPa
【0031】
<ろ過工程>
ろ過工程では、前記液送工程を経て送付されたプリン体吸着剤を含む酵母含有発酵液から、酵母や混濁物質の粒子等を取り除くことができれば特に限定はない。ろ過における条件は、一般に知られている条件を用いればよい。
【0032】
ろ液のプリン体量は、液送工程中での増加はないことから、用いるプリン体吸着剤の種類や量によって一概には設定されないが、該プリン体吸着剤の性能に応じて低減されたものとなっている。具体的には、添加前の約1/10量程度であり、例えば、好ましくは1mg/100mL未満、より好ましくは0.5mg/100mL未満、さらに好ましくは0.3mg/100mL未満である。本発明においては、前記工程を行う以外に、所望の目的に応じて、創味成分などを調合して風味やうまみ等を調整してもよく(以下、単に調合工程という)、スピリッツ等を配合することもできる。
【0033】
<調合工程>
本発明の発酵飲料の製造方法においては、前記貯留工程から後において、酵母含有発酵液に、さらに、香料、酸味料、甘味料、食物繊維、苦味料、色素、安定剤、炭酸ガス、水、醸造用アルコール、及びスピリッツからなる群より選ばれる一又は二以上を含有させて調合することができる。これらの配合量は、特に限定されず、当業者の技術常識に従って適宜設定することができる。
【0034】
(香料)
本明細書において、香料とは、食品の製造又は加工の過程で、香気を付与又は増強するために添加される添加物及びその製剤をいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの香料を用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。
【0035】
(酸味料)
本明細書において、酸味料とは、食品の製造又は加工の工程で、酸味の付与又は増強による味覚の向上又は改善のために使用される食品添加物及びその製剤をいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの酸味料を用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。
【0036】
(甘味料)
本明細書において、甘味料とは、飲食品に甘味を付与するために添加される添加物及びその製剤をいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの甘味料を用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。天然甘味料及び合成甘味料のいずれの高甘味度甘味料も使用することができ、例えば、ペプチド系甘味料、例えばネオテーム、アリテーム等;配糖体系甘味料、例えばステビア(ステビア抽出物およびステビアを酵素処理してブドウ糖を付加した酵素処理ステビア等のステビア誘導体及びステビアの甘味成分の中で最も甘味質のよいレバウディオサイドAを含む)、カンゾウ抽出物等;ショ糖誘導体、例えばスクラロース等;合成甘味料、例えばアセスルファムK、サッカリン等が挙げられる。また、本発明に用いられる甘味料は、1つ又はそれ以上の組合せで用いてもよい。
【0037】
(食物繊維)
本明細書において、食物繊維とは、水に溶解し、かつ、酵母に資化されない、または資化されにくい性質をもつ食物繊維をいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの食物繊維を用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、ガラクトマンナン、グア豆繊維、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、水溶性トウモロコシ繊維、及びそれらの加水分解物などが挙げられる。これらを主成分として、好ましくは固形分換算重量で80%以上、より好ましくは90%以上含有する各種グレードの市販品を購入して用いることができる。形態としては、粉末または液状のものを用いることができる。主成分以外の成分としては、資化性糖や主成分の分解物などが含まれる。水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリンまたはポリデキストロースが最も好ましい。
【0038】
難消化性デキストリンとは、加熱処理したデンプンをアミラーゼで加水分解し、未分解物より難消化性成分を分取して脱塩、脱色して得られたものである。難消化性デキストリンを固形分換算重量で80%以上、好ましくは90%以上含有する、パインファイバーC(松谷化学工業社製)などの市販の難消化性デキストリンを使用することができる。難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維の添加量は、最終製品に求める健康感やコクの設計に基づいて、適宜設定することができる。水溶性食物繊維の性状としては、特に限定されるものではなく、粉末状でも液糖の状態でもよい。水溶性食物繊維の添加時期は、発酵の前、または後のいずれでもよいが、水溶性食物繊維の添加により発酵不良が懸念される場合には、発酵後に純度の高い水溶性食物繊維を添加することが好ましい。
【0039】
(苦味料)
本明細書において、苦味料とは、飲食品に苦味を付与するために添加される添加物及びその製剤をいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの苦味料を用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。通常のビールや発泡酒の原料として用いられる苦味料を用いることができ、例えば、イソフムロン類や還元型イソフムロン類等が挙げられる。
【0040】
(色素)
本明細書において、色素とは、飲食品に色を付与するために添加される添加物及びその製剤をいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの色素を用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。中でも、飲料に添加することから、水溶性の色素や親水性の高い色素を好適に用いることができる。また、ビール様の色調を得るために奏功する色素を好適に用いることが出来る。なかでも、それらの条件がそろったカラメル色素を好適に用いることができる。
【0041】
(安定剤)
本明細書において、安定剤とは、主として飲食品の安定化の目的で添加される添加物及びその製剤をいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの安定剤を用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。通常のビールや発泡酒の原料として用いられる泡安定剤を用いることができ、例えば、サポニンやキラヤニン等が挙げられる。また、通常の飲料の原料として用いられる分散安定剤を用いることができ、例えば、カラギナン、キサンタンガム等が挙げられる。
【0042】
(炭酸ガス)
本発明において、炭酸ガスは、酵母による発酵などにより本来的に酵母含有発酵液に含まれるものや、発酵飲料の製造工程のいずれかの段階で強制的に二酸化炭素を含有させたものであってもよい。本発明の発酵飲料における炭酸ガス(すなわち、二酸化炭素)の濃度は、特に限定されず、一般的に炭酸飲料として飲用される飲料における濃度であればよく、典型的には、200〜12000ppm程度、より好ましくは、2500〜7500ppm程度である。強制的に炭酸ガスを含有させた液体を製造する方法としては、当業者に通常知られる方法を用いることができ、例えば、これらに限定されないが、加圧下で二酸化炭素を液体に溶解させてもよいし、ツーヘンハーゲン社のカーボネーターなどのミキサーを用いて配管中で液体と二酸化炭素とを混合してもよいし、また、二酸化炭素が充満したタンク中に液体を噴霧することにより二酸化炭素を液体に吸収させてもよいし、飲料用液体と炭酸水とを混合して炭酸飲料としてもよい。
【0043】
(水)
調合に用いられる水としては、前述した酵母含有発酵液に用いられる水と同様のものを用いることができる。
【0044】
(醸造用アルコール)
本明細書において、醸造用アルコールとは、飲食品に用いられるエタノールをいう。本発明においては、食品に添加することが認められているいずれの醸造用アルコールを用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。
【0045】
(スピリッツ)
本明細書において、スピリッツとは、麦、米、そばなどの穀物類や、サツマイモ、ジャガイモ、キャッサバといった芋類を原料として、麦芽または必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させ、更に蒸留して得られる酒類をいい、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。本発明では、原料の一部に麦を用いている麦スピリッツを好適に使用することができる。麦スピリッツの原料として用いられる麦とは、麦芽、麦麹、大麦、精白大麦、大麦エキス、大麦フレーク、小麦、ハト麦、ライ麦、エン麦などをいう。なかでも、麦として小麦を用いる小麦スピリッツが好ましい。
【0046】
スピリッツの製造において、蒸留方法や蒸留回数といった製造条件は特に限定されるものではない。小麦スピリッツを用いる場合、アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したものを用いることができる。また、アルコール分が36%以上としたものを好適に使用することができる。
【0047】
また、本発明においては、得られた発酵飲料は、容器詰め、殺菌工程などの通常の工程に付すことができる。容器入り飲料とする場合には、通常の発酵飲料の場合と同様に、ビン、缶、樽、又はPETボトル等の密封容器に充填することができる。
【0048】
かくして、本発明の製造方法により、極小量のプリン体量の発酵飲料を効率よく製造することができる。得られた発酵飲料のプリン体含有量は、好ましくは1mg/100mL未満、より好ましくは0.5mg/100mL未満、さらに好ましくは0.1mg/100mL未満、さらに好ましくは0.05mg/100mL未満、よりさらに好ましくは0.005mg/100mL未満である。
【0049】
本発明はまた、本発明の製造方法により製造された発酵飲料を提供する。
【0050】
(発酵飲料)
本発明が提供する「発酵飲料」とは、穀類を原料の一部として使用し、発酵させた飲料をいい、望ましくは、麦、中でも麦芽を原料の一部として使用して製造したアルコール含有飲料をいう。具体的には、発泡酒、低アルコール麦芽発酵飲料(例えばアルコール分1%未満の麦芽発酵飲料)等をあげることができ、日本における酒税法上の酒類の分類上、発泡酒、リキュール類、スピリッツ類に分類される発酵麦芽飲料である。
【0051】
この場合において、本発明が提供する発酵飲料のアルコール分は、特に限定されないが、1〜15%(v/v)であることが望ましい。なかでも、ビールや発泡酒といった麦芽発酵飲料として消費者に好んで飲用されるアルコール濃度、すなわち、1〜8%(v/v)の範囲であることが望ましい。
【0052】
また、本発明により得られる「発酵飲料」において、「プリン体」の含量は、好ましくは1mg/100mL未満、より好ましくは0.5mg/100mL未満、さらに好ましくは0.1mg/100mL未満、さらに好ましくは0.05mg/100mL未満、よりさらに好ましくは0.005mg/100mL未満である。
【0053】
なお、本明細書において、発酵飲料や各工程における液中の「プリン体」の含量の測定は、特に限定されないが、例えばK.Kanekoらの方法(Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, 2014, 33: 439-444)に準じて行う。
【0054】
また、本発明により得られる「発酵飲料」においては、原料中の麦芽比率を高率とすることにより、糖質を低減しつつ、麦由来のオフフレーバーを抑制することができる。従って、前記観点から、酵母含有発酵液については、麦芽比率を50%未満、特に麦芽比率を25%未満とするのが好適である。麦芽の使用比率とは麦芽比率とも呼ばれるが、麦芽、米、トウモロコシ、コウリャン、バレイショ、デンプン、麦芽以外の麦、および糖類といった糖質原料中に占める麦芽の重量の比率をいう。例えば麦芽比率100%のビールは、通常、オールモルトビールと称されるものである。
【0055】
(エキス分の総量)
また、本発明により得られる「発酵飲料」においては、エキス分の総量が0.4重量%以下となることが好ましい。本発明において、エキス分とは、麦芽、米、トウモロコシ、コウリャン、バレイショ、デンプン、麦芽以外の麦、及び糖類などの原料に由来して増減する、不揮発性の成分をいう。また、厳密にはホップや香料など、他の成分によっても増減する。エキス分の総量を調整する方法は特に限定されないが、例えば、原料として用いる麦芽などの麦の様な、エキス分をもたらす原料の量を調整する方法、中間製品を希釈する方法などが挙げられる。本明細書における「エキス分の総量」は、飲料のアルコール度数が0.005%以上の場合、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15度の時において原容量100立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
当業者に周知の方法にて粉砕した欧州産二条大麦麦芽20tに水80tを加え、65℃にて100分間糖化を行った。同温度にて麦汁ろ過した後、この麦汁に、麦芽比率が25%未満になるように、純度約75%の麦芽糖を含む市販のシロップ(MR750:昭和産業社製)を添加して加水・攪拌し、ホップ約100kgを添加して90分間煮沸した。10℃に冷却後、ビール下面醸造用酵母約300kgを加え(密度1,008kg/m
3)、約2週間、液深16mのタンク(タンク底部圧力158kPa)で発酵させたのち、半日間静置し、酵母含有発酵液とした(酵母含有発酵液のプリン体含有量3mg/100mL)。
【0058】
得られた酵母含有発酵液に、活性炭(「白鷺」、武田薬品工業社製)を酵母含有発酵液当たり、活性炭2質量%となる量を添加し、配管を通して水圧500kPaで、ろ過機に酵母含有麦芽発酵液を液送し、ろ過を行った(ろ液のプリン体含有量0.15mg/100mL)。なお、液送前の酵母含有発酵液の一部を抜き取り、該発酵液当たり活性炭2質量%を添加し20分間攪拌した後の液中のプリン体含有量は0.15mg/100mLであった。この際、エキス分が0.4重量%となるよう調整するとともに、醸造アルコール、香料、酸味料、炭酸ガスなどで最終調整し、無菌的に缶に充填して缶入りの飲料とした。
【0059】
得られた缶入り飲料のプリン体含量は、実測値で0.0035mg/100mLであり、開封して飲用したところ、ビールらしい風味の感じられる麦芽発酵飲料が得られた。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた酵母含有発酵液(酵母含有発酵液のプリン体含有量3mg/100mL)に、活性炭(「白鷺」、武田薬品工業社製)を酵母含有発酵液当たり、活性炭2質量%となる量を添加し、配管を通して水圧300kPaで、ろ過機に酵母含有麦芽発酵液を液送し、ろ過を行った(液送前の液のプリン体含有量0.15mg/100mL、ろ液のプリン体含有量0.15mg/100mL)。この際、エキス分が0.4重量%となるよう調製するとともに、醸造アルコール、香料、酸味料、炭酸ガスなどで香味の調整を行った。
【0061】
最後に、大麦スピリッツを4:1000となるように混合した後、濾過を行った。得られた麦芽発酵飲料を無菌的に缶に充填して、缶入りの飲料とした。
【0062】
得られた缶入り飲料のプリン体含量は、実測値で0.0031mg/100mLであり、開封して飲用したところ、ビールらしい風味の感じられる麦芽発酵飲料が得られた。
【0063】
本発明により、プリン体が低減された発酵飲料を安定的に製造することができることが明らかになった。
穀類、ホップ、酵母、及び水を含有する原料を発酵させた酵母含有発酵液にプリン体吸着剤を添加するプリン体吸着剤添加工程、前記プリン体吸着剤が添加された酵母含有発酵液を50kPa〜700kPaの水圧でろ過機へ液送する液送工程、並びに前記液送された液をろ過するろ過工程を含む、発酵飲料の製造方法。本発明により得られる発酵飲料は、安定してプリン体が低減されたものであることから、嗜好品として消費者を満足させることができるものである。